説明

車両用ドア構造

【課題】ディビジョンバーに沿って流下した液体の飛散を抑制可能な車両用ドア構造を得る。
【解決手段】ディビジョンバー24の外面に、膨出部材30が取り付けらる。車両後方側から見たとき、膨出部材30は、ミラーベース26Uから連続するように上方に延びており、ドアミラー本体28とドア本体16側の部材との間の部分において、これらの間隔D1が急変する部分がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に適用される車両用ドア構造として、特許文献1には、フロントドアの前方側にドアミラーを備えた構造のものが記載されている。ドアミラーの車幅方向内側には、ドア開口部分を仕切るディビジョンバーが備えられている。車幅方向に見ると、ドアミラー本体とディビジョンバーとは、部分的に重なっている。
【0003】
ところで、特許文献1の構造では、ドアミラー本体とドア本体側の部材(ミラーベース又はディビジョンバー)との間隔(距離)が、ミラーベースの有無に応じて急変している。すなわち、ドアミラー本体の下部では、車幅方向内側にミラーベースが存在しているため、ドアミラー本体とミラーベースとの間隔は短いが、ドアミラー本体の上部では、車幅方向内側にミラーベースが存在していないため、ドアミラー本体とディビジョンバーとの間に、長い間隔があいている。
【0004】
このように、ドアミラー本体とドア本体側の部材との間隔が急変していると、車両走行時にドアミラー本体の周囲の空気の流速が局所的に異なるため、乱流が発生する要因となる。雨天時等、フロントウインドガラスに水分が付着した状態でワイパーを駆動すると、ディビジョンバーに沿って流下した液体が、上記した乱流によって飛散するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−42352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、ディビジョンバーに沿って流下した液体の飛散を抑制可能な車両用ドア構造を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明では、車両用ドアの外面に配置されるミラーベースと、前記ミラーベースより車幅方向外側に張り出された支持部によって前記車両用ドアに取り付けられると共に、ミラーベースよりも少なくとも一部が上方に位置するドアミラー本体と、少なくとも一部が前記ミラーベースよりも上方に位置すると共に車幅方向に見て前記ドアミラー本体と部分的に重なるディビジョンバーと、車両後方側から見て前記ミラーベースから連続するように上方に延びると共に前記ディビジョンバーからドアミラー本体に向かって膨出され、上端部がドアミラー本体のドアミラー上端部よりも上方に位置する膨出部材と、を有する。
【0008】
この車両用ドア構造では、車両用ドアの外面にミラーベースが配置されており、ミラーベースより車幅方向外側に張り出された支持部によってドアミラー本体が車両用ドアに取り付けられる。取り付け状態で、ドアミラー本体の少なくとも一部は、ミラーベースよりも上方に位置している。
【0009】
また、この車両用ドア構造を車幅方向に見ると、ディビジョンバーの少なくとも一部が、ミラーベースよりも上方に位置すると共に車幅方向に見てドアミラー本体と部分的に重なっている。
【0010】
ディビジョンバーからは、膨出部材が膨出されている。膨出部材は、ミラーベースから連続しており、その上端部(以下、「膨出部材上端部」という)が、ドアミラー本体のドアミラー上端部よりも上方に位置している。したがって、膨出部材がない構成と比較して、ドアミラー本体部の車幅方向内側の縁部とドア本体側の部材(ミラーベース又はディビジョンバー)との間隔が急変することが抑制されている。このため、車両走行時において、ドアミラー本体の周囲での乱流の発生が抑制される。乱流発生が抑制されるので、ディビジョンバーに沿って液体が流下しても、この液体が、上記した乱流に起因して飛散することが抑制される。
【0011】
なお、膨出部材における「上端部がドアミラー本体のドアミラー上端部よりも上方に位置する」とは、膨出部材の上端部が完全にドアミラー上端部よりも上方に位置している構造だけでなく、実質的に同程度の高さのものも含む。
【0012】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、車両後方から見たとき前記ミラーベースにおける車幅方向外側の縁部と前記膨出部材の車幅方向外側縁部とが直線状に連続している。
【0013】
