車両用フロアボード
【課題】後部荷室の使い勝手を高めることができ、かつ、車体後方から作用した衝撃荷重を吸収することができる車両用フロアボードを提供する。
【解決手段】車両用フロアボード20は、第1、第2の板部材41,42間に複数の補強部材44が設けられている。補強部材は、車体前後方向の所定部位で、かつ、第1板部材41に対向する面側に脆弱部61を備えている。脆弱部は、第1板部材に対向する面56aに、車体幅方向に延びるように開口されたスリット62と、スリットの内部に嵌合されてスリットの間隔Sが狭くなるように変形することを抑える差込板63とを有する。
【解決手段】車両用フロアボード20は、第1、第2の板部材41,42間に複数の補強部材44が設けられている。補強部材は、車体前後方向の所定部位で、かつ、第1板部材41に対向する面側に脆弱部61を備えている。脆弱部は、第1板部材に対向する面56aに、車体幅方向に延びるように開口されたスリット62と、スリットの内部に嵌合されてスリットの間隔Sが狭くなるように変形することを抑える差込板63とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後部荷室のフロア底部を覆うように一対の板部材を形成し、一対の板部材間に補強部材を備えた車両用フロアボードに関する。
【背景技術】
【0002】
後部荷室のフロア底部に載置して後部荷室の使い勝手を高めるものとして車両用フロアボードが知られている。
この車両用フロアボードのなかには、剛性を確保するために中空のパイプ(以下、「補強部材」という)を車体幅方向に設けたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
車両用フロアボードの剛性を補強部材で確保することで車両用フロアボードに荷物を安定的に載せることができ、後部荷室の使い勝手を高めることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3472460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、車両用フロアボードの剛性を確保して後部荷室の使い勝手を高める手段として補強部材を車体前後方向に向けて設けることが考えられる。
しかし、補強部材を車体前後方向に向けて設けた状態で、車両後部に車体後方から衝撃荷重が作用した場合、作用した衝撃荷重で補強部材を好適に変形させ難い。
このため、後部荷室の使い勝手を高める補強部材を車体前後方向に向けて設けた場合、車両後部に作用した衝撃荷重を吸収することが難しくなる。
【0005】
本発明は、後部荷室の使い勝手を高めることができ、かつ、車体後方から作用した衝撃荷重を吸収することができる車両用フロアボードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、後部荷室のフロア底部を覆うように形成された一対の板部材と、前記一対の板部材間に設けられた長尺物で、前記一対の板部材の車体前後方向の長さと略同じ長さに形成された補強部材とを備えた車両用フロアボードにおいて、前記補強部材は、車体前後方向の所定部位で、かつ、前記一対の板部材のうち一方の板部材に対向する面側に脆弱部を備え、前記脆弱部は、前記一方の板部材に対向する面に、車体幅方向に延びるように開口されたスリットと、前記スリットの内部に嵌合され、前記スリットの間隔が狭くなるように変形することを抑える差込板と、を有することを特徴とする。
【0007】
請求項2は、前記補強部材が車体幅方向に所定間隔をおいて複数設けられ、前記複数の補強部材に設けられた前記脆弱部が車体幅方向に向けて同一直線上に配置され、前記複数の補強部材の端部がボード脚部で連結されるとともに、前記ボード脚部が車体幅方向に向けて設けられることを特徴とする。
【0008】
請求項3は、前記ボード脚部は、前記一対の板部材のうち一方の板部材の表面側に突出する一方の係止爪部と、前記一対の板部材のうち他方の板部材の表面側に突出する他方の係止爪部と、前記一方の係止爪部および前記他方の係止爪部で前記一対の板部材に前記ボード脚部が係止された状態において、前記他方の係止爪部から前記他方の板部材に対して直交する方向で、かつ、前記他方の板部材に対して離れる方向に張り出された張出部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項4は、前記一対の板部材に、前記車両用フロアボードを持ち上げる際に把持する把持部が設けられ、前記把持部を設けるための開口部が前記脆弱部の近傍に設けられたことを特徴とする。
【0010】
ここで、車両用フロアボードに把持部を設けるためには一対の板部材に開口部を形成する必要がある。
よって、開口部を形成した部位は他の部位と比べて剛性が低くなる。
このため、車両後部に車体後方から衝撃荷重が作用した場合に、一対の板部材が開口部から変形することが考えられる。
そこで、請求項4において、一対の板部材の開口部を脆弱部の近傍に配置するようにした。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、補強部材のうち一方の板部材に対向する面側に脆弱部を備え、この脆弱部をスリットおよび差込板で形成した。
具体的には、一方の板部材に対向する面にスリットを開口するように形成し、スリットの内部に差込板を嵌合させて、スリットの間隔が狭くなるように変形することを抑えるようにした。
このように、スリットの間隔が狭くなるように変形することを差込板で抑えることで、一方の板部材側に荷物を載せた際に補強部材の剛性を確保できる。
これにより、荷物を安定的に載せることが可能になり、後部荷室の使い勝手を高めることができる。
【0012】
一方、車両後部に車体後方から衝撃荷重が作用した場合に、スリットの間隔が広くなるように補強部材を変形させることできる。
このように、スリットの間隔が広くなるように補強部材を変形させることで、車両後部に作用した衝撃荷重を吸収することができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、複数の補強部材に設けた脆弱部を車体幅方向に向けて同一直線上に配置した。また、複数の補強部材の端部をボード脚部で連結するとともにボード脚部を車体幅方向に向けて設けた。
複数の補強部材の端部をボード脚部で連結することで、車両後部に車体後方から衝撃荷重が作用した場合に、ボード脚部を介して複数の補強部材に衝撃荷重を均一に伝えることできる。
さらに、各々の脆弱部を車体幅方向に向けて同一直線上に配置することで、各々の脆弱部を衝撃荷重で良好に変形させて、車両後部に作用した衝撃荷重を吸収することができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、ボード脚部の他方の係止爪部に張出部を設けた。
よって、後部荷室が平坦に形成されていない場合でも、張出部を利用して、後部荷室に車両用フロアボードを平坦に配置することができる。
後部荷室に車両用フロアボードを平坦に配置することで後部荷室の使い勝手を高めることができる。
【0015】
さらに、張出部を、他方の板部材に対して直交する方向で、かつ、他方の板部材に対して離れる方向に張り出した。
すなわち、張出部を脆弱部の反対側に張り出すことができる。
よって、車両後部に車体後方から衝撃荷重が作用した場合に、衝撃荷重を張出部の端部に作用させることが可能になる。
【0016】
張出部の端部に衝撃荷重を作用させることで、補強部材にスリットの間隔が広くなるような曲げモーメントが作用する。
これにより、補強部材を良好に変形させることが可能になり、車両後部に作用した衝撃荷重を好適に吸収することができる。
【0017】
請求項4に係る発明では、一対の板部材に把持部を設けるために開口部を備え、開口部を脆弱部の近傍に配置した。
このように、開口部を脆弱部の近傍に配置することで、車両後部に車体後方から衝撃荷重が作用した場合に、車両用フロアボードを脆弱部から変形させることができる。
よって、車両用フロアボードを変形させる部位や変形させる方向を予め決めることができる。これにより、例えば、車両用フロアボードを好適に変形させるように後部荷室の形状などを容易に決めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る車両用フロアボードを備えた車両後部構造体を示す斜視図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】本発明に係る右フロアボードのボードユニットからボード脚部を外した状態を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る右フロアボードを示す分解斜視図である。
【図5】本発明に係る右フロアボードを示す断面図である。
【図6】本発明に係る補強部材を示す斜視図である。
【図7】図7(a)は図6の7a−7a線断面図、図7(b)は図6の7b−7b線断面図である。
【図8】本発明に係る補強部材を示す分解斜視図である。
【図9】図9(a)は図3の9a−9a線断面図、図9(b)は図9(a)の把持部を示す分解図である。
【図10】図5の10部拡大図である。
