説明

車両用ダイヤル操作装置

【課題】互いに同一の形状及び構造を有する複数のダイヤル装置を用いながら、各ダイヤル装置のダイヤルノブがパネルから突出する状態をそれぞれ好適に設定することが可能な車両用ダイヤル操作装置を提供する。
【解決手段】ダイヤル操作装置は、複数のダイヤル装置10D,10R,10Pと、これらが個別に実装される複数の回路基板12D,12R,12Pと、これらの回路基板を支持する基板支持体とを備える。基板支持体は、各ダイヤル装置のための貫通孔14d,14r,14pが設けられたパネル14を含み、その貫通孔を通じてパネル14の表側に各ダイヤル装置のダイヤルノブ18が突出する。その突出状態がそれぞれ好適になるように、基板支持体による各回路基板の支持位置が個別に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に設けられ、それぞれ回転操作を受ける複数のダイヤル装置を具備する車両用ダイヤル操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に設けられるダイヤル操作装置として、例えば特許文献1に記載されるように、複数のダイヤル装置が共通の回路基板(同文献ではプリント基板)上に実装されたものが知られている。
【0003】
図6は、かかるタイプの装置を模式的に示したものである。同図に示される操作装置は、電気回路が配線される回路基板90と、この回路基板上に実装される複数のダイヤル装置92A,92B,92Cと、前記回路基板90を支持する基板支持体94とを備える。前記各ダイヤル装置92A,92B,92Cは、回転操作を受けるダイヤルノブ95と、このダイヤルノブ95の回転位置を検出してその検出位置に応じた信号を出力するダイヤル素子96とを有する。前記基板支持体94は、前記プリント基板90の前側に位置するパネル98を含み、このパネル98には、前記各ダイヤル装置92A,92B,92Cが挿通可能な複数の貫通孔98a,98b,98cが設けられ、これらの貫通孔98a〜98cを通じて前記各ダイヤル装置92A〜92Cのダイヤルノブ95がそれぞれ前記パネル98の裏側から表側に突出するように、前記回路基板90が前記基板支持体94に支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−229780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように単一の回路基板90上に複数のダイヤル装置92A〜92Cが実装される操作装置では、それぞれのダイヤル装置について互いに同一の形状及び構造を有するものを使用することが、コストの削減上望ましい。しかし、前記パネルの形状によっては当該使用が困難となる場合がある。
【0006】
具体的に、前記図6に示されるようにパネル98の表面が前記各ダイヤル装置92A〜92Cの回転操作軸Xに対して直交する平面である装置では、各ダイヤル装置92A〜92Cの形状及び構造が互いに同一であっても何ら支障はない。しかし、当該パネル98の表面は、デザイン上、あるいはその他の事情により、当該回転操作軸Xと平行な方向に起伏している場合が少なくない。この起伏により、前記各ダイヤル装置92A〜92Cに対応する各貫通孔98a〜98cの位置が前記回転操作軸Xと平行な方向について互いに異なっていると、前記各ダイヤル装置92A〜92Cに同じ形状のものを用いた場合、これらのダイヤルノブ95が前記貫通孔98a〜98cを通じてそれぞれパネル表面から表側に突出する寸法が互いに大きく異なることになる。このことは、操作装置全体の見栄えに影響を与え、場合によっては前記ダイヤル部のつまみ操作や回転操作を困難にするおそれがある。
【0007】
換言すれば、前記のようにパネル98の表面が起伏しているにもかかわらず各ダイヤルノブ95の突出寸法を均一化するには、参考例として図7に示すように、パネル98の表面の起伏に応じて、互いにダイヤルノブ95の高さ寸法が異なるものをそれぞれ前記ダイヤル装置92A,92B,92Cとして配置せざるを得ない。このことは、必要とされるダイヤル装置の種類の数を増やし、コストの上昇を招く。
【0008】
