車両用ホイール
【課題】樹脂製の加飾部材を用いて、あたかもスポーク部の中間部に空間が形成されているような立体的な意匠を形成する。
【解決手段】ホイール本体1に樹脂製の加飾部材2を保持した車両用ホイールであって、加飾部材2のスポーク被覆部21とスポーク部12との間に、ホイール本体1の軸方向外側から視認可能な空間24を形成した。
あたかもスポーク部の中間部に空間が形成されているような立体的な意匠を、スポーク部を加工することなく実現することができる。
【解決手段】ホイール本体1に樹脂製の加飾部材2を保持した車両用ホイールであって、加飾部材2のスポーク被覆部21とスポーク部12との間に、ホイール本体1の軸方向外側から視認可能な空間24を形成した。
あたかもスポーク部の中間部に空間が形成されているような立体的な意匠を、スポーク部を加工することなく実現することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用のホイールに関し、詳しくは樹脂製の加飾部材をもつホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のタイヤが装着されるホイールは、燃費の向上を目的として、アルミニウム合金、マグネシウム合金などの軽合金から形成されたものが多く用いられている。このような軽合金製のホイールはリム部とディスク部とよりなるものであり、ディスク部に飾り穴を形成することによってさらなる軽量化を達成するとともに、意匠性の向上、冷却効率の向上が図られている。
【0003】
軽合金製のホイールは、その金属光沢を利用して、ホイールキャップを用いることなくホイール本体のみで意匠を表現するのが一般的である。しかしながらホイール本体のみで意匠を表現すると、意匠面に傷が付いた場合などにはホイール本体を交換しなければならず不経済である。また意匠によっては、ホイールとしての強度を満足しないものもあり、そのような意匠を具現することは困難である。
【0004】
例えば飾り孔どうしの間には、ハブ部から放射状に延びるスポーク部が形成される場合が多い。しかしスポーク部の中間部に空間をもつ意匠を形成しようとする場合、鋳造あるいは切削によって形成するには多大な工数を有し、コストが高騰してしまう。また強度面で不具合が生じる場合もある。
【0005】
一方、特開平11−227402号公報、特開2002−079801号公報、特開2003−159901号公報、特開2005−324799号公報などには、樹脂製の加飾部材をホイール本体に着脱可能に取付けた加飾軽合金ホイールが提案されている。例えば特開2003−159901号公報に記載の加飾軽合金ホイールでは、ホイール本体のスポーク部を含む表面に窪みを形成し、樹脂製の加飾部材をその窪みに交換可能に装着している。また特開2005−324799号公報に記載の加飾軽合金ホイールでは、スポーク部に形成された貫通孔に弾性ブッシュを介して樹脂製加飾カバーから突出する突起部が嵌合することで、加飾カバーを交換可能に装着している。
【0006】
したがってスポーク部の中間部に空間をもつ意匠を形成する場合に、これら樹脂製の加飾部材を用いることが考えられる。しかしながら、これらの公報に記載された技術では、そのような意匠を具現化することは困難である。
【特許文献1】特開平11−227402号
【特許文献2】特開2002−079801号
【特許文献3】特開2003−159901号
【特許文献4】特開2005−324799号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、樹脂製の加飾部材を用いて、あたかもスポーク部の中間部に空間が形成されているような立体的な意匠を形成することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の車両用ホイールの特徴は、リム部と、ハブ部と、ハブ部とリム部を連結する複数のスポーク部とをもつホイール本体と、少なくとも一つのスポーク部の表面に配置されホイール本体に保持された樹脂製の加飾部材と、からなる車両用ホイールであって、
加飾部材とスポーク部との間には、ホイール本体の軸方向に高さを有しホイール本体の軸方向外側から視認可能な空間が形成されていることにある。
【0009】
リム部はスポーク部の延長上に内周方向へ向かって突出する舌片部をもち、舌片部の下側のスポーク部の延長部には凹部をもち、加飾部材は一端部が舌片部に固定されていることが望ましい。この場合、加飾部材は舌片部の左右両側を覆う壁部をもつことが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両用ホイールによれば、スポーク部の表面に加飾部材が設けられ、加飾部材とスポーク部との間には、ホイール本体の軸方向に高さを有しホイール本体の軸方向外側から視認可能な空間が形成されている。したがって、あたかもスポーク部の中間部に空間が形成されているような立体的な意匠を、スポーク部を加工することなく実現することができ、工数を大幅に削減することができる。
