説明

車両用タイヤおよびエラストマー組成物

(a)少なくとも一つのジエンエラストマーポリマーと(b)以下の一般式(I)を有する少なくとも一つの有機性第4級アンモニウム塩とを含んでなるエラストマー組成物を含む少なくとも1つの構造部品を含む車両用タイヤを開示する。好ましくは、前記組成物を含む前記構成部品は、タイヤのトレッドバンドである。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用タイヤ、トレッドバンドおよび可架橋性エラストマー組成物に関する。
【0002】
さらに具体的には、本発明は、少なくとも一つの有機性第4級アンモニウム塩を含むエラストマー組成物を含有する少なくとも1つの構造部品を備える車両用タイヤに関する。
【0003】
本発明は、さらに、少なくとも一つの有機性第4級アンモニウム塩を含む可架橋性エラストマー組成物を含むトレッドバンドに関し、そしてさらに、少なくとも一つの有機性第4級アンモニウム塩を含むエラストマー組成物にも関する。
【背景技術】
【0004】
ゴム業界、特に、車両用タイヤ製造業において、最終の架橋製品の特性、具体的に、機械的特性と耐摩耗性を改善するために、通常使用されるエラストマーポリマーに補強充填材を組み込むエラストマー組成物の使用は、公知である。カーボンブラックは、その高い補強効率のため、最も広範に使用される補強充填剤である。しかしながら、カーボンブラックは、架橋製品に著しいヒステリシス特性を与える。つまり、動的状態で散逸する熱を増加させることは、周知の如く、特にタイヤの場合、タイヤ自体の転動抵抗の増加を生じる。これが、車両の燃料消費を増加させ、移動コストと大気汚染の両方が増える結果を導くこととなる。少量のカーボンブラックおよび/または僅かな表面積を有するカーボンブラックを使用することにより、上記の負の影響の減少を図ることは可能である。これが、必然的に、最終の架橋製品の機械的特性や耐摩耗性の悪化を伴って、補強作用を減少させる。
【0005】
最終の架橋製品のヒステリシス特性を減少させるために、所謂、「白色」補強充填材、たとえば、石膏、タルク、カオリナイト、ベントナイト、酸化チタン、種々の型のケイ酸塩、特に全てもしくは部分的にカーボンブラックと置き換わりうるシリカを使用することが公知である。この件に関しては、たとえば、欧州特許第501,227号明細書を参照されたい。
【0006】
シリカベースの補強充填材の使用には、タイヤ製造で通常使用されるエラストマーポリマーに対して補強充填材の親和力が弱いことに実質的に関連するいくつかの欠点を伴う。特に、エラストマーポリマー中でシリカが良好な分散度を得るためには、エラストマー組成物に長時間に及ぶ熱機械的な混合を施すことが必要である。シリカとエラストマーポリマーとの親和力を高めるために、適切なカップリング剤(たとえば、硫黄含有のオルガノシラン生成物)の使用が必要である。しかしながら、このようにカップリング剤を使用する必要性あることで、カップリング剤の不可逆的な熱劣化を回避するために、混合中および熱機械的処理中に達しうる最大温度が制限される。
【0007】
さらに、比較的に大量にシリカベースの補強充填材を使用すると、エラストマー組成物の加硫速度が遅くなる望ましくない現象を引き起こす。前記の加硫速度を増加させるために、通常、エラストマー組成物に、一次加硫促進剤(たとえば、チオ尿素、スルフェンアミド類、チアゾール類、キサントゲネート類等)の他に、二次加硫促進剤(たとえば、ジチオカルバメート類、チオ尿素、チウラム類、シッフ塩基類または他のアミノ促進剤類、グアニジン、特にジフェニルグアニジン(DPG))を添加することは、公知である。しかしながら、前記二次加硫促進剤の存在が、製造中と使用中の両方において、有害/毒性に関してかなりの問題を引き起こす場合がありうる。さらに、ジフェニルグアニジンは、110℃を超える温度で通常実施される加硫処理段階中に、有毒副産物であるアニリンもしくはアニリン誘導体の生成の原因となりうる。
【0008】
さらに、二次加硫促進剤と組み合わせた一次加硫促進剤の使用は、処理中に通常使用される温度で、エラストマー組成物に早期架橋が生じ、そのため、エラストマー組成物が、成形および加硫処理段階前に、部分的に架橋されうる(「スコーチ」)。
【0009】
スコーチ現象を生じずに、エラストマー組成物の加硫速度を増加することを目指した従来技術での試みが、なされてきた。
【0010】
たとえば、米国特許第4,861,842号明細書は、ゴムと以下を含有する加硫系とを含む加硫性ゴム組成物を開示する。約0.50phr〜約2.0phrのスルフェンアミド促進剤、約0.10phr〜約1.0phrのグアニジン促進剤、約0.10phr〜約1.0phrのチウラム促進剤、約0.05phr〜約1.0phrのメルカプトベンゾチアジルジスルフィド、約0.75phr〜約3.0phrの硫黄加硫剤、約0.05phr〜約0.50phrのN−シクロヘキシルチオ−フタルイミド、約1.0phr〜約5.0phrの亜鉛化合物、および以下の式を有する約0.05phr〜約1.0phrの活性化剤
【化1】


式中、R、RおよびRは、独立して、8〜10個の炭素原子を有するアルキル基であり、Mは、Cl、Br、CHSOおよびHSOよりなる群から選択される。前記加硫性ゴム組成物は、注入成形中に早期に架橋されることなく、かなり速い加硫速度を示しうる。
【0011】
米国特許第5,187,239号明細書は、硫黄加硫性ゴムに以下の式を有するメチルトリアルキルアンモニウム塩を添加することを含む、ゴム組成物の加硫速度を増加させるための方法を開示する。
【化2】


式中、R、RおよびRは、独立して、8〜10個の炭素原子を有するアルキル基であり、Mは、Cl、Br、CHSOおよびHSOよりなる群から選択される。一実施形態において、単一の促進剤系、つまり一次加硫促進剤(たとえば、スルフェンアミド等)を用いてもよい。別の実施形態において、一次加硫促進剤と二次加硫促進剤(たとえば、グアニジン、ジチオカルバメートまたはチウラム化合物等)からなる2種以上の促進剤の組み合わせを使用してもよい。上記の式のメチルトリアルキルアンモニウム塩を添加することにより、上記ゴムの加硫速度は、かなり増加されうる。
【0012】
米国特許第6,025,428号明細書は、摩耗した湿潤路でのトラクションおよび転動抵抗に対するシリカの関連特性を最大限に活用して組み込んだシリカ充填剤を有する硫黄加硫性ゴム組成物を開示する。シリカに関連する特性は、分散剤やカップリング剤により、高められ、さらに具体的には、シリカの分散は、カップリング剤の増大を必ず抑制するように、第4級アンモニウム化合物を含有する分散剤もしくは分散補助剤を使用し、ゴム混合もしくは配合プロセス中にそれらを適時に添加することにより、改善される。分散剤は、以下の式を有する第4級アンモニウム化合物である。
【化3】


