説明

車両用ドアアクチュエータ装置

【課題】複数のターミナルのハウジングへの誤組付けの防止を実現したアクチュエータ装置を提供する。
【解決手段】上下一対のハウジングと、ハウジング内に収容されたスイッチ70と、一端がスイッチ70に電気的に接続され且つ他端がハウジング外に延設され且つハウジングに形成されたターミナル支持部121に支持された複数のターミナル80とを備え、ターミナル80の長手方向においてハウジングの異なる部位に形成されたガイド溝とターミナル80に形成されガイド溝の各々に挿入される被嵌合部81とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアに配置されたドアロック機構をロック状態またはアンロック状態にする車両用ドアアクチュエータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用ドアアクチュエータ装置は、車両ボディに配設されたドアロック機構を作動させるものである。この車両用ドアアクチュエータ装置は、ハウジングと、ハウジング内に収容された電気部品と、一端が電気部品に電気的に接続され且つ他端がハウジング外に延設され且つハウジングに形成されたターミナル支持部に支持された複数の導電部材とを備えている。
【0003】
このような車両用ドアアクチュエータ装置は、導電部材をターミナル支持部により簡易的に保持した後、上下一対のハウジングにより押え込むようにすることにより組付けを簡素化させている。
【特許文献1】特開平7−238727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献の車両用ドアアクチュエータ装置であると、導電部材及びターミナル支持部の本来の取り付け位置ではない位置に他の導電部材を誤って組付けようとした場合に導電部材は薄板状の金属製のため誤組付けを生じてしまう可能性がある。これにより、誤組付けされた導電部材に不要な応力が付加され続けることになり場合によっては、導電部材が破損してしまう恐れがある。
【0005】
本発明は、従来の問題点を鑑みてなされたものであり、複数の導電部材のハウジングへの誤組付けの防止を実現した車両用ドアアクチュエータ装置を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した技術的課題を解決するために講じた第1の技術的手段は、上下一対のハウジングと、前記ハウジング内に収容された電気部品と、一端が前記電気部品に電気的に接続され且つ他端が前記ハウジング外に延設され且つ前記ハウジングに形成された支持部に支持された複数の導電部材とを備え、前記導電部材の長手方向において前記ハウジングの異なる部位に形成された嵌合部と前記導電部材に形成され前記嵌合部の各々に挿入される被嵌合部とを備えたことである。
【0007】
好ましくは、前記嵌合部は各々が異なる形状に形成されていると良い。
【0008】
また、上下一対のハウジングと、前記ハウジング内に収容された電気部品と、一端が前記電気部品に電気的に接続され且つ他端が前記ハウジング外に延設され且つ前記ハウジングに支持された複数の導電部材とを備え、前記複数の導電部材の長手方向において前記ハウジングに形成され各々が異なる形状の嵌合部と前記導電部材に形成され前記嵌合部の各々に挿入される被嵌合部とを備えると良い。
【0009】
更に好ましくは、前記ハウジングは前記導電部材の幅方向への移動を規制するガイド溝を有すると良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、導電部材の長手方向においてハウジングの異なる部位に形成された嵌合部と導電部材に形成され嵌合部の各々に挿入される被嵌合部とを備えたので、複数の導電部材の各々はハウジングの所定の位置にのみしか組付けできなくなる。これにより、ハウジングに対する導電部材の誤組付けを防止することができると共に組付性を向上させた車両用ドアアクチュエータ装置を提供することができる。
【0011】
更に、嵌合部は各々が異なる形状に形成するように構成すれば組付け時に作業者が各導電部材をハウジングのどこに組付けるのかを視覚的に認識することができる。これにより、更にハウジングに対する導電部材の誤組付けを防止された車両用ドアアクチュエータ装置を提供することができる。
【0012】
更に、ハウジングは導電部材の幅方向への移動を規制するガイド溝を有するように構成すれば、導電部材をハウジングに対して仮止めした状態で上下一対のハウジングで挟持するように組付することができるので、組付性を向上させた車両用ドアアクチュエータ装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本実施例に係るアクチュエータ装置100を図面を用いて説明する。