また、前記パネル98の表面が起伏のない平面状であっても、ダイヤル装置92A,92B,92Cの位置やその操作対象によって当該ダイヤル装置のダイヤルノブ95の突出量を相互に異ならせたい場合があり、かかる場合も、各ダイヤル装置の形状及び構造を共通化することはできなくなる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑み、複数のダイヤル装置として互いに同一の形状及び構造を有するものを用いてコストの削減を図りながら各ダイヤル装置におけるダイヤルノブのパネルからの突出状態を好ましい状態に設定することが可能な車両用ダイヤル操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、車両に設けられるダイヤル操作装置であって、回転操作を受けるダイヤルノブ及び当該ダイヤルノブの回転位置に対応する信号を出力するダイヤル素子をそれぞれ有する複数のダイヤル装置と、前記各ダイヤル装置ごとに分割され、対応するダイヤル装置が実装される複数の平板状の回路基板と、これらの回路基板同士を電気的に接続する配線材と、前記各ダイヤル装置のダイヤルノブがそれぞれ挿通可能な複数の貫通孔を有するパネルを含み、当該パネルの各貫通孔を通じて前記各ダイヤルノブが前記パネルの表側に突出する状態で前記各回路基板を個別に支持する基板支持体とを備え、この基板支持体は、前記回路基板のうちの少なくとも2枚の回路基板について、その一方の回路基板を含む平面から外れた位置に他方の回路基板が位置するように、前記各回路基板を支持するものである。
【0011】
この装置では、複数のダイヤル操作装置が実装される回路基板が、そのダイヤル操作装置毎に分割されているため、各ダイヤル操作装置とパネルとの相対位置を個別に設定することが可能である。従って、前記各ダイヤル操作装置に互いに同一の形状及び構造を有するものを用いてコストの削減を図りながらも、回路基板同士の相対位置を適宜設定することにより、前記パネルの表側への前記各ダイヤル操作装置のダイヤルノブの突出状態をそれぞれ好適な状態にすることが可能である。
【0012】
例えば、前記基板支持体としては、前記各ダイヤル装置の回転操作軸が互いに平行となり、かつ、当該回転操作軸と平行な方向について少なくとも2つのダイヤル装置の位置が相互に異なるように、前記各回路基板を支持するものが、好適である。
【0013】
この装置では、前記パネルが、当該パネルに形成される貫通孔のうち少なくとも2つの貫通孔の位置が前記回転操作軸と平行な方向について異なるように当該方向に起伏している場合であっても、パネル側から見たダイヤル操作装置の外観及び各ダイヤルノブの操作性が良好に保たれる。すなわち、前記基板支持体は、前記回転操作軸と平行な方向と直交する同一平面上に前記各回路基板が配置される場合に比べて前記貫通孔を通じての前記パネルの表側への前記各ダイヤル装置のダイヤルノブの最小突出量同士の差を小さくするように、当該ダイヤル装置が実装された各回路基板を当該方向について互いに異なる位置に支持することができるから、これにより各ダイヤルノブの最小突出量を均一化して良好な外観および良好なダイヤル操作性を保証することができる。
【0014】
さらに、前記基板支持体は、前記パネルの表面からの前記各ダイヤル装置のダイヤルノブの最小突出量を互いに等しくする位置に各回路基板を支持することも可能であり、これにより、装置の外観はさらに向上する。
【0015】
その一方、本発明では、前記各回路基板同士が配線材を介して接続されることにより、従来のように単一の回路基板に複数のダイヤル操作装置が実装されるものと同様、互いに関連するダイヤル操作装置同士の連携を図ることが可能である。
【0016】
例えば、前記回路基板として、メイン基板と、このメイン基板以外の一または複数のサブ基板とを含み、前記メイン基板にのみ、このメイン基板及び前記サブ基板と車両用ダイヤル操作装置の外部の外部回路との間で一括して通信を行わせる通信部が設けられ、このメイン基板と前記サブ基板とを接続する配線材が、前記通信部と前記サブ基板に設けられた通信用回路との間で前記通信に係る信号を伝送するための信号線を含むものでは、前記メイン基板にのみ代表的に前記通信部を設けて構造及び配線の簡略化を図りながら、単一の回路基板上に複数のダイヤル装置が実装される従来装置と同様に、前記通信部を通じてメイン基板およびサブ基板と前記外部回路との通信を一括して行うことができる。
【0017】
具体的に、前記通信部としては、前記外部回路とつながる相手方コネクタと結合可能な外部接続用コネクタと、前記メイン基板及び前記サブ基板と前記外部回路との間の通信制御を一括して行う通信制御回路とを含むものが、好適である。
【0018】
また、本発明では、前記メイン基板にのみ、このメイン基板及び前記サブ基板とその電源回路との接続を一括して行うための電源入力部が設けられてもよく、この場合、当該メイン基板と前記サブ基板とを接続する配線材が、前記電源入力部から入力される電源を前記サブ基板に供給するための給電線を含んでいればよい。この装置では、前記メイン基板にのみ代表的に前記電源入力部を設けることで構造及び配線の簡略化を図りながら、この電源入力部から前記メイン基板さらには前記サブ基板への電源供給を全て行うことができる。
