説明

車両用カラオケ装置

【課題】 本発明は、歌詞の読み上げ機能を向上させた車両用カラオケ装置の提供を目的とする。
【解決手段】 乗員の歌唱のガイドとして歌詞を音声出力する車両用カラオケ装置において、歌詞はフレーズ単位に分割して記憶装置3に記憶されており、音声出力されるフレーズの頭からの長さを乗員からの変更指示入力に従って変更する車両用カラオケ装置。乗員の歌唱レベルに応じて歌詞の音声出力が自動的に行われると読み上げ機能の向上を図ることができるので、制御装置4は乗員の歌唱レベルを判断し、その判断結果に応じて歌詞の音声出力の要否を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用カラオケ装置に関し、より詳細には、楽曲に先行して歌詞を音声により読み上げる車両用カラオケ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の運転者が画面を見ることなく歌詞を認識することができるカラオケシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このカラオケシステムは、次に演奏される楽曲に付加された歌詞を、その演奏に先行して音声により読み上げるので、運転者等の利用者が画面を見ずに演奏前に歌詞の内容を認識できるようになっている。
【特許文献1】特開2004−341338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の従来技術では、前の休符(または長音符)と後の休符(または長音符)との間における歌詞の部分を、前の休符部分(または長音符部分)に読み上げられるようにしている。ここで、休符(または長音符)の間隔は楽曲によって異なるので、読み上げられる歌詞のフレーズの長さは演奏される楽曲の内容に応じて定まることになる。しかしながら、利用者によって歌詞の読み上げ長さの要求度は異なるため(例えば、歌詞をよく覚えている利用者と歌詞をあまり覚えていない利用者とではその要求度は異なる)、上述の従来技術のままでは利用者の要求を満足させることはできなかった。
【0004】
そこで、本発明は、歌詞の読み上げ機能を向上させた車両用カラオケ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の一局面によれば、
乗員の歌唱のガイドとして歌詞を音声出力する車両用カラオケ装置において、
歌詞はフレーズ単位に分割して記憶されており、音声出力されるフレーズの頭からの長さを乗員からの変更指示入力に従って変更する車両用カラオケ装置が提供される。これによって、乗員が音声出力されるフレーズ頭からの長さを任意に変えられるので、乗員の読み上げに対する要求を満たすことができる。
【0006】
また、乗員の歌唱レベルに応じて歌詞の音声出力が自動的に行われると読み上げ機能の向上を図ることができるので、乗員の歌唱レベルを判断する判断手段を備え、前記判断手段による判断結果に応じて歌詞の音声出力の要否を決定するようにしてもよい。また、自動的に音声出力がされるようになることによって、乗員の細かい設定を軽減することができる。特に、走行中のドライバにとっては有効な機能である。
【0007】
このとき、前記判断手段は、乗員の歌唱をフレーズ単位で音声認識する音声認識手段を備え、歌詞の音声出力の要否は、前記音声認識手段により音声認識されたフレーズと前記記憶されたフレーズとの一致度合いに応じて決定されると好適である。これにより、音声認識はフレーズ単位で行われる一方で、歌詞はフレーズ単位で記憶されているので、乗員の歌詞の習熟度を判断する際の比較がしやすくなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、歌詞の読み上げ機能が向上し、乗員の歌詞の読み上げに対する要求を満足させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。一般に、カラオケは、楽曲と同期した歌詞を表示することによって、歌い出しのタイミング取りや正しい歌詞どおりに歌う自信のない歌を歌うことを可能にする。しかしながら、車両で行われるカラオケでは、走行中に歌詞を表示すると、ドライバの視線が奪われて運転がおろそかになるおそれがある。そこで、本発明の車両用カラオケ装置は、乗員の歌唱のガイドとして歌詞を音声出力する機能を有する。音声により歌詞を読み上げてくれることによって、視線が奪われることなく走行中でもカラオケを楽しむことが可能になる。
