車両用ガラスアンテナ及び車両用窓ガラス
【課題】本発明は、所望の帯域に対応できる受信特性が得られる、車両用ガラスアンテナ及び該車両用ガラスアンテナを備えた車両用窓ガラスの提供を目的とする。
【解決手段】アンテナ導体100と給電部18とアンテナ導体100に離間した独立導体20Aとが車両用窓ガラス12に設けられており、独立導体20が基準方向に並走する複数の線条導体を備える、車両用ガラスアンテナであって、前記複数の線条導体の隣り合う線条導体のうち一方の線条導体のアンテナ導体100側の先端部ともう一方の線条導体との間に、アンテナ導体100に向けて開口している開口端を、少なくとも一組の前記隣り合う線条導体について有することを特徴とする、車両用ガラスアンテナ。
【解決手段】アンテナ導体100と給電部18とアンテナ導体100に離間した独立導体20Aとが車両用窓ガラス12に設けられており、独立導体20が基準方向に並走する複数の線条導体を備える、車両用ガラスアンテナであって、前記複数の線条導体の隣り合う線条導体のうち一方の線条導体のアンテナ導体100側の先端部ともう一方の線条導体との間に、アンテナ導体100に向けて開口している開口端を、少なくとも一組の前記隣り合う線条導体について有することを特徴とする、車両用ガラスアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ導体及び給電部が車両用窓ガラスに設けられた車両用ガラスアンテナに関する。また、その車両用ガラスアンテナを備えた車両用窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、デジタルオーディオ放送(Digital Audio Broadcasting:DAB)を受信可能な車両用ガラスアンテナが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。DABは、174〜240MHzのband III(バンド3)と1452〜1492MHzのL band(Lバンド)の2つの異なる周波数帯から構成されている。
【特許文献1】特開平10−327009号公報
【特許文献2】特開2000−307321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、車両用窓ガラスに設けられたアンテナ導体が所望の帯域に対応可能な十分な受信性能を持つ車両用ガラスアンテナを設計・製造することは容易ではない。特に、上述のDABのように周波数帯域がデュアルバンドの場合、帯域が離れているため、両方の帯域に対応可能な十分な受信性能を持つ車両用ガラスアンテナを設計・製造することは難しい。
【0004】
そこで、本発明は、所望の帯域に対応できる受信特性が得られる、車両用ガラスアンテナ及び該車両用ガラスアンテナを備えた車両用窓ガラスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る車両用ガラスアンテナは、
アンテナ導体と、給電部と、前記アンテナ導体に離間した独立導体とが車両用窓ガラスに設けられており、
前記独立導体が基準方向に並走する複数の線条導体を備える、車両用ガラスアンテナであって、
前記複数の線条導体の隣り合う線条導体のうち一方の線条導体の前記アンテナ導体側の先端部ともう一方の線条導体との間に、前記アンテナ導体に向けて開口している開放端を、少なくとも一組の前記隣り合う線条導体について有することを特徴とする。
【0006】
さらに、本発明は、本発明に係る車両用ガラスアンテナを備えた車両用窓ガラスを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、所望の帯域に対応できる受信特性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。なお、形態を説明するための図面において、方向について特に記載しない場合には図面上での方向をいうものとする。また、それらの図面は、窓ガラスが車両に取り付けられた状態での車内視(又は、車外視)の図であり、図面上での左右方向が水平方向に相当する。また、例えば、窓ガラスが車両の後部に取り付けられるリアガラスである場合、図面上での左右方向が車幅方向に相当する。なお、本発明は、リアガラスに限定されず、車両の前部に取り付けられるフロントガラス、車両の側部に取り付けられるサイドガラスであってもよい。
【0009】
図1(車内視又は車外視)は、リアガラス12に本発明に係るガラスアンテナが設けられている実施形態であって、リアガラス12の右上側領域を示している。リアガラス12にアンテナ導体100と、複数本のヒータ線と、該複数本のヒータ線に給電する複数本(図1では1本のみ記載)のバスバとが設けられ、該複数本のヒータ線と該複数本のバスバとでデフォガ30が構成されている。
【0010】
アンテナ導体100について、図18を用いて説明する。図18は、第1の放送周波数帯及び該第1の放送周波数帯より帯域が高い第2の放送周波数帯の電波受信用の車両用ガラスアンテナ100の平面図である。車両用ガラスアンテナ100は、アンテナ導体及び給電部を車両用窓ガラス12に設けた車両用ガラスアンテナである。車両用ガラスアンテナ100は、ループ状に形成されたループエレメント5と、ループエレメント5上の点である第1の点5aを起点に水平方向に略直角である第1の方向に延伸する第1のアンテナエレメントであるアンテナエレメント1と、アンテナエレメント1の第1の方向への延伸の終点である第1の終端部1gを起点に第1の方向に対して略直角な方向である第2の方向に延伸する第2のアンテナエレメントであるアンテナエレメント2とからL字状に構成されるL字エレメントと、ループエレメント5上の点である第2の点5bを起点に、そのL字エレメントから離れる方向である第3の方向(図18では、第1の方向と180°反対方向)に延伸して給電部18に接続点6aで接続される接続エレメント6とを、アンテナ導体として備えた構造である。なお、L字状とは、L字の左右対称となった形状も含み、角は曲率を有して折れ曲がっていてもよい。また終端部とは、アンテナエレメントの延伸する終端であってもよいし、その終端手前の導体部分である終端近傍であってもよい。
【0011】
車両用ガラスアンテナ100は、単極(モノポール)アンテナであって、アンテナ導体により得られる受信信号が正極側(ホット側)の給電部18から取り出し可能になっており、その受信信号が受信機(不図示)に伝達される。単極アンテナの場合、窓ガラス12が取り付けられる車両の車体開口部やその近傍部がグランドとして使用可能な部位であるとよい(いわゆるボディーアースがとれる)。図18の場合、車体開口部の上縁部15aの近傍に配置されている。
【0012】
図18は、方形状の給電部18を示している。給電部18の下辺上に接続エレメント6との接続点6aが位置する。図18の接続点6aは、給電部18の下辺の中心点であるが、下辺上の任意の位置でもよく、給電部18の右辺又は左辺と下辺の交点としてもよい。接続エレメント6は、給電部18とループエレメント5とが離間されている方向に延設され、給電部18とループエレメント5とを接続する。
【0013】
ループエレメント5は、ループ状に形成されたアンテナ導体である。ループ状とは、同一の線幅で形成されたループ形状だけでなく、一部線幅が太くなっていてもよく、ループ状に形成されていればよい。ループエレメントの形状は、円、略円、楕円、略楕円などの円状でもよいし、正方形、略正方形、長方形、略長方形、平行四辺形、略平行四辺形、ひし形、略ひし形などの方形状や多角形状でもよい。図18のループエレメント5の形状は、正方形である。ループエレメント5の導体部上に、アンテナエレメント1との接続点5aと接続エレメント6との接続点5bとが位置する。ループエレメント5の重心を通る水平方向の仮想直線に対して、接続点5aは一方の側(下側)に位置し、接続点5bは他方の側(上側)に位置する。図18の接続点5aと5bは、第1の方向に平行な直線上に位置している。また、図18の接続点5bは、ループエレメント5の上辺の中心点であるが、上辺上の任意の位置でもよく、ループエレメント5の左辺又は右辺と上辺との交点としてもよい。
【0014】
また、接続エレメント6との接続点5bは、ループエレメント5の右辺又は左辺上の任意の位置でもよい。
【0015】
アンテナエレメント1は、接続点5aを起点に下方向(第1の方向)に終端部1gを終点として延伸されればよい。図18の接続点5aは、ループエレメント5の下辺の中心点であるが、下辺上の任意の位置でもよく、ループエレメント5の左辺又は右辺と下辺との交点としてもよい。
【0016】
アンテナエレメント2は、終端部1gを起点に左方向(第2の方向)に終端部2gを終点として延伸されればよい。右方向(すなわち、第2の方向と180°反対方向)に延伸されてもよい。アンテナエレメント2の延伸方向(第2の方向)は、窓ガラス12が車体開口部に取り付けられている状態において、水平方向に平行又は略平行であることが、平行でない場合に比べアンテナ利得向上の点で好適である。
【0017】
図1において、30aは最高位のヒータ線、30bはバスバである。また、20Aは、デフォッガ30の上側余白領域に配置されたAM放送受信用のガラスアンテナの一例である。
【0018】
車両用窓ガラス12には、アンテナ導体100に直流的に接続されず且つ近接している独立導体(図1の場合、AMガラスアンテナ20A)とが、アンテナエレメント2より車両用窓ガラスの周縁部側の空白領域に設けられていると、Lバンドのアンテナ利得向上の点で好適である。独立導体は、基準方向(図1では、第2の方向)に並走し且つ給電部18と異なる第2の給電部(図1には不図示だが、例えば、AMガラスアンテナ20Aの左端部に設けられた給電部)に電気的に接続される複数の線条導体を備える場合、AM放送の周波数帯の受信に利用できる点で好ましい。
【0019】
独立導体20Aは、基準方向に並走する複数の線条導体(21〜26)を備える。本発明においては、複数の線条導体の隣り合う線条導体のうち一方の線条導体のアンテナ導体100側の先端部ともう一方の線条導体との間に、アンテナ導体100に向けて開口している開放端を、少なくとも一組の隣り合う線条導体有することが、band IIIのアンテナ利得向上の点で好ましい。さらに、複数の線条導体の前記アンテナ導体側の先端部のうち最上位と最下位との間の基準方向に略直角な上下方向成分の距離に対して、開放端の前記上下方向成分の距離の総和が、30%以上であることが、band IIIのアンテナ利得向上の点で好ましい。特には、60%以上が好ましい。
【0020】
図1の例においては、複数の線条導体のうちアンテナ導体側に対向した先端部を有する線条導体の全てが上下方向に平行な方向に直流的に接続されていない、つまり、図1に例示されるように、全てオープン(開放端)になっていることが、アンテナ利得向上の点で好ましい。各開放端は、アンテナ導体に向けて車幅方向に開口した部位であり、複数の線条導体の中の隣り合う線条導体のうち一方の線条導体のアンテナ導体側の先端部ともう一方の線条導体との間に設けられている。
【0021】
複数の線条導体の隣り合う線条導体同士が、この隣り合う線条導体の少なくとも一方のアンテナ導体側の先端部を起点として短絡線により接続される短絡部を有していてもよい。
【0022】
この短絡部が形成される場合、所望の第1の放送周波数帯と第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、第1の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ01といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg1=λ01・kとするとき、複数の線条導体のアンテナ導体側の先端部のうち車両用窓ガラスの周縁部に最近接の先端部と接続する短絡線の基準方向に略直角な上下方向成分の長さは、0.027・λg1以下であることが、バンド3等の第1の放送周波数帯のアンテナ利得向上の点で好ましい結果が得られる。特には、0.022・λg1以下であることが好ましい。
【0023】
例えば、第1の放送周波数帯としてバンド3(174〜240MHz)を設定した場合、その中心周波数は207MHzであり、207MHzにおけるλg1は927.5mmであり、また、第2の放送周波数帯としてLバンド(1452〜1492MHz)を設定した場合、その中心周波数は1472MHzであり、1472MHzにおけるλg2は130.4mmである。よって、具体的には、複数の線条導体のアンテナ導体側の先端部のうち車両用窓ガラスの周縁部に最近接の先端部と接続する短絡線の第1の方向成分の長さは、25mm以下、特には20mm以下であることが、バンド3のアンテナ利得向上の点で好ましい。
【0024】
さらに、所望の第1の放送周波数帯と第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、第2の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ02といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg2=λ02・kとするとき、アンテナ導体と独立導体との同一水平面での間隔における基準方向成分の最小値が、0.008・λg2〜0.39・λg2、特には0.008・λg2〜0.23・λg2であることが、アンテナ導体のアンテナ利得向上の点で好ましい。
【0025】
したがって、具体的には、アンテナ導体と独立導体との同一水平面での間隔における第2の方向成分の最小値が、1mm〜50mm、特には1mm〜30mmであることが、アンテナ導体のアンテナ利得向上の点で好ましい。
【0026】
また図1の例では、アンテナエレメント2とヒータ線30aとの間の空白領域にアンテナエレメント2が延伸するようにガラスアンテナが配置されると、アンテナ利得向上の点で好適である。
【0027】
次に本発明の他の実施の形態について説明する。第1の放送周波数帯と第2の放送周波数帯の両方の放送周波数帯でのアンテナ利得が高いアンテナパターンとして、図19のアンテナ導体500に近接して囲むような形状の独立導体20Dが追加されたアンテナパターンであってもよい。本発明において、独立導体20Dはアンテナ導体500の第2の方向側のみに近接して設けられていても良いし、第4の方向側のみに近接して設けられていてもよい。
【0028】
