説明

車両用バンパー構造

【課題】本発明は、低速衝突の際にバンパーフェイスを好適に変形することができ、かつ、バンパーフェイスのデザインに制約を受けることがない車両用バンパー構造を提供する。
【解決手段】 車両用バンパー構造20は、リヤバンパービーム21の上面部61aから上フランジ61を上方に張り出し、上フランジ61の上縁61cに車幅方向に延びるアブソーバ22を載置するとともに、アブソーバ22の左右の支持端部34,35をリヤバンパービーム21に取り付け、アブソーバ22の支持端部34,35近傍にそれぞれ切欠部71,72を形成し、それぞれの切欠部71,72間において、アブソーバ22の上端部36cに、下中空突起67の後端67aまで車体後方に突出させた突出部73を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用バンパー構造に係り、特に、車体後部のテールゲートの下方に車幅方向に延びるバンパービームを備え、このバンパービームに緩衝部材を備え、バンパービームおよび緩衝部材をバンパーフェイスで覆った車両用バンパー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用バンパー構造として、車体後部のテールゲートの下方に車幅方向に延びるリヤバンパービームを備え、このリヤバンパービームの後部にエネルギーアブソーバ(緩衝部材)を備え、リヤバンパービームおよび緩衝部材をリヤバンパーフェイスで覆ったものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−127872号公報
【0003】
特許文献1の車両用バンパー構造は、万が一、車両が壁部などに衝突した際に、緩衝部材を潰すとともに、リヤバンパーフェイスを変形させて衝突エネルギーを吸収するものである。
この車両用バンパー構造は、リヤバンパーフェイスの上方にテールゲートが設けられた車両に適用され、リヤバンパーフェイスが変形した場合に、変形したリヤバンパーフェイスの上部でテールゲートが損傷しないように構成されている。
【0004】
ところで、車両用バンパー構造のなかには、低速(約8km/Hr以下)衝突時などの小さい衝突エネルギーを吸収するように構成されたものがある。
加えて、車両用バンパー構造のなかには、リヤバンパーフェイスの上部に、ふみ段用のバンパーステップを備えたものがある。
次図で、低速(約8km/Hr以下)衝突時の小さい衝突エネルギーを吸収可能で、かつバンパーステップを備えた車両用バンパー構造の一例を説明する。
【0005】
図9は従来の車両用バンパー構造を示す断面図である。
車体後部のバンパー構造150は、車体後部151のテールゲート152の下方に車幅方向に延びるリヤバンパービーム153を備え、このリヤバンパービーム153の後部154に緩衝部材155を備え、緩衝部材155およびリヤバンパービーム153のそれぞれの上部にアブソーバ156を備え、リヤバンパービーム153、緩衝部材155およびアブソーバ156をリヤバンパーフェイス157で覆い、リヤバンパーフェイス157の上部158で、かつテールゲート152の後方に、ふみ段用のバンパーステップ159を備える。
【0006】
この車体後部のバンパー構造150によれば、緩衝部材155およびリヤバンパービーム153のそれぞれの上部にアブソーバ156を備えることで、アブソーバ156の上端156aがリヤバンパーフェイス157の上部158に近接、あるいは当接している。
加えて、リヤバンパーフェイス157の上部158には、ふみ段用のバンパーステップ159を備える。
【0007】
このため、万が一、車両が壁部160などに低速衝突した際に、緩衝部材155が潰れ、リヤバンパーフェイス157の上部158が折れ曲がろうとする。
ここで、リヤバンパーフェイス157の上部158が折れ曲がるためには、上部158の下方に空間を必要とする。
【0008】
しかしながら、リヤバンパーフェイス157の上部158下方にはアブソーバ156が設けられており、リヤバンパーフェイス157の上部158が折れ曲がるための空間を確保することができない。
加えて、リヤバンパーフェイス157の上部158にはバンパーステップ159が設けられているので、リヤバンパーフェイス157の上部158を折り曲げることはさらに難しい。
【0009】
この対策として、リヤバンパーフェイス157の上部158の前端部158a近傍に段部161を形成する方法が知られている。
