車両用ボードの保持構造
【課題】車両用ボードの少なくとも一部を開放状態で容易に保持することが可能な車両用ボードの保持構造を提供する。
【解決手段】車両の荷室に設けられた収納部の上方開口を開閉可能な車両用ボード7の少なくとも一部を開放状態で保持するための車両用ボードの保持構造は、車両用ボード7の側端面に設けられた突起部23と、車両の車体1bに設けられ、車両用ボード7の少なくとも一部を開放したときに突起部23を受け入れて保持する凹部31と、車両用ボード7の少なくとも一部を開放する動作に伴って、突起部23に当接して前記突起部23を持ち上げて凹部31に導く案内部32と、を有している。
【解決手段】車両の荷室に設けられた収納部の上方開口を開閉可能な車両用ボード7の少なくとも一部を開放状態で保持するための車両用ボードの保持構造は、車両用ボード7の側端面に設けられた突起部23と、車両の車体1bに設けられ、車両用ボード7の少なくとも一部を開放したときに突起部23を受け入れて保持する凹部31と、車両用ボード7の少なくとも一部を開放する動作に伴って、突起部23に当接して前記突起部23を持ち上げて凹部31に導く案内部32と、を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の荷室に設けられた収納部の上方開口を開閉可能な車両用ボードの少なくとも一部を開放状態で保持するための車両用ボードの保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両後方に形成された荷室の床面に、各種の荷物を収納可能な上方開口を備えた収納部が設けられ、荷室の床面をフラットな状態にするべく、収納部の上方開口を開閉可能な車両用ボードで覆うように構成した車両用荷室構造が知られている。
【0003】
また、荷物の収納・取出しの容易化を図るために、収納部を開閉可能なカバー部材をその前端側を支点にして後端側を上方に回転させ、ホルダによってカバー部材を開放状態に保持する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−260319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1に記載の技術は、カバー部材の回転動作によって弾性を有するホルダを変形させながらカバー部材の後端をホルダの湾曲部に収めることによって、カバー部材を開放状態に保持するものである。
【0006】
このため、カバー部材を開放状態で保持するためには、カバー部材の保持力を担うホルダの弾性力に抗してカバー部材をホルダに向けて押し込む必要があり、操作が容易ではないという課題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、車両用ボードの少なくとも一部を開放状態で容易に保持することが可能な車両用ボードの保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、車両の荷室に設けられた収納部の上方開口を開閉可能な車両用ボードの少なくとも一部を開放状態で保持するための車両用ボードの保持構造であって、前記車両用ボードの側端面に設けられた突起部と、前記車両の車体に設けられ、前記車両用ボードの少なくとも一部を開放したときに前記突起部を受け入れて保持する凹部と、前記車両用ボードの少なくとも一部を開放する動作に伴って、前記突起部に当接して前記突起部を持ち上げて前記凹部に導く案内部と、を有するものである。
【0009】
この発明によれば、操作者が車両用ボードの少なくとも一部を開放させる動作を行うに伴い、車両用ボードの側端面に設けられた突起部が、案内部に当接して自動的に持ち上がって凹部に導かれ、当該凹部に受け入れられて保持される。
したがって、車両用ボードの少なくとも一部を開放状態で容易に保持することが可能な車両用ボードの保持構造を提供できる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用ボードの保持構造において、前記案内部には、前記車両用ボードの少なくとも一部の開放の際に前記突起部が摺動可能な線状の隆起部が、前記突起部の移動方向に沿って形成されているものである。
【0011】
この発明によれば、請求項1に記載の発明の作用効果に加えて、突起部は、案内部の線状の隆起部上で、摩擦力が低減されて滑り易くなる。したがって、より少ない操作力で突起部を凹部に導いて保持させることが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両用ボードの保持構造において、前記案内部と前記車体との間に、所定幅の隙間を形成したものである。
【0013】
この発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の作用効果に加えて、荷物が例えば手提げ袋である場合には、荷室内の案内部と車体との間の隙間内に、例えば手提げ袋のループを手早く引っ掛けて車両の移動時にも手提げ袋から中身が出ないように容易に保持でき、また、手提げ袋のループを隙間内から容易に取外しできる。これにより、荷室の利便性が向上する。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の車両用ボードの保持構造において、前記突起部は、前記車両用ボードの側端面に交換可能に取り付けられているものである。
【0015】
この発明によれば、万一車両用ボードの保持構造に大きな力がかかった場合に、突起部が破損しても、これを交換することにより容易に車両用ボードの保持構造を修復できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両用ボードの少なくとも一部を開放状態で容易に保持することが可能な車両用ボードの保持構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用ボードが適用される車両の後部の斜視図である。
【図2】車両後端部の扉を開放した場合の荷室を示す斜視図である。
【図3】車両後端部の扉を開放し車両用ボードの一部を略鉛直方向に立てて車両用ボードをセパレートモードに設定した場合の荷室を示す斜視図である。
【図4】車両用ボードの分解斜視図である。
【図5】図4のV−V線に沿う断面図である。
【図6】図4のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】車両用ボードを車両の車体に回動可能に取り付ける様子を示す概略斜視図である。
【図8】第2ボード部を開放状態で保持するための車両用ボードの保持構造を示す概略斜視図である。
【図9】車両用ボードの折曲げ及び折畳み動作を説明するための幅方向中央部の断面図であり、(a)はノーマルモードの場合を示し、(b)はリバーシブルモードの場合を示す。
【図10】車両用ボードの折曲げ及び折畳み動作を説明するための幅方向両側部の断面図であり、(a)はノーマルモードの場合を示し、(b)はリバーシブルモードの場合を示す。
【図11】ヒンジ機構の機能について説明するための模式図であり、(a)は本実施形態を示し、(b)は第1ヒンジ部材のみで第1ボード部と第2ボード部とを連結した比較例を示し、(c)は第1ボード部と第2ボード部とが略水平方向に展延した状態の比較例を示す。
【図12】車両用ボードをトールモードに設定した場合の荷室を示す斜視図である。
【図13】車両用ボードをリバーシブルモードに設定した場合の荷室を示す斜視図である。
【図14】車両用ボードをフルモードに設定した場合の荷室を示す斜視図である。
【図15】図8に示すホルダの拡大斜視図である。
【図16】ホルダの縦断面図である。
【図17】手提げ袋のループを引っ掛け可能な隙間の幅を説明するための模式図である。
【図18】第2ボード部が開放状態で保持される様子を示す概略斜視図である。
【図19】突起部が凹部に入り込む様子を示すホルダの本体部に対向する側から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用ボードが適用される車両の後部の斜視図である。なお、本実施形態では、「前」は車両1のフロント側、「後」は車両1のリア側、「右」は車両1の運転者から見て右側、「左」は車両1の運転者から見て左側、「上」は鉛直上方側、「下」は鉛直下方側とする。
【0019】
図1に示すように、車両1は、車両1の後端部に形成された開口部1aと、この開口部1aを開閉自在に覆うように設けられた扉2とを備えた、例えばハッチバックタイプ、ワゴンタイプ、クーペタイプ等の自動車である。
【0020】