ここで、アンテナ導体500について図19を用いて説明する。図19は、第1の放送周波数帯及び該第1の放送周波数帯より帯域が高い第2の放送周波数帯の電波受信用のアンテナ導体であるデュアルバンドの車両用ガラスアンテナ500の平面図である。車両用ガラスアンテナ500は、アンテナ導体及び給電部を車両用窓ガラス12に設けた車両用ガラスアンテナである。車両用ガラスアンテナ500は、給電部18を起点に水平方向に略直角である第1の方向に延伸する第1のアンテナエレメントであるアンテナエレメント1と、アンテナエレメント1の第1の方向への延伸の終点である終端部1gを起点に第1の方向に対して略直角な方向(すなわち、水平方向)である第2の方向に延伸する第2のアンテナエレメントであるアンテナエレメント2と、アンテナエレメント2の第2の方向の延伸の終点である終端部2gを起点に第1の方向に対して逆向きの方向(図19では、第1の方向に対して平行で逆向きの方向、つまり第1の方向に対して180°反対の上方向)である第3の方向に延伸する第3のアンテナエレメントであるアンテナエレメント3と、アンテナエレメント3の第3の方向の延伸の終点である終端部3gを起点に第2の方向に終端部4gまで延伸する第4のアンテナエレメントであるアンテナエレメント4とを、アンテナ導体として備えた構造である。なお、アンテナ導体の角は曲率を有して折れ曲がっていてもよい。また終端部とは、アンテナエレメントの延伸する終端であってもよいし、その終端手前の導体部分である終端近傍であってもよい。
【0029】
アンテナエレメント1は、接続点1sを起点に下方向(第1の方向)に終端部1gを終点として延伸されればよい。
【0030】
アンテナエレメント2は、終端部1gを起点に左方向(第2の方向)に終端部2gを終点として延伸されればよい。右方向(すなわち、第2の方向と180°反対方向)に延伸されてもよい。アンテナエレメント2の延伸方向(第2の方向)は、窓ガラス12が車体開口部に取り付けられている状態において、水平方向に平行又は略平行であることが、平行でない場合に比べアンテナ利得向上の点で好適である。
【0031】
アンテナエレメント3は、終端部2gを起点に上方向(第3の方向)に終端部3gを終点として延伸されればよい。
【0032】
アンテナエレメント4は、終端部3gを起点に左方向(第2の方向)に終端部4gを終点として延伸されればよい。アンテナエレメント2が右方向に延伸されている場合には、アンテナエレメント4はアンテナエレメント2の延伸方向と同じ右方向に延伸されればよい。
【0033】
図9において独立導体20Dは、アンテナ導体500に対して無給電導体に相当する。独立導体20Dは、例えば、デフォッガ30の上側余白領域に配置されたAM放送受信用のAMガラスアンテナであってもよい。
【0034】
すなわち、アンテナ導体500と直流的に接続されず、かつ近接している独立導体20D(図9の場合、AMアンテナ)が車両用窓ガラス12の空白領域に設けられており、その独立導体20Dがアンテナエレメント3より第2の方向側の空白領域とアンテナエレメント1より第4の方向側の空白領域に設けられていると、バンド3及びLバンドのアンテナ利得向上の点で好適である。
【0035】
この独立導体20Dは、基準方向(図9の例では、第2の方向)に平行な方向に並走し且つ給電部18と異なる第2の給電部(図9には不図示だが、例えば、AMアンテナの給電部)に電気的に接続される複数の線条導体を備える場合、AM放送の周波数帯の受信に利用できる点で好ましい。
【0036】
図9において、独立導体20DであるAMアンテナのアンテナパターンは、アンテナ導体500の第1の方向側と第2の方向側と第4の方向側とをわたって取り囲むパターンである。すなわち、アンテナ導体500は、第1の方向側と第2の方向側と第4の方向側とがAMアンテナのパターンによって囲まれた空白領域13に配置されている。
【0037】
独立導体20Dは、アンテナエレメント3より第2の方向側の空白領域に配置された複数の線条導体(21〜26)から構成される第1の線条導体群と、アンテナエレメント1より第4の方向側の空白領域に配置された複数の線条導体(51〜55,26)から構成される第2の線条導体群とを備える。線条導体26は、第2の方向側の空白領域と第4の方向側の空白領域の両方に配置されるように、アンテナエレメント2とデフォッガ30との間の空白領域を通過している。アンテナ導体500が配置されている空白領域13は、第1の線条導体群と第2の線条導体群とによって囲まれている。また、21g〜25gは、線条導体21〜25の第4の方向の延伸の終点であるアンテナ導体500側の先端部(終端部)である。51g〜55gは、線条導体51〜55の第2の方向の延伸の終点であるアンテナ導体500側の先端部(終端部)である。
【0038】
本実施の形態についても前述の実施の形態と同様に複数の線条導体の隣り合う線条導体のうち一方の線条導体のアンテナ導体100側の先端部ともう一方の線条導体との間に、アンテナ導体100に向けて開口している開放端を、少なくとも一組の隣り合う線条導体有することが、band IIIのアンテナ利得向上の点で好ましい。さらに、複数の線条導体の前記アンテナ導体側の先端部のうち最上位と最下位との間の基準方向に略直角な上下方向成分の距離に対して、開放端の前記上下方向成分の距離の総和が、30%以上であることが、band IIIのアンテナ利得向上の点で好ましい。特には、60%以上が好ましい。
【0039】
複数の線条導体のうちアンテナ導体側に対向した先端部を有する線条導体の全てが上下方向に平行な方向に全てオープン(開放端)になっていることが、アンテナ利得向上の点で好ましい。例えば、図9において、先端部21gと先端部22gとの間に、アンテナ導体に向けて開口している一つの開放端が形成されている。また、先端部55gと線条導体26との間に、アンテナ導体に向けて開口している一つの開放端が形成されている。
【0040】
また、独立導体20Dに含まれる複数の線条導体の中の隣り合う線条導体のうち、一方の線条導体のアンテナ導体500側の先端部が他方の線条導体と短絡線により接続されてなる短絡部を少なくとも一つ有してもよい。例えば、図9において、先端部21gと先端部22gとの間を第1の方向に平行な方向に延伸する短絡線により接続することによって一つの短絡部が形成される。また、先端部55gと線条導体26との間を短絡線により接続することによって一つの短絡部が形成される。
【0041】
この短絡部が形成される場合、所望の第1の放送周波数帯と第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、第1の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ01といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg1=λ01・kとするとき、複数の線条導体のアンテナ導体側の先端部のうち車両用窓ガラスの周縁部に最近接の先端部と接続する短絡線の第1の方向成分の長さは、0.027・λg1以下であることが、バンド3等の第1の放送周波数帯のアンテナ利得向上の点で好ましい結果が得られる。特には、0.022・λg1以下であることが好ましい。具体的には、複数の線条導体のアンテナ導体側の先端部のうち車両用窓ガラスの周縁部に最近接の先端部と接続する短絡線の第1の方向成分の長さは、25mm以下、特には20mm以下であることが、バンド3のアンテナ利得向上の点で好ましい。
【0042】
さらに、本発明において、所望の第1の放送周波数帯と該第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、前記第1の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ01といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg1=λ01・kとするとき、アンテナ導体に含まれる第2の方向に平行な方向に延伸するアンテナエレメントのうち車両用窓ガラスの周縁部に最近接のアンテナエレメントと、独立導体に含まれる複数の線条導体のうち該最近接のアンテナエレメントより該周縁部側に位置する最近接の線条導体とは、その最近接の線条導体を第1の方向に投影したときにその最近接のアンテナエレメントが0.043・λg1以下の長さで重複することが、バンド3等の第1の放送周波数帯のアンテナ利得向上の点で好ましい結果が得られる。特には、0.011・λg1以下であることが好ましい。具体的には、その重複長さは、40mm以下、特には10mm以下、更には重複しないことが、バンド3のアンテナ利得向上の点で好ましい。
【0043】
また本実施の形態のアンテナ導体は、第1の放送周波数帯と第2の放送周波数帯の両方の放送周波数帯でのアンテナ利得が高いアンテナパターンとして、図20に示されるような、図19のパターンに対してアンテナエレメントがさらに折り畳まれたアンテナパターンであってもよい。
【0044】
図20は、第1の放送周波数帯及び該第1の放送周波数帯より帯域が高い第2の放送周波数帯の電波受信用のアンテナ導体であるデュアルバンドの車両用ガラスアンテナ600の平面図である。図19と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。ガラスアンテナ600は、アンテナエレメント1,2,3,4と、アンテナエレメント4の第2の方向の延伸の終点である終端部4gを起点に第3の方向に延伸する第5のアンテナエレメントであるアンテナエレメント5と、アンテナエレメント5の第3の方向の延伸の終点である終端部5gを起点に第2の方向に対して逆向きの方向(図20では、第2の方向に対して平行で逆向きの方向、つまり第2の方向に対して180°反対の右方向)である第4の方向に終端部6gまで延伸する第6のアンテナエレメントであるアンテナエレメント6とを、アンテナ導体として備えた構造である。アンテナエレメント6は、給電部18やアンテナエレメント1に交差しないように、給電部18やアンテナエレメント1との間に間隙を設けて終端部6gまで延伸する。
【0045】
本発明の給電部18は、受信機に接続される給電線が電気的に接続される。給電線としてAV線を用いる場合は、給電部18と車両側に設置された増幅器とを接続し、増幅器のグランドにボディーアースをとる。このとき、AV線と給電部18とを電気的に接続するためのコネクタを給電部18に実装する構成にすることによって、AV線を給電部18に取り付けしやすくなる。
【0046】
窓ガラス12にアース部(不図示)を設ける場合には、給電部18に同軸ケーブルの内部導体を電気的に接続し、同軸ケーブルの外部導体とアース部とが電気的に接続される。同軸ケーブルと給電部18及びアース部とを電気的に接続するためのコネクタを給電部18に実装する構成にすることによって、同軸ケーブルを給電部18及びアース部に取り付けしやすくなる。
【0047】
給電部18に実装されるコネクタに給電部18から取り出せる受信信号を増幅するための増幅回路が内蔵されている場合には、その増幅回路のグランドを同軸ケーブルの外部導体等のグランド部位に電気的に接続し、その増幅回路の入力側に給電部18が電気的に接続され、その増幅回路の出力側に同軸ケーブルの内部導体が接続されるとよい。
【0048】
給電部18の形状は、給電部18に直接取り付けられる給電線の先端形状又は給電部18と給電線とを接続するための接続部材の形状(例えば、コネクタの実装面や接触端子の形状)に応じて決めるとよい。例えば、正方形、略正方形、長方形、略長方形などの方形状や多角形状が実装上好ましい。なお、円、略円、楕円、略楕円などの円状でもよい。
【0049】
上述したガラスアンテナには、補助アンテナ導体は付設されていない。しかし、これに限定されず、インピーダンスマッチング、位相調整及び指向性調整等のために、アンテナエレメントに接続導体を介して又は介さずに、略T字状、略L字状、ループ状等の補助アンテナエレメントが付設されていてもよい。
【0050】
また、アンテナ導体からなる導体層を合成樹脂製フィルムの内部又はその表面に設け、導体層付き合成樹脂製フィルムを窓ガラス板の車内側表面又は車外側表面に形成してガラスアンテナとしてもよい。さらに、アンテナ導体が形成されたフレキシブル回路基板を窓ガラス板の車内側表面又は車外側表面に形成してガラスアンテナとしてもよい。
【0051】
車両に対する窓ガラス板の取り付け角度は、水平方向に対し、15〜90°、特には、30〜90°が好ましい。
【0052】
アンテナ導体は、銀ペースト等の、導電性金属を含有するペーストを窓ガラス板の車内側表面にプリントし、焼付けて形成される。しかし、この形成方法に限定されず、銅等の導電性物質からなる、線状体又は箔状体を、窓ガラス板の車両側表面又は車外側表面に形成してもよく、窓ガラスに接着剤等により形成してもよく、窓ガラス自身の内部に設けてもよい。給電部18についても同様である。
【0053】
また、窓ガラスの面上に隠蔽膜を形成し、この隠蔽膜の上にアンテナ導体の一部分又は全体を設けてもよい。隠蔽膜は黒色セラミックス膜等のセラミックスが挙げられる。この場合、窓ガラスの車外側から見ると、隠蔽膜により隠蔽膜上に設けられているアンテナ導体の部分が車外から見えなくなり、デザインの優れた窓ガラスとなる。図示の構成では、給電部とアンテナ導体の少なくとも一部を隠蔽膜上に形成させることで、車外視において導体の細い直線部分のみを見ることになり、デザイン上好ましい。
【実施例1】
【0054】
AMガラスアンテナとデフォッガとの間の空白領域に図19に示すガラスアンテナ100のアンテナエレメント2が延伸しているパターンを実際のリアガラスに取り付けることにより、自動車用高周波ガラスアンテナを作製した。
【0055】
図2は、AMガラスアンテナの基本形状であるAMガラスアンテナ20Bを配置した場合のパターン図である。AMガラスアンテナ20Bの各部の基本寸法は、
w1 :375mm
w2 :335mm
w3〜w7 :20mm
w8 :40mm
w9 :20mm
w10 :10mm
w11 :1070mm
w12 :150mm
とする。w1は、複数の線条導体21〜26を各線条導体の中心付近で短絡する中間短絡線28と複数の線条導体21〜26を各線条導体の左側先端部同士(ガラスアンテナ100と反対側の先端部同士)を短絡する左側短絡線27との車幅方向の距離である。w2は、中間短絡線28と複数の線条導体21〜26を各線条導体の右側先端部同士を短絡する右側短絡線29との車幅方向の距離である。w3〜w7は、各線条導体間の距離である。w8は、AMガラスアンテナ20Bの線条導体のうち最低位の線条導体26とデフォッガ30のバスバ30bと30c間のヒータ線のうち最高位のヒータ線30aとの距離である。w9は、線条導体26とアンテナエレメント2との距離である。w10は、ガラスアンテナ100とAMガラスアンテナ20Aとの車幅方向の最短距離である(図2の場合、右側短絡線29とループエレメント5の左辺部5eとの距離である)。w11は、ヒータ線30aの長さである。w12は、車体開口部の上縁部15aとヒータ線30aとの距離である。なお、AMガラスアンテナ20Bの各アンテナエレメント及び短絡線の導体幅は0.8mmである。
【0056】
また、AMガラスアンテナの本発明の形状として、図1に示したAMガラスアンテナ20Aの場合の自動車用高周波ガラスアンテナと図3に示したAMガラスアンテナ20Cの場合の自動車用高周波ガラスアンテナとを作製した。
【0057】