【0019】
この場合、前記外部接続用コネクタが前記電源入力部を兼ねることが可能であり、これにより、装置の構造はより簡素化される。
【0020】
本発明に係るダイヤル操作装置は、例えば車両に搭載される空調機器の操作装置として有用である。例えば、前記メイン基板には、前記空調機器から運転席に向かって送られる空気の状態(例えば温度または風量)を調節するために操作されるダイヤル装置と、当該ダイヤル装置以外の操作装置であって前記空調機器の他の操作に寄与する操作装置を構成する素子とが実装され、前記サブ基板には、前記空調機器から前記運転席以外の座席に向かって送られる空気の状態を調節するために操作されるダイヤル装置が実装されるものが、好適である。
【0021】
このダイヤル操作装置では、運転者により操作される頻度の高い運転席用のダイヤル装置と、その他の操作装置を構成する素子とがメイン基板に実装され、かつ、このメイン基板に上述の通信部が集約されることにより、このメイン基板を中心とした回路基板同士の合理的な通信系統が構築される。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明では、複数のダイヤル装置として互いに同一の形状及び構造を有するものが用いられることによりコストの削減が実現される。しかも、これらのダイヤル装置が実装されるべき回路基板が当該ダイヤル装置毎に分割され、その分割された複数の回路基板が個別に基板支持体に支持されることが、前記ダイヤル装置の形状及び構造の共通化にかかわらず、これらのダイヤル装置のダイヤルノブが前記基板支持体のパネルの表側に突出する状態を個別に設定することを可能にする。このようなパネルに対する各ダイヤル装置の相対位置の個別設定は、例えばパネル表側から見たダイヤル操作装置の良好な外観や各ダイヤルノブの良好な操作性に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用ダイヤル操作装置の分解斜視図である。
【図2】前記車両用ダイヤル操作装置の正面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】前記車両用ダイヤル操作装置において配列される複数の回路基板をその表側から見た斜視図である。
【図5】前記回路基板を裏側から見た斜視図である。
【図6】従来のダイヤル操作装置を模式的に示した断面図である。
【図7】参考例に係るダイヤル操作装置を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の好ましい実施の形態を図1〜図5を参照しながら説明する。なお、この実施の形態に係るダイヤル操作装置は、車両に搭載される空調機器(エアコンディショナー)の操作を行うためのものであるが、本発明に係る操作装置の操作対象は空調機器に限られない。例えば、オーディオ機器や室内照明機器の操作のための装置にも本発明が適用されることが可能である。
【0025】
図1〜図5に示されるダイヤル操作装置は、複数(図では3個)のダイヤル装置10D,10R,10Pと、これらのダイヤル装置10D,10R,10Pがそれぞれ実装される平板状の回路基板12D,12R,12Pと、これらの回路基板12D,12R,12Pを支持する基板支持体とを備える。すなわち、このダイヤル操作装置では、各ダイヤル装置10D,10R,10Pが実装されるべき回路基板が当該ダイヤル装置ごとに分割され、かつ、これらの回路基板が共通の基板支持体に支持される。この基板支持体は、車室内に面するパネル14と、このパネル14の裏側に配置されるリアカバー16とを有し、このリアカバー16が前記各回路基板12D,12R,12Pを保持した状態で前記パネル14に接合される。また、この実施の形態では、前記パネル14と前記各回路基板12D,12R,12Pとの間にラバーシート15A,15Bが介設される。
【0026】
本発明の特徴として、前記ダイヤル装置10D,10R,10Pには互いに同一の形状及び構造を有するものが用いられる。各ダイヤル装置10D,10R,10Pは、回転操作される円筒状のダイヤルノブ18と、このダイヤルノブ18をその中心軸である回転操作軸X回りに回転可能に支持するダイヤル素子20とを備え、前記回転操作軸Xが、対応する回路基板の法線方向と合致する姿勢で、当該回路基板上に前記ダイヤル素子20が実装される。このダイヤル素子20は、前記ダイヤルノブ18の回転位置を検出してその位置に対応する信号を当該ダイヤル素子20が実装された回路基板内の回路に出力する。
