説明

車両用シート

【課題】同乗者が装着しているベルトの掛け方に不備があると、この不備を運転手に気付かせることができる車両用シートを提供すること。
【解決手段】車両用シート1は、シートクッション10と、シートバック20と、着座した乗員Mを拘束可能なベルト32を有するシートベルト30とを備えており、ベルト32の装着を検出可能となっている。また、車両用シート1は、シートバック20に対するベルト32の近接または当接を検出可能なベルト検出手段22a、34と、車内の乗員に対して音、光、振動等を報知可能な報知手段50とを備えている。そして、着座した乗員Mがベルト32を装着しているとき、ベルト検出手段22a、34がベルト32の近接または当接を検出すると、報知手段50が車内の乗員に対して音、光、振動等を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、詳しくは、シートクッションとシートバックと着座した乗員を拘束可能なベルトを有するシートベルトとを備えベルトの装着を検出可能な車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートクッションとシートバックと着座した乗員を拘束可能なベルトを有するシートベルトとを備えた車両用シートが既に知られている。ここで、下記特許文献1には、バックルに対するタングのプレートの着脱を検出することでベルトの装着を検出可能なベルト着用センサを備えた車両用シートが開示されている。これにより、バックルからタングのプレートが外れたこと(ロック解除したこと)をベルト着用センサが検出すると、ダッシュボードに装着された警告ユニットを作動させることができる。そのため、車両の走行中において、運転手は、運転手自身の知らないうちに、同乗者(例えば、年端のいかない子供であり、以下、単に、「子供」と記す)が同乗者自身を拘束しているベルトを外しても(タングのプレートをバックルから外しても)、この外したことを警告ユニットの作動によって知ることができる。したがって、運転手は、直ぐに、子供のベルトを再装着させて安全を確保できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−506241号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術は、バックルからタングのプレートを外さない限り、警告ユニットは作動しない構成となっている。そのため、図6に示すように、子供mが装着しているベルト132の掛け方に不備があっても(例えば、ショルダーベルト132bが上半身から逸脱した状態で子供mにベルト132が装着されているという不備があっても)、警告ユニットは作動しない。したがって、タング136のプレートがバックル138にロックされている限り、子供mが装着しているベルト132の掛け方に不備があっても、運転手(図示しない)はこの不備を気付くことができないという問題が発生していた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、同乗者が装着しているベルトの掛け方に不備があると、この不備を運転手に気付かせることができる車両用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、シートクッションと、シートバックと、着座した乗員を拘束可能なベルトを有するシートベルトと、を備え、ベルトの装着を検出可能な車両用シートであって、シートバックに対するベルトの近接または当接を検出可能なベルト検出手段と、車内の乗員に対して音、光、振動等を報知可能な報知手段と、を備えており、着座した乗員がベルトを装着しているとき、ベルト検出手段がベルトの近接または当接を検出すると、報知手段が車内の乗員に対して音、光、振動等を報知することを特徴とする構成である。
この構成によれば、例えば、2列目シートである車両用シートに着座させた同乗者である子供にベルトを装着させた状態で車両を中速度で走行させているとき、子供が装着しているベルトの掛け方に不備があると(例えば、ショルダーベルトが上半身から逸脱した状態で子供にベルトが装着されているという不備があると)、リトラクタの巻き取り力によってショルダーベルトがシートバックのシートカバーに近接する。これにより、ベルト検出手段は、ベルトがシートバックに近接したことを検出する。そのため、この検出に基づいて警報器を作動させることができる。したがって、警報器は、子供が装着しているベルトの掛け方に不備があることを運転手に対して報知できる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シートであって、ベルト検出手段は、ベルトに織り込まれた導電糸と、シートバックの背凭れ面に織り込まれた導電糸とから構成されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、両導電糸からベルト検出手段が構成されているため、ベルトおよびシートバックの背凭れ面といった柔軟なものにも対応させることができる。