説明

車両用ヘッドランプの位置決め治具

【課題】 ヘッドランプを車両に対して正確に位置決めすることができる位置決め治具を提供する。
【解決手段】 一端側にフェンダーパネルに取り付けられるパネル側取付部54を有し、パネル側取付部を基準にして他端側を水平方向で微調整して車体骨格に取り付けられるように構成された車両用ヘッドランプ50を位置決めする位置決め治具であって、車両の前縁部においてフードの前端部を支持するアッパーバー11に設けられた2以上の穴部にそれぞれ嵌合される突出部42と、位置決め治具の車幅方向中心から車幅方向両側に等間隔に一対で設けられ、車両用ヘッドランプの他端側に設けられた当接部と当接されて車両用ヘッドランプの水平方向での位置決めの基準となる治具側当接部とを備え、位置決め治具の突出部をアッパーバーの穴部に嵌合することにより、当該位置決め治具の車幅方向中心位置とアッパーバーの車幅方向中心位置とが一致した状態に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用ヘッドランプの位置決め治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ヘッドランプは、車幅方向外側がフェンダーパネルに取り付けられ、車幅方向内側がラジエータサポート等の骨格部材に取り付けられるよう構成されたものが知られている。(特許文献1参照)。このようなヘッドランプの取り付け構造においては、骨格部材の精度が出難いことがあるため、製造による誤差に対して微調整できるように、例えば、車幅方向内側の取付部の取り付け穴を大きめに設定しておき、車幅方向内側の骨格部材との取付位置を、車幅方向外側の取付位置を基準に水平方向で微調整ができるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−23687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなヘッドランプの取付けにあたり、その位置決めは、作業者の技能にゆだねられていた。即ち、位置決め用に特別な治具は用いられておらず、作業者が取り付け位置を目視で調整するため、作業が煩雑となり位置合わせ(位置決め)に時間がかかるなどの問題があった。
【0005】
例えば、特許文献1にある取り付け構造の場合、位置合わせの微調整がうまくいかず、左右のヘッドランプで取り付け位置がズレてしまうと、フードとの位置関係が狂いヘッドランプとフードとの隙間にばらつきが生じたり、ヘッドランプ間に設けられるフロントグリルの位置が左右方向でずれてしまい、フードの車幅方向での中心位置とフロントグリルの車幅方向での中心位置が合わなくなる等、車両の見栄えに悪影響を与える虞があった。また左右のヘッドランプ同士の間隔が狭すぎると最悪フロントグリルが装着できなくなるためヘッドランプの車幅方向内側の取り付け位置を調整し直す必要が生じる場合もあり作業性においても問題があった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決することにあり、ヘッドランプを車両に対して正確に位置決めすることができる位置決め治具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用ヘッドランプの位置決め治具は、一端側にフェンダーパネルに取り付けられるパネル側取付部を有し、前記パネル側取付部を基準にして他端側を水平方向で微調整して車体骨格に取り付けられるように構成された車両用ヘッドランプを位置決めする位置決め治具であって、前記位置決め治具は、車両の前縁部においてフードの前端部を支持するアッパーバーに設けられた2以上の穴部にそれぞれ嵌合される突出部と、前記位置決め治具の車幅方向中心から車幅方向両側に等間隔に一対で設けられ、前記車両用ヘッドランプの他端側に設けられた当接部と当接されて前記車両用ヘッドランプの水平方向での位置決めの基準となる治具側当接部とを備え、前記位置決め治具の前記突出部を前記アッパーバーの穴部に嵌合することにより、当該位置決め治具の車幅方向中心位置と前記アッパーバーの車幅方向中心位置とが一致した状態に配置されることを特徴とする。
【0008】