【図11】本発明に係る右フロアボードを反転モードに配置した状態を示す断面図である。
【図12】本発明に係る右フロアボードをフラットモードで使用する例を説明する図である。
【図13】本発明に係る右フロアボードを反転モードで使用する例を説明する図である。
【図14】本発明に係る右フロアボードに衝撃荷重が作用する例を説明する図である。
【図15】本発明に係る右フロアボードで衝撃荷重を吸収する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前(Fr)」、「後(Rr)」、「左(L)」、「右(R)」は運転者から見た方向にしたがう。
【実施例】
【0020】
実施例に係る車両用フロアボード20について説明する。
図1、図2に示すように、車両後部構造体10は、車体後部に設けられた後部荷室11と、後部荷室11の底部を形成するフロア底部12と、フロア底部12の車体前方側に設けられたリヤシート13と、リヤシート13の車体後方に設けられたミドルクロスメンバ15と、ミドルクロスメンバ15を覆うフラップ17と、フロア底部12の後端部12aに設けられたリヤクロスメンバ18と、リヤクロスメンバ18およびミドルクロスメンバ15間に配置された車両用フロアボード20とを備えている。
【0021】
フロア底部12は、後部フロアパネル23と、後部フロアパネル23の上面に設けられたフロアスペーサ(発泡材)24と、フロアスペーサ24の上面に設けられたパネル内張25とを備えている。
【0022】
リヤシート13は、シートクッション27に重ね合わさるようにシートバック28が折り畳み可能に構成され、シートバック28の裏面28aに複数のスライダ29が設けられている。
複数のスライダ29は、車体前後方向を向いて延出され、車体幅方向に所定間隔をおいて設けられている。
シートバック28の裏面28aに複数のスライダ29を設けることで荷物などを円滑に移動することができ、荷物などの積込作業や取出作業を容易におこなうことができる。
【0023】
ミドルクロスメンバ15は、左右のリヤサイドフレーム(図示せず)の各前端部に車体幅方向に向けて架け渡された補強部材である。
【0024】
フラップ17は、基端部17aがパネル内張25にヒンジ可能に連結され、先端部17bがシートバック28の裏面28aに載置される。
この状態で、フラップ17がシートバック28の裏面28aに対して略面一に配置されるとともに、ミドルクロスメンバ15の上方に配置される。
【0025】
リヤクロスメンバ18は、左右のリヤサイドフレーム(図示せず)の各後端部に車体幅方向に向けて架け渡された補強部材である。
【0026】
車両用フロアボード20は、後部荷室11のフロア底部12のうち車体幅方向左側に設けられた左フロアボード31と、後部荷室11のフロア底部12のうち車体幅方向右側に設けられた右フロアボード32とを備えている。
左フロアボード31および右フロアボード32は、それぞれの幅寸法が異なるだけで他の構成は同じであり、以下、右フロアボード32について説明して左フロアボード31の説明を省略する。
【0027】
図3〜図5に示すように、右フロアボード32は、後部荷室11のフロア底部12を覆うように形成されている。
この右フロアボード32は、略矩形状に形成されたボードユニット34と、ボードユニット34の第1の面(一方の面)34aに所定間隔をおいて設けられた複数のスライダ36と、ボードユニット34の第2の面(他方の面)34bに所定間隔をおいて設けられた複数のスライダ37と、ボードユニット34の一端部34cに設けられたボード脚部38とを備えている。
【0028】
ボードユニット34は、略矩形状に形成された一対の板部材41,42と、一対の板部材41,42間に積層された(設けられた)発泡スペーサ43と、発泡スペーサ43間に設けられた(インサート成形された)複数の補強部材44と、一対の板部材41,42を覆うシート45と、一対の板部材41,42および発泡スペーサ43に設けられた把持部46とを備えている。
【0029】
一対の板部材41,42のうち一方の板部材41は、略矩形状に形成された板材であり、中央部近傍に把持部46を取り付ける第1開口部51が形成されている。
以下、一方の板部材41を第1板部材41として説明する。
一対の板部材41,42のうち他方の板部材42は、略矩形状に形成された板材であり、中央部近傍に把持部46を取り付ける第2開口部52が形成されている。
以下、他方の板部材42を第2板部材42として説明する。
第1開口部51および第2開口部52は、それぞれが同軸上に配置され、かつ、後述する脆弱部61の近傍に設けられている。
【0030】
第1、第2の板部材41,42間に発泡スペーサ43および複数の補強部材44が介在されている。
発泡スペーサ43は、第1、第2の板部材41,42に対して一回り小さな矩形状に形成された発泡材で、中央部近傍に把持部46を取り付ける開口部53が第1、第2の開口部51,52と同軸上で、かつ、脆弱部61の近傍に形成されている。
発泡スペーサ43に複数の補強部材44が車体幅方向に所定間隔をおいて設けられている(インサート成形されている)。
【0031】
図6〜図8に示すように、補強部材44は、一対の横梁56,57と、一対の横梁56,57を連結する縦梁58とで断面略I型に形成された長尺物で、第1、第2の板部材41,42間に車体前後方向に向けて設けられた金属製(具体的には、アルミニウム製)の部材である。
この補強部材44は、第1、第2の板部材41,42の車体前後方向の長さと略同じ長さ寸法L(図5参照)に形成され、車体前後方向の中央部近傍(所定部位)44aで、かつ、第1板部材41(図4参照)に対向する面56a側に脆弱部61を備えている。
【0032】
脆弱部61は、第1板部材41に対向する面56aに形成されたスリット(嵌合溝)62と、スリット62の内部に嵌合された金属製の差込板63とを有する。
スリット62は、第1板部材41に対向する面56aに開口され、車体幅方向に延びるように形成されている。
【0033】
さらに、スリット62は、第1板部材41に対向する面56aから第2板部材42(図4参照)に対向する面57aに向けて補強部材44の長手方向に対して直交するように形成されている
具体的には、一対の横梁56,57のうち第1板部材41に対向する横梁56、および縦梁58の略上半部58aにスリット62が形成されている。
このスリット62の内部に差込板63が嵌合されている。
【0034】
差込板63は、略矩形状に形成されたアルミニウム製のプレートで、下端部63aが開口したスリット(嵌合溝)64が形成されている。
この差込板63は、補強部材44のスリット62に嵌合されるとともに、差込板63のスリット64が縦梁58に嵌合されている。
よって、差込板63は補強部材44のスリット62に嵌合された状態に保持される。
この状態において、スリット62の両側壁に差込板63が接触した状態に保たれている。
【0035】
補強部材44のスリット62に差込板63が嵌合されている。よって、第1板部材41に対向する面56aに荷重F1が矢印の如く作用した際に、スリット62の間隔Sが狭くなるように補強部材44が変形することを差込板63で抑えることができる。
すなわち、第1板部材41に対向する面56aに荷物(図示せず)を載せることで、第1板部材41に対向する面56aに荷重F1が矢印の如く作用した際に、差込板63で補強部材44の剛性を確保することができる。
このように、補強部材44の剛性を確保することで、荷物を安定的に載せることが可能になり、後部荷室11の使い勝手を高めることができる。
【0036】
一方、車両後部10aに車体後方から衝撃荷重F2(図1、図2参照)が作用した場合に、補強部材44の長手方向に衝撃荷重F3が矢印の如く作用する。
補強部材44の長手方向に衝撃荷重F3が矢印の如く作用した際に、スリット62の間隔が広くなるように補強部材44を変形させることできる。
このように、スリット62の間隔が広くなるように補強部材44を変形させることで、車両後部10aに作用した衝撃荷重F2を吸収することができる。
【0037】
ここで、図4に示すように、複数の補強部材44に設けられた脆弱部61は車体幅方向に向けて同一直線66上に配置されている。
また、後述するように、複数の補強部材44の端部44bがボード脚部38で連結されるとともにボード脚部38が車体幅方向に向けて設けられている。
複数の補強部材44の端部44bをボード脚部38で連結することで、車両後部に車体後方から衝撃荷重F2が作用した場合に、ボード脚部38を介して複数の補強部材44に衝撃荷重F2を均一に伝えることできる。
【0038】
さらに、複数の脆弱部61を車体幅方向に向けて同一直線66上に配置することで、複数の補強部材44に車体前後方向から衝撃荷重F3が作用した場合に、作用した衝撃荷重F3で複数の脆弱部61を効率よく(良好に)変形させることができる。
このように、衝撃荷重F3で複数の脆弱部61を良好に変形させることで、車両後部10aに作用した衝撃荷重F2を吸収することができる。
【0039】
図9に示すように、第1、第2の板部材41,42がシート45で覆われ、この状態において第1、第2の開口部51,52および発泡スペーサ43の開口部53に把持部46が取り付けられている。