開口部1aは、ここでは、バックドアタイプの扉2で開閉される開口部を例示している。但し、開口部1aは、サイドドア、トランク等の扉によって開閉される開口部であってもよい。扉2は、どのようなタイプの扉でもよいが、ここでは、跳ね上げタイプのヒンジ式ドアを例示している。但し、扉2は、観音開きのドア、スライドドア、横方向に開くタイプのヒンジ式ドア、トランク等であってもよい。
【0021】
車両1の扉2と後部座席3との間に、荷室4が形成されている。荷室4は、車両1内において、荷物を積載したり、収納したりする空間を形成する部位である。後部座席3のシートバック3aを前方に倒すことにより、車両1の内部は、床面5が荷室4側と車室側とで繋がるスルーの状態となる。
【0022】
図2は、車両後端部の扉を開放した場合の荷室を示す斜視図である。図3は、車両後端部の扉を開放し車両用ボードの一部を略鉛直方向に立てて車両用ボードをセパレートモードに設定した場合の荷室を示す斜視図である。
【0023】
図2に示すように、車両1(図1参照)には、車両1後方に形成された荷室4と、荷室4の床面5下に設けられ、各種の荷物を収納可能な上方開口6aを備えた凹状の収納部6(図3参照)と、荷室4の床面5をフラットな状態にするべく、収納部6の上方開口6aを開閉可能に覆うための第1ボード部8と第2ボード部9とが連結されてなる車両用ボード7とを有する車両用荷室構造50が設けられている。なお、図2中の符号27は、車両用ボード7の持上げ等の操作を行うための操作部としてのストラップを示す。
【0024】
図3に示すように、収納部6内の左右の両内壁には、上下方向に延在する溝部6bが形成されており、収納部6内を複数のエリアに分割するための矩形板状のパーティション6cの左右の両側端部が溝部6b内に嵌挿されている。図3では、溝部6bは一箇所のみ記載されているが、二箇所以上形成されてさらに多くのエリアに分割可能とされてもよい。なお、図3の第2ボード部9における網点を施した面9bは、裏面であることを示す(図12、図13、図14でも同様)。
【0025】
車両用荷室構造50は、各種の荷物を収納部6に収納して車両用ボード7で閉塞したり(いわゆる床下収納)、車両用ボード7の上に荷物を積載したり、車両用ボード7の一部又は全部を開放状態にして荷物を収納したりすることが可能に構成されている。
【0026】
収納部6は、荷室4の前端部から後端部にわたって、床面5から下方に窪んだ状態に形成された略直方体形状の収納空間からなる。収納部6は、内壁および内底面が樹脂製の板部材によって形成されており、例えば、金属製平板部材からなるフロアパネル(図示せず)の上方に配置されている。
【0027】
図4は、車両用ボードの分解斜視図である。図5は、図4のV−V線に沿う断面図である。図6は、図4のVI−VI線に沿う断面図である。なお、図4〜図6においては、第1ボード部8及び第2ボード部9の裏面8b,9bをそれぞれ上方に向けている。
【0028】
図4に示すように、車両用ボード7は、略矩形状の第1ボード部8と、第1ボード部8とヒンジ機構10を介して連結され第1ボード部8とほぼ同等な略矩形状の第2ボード部9とを有している。
【0029】
ヒンジ機構10は、第1ボード部8の表面8a側の縁部8c(図5参照)と第2ボード部9の裏面9b側の縁部9dとを繋ぐ第1ヒンジ部材11と、第1ボード部8の裏面8b側の縁部8dと第2ボード部9の表面9a側の縁部9c(図6参照)とを繋ぐ第2ヒンジ部材12とを備えている。
【0030】
ここでは、第1ヒンジ部材11は、第1ボード部8の表面8a側の縁部8c(図5参照)から延伸して設けられていて、第2ボード部9の裏面9b側の縁部9dに連結されている。また、第2ヒンジ部材12は、第2ボード部9の表面9a側の縁部9c(図6参照)から延伸して設けられていて、第1ボード部8の裏面8b側の縁部8dに連結されている。
【0031】
このように構成すれば、第1ボード部8と第2ボード部9との連結作業を裏面8b,9b側から一括して行うことができるため、車両用ボード7の製造が容易になる。また、車両用ボード7の表面8a,9a側から連結箇所が見えなくなるため、見栄えの良いものとなる。
【0032】
図5及び図6に示すように、第1ヒンジ部材11は、2箇所のヒンジA及びヒンジBにおいて折曲げ可能な延伸方向に短い板状を呈しており、第2ヒンジ部材12は、2箇所のヒンジC及びヒンジDにおいて折曲げ可能な延伸方向に短い板状を呈している。
【0033】
第1ヒンジ部材11及び第2ヒンジ部材12の延伸方向の各端部11a,12aには、それぞれ第1貫通孔13及び第2貫通孔14が複数形成される。一方、第1ボード部8及び第2ボード部9には、それぞれ第1ナット15及び第2ナット16が複数設置されている。そして、第1ヒンジ部材11は、第1ボルト17を第1貫通孔13に挿通させて第2ナット16にねじ込むことによって、第2ボード部9に連結されている。また、第2ヒンジ部材12は、第2ボルト18を第2貫通孔14に挿通させて第1ナット15にねじ込むことによって、第1ボード部8に連結されている。このように構成すれば、容易かつ強固に第1ボード部8と第2ボード部9とを連結することができる。但し、連結方法は、ボルトとナットによる締結に限定されるものではなく、例えば溶着や接着等の他の手段によってもよい。
【0034】
第1ヒンジ部材11の端部11aが連結される第2ボード部9の裏面9b側の縁部9dと、第2ヒンジ部材12の端部12aが連結される第1ボード部8の裏面8b側の縁部8dとは、それぞれ裏面9b,8bの連結箇所以外の部分の外面よりも各ボード部9,8の厚さ方向内側に凹んだ座部(座面)を形成している。これにより、端部11a,12aがそれぞれ縁部9d,8dに連結された状態で、端部11a,12aの厚さ方向外側端面を、それぞれ裏面9b,8bの連結箇所以外の部分の外面とほぼ同一平面に位置させることが可能となっている。
【0035】
本実施形態では、第1ボード部8と第1ヒンジ部材11、及び第2ボード部9と第2ヒンジ部材12は、例えばブロー成形を利用して、それぞれ同種の樹脂で一体成形されている。このように構成すれば、車両用ボード7の部品点数及び製造コストを低減することができる。但し、第1ボード部8と第1ヒンジ部材11、及び第2ボード部9と第2ヒンジ部材12は、溶着や接着等の他の手段によって固着されてもよい。
【0036】
第1ボード部8と第2ボード部9との板厚は略同等となるように形成されている。ここでは、第1ナット15及び第2ナット16は、それぞれ第1ボード部8及び第2ボード部9にインサート成形されている。
【0037】
また、第1ボード部8及び第2ボード部9の表面8a,9aには、表皮(図示せず)が貼着されてもよい。表皮は、例えばフェルトや不織布であり、車両用ボード7の意匠性を高めると共に、荷物の滑り止め部材として機能する。一方、第1ボード部8及び第2ボード部9の裏面8b,9bには、成形面がそのまま使用されてもよいし、所定の材料のシートが貼着されてもよい。裏面8b,9bは、汚れ等が付着した場合に、拭いて容易に汚れ等を除去できるような面に形成することが好ましい。
【0038】
図4に戻って、第1ヒンジ部材11は、車両用ボード7の左右の幅方向(第1ボード部8と第2ボード部9との間の折曲げ線方向)において中央部に設けられており、第2ヒンジ部材12は、車両用ボード7の左右の幅方向(折曲げ線方向)において両側部に一対設けられている。
【0039】
また、第1ボード部8の前方の側端面19には、車両用ボード7を車両1の車体に回動可能に取り付けるためのピン20を備えた軸部21がねじ部材(図示せず)により固定される。さらに、第2ボード部9の後方の側端面22には、車両用ボード7の一部である第2ボード部9を開放状態で保持するための突起部23を備えた被係合部24がねじ部材(図示せず)により固定される。
【0040】
図7に示すように、車両1(図1参照)の車体には、保持ブロック25がねじ締結等により固定されており、この保持ブロック25に、軸部21のピン20を回動可能に保持するための一組の爪片を備えた保持部26が形成されている。この保持部26に対してピン20を図7中の矢印方向に移動させることにより、保持部26の一組の爪片が相互に離間する方向に弾性変形してピン20を保持部26に係合・離脱させることができる。そして、ピン20が保持部26に保持された状態で、車両用ボード7は、車両1の車体に回動可能に取り付けられることになる。
【0041】