本発明では、ヘッドランプの他端側(車幅方向内側)の位置決め基準となる治具側当接部を位置決め治具の車幅方向中心から等間隔の位置に一対で設け、しかも当該位置決め治具の車幅方向中心位置とアッパーバーの車幅方向中心位置とが一致した状態に位置決め治具が配置されるので、アッパーバーの車幅方向中心位置を基準にしてヘッドランプの位置を正確に決めることができる。従って、アッパーバーの車幅方向での中心位置を基準に配置されるフードに対してより正確な位置にヘッドランプが配置されるので、フードとヘッドランプとの隙間にばらつきが生じにくく見栄えの向上を図ることができる。また、アッパーバーの車幅方向での中心位置に対して、常に一定の間隔でヘッドランプが配置されるので、ヘッドランプ間に配置されるフロントグリルの位置が左右にずれることを抑制でき、フードの車幅方向中心位置とフロントグリルの車幅方向中心位置とを一致させることが容易となる。
【0009】
前記治具側当接部は、前記ヘッドランプが位置決めされた状態で、前記パネル側取付部と前記当接部とを結んだ直線に沿うように車幅方向内側に傾斜された傾斜面を有することが好ましい。また、前記当接部についても前記パネル側取付部と前記当接部とを結んだ直線に沿う面状に形成されるとともに、前記ヘッドランプが位置決めされた状態で、前記位置決め治具の前記傾斜面と当接する当接面を備えていることが好ましい。このように構成されていることで、固定点を中心としてヘッドランプを回転させて当接することができ、これによって基準位置のずれを防止することができる。
【0010】
本発明の好ましい実施形態としては、前記アッパーバーは、車幅方向中央部分を構成するアッパーバーセンターと、同アッパーバーセンターの車幅方向左右両側に連結される一対のアッパーバーサイドとを有し、前記位置決め治具は、前記アッパーバーセンターの配設位置を基準として設置される本体部と、当該本体部の車幅方向での中心位置から車幅方向外側に等間隔に配置されて車両前方側に延びる一対の前方突出部とを備え、前記治具側当接部は、当該前方突出部の前端部に形成されることが挙げられる。
【0011】
また、本発明の好ましい実施形態としては、前記位置決め治具は、前記アッパーバーセンターの上面に形成された2以上の前記穴部に前記突出部がそれぞれ嵌合されて前記アッパーバーセンターの上に載置されることが挙げられる。
【0012】
また、本発明の好ましい実施形態としては、前記位置決め治具は、前記アッパーバーセンターを取り外した状態で前記一対のアッパーバーサイドの上面に形成された2以上の前記穴部に前記突出部がそれぞれ嵌合されて、前記アッパーバーセンターの代わりに前記アッパーバーサイド間に配置されることが挙げられる。
【0013】
前記ヘッドランプの前記当接部は、当該ヘッドランプのレンズ部分に形成されていることが好ましい。このように構成されていることで、ヘッドランプの形成精度ばらつきの影響を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】車両の前部構造を示す模式的斜視図である。
【図2】位置決め治具と車両の前部構造とを示す模式的斜視図である。
【図3】車両の前部構造上に位置決め治具が載置された状態を示す模式的斜視図である。
【図4】(1)車両の前部構造上に位置決め治具が載置された状態を示す模式的上面図であり、(2)その一部拡大図である。
【図5】別の位置決め治具と車両の前部構造とを示す模式的斜視図である。
【図6】車両の前部構造上に別の位置決め治具が載置された状態を示す模式的斜視図である。
【図7】車両の前部構造上に別の位置決め治具が載置された状態を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の位置決め治具について図1〜7を用いて説明する。
【0016】
図1は、車両の前部構造を示す模式図である。図1に示す実施形態の車両の前部構造Iは、車両の車室前方領域におけるボデー構造であり、車幅方向左右両側から前後方向に延びる一対のアッパーフレーム21と、車体の前端部において車体の幅方向に延びて左右のアッパーフレーム21間を連結するフロントエンドアッパーバー(以下、アッパーバーという)11と、アッパーバー11の下方に設けられて車体の幅方向に延びるフロントエンドクロスメンバ12と、アッパーバー11とフロントエンドクロスメンバ12とを接続するサポート部13とを有する。これらが互いに固定されることで車両の前部構造Iが構成されている。アッパーフレーム21およびアッパーバー11の上方には、車室前方領域の上部を覆う図示しないフードが配置される。アッパーフレーム21には、フェンダーパネル30(図2参照)が装着され、フードの左右両側に配置されている。フロントエンドクロスメンバ12の前方には、フロントバンパなどが装着される。サポート部13の近傍には、例えば図示しないラジエータ等が装着される。また、サポート部13には、取り付けブラケット13aが設けられ、後述するヘッドランプがこの取り付けブラケット13aに取り付けられる。