【0011】
すなわち本発明の車両用ホイールによれば、ホイールとしての強度を維持しつつ、意匠の自由度が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の車両用ホイールは、ホイール本体と、加飾部材とから構成される。ホイール本体は、アルミニウム合金、マグネシウム合金などの軽合金又はスチールから形成されたものを用いることができる。ホイール本体は、タイヤのビード部が着座するリム部とディスク部とよりなり、ディスク部に飾り穴を有している。
【0013】
ディスク部はボルト孔を有するハブ部と外縁とを備えている。ハブ部と外縁との間には、ハブ部とリム部を連結する複数のスポーク部が形成されている。
【0014】
加飾部材は、軽量化の観点より樹脂から形成され、硬質樹脂から形成することが望ましい。硬質樹脂としては、例えばABS、PP、PA、ノリル樹脂、ポリカABSアロイ樹脂などが例示される。またカーボン繊維、ガラス繊維あるいはセラミック粉末などの各種フィラーで強化された強化樹脂を用いることもできる。外側部材と内側部材とで異なる樹脂種を用いることも可能である。
【0015】
加飾部材の加飾方法としては、無電解メッキ、蒸着、塗装など既知の方法を用いることができ、その意匠としては金属光沢、車両のボディ塗色などが挙げられる。加飾部材は、少なくとも一つのスポーク部の表面に配置されている。加飾部材をスポーク部の数だけ形成して全てのスポーク部の表面に配置してもよい。またハブ部の表面を覆う円板部と、円板部から放射状に延びる複数のスポーク被覆部と、からなる一体的な加飾部部材とすることもできる。
【0016】
加飾部材をホイール本体に固定するには、スポーク部に形成された取付孔に加飾部材を固定する方法、スポーク部の延長上に内周方向へ向かって突出する舌片部をリム部に一体に形成し、この舌片部を介して加飾部材を固定する方法、加飾部材に形成された係合筒部にリム部から延びる突起を嵌合して固定する方法、などを採用することができる。
【0017】
舌片部を介して加飾部材を固定するには、加飾部材から延びるボルトを舌片部に形成された貫通孔に挿通して舌片部の裏面側からナットで固定する方法、加飾部材から延びる係止突起を舌片部に形成された貫通孔に挿通して舌片部の裏面で係合保持する方法、などがある。なおホイール本体の加工の関係上、舌片部を形成する場合には、その下方にあるスポーク部に貫通孔を形成しておくことが望ましい。
【0018】
また加飾部材をスポーク部毎にそれぞれ固定する場合には、外周側の一端部は上記した舌片部を介して固定し、内周側の他端部はハブ部に固定することができる。このように加飾部材の両端をホイール本体に固定することで、ホイール本体に対して加飾部材が相対移動するのが防止でき、走行時の回転による遠心力などによって加飾部材が変位するような不具合を防止することができる。
【0019】
加飾部材の内周側の他端部をハブ部に固定するには、ハブ部から突出する舌片部を介して上記と同様に固定する方法、両面テープなどで接着する方法などを利用することができる。
【0020】
加飾部材とスポーク部との間には、ホイール本体の軸方向に高さを有しホイール本体の軸方向外側から視認可能な空間が形成されている。これにより、あたかもスポーク部の中間部に空間が形成されているような立体的な意匠を、スポーク部を加工することなく実現することができる。
【0021】
しかしホイール本体の軸方向外側から空間を見た場合に、加飾部材のホイール本体への取付部が視認されることは好ましくない。したがって加飾部材には、舌片部の左右両側を覆う壁部を形成することが望ましい。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0023】
(実施例1)
図1に本実施例の車両用ホイールの平面図を、図4〜図6にその断面図を示す。このホイールは、アルミニウム合金製の金属光沢を有するホイール本体1と、ポリカABSアロイ樹脂から射出成形により形成された加飾部材2と、から構成されている。
【0024】
図2に示すホイール本体1は、タイヤのビード部が着座する略円筒状のリム部10と、車軸を取付けるハブ部11と、ハブ部11から放射状に延びリム部10とハブ部11を連結する複数のスポーク部12と、を有している。ハブ部11にはハブ穴110 が形成され、ハブ穴110 周りにホイールを車軸のハブに固定するためのハブボルトが貫通する複数のボルト孔111 が形成されている。
【0025】