式中、R、R、RおよびRは、同一または異なって、アルキル、アリールおよびポリオキシエチレンであり、Xは、ハロゲンである。シリカの使用に伴って観察されるゴムの硬化/加硫処理における遅延は、上記の分散剤を使用することにより、減少すると推定される。二次加硫促進剤(例、ジフェニルグアニジン(DPG))をもはや必要としないことは、さらなる利点である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本願の特許出願人の見解において、二次加硫促進剤の量を低減または排除さえした可架橋性エラストマー組成物は、架橋製品、特にタイヤの製造において、それらを有利に有用にさせるために、多くの必要条件を満たすべきである。実際、二次加硫促進剤を低減または排除することにより、架橋製品の基本特性(例、機械的特性等(静的と動的の両方))やさらに耐摩耗性が弱められるべきでない。さらに、工業生産の観点から、許容レベルに加硫速度を維持するために、前記の低減または排除により、加硫速度を減少させてはならない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願の特許出願人は、架橋製品の製造において、特にタイヤの製造において、二次加硫促進剤としての非イオン窒素原子を含有する少なくとも1個の基を有する少なくとも一つの有機性第4級アンモニウム塩を用いて、有利に使用されることが可能である架橋性エラストマー組成物を得ることが可能であると見出した。前記有機性第4級アンモニウム塩の添加は、二次加硫促進剤が殆ど添加されない場合でさえも、許容加硫速度を維持しながら、良好な機械的特性(静的と動的の両方)を有する架橋製品を提供する。本出願人は、アニオン基としてカルボキシレートアニオンを有する上記に特定した少なくとも一つの有機性第4級アンモニウム塩を用いることにより、加硫活性化剤として通常用いられる当技術分野では公知のステアリン酸の使用を避けることが可能であることも見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
第一の態様によれば、本発明は、(a)と(b)を含むエラストマー組成物を含有する少なくとも一つの構造部品を含む車両用タイヤに関する。
(a)少なくとも一つのジエンエラストマーポリマー;
(b)以下の一般式(I)を有する少なくとも一つの有機性第4級アンモニウム塩:
【化4】


式中、
Rは、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルキレン基、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルケニレン基、C〜C18アリーレン基、C〜C20アルキルアリーレンまたはアルキレンアリーレン基を表し、前記基は、場合により、酸素、窒素または硫黄から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、
およびRは、同一または異なって、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルキル基、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルケニル基、C〜C18アリール基、C〜C20アリールアルキルまたはアルキルアリール基を表し、前記基は、場合により、酸素、窒素または硫黄から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、あるいは、RおよびRは、それらが結合する窒素原子と一緒になるとみなされ、場合により、酸素、窒素または硫黄から選択される第二のヘテロ原子を含有するC〜C18複素環を表し、あるいは、RおよびRおよび/またはRおよびRは、それらが結合する窒素原子と一緒になるとみなされ、C〜C18複素環を表し、
、RおよびRは、同一または異なって、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルキル基、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルケニル基、C〜C18アリール基、C〜C20アリールアルキルまたはアルキルアリール基、以下の式を有する基を表し、
【化5】


[式中、R、RおよびRは、上記と同じ意味を有し、あるいは、R、RおよびRのうち2つは、それらが結合する窒素原子と一緒になるとみなされ、場合により、酸素、窒素または硫黄から選択される第二のヘテロ原子を含有するC〜C18複素環を表す]
n−は、無機性もしくは有機性アニオン基を表し、
nは、1、2または3を表す。
【0016】
好適な一の実施形態によれば、本発明は、
実質的にトロイダル形状に賦形された少なくとも1つのカーカスプライを備えたカーカス構造であって、前記カーカスプライの対向側縁が、各々右側および左側ビードワイヤに対応し、各ビードワイヤが、各々のビード内に囲まれている、カーカス構造と、
前記カーカス構造に対して周方向外側位置に付与された少なくとも1本のベルトストリップを含むベルト構造と、
前記ベルト構造上に周方向に重畳されたトレッドバンドと、
前記カーカス構造に対して両側の側方に付与された一対のサイドウォールと、を備える車両用タイヤに関し、
前記エラストマー組成物を含有する前記構造部品は、トレッドバンドである。
【0017】
さらなる一の態様によれば、本発明は、(a)と(b)を含む可架橋性エラストマー組成物を含むタイヤトレッドバンドに関する。
(a)少なくとも一つのジエンエラストマーポリマー;
(b)以下の一般式(I)を有する少なくとも一つの有機性第4級アンモニウム塩;
【化6】


式中、
Rは、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルキレン基、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルケニレン基、C〜C18アリーレン基、C〜C20アルキルアリーレンまたはアルキレンアリーレン基を表し、前記基は、場合により、酸素、窒素または硫黄から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、
およびRは、同一または異なって、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルキル基、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルケニル基、C〜C18アリール基、C〜C20アリールアルキルまたはアルキルアリール基を表し、前記基は、場合により、酸素、窒素または硫黄から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、あるいは、RおよびRは、それらが結合する窒素原子と一緒になるとみなされ、場合により、酸素、窒素または硫黄から選択される第二のヘテロ原子を含有するC〜C18複素環を表し、あるいは、RおよびRおよび/またはRおよびRは、それらが結合する窒素原子と一緒になるとみなされ、C〜C18複素環を表し、
、RおよびRは、同一または異なって、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルキル基、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルケニル基、C〜C18アリール基、C〜C20アリールアルキルまたはアルキルアリール基、以下の式を有する基を表し、
【化7】


[式中、R、RおよびRは、上記と同じ意味を有し、あるいは、R、RおよびRのうち2つは、それらが結合する窒素原子と一緒になるとみなされ、場合により、酸素、窒素または硫黄から選択される第二のヘテロ原子を含有するC〜C18複素環を表す]
n−は、無機性もしくは有機性アニオン基を表し、
nは、1、2または3を表す。
【0018】
さらなる一の態様によれば、本発明は、(a)と(b)を含む可架橋性エラストマー組成物に関する。
(a)少なくとも一つのジエンエラストマーポリマー;
(b)以下の一般式(I)を有する少なくとも一つの有機性第4級アンモニウム塩;
【化8】


式中、
Rは、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルキレン基、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルケニレン基、C〜C18アリーレン基、C〜C20アルキルアリーレンまたはアルキレンアリーレン基を表し、前記基は、場合により、酸素、窒素または硫黄から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、
およびRは、同一または異なって、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルキル基、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルケニル基、C〜C18アリール基、C〜C20アリールアルキルまたはアルキルアリール基を表し、前記基は、場合により、酸素、窒素または硫黄から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、あるいは、RおよびRは、それらが結合する窒素原子と一緒になるとみなされ、場合により、酸素、窒素または硫黄から選択される第二のヘテロ原子を含有するC〜C18複素環を表し、あるいは、RおよびRおよび/またはRおよびRは、それらが結合する窒素原子と一緒になるとみなされ、C〜C18複素環を表し、
、RおよびRは、同一または異なって、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルキル基、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルケニル基、C〜C18アリール基、C〜C20アリールアルキルまたはアルキルアリール基、以下の式を有する基を表し、
【化9】


[式中、R、RおよびRは、上記と同じ意味を有し、あるいは、R、RおよびRのうち2つは、それらが結合する窒素原子と一緒になるとみなされ、場合により、酸素、窒素または硫黄から選択される第二のヘテロ原子を含有するC〜C18複素環を表す]
n−は、無機性もしくは有機性アニオン基を表し、
nは、1、2または3を表す。
【0019】
さらなる一の態様によれば、本発明は、上記のエラストマー組成物を架橋することにより、得られる架橋されたエラストマー製品に関する。
【0020】
好適な一の実施形態によれば、前記エラストマー組成物は、二次加硫促進剤[つまり、一般式(1)を有する有機性第4級アンモニウム塩とは異なる]、たとえば、グアニジン類(例、ジフェニルグアニジン)、チウラム類、ジチオカルバメート類、シッフ塩基類または他のアミノ促進剤類、チオ尿素をほとんど含有しない。
【0021】
好適なさらなる一の実施形態によれば、前記エラストマー組成物は、ジフェニルグアニジン(DPG)を実質的に含有しない。
【0022】
好適なさらなる一の実施形態によれば、前記エラストマー組成物は、少なくとも一つの一次加硫促進剤(c)をさらに含有してもよい。
【0023】
本明細書および以下の特許請求の範囲の目的上、
用語「一次加硫促進剤」は、工業上許容可能な時間内に評価できる架橋度を得るために、エラストマー組成物の加硫速度を増加させる化合物を意味する。
用語「二次加硫促進剤」は、「一次加硫促進剤」が存在する中で、後者の効力を高めることにより、エラストマー組成物の加硫速度を増加させる化合物を意味する。
【0024】
好適な一の実施形態によれば、Xn−は、たとえば、ハロゲン化イオン(たとえば、ヨウ素イオン、臭素イオン、フッ素イオン、塩素イオン)、次亜ヨウ素酸イオン、次亜臭素酸イオン、亜フッ素酸イオン、亜塩素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン、亜臭素酸イオン、フッ素イオン、亜塩素酸イオン、ヨウ素酸イオン、臭素酸イオン、フッ素酸イオン、塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、過臭素酸イオン、過フッ素酸イオン、過塩素酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、水酸化物イオン、もしくは以下の式(II)〜(V)で表されるアニオンから選択されうる。
COO(II)
式中、Rは、直鎖もしくは分岐のC〜C18アルキル基、直鎖もしくは分岐のC〜C18アルケニル基、C〜C18アリール基、C〜C20アリールアルキルまたはアルキルアリール基を表し、前記基は、場合により、少なくとも一つの以下の基、ヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基を含有する。
OCO−(R-COO(III)
式中、mは、0もしくは1を表し、Rは、直鎖もしくは分岐のC〜C18アルキレン基、直鎖、分岐または環状C〜C18アルケニレン基、C〜C18アリーレン基、C〜C20アリールアルキレンまたはアルキルアリーレン基を表し、前記基は、場合により、少なくとも一つの以下の基、ヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基を含有する。
SO(IV)
式中、Pは、3もしくは4を表し、Rは、直鎖もしくは分岐のC〜C18アルキル基、直鎖もしくは分岐のC〜C18アルケニル基、C〜C18アリール基、C〜C20アリールアルキルまたはアルキルアリール基を表し、前記基は、場合により、少なくとも一つの以下の基、ヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基を含有する。
【化10】


