説明

車両用ルームラックの構造

【課題】
不使用時には乗員に圧迫感を持たすことがないとともに、取付ステーを省略でき、大型車両のみならず、小型車両においても車室内空間を広くでき、簡単な構成のルームラックを提供する。
【解決手段】
ルームラック20は車幅方向に位置する一対の取付固定部22がルーフサイド12に設けられたコーナー部14を挟むようにそれぞれ固定されている。収納空間形成部25は、一対の取付固定部22間にインテグラルヒンジ23を介して連結され、使用時にはルーフヘッドライニング10と離間する位置に位置するように変形してルーフヘッドライニング10と共同して荷物収納空間を形成する。不使用時にはルーフヘッドライニング10の内面に沿った位置に配置可能に変形可能になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ルームラックの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車室内の上部に、図7,図8に示すように荷物を収容するためにルームラック100が設けられたものがある。このルームラック100は、車両のルーフサイド102において、一端が取り付け固定されて車両の前後方向に延びるように設けられている。そして、ルームラック100に荷物Nを収納、すなわち載置できるようにしている。しかし、従来はルームラック100がルーフサイドに固定されているため、図8に示すように、ルームラック100が乗員Jの頭の周りで大きなホリュームとなり、乗員Jは頭部から上方の空間を狭く感じることがある。
【0003】
そこで、使用時にはルームラックを、ルーフサイドから室内側に突出した状態にして荷物を載置可能にし、不使用時にはルームラックをルーフサイド側へ折り畳み可能にした構成、すなわち、ラックを可倒式にした構成が提案されている(特許文献1)。この構成によれば、ルームラックの不使用時には、ルームラックが室内側に突出しなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−31064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の従来の構成では、ルーフの前後方向において配置した一対の取付ステーの各一端をルーフに、他端をピラーにそれぞれ固定し、前記一対の取付ステー間において、前記ルームラックを回動自在に支持する構成としている。このため、従来は、前記取付ステーを設ける必要があり、部品点数が増えるとともに構造が複雑となる問題がある。又、可撓式のラック自体は、剛性を有しているため、不使用時の状態がルーフ側において斜状になった状態となる。この状態では、使用時よりはラックが室内側に突出しないとはいえ、不使用時においても、乗員にとっては板状のラックが斜状に配置された部分で圧迫感を感じることがある。
【0006】
又、特許文献1のルームラックは、バス等の大型車両に採用できる構成となっているが、バスよりも小型の車両に前記取付ステーとルームラックの構成を採用した場合、さらに、圧迫感を乗員に与える構成となる。
【0007】
上記の従来例は、ルームラックをルーフに取り付けした可撓式ラックの場合で説明したが、可撓式ラックを、ルーフ以外の車室内に設けられた内装材に取り付けする場合において、不使用時に車室側にラックを露出させた状態で折り畳みする場合には、単に折り畳みしただけでは圧迫感を乗員に与える問題がある。
【0008】
本発明の目的は、上記課題を解決して、不使用時には乗員に圧迫感を持たすことがないとともに、取付ステーを省略して、大型車両のみならず、小型車両においても車室内空間を広くでき、簡単な構成のルームラックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、請求項1の発明は、車室内に設けられた内装材に対して取り付けられた車両用ルームラックの構造であって、前記内装材に設けられた凹部の全体又は一部を横断する方向において挟むように一対の取付固定部が、それぞれ固定され、前記一対の取付固定部間に連結されるとともに、使用時には前記一対の取付固定部間に介在する内装材と離間する位置に位置するように変形して前記内装材と共同して荷物収納空間を形成可能であるとともに、不使用時には前記内装材の表面に沿った位置に配置可能に変形可能な材質にて形成された収納空間形成部を有し、前記不使用時に前記収納空間形成部を前記内装材に沿うように保持する保持手段を有することを特徴とする車両用ルームラックの構造を要旨としている。
【0010】