【0027】
前記各ダイヤル装置10D,10R,10Pのうち、前記ダイヤル装置10Dは、前記空調機器から運転席に向かって送られる空気の状態を調節するために回転操作されるものである。一方、前記ダイヤル装置10R,10Pは、前記空調機器から前記運転席以外の座席、具体的には後部座席及び助手席に向かって送られる空気の状態をそれぞれ調節するために操作されるものである。この実施の形態に係るダイヤル装置10D,10R,10Pは、前記の「空気の状態」として空気温度を調節するために回転操作される。しかし、当該「空気の状態」は例えば風量であってもよい。
【0028】
前記各回路基板12D,12R,12Pは、この実施の形態では、前記各ダイヤル装置10D,10R,10Pのダイヤルノブ18が水平方向に沿って並ぶように、互いに平行となる姿勢で(すなわち前記各ダイヤル装置10D,10R,10Pの回転操作軸Xが互いに平行となる姿勢で)前記基板支持体に支持される。ただし、本発明ではダイヤル装置及び回路基板の個数や具体的な配列形態は限定されない。例えば4個以上のダイヤル装置が縦横に配列されたものでもよい。また、特定のダイヤル装置の回転操作軸同士が互いに傾斜していてもよい。
【0029】
この基板支持体を構成するパネル14は、前記各ダイヤル装置10D,10R,10Pのための複数の貫通孔14d,14r,14pを有する。これらの貫通孔14d,14r,14pは、それぞれ、対応するダイヤル装置のダイヤルノブ18が裏側から表側に向かって挿通可能な形状(この実施の形態では互いに等しい直径をもつ円形)をなす。
【0030】
さらに、運転席用ダイヤル装置10Dに対応する貫通孔14dの周囲には、空調モードを切換えるために押圧操作される複数のモード切換ボタン22が配列されるとともに、その傍らに、運転席及び助手席に共通して風量を設定するために押圧操作されるシーソー式の風量設定ボタン23と、電源のオンオフを切換えるための電源ボタン24と、風量を表示するための複数のインジケータ26とが配設される。また、後部座席用ダイヤル装置10Rに対応する貫通孔14rの近傍には、前記運転席とは独立して後部座席用の空気の風量を設定するために操作される風量設定ボタン27と、その風量を表示するためのインジケータ28とが配設される。これらに対応して、前記回路基板12D上には、前記モード切換ボタン22、シーソー式の前記風量設定ボタン23及び電源ボタン24によりそれぞれ押圧操作を受けて信号をそれぞれ出力する複数の押圧スイッチ素子32、一対の押圧スイッチ素子33及び押圧スイッチ素子34(図4)と、前記各インジケータ26を照明するための複数の発光素子36とが実装され、前記回路基板12R上には、前記風量設定ボタン27により押圧操作を受けて信号を出力する一対の押圧スイッチ素子37と、前記各インジケータ28を照明するための複数の発光素子38とが実装されている。
【0031】
すなわち、メイン基板である前記回路基板12D上には、運転席に供給される空気の温度を調節するためのダイヤル装置10Dに加え、それ以外の空調機器の他の操作に寄与する操作装置を構成する素子が実装されている。
【0032】
さらに、前記回路基板12D,12R,12Pのうちの回路基板12Dにのみ、代表的に、通信部及び電源入力部が設けられる。前記通信部は、各回路基板12D,12R,12Pと車両用ダイヤル操作装置の外部の外部回路(車両に搭載された回路)との間で一括して通信を行わせるためのものであり、前記電源入力部は、前記回路基板12D,12R,12Pとその電源回路との接続を一括して行うためのものである。
【0033】
具体的に、この実施の形態では、前記通信部及び電源入力部として、当該回路基板12Dの裏面上に図5に示すような外部接続用コネクタ40及び通信制御用回路素子42が実装されている。
【0034】
前記外部接続用コネクタ40は、図略の車両用ワイヤハーネスに設けられた相手方コネクタと嵌合可能なコネクタであって、当該嵌合によって当該車両用ワイヤハーネス内の給電線に接続される電源入力用端子と、当該嵌合によって当該車両用ワイヤハーネス内の通信用の信号線に接続される信号用端子とを含む。そして、前記電源入力用端子及び前記信号用端子が前記回路基板12Dに含まれる給電用回路及び通信用回路にそれぞれ電気的に接続されるようにして、当該外部接続用コネクタ40が当該回路基板12Dの裏面上に実装されている。すなわち、この外部接続用コネクタ40は、前記電源入力部を構成するコネクタと前記通信部を構成するコネクタとを兼ねている。