【0017】
アッパーバー11は、車体の幅方向中央に位置するアッパーバーセンター14と、アッパーバーセンター14の両端を支持する一対のアッパーバーサイド15からなる。アッパーバーセンター14は、図示しないフードの前端部を支持する。アッパーバーセンター14は、車体の幅方向に延びる板状部14aと、板状部14aの車体前後方向における両端から垂直に下方側に延設された延設部14bとからなる下方側が開放された直線状の部材である。即ち、アッパーバーセンター14は側面視においていわゆるコの字状となっている。アッパーバーセンター14は、アッパーバーサイド15よりも幅広であり、アッパーバーセンター14の端部は、アッパーバーサイド15の車体前方側の端部を覆った状態でアッパーバーサイド15上に固定されている。
【0018】
アッパーバーサイド15は、アッパーバーセンター14の両端部を支持すると共に湾曲して車体の後方側へ延びている。アッパーバーサイド15は、その車幅方向外側の端部、即ちアッパーバーセンター14とは逆側の端部にアッパーフレーム21が接続されている。このアッパーフレーム21の上面はフェンダーパネル30(図2参照)の取付面となる。
【0019】
また、アッパーバーセンター14の上面には、第1開口16(穴部)及び第2開口17(穴部)が設けられている。これらの開口は、ラジエータの取付作業孔である。第1開口16は、上面視において円形状であり、第2開口17は、車幅方向に長い略長方形状である。なお、図示しないがフードは、その前端部の車幅方向での中心位置がアッパーバーセンター14(アッパーバー11)の車幅方向での中心位置Cに合うように配置されており、フェンダーパネル30もアッパーバーセンター14(アッパーバー11)の車幅方向での中心位置Cを基準に位置決めされている。
【0020】
図2は、かかる車両の前部構造Iに対して、フェンダーパネル30が取り付けられた状態を示す。本実施形態では、図3に示す車両の前部構造Iにおけるアッパーフレーム21の上面にフェンダーパネル30が取り付けられた状態で、位置決め治具40を用いてヘッドランプ50の位置決めを行う。なお、フェンダーパネル30は、アッパーバーセンター14の車幅方向での中心位置Cを基準にフード(図示無し)との隙間が一定となるようにアッパーフレーム21に対して正確に位置決めされている。
【0021】
位置決め治具40について説明する。位置決め治具40は、アッパーバーセンター14上に載置されて、ヘッドランプ50の位置決めを行うためのものである。位置決め治具40は、車幅方向に亘って設けられた本体部41を有する。本体部41はアッパーバーセンター14に対応して形成された略直線状の部材からなる。
【0022】
本体部41の底面(アッパーバーセンター14に対向する面)には、本体部41の底面よりも突出した突出部42が設けられている。突出部42は、それぞれ円柱状であり、アッパーバーセンター14上に本体部41を載置した場合に、この突出部42がそれぞれ第1開口16及び第2開口17(穴部)に嵌合される。即ち、突出部42は、この第1開口16及び第2開口17に嵌合されるように構成されている。なお、第2開口17は突出部42が嵌合しやすいようにやや遊びを持たせて構成されているために第1開口16とは異なる形状となっているので、突出部42は、それぞれ第1開口16に嵌合できるような形状となっていればよい。
【0023】
このように第1開口16及び第2開口17にそれぞれ突出部42を嵌合させることで、本体部41がアッパーバーセンター14の長手方向(車幅方向)に沿って配置され、位置決め治具40の車体(アッパーバーセンター14)に対する前後左右方向(水平方向)での位置が決まる。そして、位置決め治具40(本体部41)の車幅方向での中心位置がアッパーバーセンター14の車幅方向中心位置Cとほぼ一致する状態に載置される。
【0024】