式中、Pは、3もしくは4を表し、RおよびR10は、同一または異なって、水素原子、直鎖もしくは分岐のC〜C18アルキル基、直鎖もしくは分岐のC〜C18アルケニル基、C〜C18アリール基、C〜C20アリールアルキルまたはアルキルアリール基を表し、前記基は、場合により、少なくとも一つの以下の基、ヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基を含有する。
【0025】
RおよびR基の例は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン、ヘキシレン、2−メチル−3−エチル−1,4−ブチレン、オクチレン、ビニレン、ブテニレン、イソブテニレン、ペンテニレン、ヘキセニレン、フェニレン、ナフチレン、ジフェニレン、ベンゼニレン(benzenylene)、フェニルメチレン、フェニルエチレン、ナフチルメチレン、ナフチルエチレン、メチルフェニレン、エチルフェニレン、メチルナフチレン、エチルナフチレンである。
【0026】
、R、R、R、R、R、R、RおよびR10基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、アリル、メタリル、2−ブテニル、プロペニル、ヘキセニル、オクテニル、ベンジル、フェニル、ナフチル、メチルベンジル、エチルベンジル、ジフェニル、メチルフェニル、エチルフェニル、メチルナフチル、エチルナフチルである。
【0027】
それらが結合する窒素原子と一緒になるとみなされるRおよびRの例は、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、N−メチル−ピペリジン、ピペラジン、チオモルホリン、チアゾリジン,ベンゾチアゾリジン、イミダゾールである。
【0028】
それらが結合する窒素原子と一緒になるとみなされるRおよびRおよび/またはRおよびRの例は、ピペラジン、1,8−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである。
【0029】
、RおよびRのうち2つが、それらが結合する窒素原子と一緒になるとみなされ、C〜C18複素環を表す場合の複素環の例は、ピロリジニウム、ピペリジニウム、ピペラジニウム、イミダゾリウムである。
【0030】
好適な一の実施形態によれば、前記有機性第4級アンモニウム塩(b)は、エラストマー組成物中に、0.1phr〜10phr、好ましくは0.5phr〜5phrの量で存在する。
【0031】
本明細書および以下の特許請求の範囲の目的上、用語「phr」は、エラストマーポリマー100重量部当たりのエラストマー組成物の特定成分の重量部を意味する。
【0032】
第4級アンモニウム塩(b)は、本発明に係るエラストマー組成物に、それ自体で添加されてもよいし、もしくは担体(たとえば、シリカ、アルミナ、カーボンブラック等)上に支持されて添加されてもよい。あるいは、細分された形態の生成物を得るために、ポリマー担体中に分散して添加されてもよい(たとえば、本願と同一の出願人名義の国際特許出願国際公開第02/083783号パンフレットを参照のこと)。別の方法として、第4級アンモニウム塩(b)を溶液(例、含水アルコール溶媒(たとえば、水/エタノール、水/イソプロパノール等)に溶解して)として、用いてもよい。
【0033】
第4級アンモニウム塩(b)は、以下のプロセスにより、調製されうる。
【0034】
たとえば、第4級アンモニウム塩(b)は、以下の式(VI)を有するアミンの反応を備えるプロセスにより、調製されうる。
【化11】