【0035】
前記通信制御用回路素子42は、ICチップ等からなり、前記回路基板12Dに含まれる通信用回路中に設けられ、この回路基板12Dさらには前記回路基板12R,12Pと、前記外部接続用コネクタ40の通信用端子に接続される外部回路との間での通信制御を一括して行う。
【0036】
この回路基板12Dすなわちメイン基板は、サブ基板である回路基板12R,12Dにそれぞれ配線材44,46を介して接続される。前記配線材44は、前記回路基板12Dに設けられる給電回路と前記回路基板12Rに設けられる給電回路とを電気的に接続するための給電線と、前記回路基板12Dに設けられて前記通信部を含む通信用回路と前記回路基板12Rに含まれる通信用回路とを電気的に接続するための信号線とを含む。一方、前記配線材46は、前記回路基板12Rに設けられる給電回路と前記回路基板12Pに設けられる給電回路とを電気的に接続するための給電線と、前記回路基板12Rに設けられる通信用回路と前記回路基板12Pに設けられる通信用回路とを電気的に接続するための信号線とを含む。
【0037】
従って、前記外部接続用コネクタ40を通じて前記回路基板12Dの給電用回路に供給された電源は、前記配線材44を通じて前記回路基板12Rの給電用回路にも供給され、また、前記配線材46を通じて前記回路基板12Pの給電用回路にも供給される。また、前記各回路基板12D,12R,12Pの通信用回路は前記配線材44,46を介して相互に接続され、このように相互連携した通信用回路群が前記回路基板12Dの外部接続用コネクタ40を通じて外部回路と通信を行う。
【0038】
前記配線材44,46は、例えば、図に示されるようなフラットケーブル47と一対の配線用コネクタ48とにより構成される。前記フラットケーブル47は、可撓性を有する複数本の導体と、これらの導体を覆うシート状の絶縁層とからなり、互いに隣接する回路基板同士の相対位置の変更(特に当該回路基板の板厚方向についての相対位置の変更)を許容するのに十分な可撓性を有する。前記各配線用コネクタ48は、対象となる回路基板上にそれぞれ実装されるとともに、前記フラットケーブル47の端部が挿入可能な形状を有する。そして、その挿入されたフラットケーブル47の端部を保持するとともに、このフラットケーブル47に含まれる導体と、当該配線用コネクタ48が実装された回路基板に含まれる回路との電気的な接続を行う。
【0039】
この実施の形態では、前記配線構造を簡素にするため、メイン基板である回路基板12Dは、その本体部分12bから中央の回路基板12Rの下方を通って反対側の回路基板12Pの近傍に至るまで延びる延長部12dを有し、この延長部12dと前記各回路基板12R,12Pとをそれぞれ跨ぐように前記配線材44,46が設けられる。しかし、この延長部12dは、本発明では必ずしも要しない。例えば、メイン基板である前記回路基板12Dがこれに隣接する中央のサブ基板である回路基板12Rに配線材44を介して接続され、この回路基板12Rがこれに隣接するサブ基板である回路基板12Pに配線材46を介して接続されてもよい。
【0040】
前記リアカバー16は、前記各回路基板12D,12R,12Pをそれぞれ裏側から支持するための複数のボス部16d,16r,16pを有する。各ボス部16d,16r,16pは、前側(すなわち回路基板側及びパネル側)に向かう支持面と、同じく前側に開口するねじ孔とを有する。一方、各回路基板12D,12R,12Pにおいて前記各ねじ孔に対応する位置には貫通孔52または切欠54が形成され、当該貫通孔52または当該切欠54に対して前側から挿通された図略の固定用ねじが前記各ねじ孔にねじ込まれることにより、各回路基板12D,12R,12Pは、その裏面に前記各ボス部16d,16r,16Pの前面(支持面)が当接した状態で当該ボス部16d,16r,16pに締結される。
【0041】
このようにして、前記各回路基板12D,12R,12Pを保持した状態のリアカバー16が、ラバーシート15A,15Bを間に挟んで前記パネル14に接合されることにより、前記各回路基板12D,12R,12Pは、当該回路基板上にそれぞれ実装されている各ダイヤル装置10D,10R,10Pのダイヤルノブ18が当該パネル14の貫通孔14d,14r,14pをそれぞれ裏側から貫通して当該パネル14の表側に突出する位置に支持される。各ダイヤル装置10D,10R,10Pのダイヤルノブ18は、当該パネル14の表側から運転者等により把持されて回転操作されることが可能である。
【0042】