把持部46は、第1板部材41側に配置された略矩形状の把持筒部71と、把持筒部71に連結されて第2板部材42側に配置された略矩形状の把持板部75とを備えている。
【0040】
把持筒部71は、第1開口部51や第2開口部52に差し込まれた筒体72と、筒体72から外側に張り出されてボードユニット34の第1の面34aに当接するフランジ73とを有する。
把持板部75は、第2開口部52に配置されたボス部76と、ボス部76から外側に張り出されてボードユニット34の第2の面34b(具体的には、段部47)に当接するフランジ77とを有する。
【0041】
把持筒部71の筒体72および把持板部75のボス部76がボルト81で一体に締結されている。
この状態で、把持筒部71のフランジ72および把持板部75のフランジ77でボードユニット34が挟み込まれ、ボードユニット34に把持部46が取り付けられている。
【0042】
ボルト81を覆うようにスライダ37を把持板部75に設けることで、ボルト81が外側から目視できないようにスライダ37で隠すことができる。
これにより、右フロアボード32の外観性を良好に確保することができる。
なお、ボードユニット34の第2の面34bに複数のスライダ37を設けることで荷物などを円滑に移動することができ、荷物などの積込作業や取出作業を容易におこなうことができる。
また、ボードユニット34の第1の面34aに複数のスライダ36を設けることで、スライダ37と同様に、荷物などを円滑に移動することができ、荷物などの積込作業や取出作業を容易におこなうことができる。
【0043】
把持部46は第1板部材41側から第2板部材42側に貫通する貫通孔46aが形成されている。
把持部46の貫通孔46aに手を差し込んで把持部46を把持することで、右フロアボード32を容易に持ち上げることができる。
【0044】
ここで、前述したように、第1、第2の開口部51,52や発泡スペーサ43の開口部53が脆弱部61(図5参照)の近傍に設けられている。
このように、第1、第2の開口部51,52および開口部53を脆弱部61の近傍に配置することで、車両後部10aに車体後方から衝撃荷重F2(図1、図2参照)が作用した場合に、右フロアボード32を脆弱部61(図5参照)から変形させることができる。
よって、右フロアボード32を変形させる部位や変形させる方向を予め決めることができる。これにより、例えば、右フロアボード32を好適に変形させるように後部荷室11(図1参照)の形状などを容易に決めることができる。
【0045】
図10に示すように、ボードユニット34の一端部34cにボード脚部38が設けられている。
ボード脚部38は、ボードユニット34の一端部34cに沿って車体幅方向に向けて設けられた脚部本体84と、脚部本体84の左端部84aに設けられた左側カバー85(図3、図4参照)と、脚部本体84の右端部84bに設けられた右側カバー86(図3、図4参照)とを備えている。
【0046】
脚部本体84は、ボードユニット34の第1の面34a側に突出する一方の係止爪部(以下、「第1係止爪部」という)91と、ボードユニット34の第2の面34b側に突出する他方の係止爪部(以下、「第2係止爪部」という)92と、第2板部材42に対して離れる方向に張り出された張出部93と、第2係止爪部92および張出部93間に介在されたガセット部94とを備えている。
この脚部本体84は、アルミニウムを用いた押出成形品である。
【0047】
第1係止爪部91は、ボードユニット34の一端縁34dに上端部84cを当接させた状態において、ボードユニット34の第1の面34a側で、かつ、一端部34cの段部48に係止されている。
【0048】
第2係止爪部92は、ボードユニット34の一端縁34dに上端部84cを当接させた状態において、ボードユニット34の第2の面34bに係止されている。
この第2係止爪部92は、第2板部材42側に第1係止爪部91より大きく張り出され、ボードユニット34の取付部34eに複数のリベット96で取り付けられている。
ボードユニット34の取付部34eは、第1板部材41の凸状部41aが第2板部材42の取付部位42aに一体に形成された部位である。
【0049】
このように、ボードユニット34の一端縁34dに上端部84cを当接させた状態において、第1係止爪部91が段部48に係止され、第2係止爪部92が第2板部材42に複数のリベット96で取り付けられることで、ボードユニット34の一端部34cに脚部本体84が係止されている(取り付けられている)。
【0050】
ここで、第1、第2の板部材41,42間に複数の補強部材44が挟持されている。
よって、ボードユニット34の一端部34c(すなわち、第1、第2の板部材41,42)に脚部本体84が係止されることで、脚部本体84が第1、第2の板部材41,42を介して複数の補強部材44の端部44bに連結されている。
【0051】
張出部93は、ボードユニット34の一端部34cに脚部本体84が係止された状態において、第2係止爪部92から第2板部材42に対して直交する方向で、かつ、第2板部材42に対して離れる方向に張り出されている。
【0052】
ガセット部94は、第2係止爪部92および張出部93間に介在されることで、第2係止爪部92および張出部93を補強する部位である。
【0053】
図3,図4に示すように、左側カバー85は、外形が脚部本体84の断面形状と略同様に形成され、脚部本体84の左端部84aに嵌め込まれている。
右側カバー86は、左側カバー85と左右対称の部材であり、脚部本体84の右端部84bに嵌め込まれている。
【0054】
ボード脚部38の第2係止爪部92に張出部93を設けた。
これにより、後部荷室11が平坦に形成されていない場合でも、張出部93を利用して、後部荷室11に右フロアボード32(車両用フロアボード20)を平坦に配置することができる。
後部荷室11に右フロアボード32を平坦に配置することで後部荷室11の使い勝手を高めることができる。
【0055】
さらに、前述したように、第2板部材42に対して直交する方向で、かつ、第2板部材42に対して離れる方向に張出部93が張り出されている。すなわち、張出部93は脆弱部61(図5参照)の反対側に張り出されている。
よって、図2に示すように、車両後部10aに車体後方から衝撃荷重F2が作用した場合に、衝撃荷重F2を張出部93の端部(すなわち、ボード脚部の外下端部)38bに作用させることが可能になる。
【0056】
ボード脚部38の外下端部38bに衝撃荷重F2を作用させることで、補強部材44にスリット62の間隔S(図7参照)が広くなるような曲げモーメントを作用させることができる。
これにより、補強部材44を良好に変形させることが可能になり、車両後部10aに作用した衝撃荷重F2を好適に吸収することができる。
【0057】
図2、図11に示すように、右フロアボード32の使用状態を用途に応じて、フラットモード(図2参照)と反転モード(図11参照)とに選択することが可能である。
右フロアボード32をフラットモードと反転モードとに選択する際には、把持部46を使用する(図5参照)。
すなわち、把持部46の貫通孔46a(図5参照)に手を差し込んで把持部46を把持することで、右フロアボード32をフラットモードや反転モードに簡単に配置することができる。
【0058】
ここで、複数の補強部材44は車体前後方向に向けて配置されている(図4参照)。
よって、右フロアボード32をフラットモードから反転モードに変更するために、ボード脚部38側を矢印A方向に持ち上げる際に、右フロアボード32の自重を複数の補強部材44で支えて右フロアボード32の変形を抑えることができる。
また、右フロアボード32を反転モードからフラットモードに変更するために、ボードユニット34の他端部34f側を矢印B方向に持ち上げる際に、右フロアボード32の自重を複数の補強部材44で支えて右フロアボード32の変形を抑えることができる。
これにより、右フロアボード32の取り扱いを容易におこなうことができる。
【0059】
なお、フラットモードとは、ボードユニット34の第1の面34aを上方に向けて、ボード脚部38の底部38aをフロア底部12に載置することでボードユニット34をフロア底部12に対して浮かせて配置した状態をいう。
右フロアボード32をフラットモードに配置することで、ボードユニット34をフラップ17に対して略面一に配置することができる。
【0060】
右フロアボード32をフラットモードに配置した状態において、ボード脚部38の外下端部(張出部の端部)38bがフロア底部12の後隆起部12bに当接し、ボードユニット34の他端部34fがミドルクロスメンバ15の支え部15bに載置されている。
ボードユニット34の他端部34fは、ミドルクロスメンバ15にパネル内張25を介して当接されている。
よって、右フロアボード32をフラットモードに配置した状態に保持することができる。
これにより、車両後部10aに車体後方から衝撃荷重F2が作用した場合に、衝撃荷重F2をフロア底部12の後隆起部12bを経て右フロアボード32に伝えることができる。
【0061】
また、反転モードとは、ボードユニット34の第2の面34bを上方に向け、ボードユニット34をフロア底部12に載置することでボードユニット34を下方に配置した状態をいう。