式中、R、R、RおよびRは、以下の式(VII)を有するハロゲン化合物と共に、上記と同じ意味を有する。
−Y (VII)
式中、Rは、上記と同じ意味を有し、Yは、ヨウ素、臭素、フッ素、または塩素から選択される一つのハロゲン原子を表す。上記反応は、室温と還流温度との両方において、例えば、エーテル(たとえば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジイソアミルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、またはそれらの混合液)、ケトン(たとえば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等)、シクロヘキサノン、アセトニトリル、トルエン、またはそれらの混合液から選択された一つの有機溶媒中で、実施されうる。
【0035】
別の方法として、第4級アンモニウム塩(b)は、たとえば、「日本化学会誌(Bull.Chem.Soc.Jpn.)(1986年)、59巻、2699〜2705頁」に開示される如く得られうる。
【0036】
上記の如く得られる第4級アンモニウム塩(b)は、さらに、化学量論的量で、室温で、たとえば、アルコール(たとえば、メタノール、エタノール、n−プロパノール)、アセトン、またはそれらの混合液から選択される一つの有機溶媒中で、塩基(たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)と反応して、固体生成物を得ることが可能である。得られる固体生成物は、次に、以下の式
COOH (VIII)
[式中、Rは、上記と同じ意味を有する]
を有する化合物のアルコール溶液(たとえば、エタノール溶液)で、化学量論的量で、還流温度において、処理される。
【0037】
好適な一の実施形態によれば、本発明に使用されうるジエンエラストマーポリマー(a)は、硫黄架橋性エラストマー組成物に通常使用され、タイヤの製造に特に適切であるジエンエラストマーポリマーから選択されてもよく、すなわち、通常20℃未満、好ましくは0℃〜−90℃の範囲内のガラス転移温度(Tg)を有する不飽和鎖とのエラストマーポリマーまたは共重合体から選択されうる。これらのポリマーもしくは共重合体は、天然由来でもよく、または一つまたはそれ以上の共役ジオレフィンの溶液重合、乳化重合または気相重合により得られてもよく、場合により、60重量%以下の量で、モノビニルアレーンおよび/または極性コモノマーから選択される少なくとも一つのコモノマーとブレンドされてもよい。
【0038】
上記の共役ジオレフィンは、通常、4〜12個、好ましくは4〜8個の炭素原子を含有し、たとえば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、またはそれらの混合物からなる群から選択されうる。1,3−ブタジエンとイソプレンが、特に好適である。
【0039】
場合によりコモノマーとして使用されうるモノビニルアレーンは、通常、8〜20個、好ましくは8〜12個の炭素原子を含有し、たとえば、スチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、スチレンの種々のアルキル誘導体、シクロアルキル誘導体、アリール誘導体、アルキルアリール誘導体またはアリールアルキル誘導体(たとえば、メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−p−トリルスチレン、4−(4−フェニルブチル)スチレン、またはそれらの混合物)から選択されうる。スチレンが、特に好適である。
【0040】
場合により使用されうる極性コモノマーは、たとえば、ビニルピリジン、ビニルキノリン、アクリル酸エステル、アルキルアクリル酸エステル、ニトリル、またはそれらの混合物(たとえば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、アクリロニトリル、またはそれらの混合物)から選択されうる。
【0041】
本発明に使用されうるジエンエラストマーポリマー(a)は、たとえば、シス−l,4−ポリイソプレン(天然由来もしくは合成、好ましくは天然ゴム)、3,4−ポリイソプレン、ポリブタジエン(特に1,4−シスの含有量が多いポリブタジエン)、場合によりハロゲン化されたイソプレン/イソブテンの共重合体、1,3−ブタジエン/アクリロニトリルの共重合体、スチレン/1,3−ブタジエンの共重合体、スチレン/イソプレン/1,3−ブタジエンの共重合体、スチレン/1,3−ブタジエン/アクリロニトリルの共重合体、またはそれらの混合物から選択されうるのが好ましい。
【0042】
本発明に係るエラストマー組成物は、場合により、一つまたはそれ以上のモノオレフィンと一つのオレフィンコモノマーまたはその誘導体との少なくとも一つのエラストマーポリマー(a')を含む。上記モノオレフィンは、エチレンおよび通常3〜12個の炭素原子を含有するα−オレフィン(たとえば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、またはそれらの混合物)から選択されうる。特に好適であるのは、エチレンとα−オレフィン場合によりジエンとの共重合体、イソブテンのホモポリマー、またはイソブテンと比較的に少量のジエンとの共重合体で、場合により、少なくとも一部がハロゲン化される共重合体である。場合により存在するジエンは、通常、4〜20個の炭素原子を含有し、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,4−ヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、ビニルノルボルネン、またはそれらの混合物から選択されるのが好ましい。上記のうちで、以下の、エチレン/プロピレンの共重合体(EPR)またはエチレン/プロピレン/ジエンの共重合体(EPDM)、ポリイソブテン、ブチルゴム、ハロブチルゴム、具体的にはクロロブチルゴムもしくはブロモブチルゴム、またはそれらの混合物が、特に好適である。
【0043】
適切な末端停止剤もしくはカップリング剤との反応により官能化されるジエンエラストマーポリマー(a)もしくはエラストマーポリマー(a')を使用してもよい。特に、有機金属開始剤(特に、有機リチウム開始剤)の存在下でのアニオン重合により得られるジエンエラストマーポリマーは、開始剤から誘導した残留有機金属基を適切な末端停止剤もしくはカップリング剤(たとえば、イミン類、カルボジイミド類、ハロゲン化アルキルスズ類、置換ベンゾフェノン類、アルコキシシラン類またはアリールオキシシラン類等)と反応させることにより、官能化されうる(たとえば、欧州特許第451,604号明細書、または米国特許第4742,124号明細書および同第4550,142号明細書を参照のこと)。
【0044】
本発明に使用されうるシリカベースの補強充填剤は、50m/g〜500m/g、好ましくは70m/g〜200m/gのBET表面積(ISO規格5794/1に従って測定)を有する熱分解シリカ、好ましくは沈降シリカから選択されうる。
【0045】
上記の通り、本発明に係るエラストマー組成物は、少なくとも一つの一次加硫促進剤(c)をさらに含有してもよい。
【0046】
好適な一実施形態によれば、上記一次加硫促進剤(c)は、たとえば、
チアゾール類(例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩(ZMBT)、2−メルカプトベンゾチアゾールジスルフィド(MBTS)、2,4−ジニトロフェニルメルカプトベンゾチアゾール等)、
スルフェンアミド類(たとえば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(OBS)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(DCBS)等)、
キサントゲン酸塩類(たとえば、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛(ZIX)、ブチルキサントゲン酸亜鉛(ZBX)、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム(NaIX)、ジブチルキサントゲネートジスルフィド(DBX)等)
またはそれらの混合物から選択されてよい。スルフェンアミド類を用いるのが好ましく、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)およびN−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)を用いるのがさらに好ましい。
【0047】
好適な一の実施形態によれば、前記一次加硫促進剤(c)は、0.1phr〜10phr、好ましくは0.5phr〜5phrの量で、エラストマー組成物中に存在する。
【0048】
少なくとも一つの補強充填剤が、本発明に係るエラストマー組成物に、通常0.1phr〜120phr、好ましくは20phr〜90phrの量で、添加されるのが有利である。上記の補強充填剤は、架橋製品、特にタイヤに通常使用される補強充填剤(たとえば、カーボンブラック、シリカ、アルミナ、アルミノケイ酸塩、炭酸カルシウム、カオリン、またはそれらの混合物)から選択されうる。
【0049】
本発明に従って使用されるカーボンブラックの種類は、タイヤの生産に従来使用され、通常、20m/g以上の表面積(ISO規格6810に記載される通りのCTAB吸着法により測定)を有する、カーボンブラックから選択されうる。
【0050】
本発明に使用されるシリカは、通常、50m/g〜500m/g、好ましくは70m/g〜200m/gのBET表面積(ISO規格5794/1に従って測定)を有する、熱分解シリカ、好ましくは沈降シリカである。
【0051】
シリカ含有補強充填剤が存在する場合、エラストマー組成物は、加硫処理中にシリカと相互作用して、シリカをエラストマーベースに結合させることが可能であるカップリング剤を有利にも組み込んでもよい。
【0052】
使用されるのが好ましいカップリング剤は、たとえば、以下の構造式(IX)により同定されうるシランベースのカップリング剤である。
(R)Si−C2n−X (IX)
[式中、R基は、同一または異なって、少なくとも1つのR基が、アルコキシ基またはアリールオキシ基であることを条件として、アルキル、アルコキシまたはアリールオキシ基、或いはハロゲン原子から選択され、nは、1以上6以下の整数であり、Xは、ニトロソ、メルカプト、アミノ、エポキシド、ビニル、イミド、クロロ、−(S)2n−Si−(R)[式中、mおよびnは、1以上6以下の整数であり、R基は、上記の通り定義される]から選択される。]
【0053】
カップリング剤のうち特に好適なのは、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドおよびビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドである。前記カップリング剤は、それ自体で用いるか、または不活性充填剤(たとえば、カーボンブラック)との適切な混合物として、エラストマー組成物中にそれらの組み込みを促進するために、使用されてもよい。
【0054】
本発明に係るエラストマー組成物は、公知の技法に従って、具体的にはジエンエラストマーポリマーに通常使用される硫黄ベースの加硫系を用いて、加硫されうる。この目的のために、エラストマー組成物に、熱機械的処理の1段階もしくは2段階後に、硫黄ベースの加硫剤を加硫促進剤と一緒に含有させる。上記の第二もしくは第三処理段階において、望ましくない全ての早期架橋現象を回避するために、温度は、通常、120℃未満、好ましくは100℃未満に維持される。有機性第4級アンモニウム塩(b)を、本発明に係るエラストマー組成物に、上記の段階のいずれか1段階中に添加してもよい。
【0055】
最も有利に使用される加硫剤は、当業者に公知の促進剤および活性化剤と共に、硫黄と、または硫黄(硫黄供与体)を含有する分子とである。
【0056】
特に効果的な活性化剤は、亜鉛化合物、具体的には、ZnO、ZnCO、8〜18個の炭素原子を含有する飽和もしくは不飽和脂肪酸の亜鉛塩(たとえば、ステアリン酸亜鉛等)であり、それらは、ZnOと脂肪酸(たとえば、ステアリン酸等)からその場でエラストマー組成物に生成されるのが好ましく、さらにBiO、PbO、Pb、PbO、またはそれらの混合物である。上記に既に開示した通り、アニオン基がカルボキシレートアニオンである有機性第4級アンモニウム塩(b)の場合、ステアリン酸の添加が、回避されうる。
【0057】
本発明に係るエラストマー組成物は、組成物に意図される特定の用途に基づいて選択される、通常使用される添加剤をさらに含有してもよい。たとえば、前記組成物に、酸化防止剤、老化防止剤、可塑剤、粘着剤、オゾン劣化防止剤、変性樹脂、繊維(たとえば、ケブラー(Kevlar)(登録商標)パルプ)、またはそれらの混合物を添加してもよい。
