説明

車両用スイッチ

【課題】主に自動車のエンジン始動等の操作に用いられる車両用スイッチに関し、簡易な構成で、安価で確実な操作が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】ケース11内に移動可能に収納された作動体12に磁石13を装着し、この磁石13の磁気を検出手段16Aと16Bで検出すると共に、作動体12の端部またはケース11の内壁部11Aに、弾性部14を設けることによって、磁石13の移動に応じて制御手段18がスイッチング手段17の電気的接離を行うことで、塵埃や湿気、潤滑剤等が多い場所で使用された場合にも、確実なスイッチの電気的接離が行えると共に、作動体12端部と内壁部11Aの衝撃が緩和され、操作時の衝撃音を低減し消音化が図れるため、簡易な構成で、安価で確実な操作が可能な車両用スイッチを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車のエンジン始動等の操作に用いられる車両用スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両のエンジン始動を、機械式キーでの回転操作に加え、押釦等の押圧操作によって行うものが増えており、こうしたエンジン始動用のスイッチとして、押圧操作型の車両用スイッチが多く使用されている。
【0003】
このような従来の車両用スイッチについて、図6を用いて説明する。
【0004】
図6は従来の車両用スイッチの断面図であり、同図において、1は下面開口で略箱型の絶縁樹脂製の上ケース、2は絶縁樹脂製の作動体、3は導電金属薄板製の可動接点で、上ケース1内に作動体2が左右方向へ移動可能に収納されると共に、この作動体2の下面には可動接点3の中央部が固着されている。
【0005】
そして、4は上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成された配線基板で、この上面には複数の固定接点5が形成され、可動接点3の左端が固定接点5に、右端が配線基板4上面にやや撓んだ状態で各々弾接すると共に、配線基板4には配線パターンを介して端子6Aが固定接点5に接続された、コネクタ6が半田付け等によって装着されている。
【0006】
また、7はコイル状に巻回されたばねで、このばね7がやや撓んだ状態で作動体2の右端部と上ケース1の内壁部1Aの間に装着されて、作動体2が左方向へ付勢されている。
【0007】
さらに、8は上面開口で略箱型の絶縁樹脂製の下ケース、9は略リング状で絶縁樹脂製のカバー、10は絶縁樹脂製の押釦で、上ケース1下面を下ケース8が、上ケース1左面をカバー9が各々覆うと共に、作動体2の左端部に押釦10が装着されて、車両用スイッチが構成されている。
【0008】
そして、このように構成された車両用スイッチが、自動車内の運転席前方のフロントパネル部に装着されると共に、複数の固定接点5がコネクタ6を介して車両の電子回路(図示せず)に接続される。
【0009】
以上の構成において、押釦10を指で押圧操作すると、作動体2がばね7を撓めながら右方向へ移動し、この下面に装着された可動接点3の左右端が複数の固定接点5に弾接して、複数の固定接点5が可動接点3を介して電気的に接続された状態となる。
【0010】
また、押釦10から指を離すと、ばね7の弾性復帰力によって作動体2が左方向へ移動して元の状態に戻り、可動接点3の右端も固定接点5から離れて、複数の固定接点5が電気的に切断された状態となる。
【0011】
そして、このような固定接点5の電気的接離を、コネクタ6を介して接続された車両の電子回路が検出し、電子回路から所定の電気信号が出力されて、エンジンの始動や停止等が行われる。
【0012】
なお、このような車両用スイッチは、上記のように、運転席前方のフロントパネル部等の、比較的塵埃や湿気等が多い場所で使用されると共に、この近傍の機械的部品には潤滑剤等が塗布されているものも多い。
【0013】
このため、これらの塵埃や潤滑剤等が、スイッチ内に侵入して固定接点5や可動接点3に付着し、接点の電気的接離に支障が発生することを防ぐため、カバー9と押釦10等をゴムキャップで覆ったり、上ケース1と下ケース8、カバー9等の隙間に接着剤やシールド材を塗布して封止したりして、スイッチを密閉構造にすることが一般的に行われている。
【0014】
また、こうしたエンジン始動等に用いられるスイッチには、押釦10の押圧操作量、つまり操作ストロークが例えば0.2〜0.5mm前後の、車両内の空調器等や音響機器等を操作するものに比べ、明確に押圧操作したことが判別できるように、1〜5mm前後と操作ストロークの比較的大きなものが使用される。
【0015】