また、位置決め治具40の本体部41の底面側には、底面から突出した別の突出部である脚部43が設けられている。脚部43は、本実施形態では、アッパーバーセンター14上に載置されるように3つ設けられている。この脚部43は突出部42よりも高さが低く、また、この脚部43のアッパーバーセンター14側の面は、精度よく形成されている。従って、上述のようにアッパーバーセンター14上にこの脚部43が設置される(設置位置は図2中の斜線部43aである)ことで、位置決め治具40の車体(アッパーバーセンター14)に対する上下方向での位置が決まる。即ち、本体部41の底面側が全てアッパーバーセンター14上に載置されるとすれば、上下方向の位置を正確に決めることが難しい。このため、本実施形態では、脚部43を設けてこの脚部43で位置決め治具40を支持することで、位置決め治具40の上下方向における位置決めを正確に行うことができるように構成されている。
【0025】
位置決め治具40の本体部41の車体前方側の面には、前方に突出した一対の前方突出部44が設けられている。各前方突出部44は、本体部41(位置決め治具40)の車幅方向中心位置から車幅方向両側に対して等間隔となる位置に設けられている。各前方突出部44は、板状部材であり、上面視においてその先端部45の外側が車両前方に向かうに従って車幅方向内側に傾斜された傾斜面(治具側当接部)46となっている。詳しくは後述するように、本実施形態においては、この先端部45の傾斜面46がヘッドランプ50側と当接してヘッドランプ50の位置決めを行う。
【0026】
位置決め治具40を用いたヘッドランプ50の位置決め方法について以下説明する。
【0027】
図3に示すように、突出部42をアッパーバーセンター14の2つの開口16,17に嵌合させると共に、脚部43をアッパーバーセンター14の上面に載置することで、位置決め治具40は、アッパーバーセンター14に対して上下および前後左右方向共に正確に位置決めされる。位置決め治具40は、位置決め治具40(本体部41)の車幅方向での中心位置がアッパーバーセンター14の車幅方向中心位置Cに合わせられた状態でアッパーバーセンター14上に載置される。つまり位置決め治具40は、アッパーバーセンター14を基準として上下および前後左右方向共に正確に位置決めされて配置される。ゆえに、この位置決め治具40に従ってヘッドランプ50を取り付けることで、アッパーバーセンター14に対して大きなずれ無く一定の位置に正確にヘッドランプ50を取り付けることができる。
【0028】
ここで、ヘッドランプ50は、ヘッドランプハウジング51と、ヘッドランプハウジング51の車体外側に固定されたヘッドランプレンズ52とを備える。ヘッドランプハウジング51には、前部構造Iに取り付けられた際に車幅方向外側に位置する一端側に延設部53が設けられ、車幅方向内側に位置する他端側に延設部57が設けられている。延設部53の先端には、フェンダーパネル30に取り付けられる際に用いられる取付孔54(パネル側取付部)が設けられ、延設部57の先端には、サポート部13の取り付けブラケット13aに取り付けられる際に用いられる取付孔58が形成されている。また、ヘッドランプレンズ52は、前部構造Iに取り付けられた時にヘッドランプハウジング51よりも車幅方向内側に回り込んで延設されており、この延設された部分にヘッドランプ50側の位置決めの基準となる位置決め部(当接部)55が設けられている。位置決め部55は、その先端部が位置決め治具40の前方突出部44の傾斜面46と当接する当接面56となっている。
【0029】
ヘッドランプ50の当接面56は、上面視において、車幅方向内側に位置する位置決め部55と車幅方向外側に位置する取付孔54とを結ぶ直線Lに沿うように構成されており、当接面56に当接される前方突出部44の傾斜面46も、直線L上に位置するよう形成されている。
【0030】
図4に示すように、ヘッドランプ50の車幅方向外側の延設部53に設けられた取付孔54(パネル側取付部)とフェンダーパネル30の上面端部に形成されたヘッドランプ取付孔31とをボルト等の固定部材60を挿入することで仮固定する。ヘッドランプ50は、この固定部材60により仮固定されていわゆる片持ち状態となる。
【0031】
そして、この固定部材60で固定された箇所を回転中心として、ヘッドランプ50を水平方向に回転させてヘッドランプ50の他端側に設けられた位置決め部55の当接面56を位置決め治具40の前方突出部44の傾斜面46に当接させる。これにより、ヘッドランプ50の位置決めを行うことができる。
【0032】