AMガラスアンテナ20Aには、線条導体21〜26の右側先端部同士が接続されていないことにより(すなわち、図2の右側短絡線29を削除することにより)、ガラスアンテナ100に対して車幅方向に開口している開放端41〜45が形成されている。図1のパターンにおいて、寸法や左半分の形態は省略しているが、図2のパターンと同様である。
【0058】
AMガラスアンテナ20Cには、ガラスアンテナ100に対して車幅方向に開口している2つの開放端42,44が形成されている。すなわち、線条導体22と23とを短絡する短絡部分29bと線条導体24と25とを短絡する短絡部分29dとをAMガラスアンテナ20Cの車幅方向の中心部側に右側先端部からスライドした位置に配置させることにより、AMガラスアンテナ20Cの右端部にメアンダ形状を形成している。図3のパターンにおいて、寸法や左半分の形態は省略しているが、図2のパターンと同様である。図3のパターンの場合、右側先端部同士を接続する右側短絡線29a,29c,29eの上下方向の長さの総和は、最高位の線条導体21の右側先端部と最低位の線条導体26の右側先端部との間の上下方向の距離(言い換えれば、図2の右側短絡線29の全長)に対して、60%(=(3/5)×100[%])に相当する。なお、図1のパターンの場合は、0%に相当する。この場合、開放端の長さ総和が、最高位の線条導体21の右側先端部と最低位の線条導体26の右側先端部との間の上下方向の距離に対して、40%に相当する。
【0059】
次に、AMガラスアンテナの形態が互いに異なる図1,2,3のパターンを実際のリアガラスに取り付けることにより作製された自動車用高周波ガラスアンテナについて、それぞれの車両全周のアンテナ利得を測定し、平均アンテナ利得を算出した。
【0060】
このときの図18に示すガラスアンテナ100の各部の寸法は、
x1 :78mm
x2 :164mm
x6 :2mm
Lx :35mm
Ly :35mm
とする。なお、ガラスアンテナ100の各アンテナエレメントの導体幅は0.8mmである。
【0061】
アンテナ利得の測定は、窓ガラスを水平方向に対して15°傾斜させて取り付けられた自動車に対して電波を放射し、角度2°毎に自動車を360°回転させて測定した。電波は垂直偏波であり、周波数をバンド3とLバンドのそれぞれの範囲で10MHz毎に変化させた。電波の発信位置とアンテナ導体との仰角は水平方向(地面と平行な面を仰角=0°、天頂方向を仰角=90°とする場合、仰角=0°の方向)で測定した。アンテナ利得は、半波長ダイポールアンテナ(band III及びL bandの両方)を基準とし、半波長ダイポールアンテナが0dBとなるように標準化した。
【0062】
図4は、AMガラスアンテナの形態別の、ガラスアンテナ100のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。「Open」は図1のパターンの場合、「Short」は、図2のパターンの場合、「Meander」は図3のパターンの場合、「Without-AM」はAMガラスアンテナ自体が設けられていない場合を示す。図4に示されるように、ガラスアンテナ100に対して無給電導体に相当するAMガラスアンテナを、アンテナエレメント2の上側且つアンテナエレメント1の左側に設けると、バンド3でのアンテナ利得を高く保ったまま、Lバンドでのアンテナ利得が改善している。これらのパターンの中でも、ガラスアンテナ100のアンテナ利得の向上の点で、AMガラスアンテナの右端部の右側短絡線の少なくとも一部が開放端(オープン)になっているものがよく(図3のパターン)、特に右端部がすべてオープンになっているものがよい(図1のパターン)。
【実施例2】
【0063】
続いて、実施例1で好ましい結果が得られた図1と図3のパターンについて、AMガラスアンテナとガラスアンテナ100との最短距離w10(図2参照)を変化させて、ガラスアンテナ100の車両全周のアンテナ利得を測定し、平均アンテナ利得を算出した。このとき、AMガラスアンテナ自体が設けられていない場合「Without-AM」のアンテナ利得を基準として、「Without-AM」のアンテナ利得が0dBとなるように算出した。
【0064】
図5は、最短距離w10を変化させたときの、図1のパターンのガラスアンテナ100のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。図6は、最短距離w10を変化させたときの、図3のパターンのガラスアンテナ100のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。なお、図5,6において、縦軸のアンテナ利得は、バンド3に対応する周波数として170〜240MHzにおける10MHz毎のアンテナ利得の平均値、及びLバンドに対応する周波数として1450〜1490MHzにおける10MHz毎のアンテナ利得の平均値を示している。
【0065】
図5,6に示されるように、図1のパターンでも図3のパターンでも、最短距離w10を大きくするにしたがってアンテナ利得が増加している。特に、図6に示されるように、図3のパターンの場合、最短距離w10を大きくするにしたがってLバンドでのアンテナ利得が顕著に増加する。したがって、AMガラスアンテナを設けた場合には、AMガラスアンテナとガラスアンテナ100との車幅方向の最短距離を10mm以上(特には、20mm以上)にすることによって、優れたアンテナ利得が得られる。
【実施例3】
【0066】
続いて、図2のAMガラスアンテナ20Bの右側短絡線29の長さHbを変化させて、ガラスアンテナ100の車両全周のアンテナ利得を測定し、実施例2と同様に平均アンテナ利得を算出した。この場合、線条導体21〜26の位置や長さを変化させずに、AMガラスアンテナ20Bの右側端部に設けられた開口部の間口を上側から徐々に広くしていくことによって(右側短絡線29を上側から徐々に切除していくことによって)、右側短絡線29の長さHbを変化させている。
【0067】
図7は、右側短絡線29の長さHbを変化させたときの、ガラスアンテナ100のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。なお、図7において、縦軸のアンテナ利得は、バンド3に対応する周波数として170〜240MHzにおける10MHz毎のアンテナ利得の平均値、及びLバンドに対応する周波数として1450〜1490MHzにおける10MHz毎のアンテナ利得の平均値を示している。また、長さHbが100mmのときが、図2のAMガラスアンテナ20Bのパターンの形状を示し、長さHbが0mmのときが、図1のAMガラスアンテナ20Aのパターンの形状を示している。
【0068】
図7に示されるように、右側短絡線29を上側から徐々に切除して長さHbを短くしていくにしたがって、Lバンドでのアンテナ利得を高く保ったまま、バンド3でのアンテナ利得が向上している。したがって、AMガラスアンテナを設けた場合には、線条導体21〜26の先端部同士を接続する短絡線の第1の方向成分の長さの総和Hbが、最高位の線条導体21の右側先端部と最低位の線条導体26の右側先端部との上下方向成分の長さHに対して70%以下にすることによって、優れたアンテナ利得が得られる。言い換えれば、AMガラスアンテナ20Bの右側端部に設けられた開口端の間口が、最高位の線条導体21の右側先端部と最低位の線条導体26の右側先端部との上下方向成分の長さHに対して30%以上(特には、60%以上)にすることによって、優れたアンテナ利得が得られる。
【0069】
図8は、右側短絡線29の長さHbとその配置場所の違いによる、ガラスアンテナ100の車両全周のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。アンテナ利得の算出は、実施例2と同じ方法である。「上端から20mm短絡」は、車体開口部の上縁部15aに近接している線条導体21と線条導体22のみを右側短絡線29で接続させ、線条導体22〜26は開放端とした場合である。「上端から20mm開口」は、車体開口部の上縁部15aに近接している線条導体21と線条導体22のみを開口させて、線条導体22〜26は右側短絡線29によって互いに接続させた場合である。
【0070】
図8に示されるように、車体開口部の上縁部15aに近接している線条導体21が右側短絡線29と接続すると、線条導体22〜26が開放端となっていてもバンド3が悪化することがわかる。一方、線条導体21と線条導体22とが開放端となることにより、線条導体22〜26が右側短絡線29と接続していたとしてもバンド3は向上する。つまり、車体開口部の上縁部15aに近接している線条導体21が右側短絡線29と接続する場合は右側短絡線29の長さを短くすることが好ましい。
【0071】
したがって、所望の第1の放送周波数帯と第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、第2の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ02といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg2=λ02・kとするとき、車体開口部の上縁部15aに近接している線条導体21と接続する短絡線の第1の方向成分の長さが、図8に基づいて、0〜0.19・λg2、特には0〜0.15・λg2であることが、アンテナ利得向上の点で好ましい。具体的には、短絡線の長さが、0mm〜25mm、特には0mm〜20mmであることが、アンテナ利得向上の点で好ましい。
【実施例4】
【0072】
続いて、図19に示すガラスアンテナ500が独立導体20Dで囲まれるパターンを実際のリアガラスに取り付けた自動車用高周波ガラスアンテナを作製し、独立導体20Dの短絡部を変化させて、ガラスアンテナ500の車両全周のアンテナ利得を測定し、平均アンテナ利得を測定した。図9の独立導体20Dの各部の基本寸法は、
w1 :375mm
w2 :200mm
w3〜w7 :20mm
w8 :20mm
w9 :10mm
w10 :10mm
w11 :1070mm
w12 :150mm
w13 :130mm
w14 :30mm
w15 :175mm
w16 :10mm
w17 :10mm
とする。w1は、複数の線条導体21〜26を各線条導体の中心付近で短絡する中間短絡線28と複数の線条導体21〜26を各線条導体の左側先端部同士(ガラスアンテナ500側と反対側の先端部同士)を短絡する左側短絡線27との車幅方向の距離である。w2は、中間短絡線28と線条導体21(22)の先端部21g(22g)との車幅方向の距離である。w3〜w7は、各線条導体間の間隔長である(線条導体51〜55,26についても同様)。w8は、独立導体20Dの線条導体のうち最低位の線条導体26とデフォッガ30のバスバ30bと30c間のヒータ線のうち最高位のヒータ線30aとの距離である。w9は、線条導体26とアンテナエレメント2との距離である。w10は、ガラスアンテナ500のアンテナエレメント4と独立導体20Dの線条導体21との車幅方向の最短距離である(図9の場合、先端部21g(22g)と先端部4gとの距離である)。w11は、ヒータ線30aの長さである。w12は、車体開口部の上縁部15aとヒータ線30aとの距離である。w13は、先端部21g,22gと先端部23g〜25gとの距離である。w14は、先端部23g〜25gと先端部51g〜55gとの距離である。w15は、複数の線条導体51〜55,26を各線条導体の右側先端部同士を短絡する右側短絡線29と先端部51g〜55gとの距離である。w16は、先端部23g〜25gとアンテナエレメント3との距離である。w17は、先端部51g〜55gとアンテナエレメント1との距離である。なお、AMガラスアンテナ20Dの各アンテナエレメント及び短絡線の導体幅は0.8mmである。
【0073】
また、独立導体のその他の形状として、図10に示したAMガラスアンテナ20E〜20Hの形状をガラスアンテナ500のパターンの周囲に取り付けた自動車用高周波ガラスアンテナを作製した。図10の各パターンにおいて、符号や寸法や左半分の形態は一部省略しているが、その省略部分は図9のパターンと同様である。
【0074】
図9,10に示したこれらの5種類のAMガラスアンテナのパターンを実際のリアガラスに取り付けることにより作製された自動車用高周波ガラスアンテナについて、それぞれの車両全周のアンテナ利得を測定し、平均アンテナ利得を算出した。アンテナ利得の測定は、実施例1と同じ方法である。
【0075】
このときの図19に示すガラスアンテナ500の各部の寸法は、
x1 :107mm
x2 :10mm
x3 :70mm
x4 :130mm
とする。なお、ガラスアンテナ500の各アンテナエレメントの導体幅は0.8mmである。
【0076】
図11は、独立導体の形態別の、ガラスアンテナ500のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。「0」は、各線条導体のガラスアンテナ500のパターン側の先端部の全てが第1の方向に平行な方向に直流的に短絡されていないことにより、ガラスアンテナ500に対して車幅方向に開口している開放端が形成されている図9のパターンの場合である。「20」は、車体開口部の上縁部15aに最近接の先端部21g(51g)と線条導体22(52)とを短絡線で接続させることにより短絡部が形成されて、線条導体22と線条導体26との間及び線条導体52と線条導体26との間に開放端が形成されている図10(d)のパターンの場合である。「40」は、車体開口部の上縁部15aに最近接の先端部21g(51g)と線条導体22,23(52,53)とを短絡線で接続させることにより短絡部が形成されて、線条導体23と線条導体26との間及び線条導体53と線条導体26との間に開放端が形成されている図10(c)のパターンの場合である。「80」は、車体開口部の上縁部15aに最近接の先端部21g(51g)を有する線条導体21(51)と線条導体22(52)との間に開放端が形成されて、線条導体22と線条導体26との間及び線条導体52と線条導体26との間に短絡部が形成されている図10(b)のパターンの場合である。「100」は、各線条導体のガラスアンテナ500のパターン側の先端部の全てが第1の方向に平行な方向に直流的に短絡されていることにより、開放端が無く全ての先端部に短絡部が形成された図10(a)のパターンの場合である。
【0077】
図10(a)のパターンの場合、複数の線条導体の中の隣り合う線条導体の間に形成されたアンテナ導体側に開口している開口部の第1の方向成分の長さをその複数の線条導体の中の各隣り合う線条導体の全てについて総和した長さに対して、その開口部の第1の方向成分の長さを短絡線により閉じられた開口部(すなわち、短絡部)の全てについて総和した長さが、100%に相当する。図10(b)の場合は、80%に相当する。図10(c)の場合は、40%に相当する。図10(d)の場合は、20%に相当する。