なお、本明細書での凹部とは、収納空間形成部の長さ方向において、収納空間形成部の長さと同等或いはそれ以上連続して形成されているものをいう。又、凹部の一部を一部を横断する方向において挟むように一対の取付固定部を設けるとは、凹部が形成されている領域内に、一対の取付固定部のうち、少なくとも一方が取り付けられた状態のときをいう。この場合においても、不使用時において凹部の一部領域に、収納空間形成部が凹んだ状態になるように内装材に沿うように配置される。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1において、前記車両用ルームラックは、有弾性の合成樹脂により形成され、前記収納空間形成部と前記取付固定部とがインテグラルヒンジにて連結されおり、前記保持手段は、前記有弾性の合成樹脂の材質により構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2において、前記収納空間形成部の前後に位置する両端部のうち、少なくとも一端部には、前記荷物収納空間が形成された際、前記収納空間形成部と前記内装材間の開口部を開閉する開閉部を有することを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項3において、前記開閉部は、前記内装材に設けられた凹部の全体又は一部を挟むように一対の可動部取付固定部が、それぞれ固定され、前記一対の可動部取付固定部間に連結されるとともに、荷物取り出し使用時には前記一対の可動部取付固定部間に介在する内装材と離間する位置に位置するように変形して前記内装材と共同して前記荷物収納空間に連通する連通口を形成可能であるとともに、荷物取り出し不要時には前記内装材の表面に沿った位置に配置可能に変形可能に弾性を有する材質にて形成された可動部を有し、前記可動部と前記可動部取付固定部とがインテグラルヒンジにて連結され、前記可動部と前記収納空間形成部間には、可撓性部材が連結されて、前記開口部が形成された状態で、前記可荷物取り出し不要時には可撓性部材により、前記開口部を閉鎖することを特徴とする。 請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項において、前記収納空間形成部には、荷物収納空間と車室内空間を連通する荷物取り出し孔が形成され、前記荷物収納空間内に収納された荷物が取り出し可能にされていることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1において、前記車両用ルームラックは、可撓性の材質により形成され、前記保持手段は、前記収納空間形成部の内装材の表面に設けられた雄又は雌の第1面ファスナーと、前記内装材に設けられた雌又は雄の第2面ファスナーにより構成され、前記不使用時には第1面ファスナーと第2面ファスナーとが結合することにより、前記収納空間形成部を前記内装材に沿うように保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、収納空間形成部は、使用時には車室内に設けられた内装材と離間するように変形して内装材と共同して荷物収納空間を形成するとともに、不使用時には内装材に沿った位置に位置するように変形する。この際、保持手段は、収納空間形成部を内装材の表面に沿うように保持されて、凹部の全体又は一部に沿って凹んだ状態で配置される。この結果、本発明によれば、不使用時には乗員に圧迫感を持たすことがないとともに、取付ステーを省略でき、大型車両のみならず、小型車両においても車室内空間を広くできる。又、簡単な構成のルームラックを提供できる。
【0016】
請求項2の発明によれば、収納空間形成部の使用時には内装材と離間するように弾性的に変形して内装材と共同して荷物収納空間を形成するとともに、不使用時には弾性的に変形して内装材の表面に沿った位置に配置される。そして、収納空間形成部が有弾性を有する合成樹脂から形成されているため、不使用時に収納空間形成部が内装材に沿って変形して凹んだ状態でその位置に保持できる。
【0017】
請求項3の発明によれば、前記開閉部により、収納空間形成部に荷物収納空間が形成された際、開口部を開閉できる。特に、車両が走行時において、前記開口部を開閉部にて閉じておけば荷物収納空間に収納した荷物が、開口部から外部に出たり、落ちることがない。
【0018】
請求項4の発明によれば、開閉部の可動部が、可動部取付固定部に対してインテグラルヒンジに連結され、可動部が内装材の表面に沿った位置に配置可能に変形可能に弾性を有する材質にて形成されている。このため、可動部の開閉により荷物取り出し用の連通口を開け閉めできる。
【0019】
請求項5の発明によれば、荷物取り出し孔を介して荷物収納空間内に収納された荷物を取り出しでき、使い勝手がよい車両用ルームラックの構造とすることができる。
請求項6の発明によれば、収納空間形成部が可撓性の材質により形成されているため、使用時にはルーフ内装材と離間するように変形して内装材と共同して荷物収納空間を形成するとともに、不使用時には内装材に沿った位置に変形して配置される。そして、不使用時に収納空間形成部が第1面ファスナと第2面ファスナーとにより内装材に連結されてルーフ内装材の内面に沿うように保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一実施形態の車両用ルームラックの構造の斜視図。