その後は、ヘッドランプ50が正確に位置決めされた状態で、ヘッドランプ50のヘッドランプハウジング51から延設された延設部57が、取付孔58にボルトなどの固定部材が挿入されることで、取り付けブラケット13aに固定される。なお、延設部57の取付孔58は、取り付けブラケット13aに対して水平方向で取り付け位置を微調整できるようにボルト等の固定部材の径より大きめに形成されている。そして、図示しないが、ヘッドランプハウジング51には、延設部53,57の他に車体側に固定される取付部が設けられている。ヘッドランプ50は、車幅方向両端部の2つの延設部53,57と、他の取付部の少なくとも3箇所が固定されることで車両の前部構造Iに安定した状態で取り付けられる。
【0033】
即ち、本実施形態では、上述のようにヘッドランプ50の位置決めを位置決め治具40の傾斜面46に位置決め部55の当接面56を当接させることで行っている。位置決め治具40は、アッパーバーセンター14を基準にして本体部41の車幅方向での中心位置がアッパーバーセンター14の車幅方向の中心位置Cと同じ位置となるようにアッパーバーセンター14上に載置されている。また、ヘッドランプハウジング51の延設部53が取り付けられるフェンダーパネル30もアッパーバーセンター14の車幅方向での中心位置Cを基準に位置決めされていることから、この位置決め治具40を用いて位置決めされたヘッドランプ50も、アッパーバーセンター14を基準にして取付位置が決められる。そして、位置決め治具40の前方突出部44が左右のヘッドランプ50間の距離およびヘッドランプ50とアッパーバーセンター14との距離を規制することから、ヘッドランプ50の車幅方向内側における前後左右方向(水平方向)での位置ズレを抑制して正確に位置決めを行うことができる。
【0034】
したがって、本実施形態の位置決め治具40を用いれば、ヘッドランプ50とフードとの隙間のばらつきを抑制することができる。また、常に一定の間隔で左右のヘッドランプが配置されるので、ヘッドランプ間に配置されるフロントグリルの位置が確実に規制され、フードの車幅方向中心位置に対してフロントグリルの車幅方向中心位置が車幅方向でずれることを抑制することができ、見栄えをより一層向上させることができる。
【0035】
また、本実施形態では、傾斜面46と固定部材60とが、それぞれ位置決め部55と車幅方向外側に位置する取付孔54とを結ぶ直線L上に位置するように設けられている。このように直線L上に傾斜面46と固定部材60とが位置することで、各ヘッドランプ50を固定部材60で固定された地点を回転中心として回転させて設ける場合に、回転のばらつきを抑制でき、よりヘッドランプの位置合わせ精度を向上させることができる。
【0036】
また、ヘッドランプレンズ52に当接面56が形成されていることで、ヘッドランプ50の形成精度ばらつきの影響を抑制できる。
【0037】
また、本実施形態では新たに開口を設けることなくラジエータの取付作業孔である第1開口16及び第2開口17を用いて位置決め治具の位置決めを行うことができる。
【0038】
次に、本発明の位置決め治具の別の実施形態及びこれを用いた使用形態について説明する。図5に示すように、本発明の位置決め治具の別の実施形態としては、アッパーバーセンター14をアッパーバーサイド15から外し、このアッパーバーサイド15間にアッパーバーセンター14の代わりに位置決め治具を配置することが挙げられる。なお、ここでは、実施形態1と異なる部分のみ説明し、実施形態1と同様の構成・効果については説明を省略する。
【0039】
図6に示すように、位置決め治具40Aは、車幅方向に亘って設けられた本体部41Aと本体部41Aから車体前方に突出した一対の前方突出部44を備えている。本体部41Aは、長手方向(車幅方向)に延びる板状部41aと、板状部41aの前後両端縁から垂直に下方側に延設された延設部41bとからなる下方側が開放された直線状の部材であり、アッパーバーセンター14と同様に側面視においてコの字状となっている。本体部41Aの板状部41aの裏面(下方側の面)には、突出部42Aが設けられており、この突出部42Aは、アッパーバーサイド15に設けられた位置規制用の第1開口16A(穴部)、第2開口17A(穴部)に嵌合する。突出部42Aの嵌合により、位置決め治具40A(本体部41A)がアッパーバーセンター14と同じ状態で、アッパーバーサイド15間に配置され、車体の左右前後方向(床面に対して水平方向)における位置が決まる。なお、位置決め治具40Aがアッパーバーセンター14の代わりにアッパーバーサイド15に配置された状態が、位置決め治具40A(本体部41A)の車幅方向中心位置とアッパーバー11(アッパーバーセンター14の中心)の車幅方向での中心位置Cとが一致した状態である。