【0010】
図1は、本発明の車両用カラオケ装置の一実施形態を示す図である。本実施形態の車両用カラオケ装置は、音声入力装置1、操作入力装置2、記憶装置3、制御装置4、ミキサー5、音声出力装置6及び表示装置7を有している。
【0011】
音声入力装置1は、車室内の音声を集音し、その集音された音声を音声データとして制御装置4とミキサー5に供給する。音声入力装置1の具体例として、マイクがある。音声入力装置1は、車両側に固定されるものでもよいし、手持ち可能なものでもよい。
【0012】
操作入力装置2は、制御装置4に対する乗員による操作入力を受け付けるインターフェースである。例えば、プッシュSW(スイッチ)、レバーSW及びタッチSWが挙げられる。乗員は操作入力装置2を操作することにより、カラオケの開始・終了、曲選択、ボリューム調整、楽曲演奏中の歌詞の読み上げ(音声出力)の対象となるフレーズ、読み上げられるフレーズ頭からの長さ、楽曲と歌詞の出力タイミング、その他のカラオケに関する設定が可能となる。なお、これらの設定は、音声入力装置1からの音声データを音声認識することにより行われてもよい。つまり、制御装置4に対する乗員による操作入力が音声操作入力として受け付けられる。
【0013】
記憶装置3には、例えば、MIDI(Musical Instruments Digital Interface)等のテキスト形式の歌詞データや楽曲データが記憶されている。歌詞データは、フレーズ単位の分割データで記憶されている。例えば、「あいしているのはむかしからあなただけ。」という歌詞の場合、「あいしているのは」「むかしから」「あなただけ」とフレーズ毎に分割されて記憶されている。楽曲データは、音符の高さ・長さや休符の長さに関するデータである。また、これらのデータ以外にも、楽器に関する音源データが記憶されている。なお、記憶装置3に記憶される各種データは、携行可能な記憶媒体や通信回線を介して書き換え可能としてもよい。
【0014】
制御装置4は、音声入力装置1からの音声データや操作入力装置2からの操作入力情報や記憶装置3から読み出された各種データに基づいて、ミキサー5や表示装置7に対し後述する所定の制御を実行する。なお、制御装置4が、音声入力装置1からの乗員の歌声等の音声データを音声認識する場合には、その音声データについて、特徴抽出、音素解析、単語解析及び構文解析を行いテキストデータに変換することによって音声認識する。上記と同一の例で説明すると、「あいしているのはむかしからあなただけ」という音声データが入力された場合、「あいしているのは」「むかしから」「あなただけ」というテキストデータに分割されて音声認識がなされる。また、その音声認識されたテキストデータが車両用カラオケ装置に対する何らかの指示をした内容であれば、制御装置4はその指示内容に応じた制御を実行する。
【0015】
ミキサー5は、歌詞データ等のテキストデータから音声データを生成するものである。ミキサー5は、文字列解析、韻律制御及び音声波形生成を行うことによって、音声出力装置6によって出力される音声を制御装置4からのテキストデータに基づいて生成する。ミキサー5によって生成された音声波形(音波)を制御することによって、「音の大きさ(音圧、音圧レベル)」「音の高さ」「音色」に変化を与えることができる。「音の大きさ」は音声波形の振幅によって決まり、「音の高さ」は音声波形の周波数によって決まり、「音色」は音声波形の形状によって決まる。音の大きさと音の高さについてそれぞれ同一な二つの音声波形(つまり、振幅、周波数が同一)を比べた場合、その音声波形の形状が異なれば、その音声の音色は互いに異なる。乗員の歌唱のガイドとして歌詞を音声出力する場合には、ミキサー5は乗員の歌唱を邪魔しない音の大きさや高さや音色となるように音声波形を制御する。また、ミキサー5は、音声入力装置1からの乗員の歌声等の音声データを音声出力装置6から出力される音声データとして音声出力装置6に供給する。
【0016】
音声出力装置6は、上述の音声波形に基づいて車室内に実際の楽曲や歌詞を音声により出力する。音声出力装置6の具体例として、スピーカがある。また、音声出力装置6に指向性を持たせることによって、特定の座席のみに楽曲や歌詞を出力することもできる。例えば、後部座席に座っている人に聞かせたくない、もしくは、後部座席に座っている人が聞きたくない場合には、指向性が調整される。
【0017】
