説明

車両用シートのシートクッション構造

【課題】 パッドの肉厚が薄いシートクッションでは、カーフロアの熱によって着座面が加熱されて着座者に不快感を与えるおそれがある。
【解決手段】 シートクッション12のパッド12aの裏面が断熱シート12eで覆われている。断熱シート12eはアルミ蒸着ポリエステルシートとされ、その蒸着面をカーフロアに面して配設される。断熱シート12eは、その全周縁がシートクッションのパッドを覆うトリムカバーの端末12b’とともに連結具であるホグリング12dによってシートクッション内のワイヤ12cに連結される。断熱シート12eの全周縁をトリムカバーの端末12b’とともにホグリング12dでワイヤ12cに連結する代わりに、断熱シート12eの周縁の一部をトリムカバーの端末12b’に縫合し、縫合されない残りの周縁をホグリングでトリムカバーの端末とともにワイヤに連結してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッションをカーフロアに直接的に載置して固定した車両用シートのシートクッション構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シートクッションをカーフロア(車床)に直接的に載置して固定したいわゆる据え置き型シートクッションの車両用シートにおいては、カーフロアとシートクッションの裏面(下面)との間に断熱層(断熱空間)がほとんど形成されない。シートクッションにはパッド(シートパッド)が内蔵され、外部から見えるパッドの上面、前後左右の側面はトリムカバー(表皮)で覆われるが、外部から見えないその裏面(下面)はトリムカバーで覆われることなく剥き出しのままとされる。そのため、カーフロアの熱はパッドを介在して着座面(シートクッションの上面)に伝達されて着座面を加熱し、シートクッションのパッドが薄いと、着座面が加熱されやすく、着座者に不快感を与えるおそれがある。
【0003】
特に、スポーツタイプの車両などにおいては、カールーフ(車天井)の高さを低くすることが要求されてヒップポイントが低く設定されるため、着座者の尻部部分のパッドの肉厚が薄くされる。そして、パッドの肉厚を薄くすれば、カールーフの高さを低くしたまま、高さ方向(上下方向)での居住空間が確保できる。
【0004】
従来の車両用シートのシートクッションの冷却システムとして、パッドに空気の流路を形成し、流路に冷却空気を流して着座面から噴出させる構成が広く知られている(たとえば、特開2010−036751号公報)。この構成では、着座面から噴出させる冷却空気によって着座面が十分に冷却されて、快適性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−036751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、シートクッションのパッドの肉厚を薄くすれば、高さ方向(上下方向)での居住空間の確保の点からは好ましい。しかしながら、パッドの肉厚を薄くすれば、カーフロアからの熱によって着座面が加熱されて着座者に不快感を与えるおそれがあり、特に、シートクッションをカーフロアに直接的に載置して固定した車両用シートにおいては、カーフロア、シートクッション間に断熱層(断熱空間)がほとんどないため、カーフロアからの熱によって着座面が加熱されやすい。
肉厚の薄いパッドに空気の流路を形成すれば、パッドが着座に必要な硬度を保持することが困難となり、冷却空気をパッドの流路に流す公知の冷却システムは肉厚の薄いパッドを持つシートクッションに応用できない。
【0007】
本発明は、肉厚の薄いパッドを持つシートクッションにおいてもカーフロアの熱による着座面の加熱を防止可能な車両用シートのシートクッション構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る本発明によれば、シートクッションをカーフロアに直接的に載置して固定する車両用シートにおいて、シートクッションのパッドの裏面が断熱シートで覆われている。たとえば、断熱シートはアルミ蒸着ポリエステルシートとされ、その蒸着面をカーフロアに面して配設される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る本発明では、シートクッションのパッドの裏面が断熱シートで覆われているため、カーフロアからパッドへの熱伝達がパッド裏面の断熱シートによって妨げられてシートクッションの着座面の加熱が防止される。そのため、パッドの肉厚を薄くしても着座者の快適性が確保できる。また、パッドの肉厚が薄くてよいため、高さ方向での居住性が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例に係るシートクッション構造を持つ車両用シートの概略図を示す。
【図2】シートクッションの下面図を示す。
【図3】図2の線A−Aに沿ったシートクッションの横断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
シートクッションがカーフロアに直接的に載置して固定され、シートクッションのパッド(シートパッド)の裏面が断熱シートで覆われている。断熱シートはアルミ蒸着ポリエステルシートとされ、その蒸着面をカーフロアに面して配設される。また、断熱シートは、その周縁がシートクッションのパッドを覆うトリムカバーの端末とともに、連結具によってシートクッション内のワイヤに連結される。
【実施例】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を詳細に説明する。図1は本発明の一実施例に係るシートクッション構造を持つ車両用シートの概略側面図を示し、ここでは車両用シートはリヤシートとして具体化されている。
図1に示すように、車両用シート10は、シートクッション12と、シートクッションの後端に設けられたシートバック14とを有し、シートクッションはカーフロア(車床)16に直接的に載置して固定されたいわゆる据え置き型となっている。
【0013】
図2はシートクッションの下面図、図3は図2の線A−Aに沿ったシートクッションの横断面図をそれぞれ示す。