【0078】
図11に示されるように、車体開口部の上縁部15aに近接している線条導体21(51)が短絡線と接続されていると(図11の「20」の場合)、線条導体22〜26(52〜26)同士の間が開放端となっていても、全て開放端である場合(図11の「0」の場合)に比べ、バンド3が悪化していることがわかる。一方、線条導体21(51)と線条導体22(52)との間が開放端となることにより、線条導体22〜26(52〜56)が短絡線と接続していたとしてもバンド3は向上する(図11の「80」の場合)。つまり、車体開口部の上縁部15aに近接している線条導体21(51)の先端部21g(51g)が短絡線と接続する場合、当該短絡線の長さを短くすることが好ましい。
【0079】
したがって、所望の第1の放送周波数帯と該第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、前記第2の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ01といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg1=λ01・kとするとき、車両用窓ガラス12の周縁部12aに最近接の先端部21g(51g)と接続する短絡線の第1の方向成分の長さは、0.027・λg1以下、特には0.022・λg1以下であることが、バンド3のアンテナ利得向上の点で好ましい。具体的には、25mm以下、特には20mm以下であることが好ましい。
【実施例5】
【0080】
続いて、実施例4で好ましい結果が得られた図9のパターンについて、図12に示されるように、最高位の線条導体21とアンテナエレメント4とが上下方向にオーバーラップしている重複長さw18を変化させて、ガラスアンテナ500の車両全周のアンテナ利得を測定し、平均アンテナ利得を算出した。
【0081】
図13は、距離w18を変化させたときの、ガラスアンテナ500のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。なお、縦軸のアンテナ利得は、バンド3に対応する周波数として170〜240MHzにおける10MHz毎のアンテナ利得の平均値、及びLバンドに対応する周波数として1450〜1490MHzにおける10MHz毎のアンテナ利得の平均値を示している。
【0082】
図13に示されるように、重複長さw18を短くするにしたがってアンテナ利得が増加している。特に、重複長さw18を40mm以下にすることによって、特には重複長さw18を10mm以下にすることによって、バンド3でのアンテナ利得は向上する。そして、重複長さw18が0mm未満、すなわちオーバーラップさせないことが、バンド3でのアンテナ利得向上の点で更に好ましい。
【実施例6】
【0083】
続いて、図20に示すガラスアンテナ600が独立導体20Iで囲まれるパターンと独立導体自体が設けられていないパターンとをそれぞれ実際のリアガラスに取り付けた自動車用高周波ガラスアンテナを作製し、独立導体20Iの短絡部を変化させて、ガラスアンテナ600の車両全周のアンテナ利得を測定し、平均アンテナ利得を測定した。アンテナ利得の測定は、実施例1と同じ方法である。
【0084】
独立導体20I自体が設けられていない図20のパターンの場合のガラスアンテナ600の各部の寸法は、
x1 :107mm
x2 :20mm
x3 :70mm
x4 :50mm
x5 :20mm
x6 :50mm
とする。なお、ガラスアンテナ600の各アンテナエレメントの導体幅は0.8mmである。
【0085】
図14は、独立導体20Iを配置した場合のパターン図である。独立導体20Iの各部の基本寸法は、
w2 :270mm
w13 :50mm
w14 :40mm
とする。それ以外の寸法は、図9と同様である。
【0086】
図15は、独立導体の形態別の、ガラスアンテナ600のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。「Open」は、各線条導体のガラスアンテナ600のパターン側の先端部の全てが第1の方向に平行な方向に直流的に短絡されていないことにより、ガラスアンテナ600に対して車幅方向に開口している開放端が形成されている図14のパターンの場合である。「Short」は、図14のパターンにおいて、各線条導体のガラスアンテナ600のパターン側の先端部の全てが第1の方向に平行な方向に直流的に短絡されていることにより、開放端が無い場合である。「Without-AM」は独立導体自体が設けられていない図20のパターンの場合である。
【0087】
図15に示されるように、独立導体自体を設けない場合のガラスアンテナ600を基準にすると、独立導体をアンテナエレメント3の左側及びアンテナエレメント1の右側に設けた場合、独立導体の形態によってバンド3とLバンドのアンテナ利得が向上しないことがある。実施例6の場合、独立導体の先端部が全て短絡されているパターンだと、独立導体自体を設けない場合に比べてアンテナ利得が悪くなるが、独立導体の先端部が全て開放端であるパターンにすることによって、独立導体自体を設けない場合と同等までバンド3とLバンドのアンテナ利得改善し、好ましい。
【実施例7】
【0088】
さらに、図16に示されるように、アンテナ導体を独立導体で囲ってもよい。独立導体20Jの線条導体21がアンテナエレメント6の上縁部側の空白領域に延伸している。
【0089】
独立導体20J自体が設けられていない図20のパターンの場合のガラスアンテナ600の各部の寸法は、
x1 :107mm
x2 :10mm
x3 :60mm
x4 :65mm
x5 :10mm
x6 :65mm
とする。なお、ガラスアンテナ600の各アンテナエレメントの導体幅は0.8mmである。
【0090】
図16における独立導体20Jの各部の基本寸法は、
w13 :65mm
w14 :30mm
とする。それ以外の省略部分については、実施例6と同様である。
【0091】
図17は、独立導体がない場合と独立導体で四方を囲まれた場合の、ガラスアンテナ600のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。「Open」は、各線条導体のガラスアンテナ600のパターン側の先端部の全てが第1の方向に平行な方向に直流的に短絡されていないことにより、ガラスアンテナ600に対して車幅方向に開口している開放端が形成されている図16のパターンの場合である。「Without-AM」はAMガラスアンテナ自体が設けられていない図20のパターンの場合である。
【0092】
図17に示されるように、アンテナ導体600側を全て開放端にすることによって、独立導体自体がない場合に比べ、バンド3とLバンドの両方のアンテナ利得が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】AMガラスアンテナ20Aを配置した場合のパターン図である。
【図2】AMガラスアンテナの基本形状であるAMガラスアンテナ20Bを配置した場合のパターン図である。
【図3】AMガラスアンテナ20Cを配置した場合のパターン図である。
【図4】AMガラスアンテナの形態別の、ガラスアンテナ100のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。
【図5】最短距離w10を変化させたときの、図1のパターンのガラスアンテナ100のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。
【図6】最短距離w10を変化させたときの、図3のパターンのガラスアンテナ100のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。
【図7】右側短絡線29の長さHbを変化させたときの、ガラスアンテナ100のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。
【図8】右側短絡線29の長さHbとその配置場所の違いによる、ガラスアンテナ100のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。
【図9】ガラスアンテナ500とAMガラスアンテナのパターン図である。
【図10】ガラスアンテナ500とAMガラスアンテナのパターン図である。
【図11】AMガラスアンテナの形態別の、ガラスアンテナ500のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。
【図12】最高位の線条導体21とアンテナエレメント4とがオーバーラップしている形態図である。
【図13】距離w18を変化させたときの、ガラスアンテナ500のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。
【図14】ガラスアンテナ600とAMガラスアンテナのパターン図である。
【図15】短絡場所の違いによる、ガラスアンテナ600のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。
【図16】ガラスアンテナ600の全周が囲まれているパターン図である。
【図17】AMガラスアンテナの有無による、ガラスアンテナ600のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。
【図18】車両用ガラスアンテナ100の平面図である。
【図19】車両用ガラスアンテナ500の平面図である。
【図20】車両用ガラスアンテナ600の平面図である。
【符号の説明】
【0094】
1〜6 アンテナエレメント
5 ループエレメント(ガラスアンテナ100の場合)
5e 左辺部
6 接続エレメント(ガラスアンテナ100の場合)
12 窓ガラス
13 空白領域
15 窓の車体開口縁
18 給電部
20,20A〜20J 独立導体(AMアンテナ)
21〜26,51〜55 線条導体(AMアンテナのアンテナエレメント)
27 左側短絡線
28 中間短絡線
29 右側短絡線
30 デフォッガ
40 デジタルテレビ放送用アンテナ
41〜45 開口部(開放端)
100〜600 ガラスアンテナ(又は、アンテナ導体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ導体及び給電部が車両用窓ガラスに設けられた車両用ガラスアンテナに関する。また、その車両用ガラスアンテナを備えた車両用窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、デジタルオーディオ放送(Digital Audio Broadcasting:DAB)を受信可能な車両用ガラスアンテナが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。DABは、174〜240MHzのband III(バンド3)と1452〜1492MHzのL band(Lバンド)の2つの異なる周波数帯から構成されている。
【特許文献1】特開平10−327009号公報
【特許文献2】特開2000−307321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、車両用窓ガラスに設けられたアンテナ導体が所望の帯域に対応可能な十分な受信性能を持つ車両用ガラスアンテナを設計・製造することは容易ではない。特に、上述のDABのように周波数帯域がデュアルバンドの場合、帯域が離れているため、両方の帯域に対応可能な十分な受信性能を持つ車両用ガラスアンテナを設計・製造することは難しい。
【0004】
そこで、本発明は、所望の帯域に対応できる受信特性が得られる、車両用ガラスアンテナ及び該車両用ガラスアンテナを備えた車両用窓ガラスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る車両用ガラスアンテナは、
アンテナ導体と、給電部と、前記アンテナ導体に離間した独立導体とが車両用窓ガラスに設けられており、
前記独立導体が基準方向に並走する複数の線条導体を備える、車両用ガラスアンテナであって、
前記複数の線条導体の隣り合う線条導体のうち一方の線条導体の前記アンテナ導体側の先端部ともう一方の線条導体との間に、前記アンテナ導体に向けて開口している開放端を、少なくとも一組の前記隣り合う線条導体について有することを特徴とする。
【0006】
さらに、本発明は、本発明に係る車両用ガラスアンテナを備えた車両用窓ガラスを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、所望の帯域に対応できる受信特性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。なお、形態を説明するための図面において、方向について特に記載しない場合には図面上での方向をいうものとする。また、それらの図面は、窓ガラスが車両に取り付けられた状態での車内視(又は、車外視)の図であり、図面上での左右方向が水平方向に相当する。また、例えば、窓ガラスが車両の後部に取り付けられるリアガラスである場合、図面上での左右方向が車幅方向に相当する。なお、本発明は、リアガラスに限定されず、車両の前部に取り付けられるフロントガラス、車両の側部に取り付けられるサイドガラスであってもよい。
【0009】
図1(車内視又は車外視)は、リアガラス12に本発明に係るガラスアンテナが設けられている実施形態であって、リアガラス12の右上側領域を示している。リアガラス12にアンテナ導体100と、複数本のヒータ線と、該複数本のヒータ線に給電する複数本(図1では1本のみ記載)のバスバとが設けられ、該複数本のヒータ線と該複数本のバスバとでデフォガ30が構成されている。
【0010】
アンテナ導体100について、図18を用いて説明する。図18は、第1の放送周波数帯及び該第1の放送周波数帯より帯域が高い第2の放送周波数帯の電波受信用の車両用ガラスアンテナ100の平面図である。車両用ガラスアンテナ100は、アンテナ導体及び給電部を車両用窓ガラス12に設けた車両用ガラスアンテナである。車両用ガラスアンテナ100は、ループ状に形成されたループエレメント5と、ループエレメント5上の点である第1の点5aを起点に水平方向に略直角である第1の方向に延伸する第1のアンテナエレメントであるアンテナエレメント1と、アンテナエレメント1の第1の方向への延伸の終点である第1の終端部1gを起点に第1の方向に対して略直角な方向である第2の方向に延伸する第2のアンテナエレメントであるアンテナエレメント2とからL字状に構成されるL字エレメントと、ループエレメント5上の点である第2の点5bを起点に、そのL字エレメントから離れる方向である第3の方向(図18では、第1の方向と180°反対方向)に延伸して給電部18に接続点6aで接続される接続エレメント6とを、アンテナ導体として備えた構造である。なお、L字状とは、L字の左右対称となった形状も含み、角は曲率を有して折れ曲がっていてもよい。また終端部とは、アンテナエレメントの延伸する終端であってもよいし、その終端手前の導体部分である終端近傍であってもよい。