リム部10には、各スポーク部12に対応する位置で各スポーク部12とそれぞれ平行に径方向内周側へ延出する複数個の舌片部13が形成され、舌片部13の先端にはそれぞれ係合孔14が厚さ方向(車軸方向)に貫通している。また舌片部13に対向するスポーク部12には、それぞれ表裏を貫通する孔部15が形成されている。
【0026】
図3に示す加飾部材2は、ハブ部11及びハブ孔110 を覆う円板部20と、円板部20から放射状に延びる複数のスポーク被覆部21と、からなる星形の一体成形品であり、無電解めっき処理によって金属光沢の意匠を呈している。円板部20には、それぞれボルト孔111 と連通する複数の貫通孔22が形成されている。
【0027】
図5に拡大して示すように、スポーク被覆部21の外周側端部の裏面側にはボス部23が形成され、ボス部23には、金属製のボルト部材3の一端がタッピンネジとして固定されている。ボス部23に固定されたボルト部材3は、ワッシャ30と舌片部13の係合孔14に挿通され、ナット31により舌片部13に締結されている。スポーク被覆部21は外周側の端部がボス部23より外側へ延び、リム部10の意匠表面と連続的な意匠を形成している。そしてスポーク被覆部21とスポーク部12との間には、ホイール本体1の軸方向に高さを有しホイール本体1の軸方向外側から視認可能な空間24が形成されている。
【0028】
また図6に示すように、スポーク被覆部21の端部には、舌片部13の両側に垂下された壁部25が形成されている。壁部25は舌片部13の位置まで形成され、ボス部23と舌片部13を覆っている。そして孔部15の存在によって、スポーク部12の裏面側からのナット31の締結が可能となっている。
【0029】
すなわち本実施例のホイールによれば、金属光沢意匠をもつスポーク被覆部21がスポーク部12の表面に沿って放射状に延び、円板部20がハブ部11を覆って、加飾部材2がホイール本体1表面に固定されている。そして車外から視認される空間24は、あたかも金属製のスポーク部12に形成されたかのように視認され、きわめて特異な意匠を発現する。
【0030】
さらに壁部25によってボス部23の全部と舌片部13の一部が覆われているので、取付部分が視認されにくく高い意匠性を備えている。
【0031】
また加飾部材2は樹脂製であるので、同じ意匠を全てアルミニウム合金で形成する場合に比べて軽量化を達成でき燃費の向上に貢献できる。
【0032】
また加飾部材2は外周部の複数箇所でホイール本体1に締結されているので、走行時の荷重に十分耐えることができ、交換も容易である。そしてスポーク被覆部21とスポーク部12との間に空間24を形成しているので、加飾部材2を配置するためにスポーク部14を減肉する必要がない。したがって、ホイールとしての十分な強度を維持しつつ、意匠の自由度が高まる。さらに、色彩的にも自由度が高い加飾部材とすることができ、合金製のホイール本体と協働して、ホイールの鋳造あるいは鍛造のみでは得られない新規な意匠のホイールとすることができる。
【0033】
なお上記実施例ではボルト部材3とナット31とでスポーク被覆部21を舌片部13に締結しているが、ボルト部材3とナット31とに代えて、図7に示すような係止爪4を舌片部13の係合孔14に係合させることで加飾部材2をホイール本体1に固定することもできる。また図8に示すように、舌片部13から突出する突起16をスポーク被覆部21の裏面に形成された係止筒26に嵌合して加飾部材2をホイール本体1に固定してもよい。
【0034】
(実施例2)
図9に本実施例の車両用ホイールの平面図を、図10にそのホイール本体の平面図を示す。実施例1では円板部20とスポーク被覆部21とからなる加飾部材2を用いたが、本実施例は、各スポーク部12にそれぞれ略短冊状の加飾部材5が固定されていること以外は実施例1と同様の構造である。
【0035】
すなわちホイール本体1の各スポーク部12には、実施例1と同様の舌片部13がそれぞれ形成されている。舌片部13はリム部10からスポーク部12と平行に径方向内周側へ延出し、舌片部13の先端にはそれぞれ係合孔が厚さ方向(車軸方向)に貫通している。
【0036】
また各スポーク部12には、ハブ部11からスポーク部12と平行に径方向外周側へ延出する第2舌片部17が形成されている。第2舌片部17の先端にはそれぞれ係合孔が厚さ方向(車軸方向)に貫通している。
【0037】
各加飾部材5はポリカABSアロイ樹脂から射出成形により形成され、それぞれの裏面側には両端にそれぞれ実施例1のボス部23と同様の図示しないボス部が形成されている。そしてボス部には、金属製のボルト部材の一端がタッピンネジとして固定されている。ボス部に固定されたボルト部材は、ワッシャと舌片部13及び第2舌片部17の係合孔に挿通され、ナットにより締結されている。
