説明

車両用クォータガラスの取付け構造

【課題】補強リブの幅寸法を大きくしたり、開口フランジ部に突き当てたりすることなく、押し付け荷重によるたわみ変形を抑えることができる車両用クォータガラスの取付け構造を提供する。
【解決手段】クォータガラス15のシール部材の内側部分に、開口フランジ部10eに所定の隙間をあけて対向する補強リブ18cを一体に突出形成し、各取付けボス部の間に位置する補強リブ18cの少なくとも一部に、外部荷重によってクォータガラス15が変形したときに開口フランジ部10eに当接する当接リブ18hを一体に突出形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側部に形成されたウインド開口の開口フランジ部に取り付けられる車両用クォータガラスの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、クォータパネルにウインド開口に配設されるクォータガラスを形状に対する成形が容易な樹脂製ガラスにより形成する場合がある。このような樹脂製ガラスを車体に取り付ける場合、樹脂製ガラスの取付け部を車体の開口フランジ部に装着して位置決めし、樹脂製ガラスの外周部をシール材を介して開口フランジ部に押し付けることにより接着固定するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、樹脂製ガラスは、無機ガラスに比べて面剛性が低いことから、外力に対する剛性を高めるために補強リブを二色成形により一体に形成する場合がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−58421号公報
【特許文献2】特開平11−77740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記樹脂製ガラスの外周部を開口フランジ部に押し付けて接着する際に、樹脂製ガラスの取付け部以外の各辺部においては押し付け時の荷重によりたわみ変形が生じ易い。このため場合によっては、樹脂製ガラスが変形したまま組み付けられたり、シール材に切れが生じたりするおそれがあり、組み付け精度が悪化するとともに、雨水等が車室内に進入するという懸念がある。
【0006】
ここで、前記樹脂製ガラスの押付け時に補強リブを開口フランジ部に当接させることにより、たわみ変形を抑えることが考えられる。この場合、補強リブの幅寸法を大きくすると、開口フランジ部のシール代を確保できなくなることから、たわみ変形を抑えることのできる剛性の高い補強リブを設定することは困難である。
【0007】
また補強リブをこれの全周に渡って開口フランジ部に突き当てることでたわみ変形を抑えることが考えられるが、組み付け精度を確保するための調整が困難であり、精度不良となり見栄えが悪化する。
【0008】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、補強リブの幅寸法を大きくしたり、開口フランジ部に突き当てたりすることなく、押し付け時の荷重によるたわみ変形を抑えることができる車両用クォータガラスの取付け構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車体側部に形成されたウインド開口の開口フランジ部に、その外周部に設けられた少なくとも3つの取付けボス部と、各取付けボス部の内周部に塗布されたシール部材とにより取り付けられる車両用クォータガラスの取付け構造であって、前記クォータガラスのシール部材の内側部分に、前記開口フランジ部に所定の隙間をあけて対向する補強リブを一体に突出形成し、前記各取付けボス部の間に位置する前記補強リブの少なくとも一部に、外部荷重によって前記クォータガラスが変形したときに前記開口フランジ部に当接する当接リブを一体に突出形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るクォータガラスの取付け構造によれば、クォータガラスに開口フランジ部に所定の隙間をあけて対向する補強リブを形成し、各取付けボス部の間に位置する補強リブの一部に、クォータガラスの変形時に開口フランジ部に当接する当接リブを突出形成したので、外部荷重によるクォータガラスのたわみ変形を抑えることができ、クォータガラスの組み付け精度が安定するとともに、シール材の切れによる雨水等の室内への進入を防止できる。
【0011】
