説明

車両用シートの収容物保持構造

【課題】シートバックの背面部に配設される保持部材をより簡素にかつ合理的に構成する。
【解決手段】シートバック2の背面部(バックボード2B)に設けられた幅方向に長尺な保持バンド10(保持部材)によって、保持バンド10とシートバック2の背面部との間の保持空間N内に高さ方向から差し込まれた収容物Pを、バックボード2Bの背面部に弾性的に押し付けて保持する保持構造である。保持バンド10は、その全体が伸縮性材料の一体成形により形成されており、その長尺方向となる幅方向の両端部12,13が、バックボード2Bの背面部にそれぞれ差し込まれて掛着されることによって弾性的に掛着した状態となって保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの収容物保持構造に関する。詳しくは、車両用シートのシートバックの背面部に設けられた幅方向に長尺な保持部材によって、保持部材とシートバックの背面部との間の保持空間内に高さ方向から差し込まれた収容物を、シートバックの背面部に弾性的に押し付けて保持することのできる車両用シートの収容物保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートにおいて、シートバックの背面部に、取扱い説明書や小物等の冊子や用具を収容することのできる収容部が付設された構成が知られている。ここで、下記特許文献1には、フォークリフト等の産業車両用シートにおいて、シートバックの背面部に、上部に開口を有したポケット状の収容部が付設された構成が開示されている。この開示では、シートバックの背面部に、同背面部との間に収容用のポケット空間を形成するように、樹脂製薄板状のカバー部材が組み付けられている。
【0003】
上記したカバー部材は、シートバックの背面部との間に形成されるポケット空間が比較的浅めに形成されるように、その背丈が比較的短く形成されている。そして、同カバー部材は、そのポケット空間内に収容した収容物の保持性を担保しつつも、ポケット空間内への出し入れ操作性を良くするために、ポケット空間の上部側の開口空間が底部側の空間よりも広くなって形成されている。
【0004】
これにより、例えば、上記したポケット空間内に比較的薄手の冊子が収容されると、この冊子は、シートバックの後傾した背凭れ姿勢に沿って、カバー部材に凭れ掛かるように倒れ込んでしまうため、折れ曲がるなどして保持状態が安定しなくなってしまうことがある。そこで、この開示では、上記した収容部のポケット空間の上部箇所に、収容物の上半部分を保持できるようにする保持部材としてのベルトが付設されている。
【0005】
このベルトは、シートバックの背面部に横幅方向に帯長が向けられて配設されており、その両端がシートバックにそれぞれ結合固定されることにより、同シートバックの背面部との間に、上記した比較的薄手の冊子を上方側から差し込むことのできる狭い保持空間が形成されるようになっている。ここで、上記したベルトは、その両端に帯状のゴムや引張バネ等の弾性部材が結合されており、これら弾性部材を介してシートバックに結合されている。
【0006】
これにより、上記したベルトは、収容物の大きさ(厚さ)に応じて弾性的に引張り込まれて保持空間を広げられるようになっており、また、保持空間に収容した収容物を上記した弾性部材の弾性を利用して、シートバックの背面部に弾性的に押さえ付ける態様で保持できるようになっている。
【特許文献1】特開平11−198689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記開示の従来技術では、ベルトは、ナイロンやポリエステル等の非伸縮性の素材によって形成されており、その両端にゴム製の弾性部材が結合された複合構成となっており、部品点数が多く、組み付けに工数や時間のかかる構成となっている。
【0008】
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、シートバックの背面部に配設される保持部材をより簡素にかつ合理的に構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の車両用シートの収容物保持構造は次の手段をとる。