シートクッション12は、その裏面が断熱シート16で覆われている点を除けば、周知の構成をしている。すなわち、概略、シートクッション12は、発泡樹脂からなるパッド(シートパッド)12aの裏面を除くその上面、側面をトリムカバー(表皮)12bで覆って構成されている。トリムカバー12bは複数のシート片を縫合して形成され、シートクッションに設けられたワイヤ12cにトリムカバーの端末12b’がホグリングなどの連結具12dによって連結されることによって、パッド12aの上に張設されている。
【0014】
本発明では、トリムカバー12bで覆われていないシートクッション12の裏面、言い換えれば、パッド12aの裏面を断熱シート12eで覆っている点に特徴がある。断熱シート12eは、断熱性に優れたシート、たとえば、アルミ蒸着ポリエステルシートとされ、その蒸着面をカーフロア16に面して配設される。実施例では、アルミ蒸着ポリエステルシート(断熱シート)12eは、シートクッション、つまりはパッドの略U字の裏面形状に対応したたとえば略U字形状とされ、その全周縁がホグリング(連結具)12dでトリムカバーの端末12b’とともにワイヤ12cに連結されて、シートクッションの裏面(パッドの裏面)を覆って配設されている。
【0015】
カーフロア16の上に直接的に載置して固定されたシートクッション12の裏面、具体的にはパッド12aの裏面をアルミ蒸着ポリエステルシートのような断熱シート12eで覆っているため、カーフロア16からパッド12aへの熱伝達がパッド裏面の断熱シートによって妨げられ、着座面(シートクッションの上面)の加熱が防止され、パッドの肉厚を薄くしても着座者の快適性が確保できる。また、パッド12aの肉厚を薄くてよいため、高さ方向(上下方向)での居住性が確保できる。
【0016】
蒸着面における反射率が高いから、その蒸着面がカーフロア16に面するようにアルミ蒸着ポリエステルシート(断熱シート)12eを配設すれば、カーフロアからパッド12aへの熱伝達が効果的に防止できる。
【0017】
アルミ蒸着ポリエステルシートは断熱シート12eの一例であり、断熱シートはアルミ蒸着ポリエステルシートに限定されず、カーフロア16からパッド12aへの熱伝達を防止する断熱効果に優れたシートであればよい。しかしながら、アルミ蒸着ポリエステルシートは熱遮蔽性が高く、断熱効果に優れるため、カーフロア16からパッド12aへの熱伝達を十分に防止できる。
【0018】
ホグリング(連結具)12dで断熱シート12eの全周縁にわたってトリムカバーの端末12b’とともにワイヤ12cに連結する代わりに、ホグリングで連結する部分を周縁の一部としてもよい。たとえば、断熱シート12eの周縁のうちの略U字形の曲線状の周縁12e−1(図2参照)をトリムカバーの端末12b’に縫合し、曲線状の周縁を除く直線状の周縁12e−2をトリムカバーの端末とともにホグリング12dでワイヤ12cに連結してもよい。
【0019】
また、ホグリング12dでワイヤ12cに連結したトリムカバーの端末12b’に、断熱シートの全周縁を接着して断熱シート12eでパッド12aの裏面を覆ってもよい。
【0020】
連結具12dとしてホグリングを使用しているがこれに限定されず、紐材で断熱シート12e、トリムカバーの端末12b’をワイヤ12cに連結してもよい。しかしながら、連結具12dとしてホグリングを使用すれば、断熱シート12e、トリムカバーの端末12b’をワイヤ12cに迅速、強固に一体的に連結できる。
【0021】
上記のように、本発明によれば、シートクッションの裏面、つまりは、パッドの裏面を断熱シートで覆っているため、カーフロアからパッドへの熱伝達が断熱シートによって妨げられ、着座面の加熱が防止されてパッドの肉厚を薄くしても着座者の快適性が確保できる。また、パッドの肉厚が薄くてよいため、高さ方向での居住性が確保できる。
【0022】
上述した実施例は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
たとえば、実施例では、車両用シートをリヤシートとして具体化しているが、リヤシートに限定されず、フロントシートにも本発明を応用できる。
また、断熱シート、トリムカバーの端末をワイヤに連結しているが、断熱シート、トリムカバーの端末はシートクッション内の固定物に連結すれば足り、ワイヤに限定されず、シートクッションフレームに連結してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、通常、自動車のシートに応用されるが、フロアからの熱によってパッドを介在してシートクッションの着座面が加熱されるシートであれば自動車以外の車両用シート、たとえば、電車、飛行機等のシートにも応用できる。
【符号の説明】
【0024】
10 車両用シート
12 シートクッション
12a パッド(シートパッド)
12b トリムカバー(表皮)
12b’ トリムカバーの端末
12c ワイヤ
12d ホグリング(連結具)
12e アルミ蒸着ポリエステルシート(断熱シート)
12e−1、2 アルミ蒸着ポリエステルシートの周縁
14 シートバック
16 カーフロア(車床)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションをカーフロアに直接的に載置して固定した車両用シートにおいて、シートクッションのパッドの裏面を断熱シートで覆ったことを特徴とする車両用シートのシートクッション構造。
【請求項2】
断熱シートがアルミ蒸着ポリエステルシートであり、その蒸着面をカーフロアに面して配設した請求項1記載の車両用シートのシートクッション構造。
【請求項3】
断熱シートは、その周縁がシートクッションのパッドを覆うトリムカバーの端末とともに、連結具によってシートクッション内のワイヤに連結された請求項1または2記載の車両用シートのシートクッション構造。
【請求項4】
断熱シートの周縁の一部はトリムカバーの端末に縫合され、連結具はホグリングとされ、縫合されない断熱シートの周縁とトリムカバーの端末とがホグリングによってワイヤに連結された請求項3記載の車両用シートのシートクッション構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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