表示装置7は、乗員に対し視覚的な情報提供をする。より具体的には、TFT−LCD(薄膜トランジスタ方式液晶ディスプレイ)、自発光タイプのEL(Electro Luminescence)パネル、VFD(蛍光表示管)及びヘッドアップディスプレイ等がある。表示装置7は、制御装置4からの歌詞データに基づいて歌詞のフレーズを表示する。そのフレーズに合わせて映像が表示される場合もある。
【0018】
次に、本実施形態の車両用カラオケ装置の動作について説明する。乗員が操作入力装置2を介して演奏する曲目を選択指示すると、制御装置4はその選択指示の曲目に対応する楽曲データと歌詞データと音源データを記憶装置3から読み出し、ミキサー5に出力する。ミキサー5は、制御装置4からの各データと指示内容に基づいて音声出力を行う。また、画像表示装置7に歌詞を表示させたいという乗員からの指示がある場合には、制御装置4は記憶装置3から読み出した歌詞データのテキストを演奏されている楽曲に同期させて表示装置7に表示させる。
【0019】
ここで、フルコーラスの出力を要求する指示が乗員からある場合には、制御装置4は、歌詞と楽曲の出力タイミングをオリジナルのデータのままで音声出力するようミキサー5に指示する。その指示を受けたミキサー5は、制御装置4からの楽曲データと歌詞データをオリジナルのまま同期させた音声データを生成する。生成された音声データが、演奏される楽曲や読み上げられる歌詞として音声出力装置6から出力される。
【0020】
したがって、歌詞をよく知らない乗員はフルコーラスの出力指示を行うことで、フルコーラス付で歌うことができ、歌詞も覚えやすく音程を合わせて練習することができる。
【0021】
一方、歌詞のフレーズの頭からの長さを指定する指示が乗員からある場合には、制御装置4は、その指示内容に合わせて音声出力するようミキサー5に指示する。その指示を受けたミキサー5は、制御装置4からの楽曲データと歌詞データをその指示内容となる音声データに編集する。編集された音声データが、演奏される楽曲や読み上げられる歌詞として音声出力装置6から出力される。
【0022】
例えば、乗員が、その楽曲の全歌詞のうち各文の最初のフレーズのみを出力するように指示したとする。歌詞の中の或る一文が「あいしているのはむかしからあなただけ。」の場合、音声出力される楽曲と同期して音声出力される歌詞は「あいしているのは」の部分だけになる。そして、「むかしからあなただけ。」の部分の音声出力はされずに、その部分の楽曲のみが音声出力される。
【0023】
また、例えば、乗員が、その楽曲の全歌詞のうち各文の最初のフレーズのみを直前の休符部分(または長音符部分)で出力するように指示したとする。この場合、「あいしているのは」の部分は、「あいしているのは」のフレーズに対応する楽曲部分の直前の休符部分(または長音符部分)で出力が完了した後、「あいしているのはむかしからあなただけ。」の部分に対応する楽曲のみが音声出力される。
【0024】
したがって、歌詞を知っている乗員や歌詞をほぼ覚えた乗員はフレーズ頭からの長さの変更指示を行うことで、歌詞の読み上げを自分の歌唱レベルに合わせることができる。また、歌いだしのタイミングも図りやすくなる。
【0025】
ところで、乗員の歌唱レベルに応じて歌詞の音声出力が、乗員からの指示なく自動的に行われると読み上げ機能の向上を図ることができる。そこで、制御装置4は、習熟度を示す乗員の歌唱レベルを判断し、その判断結果に応じて歌詞の音声出力要否を決定する。
【0026】
図2は、乗員の歌唱レベルに応じて歌詞が音声出力されることを説明するための図である。乗員が、その楽曲の全歌詞のうち各文の最初のフレーズのみを出力するように指示したとする。
【0027】
歌詞の中の或る一文が、上述と同様に、「あいしているのはむかしからあなただけ。」の場合、制御装置4は、楽曲については「あいしているのはむかしからあなただけ。」に対応する楽曲部分がそのまま音声出力されるように制御するのに対し、歌詞については歌い出しの「あいしているのは」の部分のフレーズのみが図2のAの期間に音声出力されるように制御する。このように音声出力されることにより、乗員は「あいしているのは」の部分を知らなくても歌いはじめることができる。そして、その歌声が音声入力装置1によって集音され、音声データとして制御装置4やミキサー5に供給されることになる。
【0028】