【0058】
特に、加工性をさらに改善する目的のため、鉱油、植物油、合成油、それらの混合物(例えば、芳香油、ナフテン油、フタラート、大豆油、またはそれらの混合物)から通常選択される可塑剤を本発明に係るエラストマー組成物に添加してもよい。可塑剤の量は、通常、2phr〜100phr、好ましくは5phr〜50phrの範囲である。
【0059】
本発明に係るエラストマー組成物は、当技術分野で公知の技法に基づいて、ジエンエラストマーポリマーを補強充填剤と、場合により存在する他の添加剤と一緒に混合して、調製されうる。上記の混合は、たとえば、開放式ミル型の開放式混練機、または接線方向回転子(バンバリー(Banbury))、もしくは連結回転子(Intermix)を有する密閉式混練機、或いはコニーダ(Ko−Kneader)型のバス(Buss)または同時回転または逆回転の2軸スクリュータイプの連続ミキサーを用いて実施されうる。
【0060】
本発明は、多くの例証となる実施形態により、本発明に従って製造されたタイヤの一部の断面図である添付の図1を参照して、さらに詳細に例証されるだろう。
【0061】
「a」は軸方向を示し、「r」は半径方向を示す。分かりやすくするため、図1は、タイヤの一部分のみを示すが、図示されていない他の部分は同じであり、半径方向「r」に対して対称に構成されている。
【0062】
タイヤ(100)は、少なくとも1つのカーカスプライ(101)を含み、カーカスプライの対向する側方縁部が、各々のビードワイヤ(102)に結合されている。カーカスプライ(101)とビードワイヤ(102)との結合は、カーカスプライ(101)の対向する側方縁部をビードワイヤ(102)周囲で折り返して、図1に示すように、所謂カーカスの折返し(101a)を形成して行われる。
【0063】
別の方法として、従来型ビードワイヤ(102)は、同心コイル(図1に示さない)状に配置された細長要素から形成された、周方向に伸張できない一対の環状挿入物と置き換えうる(たとえば、欧州特許出願欧州特許第928,680号明細書および同928,702号明細書参照のこと)。上記の場合において、カーカスプライ(101)は、前記環状挿入物の周囲で折り返されず、第1のカーカスプライの外側に付与された第二のカーカスプライ(図1に示さない)により結合がなされる。
【0064】
カーカスプライ(101)は、通常、互いに平行に配置されて、少なくとも部分的にエラストマー化合物で被覆された複数の補強コードからなる。これらの補強コードは、通常、紡織繊維(たとえば、レーヨン、ナイロンまたはポリエチレンテレフタレート)、あるいは、互いに撚り合わせて、金属合金で被覆したスチールワイヤ(例えば、銅/亜鉛、亜鉛/マンガン、亜鉛/モリブデン/コバルト合金等)から作られる。
【0065】
カーカスプライ(101)は、通常、ラジアル形であり、即ち、周方向に対してほぼ垂直に配置された補強コードを包含する。各ビードワイヤ(102)は、タイヤ(100)の内周方向縁部に沿って画定されるビード(103)内に囲まれ、上記ビードで、タイヤは、車輪の一部を形成するリム(図1に示さない)上に係合する。各カーカスの折返し(101a)によって画定される空隙には、ビードワイヤ(102)が埋め込まれるビード充填剤(104)が含有される。耐磨耗性ストリップ(105)は、通常、カーカスの折返し(101a)に対して軸方向外側位置に配置される。
【0066】
ベルト構造(106)は、カーカスプライ(101)の円周に沿って付与される。図1の特定の実施態様において、ベルト構造(106)は、複数の補強コード、通常金属コードを組み込む2つのベルトストリップ(106a、106b)を含み、上記の補強コードは、各ストリップ内で互いに平行であり、隣接するストリップと交差して、周方向に対して予め決められた角度を形成するように方向付けられる。ベルトストリップ(106b)の半径方向に一番外側に、場合により、「0°ベルト」として一般に公知の少なくとも1つの0度補強層(106c)を付与することができ、該補強層は、通常、複数の補強コード、通常は紡織コードを組み込み、周方向に対して数度の角度で配置されて、エラストマー材料により、被覆されて互いに結合される。
【0067】
サイドウォール(108)は、カーカスプライ(101)の外側に付与され、このサイドウォールは、軸方向外側位置で、ビード(103)からベルト構造(106)の端部に延在する。
【0068】
側方縁部がサイドウォール(108)に接続されるトレッドバンド(109)は、ベルト構造(106)の半径方向外側の位置に周方向に付与される。トレッドバンド(109)は、外側に、地面に接触するように設計された転動面(109a)を有する。横断ノッチ(図1に示さず)により接続されて、転動面(109a)上に分布する様々な形状およびサイズの複数のブロックを画定する周方向溝は、通常、上記転動面(109a)に設けられるが、転動面(109a)は、分かりやすくするために、図1において、平滑であるように示す。
【0069】
一般に「小型サイドウォール」として公知のエラストマー材料(110)から作製されるストリップは、場合により、サイドウォール(108)とトレッドバンド(109)との間の接続領域に存在してもよい。上記小型サイドウォールは、通常、トレッドバンドとの共押出により得られ、トレッドバンド(109)とサイドウォール(108)との間の機械的相互作用を改善することができる。或いは、サイドウォール(108)の端部部分は、トレッドバンド(109)の側方縁部を直接被覆する。一般に「キャップとベース」として公知の構造(図1には示さない)をトレッドバンド(109)と共に形成する下層を、場合により、ベルト構造(106)とトレッドバンド(109)との間に配置しうる。
【0070】
「付着シート」(即ち、トレッドバンド(109)とベルト構造(106)との間に接続を提供することが可能なシート)として機能するエラストマー材料の層(111)は、トレッドバンド(109)とベルト構造(106)との間に配置されうる。
【0071】
チューブレスタイヤの場合、一般に「ライナー」として公知のゴム層(112)は、タイヤの膨張空気に対して必要な不浸透性を提供し、同様に、カーカスプライ(101)に対して半径方向内側位置に設けられる。
【0072】
本発明に係るタイヤを製造するプロセスは、たとえば、欧州特許第199,064号明細書、米国特許第4,872,822号明細書、同第4,768,937号明細書に記載される当技術分野で公知の技法および装置を用いて実施され、前記プロセスには、グリーンタイヤを製造する少なくとも1つの段階と、上記タイヤを加硫する少なくとも1つの段階とが含まれる。
【0073】
さらに具体的には、タイヤを製造するプロセスは、適切な製造機械を用いて、後に一緒に組み合わされる様々なタイヤの構造要素(カーカスプライ、ベルト構造、ビードワイヤ、充填材、サイドウォールおよびトレッドバンド)に対応する一連の半完成品を事前に、互いに別々に製造する段階を含む。次に、続いての加硫処理段階は、上記の半完成品を一緒に接合して、一体式構造のブロック、つまり完成品のタイヤを得る。
【0074】
当然、上記の半完成品を製造する段階の前に、従来型の技法に従って、前記半完成品を構成する様々なブレンドを調製して成形する段階が、実施される。
【0075】
このように得られたグリーンタイヤは、続いての成形および加硫処理段階に送られる。この目的のため、使用される加硫成形型は、加硫が完了した時点でタイヤの外面を画定するように逆成形される壁部を有する成形用キャビティ内に、処理されるタイヤを収容するように設計されている。
【0076】
半完成品を使用せずに、タイヤまたはタイヤの部品を製造する別の方法が、たとえば、上記の特許出願欧州特許第928,680号明細書および同928,702号明細書に開示されている。
【0077】
グリーンタイヤは、タイヤの内面によって画定された空間内に加圧流体を導入して、グリーンタイヤの外面を成形キャビティの壁部に対して圧着できるように成形されうる。広範に実践されている成形方法の1つにおいて、エラストマー材料から製造され、蒸気および/または別の流体を圧力下で充填された加硫チャンバは、成形キャビティ内部に閉鎖されたタイヤ内で膨張する。上記の方法で、グリーンタイヤは、成形キャビティの内壁に押され、所望の成形品が得られる。別の方法として、たとえば、欧州特許第242,840号明細書に記載のように得られるタイヤ内面の構成に従ってトロイダル状に賦形された金属支持体をタイヤ内部に設けることにより、膨張する加硫チャンバなしでも、成形を行うことができる。トロイダル状金属支持体と未加工のエラストマー材料との熱膨張係数の差は、適切な成形圧力を得るために、利用される。
【0078】
この時点で、タイヤ内に存在する未加工のエラストマー材料を加硫する段階が、実施される。この目的のため、加硫成形型の外壁は、外壁が通常100℃〜230℃の最高温度に達するように、加熱流体(通常、蒸気)に接触して配置される。同時に、タイヤの内面は、タイヤを成形キャビティの壁部に圧着するために用いたのと同じ加圧流体を用いて、加硫温度まで加熱され、100℃〜250℃の最高温度まで加熱される。エラストマー材料の質量全体を十分な程度まで加硫するのに必要な時間は、通常、3分〜90分の範囲で異なり、主にタイヤの寸法によって決まる。加硫が完了した時点で、タイヤを加硫成形型から取り出す。
【0079】
特にタイヤに関連して本発明を例証したが、本発明に従って製造することが可能な他の架橋エラストマー製品として、例えば、コンベヤベルト、駆動ベルトまたは可撓性チューブが挙げられる。
【0080】
本発明は、以下の多くの実施例によってさらに例証されるが、単に説明する目的として付与するものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0081】
実施例1
有機性第4級アンモニウム塩の調製
1Lの反応槽に、0.15モルの1−ブロモデカン、0.18モルの1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)および400mlのt−ブチルメチルエーテルを装入した後、反応混合物を還流温度で21時間加熱した。
【0082】
t−ブチルメチルエーテルを、減圧下で、反応生成物から除去し、固体生成物を得た。
【0083】
次に、得られた固体生成物を濾過し、t−ブチルメチルエーテルで洗浄し、減圧下で乾燥させ、41.87g(収率83.7%)の所望の生成物を得た。
【0084】
実施例2
有機性第4級アンモニウム塩の調製
1Lの反応槽に、0.15モルの1−クロロヘプタン(chloro−eptane)、0.18モルの1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)および400mlのアセトンを装入した後、反応混合物を還流温度で24時間加熱した。
【0085】
アセトンを、減圧下で、反応生成物から除去し、油性物を得た。
【0086】
得られた油性物をジエチルエーテルで洗浄した後、減圧下で乾燥させ、29.2g(収率79%)の所望の生成物を得た。
【0087】
実施例3
有機性第4級アンモニウム塩の調製
250mlの反応槽に、実施例1に記載した通りに得た0.084モルの第4級アンモニウム塩、0.084モルの水酸化カリウムおよび90mlのエタノールを装入した。次に、反応混合物を室温で、30分間、攪拌した後、溶液を0℃で冷却し、この温度で30分間保ち、固体生成物を得た。
【0088】
次に、得られた固体生成物を濾過し、10mlの冷エタノールで洗浄した後、124mlのエタノールにステアリン酸を0.084ml溶かした溶液で、処理した。
【0089】
次に、得られた溶液を、還流温度で1時間加熱した。白色固体生成物を室温で沈殿させ、濾過により、除去した。濾液を、減圧、50℃で濃縮し、固体生成物を得た。次に、固体生成物をテトラヒドロフランで洗浄し、減圧下で、乾燥させ、18.56g(78%)の所望の生成物を得た。
【0090】
実施例4−8
エラストマー組成物の調製
表1に示されるエラストマー組成物を以下のように調製した(各成分の量は、phrで記載する)
【0091】
酸化亜鉛、硫黄、酸化防止剤、アンモニウム塩、および促進剤を除いて、全成分を一緒に密閉式混練機(ポミーノ(Pomini)PL1.6型)内で、約5分間混合した(第一段階)。145±5℃の温度に達した時点で、エラストマー組成物を装入した。次に、酸化亜鉛と酸化防止剤を添加し、密閉式混練機(ポミーノ(Pomini)PL1.6型)内で、約5分間、混合を実施した(第二段階)。125±5℃の温度に達した時点で、エラストマー組成物を装入した。次に、硫黄、アンモニウム塩および促進剤を添加し、開放式回転混練機内で混合した(第三段階)。
【0092】
【表1】

