説明

車両用シート

【課題】 燃焼が起きても有毒物質が発生しないようにしたパッドを備えた車両用シートを提供する。
【解決手段】 車両用シートSの内部のパッド20を架橋ポリエチレンの発泡樹脂にて構成する。このパッド20の少なくとも表側の面に架橋ポリエチレン発泡樹脂よりクッション性の高い三次元ネット50を設ける。架橋ポリエチレン発泡樹脂製パッド20の中央部の凹んだ主部21の両側には盛り上がり部22,22を設け、三次元ネット50が、架橋ポリエチレン発泡樹脂製パッド20の主部21を跨いで両側の盛り上がり部22,22にも被さるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用のシートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用シートの内部にはウレタンフォームからなるパッドが設けられている。パッドの前面及び側面には表皮カバーが被せられ、背面にはパンフレームやSバネが設けられている。表皮カバーは、ファブリックにウレタンフォームをラミネートしたものが用いられている。
【特許文献1】特開2004−306869
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の車両用シートにはウレタンフォームが多用されている。しかし、ウレタンは、燃焼するとシアンガス等の有害物質が発生するという問題があった。また、リサイクルも容易でない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、内部にパッドを備えた車両用シートにおいて、前記パッドが、ポリエチレンの発泡樹脂、好ましくは架橋ポリエチレンの発泡樹脂からなり、このパッドの少なくとも表側の面に三次元ネットを設けたことを特徴とする。前記三次元ネットは、前記架橋ポリエチレンの発泡樹脂よりクッション性が高いことが好ましい。
パッドがポリエチレン製であるので、燃焼が起きてもシアンガスのような有毒物質が発生しないようにすることができ、安全性を向上させることができる。三次元ネットによってポリエチレン発泡樹脂製パッドのクッション性を補うことができ、ソフト感を得ることができる。三次元ネットによって通気性を持たせることもできる。
【0005】
前記架橋ポリエチレン発泡樹脂は、架橋ポリエチレンのビーズを発泡成形することにより形成するのが好ましい。その発泡倍率は、45倍〜80倍が好ましい。これによって、クッション性を向上させることができる。
前記三次元ネットは、好ましくはポリエステルにて構成されている。これによって、上記ポリエチレン製パッドと同様に燃焼時に有毒物質が発生しないようにすることができる。
前記三次元ネットは、前記パッドの全体を覆っていてもよく、表側の面などのようにソフト感が特に必要な部位だけに限定的に設けることにしてもよい。
前記架橋ポリエチレン発泡樹脂製パッドは、凹んだ主部と、この主部の両側の盛り上がり部を有し、前記三次元ネットが、前記架橋ポリエチレン発泡樹脂製パッドの主部を跨いで両側の盛り上がり部にも被さっていることが好ましい。これによって、着座者にソフト感を確実に与えることができる。パッドの外側面や背面には三次元ネットを設けなくてもよい。これによって、三次元ネットの使用量を必要最小限に止め、コストダウンを図ることができる。
表皮のファブリックは、ポリエステルにて構成されているのが好ましい。三次元ネットをカバーとして代用し、ファブリック製のカバーを省くことにしてもよい。三次元ネットとファブリック製カバーをラミネートすることにしてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、パッドがポリエチレン製であるので燃焼が起きてもシアンガスのような有毒物質が発生しないようにでき、安全性を向上させることができる。リサイクルも容易である。さらに、軽量化を図ることができる。また、三次元ネットによってクッション性を確保できるとともに、通気性を持たせることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、車両用のシートSを示したものである。車両用シートSは、座部と背もたれを有している。図1は、座部のみを図示したものであるが、本発明は背もたれにも適用することができる。
【0008】
車両用シートSの座部は、フレーム10と、パッド20と、表皮カバー30を備えている。
左右のフレーム10の間にSバネ40が設けられている。なお、Sバネ40は、設けなくてもよい場合もある。
【0009】
表皮カバー30は、ポリエステル製のファブリックにて構成されている。カバー30は、パッド20の表側(上側)の面と左右の側面を覆っている。カバー30の縁部は、フレーム10を包むようにしてフレーム10に止着されている。
【0010】
パッド20は、架橋ポリエチレン発泡樹脂にて構成されている。このパッド20は、架橋ポリエチレンのビーズを発泡成形することにより形成される。発泡倍率は、例えば45倍〜80倍である。架橋ポリエチレン発泡樹脂は、架橋していないポリエチレンの発泡樹脂と比べクッション性が大きい。発泡成形時の発泡倍率によってクッション性を調節することができる。
【0011】
パッド20の背面(下面)に上記Sバネ40が宛てられている。
パッド20の表側は、中央の主部21が凹み、両側部22,22が盛り上がっている。パッド20の主部21が、専ら着座者の体を受け、両側の盛り上がり部22が、着座者のサイドに宛がわれる。これによって、着座者をしっかりと支持できるようになっている。