リヤバンパーフェイス157の上部158に段部161を形成して、段部161から変形しやすい形状とする。これにより、低速衝突時に、上部158の前端部158aが車体後部151の後端部151aに当接して、段部161を変形させることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、リヤバンパーフェイス157の上部158に段部161を形成すると、リヤバンパーフェイス157の上部158、すなわちリヤバンパーフェイス157のエプロン面を平坦化することができない。
このため、リヤバンパーフェイス157のデザインに制約を受け、そのことが外観性の向上を図る妨げになっていた。
【0011】
本発明は、低速衝突の際にバンパーフェイスを好適に変形することができ、かつ、バンパーフェイスのデザインに制約を受けることがない車両用バンパー構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、車体後部のテールゲートの下方に車幅方向に延びるバンパービームを備え、このバンパービームに緩衝部材を備え、バンパービームおよび緩衝部材をバンパーフェイスで覆った車両用バンパー構造において、前記バンパービームの上面からフランジを上方に張り出し、このフランジの上縁に車幅方向に延びるアブソーバを載置するとともに、アブソーバの両端部をバンパービームに取り付け、このアブソーバの両端部近傍にそれぞれ切欠部を形成し、それぞれの切欠部間において、前記アブソーバの上端部に、前記緩衝部材の後端まで車体後方に突出させた突出部を備えたことを特徴とする。
【0013】
万が一、車両が壁部などに低速衝突した際に、緩衝部材を潰すとともに、アブソーバの上端部に設けた突出部を車体前方に向けて押し出す。アブソーバが車体前方に押圧されて、切欠部が変形する。
アブソーバが車体前方に移動してフランジの上縁から、バンパービームの上辺に落下することで、アブソーバがバンパーフェイスの上部から離れる。よって、バンパーフェイスの上部下方に比較的大きな間隔を形成する。
【0014】
バンパーフェイスの上部下方に比較的大きな間隔を形成することで、バンパーフェイスの上部が変形する空間を確保する。
この間隔を利用して、バンパーフェイスの上部を変形させて、バンパーフェイスを好適に変形することができる。
これにより、バンパーフェイスの上部前端部に、変形を促進するための段部を形成する必要がない。
【0015】
請求項2は、バンパーフェイスの上部で、かつテールゲートの後方に、前記上部が変形した際に、変形した上部から前辺側が外れるように、ふみ段用のバンパーステップを設けたことを特徴とする。
【0016】
バンパーフェイスの上部で、かつテールゲートの後方にバンパーステップを設けた。このバンパーステップを、バンパーフェイスの上部が変形した際に、バンパーステップの前辺側を上部から外れるように構成することで、バンパーフェイスの上部が変形することを、バンパーステップで妨げる虞がない。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明では、低速衝突の際に間隔を形成し、この間隔を利用して、バンパーフェイスを好適に変形することで、バンパーフェイスの変形を促進させる段部を不要にでき、バンパーフェイスのデザイン性に対する自由度を高めることができるという利点がある。
【0018】
請求項2に係る発明では、バンパーステップを、バンパーフェイスの上部が変形した際に、バンパーステップの前辺側を上部から外れるように構成することで、バンパーフェイスを好適に変形することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Lは左側、Rは右側を示す。
【0020】
図1は本発明に係る車両用バンパー構造を備えた車両を示す斜視図である。
車両10は、車体11の後部12にテールゲート13を備え、このテールゲート13の下方および左右の後輪15,15の後方に車両用バンパー構造20を備える。
テールゲート13は、上端部14をヒンジ(図示せず)を介して車体11の後部12に回動自在に取り付けることにより、前記ヒンジを支点として閉位置と開位置とにスイング自在に支持されている。
閉位置は、車室(図示せず)をテールゲート13で閉じる位置であり、開位置は、車室を開放する位置である。
以下、車両用バンパー構造20について細説する。
【0021】
図2は本発明に係る車両用バンパー構造を示す分解斜視図である。