右フロアボード32を反転モードに配置することで、後部荷室11の収納空間14を大きく確保することができる。
【0062】
右フロアボード32を反転モードに配置した状態において、ボードユニット34の他端部34fがフロア底部12の後隆起部12bに当接し、ボード脚部38の凹部38cがミドルクロスメンバ15の支え部15bに嵌合されている。
ボード脚部38の凹部38cは、支え部15bの先端部にパネル内張25を介して当接されている。
よって、右フロアボード32を反転モードに配置した状態に保持することができる。
これにより、車両後部10aに車体後方から衝撃荷重F2が作用した場合に、衝撃荷重F2がフロア底部12の後隆起部12bを経て右フロアボード32に伝えることができる。
【0063】
つぎに、右フロアボード32をフラットモードの状態で使用する例を図12に基づいて説明する。
図12(a)に示すように、ボードユニット34の第1の面34aを上方に向けて、ボード脚部38の底部38aをフロア底部12に載置することでボードユニット34をフロア底部12に対して浮かせてフラットモードに配置する。
右フロアボード32をフラットモードに配置してボードユニット34をフラップ17やシートバック28の裏面28aに対して略面一に配置する。
【0064】
よって、右フロアボード32、フラップ17およびシートバック28の裏面28aを、例えば、ベッドとして使用することができる。
この状態で、右フロアボード32、フラップ17およびシートバック28の裏面28aに乗員98が横になった場合、補強部材44の脆弱部61に荷重F4が矢印の如く作用する。
【0065】
図12(b)に示すように、脆弱部61のスリット62に差込板63が嵌合されている。よって、脆弱部61(具体的には、第1板部材41に対向する面56a)に荷重F4が矢印の如く作用した際に、スリット62(特に、スリット62の開口側)の間隔Sが狭くなるように変形することを差込板63で抑えることができる。
これにより、図12(a)に示すように、右フロアボード32、フラップ17およびシートバック28の裏面28aに乗員98が横になった場合に、脆弱部61の剛性を差込板63で確保できる。
【0066】
ついで、右フロアボード32を反転モードの状態で使用する例を図13に基づいて説明する。
図13(a)に示すように、ボードユニット34の第2の面34bを上方に向けて、ボードユニット34をフロア底部12に載置することでボードユニット34を下げた反転モードの位置に配置する。
よって、後部荷室11の収納空間14を大きく確保して、後部荷室11に比較的大きな荷物112を積み込むことができる。
この状態で、右フロアボード32に荷物112が載置された場合、補強部材44の脆弱部61に荷重F5が矢印の如く作用する。
【0067】
図13(b)に示すように、脆弱部61のスリット62側がフロア底部12に載置されている。よって、脆弱部61をフロア底部12で補強することができる。
よって、脆弱部61に荷重F5が矢印の如く作用した際に、スリット62(特に、スリット62の開口側)の間隔Sが広がるように変形することをフロア底部12で抑えることができる。
これにより、右フロアボード32に荷物112が載置された場合に、脆弱部61の剛性(すなわち、補強部材44の剛性)をフロア底部12で確保できる。
補強部材44の剛性確保することで、荷物112を安定的に載せることが可能になり、後部荷室11の使い勝手を高めることができる。
【0068】
つぎに、右フロアボード32をフラットモードに配置した状態において衝撃荷重が作用する例を図14、図15に基づいて説明する。
図14(a)に示すように、右フロアボード32をフラットモードに配置した状態において、ボード脚部38の外下端部(張出部の端部)38bがフロア底部12の後隆起部12bに当接している。
よって、車両後部10aに車体後方から衝撃荷重F6が作用した場合、作用した衝撃荷重F6がフロア底部12の後隆起部12bを経てボード脚部38の外下端部38bに伝えられる。
【0069】
ここで、ボード脚部38の外下端部38bは、張出部の端部(下端部)であり、ボードユニット34に対して下方に位置している。
よって、衝撃荷重F6がボード脚部38の外下端部38bに伝えられることで、ボードユニット34に衝撃荷重F7が矢印の如く作用するとともに、曲げモーメントM1が矢印の如く作用する。
【0070】
図14(b)に示すように、ボードユニット34に衝撃荷重F7が作用するとともに、曲げモーメントM1が作用することで、各々の補強部材44に衝撃荷重F8が矢印の如く作用するとともに、曲げモーメントM2が矢印の如く作用する。
【0071】
図15(a)に示すように、補強部材44に衝撃荷重F8が作用するとともに、曲げモーメントM2が作用することで、スリット62(特に、スリット62の開口側)の間隔Sが広くなるように補強部材44を略く字状に変形させることできる。
【0072】
図15(b)に示すように、補強部材44を略く字状に変形させることで(図15(a)参照)、ボードユニット34を略く字状に変形させることができる。
ここで、図4に示すように、複数の補強部材44に設けられた脆弱部61は車体幅方向に向けて同一直線66上に配置されている。
【0073】
複数の脆弱部61を車体幅方向に向けて同一直線66上に配置することで、複数の補強部材44に車体後方向から衝撃荷重F8が作用した場合に、複数の脆弱部61で効率よく変形させることができる。
これにより、左フロアボード31を好適に変形させて、車両後部10aに車体後方から作用した衝撃荷重F6を良好に吸収することができる。
【0074】
なお、本発明に係る車両用フロアボード20は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、補強部材44、ボード脚部38(具体的には、脚部本体84)や差込板63をアルミニウム製とした例について説明したが、これに限らないで、カーボンやチタン合金、樹脂などの他の部材を用いることも可能である。
【0075】
また、前記実施例では、第2係止爪部92をボードユニット34の取付部34e(第1板部材41の凸状部41aが第2板部材42の取付部位42aに一体に形成された部位)に複数のリベット96で取り付ける例について説明したが、これに限らないで、第2係止爪部92を複数の補強部材44にリベット96で取り付けるように構成することも可能である。
【0076】
また、前記実施例で示した車両後部構造10、後部荷室11、フロア底部12、車両用フロアボード20、右フロアボード32、ボード脚部38、第1、第2の板部材41,42、補強部材44、把持部46、第1、第2の開口部51,52、脆弱部61、スリット62、差込板63、直線66、第1係止爪部91、第2係止爪部92および張出部93などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、後部荷室のフロア底部を覆うように一対の板部材が形成され、一対の板部材間に補強部材が設けられた車両用フロアボードを備えた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0078】
10…車両後部構造、11…後部荷室、12…フロア底部、20…車両用フロアボード、32…右フロアボード、38…ボード脚部、41,42…第1、第2の板部材(一対の板部材)、44…補強部材、46…把持部、51,52…第1、第2の開口部、56a…第1板部材に対向する面(一方の板部材に対向する面)、61…脆弱部、62…スリット、63…差込板、66…直線、91…第1係止爪部(一方の係止爪部)、92…第2係止爪部(他方の係止爪部)、93…張出部、S…スリットの間隔。
【技術分野】
【0001】
本発明は、後部荷室のフロア底部を覆うように一対の板部材を形成し、一対の板部材間に補強部材を備えた車両用フロアボードに関する。
【背景技術】
【0002】
後部荷室のフロア底部に載置して後部荷室の使い勝手を高めるものとして車両用フロアボードが知られている。
この車両用フロアボードのなかには、剛性を確保するために中空のパイプ(以下、「補強部材」という)を車体幅方向に設けたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
車両用フロアボードの剛性を補強部材で確保することで車両用フロアボードに荷物を安定的に載せることができ、後部荷室の使い勝手を高めることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3472460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、車両用フロアボードの剛性を確保して後部荷室の使い勝手を高める手段として補強部材を車体前後方向に向けて設けることが考えられる。
しかし、補強部材を車体前後方向に向けて設けた状態で、車両後部に車体後方から衝撃荷重が作用した場合、作用した衝撃荷重で補強部材を好適に変形させ難い。
このため、後部荷室の使い勝手を高める補強部材を車体前後方向に向けて設けた場合、車両後部に作用した衝撃荷重を吸収することが難しくなる。
【0005】