【0011】
車両用ガラスアンテナ100は、単極(モノポール)アンテナであって、アンテナ導体により得られる受信信号が正極側(ホット側)の給電部18から取り出し可能になっており、その受信信号が受信機(不図示)に伝達される。単極アンテナの場合、窓ガラス12が取り付けられる車両の車体開口部やその近傍部がグランドとして使用可能な部位であるとよい(いわゆるボディーアースがとれる)。図18の場合、車体開口部の上縁部15aの近傍に配置されている。
【0012】
図18は、方形状の給電部18を示している。給電部18の下辺上に接続エレメント6との接続点6aが位置する。図18の接続点6aは、給電部18の下辺の中心点であるが、下辺上の任意の位置でもよく、給電部18の右辺又は左辺と下辺の交点としてもよい。接続エレメント6は、給電部18とループエレメント5とが離間されている方向に延設され、給電部18とループエレメント5とを接続する。
【0013】
ループエレメント5は、ループ状に形成されたアンテナ導体である。ループ状とは、同一の線幅で形成されたループ形状だけでなく、一部線幅が太くなっていてもよく、ループ状に形成されていればよい。ループエレメントの形状は、円、略円、楕円、略楕円などの円状でもよいし、正方形、略正方形、長方形、略長方形、平行四辺形、略平行四辺形、ひし形、略ひし形などの方形状や多角形状でもよい。図18のループエレメント5の形状は、正方形である。ループエレメント5の導体部上に、アンテナエレメント1との接続点5aと接続エレメント6との接続点5bとが位置する。ループエレメント5の重心を通る水平方向の仮想直線に対して、接続点5aは一方の側(下側)に位置し、接続点5bは他方の側(上側)に位置する。図18の接続点5aと5bは、第1の方向に平行な直線上に位置している。また、図18の接続点5bは、ループエレメント5の上辺の中心点であるが、上辺上の任意の位置でもよく、ループエレメント5の左辺又は右辺と上辺との交点としてもよい。
【0014】
また、接続エレメント6との接続点5bは、ループエレメント5の右辺又は左辺上の任意の位置でもよい。
【0015】
アンテナエレメント1は、接続点5aを起点に下方向(第1の方向)に終端部1gを終点として延伸されればよい。図18の接続点5aは、ループエレメント5の下辺の中心点であるが、下辺上の任意の位置でもよく、ループエレメント5の左辺又は右辺と下辺との交点としてもよい。
【0016】
アンテナエレメント2は、終端部1gを起点に左方向(第2の方向)に終端部2gを終点として延伸されればよい。右方向(すなわち、第2の方向と180°反対方向)に延伸されてもよい。アンテナエレメント2の延伸方向(第2の方向)は、窓ガラス12が車体開口部に取り付けられている状態において、水平方向に平行又は略平行であることが、平行でない場合に比べアンテナ利得向上の点で好適である。
【0017】
図1において、30aは最高位のヒータ線、30bはバスバである。また、20Aは、デフォッガ30の上側余白領域に配置されたAM放送受信用のガラスアンテナの一例である。
【0018】
車両用窓ガラス12には、アンテナ導体100に直流的に接続されず且つ近接している独立導体(図1の場合、AMガラスアンテナ20A)とが、アンテナエレメント2より車両用窓ガラスの周縁部側の空白領域に設けられていると、Lバンドのアンテナ利得向上の点で好適である。独立導体は、基準方向(図1では、第2の方向)に並走し且つ給電部18と異なる第2の給電部(図1には不図示だが、例えば、AMガラスアンテナ20Aの左端部に設けられた給電部)に電気的に接続される複数の線条導体を備える場合、AM放送の周波数帯の受信に利用できる点で好ましい。
【0019】
独立導体20Aは、基準方向に並走する複数の線条導体(21〜26)を備える。本発明においては、複数の線条導体の隣り合う線条導体のうち一方の線条導体のアンテナ導体100側の先端部ともう一方の線条導体との間に、アンテナ導体100に向けて開口している開放端を、少なくとも一組の隣り合う線条導体有することが、band IIIのアンテナ利得向上の点で好ましい。さらに、複数の線条導体の前記アンテナ導体側の先端部のうち最上位と最下位との間の基準方向に略直角な上下方向成分の距離に対して、開放端の前記上下方向成分の距離の総和が、30%以上であることが、band IIIのアンテナ利得向上の点で好ましい。特には、60%以上が好ましい。
【0020】
図1の例においては、複数の線条導体のうちアンテナ導体側に対向した先端部を有する線条導体の全てが上下方向に平行な方向に直流的に接続されていない、つまり、図1に例示されるように、全てオープン(開放端)になっていることが、アンテナ利得向上の点で好ましい。各開放端は、アンテナ導体に向けて車幅方向に開口した部位であり、複数の線条導体の中の隣り合う線条導体のうち一方の線条導体のアンテナ導体側の先端部ともう一方の線条導体との間に設けられている。
【0021】
複数の線条導体の隣り合う線条導体同士が、この隣り合う線条導体の少なくとも一方のアンテナ導体側の先端部を起点として短絡線により接続される短絡部を有していてもよい。
【0022】
この短絡部が形成される場合、所望の第1の放送周波数帯と第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、第1の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ01といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg1=λ01・kとするとき、複数の線条導体のアンテナ導体側の先端部のうち車両用窓ガラスの周縁部に最近接の先端部と接続する短絡線の基準方向に略直角な上下方向成分の長さは、0.027・λg1以下であることが、バンド3等の第1の放送周波数帯のアンテナ利得向上の点で好ましい結果が得られる。特には、0.022・λg1以下であることが好ましい。
【0023】
例えば、第1の放送周波数帯としてバンド3(174〜240MHz)を設定した場合、その中心周波数は207MHzであり、207MHzにおけるλg1は927.5mmであり、また、第2の放送周波数帯としてLバンド(1452〜1492MHz)を設定した場合、その中心周波数は1472MHzであり、1472MHzにおけるλg2は130.4mmである。よって、具体的には、複数の線条導体のアンテナ導体側の先端部のうち車両用窓ガラスの周縁部に最近接の先端部と接続する短絡線の第1の方向成分の長さは、25mm以下、特には20mm以下であることが、バンド3のアンテナ利得向上の点で好ましい。
【0024】
さらに、所望の第1の放送周波数帯と第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、第2の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ02といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg2=λ02・kとするとき、アンテナ導体と独立導体との同一水平面での間隔における基準方向成分の最小値が、0.008・λg2〜0.39・λg2、特には0.008・λg2〜0.23・λg2であることが、アンテナ導体のアンテナ利得向上の点で好ましい。
【0025】
したがって、具体的には、アンテナ導体と独立導体との同一水平面での間隔における第2の方向成分の最小値が、1mm〜50mm、特には1mm〜30mmであることが、アンテナ導体のアンテナ利得向上の点で好ましい。
【0026】
また図1の例では、アンテナエレメント2とヒータ線30aとの間の空白領域にアンテナエレメント2が延伸するようにガラスアンテナが配置されると、アンテナ利得向上の点で好適である。
【0027】
次に本発明の他の実施の形態について説明する。第1の放送周波数帯と第2の放送周波数帯の両方の放送周波数帯でのアンテナ利得が高いアンテナパターンとして、図19のアンテナ導体500に近接して囲むような形状の独立導体20Dが追加されたアンテナパターンであってもよい。本発明において、独立導体20Dはアンテナ導体500の第2の方向側のみに近接して設けられていても良いし、第4の方向側のみに近接して設けられていてもよい。
【0028】
ここで、アンテナ導体500について図19を用いて説明する。図19は、第1の放送周波数帯及び該第1の放送周波数帯より帯域が高い第2の放送周波数帯の電波受信用のアンテナ導体であるデュアルバンドの車両用ガラスアンテナ500の平面図である。車両用ガラスアンテナ500は、アンテナ導体及び給電部を車両用窓ガラス12に設けた車両用ガラスアンテナである。車両用ガラスアンテナ500は、給電部18を起点に水平方向に略直角である第1の方向に延伸する第1のアンテナエレメントであるアンテナエレメント1と、アンテナエレメント1の第1の方向への延伸の終点である終端部1gを起点に第1の方向に対して略直角な方向(すなわち、水平方向)である第2の方向に延伸する第2のアンテナエレメントであるアンテナエレメント2と、アンテナエレメント2の第2の方向の延伸の終点である終端部2gを起点に第1の方向に対して逆向きの方向(図19では、第1の方向に対して平行で逆向きの方向、つまり第1の方向に対して180°反対の上方向)である第3の方向に延伸する第3のアンテナエレメントであるアンテナエレメント3と、アンテナエレメント3の第3の方向の延伸の終点である終端部3gを起点に第2の方向に終端部4gまで延伸する第4のアンテナエレメントであるアンテナエレメント4とを、アンテナ導体として備えた構造である。なお、アンテナ導体の角は曲率を有して折れ曲がっていてもよい。また終端部とは、アンテナエレメントの延伸する終端であってもよいし、その終端手前の導体部分である終端近傍であってもよい。
【0029】
アンテナエレメント1は、接続点1sを起点に下方向(第1の方向)に終端部1gを終点として延伸されればよい。
【0030】
アンテナエレメント2は、終端部1gを起点に左方向(第2の方向)に終端部2gを終点として延伸されればよい。右方向(すなわち、第2の方向と180°反対方向)に延伸されてもよい。アンテナエレメント2の延伸方向(第2の方向)は、窓ガラス12が車体開口部に取り付けられている状態において、水平方向に平行又は略平行であることが、平行でない場合に比べアンテナ利得向上の点で好適である。
【0031】
アンテナエレメント3は、終端部2gを起点に上方向(第3の方向)に終端部3gを終点として延伸されればよい。
【0032】
アンテナエレメント4は、終端部3gを起点に左方向(第2の方向)に終端部4gを終点として延伸されればよい。アンテナエレメント2が右方向に延伸されている場合には、アンテナエレメント4はアンテナエレメント2の延伸方向と同じ右方向に延伸されればよい。
【0033】
図9において独立導体20Dは、アンテナ導体500に対して無給電導体に相当する。独立導体20Dは、例えば、デフォッガ30の上側余白領域に配置されたAM放送受信用のAMガラスアンテナであってもよい。
【0034】
すなわち、アンテナ導体500と直流的に接続されず、かつ近接している独立導体20D(図9の場合、AMアンテナ)が車両用窓ガラス12の空白領域に設けられており、その独立導体20Dがアンテナエレメント3より第2の方向側の空白領域とアンテナエレメント1より第4の方向側の空白領域に設けられていると、バンド3及びLバンドのアンテナ利得向上の点で好適である。
【0035】
この独立導体20Dは、基準方向(図9の例では、第2の方向)に平行な方向に並走し且つ給電部18と異なる第2の給電部(図9には不図示だが、例えば、AMアンテナの給電部)に電気的に接続される複数の線条導体を備える場合、AM放送の周波数帯の受信に利用できる点で好ましい。
【0036】
図9において、独立導体20DであるAMアンテナのアンテナパターンは、アンテナ導体500の第1の方向側と第2の方向側と第4の方向側とをわたって取り囲むパターンである。すなわち、アンテナ導体500は、第1の方向側と第2の方向側と第4の方向側とがAMアンテナのパターンによって囲まれた空白領域13に配置されている。
【0037】
独立導体20Dは、アンテナエレメント3より第2の方向側の空白領域に配置された複数の線条導体(21〜26)から構成される第1の線条導体群と、アンテナエレメント1より第4の方向側の空白領域に配置された複数の線条導体(51〜55,26)から構成される第2の線条導体群とを備える。線条導体26は、第2の方向側の空白領域と第4の方向側の空白領域の両方に配置されるように、アンテナエレメント2とデフォッガ30との間の空白領域を通過している。アンテナ導体500が配置されている空白領域13は、第1の線条導体群と第2の線条導体群とによって囲まれている。また、21g〜25gは、線条導体21〜25の第4の方向の延伸の終点であるアンテナ導体500側の先端部(終端部)である。51g〜55gは、線条導体51〜55の第2の方向の延伸の終点であるアンテナ導体500側の先端部(終端部)である。
【0038】
本実施の形態についても前述の実施の形態と同様に複数の線条導体の隣り合う線条導体のうち一方の線条導体のアンテナ導体100側の先端部ともう一方の線条導体との間に、アンテナ導体100に向けて開口している開放端を、少なくとも一組の隣り合う線条導体有することが、band IIIのアンテナ利得向上の点で好ましい。さらに、複数の線条導体の前記アンテナ導体側の先端部のうち最上位と最下位との間の基準方向に略直角な上下方向成分の距離に対して、開放端の前記上下方向成分の距離の総和が、30%以上であることが、band IIIのアンテナ利得向上の点で好ましい。特には、60%以上が好ましい。
【0039】
複数の線条導体のうちアンテナ導体側に対向した先端部を有する線条導体の全てが上下方向に平行な方向に全てオープン(開放端)になっていることが、アンテナ利得向上の点で好ましい。例えば、図9において、先端部21gと先端部22gとの間に、アンテナ導体に向けて開口している一つの開放端が形成されている。また、先端部55gと線条導体26との間に、アンテナ導体に向けて開口している一つの開放端が形成されている。
【0040】
また、独立導体20Dに含まれる複数の線条導体の中の隣り合う線条導体のうち、一方の線条導体のアンテナ導体500側の先端部が他方の線条導体と短絡線により接続されてなる短絡部を少なくとも一つ有してもよい。例えば、図9において、先端部21gと先端部22gとの間を第1の方向に平行な方向に延伸する短絡線により接続することによって一つの短絡部が形成される。また、先端部55gと線条導体26との間を短絡線により接続することによって一つの短絡部が形成される。
【0041】