【0093】
S−SBR:スチレン/ブタジエン共重合体であり、溶液重合により得られ、25重量%のスチレンを含有し、37.5phrのオイル(ブナ(Buna)(登録商標)5025−バイエル(Bayer)社)と混合
BR: シス−l,4−ポリブタジエン(ユーロプレン(Europrene)(登録商標)BR40−(エニケムエラストマリ(EniChem Elastomeri)社);
シリカ: 沈降シリカ(ゼオシル(Zeosil)(登録商標)1165MP−ローヌプーランク(Rhone−Poulenc));
TESPT: ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(50%のカーボンブラックと50%のシランを含んでなるX50S、デグサ・ヒュルス(Degussa−Huels)社、記載されている量は、シランの量を意味する);
バーダック(Bardac)(登録商標)LF−80: ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド、80%活性状態(ロンザ(Lonza));
アンモニウム塩(1): 実施例1のアンモニウム塩;
アンモニウム塩(2): 実施例2のアンモニウム塩;
アンモニウム塩(3): 実施例3のアンモニウム塩;
酸化防止剤: N−1,3−ジメチルブチル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン;
DPG(二次加硫促進剤): N−N'−ジフェニルグアニジン;
CBS(一次加硫促進剤): N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジル−スルフェンアミド(バルカシト(Vulkacit)(登録商標)CZ−バイエル(Bayer)社);
【0094】
100℃でのムーニー粘度ML(1+4)を、ISO規格289/1に従って、上記で得られた非架橋組成物に関して、測定した。得られた結果を表2に示す。
【0095】
前記エラストマー組成物を、モンサント(Monsanto)社製のMDR流量計を用いて、MDR流量分析した。その試験は、170℃で20分間、発振周波数1.66Hz(毎分100回の振動)、発振振幅±0.5°で実施された。ISO規格37に基づいた静的機械的特性と、ISO規格48に基づいた23℃での国際ゴム硬度(IRHD)における硬さを、170℃で10分間架橋した上記エラストマー組成物のサンプルに関して測定した。得られた結果を表2に示す。
【0096】
表2は、以下の方法に従って、牽引−圧縮モードでインストロン(Instron)動的装置を用いて測定した動的機械的特性も示す。最初の長さに対して長手方向に25%まで変形するまで圧縮予荷重を加え、試験の全期間中、予め定めた温度(23℃と70℃)に保ち、円筒形状を有する架橋材料の試験片(長さ=25mm、直径=14mm)に、予荷重下での長さに対しての振幅±3.33%、周波数100Hzで、動的正弦波歪を加えた。動的機械的特性を、動的弾性率(E’)とタンデルタ(損失係数)の点から表す。公知の如く、タンデルタ値は、共に上記の動的測定で決定される粘性率(E”)と弾性率(E’)との比率として、計算される。
【0097】
最後に、DIN規格53516に従って、DIN磨耗を測定し、表2に記載し、損失した化合物の量として表した。
【0098】
【表2】