【0014】
図1は、本実施例のアクチュエータ装置100が車両ボディBに取り付けられた態様を示す斜視図である。図2は、本実施例のアクチュエータ装置100の分解図である。図3は、本実施例のアクチュエータ装置100がアンロック状態の時の平面図である。図4は、本実施例のアクチュエータ装置100がロック状態の時の平面図である。図5は、本実施例のアクチュエータ装置100のハウジング10におけるA部分の要部拡大図である。図6は、他の実施例である。
【0015】
図1に示されるように本実施例のアクチュエータ装置100(車両用ドアアクチュエータ装置)は、車両ボディBに回動可能に取付けられた車両ドアDを開不能状態であるロック状態または開可能状態であるアンロック状態にするドアロック機構DLへブラケット200を介して取り付けられている。なお、ドアロック機構DLの詳細については、従来のものと同等であるため説明を省略する。また、以下説明中で記載される上下方向は図2に示されるアクチュエータ装置100の上下方向を示すものと定義する。
【0016】
図2に示されるようにアクチュエータ装置100は、ハウジング10(図1示)と、ハウジング10内に収容されたモータ20と、モータ20に連結されたウォームギヤ30と、ウォームギヤ30に噛合され且つハウジング10に回動可能に軸支されたホイールギヤ40と、ハウジング10に回動可能に軸支されると共にウォームギヤ30に係脱可能なアクティブレバー50と、ハウジング10内に収容されアクティブレバー50によって押圧されるスイッチ端子71を有するスイッチ70(電気部品)と、スイッチ70に接続されたターミナル80(導電部材)と、から構成されている。
【0017】
ハウジング10は、モータ20等を収容する収容部111と収容部111と一体的に形成され外部電源に接続されたコネクタ(不図示)が接続されるコネクタ接続部123とから構成されたボディ11と、ボディ11の収容部111を上方から覆う蓋部13とから構成されている。
【0018】
図3に示されるようにモータ20は、外部から水や油分が浸入するのを防止するために四方を壁部111bで囲まれた状態で収容部111に配置されている。モータ20には、一端が収容部111からコネクタ接続部123へ貫通して配置された2本のモータ給電用ターミナル21の他端が上方向から電気的に接続されている。
【0019】
ウォームギヤ30は、壁部111bの一部を貫通してモータ20に連結された円柱状の歯車であり、ホイールギヤ40に対してハウジング10幅方向に噛合されて配置されている。
【0020】
ホイールギヤ40は、円板状に形成され、その中心にボディ11から一体的に突出された軸部111aが挿通されることによりボディ11に対して回動自在に支持されている。また、ホイールギヤ40は軸部111aと同心円上に配置され、且つ上方向に突出された2つの係合凸部41を有している。
【0021】
アクティブレバー50は、ホイールギヤ40の上方向に重ねて配置されている。アクティブレバー50の一端の下面からは円柱状の突起部52が突出している。この突出部52がボディ11に対して貫通することによりアクティブレバー50はボディ11に対して回動自在に支持されている。なお、この突起部52は、ロッキングレバー300(図2示)を介してドアロック機構DLに連係されており、ドアロック機構DLを作動させてロック状態またはアンロック状態とする。また、アクティブレバー50はボディ11の軸部111aが挿通される長孔部53を有している。この長孔部53はホイールギヤ40の係合凸部41によりアクティブレバー50が回動させられる回動範囲と略同じ幅に設定されている。更に、アクティブレバー50はホイールギヤ40の係合凸部41が係合可能な溝部54aを有する係合部54が他端の下面から一体に突出されている。この係合凸部41と溝部54aとが係合することによりアクティブレバー50は軸部111aを中心に回動させられることになる。更に、アクティブレバー50の他端の上面には、アクティブレバー50の回動範囲のうちいずれかの最大振り幅の位置にアクティブレバー50を回動させるように付勢させる一端がボディ11に取付けられたばね部材60の他端が取付けられるピン55が一体に突出されている。
【0022】
続いて、本発明の特徴部分に係る構成について以下に説明する。
【0023】
図3または5に示されるようにスイッチ70は、アクティブレバー50の他端に形成された押圧部51に対向する側にスイッチ端子71を有している。スイッチ端子71の反対側には、収容部111からコネクタ接続部123へ貫通して配置された3本のターミナル80のそれぞれの一端が接続されている。