図8に示すように、車両1(図1参照)の車体1bには、ホルダ30が固定されており、このホルダ30に、被係合部24の突起部23を受け入れて保持する凹部31と、ヒンジラインLa(図2参照)を中心とした第2ボード部9の回動動作に伴って突起部23に当接してこれを持ち上げて凹部31に導く案内部32とが設けられている。これにより、車両用ボード7の一部である第2ボード部9が開放状態で保持され、車両用ボード7がセパレートモードに設定され得る。ここで、セパレートモードは、荷室4(図3参照)を前後に分割するように第2ボード部9を略鉛直方向に立てて車両用ボード7を使用するモードである。
【0042】
次に、前記のように構成された車両用ボード7の折曲げ及び折畳み動作について説明する。図9は、車両用ボードの折曲げ及び折畳み動作を説明するための幅方向中央部の断面図であり、(a)はノーマルモードの場合を示し、(b)はリバーシブルモードの場合を示す。図10は、車両用ボードの折曲げ及び折畳み動作を説明するための幅方向両側部の断面図であり、(a)はノーマルモードの場合を示し、(b)はリバーシブルモードの場合を示す。ここで、ノーマルモードは、表面8a,9aを上に向けて車両用ボード7を使用するモードであり(図2参照)、リバーシブルモードは、裏面8b,9bを上に向けて車両用ボード7を使用するモードである(図13参照)。
【0043】
図9及び図10に示すように、操作者が車両用ボード7のうちの第2ボード部9を持上げると、第2ボード部9は、図9及び図10中の矢印方向に回動して、略鉛直方向に沿うように立てた状態(90度回動;符号9vで示す位置)に折り曲げられ、さらに回動して、水平方向に沿うように寝かせた状態(180度回動;符号9hで示す位置)に折り畳まれる。
【0044】
第2ボード部9の折曲げ及び折畳み動作は、ノーマルモードにおいては、車両用ボード7の幅方向中央部ではヒンジA(図9(a)参照)を中心とし、車両用ボード7の幅方向両側部ではヒンジC(図10(a)参照)を中心として行われる。この場合、第2ボード部9は、ヒンジA及びヒンジCに基づいて形成されるヒンジラインLa(図2参照)を中心として回動される。一方、リバーシブルモードにおいては、車両用ボード7の幅方向中央部ではヒンジB(図9(b)参照)を中心とし、車両用ボード7の幅方向両側部ではヒンジD(図10(b)参照)を中心として行われる。この場合、第2ボード部9は、ヒンジB及びヒンジDに基づいて形成されるヒンジラインLb(図13参照)を中心として回動される。
【0045】
ここで、車両用ボード7の表面8a,9a側にヒンジA,Cが形成されると共に、裏面8b,9b側にもヒンジB,Dが形成される。したがって、第1ボード部8と第2ボード部9とを、表面8a,9a同士が接近する方向に折り曲げることもできるし、裏面8b,9b同士が接近する方向に折り曲げることもできる。これにより、車両用ボード7による収納部6の上方開口6aの開閉操作や荷物の収納・取出しの容易化が図られている。
【0046】
また、車両用ボード7におけるノーマルモード時のヒンジラインLa(図2参照)の位置とリバーシブルモード時のヒンジラインLb(図13参照)の位置とをほぼ同じ位置に設定することにより、ノーマルモード時とリバーシブルモード時とで同じ展開及び折畳み動作が可能となり、操作感覚が同じとなるため操作者に違和感を与えない。
【0047】
図11は、ヒンジ機構の機能について説明するための模式図であり、(a)は本実施形態を示し、(b)は第1ヒンジ部材のみで第1ボード部と第2ボード部とを連結した比較例を示し、(c)は第1ボード部と第2ボード部とが略水平方向に展延した状態の比較例を示す。
【0048】
本実施形態によれば、図11(a)に示すように、車両用ボード7を展開状態にしたとき、第1ヒンジ部材11及び第2ヒンジ部材12が略水平方向に展延する動作をお互いに抑制し合うため、第1ボード部8と第2ボード部9とが相互に離れて車両用ボード7が平面上で大きく広がってしまう事態を防止することができる。しかし、図11(b)に示す比較例では、車両用ボード7を展開状態にしたとき、図11(c)に示すように、第1ヒンジ部材11が、第1ボード部8及び第2ボード部9の各端面から離れてその長さ分だけ略水平方向(図11(c)中の矢印方向)に容易に展延してしまう。
【0049】
したがって本実施形態によれば、複数のボード部8,9が連結されて構成され、収納部6の上方開口6aを開閉する際の操作性が良好な車両用ボード7を提供できる。
また、第1ヒンジ部材や第2ヒンジ部材が略水平方向に展延することがないため、第1ヒンジ部材や第2ヒンジ部材に対して余計な張力がかかったり外部からの攻撃を受けたりすることが防止され、車両用ボード7の耐久性が向上する。
【0050】
また、第1ヒンジ部材11が車両用ボード7の幅方向において中央部に設けられ、第2ヒンジ部材12が車両用ボード7の幅方向において両側部に一対設けられているため、車両用ボード7の展開及び折畳み動作がバランス良く保たれ、収納部6の上方開口6aを開閉する際の操作性がより良好となる。
【0051】
次に、車両用ボード7の各種の使い方について説明する。ノーマルモード(図2参照)とセパレートモード(図3及び図8参照)とについて前記したが、ここでは、さらに、トールモード、リバーシブルモード、フルモードについて説明する。
【0052】
図12は、車両用ボードをトールモードに設定した場合の荷室を示す斜視図である。図13は、車両用ボードをリバーシブルモードに設定した場合の荷室を示す斜視図である。図14は、車両用ボードをフルモードに設定した場合の荷室を示す斜視図である。ここで、トールモードは、第1ボード部8と第2ボード部9とを山折りに曲げた状態で保持して車両用ボード7を使用するモードである。リバーシブルモードは、前記したように裏面8b,9bを上に向けて車両用ボード7を使用するモードである。フルモードは、車両用ボード7を広げた状態で前方に反転して使用するモードである。
【0053】
図12に示すように、トールモードに設定する場合には、操作者は、例えばノーマルモード(図2参照)にある車両用ボード7のストラップ27を持って第2ボード部9を上方に起こした後、第1ボード部8と第2ボード部9とを逆に折り曲げて山折りにする。そして、操作者は、第1ボード部8及び第2ボード部9を前方にスライドさせて、第2ボード部9の後端部を収納部6の両側部に形成された溝部6d内に嵌挿して固定する。
【0054】
図13に示すように、リバーシブルモードに設定する場合には、操作者は、例えばノーマルモード(図2参照)にある車両用ボード7のストラップ27を持って第2ボード部9を上方に起こした後、車両用ボード7を後方に引っ張り、ピン20を保持部26から離脱させることによって、車両用ボード7を保持ブロック25から外す。そして、操作者は、車外で車両用ボード7を裏返してから車内に戻し、車両用ボード7を床面5上でスライドさせるようにして保持ブロック25に取り付ける。
【0055】
図14に示すように、フルモードに設定する場合には、操作者は、例えばノーマルモード(図2参照)にある車両用ボード7のストラップ27を持って第2ボード部9を上方に起こした後、後部座席3を前方に倒すと共に、車両用ボード7を広げた状態で前端を中心にして前方に折り返す。このフルモードでは、荷室4として極めて広い空間が得られ、例えば自転車のような大型の荷物28を荷室4に収納することができる。
【0056】
なお、ノーマルモード(図2参照)から、セパレートモード(図3及び図8参照)、トールモード(図12参照)、リバーシブルモード(図13参照)、フルモード(図13参照)の各モードへの移行について前記したが、車両用ボード7の表裏を逆にして同様の手順を経ることにより、リバーシブルモード(図13参照)から、セパレートモード(図3及び図8参照)、トールモード(図12参照)、ノーマルモード(図2参照)、フルモード(図13参照)の各モードへの移行も可能である。
【0057】
このように、操作性が良好な本実施形態の車両用ボード7によれば、多彩な使い方が可能となり、利便性が向上する。
【0058】
次に、車両用ボード7の一部である第2ボード部9を開放状態で保持するための車両用ボードの保持構造について、さらに詳しく説明する。
図15は、図8に示すホルダの拡大斜視図である。図16は、ホルダの縦断面図である。図17は、手提げ袋のループを引っ掛け可能な隙間の幅を説明するための模式図である。なお、図16の縦断面図は、ホルダ30の凹部31を通らない鉛直面で切断した断面図を示す。
【0059】
図15に示すように、ホルダ30は、車両1(図1参照)の車体1bに、ねじ部材37(図16参照)により固定されており、車両1の両側に一対設けられる。このホルダ30は、外郭を構成する本体部35と、本体部35の内面から車体1b側に向けて連設される支持リブ36(図16参照)とを有している。ホルダ30は、ここでは、樹脂から形成されているが、金属等の他の材料から形成されてもよい。