【0038】
そして加飾部材5とスポーク部12との間には、ホイール本体1の軸方向に高さを有しホイール本体1の軸方向外側から視認可能な空間が形成されている。
【0039】
(実施例3)
図11に本実施例の車両用ホイールの平面図を、図12にその断面図を示す。このホイールは、アルミニウム合金製の金属光沢を有するホイール本体6と、ポリカABSアロイ樹脂から射出成形により形成された加飾部材7と、から構成されている。
【0040】
図13に示すホイール本体6は、タイヤのビード部が着座する略円筒状のリム部60と、車軸を取付けるハブ部61と、ハブ部61から放射状に延びリム部60とハブ部61を連結する複数のスポーク部62と、を有している。リム部60には、実施例1の舌片部13と同様の舌片部63が形成され、スポーク部62と平行に径方向内周側へ延出している。
【0041】
またスポーク部62どうしの間には、ハブ部61から径方向外周側へ突出する第2舌片部64がそれぞれ形成されている。第2舌片部64には、それぞれ厚さ方向(車軸方向)に貫通する係合孔65が形成されている。舌片部63はホイール本体6の表面側に位置し、第2舌片部64はホイール本体6の裏面側に位置している。
【0042】
図14に示す加飾部材7は、リム部60を覆う外周部70と、外周部70から径方向内周側へ、かつ表面側から裏面側へ滑らかに屈曲して延びる複数の腕部71と、からなる一体成形品であり、無電解めっき処理によって金属光沢の意匠を呈している。複数の腕部71は隣接する先端どうしが連結され、隣接する腕部71どうしの間にはそれぞれ飾り孔72が形成されている。またそれぞれの腕部71には、内周端部から外周側へ延びる切り欠き部73がそれぞれ形成されている。
【0043】
さらに加飾部材7の裏面側には、腕部71の外周端部の位置に実施例1のボス部23と同様のボス部74が形成され、ボス部74には、実施例1と同様にボルト部材3が固定されている。また隣接する腕部71どうしが連結された連結部75の裏面側にもボルト部材3が固定されている。
【0044】
加飾部材7は、腕部71の外周端部に形成されたボス部74が舌片部63に固定され、連結部75が第2舌片部64に固定されている。外周部70と腕部71の外周側とは、ホイール本体6のリム部60表面とスポーク部62の外周側表面を覆い、腕部71はホイール本体6の表面側から裏面側へ向かって滑らかに屈曲して延びている。そして腕部71とスポーク部62との間には、空間76が形成されている。
【0045】
すなわち本実施例のホイールによれば、切り欠き部73にはスポーク部62が表出し、腕部71がスポーク部62に沿ってホイール本体6の表面側から裏面側へ回り込んでいるような特異な意匠を発現する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施例に係るホイールの平面図である。
【図2】本発明の一実施例に係るホイールに用いたホイール本体の平面図である。
【図3】本発明の一実施例に係るホイールに用いた加飾部材の平面図である。
【図4】本発明の一実施例に係るホイールの断面図である。
【図5】本発明の一実施例に係るホイールの要部拡大断面図である。
【図6】本発明の一実施例に係るホイールの要部拡大断面図である。
【図7】実施例の他の態様を示しホイールの要部拡大断面図である。
【図8】実施例の他の態様を示しホイールの要部拡大断面図である。
【図9】本発明の第2の実施例に係るホイールの平面図である。
【図10】本発明の第2の実施例に係るホイールに用いたホイール本体の平面図である。
【図11】本発明の第3の実施例に係るホイールの平面図である。
【図12】図11のA−A断面図である。
【図13】本発明の第3の実施例に用いたホイール本体の平面図である。
【図14】本発明の第3の実施例に用いた加飾部材の平面図である。
【符号の説明】
【0047】
1:ホイール本体 2:加飾部材 3:ボルト部材
10:リム部 11:ハブ部 12:スポーク部
13:舌片部 21:スポーク被覆部 24:空間
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用のホイールに関し、詳しくは樹脂製の加飾部材をもつホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のタイヤが装着されるホイールは、燃費の向上を目的として、アルミニウム合金、マグネシウム合金などの軽合金から形成されたものが多く用いられている。このような軽合金製のホイールはリム部とディスク部とよりなるものであり、ディスク部に飾り穴を形成することによってさらなる軽量化を達成するとともに、意匠性の向上、冷却効率の向上が図られている。
【0003】