本発明は、後部荷室の使い勝手を高めることができ、かつ、車体後方から作用した衝撃荷重を吸収することができる車両用フロアボードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、後部荷室のフロア底部を覆うように形成された一対の板部材と、前記一対の板部材間に設けられた長尺物で、前記一対の板部材の車体前後方向の長さと略同じ長さに形成された補強部材とを備えた車両用フロアボードにおいて、前記補強部材は、車体前後方向の所定部位で、かつ、前記一対の板部材のうち一方の板部材に対向する面側に脆弱部を備え、前記脆弱部は、前記一方の板部材に対向する面に、車体幅方向に延びるように開口されたスリットと、前記スリットの内部に嵌合され、前記スリットの間隔が狭くなるように変形することを抑える差込板と、を有することを特徴とする。
【0007】
請求項2は、前記補強部材が車体幅方向に所定間隔をおいて複数設けられ、前記複数の補強部材に設けられた前記脆弱部が車体幅方向に向けて同一直線上に配置され、前記複数の補強部材の端部がボード脚部で連結されるとともに、前記ボード脚部が車体幅方向に向けて設けられることを特徴とする。
【0008】
請求項3は、前記ボード脚部は、前記一対の板部材のうち一方の板部材の表面側に突出する一方の係止爪部と、前記一対の板部材のうち他方の板部材の表面側に突出する他方の係止爪部と、前記一方の係止爪部および前記他方の係止爪部で前記一対の板部材に前記ボード脚部が係止された状態において、前記他方の係止爪部から前記他方の板部材に対して直交する方向で、かつ、前記他方の板部材に対して離れる方向に張り出された張出部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項4は、前記一対の板部材に、前記車両用フロアボードを持ち上げる際に把持する把持部が設けられ、前記把持部を設けるための開口部が前記脆弱部の近傍に設けられたことを特徴とする。
【0010】
ここで、車両用フロアボードに把持部を設けるためには一対の板部材に開口部を形成する必要がある。
よって、開口部を形成した部位は他の部位と比べて剛性が低くなる。
このため、車両後部に車体後方から衝撃荷重が作用した場合に、一対の板部材が開口部から変形することが考えられる。
そこで、請求項4において、一対の板部材の開口部を脆弱部の近傍に配置するようにした。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、補強部材のうち一方の板部材に対向する面側に脆弱部を備え、この脆弱部をスリットおよび差込板で形成した。
具体的には、一方の板部材に対向する面にスリットを開口するように形成し、スリットの内部に差込板を嵌合させて、スリットの間隔が狭くなるように変形することを抑えるようにした。
このように、スリットの間隔が狭くなるように変形することを差込板で抑えることで、一方の板部材側に荷物を載せた際に補強部材の剛性を確保できる。
これにより、荷物を安定的に載せることが可能になり、後部荷室の使い勝手を高めることができる。
【0012】
一方、車両後部に車体後方から衝撃荷重が作用した場合に、スリットの間隔が広くなるように補強部材を変形させることできる。
このように、スリットの間隔が広くなるように補強部材を変形させることで、車両後部に作用した衝撃荷重を吸収することができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、複数の補強部材に設けた脆弱部を車体幅方向に向けて同一直線上に配置した。また、複数の補強部材の端部をボード脚部で連結するとともにボード脚部を車体幅方向に向けて設けた。
複数の補強部材の端部をボード脚部で連結することで、車両後部に車体後方から衝撃荷重が作用した場合に、ボード脚部を介して複数の補強部材に衝撃荷重を均一に伝えることできる。
さらに、各々の脆弱部を車体幅方向に向けて同一直線上に配置することで、各々の脆弱部を衝撃荷重で良好に変形させて、車両後部に作用した衝撃荷重を吸収することができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、ボード脚部の他方の係止爪部に張出部を設けた。
よって、後部荷室が平坦に形成されていない場合でも、張出部を利用して、後部荷室に車両用フロアボードを平坦に配置することができる。
後部荷室に車両用フロアボードを平坦に配置することで後部荷室の使い勝手を高めることができる。
【0015】
さらに、張出部を、他方の板部材に対して直交する方向で、かつ、他方の板部材に対して離れる方向に張り出した。
すなわち、張出部を脆弱部の反対側に張り出すことができる。
よって、車両後部に車体後方から衝撃荷重が作用した場合に、衝撃荷重を張出部の端部に作用させることが可能になる。
【0016】
張出部の端部に衝撃荷重を作用させることで、補強部材にスリットの間隔が広くなるような曲げモーメントが作用する。
これにより、補強部材を良好に変形させることが可能になり、車両後部に作用した衝撃荷重を好適に吸収することができる。
【0017】
請求項4に係る発明では、一対の板部材に把持部を設けるために開口部を備え、開口部を脆弱部の近傍に配置した。
このように、開口部を脆弱部の近傍に配置することで、車両後部に車体後方から衝撃荷重が作用した場合に、車両用フロアボードを脆弱部から変形させることができる。
よって、車両用フロアボードを変形させる部位や変形させる方向を予め決めることができる。これにより、例えば、車両用フロアボードを好適に変形させるように後部荷室の形状などを容易に決めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る車両用フロアボードを備えた車両後部構造体を示す斜視図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】本発明に係る右フロアボードのボードユニットからボード脚部を外した状態を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る右フロアボードを示す分解斜視図である。
【図5】本発明に係る右フロアボードを示す断面図である。
【図6】本発明に係る補強部材を示す斜視図である。
【図7】図7(a)は図6の7a−7a線断面図、図7(b)は図6の7b−7b線断面図である。
【図8】本発明に係る補強部材を示す分解斜視図である。
【図9】図9(a)は図3の9a−9a線断面図、図9(b)は図9(a)の把持部を示す分解図である。
【図10】図5の10部拡大図である。
【図11】本発明に係る右フロアボードを反転モードに配置した状態を示す断面図である。
【図12】本発明に係る右フロアボードをフラットモードで使用する例を説明する図である。
【図13】本発明に係る右フロアボードを反転モードで使用する例を説明する図である。
【図14】本発明に係る右フロアボードに衝撃荷重が作用する例を説明する図である。
【図15】本発明に係る右フロアボードで衝撃荷重を吸収する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前(Fr)」、「後(Rr)」、「左(L)」、「右(R)」は運転者から見た方向にしたがう。
【実施例】
【0020】
実施例に係る車両用フロアボード20について説明する。
図1、図2に示すように、車両後部構造体10は、車体後部に設けられた後部荷室11と、後部荷室11の底部を形成するフロア底部12と、フロア底部12の車体前方側に設けられたリヤシート13と、リヤシート13の車体後方に設けられたミドルクロスメンバ15と、ミドルクロスメンバ15を覆うフラップ17と、フロア底部12の後端部12aに設けられたリヤクロスメンバ18と、リヤクロスメンバ18およびミドルクロスメンバ15間に配置された車両用フロアボード20とを備えている。
【0021】
フロア底部12は、後部フロアパネル23と、後部フロアパネル23の上面に設けられたフロアスペーサ(発泡材)24と、フロアスペーサ24の上面に設けられたパネル内張25とを備えている。
【0022】
リヤシート13は、シートクッション27に重ね合わさるようにシートバック28が折り畳み可能に構成され、シートバック28の裏面28aに複数のスライダ29が設けられている。
複数のスライダ29は、車体前後方向を向いて延出され、車体幅方向に所定間隔をおいて設けられている。
シートバック28の裏面28aに複数のスライダ29を設けることで荷物などを円滑に移動することができ、荷物などの積込作業や取出作業を容易におこなうことができる。
【0023】
ミドルクロスメンバ15は、左右のリヤサイドフレーム(図示せず)の各前端部に車体幅方向に向けて架け渡された補強部材である。
【0024】
フラップ17は、基端部17aがパネル内張25にヒンジ可能に連結され、先端部17bがシートバック28の裏面28aに載置される。
この状態で、フラップ17がシートバック28の裏面28aに対して略面一に配置されるとともに、ミドルクロスメンバ15の上方に配置される。
【0025】
リヤクロスメンバ18は、左右のリヤサイドフレーム(図示せず)の各後端部に車体幅方向に向けて架け渡された補強部材である。
【0026】
