説明

車両用シートのロアシールド構造

【課題】シートクッションの後部を覆う本来のロアシールド機能と、シートクッション側から延出された各種のワイヤハーネスを、シートクッションの背部に向けて屈曲させて保持するワイヤハーネス保持機能とを兼ね備えた車両用シートのロアシールド構造を提供する。
【解決手段】シートクッション10の後部を覆うロアシールド部材50を備える。ロアシールド部材50は、シートクッション10のクッションフレーム11に配設された後側ロッド14に嵌込まれて取り付けられる嵌込み部52と、シートクッション11の後部に配設された機構部品を覆う覆い部55、56とを有する。後側ロッド14の後方に位置するロアシールド部材50の後側部分には、シートクッション10側からのワイヤハーネス70を保持してシートバック40に向けて配索する保持溝64が上下方向に凹設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シートクッションの後部を覆うロアシールド部材を備えた車両用シートのロアシールド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートのロアシールド構造においては、例えば、特許文献1に開示されている。
これにおいては、リフター機構を備えた車両用シートの後方下部を隠蔽するための車両用シートのロアシールドにおいて、板状のシールド本体とレールカバー部材とリヤロッドに連結する連結板とからなり、シールド本体はレールカバー部材に対し回動自在に取り付けられているとともに、シールド本体と連結板の境界部は屈曲可能なヒンジとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−82581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用シートにおいては、そのシートバックに配設された各種の装置、機構、例えば、ランバーサポート装置、エアーバック装置、ヒーター装置、リクライニング機構等の電気部品に対し、シートクッション側から延出された各種のワイヤハーネスがシートクッションの後部に沿って屈曲されてシートバック内の背面側に延出される。そして、各種のワイヤハーネスの先端部が各種の装置の電気部品に接続される。
また、シートクッションの後部に、各種のワイヤハーネスの屈曲部分が露出されることがないように、例えば、シートバックのカバー表皮の下端部に対し、下帯とも呼ばれるカバー部材を延出して各種のワイヤハーネスの屈曲部分を覆い隠すと共に、カバー部材を延出端を伸縮可能な紐(例えばゴム紐)によってシートクッションの下面に止着していた。
しかしながら、シートバックのカバー表皮の下端部にカバー部材を延出して各種のワイヤハーネスの屈曲部分を覆い隠すと、後席に着座している乗員の足元スペースが狭くなる。
このようなことから、シートクッション側から延出された各種のワイヤハーネスを集合させ、これら各種のワイヤハーネスを、シートバックの背部に向けて屈曲させて保持するためのワイヤハーネス専用の保持部材を製作して、シートクッションの後部に組み付けることが考えられる。
しかしながら、ワイヤハーネス専用の保持部材を製作して、シートクッションの後部に組み付ける分だけ、部品点数や組付工数が多くなり、コスト高なる。
【0005】
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、シートクッションの後部を覆う本来のロアシールド機能と、シートクッション側から延出された各種のワイヤハーネスを、シートクッションの背部に向けて屈曲させて保持するワイヤハーネス保持機能とを兼ね備えた車両用シートのロアシールド構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明の請求項1に係る車両用シートのロアシールド構造は、シートクッションの後部を覆うロアシールド部材を備えた車両用シートのロアシールド構造であって、
前記ロアシールド部材は、前記シートクッションのクッションフレームに配設された後側ロッドに嵌込まれて取り付けられる嵌込み部と、前記シートクッションの後部に配設された機構部品を覆う覆い部とを有し、
前記後側ロッドの後方に位置する前記ロアシールド部材の後側部分には、前記シートクッション側からのワイヤハーネスを保持してシートバックに向けて配索する保持溝が上下方向に凹設されていることを特徴とする。
【0007】
前記構成によると、ロアシールド部材の嵌込み部が、シートクッションのクッションフレームの後側ロッドに嵌込まれて取り付けられた状態において、シートクッションの後部に配設された機構部品は、ロアシールド部材の覆い部によって覆われる。
また、シートクッション側からのワイヤハーネスは、ロアシールド部材の保持溝に沿って屈曲され、シートバックの背部に向けて上方へ配索される。そして、シートバックに配設された各種の装置の電気部品の接続部に接続される。
すなわち、ロアシールド部材は、シートクッションの後部を覆う本来のロアシールド機能と、シートクッション側から延出されたワイヤハーネスを、シートクッションの背部に向けて屈曲させて保持するワイヤハーネス保持機能とを兼ね備える。
この結果、ワイヤハーネス専用の保持部材を製作して、シートクッションの後部に組み付ける必要がなく、部品点数や組付工数を削減して、コスト低減を図ることができる。
【0008】
請求項2に係る車両用シートのロアシールド構造は、請求項1に記載の車両用シートのロアシールド構造であって、
保持溝は、後側ロッドの外径よりも大きい曲率半径をもって上下方向に延びる湾曲状、又は上下方向に延びる直線状に形成されていることを特徴とする。