したがって、このような操作ストロークの大きなスイッチの押釦10を、ばね7の付勢力に抗してこれをさらに撓めながら押圧操作した場合、押圧操作する力が大きなものとなるため、作動体2右端部が上ケース1内壁部1Aに当たり、押圧操作時に衝撃音が生じてしまう。
【0016】
このため、この衝撃音がフロントパネル部内で反響し異音となることを防ぐために、ゴム等の緩衝部材を別部品として設け、これを作動体2右端部と上ケース1内壁部1Aの間に装着する等の、対策が行われているものであった。
【0017】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2007−273228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、上記従来の車両用スイッチにおいては、安定した接点の電気的接離を行うために、スイッチを密閉構造にすることが必要となり、また、操作時の衝撃音を防ぐために、緩衝部材等の別部品が必要となるため、構成部品数が多くなると共に、スイッチの組立てにも時間を要し、高価なものになってしまうという課題があった。
【0019】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、簡易な構成で、安価で確実な操作が可能な車両用スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために本発明は、ケース内に移動可能に収納された作動体に磁石を装着し、この磁石の磁気を検出手段で検出すると共に、作動体の端部またはケースの内壁部に、弾性部を設けて車両用スイッチを構成したものであり、押圧操作による磁石の移動を検出手段が検出し、これに応じて制御手段がスイッチング手段の電気的接離を行うことによって、塵埃や湿気、潤滑剤等が多い場所で使用された場合にも、確実なスイッチの電気的接離が行えると共に、作動体またはケースに一体に形成された弾性部によって、作動体端部とケース内壁部の衝撃が緩和され、操作時の衝撃音を低減し消音化が図れるため、簡易な構成で、安価で確実な操作が可能な車両用スイッチを得ることができるという作用を有するものである。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、簡易な構成で、安価で確実な操作が可能な車両用スイッチを実現することができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図5を用いて説明する。
【0023】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による車両用スイッチの断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、11は下面開口で略箱型のポリブチレンテレフタレート等の絶縁樹脂製の上ケース、12はポリアセタール等の絶縁樹脂製の作動体で、上ケース11内に作動体12が左右方向へ移動可能に収納されると共に、この作動体12の下面にはネオジム等の磁石13が装着されている。
【0024】
そして、この作動体12の右端部には、通孔14Aと両端が作動体12に連結された腕部14B、この腕部14B中央の突起部14Cから形成された、弾性部14が一体に設けられている。
【0025】
また、15は紙フェノールやガラス入りエポキシ等の板状の配線基板で、上下面には銅等によって複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、磁石13との対向面にはホール素子等が左右に所定間隔で並べて実装されて、複数の検出手段16Aと16Bが形成されている。
【0026】
さらに、配線基板15上面にはパワートランジスタ等のスイッチング手段17や、FETや複数の固定抵抗器等によって制御手段18が形成され、この制御手段18に検出手段16Aと16B、スイッチング手段17が各々接続されると共に、端子19Aが半田付け等によって装着されたコネクタ19が、これらと配線パターンを介して接続されている。
【0027】
そして、20は鋼線やピアノ線等がコイル状に巻回されたばねで、このばね20がやや撓んだ状態で作動体12の右端部と上ケース11の内壁部11Aの間に装着されて、作動体12が左方向へ付勢されている。
【0028】
また、21は上面開口で略箱型のポリブチレンテレフタレート等の絶縁樹脂製の下ケース、22は略リング状で同じく絶縁樹脂製のカバー、23はアクリロニトリルブタジエンスチレン等の絶縁樹脂製の押釦で、上ケース11下面を下ケース21が、上ケース11左面をカバー22が各々覆うと共に、作動体12の左端部に押釦23が装着されて、車両用スイッチが構成されている。
【0029】