【0060】
ホルダ30の本体部35は、車両用ボード7の一部である第2ボード部9を開放したときに突起部23(図18参照)を受け入れて保持する凹部31と、第2ボード部9を開放する動作に伴って、突起部23(図18参照)に当接して当該突起部23を持ち上げて凹部31に導く案内部32とを備えている。
【0061】
凹部31は、本体部35の中央上側に形成されており、上方及び車両内側に向けて開口する窪み状の溝を呈している。
【0062】
案内部32は、本体部35の前方上側と後方上側とにそれぞれ設けられており、凹部31側が高くなるように水平面に対して所定の角度傾斜した一対の面を形成している。この案内部32には、第2ボード部9の開放の際に突起部23(図18参照)が摺動可能な線状の隆起部33が、突起部23(図18参照)の移動方向(図18の矢印E方向)に沿って形成されている。
【0063】
なお、突起部23(図18参照)は、車両用ボード7の側端面22(図4参照)に交換可能に取り付けられている。このように構成すれば、万一車両用ボードの保持構造に大きな力がかかった場合に、突起部23が破損しても、これを交換することにより容易に車両用ボード7の保持構造を修復できる。突起部23(図18参照)は、ここでは、樹脂から形成されているが、金属等の他の材料から形成されてもよい。
【0064】
図16に示すように、案内部32と車体1bとの間には、所定幅の隙間34が形成されている。この隙間34は、コンビニやスーパーのレジ袋、デパートの紙袋、巾着タイプの袋、エコバッグ等の手提げ袋の、取っ手としてのループ(図示せず)を引っ掛け可能な寸法に形成されている。手提げ袋は、紙、樹脂、布等の各種材料から形成される。
【0065】
このように構成すれば、荷物が例えば手提げ袋である場合には、荷室4内の案内部32と車体1bとの間の隙間34内に、手提げ袋のループを手早く引っ掛けて車両1の移動時にも手提げ袋から中身が出ないように容易に保持でき、また、手提げ袋のループを隙間34内から容易に取外しできる。これにより、荷室4の利便性が向上する。
【0066】
図17に示すように、手提げ袋のループが、隙間34内に容易に引っ掛かり、隙間34内から容易に外れるように、ホルダ30近傍の車体1bの上面から距離H(例えば2mm)だけ下方位置にある車体側基準点1dと、案内部32の車体1b側の端面(隙間入口)38との距離である隙間34の幅Wが所定幅に規定されている。
【0067】
また、図16に示すように、ホルダ30の支持リブ36の先端に対向する車体1bの部分に、凹溝1cが形成されている。ホルダ30は、支持リブ36の先端が車体1bの凹溝1c内に差し込まれた状態で車体1bに固定されている。これにより、手提げ袋のループが、隙間34の下方においてホルダ30の内部(支持リブ36と車体1bとの間)に挟まってしまうことが防止される。
【0068】
次に、前記のように構成された車両用ボードの保持構造の作用について説明する。図18は、第2ボード部が開放状態で保持される様子を示す概略斜視図である。図19は、突起部が凹部に入り込む様子を示すホルダの本体部に対向する側から見た模式図である。
【0069】
図18に示すように、車両用ボード7の一部である第2ボード部9を開放状態で保持する場合、操作者は、まず、例えばノーマルモード(図2参照)にある車両用ボード7のストラップ27(図2参照)を持って第2ボード部9を上方に起こし、第2ボード部9を前方に押してヒンジラインLa(図2参照)の回りに回動させる。このような第2ボード部9を開放する動作に伴って、第2ボード部9の突起部23が図18中の矢印E方向に移動して、突起部23と案内部32とが当接する。
【0070】
図19に示すように、操作者がさらに第2ボード部9を前方に押してヒンジラインLa(図2参照)の回りに回動させると、突起部23は、案内部32の傾斜した面に形成された隆起部33に沿って摺動しながら矢印E方向に移動を続ける(図19の符号23aで示す位置)。ここで、案内部32は突起部23に当接して突起部23を上方に持ち上げるように作用する。突起部23は、この案内部32によって凹部31に導かれ、凹部31の上方に達したときに、第2ボード部9(図18参照)の自重により下方に移動して凹部31に受け入れられて保持される(図19の符号23bで示す位置)。なお、図19中の符号Fは、案内部32に当接しない場合における突起部23の回動中心寄りの端点の軌跡を示す。
【0071】
そして、突起部23が凹部31に保持された状態で、第2ボード部9は略鉛直方向に立てられて車両用ボード7がセパレートモードに設定される。なお、例えば第2ボード部9がヒンジラインLa(図2参照)の回りに前方に180度回動されて第1ボード部8上に折畳まれた状態から、後方に回動される場合には、突起部23は、ホルダ30の前方に形成された案内部32の隆起部33に沿って摺動しながら後方に移動して凹部31に導かれて保持される。
【0072】
このように本実施形態において、車両1の荷室4に設けられた収納部6の上方開口6aを開閉可能な車両用ボード7の少なくとも一部を開放状態で保持するための車両用ボードの保持構造は、車両用ボード7の一部である第2ボード部9の側端面22に設けられた突起部23と、車両1の車体1bに設けられ、第2ボード部9を開放したときに突起部23を受け入れて保持する凹部31と、第2ボード部9を開放する動作に伴って、突起部23に当接して前記突起部23を持ち上げて凹部31に導く案内部32と、を有している。
【0073】
したがって本実施形態によれば、操作者が車両用ボード7の一部である第2ボード部9を開放させる動作を行うに伴い、第2ボード部9の側端面22に設けられた突起部23が、案内部32に当接して自動的に持ち上がって凹部31に導かれ、当該凹部31に受け入れられて保持される。
したがって、車両用ボードの一部である第2ボード部9を開放状態で容易に保持することが可能な車両用ボードの保持構造を提供できる。
【0074】
また、案内部32には、車両用ボード7の一部である第2ボード部9の開放の際に突起部23が摺動可能な線状の隆起部33が、突起部23の移動方向に沿って形成されているため、突起部23は、案内部32の線状の隆起部33上で、摩擦力が低減されて滑り易くなる。したがって、より少ない操作力で突起部23を凹部31に導いて保持させることが可能となる。
【0075】
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、実施形態に記載した構成を適宜組み合わせ乃至選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0076】
例えば、凹部31は、ホルダ30において、左右方向に開口する水平方向の溝であってもよいし、上下方向に開口する鉛直方向の溝であってもよい。また、ホルダ30が前後に分割された一対の分割部で構成され、一対の分割部の間の隙間が凹部31として形成されてもよい。
【0077】
また、前記実施形態では、第1のボード部8と第2ボード部9とが連結されてなる車両用ボード7の一部である第2ボード部9を開放状態で保持するための構造について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、1枚のボード部からなる車両用ボードの全体を回動させて開放状態で保持するための構造にも適用可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 車両
1b 車体
4 荷室
6 収納部
6a 上方開口
7 車両用ボード
8 第1ボード部
9 第2ボード部
22 側端面
23 突起部
30 ホルダ
31 凹部
32 案内部
33 隆起部
34 隙間
W 幅
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の荷室に設けられた収納部の上方開口を開閉可能な車両用ボードの少なくとも一部を開放状態で保持するための車両用ボードの保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両後方に形成された荷室の床面に、各種の荷物を収納可能な上方開口を備えた収納部が設けられ、荷室の床面をフラットな状態にするべく、収納部の上方開口を開閉可能な車両用ボードで覆うように構成した車両用荷室構造が知られている。
【0003】
また、荷物の収納・取出しの容易化を図るために、収納部を開閉可能なカバー部材をその前端側を支点にして後端側を上方に回転させ、ホルダによってカバー部材を開放状態に保持する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−260319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1に記載の技術は、カバー部材の回転動作によって弾性を有するホルダを変形させながらカバー部材の後端をホルダの湾曲部に収めることによって、カバー部材を開放状態に保持するものである。