【0009】
前記構成によると、保持溝は、後側ロッドの外径よりも大きい曲率半径をもって上下方向に延びる湾曲状、又は上下方向に延びる直線状に形成される。このため、シートクッション側から延出されたワイヤハーネスを、過度に屈曲させることなく、緩やかに屈曲させて保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施例1に係る車両用シートのロアシールド構造が採用された車両用シートの骨格部を示す斜視図である。
【図2】同じく車両用シートのロアシールド構造を後方から視た斜視図である。
【図3】同じくロアシールド構造をなすロアシールド部材を示す斜視図である。
【図4】同じくクッションフレームの後側ロッドにロアシールド部材が取り付けられた状態を示す側面図である。
【図5】同じく図4のV−V線に沿う平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
【実施例1】
【0012】
この発明の実施例1に係る車両用シートのロアシールド構造を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、車両用シートは、シートクッション10と、シートクッション10の後部にリクライニング機構30を介して前後方向へ角度調整可能に組み付けられシートバック40とを備えている。
シートクッション10の骨格部をなすクッションフレーム11は、左右の両サイドフレーム部12と、これら両サイドフレーム部12の前部に跨って固定されたフロントパネル13と、両サイドフレーム部12の後部に架設された円形パイプ材よりなる後側ロッド14とを有している。
また、両サイドフレーム部12は、スライドレール機構1のアッパレール上に、前側リンク(図示しない)と後側リンク21とを有するリフト機構20によって昇降可能に組み付けられている。
また、フロントパネル13と後側ロッド14との間にはパッド材(図示しない)を弾性的に支承する支持部材15が配設されている。
【0013】
シートバック40の骨格部をなすバックフレーム41は、左右の両サイドフレーム部42と、これら両サイドフレーム部42の上端部に跨って架設されたアッパフレーム部43と、両サイドフレーム部42及びアッパフレーム部43に固定されたアッパパネル44と、両サイドフレーム部42の下部に跨って固定されたロアパネル45とを有している。
また、シートバック40は、そのバックフレーム41の左右の両サイドフレーム部42の下部が、クッションフレーム11の左右の両サイドフレーム部12の後部に固定されたリクライニングロアパネルに、リクライニング機構30を介して取り付けられている。
また、アッパパネル44とロアパネル45との間には、パッド材(図示しない)を弾性的に支承する支持部材46と、ランバーサポートモータ48を駆動源とするランバーサポート装置47とが配設されている。
【0014】
また、アッパパネル44にはサポートブラケット及びヘッドレストサポートを介してヘッドレスト(図示しない)が高さ調整可能に装着されている。
また、バックフレーム41の左右の両サイドフレーム部42のうち、車外側に位置するサイドフレーム部42には、エアーバック装置のインフレータ49が組み付けられている。
また、シートバック40のパッド材の背面側にはヒーター装置(図示しない)が配設される。
【0015】
図1〜図5に示すように、シートクッション10の車外側のロアエッジを覆うロアシールド部材50は、合成樹脂材の射出成形によって形成されている。
図2に示すように、ロアシールド部材50は、嵌込み部52と、保持溝64と、第1の覆い部55と、第2の覆い部56とが車内側から車外側に向けて順次に形成されている。
【0016】
図3と図4に示すように、ロアシールド部材50の車内側に位置する嵌込み部52は、シートクッション10の後側ロッド14の後方から嵌込まれて取り付けられる側面形状がC字状に形成され、その嵌込み部52のC字開口部には、後側ロッド14の外周面に弾性的に圧接して係合する一対の弾性係止片53が弾性拡開及び縮小可能に形成されている。
また、ロアシールド部材50の第1の覆い部55は、リフト機構20の後側リンク21の後側から上方にわたって覆うように形成されている。
ロアシールド部材50の第2の覆い部56は、リクライニング機構30の外周リング31の下側から後側を覆うようにして円弧状に形成されている(図2参照)。
【0017】
また、図4と図5に示すように、第2の覆い部56は、クッションフレーム11の車外側のサイドフレーム部12を覆うアウタ側サイドシールド部材80の後壁部81の内面に沿って延びている。
そして、図5に示すように、第2の覆い部56と、アウタ側サイドシールド部材80の後壁部81との間には、弾性的に係合する単数又は複数対の係止爪82と係合孔83とがそれぞれ形成されている。
この実施例1において、第2の覆い部56に単数又は複数の係合孔83が形成され、アウタ側サイドシールド部材80の後壁部81に単数又は複数の係止爪82が形成されている。
【0018】
図3〜図5に示すように、ロアシールド部材50の保持溝64は、嵌込み部52と第1の覆い部55との間に位置し、かつ後側ロッド14の後方に位置するロアシールド部材50の後側部分に上下方向に延びて凹設されている。
すなわち、図5に示すように、保持溝64は、ロアシールド部材50の後側部分を上下方向に延びる溝底部65とし、この溝底部65と、その溝底部65の左右両側部に位置してロアシールド部材50に一体に形成された車内側側壁部62と、車外側側壁部63とで構成されている。