【0099】
表2からの結果は、本発明に係る有機性第4級アンモニウム塩(実施例7、8および9)を含んでなる架橋性組成物は、機械的特性(静的と動的の両方)を損なうことなく、速い加硫速度を有する。さらに、異種の有機性第4級アンモニウム塩を含有するエラストマー組成物(実施例6)に関しても、改良された耐摩耗性を達成した。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明により製造されるタイヤの一部分の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー組成物を含む少なくとも一つの構成部品を含む車輪用タイヤであって、
前記エラストマー組成物は、
(a)少なくとも一つのジエンエラストマーポリマーと、
(b)以下の一般式(1)を有する少なくとも一つの有機性第4級アンモニウム塩と:
【化1】


[式中、
Rは、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルキレン基、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルケニレン基、C〜C18アリーレン基、C〜C20アルキルアリーレンまたはアルキレンアリーレン基を表し、前記基は、場合により、酸素、窒素または硫黄から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、
およびRは、同一または異なって、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルキル基、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルケニル基、C〜C18アリール基、C〜C20アリールアルキルまたはアルキルアリール基を表し、前記基は、場合により、酸素、窒素または硫黄から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、あるいは、RおよびRは、それらが結合する窒素原子と一緒になるとみなされ、場合により、酸素、窒素または硫黄から選択される第二のヘテロ原子を含有するC〜C18複素環を表し、あるいは、RおよびRおよび/またはRおよびRは、それらが結合する窒素原子と一緒になるとみなされ、C〜C18複素環を表し、
、RおよびRは、同一または異なって、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルキル基、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルケニル基、C〜C18アリール基、C〜C20アリールアルキルまたはアルキルアリール基、以下の式を有する基を表し、
【化2】


[式中、R、RおよびRは、上記と同じ意味を有し、あるいは、R、RおよびRのうち2つは、それらが結合する窒素原子と一緒になるとみなされ、場合により、酸素、窒素または硫黄から選択される第二のヘテロ原子を含有するC〜C18複素環を表す]
n−は、無機性もしくは有機性アニオン基を表し、
nは、1、2または3を表す]
を含む、車両用タイヤ。
【請求項2】
実質的にトロイダル形状に賦形された少なくとも一つのカーカスプライを備えたカーカス構造であって、前記カーカスプライの対向側縁が、各々右側および左側ビードワイヤに対応し、各ビードワイヤは、各々のビード内に囲まれている、カーカス構造と、
前記カーカス構造に対して、周方向外側位置に付与された少なくとも一つのベルトストリップを含むベルト構造と、
前記ベルト構造上に周方向に重畳されたトレッドバンドと、
前記カーカス構造に対して、両側の側方に付与された一対のサイドウォールと、を備え、
前記エラストマー組成物を含有する前記構造部品がトレッドバンドである、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記エラストマー組成物は、実質的には二次加硫促進剤が添加されていない、請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記二次加硫促進剤は、ジフェニルグアニジン(DPG)である、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
n−が、ヨウ素イオン、臭素イオン、フッ素イオン、または塩素イオン等のハロゲン化イオン、次亜ヨウ素酸イオン、次亜臭素酸イオン、亜フッ素酸イオン、亜塩素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン、亜臭素酸イオン、フッ素イオン、亜塩素酸イオン、ヨウ素酸イオン、臭素酸イオン、フッ素酸イオン、塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、過臭素酸イオン、過フッ素酸イオン、過塩素酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、水酸化物イオン、もしくは以下の式(II)〜(V)、
COO(II)
[式中、Rは、直鎖もしくは分岐のC〜C18アルキル基、直鎖もしくは分岐のC〜C18アルケニル基、C〜C18アリール基、C〜C20アリールアルキルまたはアルキルアリール基を表し、前記基は、場合により、少なくとも一つの以下の基、ヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基を含有する]、
OCO−(R−COO(III)
[式中、mは、0もしくは1を表し、Rは、直鎖もしくは分岐のC〜C18アルキレン基、直鎖、分岐または環状C〜C18アルケニレン基、C〜C18アリーレン基、C〜C20アリールアルキレンまたはアルキルアリーレン基を表し、前記基は、場合により、少なくとも一つの以下の基、ヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基を含有する]、
SO (IV)
[式中、Pは、3もしくは4を表し、Rは、直鎖もしくは分岐のC〜C18アルキル基、直鎖もしくは分岐のC〜C18アルケニル基、C〜C18アリール基、C〜C20アリールアルキルまたはアルキルアリール基を表し、前記基は、場合により、少なくとも一つの以下の基、ヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基を含有する]、
【化3】


[式中、Pは、3または4を表し、RおよびR10は、同一または異なって、水素原子、直鎖もしくは分岐のC〜C18アルキル基、直鎖もしくは分岐のC〜C18アルケニル基、C〜C18アリール基、C〜C20アリールアルキルまたはアルキルアリール基を表し、前記基は、場合により、少なくとも一つの以下の基、ヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基を含有する]
で表されるアニオン基から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項6】
RおよびR基が、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン、ヘキシレン、2−メチル−3−エチル−1,4−ブチレン、オクチレン、ビニレン、ブテニレン、イソブテニレン、ペンテニレン、ヘキセニレン、フェニレン、ナフチレン、ジフェニレン、ベンゼニレン(benzenylene)、フェニルメチレン、フェニルエチレン、ナフチルメチレン、ナフチルエチレン、メチルフェニレン、エチルフェニレン、メチルナフチレン、エチルナフチレンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
、R、R、R、R、R、R、RおよびR10基が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、アリル、メタリル、2−ブテニル、プロペニル、ヘキセニル、オクテニル、ベンジル、フェニル、ナフチル、メチルベンジル、エチルベンジル、ジフェニル、メチルフェニル、エチルフェニル、メチルナフチル、エチルナフチルである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項8】
およびRが、それらが結合する窒素原子と一緒になるとみなされ、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、N−メチル−ピペリジン、ピペラジン、チオモルホリン、チアゾリジン、ベンゾチアゾリジン、イミダゾールである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項9】
およびRおよび/またはRおよびRが、それらが結合する窒素原子と一緒になるとみなされ、ピペラジン、1,8−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである、請求項1〜8のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項10】
、RおよびRのうち2つが、それらが結合する窒素原子と一緒になるとみなされ、C〜C18複素環を表す場合の複素環が、ピロリジニウム、ピペリジニウム、ピペラジニウム、イミダゾリウムである、請求項1〜9のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記有機性第4級アンモニウム塩(b)は、前記エラストマー組成物中に0.1phr〜10phrの量で存在する、請求項1〜10のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記有機性第4級アンモニウム塩(b)は、前記エラストマー組成物中に0.5phr〜5phrの量で存在する、請求項11に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記ジエンエラストマーポリマー(a)は、20℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記ジエンエラストマーポリマー(a)は、シス−1,4−ポリイソプレン、3,4−ポリイソプレン、ポリブタジエン、場合によりハロゲン化されたイソプレン/イソブテンの共重合体、1,3−ブタジエン/アクリロニトリルの共重合体、スチレン/1,3−ブタジエンの共重合体、スチレン/イソプレン/1,3−ブタジエンの共重合体、スチレン/1,3−ブタジエン/アクリロニトリルの共重合体、またはそれらの混合物から選択される、請求項13に記載のタイヤ。
【請求項15】
前記エラストマー組成物は、一つまたはそれ以上のモノオレフィンと、一つのオレフィンコモノマーまたはその誘導体との少なくとも一つのエラストマーポリマー(a')を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項16】
前記エラストマーポリマー(a')は、エチレン/プロピレンの共重合体(EPR)またはエチレン/プロピレン/ジエンの共重合体(EPDM)、ポリイソブテン、ブチルゴム、ハロブチルゴム、またはそれらの混合物から選択される、請求項15に記載のタイヤ。
【請求項17】
前記エラストマー組成物は、少なくとも一つの一次加硫促進剤(c)を含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項18】
前記一次加硫促進剤(c)は、チアゾール類、スルフェンアミド類、キサントゲネート類から選択される、請求項17に記載のタイヤ。
【請求項19】
前記一次加硫促進剤(c)は、スルフェンアミド類から選択される、請求項18に記載のタイヤ。
【請求項20】
前記一次加硫促進剤(c)は、0.1phr〜10phrの量で前記エラストマー組成物中に存在する、請求項17〜19のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項21】
前記一次加硫促進剤(c)は、0.5phr〜5phrの量で前記エラストマー組成物中に存在する、請求項20に記載のタイヤ。
【請求項22】
少なくとも一つの補強充填剤が、前記エラストマー組成物に0.1phr〜120phrの量で存在する、請求項1〜21のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項23】
前記補強充填剤は、カーボンブラックである、請求項22に記載のタイヤ。
【請求項24】
前記補強充填剤は、シリカである、請求項22に記載のタイヤ。
【請求項25】
前記エラストマー組成物は、シリカカップリング剤を含む、請求項24に記載のタイヤ。
【請求項26】
可架橋性エラストマー組成物を含有するタイヤトレッドバンドであって、
前記可架橋性エラストマー組成物が、
(a)少なくとも一つのジエンエラストマーポリマーと
(b)以下の一般式(I)を有する少なくとも一つの有機性第4級アンモニウム塩と、
【化4】


