説明

車両用バンパの導風構造

【課題】車体取付け部の剛性を確保できるとともに、充分な冷却風を導入できる車両用バンパの導風構造を提供する。
【解決手段】1つの冷却風導入用開口部1qを車体取付け部1nの下側で、かつライセンスプレートの15下縁部15aに沿うように配置し、1つの冷却風導入用開口部1qと車体取付け部1nとの間に、該冷却風導入用開口部1qに冷却風aを導く案内ビード1xを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車幅方向に延びるバンパ本体のライセンスプレートにより覆われた部分に車体取付け部と少なくとも1つの冷却風導入用開口部とを形成した車両用バンパの導風構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、フロントバンパのバンパ本体に冷却風導入用開口部を形成することにより、走行中の冷却風をラジエータやエンジンルームに導入する場合がある。この場合、前記開口部が外部に露出することよる見栄えの悪化を防止するために、バンパ本体に取り付けられたライセンスプレートにより覆われた部分に前記開口部を形成する場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また見栄えの悪化を防止するために、前記フロントバンパを車体に取り付けるための車体取付け部を、前記バンパ本体のライセンスプレートにより覆われた部分に形成する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−289200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来のように、バンパ本体のライセンスプレートにより覆われた部分に開口部と車体取付け部とを形成する構造とした場合には、該開口部によって車体取付け部の剛性が不足し、ひいてはバンパの取り付け剛性が低下するおそれがある。即ち、冷却性能を高める観点から、開口面積をできるだけ大きくすることが考えられるが、このようにすると車体取付け部の剛性が低くなる。
【0006】
一方、開口部の開口面積を大きくすると、導入した冷却空気がエンジンルーム内で滞留する傾向があり、積極的に冷却したい部位、例えばエアコンディショナのディスチャージホース,あるいはエンジンのエキゾーストマニホールドに充分な冷却風を導入できない場合がある。
【0007】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、車体取付け部の剛性を確保できるとともに、充分な冷却風を導入できる車両用バンパの導風構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、車体の前端面に配設された車幅方向に延びるバンパ本体にライセンスプレートを取り付け、前記バンパ本体の前記ライセンスプレートにより覆われる部分に該バンパ本体を車体に取り付けるためる車体取付け部と少なくとも1つの冷却風導入用開口部とを形成した車両用バンパの導風構造であって、前記冷却風導入用開口部のうちの1つを前記車体取付け部の下側で、かつ前記ライセンスプレートの下縁部に沿うように配置し、前記1つの冷却風導入用開口部と前記車体取付け部との間に、該冷却風導入用開口部に冷却風を導く案内ビードを設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る導風構造によれば、1つの冷却風導入用開口部を車体取付け部の下側で、かつライセンスプレートの下縁部に沿うように配置し、前記開口部と車体取付け部との間に冷却風を導く案内ビードを設けたので、ライセンスプレートの側方から流入した冷却風を案内ビードにより開口部に積極的に導くことができ、前記ライセンスプレートの下方から流入した冷却風とでエンジンルーム内に充分な風量及び風速を有する冷却空気を導入することができる。これにより冷却性能を高めつつ開口部面積を小さくすることが可能となり、車体取付け部の剛性を確保することができ、ひいてはバンパの車体への取り付け剛性を確保できる。
【0010】
また前記開口部と車体取付け部との間に案内ビードを形成したので、該案内ビードが車体取付け部の剛性を高める補強部として機能することとなり、この点からもバンパの取り付け剛性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1による車両用バンパの斜視図である。
【図2】前記バンパの正面図である。
【図3】前記バンパのライセンスプレート取付け部の正面図である。
【図4】前記バンパの断面図(図2のIV-IV線断面図)である。
【図5】前記バンパの冷却風導入用開口部の断面図(図3のV-V線断面図)である。