軽合金製のホイールは、その金属光沢を利用して、ホイールキャップを用いることなくホイール本体のみで意匠を表現するのが一般的である。しかしながらホイール本体のみで意匠を表現すると、意匠面に傷が付いた場合などにはホイール本体を交換しなければならず不経済である。また意匠によっては、ホイールとしての強度を満足しないものもあり、そのような意匠を具現することは困難である。
【0004】
例えば飾り孔どうしの間には、ハブ部から放射状に延びるスポーク部が形成される場合が多い。しかしスポーク部の中間部に空間をもつ意匠を形成しようとする場合、鋳造あるいは切削によって形成するには多大な工数を有し、コストが高騰してしまう。また強度面で不具合が生じる場合もある。
【0005】
一方、特開平11−227402号公報、特開2002−079801号公報、特開2003−159901号公報、特開2005−324799号公報などには、樹脂製の加飾部材をホイール本体に着脱可能に取付けた加飾軽合金ホイールが提案されている。例えば特開2003−159901号公報に記載の加飾軽合金ホイールでは、ホイール本体のスポーク部を含む表面に窪みを形成し、樹脂製の加飾部材をその窪みに交換可能に装着している。また特開2005−324799号公報に記載の加飾軽合金ホイールでは、スポーク部に形成された貫通孔に弾性ブッシュを介して樹脂製加飾カバーから突出する突起部が嵌合することで、加飾カバーを交換可能に装着している。
【0006】
したがってスポーク部の中間部に空間をもつ意匠を形成する場合に、これら樹脂製の加飾部材を用いることが考えられる。しかしながら、これらの公報に記載された技術では、そのような意匠を具現化することは困難である。
【特許文献1】特開平11−227402号
【特許文献2】特開2002−079801号
【特許文献3】特開2003−159901号
【特許文献4】特開2005−324799号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、樹脂製の加飾部材を用いて、あたかもスポーク部の中間部に空間が形成されているような立体的な意匠を形成することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の車両用ホイールの特徴は、リム部と、ハブ部と、ハブ部とリム部を連結する複数のスポーク部とをもつホイール本体と、少なくとも一つのスポーク部の表面に配置されホイール本体に保持された樹脂製の加飾部材と、からなる車両用ホイールであって、
加飾部材とスポーク部との間には、ホイール本体の軸方向に高さを有しホイール本体の軸方向外側から視認可能な空間が形成されていることにある。
【0009】
リム部はスポーク部の延長上に内周方向へ向かって突出する舌片部をもち、舌片部の下側のスポーク部の延長部には凹部をもち、加飾部材は一端部が舌片部に固定されていることが望ましい。この場合、加飾部材は舌片部の左右両側を覆う壁部をもつことが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両用ホイールによれば、スポーク部の表面に加飾部材が設けられ、加飾部材とスポーク部との間には、ホイール本体の軸方向に高さを有しホイール本体の軸方向外側から視認可能な空間が形成されている。したがって、あたかもスポーク部の中間部に空間が形成されているような立体的な意匠を、スポーク部を加工することなく実現することができ、工数を大幅に削減することができる。
【0011】
すなわち本発明の車両用ホイールによれば、ホイールとしての強度を維持しつつ、意匠の自由度が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の車両用ホイールは、ホイール本体と、加飾部材とから構成される。ホイール本体は、アルミニウム合金、マグネシウム合金などの軽合金又はスチールから形成されたものを用いることができる。ホイール本体は、タイヤのビード部が着座するリム部とディスク部とよりなり、ディスク部に飾り穴を有している。
【0013】
ディスク部はボルト孔を有するハブ部と外縁とを備えている。ハブ部と外縁との間には、ハブ部とリム部を連結する複数のスポーク部が形成されている。
【0014】
加飾部材は、軽量化の観点より樹脂から形成され、硬質樹脂から形成することが望ましい。硬質樹脂としては、例えばABS、PP、PA、ノリル樹脂、ポリカABSアロイ樹脂などが例示される。またカーボン繊維、ガラス繊維あるいはセラミック粉末などの各種フィラーで強化された強化樹脂を用いることもできる。外側部材と内側部材とで異なる樹脂種を用いることも可能である。
【0015】