先ず、第1の発明は、車両用シートのシートバックの背面部に設けられた幅方向に長尺な保持部材によって、保持部材とシートバックの背面部との間の保持空間内に高さ方向から差し込まれた収容物を、シートバックの背面部に弾性的に押し付けて保持することのできる車両用シートの収容物保持構造である。保持部材は、その全体が伸縮性材料の一体成形により形成されている。この保持部材は、その長尺方向となる幅方向の両端部が、シートバックの背面部にそれぞれ差し込まれて掛着されることによって弾性的に掛着した状態となって保持されるようになっている。
【0010】
この第1の発明によれば、保持部材は、その全体が伸縮性材料の一体成形によって形成され、各端部がシートバックの背面部に差し込まれて掛着されることにより、同背面部に弾性的に掛着した状態に保持される。そして、保持部材は、シートバックの背面部との間の保持空間内に収容物が高さ方向から差し込まれることにより、その弾性によって収容物をシートバックの背面部に弾性的に押し付けて保持する。このように、両端部にシートバックの背面部との掛着構造を備えた保持部材を、伸縮性材料の一体成形によってより簡素にかつ合理的に構成することができる。
【0011】
次に、第2の発明は、上述した第1の発明において、保持部材は、その両端部が、シートバックの背面部に向いた方向に差し込まれて掛着されて、その幅方向に長尺に延びる保持帯部が、シートバックの背面部との間に隙間を有して保持空間を形成した状態で組み付けられている。
【0012】
この第2の発明によれば、保持部材の両端部がシートバックの背面部に向いた方向に差し込まれて掛着される構成となっていることにより、保持部材の弾性作用力は、各端部をシートバックの背面部から抜去する方向とは異なる方向に作用する。したがって、保持部材が引張り込まれて緊張した状態で配されても、各端部をシートバックの背面部との掛着状態から外れ難くすることができる。また、上記した向きへの各端部の掛着により、保持部材は、その保持帯部が、シートバックの背面部との間に予め保持空間を有した状態で組み付けられる。これにより、同保持空間内に収容物を差し込む操作を容易にすることができる。
【0013】
次に、第3の発明は、上述した第1又は第2の発明において、保持部材の少なくとも一方側の端部は、同端部の径が細められたくびれ部位が、シートバックの背面部に形成された差込孔内に差し込まれた状態で、同差し込み方向に対して垂直な方向に位置ずれ操作されることにより、同くびれ部位が、差込孔とひとつなぎとなって形成された差込孔よりも小径の嵌合孔内に嵌合して、シートバックの背面部に抜き差し方向に対して掛着した状態となる。
【0014】
この第3の発明によれば、保持部材が上記した掛着構造となっていることにより、保持部材の端部を弾性変形させることなくシートバックの背面部に差し込んで掛着させることができる。したがって、保持部材が比較的硬く構成されている場合にも、大きな力を必要とせずに端部の掛着操作を簡便に行えるようにすることができる。
【0015】
次に、第4の発明は、上述した第3の発明において、保持部材の他方側の端部は、シートバックの背面部に差し込まれることによって弾性的に掛着する構成となっている。そして、他方側の端部の掛着状態で、一方側の端部が保持部材の弾性に抗して引張り込まれた状態でシートバックの背面部の差込孔内に差し込まれることにより、この一方側の端部が弾性変形に伴う復元力によってその掛着方向となる嵌合孔内に向けて附勢案内されるようになっている。
【0016】
この第4の発明によれば、保持部材の他方側の端部をシートバックの背面部に掛着させた状態で、一方側の端部を引張り込んで差込孔内に差し込むことにより、同一方側の端部は、保持部材の引張り込んだ附勢によって、その掛着方向となる嵌合孔内に向けて移動案内される。このように、保持部材を引張り込む前に掛着させる側の端部(他方側の端部)を単純な差し込み操作によって掛着させる構成とし、引張り込んだ状態で掛着させる側の端部(一方側の端部)を差し込み後に附勢方向に従って位置ずれさせる構成としたことにより、保持部材の掛着操作を簡便にすることができる。また、一方側の端部の掛着方向が、保持部材の弾性的な復元力の働く方向に設定されていることにより、この一方側の端部を嵌合孔に掛着させた状態から外れ難くすることができる。