すなわち、ミラーベースと膨出部材との境界部分に段差が生じて不連続になっている構造や、ミラーベースにおける車幅方向外側の縁部と前記膨出部材の車幅方向外側縁部とが車両後方から見て屈曲している構造であっても、膨出部材がない構造と比較すると、上記した乱流の発生は抑制できるが、特に、ミラーベースの車幅方向外側の縁部と膨出部材の車幅方向外側縁部とが直線状に連続していると、ドアミラー本体部の車幅方向内側の縁部とドア本体側の部材(ミラーベース又は膨出部材)との間隔の急変が、さらに効果的に抑制できる。このため、より効果的に乱流の発生を抑制できる。
【0014】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記膨出部材が、前記ミラーベース及び前記ディビジョンバーと別体とされている。
【0015】
このように、膨出部材をミラーベースやディビジョンバーと別体にすることで、ミラーベースやディビジョンバーの構造を大きく変更することなく、ドアミラー本体部の車幅方向内側の縁部とドア本体側の部材との間隔の急変を抑制した構造を実現できる。
【0016】
請求項4に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記膨出部材が、前記ミラーベースを上方に延出することでミラーベースと一体成形されている。
【0017】
このように、膨出部材をミラーベースと一体化することで、部品点数が少なくなる。また、ミラーベースをドア本体に取り付ける作業で、膨出部材もドア本体(ディビジョンバー)に取り付けでき、作業性が向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上記構成としたので、ディビジョンバーに沿って流下した液体の飛散を抑制可能な車両用ドア構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態の車両用ドア構造が適用された車両のフロントドアを部分的に示す側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の車両用ドア構造が適用された車両のフロントドアを示す背面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の車両用ドア構造が適用された車両のフロントドアを示す斜視図である。
【図4】比較例の車両用ドア構造が適用された車両のフロントドアを示す背面図である。
【図5】比較例の車両用ドア構造が適用された車両のフロントドアを示す斜視図である。
【図6】車両のディビジョンバーを伝って液体が流下する様子を車両の一部と共に示す斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態の変形例の車両用ドア構造が適用された車両のフロントドアを示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には、本発明の第1実施形態の車両用ドア構造12が適用された車両のフロントドア14が、車体の一部と共に車幅方向に見た状態(側面図)で部分的に示されている。また、図2には、車両用ドア構造12が車両後方から見た状態で示されている。さらに、図3には、この車両用ドア構造12が斜視図で示されている。図面において、車両前方を矢印FRで、車両上方を矢印UPで、車幅方向外側を矢印OUTでそれぞれ示している。
【0021】
フロントドア14は、ドア本体16と、このドア本体16に取り付けられたドアミラー18と、を有している。
【0022】
ドア本体16は、車両の外観形状の一部をなすドアアウターパネル20を備えている。ドアアウターパネル20の上方には枠状のドアサッシフレーム22が設けられている。ドアサッシフレーム20とドアベルトライン16L(ドアアウターパネル20の上縁に沿ったライン)の間には、上下方向に延在するディビジョンバー24が設けられている。このディビジョンバー24は、側面視にて、ドアアウターパネル20とドアサッシフレーム22とで囲まれた開口部分を前後に区画する部材でありディビジョンピラーと称させることもある。本実施形態では、ディビジョンバー24は、車両前方寄りの位置において、上方に向かうにしたがって車両後方側に傾斜するように配置されている。
【0023】
ドアミラー18は、図2から分かるように、ディビジョンバー24の車幅方向外側の位置に配置されている。ドアミラー18は、ドア本体16に固定されるミラーベース26Uと、ミラーベース26より車幅方向外側に延出された支持部26Lによってドア本体16に取り付けられるドアミラー本体28と、を備えている。
【0024】