本発明では、前記当接リブを各取付けボス部の間に位置する補強リブに設けたので、たわみ変形が生じ易い部分に当接リブを必要最小限の範囲に設定することができる。その結果、補強リブの荷重に対する変形を考慮する必要がなく、しかも取付けに対する制約も受けないので、補強リブの形状変形を抑えることのできる必要最小限の剛性を確保すればよく、シール代を確保できるとともに、突き当てする場合の組み付け精度の悪化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1によるクォータガラスが取り付けられた自動車の側面図である。
【図2】前記自動車の背面図である。
【図3】前記クォータガラスの室内側から見た側面図である。
【図4】前記クォータガラスの断面図(図3のIV-IV線断面図)である。
【図5】前記クォータガラスの補強リブの断面図(図4のV-V線断面図)である。
【図6】前記クォータガラスの断面図(図3のVI-VI線断面図)である。
【図7】前記クォータガラスの断面図(図3のVII-VII線断面図)である。
【図8】前記クォータガラスの断面図(図3のVIII-VIII線断面図)である。
【図9】前記クォータガラスの断面図(図3のIX-IX線断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1ないし図9は、本発明の実施例1による車両用クォータガラスの取付け構造を説明するための図である。なお、本実施例の説明のなかで前後,左右という場合は、シートに着座した状態で見た場合の前後,左右を意味する。
【0015】
図において、1は自動車の車体を示しており、これは左,右のサイドパネル(車体側部)2,2と、該左,右のサイドパネル2の上端間に配設されたルーフパネル3と、下端間に配設されたフロアパネル(不図示)とで車室4を形成した概略構造を有する。
【0016】
前記車体1の後端面にはバックドア開口1aが形成されており、該バックドア開口1aには、該開口1aを上下方向に開閉する、跳ね上げ式のバックドア5が配設されている。また前記車体1のバックドア開口1bの左,右下縁部にはリヤコンビネーションランプ6,6が配設されている。
【0017】
前記左,右のサイドパネル2の前部にはフロントドア開口2aが形成されており、該フロントドア開口2aには車幅方向に開閉するフロントドア7,7が配設されている。このフロントドア7には、ウインドガラス7aが昇降可能に配設されている。
【0018】
前記左,右のサイドパネル2の後部は、意匠面を有するアウタパネル10aとインナパネル10bとの外縁部同士を溶接により接合してなるクォータパネル10により形成されている。このクォータパネル10の室内側には内装部品としてのトリム11が配設されている。
【0019】
前記左,右のクォータパネル10の前縁部が前記フロントドア開口2aの後縁部を形成しており、後縁部が前記バックドア開口1aの左,右側縁部を形成している。また前記クォータパネル10の下縁部にはホイールアーチ10cが形成されている。
【0020】
前記左,右のクォータパネル10の上部には、該クォータパネル10の上半部の略全面に渡る大きさのウインド開口10dが形成されている。このウインド開口10dの周縁部は、前記アウタパネル10a及びインナパネル10bの開口フランジ部10e,10e同士を溶接により接合することにより形成されている。
【0021】
前記ウインド開口10dにはクォータガラス15が配設されている。このクォータガラス15は、前記フロントドア7のウインドガラス7aに連続するように概ね矩形状に形成されている。
【0022】
前記クォータガラス15の前縁部15cには車内側に屈曲して延びる屈曲部15dが形成されている(図6参照)。該屈曲部15dには、前記フロントドア7に装着されたウェザストリップ13のリップ部13aが弾性変形可能に当接している。
【0023】
前記クォータガラス15の後縁部15aの後方には、該後縁部15aの上下方向全長に渡って延びる外装部品としてのガーニッシュ16が配設されている。
【0024】
このガーニッシュ16は、前記クォータガラス15の後縁部15aに所定の隙間c1をあけて配置され、前記クォータガラス15から後方に延びる側辺部16aと、該側辺部16aに続いて車内側に屈曲して延びる後辺部16bとを有する(図1,図2参照)。前記隙間c1は、クォータガラス15,ガーニッシュ16の組付け精度のばらつきを吸収するために設けられたものである。
【0025】
前記側辺部16aはクリップ(不図示)により前記クォータパネル10に固定され、後辺部16bはボルト(不図示)により前記バックドア開口1aの側縁部に固定されている。
【0026】