【0017】
次に、第5の発明は、上述した第1から第4のいずれかの発明において、保持部材は、その幅方向に長尺に延びる保持帯部の断面形状が、収容物の保持空間内への差し込み移動を案内することのできる案内面を有した形状に形成されている。
【0018】
この第5の発明によれば、保持部材の保持帯部の断面形状が上記した断面形状に形成されていることにより、収容物を保持空間内に差し込み易くすることができる。
【0019】
次に、第6の発明は、上述した第5の発明において、保持帯部の断面形状が正円形状に形成されている。
【0020】
この第6の発明によれば、保持帯部の断面形状が正円形状に形成されていることにより、保持帯部が捩れた状態で設けられても、常にその湾曲した外周面を収容物の差し込み移動を案内する案内面として一定の向きに配することができる。したがって、収容物を保持空間内により一層差し込み易くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明を実施するための最良の形態の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0022】
始めに、実施例1の車両用シートの収容物保持構造の構成について、図1〜図5を用いて説明する。ここで、図1には、本発明の車両用シートに相当する産業車両用シート1の概略構成が示されている。この車両は、荷物の積み降ろしや運搬をする目的で使用される公知のフォークリフトとして構成されている。ここで、上記した産業車両用シート1は、背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3とを有して構成されている。
【0023】
上記したシートバック2は、その背面部に、硬質樹脂製のバックボード2Bが付設されている。そして、このバックボード2Bの下方部には、車両の取扱い説明書や小物等の冊子や用具を収容することのできる収容部Mを構成する硬質樹脂製の収容カバー2Aが取り付けられている。この収容カバー2Aは、バックボード2Bとの間に形成される収容部Mが比較的浅めに形成されるように、その背丈が比較的短く形成されている。
【0024】
そして、この収容カバー2Aは、収容部M内に収容した収容物Pの保持性を担保しつつも、収容物Pの出し入れ操作性を良くするために、収容部Mの上部側の開口空間が底部側の内部空間よりも広くなって形成されている。これにより、例えば、上記した収容部M内に比較的薄手の面状の収容物Pが収容された場合に、この収容物Pが、シートバック2の後傾した背凭れ姿勢に沿って、収容カバー2Aに凭れ掛かるように倒れ込んでしまい、折れ曲がるなどして保持状態が安定しなくなってしまうことがある。
【0025】
そこで、上記したバックボード2Bの背面部には、上記した収容部Mの上方部箇所に、収容部Mから上方側に突出した収容物Pの上半部分を倒れ込まないように保持することのできる保持バンド10が付設されている。ここで、保持バンド10が本発明の保持部材に相当する。この保持バンド10は、その全体が、伸縮性のあるゴム材の一体成形によって形成されている。そして、この一体成形により、保持バンド10は、バックボード2Bの背面部に幅方向にわたって広く掛け渡される長尺な形状に形成されており、その両端部12,13が、それぞれバックボード2Bに差し込みによって弾性的に掛着させることのできる掛着構造を備えた形状に形成されている。
【0026】
ここで、図2に示されるように、上記した保持バンド10の両端部12,13が差し込まれて掛着されるバックボード2Bは、その幅方向の中央部に、後方側に面を向けた平板部B1が形成されており、この平板部B1の幅方向の両側部に、互いに内向するように後方側に面を傾けた傾斜板部B2,B2がそれぞれ形成されてなる。そして、上記した保持バンド10のうち、図示左方側の端部12(本発明の他方側の端部に相当する。)は、同左方側の傾斜板部B2に貫通形成された正円形状の差込孔Bs内に差し込まれることによって、この左方側の傾斜板部B2に抜き差し方向に弾性的に掛着した状態となって組み付けられるようになっている。
【0027】