加飾部材の加飾方法としては、無電解メッキ、蒸着、塗装など既知の方法を用いることができ、その意匠としては金属光沢、車両のボディ塗色などが挙げられる。加飾部材は、少なくとも一つのスポーク部の表面に配置されている。加飾部材をスポーク部の数だけ形成して全てのスポーク部の表面に配置してもよい。またハブ部の表面を覆う円板部と、円板部から放射状に延びる複数のスポーク被覆部と、からなる一体的な加飾部部材とすることもできる。
【0016】
加飾部材をホイール本体に固定するには、スポーク部に形成された取付孔に加飾部材を固定する方法、スポーク部の延長上に内周方向へ向かって突出する舌片部をリム部に一体に形成し、この舌片部を介して加飾部材を固定する方法、加飾部材に形成された係合筒部にリム部から延びる突起を嵌合して固定する方法、などを採用することができる。
【0017】
舌片部を介して加飾部材を固定するには、加飾部材から延びるボルトを舌片部に形成された貫通孔に挿通して舌片部の裏面側からナットで固定する方法、加飾部材から延びる係止突起を舌片部に形成された貫通孔に挿通して舌片部の裏面で係合保持する方法、などがある。なおホイール本体の加工の関係上、舌片部を形成する場合には、その下方にあるスポーク部に貫通孔を形成しておくことが望ましい。
【0018】
また加飾部材をスポーク部毎にそれぞれ固定する場合には、外周側の一端部は上記した舌片部を介して固定し、内周側の他端部はハブ部に固定することができる。このように加飾部材の両端をホイール本体に固定することで、ホイール本体に対して加飾部材が相対移動するのが防止でき、走行時の回転による遠心力などによって加飾部材が変位するような不具合を防止することができる。
【0019】
加飾部材の内周側の他端部をハブ部に固定するには、ハブ部から突出する舌片部を介して上記と同様に固定する方法、両面テープなどで接着する方法などを利用することができる。
【0020】
加飾部材とスポーク部との間には、ホイール本体の軸方向に高さを有しホイール本体の軸方向外側から視認可能な空間が形成されている。これにより、あたかもスポーク部の中間部に空間が形成されているような立体的な意匠を、スポーク部を加工することなく実現することができる。
【0021】
しかしホイール本体の軸方向外側から空間を見た場合に、加飾部材のホイール本体への取付部が視認されることは好ましくない。したがって加飾部材には、舌片部の左右両側を覆う壁部を形成することが望ましい。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0023】
(実施例1)
図1に本実施例の車両用ホイールの平面図を、図4〜図6にその断面図を示す。このホイールは、アルミニウム合金製の金属光沢を有するホイール本体1と、ポリカABSアロイ樹脂から射出成形により形成された加飾部材2と、から構成されている。
【0024】
図2に示すホイール本体1は、タイヤのビード部が着座する略円筒状のリム部10と、車軸を取付けるハブ部11と、ハブ部11から放射状に延びリム部10とハブ部11を連結する複数のスポーク部12と、を有している。ハブ部11にはハブ穴110 が形成され、ハブ穴110 周りにホイールを車軸のハブに固定するためのハブボルトが貫通する複数のボルト孔111 が形成されている。
【0025】
リム部10には、各スポーク部12に対応する位置で各スポーク部12とそれぞれ平行に径方向内周側へ延出する複数個の舌片部13が形成され、舌片部13の先端にはそれぞれ係合孔14が厚さ方向(車軸方向)に貫通している。また舌片部13に対向するスポーク部12には、それぞれ表裏を貫通する孔部15が形成されている。
【0026】
図3に示す加飾部材2は、ハブ部11及びハブ孔110 を覆う円板部20と、円板部20から放射状に延びる複数のスポーク被覆部21と、からなる星形の一体成形品であり、無電解めっき処理によって金属光沢の意匠を呈している。円板部20には、それぞれボルト孔111 と連通する複数の貫通孔22が形成されている。
【0027】
図5に拡大して示すように、スポーク被覆部21の外周側端部の裏面側にはボス部23が形成され、ボス部23には、金属製のボルト部材3の一端がタッピンネジとして固定されている。ボス部23に固定されたボルト部材3は、ワッシャ30と舌片部13の係合孔14に挿通され、ナット31により舌片部13に締結されている。スポーク被覆部21は外周側の端部がボス部23より外側へ延び、リム部10の意匠表面と連続的な意匠を形成している。そしてスポーク被覆部21とスポーク部12との間には、ホイール本体1の軸方向に高さを有しホイール本体1の軸方向外側から視認可能な空間24が形成されている。
【0028】
また図6に示すように、スポーク被覆部21の端部には、舌片部13の両側に垂下された壁部25が形成されている。壁部25は舌片部13の位置まで形成され、ボス部23と舌片部13を覆っている。そして孔部15の存在によって、スポーク部12の裏面側からのナット31の締結が可能となっている。