車両用バンパー構造20は、車体後部12のテールゲート13(図1参照)の下方に車幅方向に延びるリヤバンパービーム(バンパービーム)21を備え、このリヤバンパービーム21にアブソーバ22を備え、リヤバンパービーム21およびアブソーバ22をリヤバンパーフェイス(バンパーフェイス)23で覆い、このリヤバンパーフェイス23にバンパーステップ24を設けたものである。
【0022】
リヤバンパービーム21は、車体フレーム26の後端部26aに、リヤバンパービーム21の左右端部27,28をそれぞれ取付ブラケット29,29取り付け、左右端近27,28の近傍に左右の差込孔31,32を備えた湾曲状の補強部材である。
【0023】
アブソーバ22は、左右の支持端部34,35に、車体前方に突出する左右の係止ピン37,38(図3参照)をそれぞれ備え、左右の係止ピン37,38を、それぞれ左右の差込孔31,32に矢印aの如く差し込むとともに、リヤバンパービーム21に矢印bの如く載置した部材である。
アブソーバ22は、発泡剤で略湾曲状に形成した変形可能な部材であり、衝突エネルギーを吸収可能な部材である。
【0024】
リヤバンパーフェイス23は、略コ字形に形成した樹脂製の部材であって、左右の後輪15,15(図1参照)の後方から車体後方に延ばした左右の側部41,42を備え、左右の側部41,42の後端部間に掛け渡したフェイス本体43を備える。
フェイス本体43は、上部44にバンパーステップ24を載置する載置部位45を備え、載置部位45にバンパーステップ24のクリップ46…,47…および前差込片48…(図5、図6参照)を差し込む係止孔51…,52…および差込孔53…を備える。
【0025】
バンパーステップ24は、車幅方向に延ばした帯状の部材であって、フェイス本体43の載置部位45に矢印cの如く載置することで、使用者が足を載せるふみ段として用いる部材である。
バンパーステップ24は、上面に凹み25…を備える。
【0026】
図3は本発明に係る車両用バンパー構造の要部を示す分解斜視図、図4は本発明に係る車両用バンパー構造の要部を示す斜視図である。
リヤバンパービーム21は、車体フレーム26の後端部26aに、ビーム本体55の左右の端部55a,55bを取付ブラケット29,29を介して取り付け、ビーム本体55の前部中央55cにガセット56を備え、ビーム本体55の後部55d(図5、図6参照)に沿って取り付けるビームプレート58を備える。
【0027】
ビーム本体55は、上下の面部61a,62aを備え、上面部(上面)61aから上方に張り出した上張出片61bを備えるとともに、下面部62a(図5、図6参照)から下方に張り出した下張出片62b(図5、図6参照)を備える。
【0028】
上張出片61bに、ビームプレート58の上辺58aを重ね合わせ、これらの部材61b,58aをスポット溶接により接合する。
下張出片62bに、ビームプレート58の下辺58bを重ね合わせ、これらの部材62b、58bをスポット溶接により接合する。
【0029】
上張出片61bとビームプレート58の上辺58aとを接合した部位を、上方に張り出した上フランジ(フランジ)61とする。
また、下張出片61bとビームプレート58の下辺58bとを接合した部位を、下方に張り出した下フランジ62とする。
【0030】
ビームプレート58は、中央部58c(図6も参照)に、車体後方に向けて突出する緩衝部材65を備える。
この緩衝部材65は、ビームプレート58の上下に備えた2条(上下)の中空突起66,67である。
【0031】
上中空突起66および下中空突起67は、いわゆる、ハット形断面(まわりにふちのある帽子の断面)に形成されている。
上側の上中空突起66は、車体後方への突出高さがH1(図6も参照)であり、下側の下中空突起67は、車体後方への突出高さがH2(図6参照)である。
【0032】
アブソーバ22は、リヤバンパービーム21に備えた上フランジ61の上縁61cに沿って湾曲状に延びるアブソーバ本体36と、このアブソーバ本体36の左右端に一体に形成した左右の支持端部34,35とを備える。
【0033】
アブソーバ本体36は、左右端部36a,36b(すなわち、アブソーバ22の支持端部34,35近傍)で、かつ車体前方側の部位にそれぞれ左右の切欠部71,72を形成することで、左右端部36a,36bのうち、切欠部71,72を形成した部位の幅Wを小さくしたものである。
【0034】
また、アブソーバ本体36は、断面略矩形状の部材であって、上端部36cに所定間隔をおいて、複数個(4個)の突出部73…を備える。