また、図示右方側の端部13(本発明の一方側の端部に相当する。)は、同右方側の傾斜板部B2に貫通形成された正円形状の差込孔Bt内に差し込まれてから、これを、差込孔Btとひとつなぎに形成された小径の嵌合孔Bu内に位置ずれ移動させて嵌合させることにより、この右方側の傾斜板部B2に対して抜き差し方向に弾性的に掛着した状態となって組み付けられるようになっている。以下、上記した保持バンド10の各端部12,13の掛着構造について、更に詳しく説明していく。
【0028】
ここで、図3には、図2で上記した保持バンド10の図示左方側の端部12の傾斜板部B2に対する掛着構造が拡大されて示されている。同図に示されるように、保持バンド10の図示された側の端部12は、その差し込み方向の先端となる先端側部位12Aと根元側となる根元側部位12Bとが、互いに相反する方向に向いた略円錐型形状に膨らんで形成されており、両部位12A,12Bの間に形状が細められたくびれ部位12Cが形成された形状となっている。
【0029】
上記した端部12は、先端側部位12A及び根元側部位12Bの円錐形状の各底面の直径寸法が、傾斜板部B2に貫通形成された正円形状の差込孔Bsの孔径寸法よりも大きく形成されている。そして、上記した先端側部位12Aの円錐形状の差込方向の先端部には、同差込方向に棒状に長く延び出した引張片12Dが形成されている。したがって、上記構成の保持バンド10の端部12は、上記した棒状に延び出した引張片12Dを差込孔Bs内に差し込んで、この差し込まれた引張片12Dを取付け作業者が手で引張り込むことにより、傾斜板部B2に弾性的に掛着させた状態として取り付けることができる。
【0030】
具体的には、引張片12Dが引張り込まれることにより、上述した先端側部位12Aが、その円錐形状の傾斜面の案内によって、差込孔Bsの孔内に弾性的に押し窄められながら差し込まれて、くびれ部位12Cが差込孔Bs内に差し込まれた位置で、差込孔Bsから脱して復元した状態となる。これにより、保持バンド10の端部12は、上記した先端側部位12Aと根元側部位12Bとの間に傾斜板部B2を挟み込んだ状態となる。
【0031】
これにより、同端部12は、差込孔Bsから引き抜かれる方向の力がかけられても、その先端側部位12Aの円錐形状の底面が傾斜板部B2に面当てされて強い力で支えられるため、引き抜かれない状態となる。次に、図2に戻って、上記した保持バンド10の図示右方側の端部13の傾斜板部B2に対する掛着構造について説明する。ここで、図4には、同端部13の掛着構造が拡大されて示されている。
【0032】
同図に示されるように、保持バンド10の図示された側の端部13は、その差し込み方向の先端となる先端側部位13Aと根元側となる根元側部位13Bとが、互いに相反する方向に向いた略円錐型形状に膨らんで形成されており、両部位13A,13Bの間に形状が細められたくびれ部位13Cが形成された形状となっている。
【0033】
上記した端部13は、先端側部位13A及び根元側部位13Bの円錐形状の各底面の直径寸法が、傾斜板部B2に貫通形成された正円形状の差込孔Btの孔径寸法よりも若干小さく形成されている。したがって、上記構成の保持バンド10の端部13は、上記した先端側部位13Aを差込孔Btの内部に差し込むことにより、くびれ部位13Cを差込孔Bt内に差し込んだ状態とすることができる。
【0034】
ここで、上記した差込孔Btには、これより孔径が小さな正円形状の嵌合孔Buが一部形状が重なってひとつなぎに形成されている。この嵌合孔Buは、上述した端部13のくびれ部位13Cの外形と略同じ孔径寸法に形成されている。したがって、上述した差込孔Bt内に差し込んだくびれ部位13Cを、嵌合孔Bu内に位置ずれさせて移動させることにより、同端部13が、上記した先端側部位13Aと根元側部位13Bとの間に傾斜板部B2を挟み込んだ状態となる。
【0035】
これにより、端部13は、差込孔Btから引き抜かれる方向の力がかけられても、その先端側部位13Aの円錐形状の底面が傾斜板部B2に面当てされて強い力で支えられるため、引き抜かれない状態となる。なお、同側の端部13の先端側部位13Aの円錐形状の先端部にも、棒状に延び出した引張片13Dが形成されているため、端部13を差込孔Bt内に差し込む際に、先端側部位13Aが差込孔Btの内周面と干渉して差し込み難い場合には、引張片13Dを引張り込むことによって、端部13を差込孔Bt内に簡便に差し込むことができる。