車両用フロアボード20は、後部荷室11のフロア底部12のうち車体幅方向左側に設けられた左フロアボード31と、後部荷室11のフロア底部12のうち車体幅方向右側に設けられた右フロアボード32とを備えている。
左フロアボード31および右フロアボード32は、それぞれの幅寸法が異なるだけで他の構成は同じであり、以下、右フロアボード32について説明して左フロアボード31の説明を省略する。
【0027】
図3〜図5に示すように、右フロアボード32は、後部荷室11のフロア底部12を覆うように形成されている。
この右フロアボード32は、略矩形状に形成されたボードユニット34と、ボードユニット34の第1の面(一方の面)34aに所定間隔をおいて設けられた複数のスライダ36と、ボードユニット34の第2の面(他方の面)34bに所定間隔をおいて設けられた複数のスライダ37と、ボードユニット34の一端部34cに設けられたボード脚部38とを備えている。
【0028】
ボードユニット34は、略矩形状に形成された一対の板部材41,42と、一対の板部材41,42間に積層された(設けられた)発泡スペーサ43と、発泡スペーサ43間に設けられた(インサート成形された)複数の補強部材44と、一対の板部材41,42を覆うシート45と、一対の板部材41,42および発泡スペーサ43に設けられた把持部46とを備えている。
【0029】
一対の板部材41,42のうち一方の板部材41は、略矩形状に形成された板材であり、中央部近傍に把持部46を取り付ける第1開口部51が形成されている。
以下、一方の板部材41を第1板部材41として説明する。
一対の板部材41,42のうち他方の板部材42は、略矩形状に形成された板材であり、中央部近傍に把持部46を取り付ける第2開口部52が形成されている。
以下、他方の板部材42を第2板部材42として説明する。
第1開口部51および第2開口部52は、それぞれが同軸上に配置され、かつ、後述する脆弱部61の近傍に設けられている。
【0030】
第1、第2の板部材41,42間に発泡スペーサ43および複数の補強部材44が介在されている。
発泡スペーサ43は、第1、第2の板部材41,42に対して一回り小さな矩形状に形成された発泡材で、中央部近傍に把持部46を取り付ける開口部53が第1、第2の開口部51,52と同軸上で、かつ、脆弱部61の近傍に形成されている。
発泡スペーサ43に複数の補強部材44が車体幅方向に所定間隔をおいて設けられている(インサート成形されている)。
【0031】
図6〜図8に示すように、補強部材44は、一対の横梁56,57と、一対の横梁56,57を連結する縦梁58とで断面略I型に形成された長尺物で、第1、第2の板部材41,42間に車体前後方向に向けて設けられた金属製(具体的には、アルミニウム製)の部材である。
この補強部材44は、第1、第2の板部材41,42の車体前後方向の長さと略同じ長さ寸法L(図5参照)に形成され、車体前後方向の中央部近傍(所定部位)44aで、かつ、第1板部材41(図4参照)に対向する面56a側に脆弱部61を備えている。
【0032】
脆弱部61は、第1板部材41に対向する面56aに形成されたスリット(嵌合溝)62と、スリット62の内部に嵌合された金属製の差込板63とを有する。
スリット62は、第1板部材41に対向する面56aに開口され、車体幅方向に延びるように形成されている。
【0033】
さらに、スリット62は、第1板部材41に対向する面56aから第2板部材42(図4参照)に対向する面57aに向けて補強部材44の長手方向に対して直交するように形成されている
具体的には、一対の横梁56,57のうち第1板部材41に対向する横梁56、および縦梁58の略上半部58aにスリット62が形成されている。
このスリット62の内部に差込板63が嵌合されている。
【0034】
差込板63は、略矩形状に形成されたアルミニウム製のプレートで、下端部63aが開口したスリット(嵌合溝)64が形成されている。
この差込板63は、補強部材44のスリット62に嵌合されるとともに、差込板63のスリット64が縦梁58に嵌合されている。
よって、差込板63は補強部材44のスリット62に嵌合された状態に保持される。
この状態において、スリット62の両側壁に差込板63が接触した状態に保たれている。
【0035】
補強部材44のスリット62に差込板63が嵌合されている。よって、第1板部材41に対向する面56aに荷重F1が矢印の如く作用した際に、スリット62の間隔Sが狭くなるように補強部材44が変形することを差込板63で抑えることができる。
すなわち、第1板部材41に対向する面56aに荷物(図示せず)を載せることで、第1板部材41に対向する面56aに荷重F1が矢印の如く作用した際に、差込板63で補強部材44の剛性を確保することができる。
このように、補強部材44の剛性を確保することで、荷物を安定的に載せることが可能になり、後部荷室11の使い勝手を高めることができる。
【0036】
一方、車両後部10aに車体後方から衝撃荷重F2(図1、図2参照)が作用した場合に、補強部材44の長手方向に衝撃荷重F3が矢印の如く作用する。
補強部材44の長手方向に衝撃荷重F3が矢印の如く作用した際に、スリット62の間隔が広くなるように補強部材44を変形させることできる。
このように、スリット62の間隔が広くなるように補強部材44を変形させることで、車両後部10aに作用した衝撃荷重F2を吸収することができる。
【0037】
ここで、図4に示すように、複数の補強部材44に設けられた脆弱部61は車体幅方向に向けて同一直線66上に配置されている。
また、後述するように、複数の補強部材44の端部44bがボード脚部38で連結されるとともにボード脚部38が車体幅方向に向けて設けられている。
複数の補強部材44の端部44bをボード脚部38で連結することで、車両後部に車体後方から衝撃荷重F2が作用した場合に、ボード脚部38を介して複数の補強部材44に衝撃荷重F2を均一に伝えることできる。
【0038】
さらに、複数の脆弱部61を車体幅方向に向けて同一直線66上に配置することで、複数の補強部材44に車体前後方向から衝撃荷重F3が作用した場合に、作用した衝撃荷重F3で複数の脆弱部61を効率よく(良好に)変形させることができる。
このように、衝撃荷重F3で複数の脆弱部61を良好に変形させることで、車両後部10aに作用した衝撃荷重F2を吸収することができる。
【0039】
図9に示すように、第1、第2の板部材41,42がシート45で覆われ、この状態において第1、第2の開口部51,52および発泡スペーサ43の開口部53に把持部46が取り付けられている。
把持部46は、第1板部材41側に配置された略矩形状の把持筒部71と、把持筒部71に連結されて第2板部材42側に配置された略矩形状の把持板部75とを備えている。
【0040】
把持筒部71は、第1開口部51や第2開口部52に差し込まれた筒体72と、筒体72から外側に張り出されてボードユニット34の第1の面34aに当接するフランジ73とを有する。
把持板部75は、第2開口部52に配置されたボス部76と、ボス部76から外側に張り出されてボードユニット34の第2の面34b(具体的には、段部47)に当接するフランジ77とを有する。
【0041】
把持筒部71の筒体72および把持板部75のボス部76がボルト81で一体に締結されている。
この状態で、把持筒部71のフランジ72および把持板部75のフランジ77でボードユニット34が挟み込まれ、ボードユニット34に把持部46が取り付けられている。
【0042】
ボルト81を覆うようにスライダ37を把持板部75に設けることで、ボルト81が外側から目視できないようにスライダ37で隠すことができる。
これにより、右フロアボード32の外観性を良好に確保することができる。
なお、ボードユニット34の第2の面34bに複数のスライダ37を設けることで荷物などを円滑に移動することができ、荷物などの積込作業や取出作業を容易におこなうことができる。
また、ボードユニット34の第1の面34aに複数のスライダ36を設けることで、スライダ37と同様に、荷物などを円滑に移動することができ、荷物などの積込作業や取出作業を容易におこなうことができる。
【0043】
把持部46は第1板部材41側から第2板部材42側に貫通する貫通孔46aが形成されている。
把持部46の貫通孔46aに手を差し込んで把持部46を把持することで、右フロアボード32を容易に持ち上げることができる。
【0044】
ここで、前述したように、第1、第2の開口部51,52や発泡スペーサ43の開口部53が脆弱部61(図5参照)の近傍に設けられている。
このように、第1、第2の開口部51,52および開口部53を脆弱部61の近傍に配置することで、車両後部10aに車体後方から衝撃荷重F2(図1、図2参照)が作用した場合に、右フロアボード32を脆弱部61(図5参照)から変形させることができる。
よって、右フロアボード32を変形させる部位や変形させる方向を予め決めることができる。これにより、例えば、右フロアボード32を好適に変形させるように後部荷室11(図1参照)の形状などを容易に決めることができる。
【0045】
図10に示すように、ボードユニット34の一端部34cにボード脚部38が設けられている。