[式中、
Rは、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルキレン基、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルケニレン基、C〜C18アリーレン基、C〜C20アルキルアリーレンまたはアルキレンアリーレン基を表し、前記基は、場合により、酸素、窒素または硫黄から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、
およびRは、同一または異なって、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルキル基、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルケニル基、C〜C18アリール基、C〜C20アリールアルキルまたはアルキルアリール基を表し、前記基は、場合により、酸素、窒素または硫黄から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、あるいは、RおよびRは、それらが結合する窒素原子と一緒になるとみなされ、場合により、酸素、窒素または硫黄から選択される第二のヘテロ原子を含有するC〜C18複素環を表し、あるいは、RおよびRおよび/またはRおよびRは、それらが結合する窒素原子と一緒になるとみなされ、C〜C18複素環を表し、
、RおよびRは、同一または異なって、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルキル基、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルケニル基、C〜C18アリール基、C〜C20アリールアルキルまたはアルキルアリール基、以下の式
【化5】


[式中、R、RおよびRは、上記と同じ意味を有し、あるいは、R、RおよびRのうち2つは、それらが結合する窒素原子と一緒になるとみなされ、場合により、酸素、窒素または硫黄から選択される第二のヘテロ原子を含有するC〜C18複素環を表し、
n−は、無機性もしくは有機性アニオン基を表し、
nは、1、2または3を表す]
を有する基を表す]
を含む、タイヤトレッドバンド。
【請求項27】
前記エラストマー組成物は、実質的に二次加硫促進剤が添加されていない、請求項26に記載のタイヤトレッドバンド。
【請求項28】
前記二次加硫促進剤は、ジフェニルグアニジン(DPG)である、請求項27に記載のタイヤトレッドバンド。
【請求項29】
前記有機性第4級アンモニウム塩(b)は、請求項5〜12により特定される、請求項26〜28のいずれか一項に記載のタイヤトレッドバンド。
【請求項30】
前記ジエンエラストマーポリマー(a)は、請求項13または14により特定される、請求項26〜29のいずれか一項に記載のタイヤトレッドバンド。
【請求項31】
前記エラストマー組成物は、請求項15または16により特定される少なくとも一つのエラストマーポリマー(a')を含む、請求項26〜30のいずれか一項に記載のタイヤトレッドバンド。
【請求項32】
前記エラストマー組成物は、少なくとも一つの一次加硫促進剤(c)を含む、請求項26〜31のいずれか1項に記載のタイヤトレッドバンド。
【請求項33】
前記一次加硫促進剤(c)は、請求項18〜21により特定される、請求項32に記載のタイヤトレッドバンド。
【請求項34】
少なくとも一つの補強充填剤は、前記エラストマー組成物に0.1phr〜120phrの量で存在する、請求項26〜33のいずれか一項に記載のタイヤトレッドバンド。
【請求項35】
前記補強充填剤は、カーボンブラックである、請求項34に記載のタイヤトレッドバンド。
【請求項36】
前記補強充填剤は、シリカである、請求項34に記載のタイヤトレッドバンド。
【請求項37】
前記エラストマー組成物は、シリカカップリング剤を含む、請求項36に記載のタイヤトレッドバンド。
【請求項38】
可架橋性エラストマー組成物であって、
(a)少なくとも一つのジエンエラストマーポリマーと、
(b)以下の一般式(I)を有する少なくとも一つの有機性第4級アンモニウム塩と、
【化6】


[式中、
Rは、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルキレン基、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルケニレン基、C〜C18アリーレン基、C〜C20アルキルアリーレンまたはアルキレンアリーレン基を表し、前記基は、場合により、酸素、窒素または硫黄から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、
およびRは、同一または異なって、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルキル基、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルケニル基、C〜C18アリール基、C〜C20アリールアルキルまたはアルキルアリール基を表し、前記基は、場合により、酸素、窒素または硫黄から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、あるいは、RおよびRは、それらが結合する窒素原子と一緒になるとみなされ、場合により、酸素、窒素または硫黄から選択される第二のヘテロ原子を含有するC〜C18複素環を表し、あるいは、RおよびRおよび/またはRおよびRは、それらが結合する窒素原子と一緒になるとみなされ、C〜C18複素環を表し、
、RおよびRは、同一または異なって、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルキル基、直鎖もしくは分岐のC〜C22アルケニル基、C〜C18アリール基、C〜C20アリールアルキルまたはアルキルアリール基、以下の式
【化7】


[式中、R、RおよびRは、上記と同じ意味を有し、あるいは、R、RおよびRのうち2つは、それらが結合する窒素原子と一緒になるとみなされ、場合により、酸素、窒素または硫黄から選択される第二のヘテロ原子を含有するC〜C18複素環を表し、
n−は、無機性もしくは有機性アニオン基を表し、
nは、1、2または3を表す]
を有する基を表す]
を含む、可架橋性エラストマー組成物。
【請求項39】
前記エラストマー組成物は、実質的に二次加硫促進剤が添加されていない、請求項38に記載の可架橋性エラストマー組成物。
【請求項40】
前記二次加硫促進剤は、ジフェニルグアニジン(DPG)である、請求項39に記載の可架橋性エラストマー組成物。
【請求項41】
前記有機性第4級アンモニウム塩(b)は、請求項5〜12により特定される、請求項38〜40のいずれか一項に記載の可架橋性エラストマー組成物。
【請求項42】
前記ジエンエラストマーポリマー(a)は、請求項13または14により特定される、請求項38〜41のいずれか1項に記載の可架橋性エラストマー組成物。
【請求項43】
前記エラストマー組成物は、請求項15または16により特定される少なくとも一つのエラストマーポリマー(a')を含む、請求項38〜41のいずれか一項に記載の可架橋性エラストマー組成物。
【請求項44】
前記エラストマー組成物は、少なくとも一つの一次加硫促進剤(c)を含む、請求項38〜43のいずれか一項に記載の可架橋性エラストマー組成物。
【請求項45】
前記一次加硫促進剤(c)は、請求項18〜21により特定される、請求項44に記載の可架橋性エラストマー組成物。
【請求項46】
少なくとも一つの補強充填剤が、前記エラストマー組成物に0.1phr〜120phrの量で存在する、請求項38〜45のいずれか一項に記載の可架橋性エラストマー組成物。
【請求項47】
前記補強充填剤は、カーボンブラックである、請求項46に記載の可架橋性エラストマー組成物。
【請求項48】
前記補強充填剤は、シリカである、請求項46に記載の可架橋性エラストマー組成物。
【請求項49】
前記エラストマー組成物は、シリカカップリング剤を含む、請求項48に記載の可架橋性エラストマー組成物。
【請求項50】
請求項38〜49のいずれか一項により特定されるエラストマー組成物を架橋することにより得られる、架橋されたエラストマー製品。

【図1】
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【公表番号】特表2006−509851(P2006−509851A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−557839(P2004−557839)
【出願日】平成14年12月12日(2002.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2002/014145
【国際公開番号】WO2004/052983
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(598164186)ピレリ・プネウマティチ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ (123)
【Fターム(参考)】