【0036】
ところで、図2に戻って、上記した保持バンド10は、先ず、図示左方側に示された側の端部12が、同左方側の傾斜板部B2の差込孔Bs内に差し込まれて掛着され、次いで、図示右方側に示された側の端部13が、同右方側の傾斜板部B2の差込孔Bt内に差し込まれて掛着されることにより、バックボード2Bに取り付けられるようになっている。
【0037】
このとき、図示右方側の端部13は、保持バンド10を引張り込んだ状態で同側の傾斜板部B2の差込孔Bt内に差し込まれ、この状態から保持バンド10全体を引張り込んだ操作力を弛めることによって、同端部13が保持バンド10の弾性変形した復元力によって、その掛着方向となる嵌合孔Bu内に向けて(保持バンド10の復元方向に)附勢案内されるようになっている。したがって、同端部13の掛着操作を、保持バンド10の復元力の作用を利用して行うことができるため、掛着作業を簡便に行うことができる。
【0038】
また、先に掛着される図示左方側の端部12については、保持バンド10に引張力がかけられていない無負荷状態で、差込孔Bs内に差し込み操作を行うことができるため、同端部12を掛着させる操作も簡便に行うことができる。上記した保持バンド10は、その張設された引張力によって、弛みのない緊張した状態でバックボード2Bに幅方向に長尺となる向きに取り付けられており、この張設された引張力によって、各端部12,13同士が互いに引き寄せられる方向に附勢力がかけられた状態となって取り付けられている。
【0039】
これにより、図示左方側の端部12は、傾斜板部B2の差込孔Bsから引き抜かれる方向とは異なる方向(垂直な方向に)に保持バンド10からの引張力を受けることとなり、図示右方側の端部13も、傾斜板部B2の嵌合孔Buから引き抜かれる方向とは異なる方向(差込孔Btから嵌合孔Buに向けて差し込まれる方向)に保持バンド10からの引張力を受けることとなる。これにより、各端部12,13は、上記した保持バンド10の復元に伴う引張力を受けても、各傾斜板部B2,B2との掛着状態から外れ難くなっている。
【0040】
そして、上記のように組み付けられた保持バンド10は、各端部12,13の組み付けが、上述したようにバックボード2Bの各傾斜板部B2,B2に対して板厚方向に真っ直ぐに差し込まれて組み付けられる構成となっていることにより、その長尺状に延びる保持帯部11とバックボード2Bの平板部B1との間に隙間を有して保持空間Nを形成した状態となって組み付けられている。ここで、保持バンド10は、上記した長尺状に延びる保持帯部11によって、収容物Pをその弾発力によってバックボード2Bの平板部B1に押し付けて挟み込んだ状態として保持する構成となっている。
【0041】
この保持帯部11は、図5に示されるように、その断面形状(外周形状)が正円形状に形成されている。これにより、保持帯部11は、捩れた状態で設けられても、常に、その湾曲した外周面を、収容物Pの保持空間N内への差し込み移動を案内する案内面として、一定の向きに配した状態とすることができるようになっている。したがって、収容物Pを保持空間N内に上方側から簡便に差し込むことができる。
【0042】
続いて、本実施例の車両用シートの収容物保持構造の使用方法について説明する。すなわち、図1に示されるように、収容対象となる収容物Pが収容部Mから上方側に大きく張り出す大きさのものである場合には、これを前述した保持バンド10とバックボード2Bとの間の隙間(保持空間N)内に上方側から差し込んで収容部M内にセットすればよい。これにより、収容物Pは、その上半部が保持バンド10の保持帯部11によってバックボード2Bに押さえ付けられると共に、その下半部が収容部M内に収容された状態となって安定して保持される。
【0043】
このように、本実施例の車両用シートの収容物保持構造によれば、保持バンド10は、その全体が伸縮性材料(ゴム材)の一体成形によって形成され、各端部12,13がシートバック2の背面部(バックボード2B)に差し込まれて掛着されることにより、同背面部に弾性的に掛着した状態となって保持される。このように、両端部12,13にバックボード2Bとの掛着構造を備えた保持バンド10を、伸縮性材料の一体成形によって、より簡素にかつ合理的に構成することができる。