前記ガーニッシュ16は、これの側辺部16aが前記クォータガラス15と略面一をなすように形成されており、後辺部16bはバックドア5と略面一となるように形成されている。前記クォータガラス15とガーニッシュ16とを外表面が略面一となるように配置したので、残差や突起による空気流の乱れを小さくすることができ、風切り音の発生を抑制できる。
【0027】
また前記ガーニッシュ16の側辺部16aの前端部には、車内側に向かって傾斜するテーパー部16cが形成されている(図4参照)。このテーパー部16cを形成することにより、隙間c1を流れる空気流の乱れが小さくなり、風切り音の発生をより確実に抑制できる。
【0028】
前記クォータガラス15の後縁部15aには、前記ガーニッシュ16の側辺部16aの車内側裏面16a′に重なるように延びる段付き状のオーバラップ部15bが一体に形成されている(図4参照)。
【0029】
このオーバラップ部15bは、後縁部15aに続いて車内側に屈曲する段差部15eと、該段差部15eに続いて後方に屈曲して延びる重合部15fとを有する。この重合部15fが前記ガーニッシュ16の側辺部16aの裏面16a′に車幅方向に重なっている。また重合部15fとガーニッシュ16の裏面16a′との間には隙間c2が設けられている。
【0030】
このようにクォータガラス15の後縁部15aに、ガーニッシュ16の車内側裏面16a′に車幅方向に重なるように延びる段付き状のオーバラップ部15bを形成したので、クォータガラス15とガーニッシュ16との隙間c1を覆うことができ、見栄えの悪化を防止できる。
【0031】
前記オーバラップ部15bをガーニッシュ16の車内側裏面16a′に重なるように配置したので、オーバラップ部15bとガーニッシュ16の裏面16a′との隙間c2の精度を緩和でき、手間のかかる隙間管理が不要となる。
【0032】
前記クォータガラス15には、外力による傷つきを防止するためのコーティング膜(不図示)が表裏全面に渡って被覆形成されている。このコーティング膜は、コーティング液中に浸漬させるか、又はスプレーガンによりコーティング剤を塗布した後、乾燥させることにより形成されたものである。
【0033】
前記クォータガラス15は、樹脂製ガラスにより形成された透光性を有するガラス本体17と、該ガラス本体17の車内側裏面の外周部に一体的に形成された遮光性を有する黒色のブラックアウト部18とを二色成形により一体に形成されたものである。詳細には、図示していないが、一対の金型によりガラス本体17を射出成形し、この後一方の金型を反転させ、該金型と他方との金型によりガラス本体17にブラックアウト部18を射出形成することにより製造されたものである。前記一方の金型の一面側には、ガラス本体に対応するキャビティが形成され、反対側他面にはブラックアウト部に対応するキャビティが形成されている。
【0034】
前記クォータガラス15は、これの外周部に設けられた3つの取付けボス部18e〜18gと、各取付けボス部18e〜18gの内周部に塗布されたウレタン接着剤からなるシール部材20とにより前記開口フランジ部10eに取り付けられており、詳細には以下の構造を有する。
【0035】
前記ブラックアウト部18は、これの外端末18aがガラス本体17の外縁に位置し、内端末18bは、開口フランジ部10eより内側に位置しており、これにより開口フランジ部10eは外方から見えなくなっている。
【0036】
前記ブラックアウト部18の内周部には、前記開口フランジ部10eに所定の隙間t1をあけて対向するように延びる補強リブ18cが突出形成されている(図5参照)。該補強リブ18cによりクォータガラス15の外力に対する剛性を高めている。即ち、樹脂製ガラスとした場合には、ガラス製品に比べて外力に対してたわみ変形し易い。
【0037】
また前記ブラックアウト部18の補強リブ18cの内側には、該補強リブ18cに沿って延びる2条の堰部18dが形成されている。この堰部18dは、断面形状が三角形をなしており、前記塗布したコーティング液がガラス本体17の透視領域に流れ出るのを防止している。
【0038】
前記各取付けボス部18e〜18gは、前記ブラックアウト部18に一体に突出形成されている。詳細には、前記ブラックアウト部18の前端部に、車内側に突出する上下一対の前記上,下取付けボス部18e,18fが、また後端下部に前記後取付けボス部18gが形成されている。
【0039】
前記各取付けボス部18e〜18gは、グロメット19を介してアウタパネル10aの開口フランジ部10eに形成された取付け孔10fに嵌合固定されている(図6,図7参照)。これによりクォータガラス15は、クォータパネル10に位置決めされている。
【0040】