この短絡部が形成される場合、所望の第1の放送周波数帯と第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、第1の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ01といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg1=λ01・kとするとき、複数の線条導体のアンテナ導体側の先端部のうち車両用窓ガラスの周縁部に最近接の先端部と接続する短絡線の第1の方向成分の長さは、0.027・λg1以下であることが、バンド3等の第1の放送周波数帯のアンテナ利得向上の点で好ましい結果が得られる。特には、0.022・λg1以下であることが好ましい。具体的には、複数の線条導体のアンテナ導体側の先端部のうち車両用窓ガラスの周縁部に最近接の先端部と接続する短絡線の第1の方向成分の長さは、25mm以下、特には20mm以下であることが、バンド3のアンテナ利得向上の点で好ましい。
【0042】
さらに、本発明において、所望の第1の放送周波数帯と該第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、前記第1の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ01といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg1=λ01・kとするとき、アンテナ導体に含まれる第2の方向に平行な方向に延伸するアンテナエレメントのうち車両用窓ガラスの周縁部に最近接のアンテナエレメントと、独立導体に含まれる複数の線条導体のうち該最近接のアンテナエレメントより該周縁部側に位置する最近接の線条導体とは、その最近接の線条導体を第1の方向に投影したときにその最近接のアンテナエレメントが0.043・λg1以下の長さで重複することが、バンド3等の第1の放送周波数帯のアンテナ利得向上の点で好ましい結果が得られる。特には、0.011・λg1以下であることが好ましい。具体的には、その重複長さは、40mm以下、特には10mm以下、更には重複しないことが、バンド3のアンテナ利得向上の点で好ましい。
【0043】
また本実施の形態のアンテナ導体は、第1の放送周波数帯と第2の放送周波数帯の両方の放送周波数帯でのアンテナ利得が高いアンテナパターンとして、図20に示されるような、図19のパターンに対してアンテナエレメントがさらに折り畳まれたアンテナパターンであってもよい。
【0044】
図20は、第1の放送周波数帯及び該第1の放送周波数帯より帯域が高い第2の放送周波数帯の電波受信用のアンテナ導体であるデュアルバンドの車両用ガラスアンテナ600の平面図である。図19と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。ガラスアンテナ600は、アンテナエレメント1,2,3,4と、アンテナエレメント4の第2の方向の延伸の終点である終端部4gを起点に第3の方向に延伸する第5のアンテナエレメントであるアンテナエレメント5と、アンテナエレメント5の第3の方向の延伸の終点である終端部5gを起点に第2の方向に対して逆向きの方向(図20では、第2の方向に対して平行で逆向きの方向、つまり第2の方向に対して180°反対の右方向)である第4の方向に終端部6gまで延伸する第6のアンテナエレメントであるアンテナエレメント6とを、アンテナ導体として備えた構造である。アンテナエレメント6は、給電部18やアンテナエレメント1に交差しないように、給電部18やアンテナエレメント1との間に間隙を設けて終端部6gまで延伸する。
【0045】
本発明の給電部18は、受信機に接続される給電線が電気的に接続される。給電線としてAV線を用いる場合は、給電部18と車両側に設置された増幅器とを接続し、増幅器のグランドにボディーアースをとる。このとき、AV線と給電部18とを電気的に接続するためのコネクタを給電部18に実装する構成にすることによって、AV線を給電部18に取り付けしやすくなる。
【0046】
窓ガラス12にアース部(不図示)を設ける場合には、給電部18に同軸ケーブルの内部導体を電気的に接続し、同軸ケーブルの外部導体とアース部とが電気的に接続される。同軸ケーブルと給電部18及びアース部とを電気的に接続するためのコネクタを給電部18に実装する構成にすることによって、同軸ケーブルを給電部18及びアース部に取り付けしやすくなる。
【0047】
給電部18に実装されるコネクタに給電部18から取り出せる受信信号を増幅するための増幅回路が内蔵されている場合には、その増幅回路のグランドを同軸ケーブルの外部導体等のグランド部位に電気的に接続し、その増幅回路の入力側に給電部18が電気的に接続され、その増幅回路の出力側に同軸ケーブルの内部導体が接続されるとよい。
【0048】
給電部18の形状は、給電部18に直接取り付けられる給電線の先端形状又は給電部18と給電線とを接続するための接続部材の形状(例えば、コネクタの実装面や接触端子の形状)に応じて決めるとよい。例えば、正方形、略正方形、長方形、略長方形などの方形状や多角形状が実装上好ましい。なお、円、略円、楕円、略楕円などの円状でもよい。
【0049】
上述したガラスアンテナには、補助アンテナ導体は付設されていない。しかし、これに限定されず、インピーダンスマッチング、位相調整及び指向性調整等のために、アンテナエレメントに接続導体を介して又は介さずに、略T字状、略L字状、ループ状等の補助アンテナエレメントが付設されていてもよい。
【0050】
また、アンテナ導体からなる導体層を合成樹脂製フィルムの内部又はその表面に設け、導体層付き合成樹脂製フィルムを窓ガラス板の車内側表面又は車外側表面に形成してガラスアンテナとしてもよい。さらに、アンテナ導体が形成されたフレキシブル回路基板を窓ガラス板の車内側表面又は車外側表面に形成してガラスアンテナとしてもよい。
【0051】
車両に対する窓ガラス板の取り付け角度は、水平方向に対し、15〜90°、特には、30〜90°が好ましい。
【0052】
アンテナ導体は、銀ペースト等の、導電性金属を含有するペーストを窓ガラス板の車内側表面にプリントし、焼付けて形成される。しかし、この形成方法に限定されず、銅等の導電性物質からなる、線状体又は箔状体を、窓ガラス板の車両側表面又は車外側表面に形成してもよく、窓ガラスに接着剤等により形成してもよく、窓ガラス自身の内部に設けてもよい。給電部18についても同様である。
【0053】
また、窓ガラスの面上に隠蔽膜を形成し、この隠蔽膜の上にアンテナ導体の一部分又は全体を設けてもよい。隠蔽膜は黒色セラミックス膜等のセラミックスが挙げられる。この場合、窓ガラスの車外側から見ると、隠蔽膜により隠蔽膜上に設けられているアンテナ導体の部分が車外から見えなくなり、デザインの優れた窓ガラスとなる。図示の構成では、給電部とアンテナ導体の少なくとも一部を隠蔽膜上に形成させることで、車外視において導体の細い直線部分のみを見ることになり、デザイン上好ましい。
【実施例1】
【0054】
AMガラスアンテナとデフォッガとの間の空白領域に図19に示すガラスアンテナ100のアンテナエレメント2が延伸しているパターンを実際のリアガラスに取り付けることにより、自動車用高周波ガラスアンテナを作製した。
【0055】
図2は、AMガラスアンテナの基本形状であるAMガラスアンテナ20Bを配置した場合のパターン図である。AMガラスアンテナ20Bの各部の基本寸法は、
w1 :375mm
w2 :335mm
w3〜w7 :20mm
w8 :40mm
w9 :20mm
w10 :10mm
w11 :1070mm
w12 :150mm
とする。w1は、複数の線条導体21〜26を各線条導体の中心付近で短絡する中間短絡線28と複数の線条導体21〜26を各線条導体の左側先端部同士(ガラスアンテナ100と反対側の先端部同士)を短絡する左側短絡線27との車幅方向の距離である。w2は、中間短絡線28と複数の線条導体21〜26を各線条導体の右側先端部同士を短絡する右側短絡線29との車幅方向の距離である。w3〜w7は、各線条導体間の距離である。w8は、AMガラスアンテナ20Bの線条導体のうち最低位の線条導体26とデフォッガ30のバスバ30bと30c間のヒータ線のうち最高位のヒータ線30aとの距離である。w9は、線条導体26とアンテナエレメント2との距離である。w10は、ガラスアンテナ100とAMガラスアンテナ20Aとの車幅方向の最短距離である(図2の場合、右側短絡線29とループエレメント5の左辺部5eとの距離である)。w11は、ヒータ線30aの長さである。w12は、車体開口部の上縁部15aとヒータ線30aとの距離である。なお、AMガラスアンテナ20Bの各アンテナエレメント及び短絡線の導体幅は0.8mmである。
【0056】
また、AMガラスアンテナの本発明の形状として、図1に示したAMガラスアンテナ20Aの場合の自動車用高周波ガラスアンテナと図3に示したAMガラスアンテナ20Cの場合の自動車用高周波ガラスアンテナとを作製した。
【0057】
AMガラスアンテナ20Aには、線条導体21〜26の右側先端部同士が接続されていないことにより(すなわち、図2の右側短絡線29を削除することにより)、ガラスアンテナ100に対して車幅方向に開口している開放端41〜45が形成されている。図1のパターンにおいて、寸法や左半分の形態は省略しているが、図2のパターンと同様である。
【0058】
AMガラスアンテナ20Cには、ガラスアンテナ100に対して車幅方向に開口している2つの開放端42,44が形成されている。すなわち、線条導体22と23とを短絡する短絡部分29bと線条導体24と25とを短絡する短絡部分29dとをAMガラスアンテナ20Cの車幅方向の中心部側に右側先端部からスライドした位置に配置させることにより、AMガラスアンテナ20Cの右端部にメアンダ形状を形成している。図3のパターンにおいて、寸法や左半分の形態は省略しているが、図2のパターンと同様である。図3のパターンの場合、右側先端部同士を接続する右側短絡線29a,29c,29eの上下方向の長さの総和は、最高位の線条導体21の右側先端部と最低位の線条導体26の右側先端部との間の上下方向の距離(言い換えれば、図2の右側短絡線29の全長)に対して、60%(=(3/5)×100[%])に相当する。なお、図1のパターンの場合は、0%に相当する。この場合、開放端の長さ総和が、最高位の線条導体21の右側先端部と最低位の線条導体26の右側先端部との間の上下方向の距離に対して、40%に相当する。
【0059】
次に、AMガラスアンテナの形態が互いに異なる図1,2,3のパターンを実際のリアガラスに取り付けることにより作製された自動車用高周波ガラスアンテナについて、それぞれの車両全周のアンテナ利得を測定し、平均アンテナ利得を算出した。
【0060】
このときの図18に示すガラスアンテナ100の各部の寸法は、
x1 :78mm
x2 :164mm
x6 :2mm
Lx :35mm
Ly :35mm
とする。なお、ガラスアンテナ100の各アンテナエレメントの導体幅は0.8mmである。
【0061】
アンテナ利得の測定は、窓ガラスを水平方向に対して15°傾斜させて取り付けられた自動車に対して電波を放射し、角度2°毎に自動車を360°回転させて測定した。電波は垂直偏波であり、周波数をバンド3とLバンドのそれぞれの範囲で10MHz毎に変化させた。電波の発信位置とアンテナ導体との仰角は水平方向(地面と平行な面を仰角=0°、天頂方向を仰角=90°とする場合、仰角=0°の方向)で測定した。アンテナ利得は、半波長ダイポールアンテナ(band III及びL bandの両方)を基準とし、半波長ダイポールアンテナが0dBとなるように標準化した。
【0062】
図4は、AMガラスアンテナの形態別の、ガラスアンテナ100のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。「Open」は図1のパターンの場合、「Short」は、図2のパターンの場合、「Meander」は図3のパターンの場合、「Without-AM」はAMガラスアンテナ自体が設けられていない場合を示す。図4に示されるように、ガラスアンテナ100に対して無給電導体に相当するAMガラスアンテナを、アンテナエレメント2の上側且つアンテナエレメント1の左側に設けると、バンド3でのアンテナ利得を高く保ったまま、Lバンドでのアンテナ利得が改善している。これらのパターンの中でも、ガラスアンテナ100のアンテナ利得の向上の点で、AMガラスアンテナの右端部の右側短絡線の少なくとも一部が開放端(オープン)になっているものがよく(図3のパターン)、特に右端部がすべてオープンになっているものがよい(図1のパターン)。
【実施例2】
【0063】
続いて、実施例1で好ましい結果が得られた図1と図3のパターンについて、AMガラスアンテナとガラスアンテナ100との最短距離w10(図2参照)を変化させて、ガラスアンテナ100の車両全周のアンテナ利得を測定し、平均アンテナ利得を算出した。このとき、AMガラスアンテナ自体が設けられていない場合「Without-AM」のアンテナ利得を基準として、「Without-AM」のアンテナ利得が0dBとなるように算出した。
【0064】
図5は、最短距離w10を変化させたときの、図1のパターンのガラスアンテナ100のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。図6は、最短距離w10を変化させたときの、図3のパターンのガラスアンテナ100のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。なお、図5,6において、縦軸のアンテナ利得は、バンド3に対応する周波数として170〜240MHzにおける10MHz毎のアンテナ利得の平均値、及びLバンドに対応する周波数として1450〜1490MHzにおける10MHz毎のアンテナ利得の平均値を示している。
【0065】
図5,6に示されるように、図1のパターンでも図3のパターンでも、最短距離w10を大きくするにしたがってアンテナ利得が増加している。特に、図6に示されるように、図3のパターンの場合、最短距離w10を大きくするにしたがってLバンドでのアンテナ利得が顕著に増加する。したがって、AMガラスアンテナを設けた場合には、AMガラスアンテナとガラスアンテナ100との車幅方向の最短距離を10mm以上(特には、20mm以上)にすることによって、優れたアンテナ利得が得られる。
【実施例3】
【0066】
続いて、図2のAMガラスアンテナ20Bの右側短絡線29の長さHbを変化させて、ガラスアンテナ100の車両全周のアンテナ利得を測定し、実施例2と同様に平均アンテナ利得を算出した。この場合、線条導体21〜26の位置や長さを変化させずに、AMガラスアンテナ20Bの右側端部に設けられた開口部の間口を上側から徐々に広くしていくことによって(右側短絡線29を上側から徐々に切除していくことによって)、右側短絡線29の長さHbを変化させている。
【0067】