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両用シートであって、ベルトに織り込まれた導電糸および/またはシートバックの背凭れ面に織り込まれた導電糸は、複数の導電糸から構成されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、ベルトに織り込まれた導電糸およびシートバックの背凭れ面に織り込まれた導電糸において、その一本が切断されたとしても、ベルトがシートバックに近接したことの検出に影響を及ぼすことがない。したがって、検出の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施例に係る2列目シートの全体斜視図である。
【図2】図2は、図1の2列目シートに着座した子供がシートベルトを装着した状態を示している。
【図3】図3は、図1の2列目シートの電気的構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、図2において、子供の上半身がショルダーベルトから逸脱した状態を示している。
【図5】図5は、図1の2列目シートの制御を示すフロー図である。
【図6】図6は、従来技術に係る車両用シートにおいて、子供の上半身がショルダーベルトから逸脱した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜5を用いて説明する。なお、この実施例では、車両用シートとして、運転席の後の2列目シート(以下、単に「2列目シート1」と記す)を例に説明することとする。また、この2列目シート1の乗員として、年端のいかない子供(以下、単に「子供M」)を例に説明することとする。
【0011】
まず、図1〜2を参照して、2列目シート1の全体構成を説明する。2列目シート1は、シートクッション10とシートバック20とを備えており、着座した子供Mを拘束可能なシートベルト30を有する構成となっている。以下に、これらシートクッション10、シートバック20、シートベルト30を個別に説明していく。
【0012】
はじめに、シートクッション10から説明していく。シートクッション10は、公知のものでよく、このシートクッション10の内部には着座センサ12(図1〜2において、図示しない)が設けられている。これにより、シートクッション10(2列目シート1)に子供Mが着座したか否かを検出できる。
【0013】
また、シートクッション10の内部には、シートECU40(図1〜2において、図示しない)が設けられている。これにより、2列目シート1は、後述する図5に示す制御を行うことができる。また、このシートクッション10のインナ側の側部には、後述するシートベルト30のタング36のプレート36aを着脱可能(ロック可能)なバックル38が設けられている。
【0014】
次に、シートバック20を説明する。シートバック20も、公知のものでよく、このシートバック20の内部には後述するベルト32を巻き取り可能なリトラクタ(図示しない)が設けられている。また、このシートバック20の表面を覆っているシートカバー22には、複数の導電糸22aが織り込まれている。図1において、シートカバー22に記載された点線が織り込まれた複数の導電糸22aを示している。また、このシートバック20のインナ側の肩口には、音、光、振動等により警報を発し可能な警報器50が設けられている。この警報器50が、特許請求の範囲に記載の「報知手段」に相当する。
【0015】
最後に、シートベルト30を説明する。シートベルト30も、公知のものでよく、ベルト32と、タング36と、バックル38とから構成されている。
【0016】
ベルト32は、着座した子供Mを拘束するものであり、ベルト32の一端は、シートバック20のアウタ側の側部に締結されており、ベルト32の他端は、上述したように、シートバック20の内部のリトラクタに締結されている。また、このベルト32には、複数の導電糸34が織り込まれている。図1において、ベルト32に記載された点線が織り込まれた複数の導電糸34を示している。
【0017】
これら両導電糸22a、34により、ベルト32がシートバック20に近接したか否かを検出できる。なお、これら両導電糸22a、34が、特許請求の範囲に記載の「ベルト検出手段」に相当する。
【0018】
なお、説明の便宜上、このベルト32のうち、その一端側と後述するタング36との間をラップベルト32aと記し、その他端側と後述するタング36との間をショルダーベルト32bと記すこととする。
【0019】