この実施の形態に係るダイヤル操作装置のパネル14の表面は、前記各ダイヤル装置10D,10R,10Pの回転操作軸Xに対して直交する平面ではなく、当該平面から当該回転操作軸Xと平行な方向に適宜起伏する曲面となっており、前記各貫通孔14d,14r,14pの位置は当該方向について互いに異なっている。具体的には、前記貫通穴14d,14r,14pのうち貫通孔14dが最も手前側(車室側;図3では上側)に位置する一方、貫通孔14pが最も奥側(図3では下側)に位置している。
【0043】
このようなパネル14の形状によると、仮に従来のダイヤル操作装置のように前記各ダイヤル装置10D,10R,10Pが全て共通の回路基板上に実装されていた場合、これらのダイヤル装置10D,10R,10Pのダイヤルノブ18が前記パネル14の表面から突出する突出量は、互いに大きく相違することになる。このことは、パネル14の表側から見たダイヤル操作装置の外観や、各ダイヤルノブ18の操作性(特に突出量の小さいダイヤルノブ18の操作性)に悪影響を与えるおそれがある。
【0044】
これに対し、図1〜図5に示されるダイヤル操作装置においては、前記ダイヤル装置10D,10R,10Pごとに回路基板が分割され、その分割された回路基板12D,12R,12Pが個別にリアカバー16に保持されるから、これら回路基板のパネル14に対する相対位置をそれぞれ個別に設定することが可能である、このことは、前記パネル14の形状にかかわらず、良好な外観及びダイヤル操作性を確保することを可能にする。
【0045】
具体的に、この実施の形態では、前記各貫通孔14d,14r,14pの位置の相違にかかわらず、前記回路基板12D,12R,12Pが全て同一平面上(前記回転操作軸Xに対して直交する平面上)に位置する場合に比べて前記パネル14の表面からの前記各ダイヤル装置10P,10R,10Pのダイヤルノブ18の最低突出量(図3ではパネル14の表面からの各ダイヤルノブ18の左側部分の突出量)同士の差が小さくなるように、前記リアカバー16における各ボス部16d,16r,16pの前面(支持面)の位置が設定されている。すなわち、当該方向について各回路基板12D,12R,12Pの位置が互いに異なるようにこれらの保持位置が設定されている。より具体的には、前記回路基板12D,12R,12Pのうち回路基板12Dが最も前側(図3では上側)に位置し、回路基板12Pが最も後ろ側(図3では下側)に位置するように、前記リアカバー16による各回路基板12D,12R,12Pの保持位置が設定されている。
【0046】
つまり、このダイヤル操作装置では、コストの削減のために前記各ダイヤル装置10D,10R,10Pとして互いに形状及び構造が同一のものを用い、かつ、表面が各ダイヤルノブ18の回転操作軸Xと平行な方向に起伏する形状のパネル14を用いるにもかかわらず、当該パネル14と前記各ダイヤル装置との相対位置を個別に設定することにより、全てのダイヤルノブ18の突出状態を良好にすることが可能である。例えば、前記パネル14の表面からの前記各ダイヤルノブ18の最小突出量を互いに等しくすることも可能であり、これにより、きわめて良好な外観が実現される。
【0047】
なお、本発明においてパネルに対する各ダイヤル装置の相対位置の個別設定は、前記のように各ダイヤルノブのパネル表側への突出量の均一化を目的とするものに限られない。例えば、パネル表面が各ダイヤルノブの回転操作軸と直交する平面であって起伏のないものであっても、各ダイヤルノブの位置やその操作対象によって各ダイヤルノブの突出量を意図的に相互に異ならせるためにも、本発明は有効である。
【0048】
また、本発明では基板支持体の具体的な構造も限定されない。例えば、図1〜図5に示されるダイヤル操作装置において、各回路基板12D,12P,12Rはパネル14側に固定されてもよい。
【符号の説明】
【0049】
X 回転操作軸
10D,10R,10P ダイヤル装置
12D 回路基板(メイン基板)
12P,12R 回路基板(サブ基板)
14 パネル
14d,14p,14r 貫通孔
16 リアカバー
18 ダイヤルノブ
20 ダイヤル素子
32〜34 押圧スイッチ素子(操作装置を構成する素子)
40 外部接続用コネクタ
42 通信制御用回路素子
44,46 配線材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられるダイヤル操作装置であって、
回転操作を受けるダイヤルノブ及び当該ダイヤルノブの回転位置に対応する信号を出力するダイヤル素子をそれぞれ有する複数のダイヤル装置と、
前記各ダイヤル装置ごとに分割され、対応するダイヤル装置が実装される複数の平板状の回路基板と、