【図6】前記バンパの断面図(図3のVI-VI線断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1ないし図6は、本発明の実施例1による車両用バンパの導風構造を説明するための図である。
【0014】
図1において、1は自動車の車体の前端面に位置するよう配置されたフロントバンパを示している。該フロントバンパ1は、車幅方向に延びるバンパ本体1aと、該バンパ本体1aの左,右側縁から後方に屈曲して延びる左,右のサイド部1b,1bとを有する。
【0015】
前記フロントバンパ1は、エンジンルームを構成する車体前端部に配設されたラジエータサポート2に取り付けられている。
【0016】
このラジエータサポート2は、車両上下方向に延びる左,右のサイド部材3,3と、該左,右のサイド部3の上端間に結合された車幅方向に延びるアッパ部材4と、下端間に結合された車幅方向に延びるロア部材5とを矩形状をなすように組み付けた構造を有する。
【0017】
前記左,右のサイド部材3の前面には車幅方向に延びるバンパリインホース6が結合されている。このバンパリインホース6は、前記バンパ本体1aの裏面の上下方向中央部に近接するよう配置されており、該バンパ本体1aの前方からの外力に対する剛性を高めている。
【0018】
また前記アッパ部材4の車幅方向中央部には、上下方向に延びるフードロックリインホース7の上端部が結合されており、該フードロックリインホース7の下端部は前記バンパリインホース6の背面に結合されている。
【0019】
車両正面から見て、前記フードロックリインホース7と右側のサイド部材3との間にはラジエータ8が配置されており、該ラジエータ8は前記アッパ部材4及びロア部材5に取り付けられている。
【0020】
前記ラジエータサポート2の上方には、エンジンルームを開閉するフード10が配設されている。このフード10は後端部が車体フレーム(不図示)に回動可能に支持されており、前端部10aの車幅方向中央部に取り付けられたストライカ9が、前記フードロックリインホース7に取り付けられたフードロックレバー12に係脱可能にロックされている(図4参照)。
【0021】
前記バンパ本体1aは、前記フード10の前縁部10aに続いて下方に大きく広がるように形成されている。該バンパ本体1aの左,右上側部にはヘッドライト装着部1d,1dが切り欠き形成されており、左,右下側部にはフォグランプ取付け孔1e,1eが形成されている。
【0022】
また前記バンパ本体1aの上部には、車幅方向に延びる長孔状の走行風導入口1gが形成されている。
【0023】
前記バンパ本体1aの下部には、ライセンスプレート取付け部1iとラジエータグリル部1jとが車幅方向に延びるよう連続形成されている。このラジエータグリル部1jの後方に前記ラジエータ8が配置されている。
【0024】
前記バンパ本体1aの上縁部1cには、該上縁部1cから後方に屈曲して延びる左,右の取付け部1k,1kが形成されている。該左,右の取付け部1kは、これの各取付け孔1mに装着されたクリップ(不図示)により前記アッパ部材4の上壁面4aに取り付けられている(図1参照)。
【0025】
前記バンパ本体1aのライセンスプレート取付け部1iには、該取付け部1iを前方から覆うようにライセンスプレート15が取り付けられている。該ライセンスプレート15とライセンスプレート取付け部1iとの間には、走行風が流入可能な隙間sが設けられている。
【0026】
そして前記バンパ本体1aのライセンスプレート取付け部1iの前記ライセンスプレート15により覆われた部分には、該バンパ本体1aを前記フードロックリインホース7に取り付けるためる車体取付け部1nと、2つの第1,第2冷却風導入用開口部1p,1qとが形成されており、詳細には以下の構造を有する。
【0027】
前記ライセンスプレート取付け部1iは、バンパ本体1aの一般面より後方に凹状に形成されている。該ライセンスプレート取付け部1iの上辺部に左,右一対のライセンスプレート取付け座1r,1rが形成されており、該左,右のライセンスプレート取付け座1rに前記ライセンスプレート15がボルト締め固定されている。
【0028】
前記ライセンスプレート取付け部1iのライセンスプレート取付け座1r,1rの間には車幅方向に延びる複数のスリット部1r形成されており、前記ライセンスプレート取付け部1iの左側部には車幅方向に延びる多数のスリット部1tが形成されている。
【0029】
前記車体取付け部1nは、ライセンスプレート取付け部1iの上下方向中央部で、かつ第1開口部1pと右側のライセンスプレート取付け座1iとの間に形成されている。この車体取付け部1nは、後方に凹形状をなすよう突出形成されており、該車体取付け部1nの取付け孔1n′に装着されたクリップ16により前記フードロックリインホース7の下端部に固定されている(図4参照)。