【0040】
また、本体部41Aの板状部41aの裏面には、図6に示すように別の脚部43Aが設けられており、この脚部43Aは、アッパーバーサイド15の端部に載置される。このようにアッパーバーサイド15上にこの脚部43Aが設置される(設置位置は図6中の斜線部43bである)ことで、位置決め治具40Aにおける車体の上下方向(床面に対して垂直方向)での位置が決まる。
【0041】
本実施形態では、図7に示すようにアッパーバーセンター14が配置されていたアッパーバーサイド15間にアッパーバーセンター14に代えて位置決め治具40Aが配置され、この位置決め治具40Aに対してヘッドランプ50を位置決めしている。すなわち、本実施形態でも上記実施形態1と同様にアッパーバーセンター14の車幅方向中心位置Cを基準にしてヘッドランプ50が位置決めされることになる。具体的には、上述した実施形態1と同様に、固定部材60で固定された箇所を回転中心として、ヘッドランプ50を水平方向に回転させてヘッドランプ50の車幅方向内側(他端側)に設けられた位置決め部55の当接面56を位置決め治具40Aの前方突出部44の傾斜面46に当接させることで位置決めされる。このように、本実施形態の位置決め治具40Aであってもアッパーバーセンター14を基準にして正確にヘッドランプ50の位置決めを行うことが可能である。そして、本実施形態においても、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0042】
以上各実施形態にて説明したように、本発明の位置決め治具40、40Aは、その車幅方向中心がアッパーバーセンター14の車幅方向中心位置Cに一致された状態で配置され、アッパーバーセンター14の車幅方向中心位置Cを基準にして、左右のヘッドランプ50の車幅方向内側の位置を決めているので、常にアッパーバーセンター14に対して一定の位置に左右のヘッドランプ50を配置することができる。従って、左右のヘッドランプ50をアッパーバーセンター14の車幅方向の中心位置Cを基準に配置されるフードに対してもより正確な位置に配置することができ、フードと左右のヘッドランプ50との隙間のばらつきを抑制することができる。さらには、左右のヘッドランプ50間に配置されるフロントグリルとフードの車幅方向での中心位置がずれることも抑制することができる。
【0043】
また、位置決め治具40、40Aを用いることで作業者が取り付け位置を目視で調整することがなくなるので、位置合わせ作業が効率的になり、製造時間が短縮される。
【0044】
このように本実施形態の位置決め治具40、40Aであれば、ヘッドランプ50の位置決めをより正確かつ簡単に行うことができ、車両前部における見栄えの向上を図ることが可能となる。
【0045】
上述した各実施形態では、位置決め治具40、40Aは共に車幅方向に亘るように本体部41、41Aが形成されていたが、これに限定されない。例えば、中心から左右に二つ分割され、これらを組み合わせて使用するように構成してもよい。
【0046】
本実施形態では、脚部を位置決め治具40、40A側に設けたが、これに限定されない。例えば、アッパーバー11側に設けていてもよい。
【0047】
本実施形態では、位置決め治具40、40Aの上下方向の位置決め手段として脚部43を設けたが、これに限定されない。脚部43を設けずに、磁石を設けてこの磁石がアッパーバーセンター14に接着するように設けてもよい。
【0048】
本実施形態では、ヘッドランプ50の位置決め部55に当接面56を形成し、当接面56と車幅方向外側の取付孔54(固定部材60)とが同一直線上に沿って存在する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、ヘッドランプ50の位置決め部55に穴を設け、位置決め治具40の前方突出部44にピンを設けて、該ピンを位置決め部55の穴に嵌合させることで位置を合わせる構造でもよい。前方突出部44と位置決め部55とが互いに対応する形状となって当接した場合に嵌合することができれば限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の位置決め治具は、車体前部にヘッドランプを取り付ける際の取付位置を正確に決めることができる。従って、車両製造分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