タング36は、そのプレート36aを後述するバックル38に差し込んでロックすることで、ベルト32による子供の拘束を保持するものである(図2参照)。この図2に示すように、ベルト32による子供の拘束を保持している状態をベルト32の装着状態と記すこととする。このタング36は、そのスリット(図示しない)の縁がベルト32に設けられた突起に引っ掛かる格好でベルト32からぶら下げられている(図1参照)。
【0020】
バックル38は、上述したように、バックル38自身に差し込んだタング36のプレート36aをロックするものであり、上述したように、シートクッション10のインナ側の側部に設けられている。このバックル38の内部には、ベルト着用センサ38a(図1〜2において、図示しない)が設けられている。これにより、タング36のプレート36aがバックル38にロックされたか否か、すなわち、着座した子供Mがベルト32を装着したか否かを検出できる。
【0021】
次に、図2を参照して、上述した2列目シート1の電気的構成を説明する。着座センサ12は、シートECU40に対して電気的に接続されている。これにより、シートECU40は、シートクッション10(2列目シート1)に子供Mが着座したか否かを判定できる。
【0022】
シートバック20の複数の導電糸22aは、シートECU40に対して電気的に接続されている。一方、ベルト32の複数の導電糸34も、シートECU40に対して電気的に接続されている。これらにより、シートECU40は、ベルト32がシートバック20に近接したか否かを判定できる。すなわち、シートECU40は、ベルト32を装着した子供Mの上半身がショルダーベルト32bから逸脱した状態であるか否かを判定できる。
【0023】
ベルト着用センサ38aは、シートECU40に対して電気的に接続されている。これにより、シートECU40は、タング36のプレート36aがバックル38にロックされたか否か、すなわち、子供Mがベルト32を装着しているか否かを判定できる。
【0024】
警報器50は、シートECU40に対して電気的に接続されている。これにより、シートECU40は、警報器50に対して警報を発しさせることができる。車両ボデー側(図示しない)に設けられている車速センサ60は、シートECU40に対して電気的に接続されている。これにより、シートECU40は、車両の速度が所定の速度(例えば、時速15km)以上であるか否かを判定できる。2列目シート1は、このように構成されている。
【0025】
続いて、図2、4〜5を参照して、上述した構成から成る2列目シート1の作用を説明する。この説明にあたって、2列目シート1に着座させた子供Mにベルト32を装着させた状態(図2参照)で車両を中速度(例えば、時速40km)で走行させているとき、運転手の知らないうちに、子供Mの上半身がショルダーベルト32bから逸脱した状態(図4参照)になっているときを説明することとする。
【0026】
まず、運転手は、車両のエンジンをONにする。すると、図5に示すような、シートECU40の制御が開始される。この開始に伴って、シートECU40は、シートクッション10(2列目シート1)に子供Mが着座したか否かを判定する(S1)。この説明では、既に、2列目シート1に子供Mを着座させているため(図2参照)、このステップS1では、YESと判定される。
【0027】
このステップS1において、YESと判定されると、シートECU40は、車両の速度が所定の速度(例えば、時速15km)以上であるか否かを判定する(S2)。この説明では、既に、車両を中速度(例えば、時速40km)で走行させているため、このステップS2では、YESと判定される。
【0028】
このステップS2において、YESと判定されると、シートECU40は、子供Mがベルト32を装着しているか否かを判定する(S3)。この説明では、既に、子供Mにベルト32を装着させた状態になっているため(図2参照)、このステップS3では、YESと判定される。
【0029】
このステップS3において、YESと判定されると、シートECU40は、ベルト32がシートバック20に近接したか否かを判定する(S4)。この説明では、既に、子供Mの上半身がショルダーベルト32bから逸脱した状態になっているため(図4参照)、このステップS4では、YESと判定される。
【0030】
このステップS4において、YESと判定されると、シートECU40は、警報器50に対して警報を発しさせ(S5)これら一連の制御を終了させる。なお、ステップS1〜S2、S4において、NOと判定されると、シートECU40は制御を終了させる。また、ステップS3において、NOと判定とされると、シートECU40はステップS5に進み警報器50に対して警報を発しさせ(S5)これら一連の制御を終了させる。そして、終了させた制御は、再度、ステップS1へ戻され、車両のエンジンがOFFになるまで繰り返される。
【0031】