そして、このように構成された車両用スイッチが、自動車内の運転席前方のフロントパネル部に装着されると共に、スイッチング手段17や制御手段18がコネクタ19を介して車両の電子回路(図示せず)に接続される。
【0030】
なお、この押釦23が押圧操作されず、作動体12がばね20によって左方向へ付勢された状態では、作動体12下面に装着された磁石13が検出手段16Aのほぼ真上にあるため、検出手段16Aが検出する磁気は強くなっているが、これに対し、離れた検出手段16Bが検出する磁気は殆ど0となっているため、これらを制御手段18が検出して、スイッチング手段17はオフとなっている。
【0031】
以上の構成において、押釦23を指で押圧操作すると、図3の断面図に示すように、作動体12がばね20を撓めながら右方向へ移動し、この下面に装着された磁石13が検出手段16Aから離れ、検出手段16Bの上方へ移動するため、検出手段16Bが検出する磁気が強くなり、検出手段16Aが検出する磁気は殆ど0となって、これを制御手段18が検出し、スイッチング手段17がオンとなる。
【0032】
また、押釦23から指を離すと、ばね20の弾性復帰力によって作動体12が左方向へ移動して元の状態に戻り、作動体12下面の磁石13も検出手段16Aの上方へ移動して、スイッチング手段17もオフとなる。
【0033】
つまり、制御手段18が配線基板15上に左右に並べて配置された、複数の検出手段16Aと16Bが検出する磁気の強弱を判別し、検出手段16Aが検出する磁気が強い場合にはスイッチング手段17をオフ、検出手段16Bが検出する磁気が強い場合にはスイッチング手段17をオンに、各々切換えるように形成されている。
【0034】
なお、検出手段16Aと16Bに対する磁石13の位置は、押釦23の押圧操作量、すなわち操作ストロークの半分が押圧操作された時、例えば操作ストロークが3mmであった場合には、1.5mm前後押圧操作された時に、検出手段16Aと16Bのほぼ中心に磁石13が移動するようになっている。
【0035】
そして、このようなスイッチング手段17の電気的接離を、コネクタ19を介して接続された車両の電子回路が検出し、電子回路から所定の電気信号が出力されて、エンジンの始動や停止等が行われる。
【0036】
つまり、作動体12に装着された磁石13の移動を検出手段16Aや16Bが検出し、この磁気の強弱に応じて制御手段18が、スイッチング手段17を切換えて電気的接離を行うことによって、塵埃や湿気、潤滑剤等が多い場所で使用された場合にも、これらの影響を受け易い固定接点や可動接点といった、機械的な接触部品を用いる必要がないため、確実なスイッチの電気的接離が可能なように構成されている。
【0037】
また、この時、図4(a)の部分平面図に示すような、作動体12がばね20によって左方向へ付勢された状態から、押釦23が押圧操作され、作動体12が所定の操作ストロークだけ移動すると、図4(b)に示すように、作動体12右端部に形成された弾性部14の、腕部14B中央の突起部14Cが上ケース11の内壁部11Aに当接する。
【0038】
さらに、この後、図4(c)に示すように、作動体12が移動して両端部が内壁部11Aに当接し、全操作ストロークへ移動するまでの間は、腕部14B中央が左方向の通孔14A内へ弾性変形しながら、押釦23の押圧操作が行われる。
【0039】
すなわち、作動体12右端部に弾性部14を一体に形成し、この腕部14B中央の突起部14Cが上ケース11の内壁部11Aに当接した後、腕部14Bが弾性変形することによって、作動体12端部と内壁部11Aの衝撃が緩和されるため、操作時の衝撃音を低減し消音化が図れると共に、緩衝部材等の別部品を用いることなく、簡易な構成で、スイッチの組立ても容易で安価な車両用スイッチを実現できるように構成されている。
【0040】
なお、上記のように、作動体12下面の磁石13の磁気を、複数の検出手段16Aと16Bで検出するのではなく、一つの検出手段で磁石13の磁気の強弱を検出し、これに応じて制御手段18が、スイッチング手段17の電気的接離を行うようにしても本発明の実施は可能であるが、複数の検出手段16Aと16Bを用いることによって、検出手段16Aや16Bのいずれかに万が一故障が生じた場合でも、これを検出することが可能となる。
【0041】
つまり、一つの検出手段で磁石13の磁気を検出した場合、これが故障した場合には、操作によって磁石13が離れたから磁気が0なのか、故障しているから0なのかは判別できないが、上記のように複数の検出手段16Aと16Bを用いた場合、検出手段16Aの磁気が0の場合には、検出手段16Bの磁気が強く、逆に検出手段16Bの磁気が0の場合には、検出手段16Bの磁気は0となる。
【0042】