これらの回路基板同士を電気的に接続する配線材と、
前記各ダイヤル装置のダイヤルノブがそれぞれ挿通可能な複数の貫通孔を有するパネルを含み、当該パネルの各貫通孔を通じて前記各ダイヤルノブが前記パネルの表側に突出する状態で前記各回路基板を個別に支持する基板支持体とを備え、
この基板支持体は、前記回路基板のうちの少なくとも2枚の回路基板について、その一方の回路基板を含む平面から外れた位置に他方の回路基板が位置するように、前記各回路基板を支持することを特徴とする車両用ダイヤル操作装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用ダイヤル操作装置において、
前記基板支持体は、前記各ダイヤル装置の回転操作軸が互いに平行となり、かつ、当該回転操作軸と平行な方向について少なくとも2つのダイヤル装置の位置が相互に異なるように、前記各回路基板を支持することを特徴とする車両用ダイヤル操作装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両用ダイヤル操作装置において、
前記パネルは、当該パネルに形成される貫通孔のうち少なくとも2つの貫通孔の位置が前記回転操作軸と平行な方向について異なるように当該方向に起伏しており、
前記基板支持体は、前記回転操作軸と平行な方向と直交する同一平面上に前記各回路基板が配置される場合に比べて前記貫通孔からの前記各ダイヤル装置のダイヤルノブの最小突出量同士の差を小さくするように、当該ダイヤル装置が実装された各回路基板を当該方向について互いに異なる位置に支持することを特徴とする車両用ダイヤル操作装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両用ダイヤル操作装置において、
前記基板支持体は、前記パネルの起伏にかかわらず前記各貫通孔からの前記各ダイヤル装置のダイヤルノブの最小突出量を互いに等しくする位置に前記各回路基板を支持することを特徴とする車両用ダイヤル操作装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の車両用ダイヤル操作装置において、
前記回路基板として、メイン基板と、このメイン基板以外の一または複数のサブ基板とを含み、前記メイン基板にのみ、このメイン基板及び前記サブ基板と前記車両用ダイヤル操作装置の外部の外部回路との間で一括して通信を行わせるための通信部が設けられ、このメイン基板と前記サブ基板とを接続する配線材は、前記通信部と前記サブ基板に設けられた通信用回路との間で前記通信に係る信号を伝送するための信号線を含むことを特徴とする車両用ダイヤル操作装置。
【請求項6】
請求項5記載の車両用ダイヤル操作装置において、
前記通信部は、前記外部回路とつながる相手方コネクタと結合可能な外部接続用コネクタと、前記メイン基板及び前記サブ基板と前記外部回路との間の通信制御を一括して行う通信制御回路とを含むことを特徴とする車両用ダイヤル操作装置。
【請求項7】
請求項5または6記載の車両用ダイヤル操作装置において、
前記メイン基板にのみ、このメイン基板及び前記サブ基板とその電源回路との接続を一括して行うための電源入力部が設けられ、このメイン基板と前記サブ基板とを接続する配線材は、前記電源入力部から入力される電源を前記サブ基板に供給するための給電線を含むことを特徴とする車両用ダイヤル操作装置。
【請求項8】
請求項7記載の車両用ダイヤル操作装置において、
前記外部接続用コネクタが前記電源入力部を兼ねることを特徴とする車両用ダイヤル操作装置。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載の車両用ダイヤル操作装置において、
前記メイン基板には、車両に搭載される空調機器から運転席に対して送られる空気の状態を調節するために操作されるダイヤル装置と、当該ダイヤル装置以外の操作装置であって前記空調機器についての他の操作に寄与する操作装置を構成する素子とが実装され、前記サブ基板には、前記空調機器から前記運転席以外の座席に対して送られる空気の状態を調節するために操作されるダイヤル装置が実装されることを特徴とする車両用ダイヤル操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−225310(P2010−225310A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68312(P2009−68312)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】