【0006】
このため、カバー部材を開放状態で保持するためには、カバー部材の保持力を担うホルダの弾性力に抗してカバー部材をホルダに向けて押し込む必要があり、操作が容易ではないという課題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、車両用ボードの少なくとも一部を開放状態で容易に保持することが可能な車両用ボードの保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、車両の荷室に設けられた収納部の上方開口を開閉可能な車両用ボードの少なくとも一部を開放状態で保持するための車両用ボードの保持構造であって、前記車両用ボードの側端面に設けられた突起部と、前記車両の車体に設けられ、前記車両用ボードの少なくとも一部を開放したときに前記突起部を受け入れて保持する凹部と、前記車両用ボードの少なくとも一部を開放する動作に伴って、前記突起部に当接して前記突起部を持ち上げて前記凹部に導く案内部と、を有するものである。
【0009】
この発明によれば、操作者が車両用ボードの少なくとも一部を開放させる動作を行うに伴い、車両用ボードの側端面に設けられた突起部が、案内部に当接して自動的に持ち上がって凹部に導かれ、当該凹部に受け入れられて保持される。
したがって、車両用ボードの少なくとも一部を開放状態で容易に保持することが可能な車両用ボードの保持構造を提供できる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用ボードの保持構造において、前記案内部には、前記車両用ボードの少なくとも一部の開放の際に前記突起部が摺動可能な線状の隆起部が、前記突起部の移動方向に沿って形成されているものである。
【0011】
この発明によれば、請求項1に記載の発明の作用効果に加えて、突起部は、案内部の線状の隆起部上で、摩擦力が低減されて滑り易くなる。したがって、より少ない操作力で突起部を凹部に導いて保持させることが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両用ボードの保持構造において、前記案内部と前記車体との間に、所定幅の隙間を形成したものである。
【0013】
この発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の作用効果に加えて、荷物が例えば手提げ袋である場合には、荷室内の案内部と車体との間の隙間内に、例えば手提げ袋のループを手早く引っ掛けて車両の移動時にも手提げ袋から中身が出ないように容易に保持でき、また、手提げ袋のループを隙間内から容易に取外しできる。これにより、荷室の利便性が向上する。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の車両用ボードの保持構造において、前記突起部は、前記車両用ボードの側端面に交換可能に取り付けられているものである。
【0015】
この発明によれば、万一車両用ボードの保持構造に大きな力がかかった場合に、突起部が破損しても、これを交換することにより容易に車両用ボードの保持構造を修復できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両用ボードの少なくとも一部を開放状態で容易に保持することが可能な車両用ボードの保持構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用ボードが適用される車両の後部の斜視図である。
【図2】車両後端部の扉を開放した場合の荷室を示す斜視図である。
【図3】車両後端部の扉を開放し車両用ボードの一部を略鉛直方向に立てて車両用ボードをセパレートモードに設定した場合の荷室を示す斜視図である。
【図4】車両用ボードの分解斜視図である。
【図5】図4のV−V線に沿う断面図である。
【図6】図4のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】車両用ボードを車両の車体に回動可能に取り付ける様子を示す概略斜視図である。
【図8】第2ボード部を開放状態で保持するための車両用ボードの保持構造を示す概略斜視図である。
【図9】車両用ボードの折曲げ及び折畳み動作を説明するための幅方向中央部の断面図であり、(a)はノーマルモードの場合を示し、(b)はリバーシブルモードの場合を示す。
【図10】車両用ボードの折曲げ及び折畳み動作を説明するための幅方向両側部の断面図であり、(a)はノーマルモードの場合を示し、(b)はリバーシブルモードの場合を示す。
【図11】ヒンジ機構の機能について説明するための模式図であり、(a)は本実施形態を示し、(b)は第1ヒンジ部材のみで第1ボード部と第2ボード部とを連結した比較例を示し、(c)は第1ボード部と第2ボード部とが略水平方向に展延した状態の比較例を示す。
【図12】車両用ボードをトールモードに設定した場合の荷室を示す斜視図である。
【図13】車両用ボードをリバーシブルモードに設定した場合の荷室を示す斜視図である。
【図14】車両用ボードをフルモードに設定した場合の荷室を示す斜視図である。
【図15】図8に示すホルダの拡大斜視図である。
【図16】ホルダの縦断面図である。
【図17】手提げ袋のループを引っ掛け可能な隙間の幅を説明するための模式図である。
【図18】第2ボード部が開放状態で保持される様子を示す概略斜視図である。
【図19】突起部が凹部に入り込む様子を示すホルダの本体部に対向する側から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用ボードが適用される車両の後部の斜視図である。なお、本実施形態では、「前」は車両1のフロント側、「後」は車両1のリア側、「右」は車両1の運転者から見て右側、「左」は車両1の運転者から見て左側、「上」は鉛直上方側、「下」は鉛直下方側とする。
【0019】
図1に示すように、車両1は、車両1の後端部に形成された開口部1aと、この開口部1aを開閉自在に覆うように設けられた扉2とを備えた、例えばハッチバックタイプ、ワゴンタイプ、クーペタイプ等の自動車である。
【0020】
開口部1aは、ここでは、バックドアタイプの扉2で開閉される開口部を例示している。但し、開口部1aは、サイドドア、トランク等の扉によって開閉される開口部であってもよい。扉2は、どのようなタイプの扉でもよいが、ここでは、跳ね上げタイプのヒンジ式ドアを例示している。但し、扉2は、観音開きのドア、スライドドア、横方向に開くタイプのヒンジ式ドア、トランク等であってもよい。
【0021】
車両1の扉2と後部座席3との間に、荷室4が形成されている。荷室4は、車両1内において、荷物を積載したり、収納したりする空間を形成する部位である。後部座席3のシートバック3aを前方に倒すことにより、車両1の内部は、床面5が荷室4側と車室側とで繋がるスルーの状態となる。
【0022】
図2は、車両後端部の扉を開放した場合の荷室を示す斜視図である。図3は、車両後端部の扉を開放し車両用ボードの一部を略鉛直方向に立てて車両用ボードをセパレートモードに設定した場合の荷室を示す斜視図である。
【0023】
図2に示すように、車両1(図1参照)には、車両1後方に形成された荷室4と、荷室4の床面5下に設けられ、各種の荷物を収納可能な上方開口6aを備えた凹状の収納部6(図3参照)と、荷室4の床面5をフラットな状態にするべく、収納部6の上方開口6aを開閉可能に覆うための第1ボード部8と第2ボード部9とが連結されてなる車両用ボード7とを有する車両用荷室構造50が設けられている。なお、図2中の符号27は、車両用ボード7の持上げ等の操作を行うための操作部としてのストラップを示す。
【0024】
図3に示すように、収納部6内の左右の両内壁には、上下方向に延在する溝部6bが形成されており、収納部6内を複数のエリアに分割するための矩形板状のパーティション6cの左右の両側端部が溝部6b内に嵌挿されている。図3では、溝部6bは一箇所のみ記載されているが、二箇所以上形成されてさらに多くのエリアに分割可能とされてもよい。なお、図3の第2ボード部9における網点を施した面9bは、裏面であることを示す(図12、図13、図14でも同様)。
【0025】