図7は、右側短絡線29の長さHbを変化させたときの、ガラスアンテナ100のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。なお、図7において、縦軸のアンテナ利得は、バンド3に対応する周波数として170〜240MHzにおける10MHz毎のアンテナ利得の平均値、及びLバンドに対応する周波数として1450〜1490MHzにおける10MHz毎のアンテナ利得の平均値を示している。また、長さHbが100mmのときが、図2のAMガラスアンテナ20Bのパターンの形状を示し、長さHbが0mmのときが、図1のAMガラスアンテナ20Aのパターンの形状を示している。
【0068】
図7に示されるように、右側短絡線29を上側から徐々に切除して長さHbを短くしていくにしたがって、Lバンドでのアンテナ利得を高く保ったまま、バンド3でのアンテナ利得が向上している。したがって、AMガラスアンテナを設けた場合には、線条導体21〜26の先端部同士を接続する短絡線の第1の方向成分の長さの総和Hbが、最高位の線条導体21の右側先端部と最低位の線条導体26の右側先端部との上下方向成分の長さHに対して70%以下にすることによって、優れたアンテナ利得が得られる。言い換えれば、AMガラスアンテナ20Bの右側端部に設けられた開口端の間口が、最高位の線条導体21の右側先端部と最低位の線条導体26の右側先端部との上下方向成分の長さHに対して30%以上(特には、60%以上)にすることによって、優れたアンテナ利得が得られる。
【0069】
図8は、右側短絡線29の長さHbとその配置場所の違いによる、ガラスアンテナ100の車両全周のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。アンテナ利得の算出は、実施例2と同じ方法である。「上端から20mm短絡」は、車体開口部の上縁部15aに近接している線条導体21と線条導体22のみを右側短絡線29で接続させ、線条導体22〜26は開放端とした場合である。「上端から20mm開口」は、車体開口部の上縁部15aに近接している線条導体21と線条導体22のみを開口させて、線条導体22〜26は右側短絡線29によって互いに接続させた場合である。
【0070】
図8に示されるように、車体開口部の上縁部15aに近接している線条導体21が右側短絡線29と接続すると、線条導体22〜26が開放端となっていてもバンド3が悪化することがわかる。一方、線条導体21と線条導体22とが開放端となることにより、線条導体22〜26が右側短絡線29と接続していたとしてもバンド3は向上する。つまり、車体開口部の上縁部15aに近接している線条導体21が右側短絡線29と接続する場合は右側短絡線29の長さを短くすることが好ましい。
【0071】
したがって、所望の第1の放送周波数帯と第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、第2の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ02といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg2=λ02・kとするとき、車体開口部の上縁部15aに近接している線条導体21と接続する短絡線の第1の方向成分の長さが、図8に基づいて、0〜0.19・λg2、特には0〜0.15・λg2であることが、アンテナ利得向上の点で好ましい。具体的には、短絡線の長さが、0mm〜25mm、特には0mm〜20mmであることが、アンテナ利得向上の点で好ましい。
【実施例4】
【0072】
続いて、図19に示すガラスアンテナ500が独立導体20Dで囲まれるパターンを実際のリアガラスに取り付けた自動車用高周波ガラスアンテナを作製し、独立導体20Dの短絡部を変化させて、ガラスアンテナ500の車両全周のアンテナ利得を測定し、平均アンテナ利得を測定した。図9の独立導体20Dの各部の基本寸法は、
w1 :375mm
w2 :200mm
w3〜w7 :20mm
w8 :20mm
w9 :10mm
w10 :10mm
w11 :1070mm
w12 :150mm
w13 :130mm
w14 :30mm
w15 :175mm
w16 :10mm
w17 :10mm
とする。w1は、複数の線条導体21〜26を各線条導体の中心付近で短絡する中間短絡線28と複数の線条導体21〜26を各線条導体の左側先端部同士(ガラスアンテナ500側と反対側の先端部同士)を短絡する左側短絡線27との車幅方向の距離である。w2は、中間短絡線28と線条導体21(22)の先端部21g(22g)との車幅方向の距離である。w3〜w7は、各線条導体間の間隔長である(線条導体51〜55,26についても同様)。w8は、独立導体20Dの線条導体のうち最低位の線条導体26とデフォッガ30のバスバ30bと30c間のヒータ線のうち最高位のヒータ線30aとの距離である。w9は、線条導体26とアンテナエレメント2との距離である。w10は、ガラスアンテナ500のアンテナエレメント4と独立導体20Dの線条導体21との車幅方向の最短距離である(図9の場合、先端部21g(22g)と先端部4gとの距離である)。w11は、ヒータ線30aの長さである。w12は、車体開口部の上縁部15aとヒータ線30aとの距離である。w13は、先端部21g,22gと先端部23g〜25gとの距離である。w14は、先端部23g〜25gと先端部51g〜55gとの距離である。w15は、複数の線条導体51〜55,26を各線条導体の右側先端部同士を短絡する右側短絡線29と先端部51g〜55gとの距離である。w16は、先端部23g〜25gとアンテナエレメント3との距離である。w17は、先端部51g〜55gとアンテナエレメント1との距離である。なお、AMガラスアンテナ20Dの各アンテナエレメント及び短絡線の導体幅は0.8mmである。
【0073】
また、独立導体のその他の形状として、図10に示したAMガラスアンテナ20E〜20Hの形状をガラスアンテナ500のパターンの周囲に取り付けた自動車用高周波ガラスアンテナを作製した。図10の各パターンにおいて、符号や寸法や左半分の形態は一部省略しているが、その省略部分は図9のパターンと同様である。
【0074】
図9,10に示したこれらの5種類のAMガラスアンテナのパターンを実際のリアガラスに取り付けることにより作製された自動車用高周波ガラスアンテナについて、それぞれの車両全周のアンテナ利得を測定し、平均アンテナ利得を算出した。アンテナ利得の測定は、実施例1と同じ方法である。
【0075】
このときの図19に示すガラスアンテナ500の各部の寸法は、
x1 :107mm
x2 :10mm
x3 :70mm
x4 :130mm
とする。なお、ガラスアンテナ500の各アンテナエレメントの導体幅は0.8mmである。
【0076】
図11は、独立導体の形態別の、ガラスアンテナ500のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。「0」は、各線条導体のガラスアンテナ500のパターン側の先端部の全てが第1の方向に平行な方向に直流的に短絡されていないことにより、ガラスアンテナ500に対して車幅方向に開口している開放端が形成されている図9のパターンの場合である。「20」は、車体開口部の上縁部15aに最近接の先端部21g(51g)と線条導体22(52)とを短絡線で接続させることにより短絡部が形成されて、線条導体22と線条導体26との間及び線条導体52と線条導体26との間に開放端が形成されている図10(d)のパターンの場合である。「40」は、車体開口部の上縁部15aに最近接の先端部21g(51g)と線条導体22,23(52,53)とを短絡線で接続させることにより短絡部が形成されて、線条導体23と線条導体26との間及び線条導体53と線条導体26との間に開放端が形成されている図10(c)のパターンの場合である。「80」は、車体開口部の上縁部15aに最近接の先端部21g(51g)を有する線条導体21(51)と線条導体22(52)との間に開放端が形成されて、線条導体22と線条導体26との間及び線条導体52と線条導体26との間に短絡部が形成されている図10(b)のパターンの場合である。「100」は、各線条導体のガラスアンテナ500のパターン側の先端部の全てが第1の方向に平行な方向に直流的に短絡されていることにより、開放端が無く全ての先端部に短絡部が形成された図10(a)のパターンの場合である。
【0077】
図10(a)のパターンの場合、複数の線条導体の中の隣り合う線条導体の間に形成されたアンテナ導体側に開口している開口部の第1の方向成分の長さをその複数の線条導体の中の各隣り合う線条導体の全てについて総和した長さに対して、その開口部の第1の方向成分の長さを短絡線により閉じられた開口部(すなわち、短絡部)の全てについて総和した長さが、100%に相当する。図10(b)の場合は、80%に相当する。図10(c)の場合は、40%に相当する。図10(d)の場合は、20%に相当する。
【0078】
図11に示されるように、車体開口部の上縁部15aに近接している線条導体21(51)が短絡線と接続されていると(図11の「20」の場合)、線条導体22〜26(52〜26)同士の間が開放端となっていても、全て開放端である場合(図11の「0」の場合)に比べ、バンド3が悪化していることがわかる。一方、線条導体21(51)と線条導体22(52)との間が開放端となることにより、線条導体22〜26(52〜56)が短絡線と接続していたとしてもバンド3は向上する(図11の「80」の場合)。つまり、車体開口部の上縁部15aに近接している線条導体21(51)の先端部21g(51g)が短絡線と接続する場合、当該短絡線の長さを短くすることが好ましい。
【0079】
したがって、所望の第1の放送周波数帯と該第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、前記第2の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ01といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg1=λ01・kとするとき、車両用窓ガラス12の周縁部12aに最近接の先端部21g(51g)と接続する短絡線の第1の方向成分の長さは、0.027・λg1以下、特には0.022・λg1以下であることが、バンド3のアンテナ利得向上の点で好ましい。具体的には、25mm以下、特には20mm以下であることが好ましい。
【実施例5】
【0080】
続いて、実施例4で好ましい結果が得られた図9のパターンについて、図12に示されるように、最高位の線条導体21とアンテナエレメント4とが上下方向にオーバーラップしている重複長さw18を変化させて、ガラスアンテナ500の車両全周のアンテナ利得を測定し、平均アンテナ利得を算出した。
【0081】
図13は、距離w18を変化させたときの、ガラスアンテナ500のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。なお、縦軸のアンテナ利得は、バンド3に対応する周波数として170〜240MHzにおける10MHz毎のアンテナ利得の平均値、及びLバンドに対応する周波数として1450〜1490MHzにおける10MHz毎のアンテナ利得の平均値を示している。
【0082】
図13に示されるように、重複長さw18を短くするにしたがってアンテナ利得が増加している。特に、重複長さw18を40mm以下にすることによって、特には重複長さw18を10mm以下にすることによって、バンド3でのアンテナ利得は向上する。そして、重複長さw18が0mm未満、すなわちオーバーラップさせないことが、バンド3でのアンテナ利得向上の点で更に好ましい。
【実施例6】
【0083】
続いて、図20に示すガラスアンテナ600が独立導体20Iで囲まれるパターンと独立導体自体が設けられていないパターンとをそれぞれ実際のリアガラスに取り付けた自動車用高周波ガラスアンテナを作製し、独立導体20Iの短絡部を変化させて、ガラスアンテナ600の車両全周のアンテナ利得を測定し、平均アンテナ利得を測定した。アンテナ利得の測定は、実施例1と同じ方法である。
【0084】
独立導体20I自体が設けられていない図20のパターンの場合のガラスアンテナ600の各部の寸法は、
x1 :107mm
x2 :20mm
x3 :70mm
x4 :50mm
x5 :20mm
x6 :50mm
とする。なお、ガラスアンテナ600の各アンテナエレメントの導体幅は0.8mmである。
【0085】
図14は、独立導体20Iを配置した場合のパターン図である。独立導体20Iの各部の基本寸法は、
w2 :270mm
w13 :50mm
w14 :40mm
とする。それ以外の寸法は、図9と同様である。
【0086】
図15は、独立導体の形態別の、ガラスアンテナ600のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。「Open」は、各線条導体のガラスアンテナ600のパターン側の先端部の全てが第1の方向に平行な方向に直流的に短絡されていないことにより、ガラスアンテナ600に対して車幅方向に開口している開放端が形成されている図14のパターンの場合である。「Short」は、図14のパターンにおいて、各線条導体のガラスアンテナ600のパターン側の先端部の全てが第1の方向に平行な方向に直流的に短絡されていることにより、開放端が無い場合である。「Without-AM」は独立導体自体が設けられていない図20のパターンの場合である。
【0087】
図15に示されるように、独立導体自体を設けない場合のガラスアンテナ600を基準にすると、独立導体をアンテナエレメント3の左側及びアンテナエレメント1の右側に設けた場合、独立導体の形態によってバンド3とLバンドのアンテナ利得が向上しないことがある。実施例6の場合、独立導体の先端部が全て短絡されているパターンだと、独立導体自体を設けない場合に比べてアンテナ利得が悪くなるが、独立導体の先端部が全て開放端であるパターンにすることによって、独立導体自体を設けない場合と同等までバンド3とLバンドのアンテナ利得改善し、好ましい。
【実施例7】
【0088】
さらに、図16に示されるように、アンテナ導体を独立導体で囲ってもよい。独立導体20Jの線条導体21がアンテナエレメント6の上縁部側の空白領域に延伸している。
【0089】
独立導体20J自体が設けられていない図20のパターンの場合のガラスアンテナ600の各部の寸法は、
x1 :107mm
x2 :10mm
x3 :60mm
x4 :65mm
x5 :10mm
x6 :65mm
とする。なお、ガラスアンテナ600の各アンテナエレメントの導体幅は0.8mmである。
【0090】
図16における独立導体20Jの各部の基本寸法は、
w13 :65mm
w14 :30mm
とする。それ以外の省略部分については、実施例6と同様である。
【0091】