【0024】
ターミナル80は、ボディ11の収容部111と一体に形成され、コネクタ接続部123とスイッチ70の間でスイッチ70よりも上方向に突出されたターミナル支持部121(支持部)により上方向に曲げられて配置されている。ターミナル80は、その長手方向においてそれぞれ異なる部位に矩形状の被嵌合部81が一体的に形成されている。
【0025】
ターミナル支持部121は、ターミナル80の幅方向への移動を規制するターミナル80の幅と略同じ幅に設定された3つのガイド溝121b(図2示)を有したガイド面121a(図5示)を有している。ガイド溝121bは、ターミナル80の長手方向において、ターミナルのそれぞれの被嵌合部81が嵌合可能で且つターミナル80の厚さと同じ深さに形成された位置決め溝122c(嵌合部)を有している。これによって、例えばターミナル80は、所定のガイド溝121b以外には組付できなくなる。
【0026】
ターミナル支持部121とコネクタ接続部123との間には、それぞれターミナル80が嵌合固定される固定溝部124aを有したターミナル固定部124が形成されている。ターミナル80には、固定溝部124aに嵌合固定されるための被嵌合固定部82(図2示)が一体形成されており、ガイド溝121bに組付けられたターミナル80を一旦下方向へ曲げて被嵌合固定部82を固定溝部124aに嵌合させ、更にターミナル80をコネクタ接続部123の方向へ曲げて組付けることによりターミナル80はその長手方向への移動が規制される。更に、ターミナル80は、ボディ11に対して上方向から蓋部13で覆うことにより上方向への移動も規制される。
【0027】
例えば、ターミナル80は、スイッチ70のスイッチ端子71がアクティブレバー50に押圧されている時及びアクティブレバー50がスイッチ端子71と非接触の時に通電状態で、アクティブレバー50がスイッチ端子71に接触した瞬間を非通電状態とするように設定することができる。これにより、非通電状態を経ることによりロック状態とアンロック状態との切り替えを検知することが可能になり、制御装置(不図示)により適切にモータ20への電力の供給を開始または停止させることが可能となる。
【0028】
続いて、本実施例のアクチュエータ装置100の作動について図3及び4に基づいて以下に説明する。
【0029】
なお、図3に示されるアクティブレバー50の状態をアンロック状態、図4に示されるアクティブレバーの状態をロック状態として以下説明をする。
【0030】
図3に示されるアンロック状態のアクティブレバー50をロック状態とすべく外部の電源からモータ20に電力が供給されるとモータ20は、ウォームギヤ30を介してその駆動力をホイールギヤ40に伝達する。すると、ホイールギヤ40は図3において反時計方向へ回動する。これにより、ホイールギヤ40の係合凸部41は、係合部54の係合溝部54aに係合し、アクティブレバー50を反時計方向へ回動させて図4に示されるロック状態にする。
【0031】
一方で、アクティブレバー50は、スイッチ70のスイッチ端子71に接触し、更にスイッチ端子71を押圧する。この時、ターミナル80はアンロック状態の時は通電状態となっており、アクティブレバー50とスイッチ端子71の接触の瞬間に非通電状態となり、更にアクティブレバー50がスイッチ端子71を押圧することで再度通電状態となる。この切り替えを受けてモータ20は制御装置によりその通電を停止される。以上によりアクティブレバー50はアンロック状態からロック状態となる。
【0032】
続いて、ロック状態のアクティブレバー50をアンロック状態とすべく外部の電源からモータ20に電力を供給すると、ウォームギヤ30、ホイールギヤ40及びアクティブレバー50は前述と逆の作動をする。
【0033】
一方で、アクティブレバー50は、スイッチ端子71に接触した状態から徐々に非接触となる状態へ作動する。この時、ターミナル80はロック状態は通電状態となっており、アクティブレバー50とスイッチ端子71とが非接触状態となることで再度通電状態となる。この切り替えを受けてモータ20は制御装置によりその通電を停止される。以上によりアクティブレバー50はロック状態からアンロック状態となる。
【0034】
続いて、第2の実施例について図6に基づいて以下に説明する。
【0035】
第2の実施例のアクチュエータ装置1000は、ターミナル800及びターミナル支持部1210以外は同様の構成となっており説明を省略する。また、作動についても前述と同様であるため説明を省略する。
【0036】
ターミナル800は、それぞれのターミナル810,820,830が異型状(本実施例では丸型、三角型及び四角型)の被嵌合部811,821,831を有している。