前記ブラックアウト部18の補強リブ18cの外側には、全週に渡って延びるウレタン接着剤からなるシール部材20が塗布されている。該シール部材20は前記クォータパネル10の開口フランジ部10eに接着されている。詳細には、クォータガラス15の外周部を車外側から押し付けることにより接着固定されている。これによりクォータガラス15はクォータパネル10に位置決め固定されている。
【0041】
そして前記各取付けボス部18e〜18gの間に位置する前記補強リブ18cの少なくとも一部には、前記押し付け時の荷重によって前記クォータガラス15がたわみ変形したときに前記開口フランジ部10eに当接する当接リブ18hが一体に突出形成されている。
【0042】
前記各当接リブ18hは、補強リブ18cに連続するように形成され、前記開口フランジ部10eに所定の隙間t2をあけて対向している(図5参照)。この隙間t2は1mm程度に設定されている。
【0043】
前記当接リブ18hは、図3に示すように、補強リブ18cの各取付けボス部18e〜18gの間に位置する範囲aに設定されている。即ち、補強リブ18cの前,後部分は上下方向中央部に、上,下部分は前後一対形成されている。
【0044】
本実施例によれば、クォータガラス15に、クォータパネル10の開口フランジ部10eに所定の隙間t1をあけて対向する補強リブ18cを突出形成し、各取付けボス部18e〜18gの間に位置する補強リブ18cの一部に、クォータガラス15の変形時に開口フランジ部10eに当接する当接リブ18hを突出形成したので、クォータガラス15が変形すると、当接リブ18hが開口フランジ部10eに突き当たることとなり、押し付け時の荷重によるクォータガラス15のたわみ変形を抑えることができる。これによりクォータガラス15の組み付け精度が安定するとともに、シール部材20の切れによる雨水等の室内への進入を防止できる。
【0045】
本実施例では、前記当接リブ10hを補強リブ18cの各取付けボス部18e〜18gの間に設けたので、たわみ変形が生じ易い部分に当接リブ18hを必要最小限の範囲aに設定することができる。その結果、補強リブ18cの荷重に対する変形を考慮する必要がなく、しかも取付けに対する制約も受けないので、補強リブ18cの形状変形を抑えることのできる必要最小限の剛性を確保すればよく、シール代を確保できるとともに、突き当てする場合の組み付け精度の悪化を防止できる。
【0046】
また前記クォータガラス15の後縁部15aに段差構造のオーバラップ部15bを形成したので、該オーバラップ部15bがクォータガラス15の剛性アップに寄与することとなり、外力によるクォータガラス15のたわみ変形をより一層抑制することができる。これにより当接リブ18hの設定範囲aをより小さくすることができ、ひいては補強リブ18cも小さくすることが可能となる。
【0047】
なお、前記実施例では、クォータガラスを、ガラス本体と該ガラス本体の外周部に一体に形成したブラックアウト部とを有するものとした場合を例に説明したが、本発明は、単体のクォータガラスに黒色のマスクを印刷等により形成したものでもよい。この場合には、クォータガラス自体に取付けボス部,補強リブを形成することとなる。
【符号の説明】
【0048】
2 サイドパネル(車体側部)
10 クォータパネル(車体側部)
10d ウインド開口
10e 開口フランジ部
15 クォータガラス
18c 補強リブ
18e〜18g 取付けボス部
18h 当接リブ
20 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部に形成されたウインド開口の開口フランジ部に、その外周部に設けられた少なくとも3つの取付けボス部と、各取付けボス部の内周部に塗布されたシール部材とにより取り付けられる車両用クォータガラスの取付け構造であって、
前記クォータガラスのシール部材の内側部分に、前記開口フランジ部に所定の隙間をあけて対向する補強リブを一体に突出形成し、
前記各取付けボス部の間に位置する前記補強リブの少なくとも一部に、外部荷重によって前記クォータガラスが変形したときに前記開口フランジ部に当接する当接リブを一体に突出形成した
ことを特徴とする車両用クォータガラスの取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−131771(P2011−131771A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293872(P2009−293872)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)