【0012】
このパッド20の表側の面に三次元ネット50が設けられている。この三次元ネット50の上に上記カバー30が被せられている。
【0013】
三次元ネット50は、ポリエステルにて出来、三次元的な網構造(トラス構造)になっており、クッション性や通気性に優れている。三次元ネット50のクッション性は、上記パッド20を構成する架橋ポリエチレン発泡樹脂より十分に大きい。
【0014】
図2に示すように、三次元ネット50は、ほぼ平らな主被さり部51と、この主被さり部51の両側に連なる一対の翼部52,52を一体に有している。翼部52は、主被さり部51よりも表側(上側)へ湾曲されている。図1に示すように、この三次元ネット50の主被さり部51が、パッド20の主部21に宛がわれ接着剤(図示せず)を介して接着されるとともに、翼部52が、盛り上がり部22に宛がわれ接着剤(同じく図示せず)を介して接着されている。これにより、三次元ネット50は、パッド20の主部21のほぼ全体を覆うとともにこの主部21を跨いで両側の盛り上がり部22,22にも被さっている。
【0015】
三次元ネット50の翼部52は、パッド20の主部21と盛り上がり部22の境から盛り上がり部22のほぼ上端付近までの間だけに被さっている。パッド20の盛り上がり部22には段差状の凹部22aが形成されており、この凹部22aに三次元ネット50の翼部52が嵌め込まれ接着されている。好ましくは、凹部22aの側端面と翼部52の端面の間にも接着剤が設けられている。
【0016】
上記のように構成された車両用シートSによれば、パッド20が、架橋ポリエチレン発泡樹脂にて構成されているため、燃焼が起きてもシアンガスのような有毒物質が発生しないようにすることができる。これによって、安全性を向上させることができる。リサイクルも容易である。また、架橋ポリエチレン発泡樹脂はウレタンフォームより比重が軽く、シートSの軽量化を図ることができる。
【0017】
三次元ネット50によって架橋ポリエチレン発泡樹脂のクッション性を補うことができる。三次元ネット50は、パッド20の主部21だけでなく主部21を跨いで両側の盛り上がり部22にも設けられているので、着座者に十分なソフト感を与えることができる。一方、三次元ネット50は、上記のように着座者に触れる部分にだけ設けられ、パッド20の外側面や背面には設けられていない。したがって、三次元ネット50の使用面積を必要最小限にすることができ、コストダウンを図ることができる。
また、三次元ネット50によって通気性を持たせることもできる。三次元ネット50はポリエステル製であるので、架橋ポリエチレン発泡樹脂と同様に、燃焼時の有毒物質の発生が無く、リサイクル性も良好である。
【0018】
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の改変をなすことができる。
例えば、三次元ネット50が、架橋ポリエチレン発泡樹脂製パッド20の外側面にも被さるようにしてもよく、架橋ポリエチレン発泡樹脂製パッド20の全体を覆うようにしてもよい。
ファブリック製の表皮カバー30を省略し、三次元ネット50を外部に露出させ、この三次元ネット50が表皮カバー30を兼ねるようにしてもよい。
三次元ネット50とファブリック製表皮カバー30をラミネート成形して一体の積層構造にしてもよい。
一人掛けのシートに限られず、複数人掛けのベンチシートにも適用できる。その場合、パッド20には凹んだ主部21が複数設けられ、隣り合う主部21,21の間とパッド20の両端部とに盛り上がり部22がそれぞれ設けられ、三次元ネット50が複数の主部21と盛り上がり部22に跨っているのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートの断面図である。
【図2】上記車両用シートの架橋ポリエチレン発泡樹脂製パッドと三次元ネットとの分解断面図である。
【符号の説明】
【0020】
S 車両用シート
10 フレーム
20 パッド
21 パッドの主部
22 パッドの盛り上がり部
22a 凹部
30 表皮カバー
40 Sバネ
50 三次元ネット
51 三次元ネットの主被さり部
52 三次元ネットの翼部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にパッドを備えた車両用シートにおいて、
前記パッドが、架橋ポリエチレンの発泡樹脂からなり、このパッドの少なくとも表側の面に前記架橋ポリエチレン発泡樹脂よりクッション性の高い三次元ネットを設けたことを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記架橋ポリエチレン発泡樹脂製パッドが、凹んだ主部と、この主部の両側の盛り上がり部を有し、
前記三次元ネットが、前記架橋ポリエチレン発泡樹脂製パッドの主部を跨いで両側の盛り上がり部にも被さっていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−314500(P2006−314500A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139516(P2005−139516)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000100366)しげる工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】