本発明の実施例に係る2列目シート1は、上述したように構成されている。この構成によれば、2列目シート1に着座させた子供Mにベルト32を装着させた状態で車両を中速度で走行させているとき、子供Mが装着しているベルト32の掛け方に不備があると(例えば、ショルダーベルト32bが上半身から逸脱した状態で子供Mにベルト32が装着されているという不備があると)、リトラクタの巻き取り力によってショルダーベルト32bがシートバック20のシートカバー22に近接する。これにより、ショルダーベルト32b(ベルト32)に織り込まれている複数の導電糸34がシートバック20のシートカバー22に織り込まれている複数の導電糸22aに近接するため、シートECU40は、ベルト32がシートバック20に近接したと判定する。そのため、この判定に基づいてシートECU40は警報器50を作動させる。したがって、警報器50は、子供Mが装着しているベルト32の掛け方に不備があることを運転手に対して報知できる。
【0032】
また、この構成によれば、ベルト32に織り込まれた導電糸34と、シートバック20のシートカバー22に織り込まれた導電糸22aとから、ショルダーベルト32bがシートバック20のシートカバー22に近接したことを判定している。このように両導電糸22a、34からベルト検出手段が構成されているため、ベルト32およびシートカバー22といった柔軟なものにも対応させることができる。
【0033】
また、この構成によれば、両導電糸22a、34は、それぞれ複数備えた構成となっている。そのため、いずれの導電糸22a、34において、その一本が切断されたとしても、ショルダーベルト32bがシートバック20のシートカバー22に近接したことの判定に影響を及ぼすことがない。したがって、判定の精度を高めることができる。
【0034】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、シートクッション10の内部にシートECU40が設けられている構成を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、車両ボデーにシートECU40が設けられていても構わない。もちろん、シートECU40が車両ECUと兼用されていても構わない。
【0035】
また、実施例では、シートバック20のインナ側の肩口に警報器50が設けられている構成を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、車両ボデーに警報器50が設けられていても構わない。
【0036】
また、実施例では、ベルト検出手段は、ベルト32に織り込まれた導電糸34と、シートバック20のシートカバー22に織り込まれた導電糸22aとから構成されている例を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、ベルト検出手段は、圧力センサ、静電容量センサ、スイッチ等から構成されていても構わない。
【0037】
また、実施例では、両導電糸22a、34は、それぞれ複数備えた例を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、両導電糸22a、34は、それぞれ単数で備えた構成であっても構わない。もちろん、両導電糸22a、34のいずれか一方が、複数で、残りのもう一方が単数備えても構わない。
【符号の説明】
【0038】
1 2列目シート(車両用シート)
10 シートクッション
20 シートバック
22a 導電糸(ベルト検出手段)
30 シートベルト
32 ベルト
34 導電糸(ベルト検出手段)
50 警報器(報知手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、シートバックと、着座した乗員を拘束可能なベルトを有するシートベルトと、を備え、ベルトの装着を検出可能な車両用シートであって、
シートバックに対するベルトの近接または当接を検出可能なベルト検出手段と、
車内の乗員に対して音、光、振動等を報知可能な報知手段と、を備えており、
着座した乗員がベルトを装着しているとき、ベルト検出手段がベルトの近接または当接を検出すると、報知手段が車内の乗員に対して音、光、振動等を報知することを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
ベルト検出手段は、ベルトに織り込まれた導電糸と、シートバックの背凭れ面に織り込まれた導電糸とから構成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用シートであって、
ベルトに織り込まれた導電糸および/またはシートバックの背凭れ面に織り込まれた導電糸は、複数の導電糸から構成されていることを特徴とする車両用シート。









【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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