突出部73…は、緩衝部材65の後端、すなわち下中空突起67の後端67a(緩衝部材の後端)(図6参照)まで車体後方に突出させた突出片である。
【0035】
左右の支持端部34,35は、それぞれの底部34a,35b(図5参照)に嵌合溝75,76を備え、各嵌合溝75,76の側壁75a,76aに連続する壁面77,78(図5参照)に車体前方に突出する左右の係止ピン37,38(図5も参照)を備える。
【0036】
アブソーバ22によれば、左右の係止ピン37,38を、それぞれ左右の差込孔31,32に矢印aの如く差し込むとともに、左右の嵌合溝75,76を上フランジ61の上縁61cに矢印dの如く嵌合し(図5も参照)、アブソーバ本体36の底部36d(図6も参照)を上フランジ61の上縁61cに矢印eの如く載置することで、リヤバンパービーム21に取り付けることができる。
【0037】
リヤバンパービーム21の上フランジ61にアブソーバ22を載せることで、アブソーバ22を上フランジ61と、リヤバンパーフェイス23の載置部位45(図5、図6参照)の間に配置する。
これにより、リヤバンパーフェイス23の載置部位45をアブソーバ22で支えることができる。
【0038】
ここで、アブソーバ本体36に突出部73…を形成するとともに、左右の切欠部71,72を形成した理由について説明する。
すなわち、突出部73…を車体前方に向けて押圧することで、切欠部71,72を変形させて、アブソーバ本体36を左右の支持端部34,35から切り離す。
【0039】
アブソーバ本体36の底部36d(図6参照)を上フランジ61の上縁61cから外して、アブソーバ本体36を下降させ、ビーム本体55の上面部61aおよびガセット56の上面部56aに載せる。
これにより、リヤバンパーフェイス23の上部44の下方に、上部44を折り曲げるために必要な空間89(図8(b)参照)を確保することができる。
【0040】
ここで、アブソーバ本体36の上端部36cに突出部73…を設けたので、ビーム本体55の上面部61aおよびガセット56の上面部56aにアブソーバ本体36が載った際に、突出部73…を上フランジ61の上方に位置させることが可能になる。
これにより、アブソーバ本体36を、ビーム本体55の上面部61aおよびガセット56の上面部56aに載る位置まで確実に下降させることができる。
【0041】
図5は図4の5−5線断面図である。
リヤバンパービーム21のビーム本体55は、上下の突条部81,82(図3も参照)を有し、上突条部81の上面部61aから上方に張り出した上張出片61bを備え、下突条部82の下面部62aから下方に張り出した下張出片62bを備える。
上突条部81および下突条部82は、いわゆる、ハット形断面(まわりにふちのある帽子の断面)に形成されている。
【0042】
上張出片61bに、ビームプレート58の上辺58aを重ね合わせ、両部材61b,58aをスポット溶接により接合する。
下張出片62aに、ビームプレート58の下辺58bを重ね合わせ、両部材62b,58bをスポット溶接により接合する。
上下の突条部81,82を連結する連結部83に、ビームプレート58の中央部58cを重ね合わせ、両部材83,58cをスポット溶接により接合する。
【0043】
上張出片61b、およびビームプレート58の上辺58aとを接合した部位を、上方に張り出した上フランジ(フランジ)61とする。
下張出片62b、およびビームプレート58の下辺58bとを接合した部位を、下方に張り出した下フランジ62とする。
【0044】
上フランジ61に、左支持端部34の左嵌合溝75を嵌合するとともに、左支持端部34の左係止ピン37をリヤバンパービーム21の左差込孔31に差し込む。
この状態で、左支持端部34の上端34bが、リヤバンパーフェイス23の上部44に備えた載置部位45の内面に当接する。
【0045】
また、上フランジ61に、右支持端部35の右嵌合溝76(図3も参照)を嵌合するとともに、右支持端部35の右係止ピン38をリヤバンパービーム21の右差込孔32(図3も参照)に差し込む。
この状態で、右支持端部35の上端35bが、リヤバンパーフェイス23の上部44に備えた載置部位45の内面に当接する。
【0046】
これにより、リヤバンパーフェイス23の載置部位45を、左右の支持端部34,35で支え、リヤバンパーフェイス23の剛性を高めることができる。
【0047】