ボード脚部38は、ボードユニット34の一端部34cに沿って車体幅方向に向けて設けられた脚部本体84と、脚部本体84の左端部84aに設けられた左側カバー85(図3、図4参照)と、脚部本体84の右端部84bに設けられた右側カバー86(図3、図4参照)とを備えている。
【0046】
脚部本体84は、ボードユニット34の第1の面34a側に突出する一方の係止爪部(以下、「第1係止爪部」という)91と、ボードユニット34の第2の面34b側に突出する他方の係止爪部(以下、「第2係止爪部」という)92と、第2板部材42に対して離れる方向に張り出された張出部93と、第2係止爪部92および張出部93間に介在されたガセット部94とを備えている。
この脚部本体84は、アルミニウムを用いた押出成形品である。
【0047】
第1係止爪部91は、ボードユニット34の一端縁34dに上端部84cを当接させた状態において、ボードユニット34の第1の面34a側で、かつ、一端部34cの段部48に係止されている。
【0048】
第2係止爪部92は、ボードユニット34の一端縁34dに上端部84cを当接させた状態において、ボードユニット34の第2の面34bに係止されている。
この第2係止爪部92は、第2板部材42側に第1係止爪部91より大きく張り出され、ボードユニット34の取付部34eに複数のリベット96で取り付けられている。
ボードユニット34の取付部34eは、第1板部材41の凸状部41aが第2板部材42の取付部位42aに一体に形成された部位である。
【0049】
このように、ボードユニット34の一端縁34dに上端部84cを当接させた状態において、第1係止爪部91が段部48に係止され、第2係止爪部92が第2板部材42に複数のリベット96で取り付けられることで、ボードユニット34の一端部34cに脚部本体84が係止されている(取り付けられている)。
【0050】
ここで、第1、第2の板部材41,42間に複数の補強部材44が挟持されている。
よって、ボードユニット34の一端部34c(すなわち、第1、第2の板部材41,42)に脚部本体84が係止されることで、脚部本体84が第1、第2の板部材41,42を介して複数の補強部材44の端部44bに連結されている。
【0051】
張出部93は、ボードユニット34の一端部34cに脚部本体84が係止された状態において、第2係止爪部92から第2板部材42に対して直交する方向で、かつ、第2板部材42に対して離れる方向に張り出されている。
【0052】
ガセット部94は、第2係止爪部92および張出部93間に介在されることで、第2係止爪部92および張出部93を補強する部位である。
【0053】
図3,図4に示すように、左側カバー85は、外形が脚部本体84の断面形状と略同様に形成され、脚部本体84の左端部84aに嵌め込まれている。
右側カバー86は、左側カバー85と左右対称の部材であり、脚部本体84の右端部84bに嵌め込まれている。
【0054】
ボード脚部38の第2係止爪部92に張出部93を設けた。
これにより、後部荷室11が平坦に形成されていない場合でも、張出部93を利用して、後部荷室11に右フロアボード32(車両用フロアボード20)を平坦に配置することができる。
後部荷室11に右フロアボード32を平坦に配置することで後部荷室11の使い勝手を高めることができる。
【0055】
さらに、前述したように、第2板部材42に対して直交する方向で、かつ、第2板部材42に対して離れる方向に張出部93が張り出されている。すなわち、張出部93は脆弱部61(図5参照)の反対側に張り出されている。
よって、図2に示すように、車両後部10aに車体後方から衝撃荷重F2が作用した場合に、衝撃荷重F2を張出部93の端部(すなわち、ボード脚部の外下端部)38bに作用させることが可能になる。
【0056】
ボード脚部38の外下端部38bに衝撃荷重F2を作用させることで、補強部材44にスリット62の間隔S(図7参照)が広くなるような曲げモーメントを作用させることができる。
これにより、補強部材44を良好に変形させることが可能になり、車両後部10aに作用した衝撃荷重F2を好適に吸収することができる。
【0057】
図2、図11に示すように、右フロアボード32の使用状態を用途に応じて、フラットモード(図2参照)と反転モード(図11参照)とに選択することが可能である。
右フロアボード32をフラットモードと反転モードとに選択する際には、把持部46を使用する(図5参照)。
すなわち、把持部46の貫通孔46a(図5参照)に手を差し込んで把持部46を把持することで、右フロアボード32をフラットモードや反転モードに簡単に配置することができる。
【0058】
ここで、複数の補強部材44は車体前後方向に向けて配置されている(図4参照)。
よって、右フロアボード32をフラットモードから反転モードに変更するために、ボード脚部38側を矢印A方向に持ち上げる際に、右フロアボード32の自重を複数の補強部材44で支えて右フロアボード32の変形を抑えることができる。
また、右フロアボード32を反転モードからフラットモードに変更するために、ボードユニット34の他端部34f側を矢印B方向に持ち上げる際に、右フロアボード32の自重を複数の補強部材44で支えて右フロアボード32の変形を抑えることができる。
これにより、右フロアボード32の取り扱いを容易におこなうことができる。
【0059】
なお、フラットモードとは、ボードユニット34の第1の面34aを上方に向けて、ボード脚部38の底部38aをフロア底部12に載置することでボードユニット34をフロア底部12に対して浮かせて配置した状態をいう。
右フロアボード32をフラットモードに配置することで、ボードユニット34をフラップ17に対して略面一に配置することができる。
【0060】
右フロアボード32をフラットモードに配置した状態において、ボード脚部38の外下端部(張出部の端部)38bがフロア底部12の後隆起部12bに当接し、ボードユニット34の他端部34fがミドルクロスメンバ15の支え部15bに載置されている。
ボードユニット34の他端部34fは、ミドルクロスメンバ15にパネル内張25を介して当接されている。
よって、右フロアボード32をフラットモードに配置した状態に保持することができる。
これにより、車両後部10aに車体後方から衝撃荷重F2が作用した場合に、衝撃荷重F2をフロア底部12の後隆起部12bを経て右フロアボード32に伝えることができる。
【0061】
また、反転モードとは、ボードユニット34の第2の面34bを上方に向け、ボードユニット34をフロア底部12に載置することでボードユニット34を下方に配置した状態をいう。
右フロアボード32を反転モードに配置することで、後部荷室11の収納空間14を大きく確保することができる。
【0062】
右フロアボード32を反転モードに配置した状態において、ボードユニット34の他端部34fがフロア底部12の後隆起部12bに当接し、ボード脚部38の凹部38cがミドルクロスメンバ15の支え部15bに嵌合されている。
ボード脚部38の凹部38cは、支え部15bの先端部にパネル内張25を介して当接されている。
よって、右フロアボード32を反転モードに配置した状態に保持することができる。
これにより、車両後部10aに車体後方から衝撃荷重F2が作用した場合に、衝撃荷重F2がフロア底部12の後隆起部12bを経て右フロアボード32に伝えることができる。
【0063】
つぎに、右フロアボード32をフラットモードの状態で使用する例を図12に基づいて説明する。
図12(a)に示すように、ボードユニット34の第1の面34aを上方に向けて、ボード脚部38の底部38aをフロア底部12に載置することでボードユニット34をフロア底部12に対して浮かせてフラットモードに配置する。
右フロアボード32をフラットモードに配置してボードユニット34をフラップ17やシートバック28の裏面28aに対して略面一に配置する。
【0064】
よって、右フロアボード32、フラップ17およびシートバック28の裏面28aを、例えば、ベッドとして使用することができる。
この状態で、右フロアボード32、フラップ17およびシートバック28の裏面28aに乗員98が横になった場合、補強部材44の脆弱部61に荷重F4が矢印の如く作用する。
【0065】
図12(b)に示すように、脆弱部61のスリット62に差込板63が嵌合されている。よって、脆弱部61(具体的には、第1板部材41に対向する面56a)に荷重F4が矢印の如く作用した際に、スリット62(特に、スリット62の開口側)の間隔Sが狭くなるように変形することを差込板63で抑えることができる。
これにより、図12(a)に示すように、右フロアボード32、フラップ17およびシートバック28の裏面28aに乗員98が横になった場合に、脆弱部61の剛性を差込板63で確保できる。
【0066】
ついで、右フロアボード32を反転モードの状態で使用する例を図13に基づいて説明する。
図13(a)に示すように、ボードユニット34の第2の面34bを上方に向けて、ボードユニット34をフロア底部12に載置することでボードユニット34を下げた反転モードの位置に配置する。
よって、後部荷室11の収納空間14を大きく確保して、後部荷室11に比較的大きな荷物112を積み込むことができる。
この状態で、右フロアボード32に荷物112が載置された場合、補強部材44の脆弱部61に荷重F5が矢印の如く作用する。