11 アッパーバー
12 フロントエンドクロスメンバ
13 サポート部
14 アッパーバーセンター
15 アッパーバーサイド
16 第1開口(穴部)
17 第2開口(穴部)
21 アッパーフレーム
30 フェンダーパネル
40 位置決め治具
41 本体部
42 突出部
43 脚部
44 前方突出部
45 先端部
46 傾斜面(治具側当接部)
50 ヘッドランプ
51 ヘッドランプハウジング
52 ヘッドランプレンズ
53 車幅方向外側の延設部
54 取付孔(パネル側取付部)
55 位置決め部(当接部)
56 当接面(当接部)
57 車幅方向内側の延設部
58 取付孔
I 前部構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側にフェンダーパネルに取り付けられるパネル側取付部を有し、前記パネル側取付部を基準にして他端側を水平方向で微調整して車体骨格に取り付けられるように構成された車両用ヘッドランプを位置決めする位置決め治具であって、
前記位置決め治具は、車両の前縁部においてフードの前端部を支持するアッパーバーに設けられた2以上の穴部にそれぞれ嵌合される突出部と、前記位置決め治具の車幅方向中心から車幅方向両側に等間隔に一対で設けられ、前記車両用ヘッドランプの他端側に設けられた当接部と当接されて前記車両用ヘッドランプの水平方向での位置決めの基準となる治具側当接部とを備え、
前記位置決め治具の前記突出部を前記アッパーバーの穴部に嵌合することにより、当該位置決め治具の車幅方向中心位置と前記アッパーバーの車幅方向中心位置とが一致した状態に配置されることを特徴とする車両用ヘッドランプの位置決め治具。
【請求項2】
前記治具側当接部は、前記ヘッドランプが位置決めされた状態で、前記パネル側取付部と前記当接部とを結んだ直線に沿うように車幅方向内側に傾斜された傾斜面を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用ヘッドランプの位置決め治具。
【請求項3】
前記当接部は、前記パネル側取付部と前記当接部とを結んだ直線に沿う面状に形成されるとともに、前記ヘッドランプが位置決めされた状態で、前記位置決め治具の前記傾斜面と当接する当接面を備えていることを特徴とする請求項2に記載の車両用ヘッドランプの位置決め治具。
【請求項4】
前記アッパーバーは、車幅方向中央部分を構成するアッパーバーセンターと、同アッパーバーセンターの車幅方向左右両側に連結される一対のアッパーバーサイドとを有し、
前記位置決め治具は、前記アッパーバーセンターの配設位置を基準として設置される本体部と、当該本体部の車幅方向での中心位置から車幅方向外側に等間隔に配置されて車両前方側に延びる一対の前方突出部とを備え、
前記治具側当接部は、当該前方突出部の前端部に形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用ヘッドランプの位置決め治具。
【請求項5】
前記位置決め治具は、前記アッパーバーセンターの上面に形成された2以上の前記穴部に前記突出部がそれぞれ嵌合されて前記アッパーバーセンターの上に載置されることを特徴とする請求項4に記載の車両用ヘッドランプの位置決め治具。
【請求項6】
前記位置決め治具は、前記アッパーバーセンターを取り外した状態で前記一対のアッパーバーサイドの上面に形成された2以上の前記穴部に前記突出部がそれぞれ嵌合されて、前記アッパーバーセンターの代わりに前記アッパーバーサイド間に配置されることを特徴とする請求項4に記載の車両用ヘッドランプの位置決め治具。
【請求項7】
前記ヘッドランプの前記当接部は、当該ヘッドランプのレンズ部分に形成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の車両用ヘッドランプの位置決め治具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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