【0044】
また、保持バンド10の両端部12,13がシートバック2の背面部(バックボード2Bの各傾斜板部B2,B2)に真っ直ぐに向いた方向に差し込まれて掛着される構成となっていることにより、保持バンド10の弾性作用力は、各端部12,13をシートバック2の背面部から抜去する方向とは異なる方向に作用する。したがって、保持バンド10が引張り込まれて緊張した状態で配されても、各端部12,13をシートバック2の背面部との掛着状態から外れ難くすることができる。また、上記した向きへの各端部12,13の掛着により、保持バンド10は、その保持帯部11が、シートバック2の背面部(バックボード2Bの平板部B1)との間に予め保持空間Nを有した状態で組み付けられる。これにより、同保持空間N内に収容物Pを差し込む操作を容易にすることができる。
【0045】
また、保持バンド10の一方側の端部13は、同端部13の径が細められたくびれ部位13Cが、バックボード2Bの傾斜板部B2に形成された差込孔Bt内に差し込まれた状態で、同差し込み方向に対して垂直な方向に位置ずれ操作されることにより、差込孔Btとひとつなぎとなって形成された差込孔Btよりも小径の嵌合孔Bu内に嵌合して、傾斜板部B2に抜き差し方向に対して掛着した状態となる。したがって、同端部13を弾性変形させることなく傾斜板部B2に差し込んで掛着させることができ、保持バンド10が比較的硬く構成されている場合にも、大きな力を必要とせずに端部13の掛着操作を簡便に行えるようにすることができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態を一つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。例えば、保持バンド10(保持部材)を形成する伸縮性材料としてゴムを例示したが、具体的には、天然ゴムに代表される汎用ゴムや、シリコンゴム、フッソゴムに代表される特殊ゴムが適用可能である。また、各種の合成樹脂も適用可能であり、具体的には、例えば汎用樹脂の中では、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンその他のポリオレフィン系の樹脂や、各種のナイロンに代表されるポリアミド樹脂、フッソ樹脂等、伸縮性のある樹脂が適用可能である。
【0047】
また、保持部材の両端部の掛着構造は、両方共が差込孔内に単純に差し込まれるだけで弾性的に掛着する構造となっているものや、両方共が差込孔内に差し込まれた後に小径の嵌合孔内に位置ずれ操作されて掛着する構造となっているものであってもよい。また、保持部材の各端部は、バックボードの傾斜板部ではなく平板部にそれぞれ掛着されるようになっていてもよい。また、保持部材は、各端部の掛着構造によって、保持帯部とバックボードの平板部との間に隙間のない状態に組み付けられるようになっていてもよい。
【0048】
また、保持部材の保持帯部の断面形状は、正円形状以外にも、楕円形状や多角形状など、収容物の保持空間内への差込み移動を案内する案内面を湾曲面や傾斜面として有する形状であれば良く、特に限定されるものではない。但し、正円形状以外の断面形状では、保持帯部が捩れて配された場合に、案内面が正規の向きに配されない箇所が生じ、案内機能が低下することがあることに留意が必要である。
【0049】
また、図6に示されるように、保持バンド10の他方側の端部13が差し込まれる差込孔Btが三角形状に形成されており、この三角形状の傾斜した内周面によって、端部13の嵌合孔Buへの位置ずれ移動が案内されるようになっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例1の産業車両用シートの収容物保持構造の概略構成を表した斜視図である。
【図2】図1のII-II線断面図である。
【図3】保持バンドの他方側の端部の掛着構造を表した部分拡大図である。
【図4】保持バンドの一方側の端部の掛着構造を表した部分拡大図である。
【図5】図2のV-V線断面図である。