そして、保持溝64は、後方及び前後方が開口されており、シートクッション10側からの複数(又は単数)のワイヤハーネス70を屈曲させながら格納保持してシートバック40に向けて上方へ配索するようになっている。
そして、複数のワイヤハーネス70は、それぞれ分岐されてランバーサポートモータ48、エアーバック装置のインフレータ49、シートバック40のヒーター装置等の電気部品に接続される。
【0019】
また、この実施例1において、保持溝64の溝底部65は、後側ロッド14の外径よりも大きい曲率半径をもって上下方向に延びる湾曲状、又は上下方向に延びる直線状に形成されている。
なお、図5に示すように、保持溝64の車内側側壁部62の側面には、パッド材の後縁部に下向きに突出された後側パッド部17が配設され、後側パッド部17を含むパッド材の表面を覆うカバー表皮の後縁部19が後側パッド部17及び保持溝64の後側開口部を覆うようにして配設される。
【0020】
この実施例1に係る車両用シートのロアシールド構造は上述したように構成される。
したがって、ロアシールド部材50は、その嵌込み部52が、シートクッション10のクッションフレーム11の後側ロッド14に嵌込まれ、第2の覆い部56の係合孔83が、アウタ側サイドシールド部材80の後壁部81の係止爪82に弾性的に係合することによって取り付けられる。
ロアシールド部材50の取付状態において、ロアシールド部材50の第1の覆い部55によって、リフト機構20の後側リンク21の後側から上方にわたる部分が覆われる。
また、ロアシールド部材50の第2の覆い部56によって、リクライニング機構30の外周リングの下側から後側にわたって覆われる。
【0021】
また、シートクッション10の下部側から延出されるワイヤハーネス70は、ロアシールド部材50の保持溝64に沿って屈曲され、シートバック40の背部に向けて上方へ配索される。そして、シートバック40に配設された各種の装置の電気部品、この実施例1では、ランバーサポートモータ48、エアーバック装置のインフレータ49、シートバック40のヒーター装置(図示しない)の接続部に接続される。
【0022】
すなわち、ロアシールド部材50は、シートクッション10のリフト機構20及びリクライニング機構30の後側を覆う本来のロアシールド機能と、シートクッション10側から延出されたワイヤハーネス70を、シートバック40の背部に向けて屈曲させて保持するワイヤハーネス保持機能とを兼ね備える。
この結果、ワイヤハーネス専用の保持部材を製作して、シートクッション10の後部に組み付ける必要がなく、部品点数や組付工数を削減して、コスト低減を図ることができる。
【0023】
また、この実施例1において、ロアシールド部材50の保持溝64の溝底部65は、後側ロッド14の外径よりも大きい曲率半径をもって上下方向に延びる湾曲状、又は上下方向に延びる直線状に形成されている。このため、シートクッション10側から延出されたワイヤハーネス70を、過度に屈曲させることなく、緩やかに屈曲させて保持することができる。
【0024】
なお、この発明は前記実施例1に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
例えば、シートバック40に配設された各種の装置の電気部品として、この実施例1では、ランバーサポートモータ48、エアーバック装置のインフレータ49、シートバック40のヒーター装置である場合を例示したが、リクライニング機構30をリクライニングモータによってリクライニング可能に構成した場合には、リクライニングモータのワイヤハーネスもロアシールド部材50の保持溝64を通して保持することもできる。
なお、リクライニング機構30がリクライニングモータによって駆動可能に構成した場合には、バックフレーム41の左右の両サイドフレーム部42のうち、一方のサイドフレーム部42の下部に装着される。
【符号の説明】
【0025】
10 シートクッション
11 クッションフレーム
14 後側ロッド
20 リフト機構
21 後側リンク
30 リクライニング機構
31 外周リング
40 シートバック
41 バックフレーム
47 ランバーサポート装置
48 ランバーサポートモータ
49 エアーバック装置インフレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションの後部を覆うロアシールド部材を備えた車両用シートのロアシールド構造であって、
前記ロアシールド部材は、前記シートクッションのクッションフレームに配設された後側ロッドに嵌込まれて取り付けられる嵌込み部と、前記シートクッションの後部に配設された機構部品を覆う覆い部とを有し、
前記後側ロッドの後方に位置する前記ロアシールド部材の後側部分には、前記シートクッション側からのワイヤハーネスを保持してシートバックに向けて配索する保持溝が上下方向に凹設されていることを特徴とする車両用シートのロアシールド構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートのロアシールド構造であって、
保持溝は、後側ロッドの外径よりも大きい曲率半径をもって上下方向に延びる湾曲状、又は上下方向に延びる直線状に形成されていることを特徴とする車両用シートのロアシールド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−103638(P2013−103638A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249555(P2011−249555)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】