ドアミラー本体28の一部(上部)は、ミラーベース26Uよりも上方に位置している。また、図1から分かるように、ディビジョンバー24の一部(中間部分よりも上部)も、ミラーベース26Uより上方に位置している。そして、図1及び図3から分かるように、車幅方向に見ると、ディビジョンバー24の下部が、ドアミラー本体28と部分的に重なっている。
【0025】
ディビジョンバー24の外面(車幅方向外側の面)には、膨出部材30が取り付けられている。本実施形態では、図1及び図2に示すように、膨出部材30の上下方向の中間部および下部に、係止片32が設けられている。これらの係止片32を、ディビジョンバー24及びミラーベース26に設けられた被係止部34に係止することで、膨出部材30をディビジョンバー24に係止することができる。さらに、必要に応じて、接着剤や両面接着テープ等により、膨出部材30はディビジョンバー24に固定される。
【0026】
図2から分かるように、膨出部材30の上部は、車幅方向外側の縁部30Eが上方へ向かうにしたがってディビジョンバー24に接近するように傾斜された傾斜部30Tとなっており、傾斜部30Tの上端が、膨出部材30の上端30Aとなっている。膨出部材30において、傾斜部30T以外の部位(上下方向の中間部及び下部)は、車両後方側から見て、縁部30Eがディビジョンバー24と略平行な平行部30Sとされている。
【0027】
また、車両後方側から見たとき、膨出部材30は、ミラーベース26Uから連続するように上方に延びる形状及び位置とされている。特に、膨出部材30の車幅方向外側の縁部30Eと、その下方に位置するミラーベース26Uの車幅方向外側の縁部26Eとが、これらの境界部分において略直線状に連続している。
【0028】
また、膨出部材30の上端30Aは、ドアミラー本体28の上端部(ドアミラー上端部18A)よりも上方に位置している。したがって、このような形状の膨出部材30を設たことで、車両後方側から見たとき、ドアミラー18(ドアミラー本体28)とドア本体16側の部材(ミラーベース26及びディビジョンバー24)との間の部分において、これらの間隔D1が急変する部分がない構造とされている。
【0029】
次に、本実施形態の車両用ドア構造12の作用を説明する。
【0030】
図2に示すように、本実施形態では、ディビジョンバー24に取り付けられた膨出部材30により、車両後方側から見たときの、ドアミラー本体28とドア本体16側の部材(ミラーベース26及びディビジョンバー24)との間において、これらの間隔D1が急変する部分が無い構造になっている。
【0031】
ここで、図4及び図5には、比較例の車両用ドア構造102が示されている。比較例では、上記実施形態の膨出部材30を有していないが、これ以外は上記実施形態と同一の構成とされている。
【0032】
図4から分かるように、比較例の車両用ドア構造102では、ディビジョンバー24よりも車幅方向外側においてミラーベース26が存在している部位と、存在していない部位とで、間隔D1が異なっており、間隔急変部104が生じている。
【0033】
ここで、本実施形態及び比較例において、ディビジョンバー24を伝って液体が流下した場合を考える。これは、たとえば、図6に示すように、フロントガラス36に付着した雨滴やウオッシャー液がワイパー駆動によって車幅方向外側(たとえばフロントピラー38の近傍)に拭き取られ、さらにこの液体がルーフレール部40を乗り越える等によりディビジョンバー24を伝う場合に生じる。
【0034】
比較例の車両用ドア構造102では、間隔急変部104が存在しているため、車両走行中の空気の流れAFの一部が、ディビジョンバー24の下部近傍において乱流TRとなる。そして、この乱流TRにより、ディビジョンバー24を伝って流下した液体LFの一部が周囲に飛散するおそれがある。
【0035】
これに対し、本実施形態の車両用ドア構造12では、膨出部材30を設けたことで、ドアミラー本体28とドア本体16側の部材との間において、間隔D1が急変する部位(比較例における間隔急変部104)が存在しておらず、車両走行中に、ディビジョンバー24の下部近傍において乱流が発生しない。したがって、ディビジョンバー24を伝って流下した液体が周囲に飛散することを抑制できる。
【0036】
特に本実施形態の車両用ドア構造12では、膨出部材30の上端30Aを、ドアミラー上端部18Aよりも上方に位置させている。このため、ドアミラー本体28とドア本体16側の部材との間では、確実に間隔D1が急変する部位を生じさせないようにすることができ、上記した乱流の発生を抑制する効果が高い。
【0037】