【図6】変形実施例としての保持バンドの一方側の端部の掛着構造を表した部分拡大図である。
【符号の説明】
【0051】
1 産業車両用シート(車両用シート)
2 シートバック
2A 収容カバー
2B バックボード(背面部)
B1 平板部
B2 傾斜板部
Bs 差込孔
Bt 差込孔
Bu 嵌合孔
3 シートクッション
10 保持バンド(保持部材)
11 保持帯部
12 端部(他方側の端部)
12A 先端側部位
12B 根元側部位
12C くびれ部位
12D 引張片
13 端部(一方側の端部)
13A 先端側部位
13B 根元側部位
13C くびれ部位
13D 引張片
M 収容部
N 保持空間
P 収容物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシートバックの背面部に設けられた幅方向に長尺な保持部材によって該保持部材と前記シートバックの背面部との間の保持空間内に高さ方向から差し込まれた収容物を前記シートバックの背面部に弾性的に押し付けて保持することのできる車両用シートの収容物保持構造であって、
前記保持部材はその全体が伸縮性材料の一体成形により形成されており、該保持部材はその長尺方向となる幅方向の両端部が前記シートバックの背面部にそれぞれ差し込まれて掛着されることによって弾性的に掛着した状態となって保持されるようになっていることを特徴とする車両用シートの収容物保持構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートの収容物保持構造であって、
前記保持部材はその両端部が前記シートバックの背面部に向いた方向に差し込まれて掛着されてその幅方向に長尺に延びる保持帯部が前記シートバックの背面部との間に隙間を有して前記保持空間を形成した状態で組み付けられていることを特徴とする車両用シートの収容物保持構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用シートの収容物保持構造であって、
前記保持部材の少なくとも一方側の端部は同端部の径が細められたくびれ部位が前記シートバックの背面部に形成された差込孔内に差し込まれた状態で同差し込み方向に対して垂直な方向に位置ずれ操作されることにより同くびれ部位が前記差込孔とひとつなぎとなって形成された該差込孔よりも小径の嵌合孔内に嵌合して前記シートバックの背面部に抜き差し方向に対して掛着した状態となることを特徴とする車両用シートの収容物保持構造。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用シートの収容物保持構造であって、
前記保持部材の他方側の端部は前記シートバックの背面部に差し込まれることによって弾性的に掛着する構成となっており、該他方側の端部の掛着状態で前記一方側の端部が当該保持部材の弾性に抗して引張り込まれた状態で前記シートバックの背面部の差込孔内に差し込まれることにより該一方側の端部が弾性変形に伴う復元力によってその掛着方向となる前記嵌合孔内に向けて附勢案内されるようになっていることを特徴とする車両用シートの収容物保持構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両用シートの収容物保持構造であって、
前記保持部材はその幅方向に長尺に延びる保持帯部の断面形状が前記収容物の保持空間内への差し込み移動を案内することのできる案内面を有した形状に形成されていることを特徴とする車両用シートの収容物保持構造。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用シートの収容物保持構造であって、
前記保持帯部の断面形状が正円形状に形成されていることを特徴とする車両用シートの収容物保持構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−75468(P2010−75468A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247531(P2008−247531)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】