【0029】
すなわち本実施例のホイールによれば、金属光沢意匠をもつスポーク被覆部21がスポーク部12の表面に沿って放射状に延び、円板部20がハブ部11を覆って、加飾部材2がホイール本体1表面に固定されている。そして車外から視認される空間24は、あたかも金属製のスポーク部12に形成されたかのように視認され、きわめて特異な意匠を発現する。
【0030】
さらに壁部25によってボス部23の全部と舌片部13の一部が覆われているので、取付部分が視認されにくく高い意匠性を備えている。
【0031】
また加飾部材2は樹脂製であるので、同じ意匠を全てアルミニウム合金で形成する場合に比べて軽量化を達成でき燃費の向上に貢献できる。
【0032】
また加飾部材2は外周部の複数箇所でホイール本体1に締結されているので、走行時の荷重に十分耐えることができ、交換も容易である。そしてスポーク被覆部21とスポーク部12との間に空間24を形成しているので、加飾部材2を配置するためにスポーク部14を減肉する必要がない。したがって、ホイールとしての十分な強度を維持しつつ、意匠の自由度が高まる。さらに、色彩的にも自由度が高い加飾部材とすることができ、合金製のホイール本体と協働して、ホイールの鋳造あるいは鍛造のみでは得られない新規な意匠のホイールとすることができる。
【0033】
なお上記実施例ではボルト部材3とナット31とでスポーク被覆部21を舌片部13に締結しているが、ボルト部材3とナット31とに代えて、図7に示すような係止爪4を舌片部13の係合孔14に係合させることで加飾部材2をホイール本体1に固定することもできる。また図8に示すように、舌片部13から突出する突起16をスポーク被覆部21の裏面に形成された係止筒26に嵌合して加飾部材2をホイール本体1に固定してもよい。
【0034】
(実施例2)
図9に本実施例の車両用ホイールの平面図を、図10にそのホイール本体の平面図を示す。実施例1では円板部20とスポーク被覆部21とからなる加飾部材2を用いたが、本実施例は、各スポーク部12にそれぞれ略短冊状の加飾部材5が固定されていること以外は実施例1と同様の構造である。
【0035】
すなわちホイール本体1の各スポーク部12には、実施例1と同様の舌片部13がそれぞれ形成されている。舌片部13はリム部10からスポーク部12と平行に径方向内周側へ延出し、舌片部13の先端にはそれぞれ係合孔が厚さ方向(車軸方向)に貫通している。
【0036】
また各スポーク部12には、ハブ部11からスポーク部12と平行に径方向外周側へ延出する第2舌片部17が形成されている。第2舌片部17の先端にはそれぞれ係合孔が厚さ方向(車軸方向)に貫通している。
【0037】
各加飾部材5はポリカABSアロイ樹脂から射出成形により形成され、それぞれの裏面側には両端にそれぞれ実施例1のボス部23と同様の図示しないボス部が形成されている。そしてボス部には、金属製のボルト部材の一端がタッピンネジとして固定されている。ボス部に固定されたボルト部材は、ワッシャと舌片部13及び第2舌片部17の係合孔に挿通され、ナットにより締結されている。
【0038】
そして加飾部材5とスポーク部12との間には、ホイール本体1の軸方向に高さを有しホイール本体1の軸方向外側から視認可能な空間が形成されている。
【0039】
(実施例3)
図11に本実施例の車両用ホイールの平面図を、図12にその断面図を示す。このホイールは、アルミニウム合金製の金属光沢を有するホイール本体6と、ポリカABSアロイ樹脂から射出成形により形成された加飾部材7と、から構成されている。
【0040】
図13に示すホイール本体6は、タイヤのビード部が着座する略円筒状のリム部60と、車軸を取付けるハブ部61と、ハブ部61から放射状に延びリム部60とハブ部61を連結する複数のスポーク部62と、を有している。リム部60には、実施例1の舌片部13と同様の舌片部63が形成され、スポーク部62と平行に径方向内周側へ延出している。
【0041】
またスポーク部62どうしの間には、ハブ部61から径方向外周側へ突出する第2舌片部64がそれぞれ形成されている。第2舌片部64には、それぞれ厚さ方向(車軸方向)に貫通する係合孔65が形成されている。舌片部63はホイール本体6の表面側に位置し、第2舌片部64はホイール本体6の裏面側に位置している。
【0042】
図14に示す加飾部材7は、リム部60を覆う外周部70と、外周部70から径方向内周側へ、かつ表面側から裏面側へ滑らかに屈曲して延びる複数の腕部71と、からなる一体成形品であり、無電解めっき処理によって金属光沢の意匠を呈している。複数の腕部71は隣接する先端どうしが連結され、隣接する腕部71どうしの間にはそれぞれ飾り孔72が形成されている。またそれぞれの腕部71には、内周端部から外周側へ延びる切り欠き部73がそれぞれ形成されている。