リヤバンパーフェイス23の載置部位45の表面にバンパーステップ24を載置し、前後の係止孔51…,52…に、前後のクリップ46…,47…をそれぞれ差し込むことにより、載置部位45の表面にバンパーステップ24を取り付ける。
【0048】
具体的には、バンパーステップ24の前辺24a側に下方に突出した前クリップ46…を備え、載置部位35の前部に係止孔51…を備える。前クリップ46…を前係止孔51…に差し込む。
バンパーステップ24の後辺24b側に下方に突出した後クリップ52…を備え、載置部位35の後部に係止孔51…を備える。後クリップ52…を後係止孔52…に差し込む。
【0049】
また、リヤバンパーフェイス23は、上部44が、前端部44aから後端部44bまでのエリアE1において略平坦に形成されている。
リヤバンパーフェイス23の上部44で、かつリヤバンパーフェイス23の前端44a近傍の上方には、テールゲート13が設けられている。
【0050】
図6は図4の6−6線断面図である。
リヤバンパービーム21は、ビーム本体55の前部中央55cにガセット56が設けられ、ビーム本体55の後部55dに、一例として3個の補強プレート84…(1個のみを図示する)が所定間隔をおいて設けられ、ビーム本体55の後部55dに取り付けたビームプレート58で3個の補強プレート84…が覆われている。
【0051】
ビーム本体55の上張出片61bに、補強プレート84…の上端部84a…およびビームプレート58の上辺58aを重ね合わせ、それぞれの部材61b,84a…,58aをスポット溶接により接合する。
【0052】
ビーム本体55の下張出片62bに、補強プレート84…の下端部84b…およびビームプレート58の下辺58bを重ね合わせ、それぞれの部材62b,84b…,58bをスポット溶接により接合する。
上下の突条部81,82を連結する連結部83に、補強プレート84…の中央部84c…およびビームプレート58の中央部58cを重ね合わせ、それぞれの部材83,84c…,58cをスポット溶接により接合する。
【0053】
上張出片61b、補強プレート84…の上端部84a…およびビームプレート58の上辺58aとを接合した部位で、上方に張り出した上フランジ(フランジ)61の一部を構成する。
下張出片62b、補強プレート84…の下端部84b…およびビームプレート58の下辺58bとを接合した部位で、下方に張り出した下フランジ62の一部を構成する。
【0054】
ビームプレート58は、中央部58cに、車体後方に向けて突出する緩衝部材65として、上下の中空突起66,67を備える。
上中空突起66は、車体後方への突出高さがH1であり、下中空突起67は、車体後方への突出高さがH2である。
突出高さH1と突出高さH2との関係は、H1<H2が成立する。
【0055】
上フランジ61の上縁61cにアブソーバ本体36の底部36dを載置する。この状態で、アブソーバ本体36の上端36e(図3、図4も参照)が、リヤバンパーフェイス23の上部44に備えた載置部位45の内面に当接する。
これにより、リヤバンパーフェイス23の載置部位45を、アブソーバ本体36で支え、リヤバンパーフェイス23の剛性を高めることができる。
【0056】
アブソーバ本体36の上端部36cに突出部73…が形成されている。突出部73…は、後端73a…が、下中空突起67の後端67aと略同じ位置、もしくは後端73a…が、車体後方側に位置するように車体後方に突出されている。
【0057】
これにより、リヤバンパーフェイス23の後部86(図1参照)が、下中空突起67の後端67aに当接する際に、略同時に、突出部73…の後端73a…に当接する。
よって、下中空突起67を潰す時期に合わせて、リヤバンパーフェイス23の上部44を潰すことで、衝突エネルギーを効率よく吸収する。
【0058】
突出部73…の後端73a…と、リヤバンパーフェイス23の後部86との間に間隔Sを確保する。間隔Sは、2〜5mmの範囲に設定されており、3mmに設定することが好ましい。
間隔Sが2mm未満になると、車体11に組み付ける際に、組付け公差により、アブソーバ22がリヤバンパーフェイス23と干渉して上フランジ61から外れてしまう虞がある。
間隔Sが5mmを超えると、低速衝突(軽衝突)時に、例えば下中空突起67の変形量によっては、アブソーバ本体36が上フランジ61から外れない虞がある。
そこで、間隔Sを2〜5mmの範囲に設定して、アブソーバ22の組付け性を高め、かつ低速衝突時に、アブソーバ本体36を上フランジ61から確実に外れるようにした。
【0059】