【0037】
また、ターミナル支持部1210は、ターミナル810,820,830に適合した形状(本実施例では丸型、三角型、四角型)の位置決め溝1220ca,1220cb,1220ccに形成されている。
【0038】
以上説明したように、本実施の形態のアクチュエータ装置100によれば、ターミナル80の長手方向においてハウジング10の異なる部位に形成されたガイド溝121bとターミナル80に形成されガイド溝121bの各々に挿入される被嵌合部81とを備えたので、複数のターミナル80の各々はハウジング10の所定の位置にのみしか組付けできなくなる。これにより、ハウジング10に対するターミナル80の誤組付けを防止することができると共に組付性を向上させたアクチュエータ装置100を提供することができる。
【0039】
更に、各々が異なる形状に形成された被嵌合部811,821,831を備えるように構成すれば組付け時に作業者が各ターミナル800をハウジング10のどこに組付けるのかを視覚的に認識することができる。これにより、更にハウジング10に対するターミナル80の組付性を向上させたアクチュエータ装置100を提供することができる。
【0040】
更に、ハウジング10はターミナル80の幅方向への移動を規制するガイド溝121bを有するように構成すれば、ターミナル80をハウジング10に対して仮止めした状態で上下一対のハウジング10で挟持するように組付することができるので、組付性を向上させたアクチュエータ装置100とすることができる。
【0041】
なお、本実施例では3本のターミナルを配置した説明をしたが、本発明はこれに限らず例えば2本のターミナルで構成するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施例のアクチュエータ装置100が車両ドアDに取り付けられた態様を示す斜視図である。
【図2】本実施例のアクチュエータ装置100の分解図である。
【図3】本実施例のアクチュエータ装置100がアンロック状態の時の平面図である。
【図4】本実施例のアクチュエータ装置100がロック状態の時の平面図である。
【図5】本実施例のアクチュエータ装置100のハウジング10におけるA部分の要部拡大図である。
【図6】図4における他の実施例である。
【符号の説明】
【0043】
車両ボディ B
ドアロック機構 DL
ハウジング 10
スイッチ 70
ターミナル 80
被嵌合部 81
アクチュエータ装置 100
ターミナル支持部 121
ガイド溝 121b
位置決め溝 122c

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボディに配設されたドアロック機構を作動させる車両用ドアアクチュエータ装置であって、上下一対のハウジングと、前記ハウジング内に収容された電気部品と、一端が前記電気部品に電気的に接続され且つ他端が前記ハウジング外に延設され且つ前記ハウジングに形成された支持部に支持された複数の導電部材とを備え、前記導電部材の長手方向において前記ハウジングの異なる部位に形成された嵌合部と前記導電部材に形成され前記嵌合部の各々に挿入される被嵌合部とを備えたことを特徴とする車両用ドアアクチュエータ装置。
【請求項2】
前記嵌合部は各々が異なる形状であることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドアアクチュエータ装置。
【請求項3】
車両ボディに配設されたドアロック機構を作動させる車両用ドアアクチュエータ装置であって、上下一対のハウジングと、前記ハウジング内に収容された電気部品と、一端が前記電気部品に電気的に接続され且つ他端が前記ハウジング外に延設され且つ前記ハウジングに支持された複数の導電部材とを備え、前記複数の導電部材の長手方向において前記ハウジングに形成され各々が異なる形状の嵌合部と前記導電部材に形成され前記嵌合部の各々に挿入される被嵌合部とを備えたことを特徴とする車両用ドアアクチュエータ装置。
【請求項4】
前記嵌合部は各々が前記複数の導電部材の異なる部位に形成されたことを特徴とする請求項3に記載の車両用ドアアクチュエータ装置。
【請求項5】
前記ハウジングは前記導電部材の幅方向への移動を規制するガイド溝を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両用ドアアクチュエータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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