なお、かかる観点からは、膨出部材30の上端30Aは、ドアミラー上端部18Aよりも上方に位置していればよい。図7には、この観点から、膨出部材30の上端30Aが、図2に示した実施形態の構造よりも高い位置に設定された変形例の車両用ドア構造52が示されている。特にこの例では、膨出部材30の平行部30Sの全部が、ドアミラー上端部18Aよりも上方に位置している。
【0038】
ただし、膨出部材30の上端30Aをあまりに高い位置に設定すると、実質的に膨出部材30の大型化を招く。したがって、膨出部材30の上端は、ドアミラー上端部18Aよりも上方に位置する、という条件を満たす限りにおいて、過度に高くしないことが好ましい。
【0039】
また、本発明において、膨出部材30の上端30Aは、ドアミラー上端部18Aと実質的に同程度の高さ位置にあっても、ドアミラー本体28とドア本体16側の部材との間では、間隔D1が急変する部位を生じさせない構造とすることができる。
【0040】
また、本実施形態の車両用ドア構造12では、図2に示したように、車両後方側から見たときの、膨出部材30の縁部30Eとミラーベース26の縁部26Eとが直線状に連続している。これによっても、間隔D1の急変を抑制している。
【0041】
なお、膨出部材30の縁部30Eの形状や位置としては、このように、ミラーベース26の縁部26Eと直線状に連続するものに限定されない。たとえば、膨出部材30の縁部30Eが、車両後方側から見て、ミラーベース26の縁部26Eに対して屈曲するように傾斜した構造でもよい。この構造であっても、膨出部材30がない構成(たとえば図4及び図5に示した比較例の構成)と比較すると、間隔D1が急激な変化が抑制される。
【0042】
また、膨出部材30の縁部30Eとミラーベース26の縁部26Eとの間に、車両後方側から見て段差が生じていても、膨出部材30がない構成と比較すると、間隔D1が急激な変化が抑制される。上記実施形態では、このように縁部30E、26Eが屈曲している構造や、縁部30E、26Eに段差が生じている構造と比較して、間隔D1の急激な変化を確実に抑制できるので、乱流TRの発生もより効果的に抑制できる。
【0043】
また、上記では、膨出部材30として、ミラーベース26やディビジョンバー24とは別体とされたものを挙げた。このように、膨出部材30を他の部材とは別体とすることで、ミラーベース26やディビジョンバー24の構造を大きく変更することなく、間隔D1の急変を抑制できる。
【0044】
これに対し、膨出部材30を、ミラーベース26と一体化してもよい。具体的には、ミラーベース26を、その上端がドアミラー本体28のドアミラー上端部18Aよりも高い位置になる形状とすればよい。このように膨出部材30をミラーベース26と一体化すると、別体にした場合と比較して部品点数が少なくなる。また、膨出部材30をミラーベース26やディビジョンバー24に取り付ける工程も不要となり、作業性が向上する。
【符号の説明】
【0045】
12 車両用ドア構造
14 フロントドア
16 ドア本体
18 ドアミラー
18A ミラー上端部
24 ディビジョンバー
26U ミラーベース
26L 支持部
26E 縁部
28 ミラー本体
30 膨出部材
30E 縁部
30A 上端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアの外面に配置されるミラーベースと、
前記ミラーベースより車幅方向外側に張り出された支持部によって前記車両用ドアに取り付けられると共に、ミラーベースよりも少なくとも一部が上方に位置するドアミラー本体と、
少なくとも一部が前記ミラーベースよりも上方に位置すると共に車幅方向に見て前記ドアミラー本体と部分的に重なるディビジョンバーと、
車両後方側から見て前記ミラーベースから連続するように上方に延びると共に前記ディビジョンバーからドアミラー本体に向かって膨出され、上端部がドアミラー本体のドアミラー上端部よりも上方に位置する膨出部材と、
を有する車両用ドア構造。
【請求項2】
車両後方から見たとき前記ミラーベースにおける車幅方向外側の縁部と前記膨出部材の車幅方向外側縁部とが直線状に連続している請求項1に記載の車両用ドア構造。
【請求項3】
前記膨出部材が、前記ミラーベース及び前記ディビジョンバーと別体とされている請求項1又は請求項2に記載の車両用ドア構造。
【請求項4】
前記膨出部材が、前記ミラーベースを上方に延出することでミラーベースと一体成形されている請求項1又は請求項2に記載の車両用ドア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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