車両用荷室構造50は、各種の荷物を収納部6に収納して車両用ボード7で閉塞したり(いわゆる床下収納)、車両用ボード7の上に荷物を積載したり、車両用ボード7の一部又は全部を開放状態にして荷物を収納したりすることが可能に構成されている。
【0026】
収納部6は、荷室4の前端部から後端部にわたって、床面5から下方に窪んだ状態に形成された略直方体形状の収納空間からなる。収納部6は、内壁および内底面が樹脂製の板部材によって形成されており、例えば、金属製平板部材からなるフロアパネル(図示せず)の上方に配置されている。
【0027】
図4は、車両用ボードの分解斜視図である。図5は、図4のV−V線に沿う断面図である。図6は、図4のVI−VI線に沿う断面図である。なお、図4〜図6においては、第1ボード部8及び第2ボード部9の裏面8b,9bをそれぞれ上方に向けている。
【0028】
図4に示すように、車両用ボード7は、略矩形状の第1ボード部8と、第1ボード部8とヒンジ機構10を介して連結され第1ボード部8とほぼ同等な略矩形状の第2ボード部9とを有している。
【0029】
ヒンジ機構10は、第1ボード部8の表面8a側の縁部8c(図5参照)と第2ボード部9の裏面9b側の縁部9dとを繋ぐ第1ヒンジ部材11と、第1ボード部8の裏面8b側の縁部8dと第2ボード部9の表面9a側の縁部9c(図6参照)とを繋ぐ第2ヒンジ部材12とを備えている。
【0030】
ここでは、第1ヒンジ部材11は、第1ボード部8の表面8a側の縁部8c(図5参照)から延伸して設けられていて、第2ボード部9の裏面9b側の縁部9dに連結されている。また、第2ヒンジ部材12は、第2ボード部9の表面9a側の縁部9c(図6参照)から延伸して設けられていて、第1ボード部8の裏面8b側の縁部8dに連結されている。
【0031】
このように構成すれば、第1ボード部8と第2ボード部9との連結作業を裏面8b,9b側から一括して行うことができるため、車両用ボード7の製造が容易になる。また、車両用ボード7の表面8a,9a側から連結箇所が見えなくなるため、見栄えの良いものとなる。
【0032】
図5及び図6に示すように、第1ヒンジ部材11は、2箇所のヒンジA及びヒンジBにおいて折曲げ可能な延伸方向に短い板状を呈しており、第2ヒンジ部材12は、2箇所のヒンジC及びヒンジDにおいて折曲げ可能な延伸方向に短い板状を呈している。
【0033】
第1ヒンジ部材11及び第2ヒンジ部材12の延伸方向の各端部11a,12aには、それぞれ第1貫通孔13及び第2貫通孔14が複数形成される。一方、第1ボード部8及び第2ボード部9には、それぞれ第1ナット15及び第2ナット16が複数設置されている。そして、第1ヒンジ部材11は、第1ボルト17を第1貫通孔13に挿通させて第2ナット16にねじ込むことによって、第2ボード部9に連結されている。また、第2ヒンジ部材12は、第2ボルト18を第2貫通孔14に挿通させて第1ナット15にねじ込むことによって、第1ボード部8に連結されている。このように構成すれば、容易かつ強固に第1ボード部8と第2ボード部9とを連結することができる。但し、連結方法は、ボルトとナットによる締結に限定されるものではなく、例えば溶着や接着等の他の手段によってもよい。
【0034】
第1ヒンジ部材11の端部11aが連結される第2ボード部9の裏面9b側の縁部9dと、第2ヒンジ部材12の端部12aが連結される第1ボード部8の裏面8b側の縁部8dとは、それぞれ裏面9b,8bの連結箇所以外の部分の外面よりも各ボード部9,8の厚さ方向内側に凹んだ座部(座面)を形成している。これにより、端部11a,12aがそれぞれ縁部9d,8dに連結された状態で、端部11a,12aの厚さ方向外側端面を、それぞれ裏面9b,8bの連結箇所以外の部分の外面とほぼ同一平面に位置させることが可能となっている。
【0035】
本実施形態では、第1ボード部8と第1ヒンジ部材11、及び第2ボード部9と第2ヒンジ部材12は、例えばブロー成形を利用して、それぞれ同種の樹脂で一体成形されている。このように構成すれば、車両用ボード7の部品点数及び製造コストを低減することができる。但し、第1ボード部8と第1ヒンジ部材11、及び第2ボード部9と第2ヒンジ部材12は、溶着や接着等の他の手段によって固着されてもよい。
【0036】
第1ボード部8と第2ボード部9との板厚は略同等となるように形成されている。ここでは、第1ナット15及び第2ナット16は、それぞれ第1ボード部8及び第2ボード部9にインサート成形されている。
【0037】
また、第1ボード部8及び第2ボード部9の表面8a,9aには、表皮(図示せず)が貼着されてもよい。表皮は、例えばフェルトや不織布であり、車両用ボード7の意匠性を高めると共に、荷物の滑り止め部材として機能する。一方、第1ボード部8及び第2ボード部9の裏面8b,9bには、成形面がそのまま使用されてもよいし、所定の材料のシートが貼着されてもよい。裏面8b,9bは、汚れ等が付着した場合に、拭いて容易に汚れ等を除去できるような面に形成することが好ましい。
【0038】
図4に戻って、第1ヒンジ部材11は、車両用ボード7の左右の幅方向(第1ボード部8と第2ボード部9との間の折曲げ線方向)において中央部に設けられており、第2ヒンジ部材12は、車両用ボード7の左右の幅方向(折曲げ線方向)において両側部に一対設けられている。
【0039】
また、第1ボード部8の前方の側端面19には、車両用ボード7を車両1の車体に回動可能に取り付けるためのピン20を備えた軸部21がねじ部材(図示せず)により固定される。さらに、第2ボード部9の後方の側端面22には、車両用ボード7の一部である第2ボード部9を開放状態で保持するための突起部23を備えた被係合部24がねじ部材(図示せず)により固定される。
【0040】
図7に示すように、車両1(図1参照)の車体には、保持ブロック25がねじ締結等により固定されており、この保持ブロック25に、軸部21のピン20を回動可能に保持するための一組の爪片を備えた保持部26が形成されている。この保持部26に対してピン20を図7中の矢印方向に移動させることにより、保持部26の一組の爪片が相互に離間する方向に弾性変形してピン20を保持部26に係合・離脱させることができる。そして、ピン20が保持部26に保持された状態で、車両用ボード7は、車両1の車体に回動可能に取り付けられることになる。
【0041】
図8に示すように、車両1(図1参照)の車体1bには、ホルダ30が固定されており、このホルダ30に、被係合部24の突起部23を受け入れて保持する凹部31と、ヒンジラインLa(図2参照)を中心とした第2ボード部9の回動動作に伴って突起部23に当接してこれを持ち上げて凹部31に導く案内部32とが設けられている。これにより、車両用ボード7の一部である第2ボード部9が開放状態で保持され、車両用ボード7がセパレートモードに設定され得る。ここで、セパレートモードは、荷室4(図3参照)を前後に分割するように第2ボード部9を略鉛直方向に立てて車両用ボード7を使用するモードである。
【0042】
次に、前記のように構成された車両用ボード7の折曲げ及び折畳み動作について説明する。図9は、車両用ボードの折曲げ及び折畳み動作を説明するための幅方向中央部の断面図であり、(a)はノーマルモードの場合を示し、(b)はリバーシブルモードの場合を示す。図10は、車両用ボードの折曲げ及び折畳み動作を説明するための幅方向両側部の断面図であり、(a)はノーマルモードの場合を示し、(b)はリバーシブルモードの場合を示す。ここで、ノーマルモードは、表面8a,9aを上に向けて車両用ボード7を使用するモードであり(図2参照)、リバーシブルモードは、裏面8b,9bを上に向けて車両用ボード7を使用するモードである(図13参照)。
【0043】
図9及び図10に示すように、操作者が車両用ボード7のうちの第2ボード部9を持上げると、第2ボード部9は、図9及び図10中の矢印方向に回動して、略鉛直方向に沿うように立てた状態(90度回動;符号9vで示す位置)に折り曲げられ、さらに回動して、水平方向に沿うように寝かせた状態(180度回動;符号9hで示す位置)に折り畳まれる。
【0044】
第2ボード部9の折曲げ及び折畳み動作は、ノーマルモードにおいては、車両用ボード7の幅方向中央部ではヒンジA(図9(a)参照)を中心とし、車両用ボード7の幅方向両側部ではヒンジC(図10(a)参照)を中心として行われる。この場合、第2ボード部9は、ヒンジA及びヒンジCに基づいて形成されるヒンジラインLa(図2参照)を中心として回動される。一方、リバーシブルモードにおいては、車両用ボード7の幅方向中央部ではヒンジB(図9(b)参照)を中心とし、車両用ボード7の幅方向両側部ではヒンジD(図10(b)参照)を中心として行われる。この場合、第2ボード部9は、ヒンジB及びヒンジDに基づいて形成されるヒンジラインLb(図13参照)を中心として回動される。