【0043】
さらに加飾部材7の裏面側には、腕部71の外周端部の位置に実施例1のボス部23と同様のボス部74が形成され、ボス部74には、実施例1と同様にボルト部材3が固定されている。また隣接する腕部71どうしが連結された連結部75の裏面側にもボルト部材3が固定されている。
【0044】
加飾部材7は、腕部71の外周端部に形成されたボス部74が舌片部63に固定され、連結部75が第2舌片部64に固定されている。外周部70と腕部71の外周側とは、ホイール本体6のリム部60表面とスポーク部62の外周側表面を覆い、腕部71はホイール本体6の表面側から裏面側へ向かって滑らかに屈曲して延びている。そして腕部71とスポーク部62との間には、空間76が形成されている。
【0045】
すなわち本実施例のホイールによれば、切り欠き部73にはスポーク部62が表出し、腕部71がスポーク部62に沿ってホイール本体6の表面側から裏面側へ回り込んでいるような特異な意匠を発現する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施例に係るホイールの平面図である。
【図2】本発明の一実施例に係るホイールに用いたホイール本体の平面図である。
【図3】本発明の一実施例に係るホイールに用いた加飾部材の平面図である。
【図4】本発明の一実施例に係るホイールの断面図である。
【図5】本発明の一実施例に係るホイールの要部拡大断面図である。
【図6】本発明の一実施例に係るホイールの要部拡大断面図である。
【図7】実施例の他の態様を示しホイールの要部拡大断面図である。
【図8】実施例の他の態様を示しホイールの要部拡大断面図である。
【図9】本発明の第2の実施例に係るホイールの平面図である。
【図10】本発明の第2の実施例に係るホイールに用いたホイール本体の平面図である。
【図11】本発明の第3の実施例に係るホイールの平面図である。
【図12】図11のA−A断面図である。
【図13】本発明の第3の実施例に用いたホイール本体の平面図である。
【図14】本発明の第3の実施例に用いた加飾部材の平面図である。
【符号の説明】
【0047】
1:ホイール本体 2:加飾部材 3:ボルト部材
10:リム部 11:ハブ部 12:スポーク部
13:舌片部 21:スポーク被覆部 24:空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リム部と、ハブ部と、該ハブ部と該リム部を連結する複数のスポーク部とをもつホイール本体と、少なくとも一つの該スポーク部の表面に配置され該ホイール本体に保持された樹脂製の加飾部材と、からなる車両用ホイールであって、
該加飾部材と該スポーク部との間には、該ホイール本体の軸方向に高さを有し該ホイール本体の軸方向外側から視認可能な空間が形成されていることを特徴とする車両用ホイール。
【請求項2】
前記リム部は前記スポーク部の延長上に内周方向へ向かって突出する舌片部をもち、該舌片部の下側の前記スポーク部の延長部には凹部をもち、前記加飾部材は一端部が該舌片部に固定されている請求項1に記載の車両用ホイール。
【請求項3】
前記加飾部材は前記舌片部の左右両側を覆う壁部をもつ請求項2に記載の車両用ホイール。
【請求項1】
リム部と、ハブ部と、該ハブ部と該リム部を連結する複数のスポーク部とをもつホイール本体と、少なくとも一つの該スポーク部の表面に配置され該ホイール本体に保持された樹脂製の加飾部材と、からなる車両用ホイールであって、
該加飾部材と該スポーク部との間には、該ホイール本体の軸方向に高さを有し該ホイール本体の軸方向外側から視認可能な空間が形成されていることを特徴とする車両用ホイール。
【請求項2】
前記リム部は前記スポーク部の延長上に内周方向へ向かって突出する舌片部をもち、該舌片部の下側の前記スポーク部の延長部には凹部をもち、前記加飾部材は一端部が該舌片部に固定されている請求項1に記載の車両用ホイール。
【請求項3】
前記加飾部材は前記舌片部の左右両側を覆う壁部をもつ請求項2に記載の車両用ホイール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−23411(P2009−23411A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186238(P2007−186238)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
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