したがって、例えば検出手段16Bが故障していた場合、押圧操作され、検出手段16Aの磁気が強から0に変わったにもかかわらず、検出手段16Bの磁気が0から強に変化しない場合には、制御手段18がこれらの磁気の変化を判別することによって、検出手段16Bの故障を検出することができる。
【0043】
また、以上の説明では、配線基板15上面に磁石13と対向させて、複数の検出手段16Aと16Bを左右に並べて配置した構成について説明したが、図5(a)の部分平面図に示すように、複数の検出手段16Aと16Bを前後に並べて所定間隔で配置した構成としても、本発明の実施は可能である。
【0044】
なお、この場合には、前方の検出手段16A上方の作動体12下面に、磁石13Aを装着すると共に、後方の検出手段16Bから左方向に操作ストローク分ずらした箇所に磁石13Bを装着し、作動体12が左方向にある場合には、検出手段16Aが検出する磁石13Aの磁気が強く、検出手段16Bが検出する磁石13Bの磁気は殆ど0となるように形成する。
【0045】
そして、図5(b)に示すように、作動体12を押圧操作した際には、磁石13Aと13Bが右方向へ移動して、検出手段16Aが検出する磁石13Aの磁気は殆ど0、検出手段16Bが検出する磁石13Bの磁気は強くなるようにすることで、上記のような故障検出も可能な構成とすることができる。
【0046】
さらに、以上の説明では、中央に突起部14Cを設け、両端が作動体12に連結された腕部14Bによって弾性部14を形成し、これを作動体12右端部に一体に設けた構成について説明したが、腕部14Bの一端を作動体12から分離して自由端とした構成や、あるいは弾性部14を上ケース11の内壁部11A側に形成した構成としても、本発明の実施は可能である。
【0047】
このように本実施の形態によれば、ケース11内に移動可能に収納された作動体12に磁石13を装着し、この磁石13の磁気を検出手段16Aと16Bで検出すると共に、作動体12の端部またはケース11の内壁部11Aに、弾性部14を設けることによって、磁石13の移動に応じて制御手段18がスイッチング手段17の電気的接離を行うことで、塵埃や湿気、潤滑剤等が多い場所で使用された場合にも、確実なスイッチの電気的接離が行えると共に、作動体12端部と内壁部11Aの衝撃が緩和され、操作時の衝撃音を低減し消音化が図れるため、簡易な構成で、安価で確実な操作が可能な車両用スイッチを得ることができるものである。
【0048】
なお、以上の説明では、制御手段18が複数の検出手段16Aと16Bが検出する磁気の強弱を判別し、押釦23が押圧操作されていない状態では、スイッチング手段17をオフ、押圧操作された場合にはオンとする構成について説明したが、これとは逆に、押圧操作されていない状態でスイッチング手段17をオン、押圧操作された場合にオフとする構成としても、本発明の実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明による車両用スイッチは、簡易な構成で、安価で確実な操作が可能なものを得ることができ、主に自動車のエンジン始動等の操作用として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施の形態による車両用スイッチの断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同押圧操作時の断面図
【図4】同部分平面図
【図5】同部分平面図
【図6】従来の車両用スイッチの断面図
【符号の説明】
【0051】
11 上ケース
11A 内壁部
12 作動体
13、13A、13B 磁石
14 弾性部
14A 通孔
14B 腕部
14C 突起部
15 配線基板
16A、16B 検出手段
17 スイッチング手段
18 制御手段
19 コネクタ
19A 端子
20 ばね
21 下ケース
22 カバー
23 押釦

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略箱型のケースと、このケース内に移動可能に収納された作動体と、この作動体端部と上記ケースの内壁部の間に装着されたばねと、上記作動体に装着された磁石と、この磁石の磁気を検出する検出手段と、この検出手段に接続されスイッチング手段の電気的接離を行う制御手段からなり、上記作動体端部または上記ケース内壁部に弾性部を設けた車両用スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−153303(P2010−153303A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332556(P2008−332556)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】