図17は、独立導体がない場合と独立導体で四方を囲まれた場合の、ガラスアンテナ600のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。「Open」は、各線条導体のガラスアンテナ600のパターン側の先端部の全てが第1の方向に平行な方向に直流的に短絡されていないことにより、ガラスアンテナ600に対して車幅方向に開口している開放端が形成されている図16のパターンの場合である。「Without-AM」はAMガラスアンテナ自体が設けられていない図20のパターンの場合である。
【0092】
図17に示されるように、アンテナ導体600側を全て開放端にすることによって、独立導体自体がない場合に比べ、バンド3とLバンドの両方のアンテナ利得が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】AMガラスアンテナ20Aを配置した場合のパターン図である。
【図2】AMガラスアンテナの基本形状であるAMガラスアンテナ20Bを配置した場合のパターン図である。
【図3】AMガラスアンテナ20Cを配置した場合のパターン図である。
【図4】AMガラスアンテナの形態別の、ガラスアンテナ100のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。
【図5】最短距離w10を変化させたときの、図1のパターンのガラスアンテナ100のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。
【図6】最短距離w10を変化させたときの、図3のパターンのガラスアンテナ100のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。
【図7】右側短絡線29の長さHbを変化させたときの、ガラスアンテナ100のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。
【図8】右側短絡線29の長さHbとその配置場所の違いによる、ガラスアンテナ100のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。
【図9】ガラスアンテナ500とAMガラスアンテナのパターン図である。
【図10】ガラスアンテナ500とAMガラスアンテナのパターン図である。
【図11】AMガラスアンテナの形態別の、ガラスアンテナ500のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。
【図12】最高位の線条導体21とアンテナエレメント4とがオーバーラップしている形態図である。
【図13】距離w18を変化させたときの、ガラスアンテナ500のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。
【図14】ガラスアンテナ600とAMガラスアンテナのパターン図である。
【図15】短絡場所の違いによる、ガラスアンテナ600のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。
【図16】ガラスアンテナ600の全周が囲まれているパターン図である。
【図17】AMガラスアンテナの有無による、ガラスアンテナ600のアンテナ利得の平均値を示す実測データである。
【図18】車両用ガラスアンテナ100の平面図である。
【図19】車両用ガラスアンテナ500の平面図である。
【図20】車両用ガラスアンテナ600の平面図である。
【符号の説明】
【0094】
1〜6 アンテナエレメント
5 ループエレメント(ガラスアンテナ100の場合)
5e 左辺部
6 接続エレメント(ガラスアンテナ100の場合)
12 窓ガラス
13 空白領域
15 窓の車体開口縁
18 給電部
20,20A〜20J 独立導体(AMアンテナ)
21〜26,51〜55 線条導体(AMアンテナのアンテナエレメント)
27 左側短絡線
28 中間短絡線
29 右側短絡線
30 デフォッガ
40 デジタルテレビ放送用アンテナ
41〜45 開口部(開放端)
100〜600 ガラスアンテナ(又は、アンテナ導体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ導体と、給電部と、前記アンテナ導体に離間した独立導体とが車両用窓ガラスに設けられており、
前記独立導体が基準方向に並走する複数の線条導体を備える、車両用ガラスアンテナであって、
前記複数の線条導体の隣り合う線条導体のうち一方の線条導体の前記アンテナ導体側の先端部ともう一方の線条導体との間に、前記アンテナ導体に向けて開口している開放端を、少なくとも一組の前記隣り合う線条導体について有することを特徴とする、車両用ガラスアンテナ。
【請求項2】
所望の第1の放送周波数帯と該第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、前記第2の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ02といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg2=λ02・kとするとき、
前記アンテナ導体と前記独立導体との同一水平面での間隔における前記基準方向成分の最小値が、0.008・λg2〜0.39・λg2である、請求項1に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項3】
前記アンテナ導体と前記独立導体との同一水平面での間隔における前記基準方向成分の最小値が、1mm〜50mmである、請求項1又は2に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項4】
前記複数の線条導体の前記アンテナ導体側の先端部のうち最上位と最下位との間の前記基準方向に略直角な上下方向成分の距離に対して、前記開放端の前記上下方向成分の距離の総和が、30%以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項5】
前記複数の線条導体の隣り合う線条導体同士が、該隣り合う線条導体の少なくとも一方の前記アンテナ導体側の先端部を起点として短絡線により接続される短絡部を有している場合、
所望の第1の放送周波数帯と該第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、前記第1の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ01といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg1=λ01・kとするとき、
前記複数の線条導体の前記アンテナ導体側の先端部のうち前記車両用窓ガラスの周縁部に最近接の先端部と接続する前記短絡線の前記基準方向に略直角な上下方向成分の長さは、0.027・λg1以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項6】
前記複数の線条導体の隣り合う線条導体同士が、該隣り合う線条導体の少なくとも一方の前記アンテナ導体側の先端部を起点として短絡線により接続される短絡部を有している場合、
前記複数の線条導体の前記アンテナ導体側の先端部のうち前記車両用窓ガラスの周縁部に最近接の先端部と接続する前記短絡線の前記基準方向に略直角な上下方向成分の長さは、25mm以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項7】
所望の第1の放送周波数帯と該第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、前記第1の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ01といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg1=λ01・kとするとき、
前記基準方向に平行な方向に延伸する前記アンテナエレメントのうち前記車両用窓ガラスの周縁部に最近接のアンテナエレメントと、前記複数の線条導体のうち該最近接のアンテナエレメントより該周縁部側に位置する最近接の線条導体とは、
前記最近接の線条導体を前記基準方向に略直角な方向に投影したときに前記最近接のアンテナエレメントが0.043・λg1以下の長さで重複する、請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項8】
前記基準方向に平行な方向に延伸する前記アンテナエレメントのうち前記車両用窓ガラスの周縁部に最近接のアンテナエレメントと、前記複数の線条導体のうち該最近接のアンテナエレメントより該周縁部側に位置する最近接の線条導体との関係において、
前記最近接の線条導体を前記基準方向に略直角な方向に投影したときに前記最近接のアンテナエレメントと重複する長さが、40mm以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項9】
前記基準方向が、前記車両用窓ガラスに取り付けられる状態において、水平又は略水平な方向である、請求項1から8のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナを備えた車両用窓ガラス。
【請求項1】
アンテナ導体と、給電部と、前記アンテナ導体に離間した独立導体とが車両用窓ガラスに設けられており、
前記独立導体が基準方向に並走する複数の線条導体を備える、車両用ガラスアンテナであって、
前記複数の線条導体の隣り合う線条導体のうち一方の線条導体の前記アンテナ導体側の先端部ともう一方の線条導体との間に、前記アンテナ導体に向けて開口している開放端を、少なくとも一組の前記隣り合う線条導体について有することを特徴とする、車両用ガラスアンテナ。
【請求項2】
所望の第1の放送周波数帯と該第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、前記第2の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ02といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg2=λ02・kとするとき、
前記アンテナ導体と前記独立導体との同一水平面での間隔における前記基準方向成分の最小値が、0.008・λg2〜0.39・λg2である、請求項1に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項3】
前記アンテナ導体と前記独立導体との同一水平面での間隔における前記基準方向成分の最小値が、1mm〜50mmである、請求項1又は2に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項4】
前記複数の線条導体の前記アンテナ導体側の先端部のうち最上位と最下位との間の前記基準方向に略直角な上下方向成分の距離に対して、前記開放端の前記上下方向成分の距離の総和が、30%以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項5】
前記複数の線条導体の隣り合う線条導体同士が、該隣り合う線条導体の少なくとも一方の前記アンテナ導体側の先端部を起点として短絡線により接続される短絡部を有している場合、
所望の第1の放送周波数帯と該第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、前記第1の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ01といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg1=λ01・kとするとき、
前記複数の線条導体の前記アンテナ導体側の先端部のうち前記車両用窓ガラスの周縁部に最近接の先端部と接続する前記短絡線の前記基準方向に略直角な上下方向成分の長さは、0.027・λg1以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項6】
前記複数の線条導体の隣り合う線条導体同士が、該隣り合う線条導体の少なくとも一方の前記アンテナ導体側の先端部を起点として短絡線により接続される短絡部を有している場合、
前記複数の線条導体の前記アンテナ導体側の先端部のうち前記車両用窓ガラスの周縁部に最近接の先端部と接続する前記短絡線の前記基準方向に略直角な上下方向成分の長さは、25mm以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項7】
所望の第1の放送周波数帯と該第1の放送周波数帯より帯域が高い所望の第2の放送周波数帯とがあり、前記第1の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ01といい、ガラス波長短縮率をk(ただしk=0.64)といい、λg1=λ01・kとするとき、
前記基準方向に平行な方向に延伸する前記アンテナエレメントのうち前記車両用窓ガラスの周縁部に最近接のアンテナエレメントと、前記複数の線条導体のうち該最近接のアンテナエレメントより該周縁部側に位置する最近接の線条導体とは、
前記最近接の線条導体を前記基準方向に略直角な方向に投影したときに前記最近接のアンテナエレメントが0.043・λg1以下の長さで重複する、請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項8】
前記基準方向に平行な方向に延伸する前記アンテナエレメントのうち前記車両用窓ガラスの周縁部に最近接のアンテナエレメントと、前記複数の線条導体のうち該最近接のアンテナエレメントより該周縁部側に位置する最近接の線条導体との関係において、
前記最近接の線条導体を前記基準方向に略直角な方向に投影したときに前記最近接のアンテナエレメントと重複する長さが、40mm以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項9】
前記基準方向が、前記車両用窓ガラスに取り付けられる状態において、水平又は略水平な方向である、請求項1から8のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナを備えた車両用窓ガラス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−124444(P2010−124444A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298797(P2008−298797)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
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