【0045】
ここで、車両用ボード7の表面8a,9a側にヒンジA,Cが形成されると共に、裏面8b,9b側にもヒンジB,Dが形成される。したがって、第1ボード部8と第2ボード部9とを、表面8a,9a同士が接近する方向に折り曲げることもできるし、裏面8b,9b同士が接近する方向に折り曲げることもできる。これにより、車両用ボード7による収納部6の上方開口6aの開閉操作や荷物の収納・取出しの容易化が図られている。
【0046】
また、車両用ボード7におけるノーマルモード時のヒンジラインLa(図2参照)の位置とリバーシブルモード時のヒンジラインLb(図13参照)の位置とをほぼ同じ位置に設定することにより、ノーマルモード時とリバーシブルモード時とで同じ展開及び折畳み動作が可能となり、操作感覚が同じとなるため操作者に違和感を与えない。
【0047】
図11は、ヒンジ機構の機能について説明するための模式図であり、(a)は本実施形態を示し、(b)は第1ヒンジ部材のみで第1ボード部と第2ボード部とを連結した比較例を示し、(c)は第1ボード部と第2ボード部とが略水平方向に展延した状態の比較例を示す。
【0048】
本実施形態によれば、図11(a)に示すように、車両用ボード7を展開状態にしたとき、第1ヒンジ部材11及び第2ヒンジ部材12が略水平方向に展延する動作をお互いに抑制し合うため、第1ボード部8と第2ボード部9とが相互に離れて車両用ボード7が平面上で大きく広がってしまう事態を防止することができる。しかし、図11(b)に示す比較例では、車両用ボード7を展開状態にしたとき、図11(c)に示すように、第1ヒンジ部材11が、第1ボード部8及び第2ボード部9の各端面から離れてその長さ分だけ略水平方向(図11(c)中の矢印方向)に容易に展延してしまう。
【0049】
したがって本実施形態によれば、複数のボード部8,9が連結されて構成され、収納部6の上方開口6aを開閉する際の操作性が良好な車両用ボード7を提供できる。
また、第1ヒンジ部材や第2ヒンジ部材が略水平方向に展延することがないため、第1ヒンジ部材や第2ヒンジ部材に対して余計な張力がかかったり外部からの攻撃を受けたりすることが防止され、車両用ボード7の耐久性が向上する。
【0050】
また、第1ヒンジ部材11が車両用ボード7の幅方向において中央部に設けられ、第2ヒンジ部材12が車両用ボード7の幅方向において両側部に一対設けられているため、車両用ボード7の展開及び折畳み動作がバランス良く保たれ、収納部6の上方開口6aを開閉する際の操作性がより良好となる。
【0051】
次に、車両用ボード7の各種の使い方について説明する。ノーマルモード(図2参照)とセパレートモード(図3及び図8参照)とについて前記したが、ここでは、さらに、トールモード、リバーシブルモード、フルモードについて説明する。
【0052】
図12は、車両用ボードをトールモードに設定した場合の荷室を示す斜視図である。図13は、車両用ボードをリバーシブルモードに設定した場合の荷室を示す斜視図である。図14は、車両用ボードをフルモードに設定した場合の荷室を示す斜視図である。ここで、トールモードは、第1ボード部8と第2ボード部9とを山折りに曲げた状態で保持して車両用ボード7を使用するモードである。リバーシブルモードは、前記したように裏面8b,9bを上に向けて車両用ボード7を使用するモードである。フルモードは、車両用ボード7を広げた状態で前方に反転して使用するモードである。
【0053】
図12に示すように、トールモードに設定する場合には、操作者は、例えばノーマルモード(図2参照)にある車両用ボード7のストラップ27を持って第2ボード部9を上方に起こした後、第1ボード部8と第2ボード部9とを逆に折り曲げて山折りにする。そして、操作者は、第1ボード部8及び第2ボード部9を前方にスライドさせて、第2ボード部9の後端部を収納部6の両側部に形成された溝部6d内に嵌挿して固定する。
【0054】
図13に示すように、リバーシブルモードに設定する場合には、操作者は、例えばノーマルモード(図2参照)にある車両用ボード7のストラップ27を持って第2ボード部9を上方に起こした後、車両用ボード7を後方に引っ張り、ピン20を保持部26から離脱させることによって、車両用ボード7を保持ブロック25から外す。そして、操作者は、車外で車両用ボード7を裏返してから車内に戻し、車両用ボード7を床面5上でスライドさせるようにして保持ブロック25に取り付ける。
【0055】
図14に示すように、フルモードに設定する場合には、操作者は、例えばノーマルモード(図2参照)にある車両用ボード7のストラップ27を持って第2ボード部9を上方に起こした後、後部座席3を前方に倒すと共に、車両用ボード7を広げた状態で前端を中心にして前方に折り返す。このフルモードでは、荷室4として極めて広い空間が得られ、例えば自転車のような大型の荷物28を荷室4に収納することができる。
【0056】
なお、ノーマルモード(図2参照)から、セパレートモード(図3及び図8参照)、トールモード(図12参照)、リバーシブルモード(図13参照)、フルモード(図13参照)の各モードへの移行について前記したが、車両用ボード7の表裏を逆にして同様の手順を経ることにより、リバーシブルモード(図13参照)から、セパレートモード(図3及び図8参照)、トールモード(図12参照)、ノーマルモード(図2参照)、フルモード(図13参照)の各モードへの移行も可能である。
【0057】
このように、操作性が良好な本実施形態の車両用ボード7によれば、多彩な使い方が可能となり、利便性が向上する。
【0058】
次に、車両用ボード7の一部である第2ボード部9を開放状態で保持するための車両用ボードの保持構造について、さらに詳しく説明する。
図15は、図8に示すホルダの拡大斜視図である。図16は、ホルダの縦断面図である。図17は、手提げ袋のループを引っ掛け可能な隙間の幅を説明するための模式図である。なお、図16の縦断面図は、ホルダ30の凹部31を通らない鉛直面で切断した断面図を示す。
【0059】
図15に示すように、ホルダ30は、車両1(図1参照)の車体1bに、ねじ部材37(図16参照)により固定されており、車両1の両側に一対設けられる。このホルダ30は、外郭を構成する本体部35と、本体部35の内面から車体1b側に向けて連設される支持リブ36(図16参照)とを有している。ホルダ30は、ここでは、樹脂から形成されているが、金属等の他の材料から形成されてもよい。
【0060】
ホルダ30の本体部35は、車両用ボード7の一部である第2ボード部9を開放したときに突起部23(図18参照)を受け入れて保持する凹部31と、第2ボード部9を開放する動作に伴って、突起部23(図18参照)に当接して当該突起部23を持ち上げて凹部31に導く案内部32とを備えている。
【0061】
凹部31は、本体部35の中央上側に形成されており、上方及び車両内側に向けて開口する窪み状の溝を呈している。
【0062】
案内部32は、本体部35の前方上側と後方上側とにそれぞれ設けられており、凹部31側が高くなるように水平面に対して所定の角度傾斜した一対の面を形成している。この案内部32には、第2ボード部9の開放の際に突起部23(図18参照)が摺動可能な線状の隆起部33が、突起部23(図18参照)の移動方向(図18の矢印E方向)に沿って形成されている。
【0063】
なお、突起部23(図18参照)は、車両用ボード7の側端面22(図4参照)に交換可能に取り付けられている。このように構成すれば、万一車両用ボードの保持構造に大きな力がかかった場合に、突起部23が破損しても、これを交換することにより容易に車両用ボード7の保持構造を修復できる。突起部23(図18参照)は、ここでは、樹脂から形成されているが、金属等の他の材料から形成されてもよい。
【0064】
図16に示すように、案内部32と車体1bとの間には、所定幅の隙間34が形成されている。この隙間34は、コンビニやスーパーのレジ袋、デパートの紙袋、巾着タイプの袋、エコバッグ等の手提げ袋の、取っ手としてのループ(図示せず)を引っ掛け可能な寸法に形成されている。手提げ袋は、紙、樹脂、布等の各種材料から形成される。
【0065】
このように構成すれば、荷物が例えば手提げ袋である場合には、荷室4内の案内部32と車体1bとの間の隙間34内に、手提げ袋のループを手早く引っ掛けて車両1の移動時にも手提げ袋から中身が出ないように容易に保持でき、また、手提げ袋のループを隙間34内から容易に取外しできる。これにより、荷室4の利便性が向上する。
【0066】