バンパーステップ24の前辺24a側に下方に突出した前差込片48…(1個のみを図示する)を備える。バンパーステップ24の後辺24b側に下方に突出した後クリップ47…(1個のみを図示する)を備える。
前差込片48…を前差込孔53…(1個のみを図示する)に差し込むとともに、後クリップ47…を後係止孔52…に差し込む。
前差込孔53…に前差込片48…を差し込む構成とすることで、前差込孔53…から前差込片48…を比較的簡単に外すことができる。
【0060】
図2に戻って、バンパーステップ24の後辺24b側に備えた後クリップ47…(図5、図6参照)は、バンパーステップ24の左端部24cから右端部24dの全域に亘って、同一のものが使用されている。
【0061】
また、バンパーステップ24の前辺24a側に備えた前クリップ46…(図5参照)は、左端部24c近傍のエリアE2、および右端部24d近傍のエリアE2に使用されている。
さらに、バンパーステップ24の前辺24a側に備えた前差込片48…(図6参照)は、中央部24eのエリアE3に使用されている。
【0062】
バンパーステップ24の前辺24a側で、かつ左右の端部24c,24d近傍のエリアE2,E2に前クリップ46…を備えることで、バンパーステップ24を載置部位45に好適に係止させた状態を確保することができる。
加えて、バンパーステップ24の前辺24a側で、かつ中央部24eのエリアE3に前差込片48…を備えることで、前差込孔53…から前差込片48…を比較的簡単に外すことができる。
【0063】
これにより、通常の使用状態において、バンパーステップ24を載置部位45に好適に係止させた状態を確保することができ、低速衝突の際に、エリアE3の前差込片48…を外すことで、リヤバンパーフェイス23の上部44を好適に潰すことができる。
【0064】
次に、車両用バンパー構造20の作用を図7〜図8に基づいて説明する。
図7(a),(b)は本発明に係る車両用バンパー構造のバンパーフェイス後部が壁部に衝突した例を説明する図である。
(a)において、車両が低速走行の際に、リヤバンパーフェイス23の後部86が壁部88に低速衝突することが考えられる。
【0065】
(b)において、リヤバンパーフェイス23(主に、上部44)が僅かに変形し、後部86が、突出部73…の後端73a…や下中空突起67の後端67aに当接する。
リヤバンパーフェイス23の上部44が、僅かに変形することで、バンパーステップ24の前差込片48…が前差込孔53…から外れる。
加えて、リヤバンパーフェイス23の後部86が突出部73…の後端73a…に当接することで、突出部73…を矢印fの如く車体前方に向けて押し出す。
【0066】
図8(a),(b)は本発明に係る車両用バンパー構造のバンパーフェイスが変形する例を説明する図である。
(a)において、突出部73…を車体前方に向けて押圧することで、切欠部71,72で左右端部36a,36bを変形する。
アブソーバ本体36が左右の支持端部34,35から車体前方に矢印gの如く移動する。
アブソーバ本体36の底部36d((b)参照)を上フランジ61の上縁61cから外して、アブソーバ本体36を矢印hの如く下降させる。
【0067】
(b)において、アブソーバ本体36が、ビーム本体55の上面部61aおよびガセット56の上面部56aに載る。
ここで、アブソーバ本体36の上端部36cに突出部73…を設けたので、ビーム本体55の上面部61aおよびガセット56の上面部56aにアブソーバ本体36が載った際に、突出部73…を上フランジ61の上方に位置させる。
【0068】
よって、アブソーバ本体36を、ビーム本体55の上面部61aおよびガセット56の上面部56aに載る位置まで確実に下降させることができる。
これにより、リヤバンパーフェイス23の上部44の下方に空間89を確保する。
【0069】
加えて、バンパーステップ24の前差込片48…が前差込孔53…から外れている。よって、リヤバンパーフェイス23の上部44が、テールゲート13の後側で山形に変形する。
リヤバンパーフェイス23の上部44の変形に伴って、バンパーステップ24のエリアE2,E2(図2参照)の前クリップ46…(図5参照)が前係止孔51…から外れる。
【0070】
これにより、バンパーステップ24の前辺24a側がリヤバンパーフェイス23の上部44から離れ、リヤバンパーフェイス23の上部44をテールゲート13の後側で山形に好適に変形する。
この際に、上下の中空突起66,67が潰れて、衝突エネルギーを吸収する。