【0067】
図13(b)に示すように、脆弱部61のスリット62側がフロア底部12に載置されている。よって、脆弱部61をフロア底部12で補強することができる。
よって、脆弱部61に荷重F5が矢印の如く作用した際に、スリット62(特に、スリット62の開口側)の間隔Sが広がるように変形することをフロア底部12で抑えることができる。
これにより、右フロアボード32に荷物112が載置された場合に、脆弱部61の剛性(すなわち、補強部材44の剛性)をフロア底部12で確保できる。
補強部材44の剛性確保することで、荷物112を安定的に載せることが可能になり、後部荷室11の使い勝手を高めることができる。
【0068】
つぎに、右フロアボード32をフラットモードに配置した状態において衝撃荷重が作用する例を図14、図15に基づいて説明する。
図14(a)に示すように、右フロアボード32をフラットモードに配置した状態において、ボード脚部38の外下端部(張出部の端部)38bがフロア底部12の後隆起部12bに当接している。
よって、車両後部10aに車体後方から衝撃荷重F6が作用した場合、作用した衝撃荷重F6がフロア底部12の後隆起部12bを経てボード脚部38の外下端部38bに伝えられる。
【0069】
ここで、ボード脚部38の外下端部38bは、張出部の端部(下端部)であり、ボードユニット34に対して下方に位置している。
よって、衝撃荷重F6がボード脚部38の外下端部38bに伝えられることで、ボードユニット34に衝撃荷重F7が矢印の如く作用するとともに、曲げモーメントM1が矢印の如く作用する。
【0070】
図14(b)に示すように、ボードユニット34に衝撃荷重F7が作用するとともに、曲げモーメントM1が作用することで、各々の補強部材44に衝撃荷重F8が矢印の如く作用するとともに、曲げモーメントM2が矢印の如く作用する。
【0071】
図15(a)に示すように、補強部材44に衝撃荷重F8が作用するとともに、曲げモーメントM2が作用することで、スリット62(特に、スリット62の開口側)の間隔Sが広くなるように補強部材44を略く字状に変形させることできる。
【0072】
図15(b)に示すように、補強部材44を略く字状に変形させることで(図15(a)参照)、ボードユニット34を略く字状に変形させることができる。
ここで、図4に示すように、複数の補強部材44に設けられた脆弱部61は車体幅方向に向けて同一直線66上に配置されている。
【0073】
複数の脆弱部61を車体幅方向に向けて同一直線66上に配置することで、複数の補強部材44に車体後方向から衝撃荷重F8が作用した場合に、複数の脆弱部61で効率よく変形させることができる。
これにより、左フロアボード31を好適に変形させて、車両後部10aに車体後方から作用した衝撃荷重F6を良好に吸収することができる。
【0074】
なお、本発明に係る車両用フロアボード20は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、補強部材44、ボード脚部38(具体的には、脚部本体84)や差込板63をアルミニウム製とした例について説明したが、これに限らないで、カーボンやチタン合金、樹脂などの他の部材を用いることも可能である。
【0075】
また、前記実施例では、第2係止爪部92をボードユニット34の取付部34e(第1板部材41の凸状部41aが第2板部材42の取付部位42aに一体に形成された部位)に複数のリベット96で取り付ける例について説明したが、これに限らないで、第2係止爪部92を複数の補強部材44にリベット96で取り付けるように構成することも可能である。
【0076】
また、前記実施例で示した車両後部構造10、後部荷室11、フロア底部12、車両用フロアボード20、右フロアボード32、ボード脚部38、第1、第2の板部材41,42、補強部材44、把持部46、第1、第2の開口部51,52、脆弱部61、スリット62、差込板63、直線66、第1係止爪部91、第2係止爪部92および張出部93などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、後部荷室のフロア底部を覆うように一対の板部材が形成され、一対の板部材間に補強部材が設けられた車両用フロアボードを備えた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0078】
10…車両後部構造、11…後部荷室、12…フロア底部、20…車両用フロアボード、32…右フロアボード、38…ボード脚部、41,42…第1、第2の板部材(一対の板部材)、44…補強部材、46…把持部、51,52…第1、第2の開口部、56a…第1板部材に対向する面(一方の板部材に対向する面)、61…脆弱部、62…スリット、63…差込板、66…直線、91…第1係止爪部(一方の係止爪部)、92…第2係止爪部(他方の係止爪部)、93…張出部、S…スリットの間隔。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後部荷室のフロア底部を覆うように形成された一対の板部材と、
前記一対の板部材間に設けられた長尺物で、前記一対の板部材の車体前後方向の長さと略同じ長さに形成された補強部材とを備えた車両用フロアボードにおいて、
前記補強部材は、
車体前後方向の所定部位で、かつ、前記一対の板部材のうち一方の板部材に対向する面側に脆弱部を備え、
前記脆弱部は、
前記一方の板部材に対向する面に、車体幅方向に延びるように開口されたスリットと、
前記スリットの内部に嵌合され、前記スリットの間隔が狭くなるように変形することを抑える差込板と、
を有することを特徴とする車両用フロアボード。
【請求項2】
前記補強部材が車体幅方向に所定間隔をおいて複数設けられ、
前記複数の補強部材に設けられた前記脆弱部が車体幅方向に向けて同一直線上に配置され、
前記複数の補強部材の端部がボード脚部で連結されるとともに、前記ボード脚部が車体幅方向に向けて設けられることを特徴とする請求項1記載の車両用フロアボード。
【請求項3】
前記ボード脚部は、
前記一対の板部材のうち一方の板部材の表面側に突出する一方の係止爪部と、
前記一対の板部材のうち他方の板部材の表面側に突出する他方の係止爪部と、
前記一方の係止爪部および前記他方の係止爪部で前記一対の板部材に前記ボード脚部が係止された状態において、前記他方の係止爪部から前記他方の板部材に対して直交する方向で、かつ、前記他方の板部材に対して離れる方向に張り出された張出部と、
を備えたことを特徴とする請求項2記載の車両用フロアボード。
【請求項4】
前記一対の板部材に、前記車両用フロアボードを持ち上げる際に把持する把持部が設けられ、
前記把持部を設けるための開口部が前記脆弱部の近傍に設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の車両用フロアボード。
【請求項1】
後部荷室のフロア底部を覆うように形成された一対の板部材と、
前記一対の板部材間に設けられた長尺物で、前記一対の板部材の車体前後方向の長さと略同じ長さに形成された補強部材とを備えた車両用フロアボードにおいて、
前記補強部材は、
車体前後方向の所定部位で、かつ、前記一対の板部材のうち一方の板部材に対向する面側に脆弱部を備え、
前記脆弱部は、
前記一方の板部材に対向する面に、車体幅方向に延びるように開口されたスリットと、
前記スリットの内部に嵌合され、前記スリットの間隔が狭くなるように変形することを抑える差込板と、
を有することを特徴とする車両用フロアボード。
【請求項2】
前記補強部材が車体幅方向に所定間隔をおいて複数設けられ、
前記複数の補強部材に設けられた前記脆弱部が車体幅方向に向けて同一直線上に配置され、
前記複数の補強部材の端部がボード脚部で連結されるとともに、前記ボード脚部が車体幅方向に向けて設けられることを特徴とする請求項1記載の車両用フロアボード。
【請求項3】
前記ボード脚部は、
前記一対の板部材のうち一方の板部材の表面側に突出する一方の係止爪部と、
前記一対の板部材のうち他方の板部材の表面側に突出する他方の係止爪部と、
前記一方の係止爪部および前記他方の係止爪部で前記一対の板部材に前記ボード脚部が係止された状態において、前記他方の係止爪部から前記他方の板部材に対して直交する方向で、かつ、前記他方の板部材に対して離れる方向に張り出された張出部と、
を備えたことを特徴とする請求項2記載の車両用フロアボード。
【請求項4】
前記一対の板部材に、前記車両用フロアボードを持ち上げる際に把持する把持部が設けられ、
前記把持部を設けるための開口部が前記脆弱部の近傍に設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の車両用フロアボード。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−201417(P2011−201417A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70425(P2010−70425)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]