図17に示すように、手提げ袋のループが、隙間34内に容易に引っ掛かり、隙間34内から容易に外れるように、ホルダ30近傍の車体1bの上面から距離H(例えば2mm)だけ下方位置にある車体側基準点1dと、案内部32の車体1b側の端面(隙間入口)38との距離である隙間34の幅Wが所定幅に規定されている。
【0067】
また、図16に示すように、ホルダ30の支持リブ36の先端に対向する車体1bの部分に、凹溝1cが形成されている。ホルダ30は、支持リブ36の先端が車体1bの凹溝1c内に差し込まれた状態で車体1bに固定されている。これにより、手提げ袋のループが、隙間34の下方においてホルダ30の内部(支持リブ36と車体1bとの間)に挟まってしまうことが防止される。
【0068】
次に、前記のように構成された車両用ボードの保持構造の作用について説明する。図18は、第2ボード部が開放状態で保持される様子を示す概略斜視図である。図19は、突起部が凹部に入り込む様子を示すホルダの本体部に対向する側から見た模式図である。
【0069】
図18に示すように、車両用ボード7の一部である第2ボード部9を開放状態で保持する場合、操作者は、まず、例えばノーマルモード(図2参照)にある車両用ボード7のストラップ27(図2参照)を持って第2ボード部9を上方に起こし、第2ボード部9を前方に押してヒンジラインLa(図2参照)の回りに回動させる。このような第2ボード部9を開放する動作に伴って、第2ボード部9の突起部23が図18中の矢印E方向に移動して、突起部23と案内部32とが当接する。
【0070】
図19に示すように、操作者がさらに第2ボード部9を前方に押してヒンジラインLa(図2参照)の回りに回動させると、突起部23は、案内部32の傾斜した面に形成された隆起部33に沿って摺動しながら矢印E方向に移動を続ける(図19の符号23aで示す位置)。ここで、案内部32は突起部23に当接して突起部23を上方に持ち上げるように作用する。突起部23は、この案内部32によって凹部31に導かれ、凹部31の上方に達したときに、第2ボード部9(図18参照)の自重により下方に移動して凹部31に受け入れられて保持される(図19の符号23bで示す位置)。なお、図19中の符号Fは、案内部32に当接しない場合における突起部23の回動中心寄りの端点の軌跡を示す。
【0071】
そして、突起部23が凹部31に保持された状態で、第2ボード部9は略鉛直方向に立てられて車両用ボード7がセパレートモードに設定される。なお、例えば第2ボード部9がヒンジラインLa(図2参照)の回りに前方に180度回動されて第1ボード部8上に折畳まれた状態から、後方に回動される場合には、突起部23は、ホルダ30の前方に形成された案内部32の隆起部33に沿って摺動しながら後方に移動して凹部31に導かれて保持される。
【0072】
このように本実施形態において、車両1の荷室4に設けられた収納部6の上方開口6aを開閉可能な車両用ボード7の少なくとも一部を開放状態で保持するための車両用ボードの保持構造は、車両用ボード7の一部である第2ボード部9の側端面22に設けられた突起部23と、車両1の車体1bに設けられ、第2ボード部9を開放したときに突起部23を受け入れて保持する凹部31と、第2ボード部9を開放する動作に伴って、突起部23に当接して前記突起部23を持ち上げて凹部31に導く案内部32と、を有している。
【0073】
したがって本実施形態によれば、操作者が車両用ボード7の一部である第2ボード部9を開放させる動作を行うに伴い、第2ボード部9の側端面22に設けられた突起部23が、案内部32に当接して自動的に持ち上がって凹部31に導かれ、当該凹部31に受け入れられて保持される。
したがって、車両用ボードの一部である第2ボード部9を開放状態で容易に保持することが可能な車両用ボードの保持構造を提供できる。
【0074】
また、案内部32には、車両用ボード7の一部である第2ボード部9の開放の際に突起部23が摺動可能な線状の隆起部33が、突起部23の移動方向に沿って形成されているため、突起部23は、案内部32の線状の隆起部33上で、摩擦力が低減されて滑り易くなる。したがって、より少ない操作力で突起部23を凹部31に導いて保持させることが可能となる。
【0075】
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、実施形態に記載した構成を適宜組み合わせ乃至選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0076】
例えば、凹部31は、ホルダ30において、左右方向に開口する水平方向の溝であってもよいし、上下方向に開口する鉛直方向の溝であってもよい。また、ホルダ30が前後に分割された一対の分割部で構成され、一対の分割部の間の隙間が凹部31として形成されてもよい。
【0077】
また、前記実施形態では、第1のボード部8と第2ボード部9とが連結されてなる車両用ボード7の一部である第2ボード部9を開放状態で保持するための構造について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、1枚のボード部からなる車両用ボードの全体を回動させて開放状態で保持するための構造にも適用可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 車両
1b 車体
4 荷室
6 収納部
6a 上方開口
7 車両用ボード
8 第1ボード部
9 第2ボード部
22 側端面
23 突起部
30 ホルダ
31 凹部
32 案内部
33 隆起部
34 隙間
W 幅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷室に設けられた収納部の上方開口を開閉可能な車両用ボードの少なくとも一部を開放状態で保持するための車両用ボードの保持構造であって、
前記車両用ボードの側端面に設けられた突起部と、
前記車両の車体に設けられ、前記車両用ボードの少なくとも一部を開放したときに前記突起部を受け入れて保持する凹部と、
前記車両用ボードの少なくとも一部を開放する動作に伴って、前記突起部に当接して前記突起部を持ち上げて前記凹部に導く案内部と、
を有することを特徴とする車両用ボードの保持構造。
【請求項2】
前記案内部には、前記車両用ボードの少なくとも一部の開放の際に前記突起部が摺動可能な線状の隆起部が、前記突起部の移動方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ボードの保持構造。
【請求項3】
前記案内部と前記車体との間に、所定幅の隙間を形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用ボードの保持構造。
【請求項4】
前記突起部は、前記車両用ボードの側端面に交換可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の車両用ボードの保持構造。
【請求項1】
車両の荷室に設けられた収納部の上方開口を開閉可能な車両用ボードの少なくとも一部を開放状態で保持するための車両用ボードの保持構造であって、
前記車両用ボードの側端面に設けられた突起部と、
前記車両の車体に設けられ、前記車両用ボードの少なくとも一部を開放したときに前記突起部を受け入れて保持する凹部と、
前記車両用ボードの少なくとも一部を開放する動作に伴って、前記突起部に当接して前記突起部を持ち上げて前記凹部に導く案内部と、
を有することを特徴とする車両用ボードの保持構造。
【請求項2】
前記案内部には、前記車両用ボードの少なくとも一部の開放の際に前記突起部が摺動可能な線状の隆起部が、前記突起部の移動方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ボードの保持構造。
【請求項3】
前記案内部と前記車体との間に、所定幅の隙間を形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用ボードの保持構造。
【請求項4】
前記突起部は、前記車両用ボードの側端面に交換可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の車両用ボードの保持構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−166730(P2012−166730A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30454(P2011−30454)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]