【0030】
前記第1冷却風導入用開口部1pは、ライセンスプレート取付け部1iの中央部に形成されており、該中央部の略全域に渡る大きさを有している。
【0031】
前記第2冷却風導入用開口部1qは、前記車体取付け部1nの下側で、かつ前記ライセンスプレート15の下縁部15aに沿うように形成されている。
【0032】
前記第2開口部1qは、車幅方向に延びる長孔に形成されており、該第2開口部1qの下縁が前記ライセンスプレート15の下縁部15aに近接するように配置されている。これによりライセンスプレート15の下縁部15aの下方から流入した冷却風bは第2開口部1qに導入される。
【0033】
前記第2開口部1qの開口縁には後方に延びる筒部1uが一体に形成されている。この筒部1uは、図5に示すように、後方ほど開口面積が小さくなるようテーパ状に形成され、エンジンルーム内のエアコンディショナのディスチャージホースやエンジンの後方に配置されているエキゾーストマニホールド(不図示)に指向するように形成されている。
【0034】
前記第2冷却風導入用開口部1qと前記車体取付け部1nとの間には、該第2開口部1qにライセンスプレート15の側方から流入した横冷却風aを導く3つの案内ビード1xが略上下方向に延びるよう形成されている。
【0035】
この各案内ビード1xは、前記隙間sから流入した横冷却風aが第2開口部1qに向かって流れるように左下に向かって傾斜するように形成され、かつ車幅方向に所定の間隔をあけて配置されている。
【0036】
本実施例によれば、第2冷却風導入用開口部1qを車体取付け部1nの下側で、かつライセンスプレート15の下縁部15aに沿うように配置し、前記第2開口部1qと車体取付け部1nとの間に該開口部1qに冷却風aを導く複数の案内ビード1xaを形成したので、走行中にライセンスプレート15の側方から流入した横冷却風aを各案内ビード1xにより開口部に積極的に導くことができ、前記ライセンスプレート15の下縁部15aの下方から流入した冷却風bとでエンジンルーム内に充分な風量,風速を有する冷却空気を導入することができる。これにより冷却性能を高めつつ開口部面積を小さくすることが可能となり、車体取付け部1nの剛性を確保することができ、ひいてはフロントバンパ1のラジエータサポート2への取り付け剛性を確保できる。ちなみに、風量を変えることなく、開口面積を従来に比べて1/3〜1/4に小さくすることが可能である。
【0037】
また本実施例では、前記第2開口部1qと車体取付け部1nとの間に複数の案内ビード1xを形成したので、各案内ビード1xが車体取付け部1nの剛性を高める補強部として機能することとなり、この点からもフロントバンパ1の取り付け剛性を向上できる。
【0038】
本実施例では、前記第2開口部1qを車幅方向に延びる長孔状のものとし、該第2開口部1qに後方に延びる筒部1uを形成し、該筒部1uをエアコンディショナのディスチャージホースやエンジンのエキゾーストマニホールドに指向するように配置したので、流速の高い冷却風を温度の高い部位に集中させて供給することができ、この点からも冷却性能を向上できる。
【0039】
なお、前記実施例では、第2冷却風導入用開口部1qを車幅方向延びるスリット形状としたが、本発明の開口部の形状はこれに限られるものではなく、円形状,角形状でもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 フロントバンパ
1a バンパ本体
1n 車体取付け部
1q 第2冷却風導入用開口部(1つの冷却風導入用開口部)
1x 案内ビード
15 ライセンスプレート
15a 下縁部
a 冷却風

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前端面に配設された車幅方向に延びるバンパ本体にライセンスプレートを取り付け、前記バンパ本体の前記ライセンスプレートにより覆われる部分に該バンパ本体を車体に取り付けるためる車体取付け部と少なくとも1つの冷却風導入用開口部とを形成した車両用バンパの導風構造であって、
前記冷却風導入用開口部のうちの1つを前記車体取付け部の下側で、かつ前記ライセンスプレートの下縁部に沿うように配置し、
前記1つの冷却風導入用開口部と前記車体取付け部との間に、該冷却風導入用開口部に冷却風を導く案内ビードを設けたことを特徴とする車両用バンパの導風構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−37321(P2011−37321A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184348(P2009−184348)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)