ところが、歌詞をよく覚えていない乗員は、それ以降の歌詞を歌うことができなかいことがある。この場合、乗員の歌声が音声入力装置1によって集音されないことになる。そこで、図2のBの期間のように、乗員の歌声が音声入力装置1によって集音されない場合には、制御装置4はその集音された音声データ(無音のデータ)を解析することにより、乗員は歌を歌うことができないと判断する。歌うことができないと判断した制御装置4は、その乗員の歌唱レベルが低い、つまり、その楽曲や歌詞に対する習熟度が低いと判定する。習熟度が低いと判定した制御装置4は、本来乗員によって歌詞を出力しないように設定されている期間であっても、図2のCの期間のように、歌詞の音声出力を開始する。このとき、音声出力される歌詞は、フレーズ単位で出力される。出力しようとするタイミングが、「むかしから」のフレーズ部分に対応する楽曲部分が演奏中または経過している場合には、制御装置4は次のフレーズの「あなただけ。」の部分が音声出力するように制御する。
【0029】
これによって、乗員は「あなただけ。」の部分から歌いはじめることができ、その歌声が音声入力装置1によって集音され、音声データとして制御装置4やミキサー5に供給されることになる。
【0030】
また、乗員の一連の歌声は、上述のように音声認識によってフレーズ毎に分割して得ることができる。そこで、制御装置4は、音声認識により得られたフレーズと歌詞データとして記憶装置3に記憶されたフレーズを比較し、その一致度合いに応じて歌詞の音声出力の要否を決定する。「あいしているのは」「むかしから」「あなただけ。」の3つの記憶されたフレーズに対し、「あいしているのは」の1つのフレーズしか音声認識できない場合には、2つのフレーズが欠けているとして、制御装置4は、その乗員の歌唱レベルが低い、つまり、その楽曲や歌詞に対する習熟度が低いと判定する。若しくは、「これからも」と間違ったフレーズが音声認識された場合に、制御装置4は、その楽曲や歌詞に対する習熟度が低いと判定してもよい。以下、上述と同様に、制御装置4は、本来乗員によって歌詞を出力しないように設定されている期間であっても、図2のCの期間のように、歌詞の次のフレーズからフレーズ単位で音声出力を開始すればよい。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0032】
例えば、習熟度が低いと判定されたときに音声出力を開始するだけではなく、習熟度が高いと判定されたときに音声出力を停止するようにしてもよい。乗員の歌声が音声入力装置1によって集音され、その集音された音声データの解析が制御装置4により行われる。そして、制御装置4は、所定の歌唱基準を満たした場合(例えば、所定数の複数フレーズのうち或る割合以上のフレーズが完全一致した場合)、その乗員の歌唱レベルが高い、つまり、その楽曲に対する習熟度が高いとして、音声出力していた歌詞を停止するように制御する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の車両用カラオケ装置の一実施形態を示す図である。
【図2】乗員の歌唱レベルに応じて歌詞が音声出力されることを説明するための図である。
【符号の説明】
【0034】
1 音声入力装置
2 操作入力装置
3 記憶装置
4 制御装置
5 ミキサー
6 音声出力装置
7 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の歌唱のガイドとして歌詞を音声出力する車両用カラオケ装置において、
歌詞はフレーズ単位に分割して記憶されており、音声出力されるフレーズの頭からの長さを乗員からの変更指示入力に従って変更する車両用カラオケ装置。
【請求項2】
乗員の歌唱レベルを判断する判断手段を備え、
前記判断手段による判断結果に応じて歌詞の音声出力の要否を決定する請求項1記載の車両用カラオケ装置。
【請求項3】
前記判断手段は、乗員の歌唱をフレーズ単位で音声認識する音声認識手段を備え、
歌詞の音声出力の要否は、前記音声認識手段により音声認識されたフレーズと前記記憶されたフレーズとの一致度合いに応じて決定される、請求項2記載の車両用カラオケ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−47486(P2007−47486A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232194(P2005−232194)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】