さらに、リヤバンパーフェイス23の上部44をテールゲート13の後側で山形に好適に変形させることで、テールゲート13が損傷する虞はない。
【0071】
なお、前記実施の形態では、切欠部71,72を変形させて、アブソーバ本体36を上フランジ61の上縁61cから外し、外したアブソーバ本体36を下降させる例について説明したが、これに限らないで、切欠部71,72を破断させてアブソーバ本体36を上フランジ61の上縁61cから外し、外したアブソーバ本体36を下降させても同様の効果を得ることができる。
【0072】
また、前記実施の形態では、本発明を、リヤバンパーフェイス23にバンパーステップ24を備えた車両用バンパー構造20に適用する例について説明したが、本発明は、リヤバンパーフェイス23にバンパーステップ24を備えていない車両用バンパー構造に適用しても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の車両用バンパー構造は、車体後部のテールゲートの下方にバンパービームを備え、バンパービームに緩衝部材を備え、バンパービームや緩衝部材をバンパーフェイスで覆った自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る車両用バンパー構造を備えた車両を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る車両用バンパー構造を示す分解斜視図である。
【図3】本発明に係る車両用バンパー構造の要部を示す分解斜視図である。
【図4】本発明に係る車両用バンパー構造の要部を示す斜視図である。
【図5】図4の5−5線断面図である。
【図6】図4の6−6線断面図である。
【図7】本発明に係る車両用バンパー構造のバンパーフェイス後部が壁部に衝突した例を説明する図である。
【図8】本発明に係る車両用バンパー構造のバンパーフェイスが変形する例を説明する図である。
【図9】従来の車両用バンパー構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0075】
10…車両、12…車体後部、13…テールゲート、20…車両用バンパー構造、21…リヤバンパービーム(バンパービーム)、22…アブソーバ、23…リヤバンパーフェイス(バンパーフェイス)、24…バンパーステップ、24a…前辺、34…左支持端部(アブソーバの両端部の一方)、35…右支持端部(アブソーバの両端部の他方)、36…アブソーバ本体、36…アブソーバ本体の、36a,36b…アブソーバ本体36の左右端部(アブソーバ22の支持端部34,35近傍)、36c…アブソーバの上端部、44…リヤバンパーフェイスの上部、61…上フランジ(フランジ)、61a…リヤバンパービームの上面部(上面)、61c…上フランジの上縁、65…緩衝部材、66…上中空突起、67…下中空突起、67a…下中空突起の後端(緩衝部材の後端)、71…左切欠部(切欠部)、72…右切欠部(切欠部)、73…突出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部のテールゲートの下方に車幅方向に延びるバンパービームを備え、このバンパービームに緩衝部材を備え、バンパービームおよび緩衝部材をバンパーフェイスで覆った車両用バンパー構造において、
前記バンパービームの上面からフランジを上方に張り出し、
このフランジの上縁に車幅方向に延びるアブソーバを載置するとともに、アブソーバの両端部をバンパービームに取り付け、
このアブソーバの両端部近傍にそれぞれ切欠部を形成し、
それぞれの切欠部間において、前記アブソーバの上端部に、前記緩衝部材の後端まで車体後方に突出させた突出部を備えたことを特徴とする車両用バンパー構造。
【請求項2】
前記バンパーフェイスの上部で、かつ前記テールゲートの後方に、前記上部が変形した際に、変形した上部から前辺側が外れるように、ふみ段用のバンパーステップを設けたことを特徴とする請求項1記載の車両用バンパー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−36079(P2006−36079A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220599(P2004−220599)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)