【図2】(a)は、使用時の車両用ルームラックの横断面図、(b)は、不使用時の車両用ルームラックの横断面図。
【図3】開閉部を閉めたときの車両用ルームラックの構造の斜視図。
【図4】インテグラルヒンジの説明図。
【図5】荷物を収納する際の車両用ルームラックの構造の斜視図。
【図6】荷物取り出し孔の作用の説明図。
【図7】従来のルームラックの斜視図。
【図8】従来のルームラックの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明を、ルーフに取り付けられる車両用ルームラックに具体化した一実施形態を図1〜図6を参照して説明する。
【0022】
図1に示すように、車両の図示しないボディの室内側上部には、ボディ上部に支持されたルーフヘッドライニング(成形天井)10が配置されている。ルーフヘッドライニング10は、基材とこの基材の表面(車室内側の面)を覆う表皮とにより構成されている。ルーフヘッドライニング10は内装材に相当する。
【0023】
ルーフヘッドライニング10の車幅方向のルーフサイド12は、ルーフヘッドライニング10の中央部から凹部としてのコーナー部14を介して下方へ斜状に形成されている。ルーフサイド12は、ルーフヘッドライニング10のサイド部分に相当する。ルーフサイド12には、コーナー部14全体を横断する方向で挟むようにして図1,図2(a)に示すように合成樹脂製の車両用ルームラック(以下、単にルームラックという)20が取付けられている。ルームラック20の材質は、後述するように有弾性であって、後述する変形が可能であれば、限定するものではない。材質の例としては、例えば、軟質プラスチックを挙げることができる。なお、軟質プラスチックはJIS K6900の規定による曲げ弾性率が70MPaより大きくないものをいう。
【0024】
ルームラック20は、車幅方向において、離間した一対の取付固定部22と、取付固定部22間にインテグラルヒンジ23を介して連結された収納空間形成部25からなる。一対の取付固定部22は、図1に示すように、車両の前後方向に延出されて細片状に形成されている。取付固定部22は、ルーフヘッドライニング10に対して図2に示すようにビス等の複数の締め付け手段24により固定されている。なお、図1、図3、図5、図6では、説明の便宜上、締め付け手段24は省略されている。なお、締め付け手段24の代わりに、取付固定部22をルーフヘッドライニング10に対して接着剤、或いは取付固定部22を貫通するとともに、ルーフヘッドライニング10を貫通して係止する合成樹脂等からなるクリップにより固定してもよい。
【0025】
収納空間形成部25は、湾曲板状に形成され、インテグラルヒンジ23に連結されていることにより、図2(a)に示す車室内側に膨らんだ状態と、ルーフサイド12のコーナー側に凹んだ状態となり、ルーフヘッドライニング10の車室内側の面に沿うように弾性的に変形することが可能である。収納空間形成部25が車室内側に膨らんだ状態のときは、ルーフサイド12において、前記コーナー部14を含む車室側内面と収納空間形成部25との間に図2(a)に示すように、荷物収納空間Sが形成される。又、収納空間形成部25がルーフサイド12のコーナー部14側に凹んだ状態のときは、図2(b)に示すように前記荷物収納空間Sが消滅する。
【0026】
上記のようにして、本実施形態では、収納空間形成部25が有弾性の合成樹脂から形成されていることから、本実施形態の有弾性の合成樹脂の材質は、ルーフヘッドライニング10の車室内側の面に沿うように変形した状態を保持する保持手段に相当する。
【0027】
収納空間形成部25において、車幅方向の中央には荷物取り出し孔としての長孔28が前後方向に延びるように形成され、荷物収納空間Sと車室内空間と連通されている。長孔28により、荷物収納空間Sに収納した荷物が、長孔28が許容する範囲で車室内空間に取り出しが可能である。
【0028】
収納空間形成部25の前後に位置する各端部には、図1、図3及び図6に示すように、一対の開閉部30が設けられている。
まず、ルームラック20の前端側に設けられた開閉部30について説明する。
【0029】
開閉部30は、ルームラック20と同様の合成樹脂から形成され、取付固定部22の前端に隣接して形成された一対の可動部取付固定部32と、両可動部取付固定部32に対してインテグラルヒンジ33を介して連結され可動部35とから構成されている。可動部取付固定部32は、取付固定部22と同様に締め付け手段、或いは接着剤により、ルーフヘッドライニング10に対して取付固定されている。又、なお、締め付け手段24、接着剤の代わりに、可動部取付固定部32を、取付固定部22を貫通するとともに、ルーフヘッドライニング10を貫通して係止する合成樹脂等からなるクリップによりルーフヘッドライニング10に対して固定してもよい。
【0030】
可動部35は、収納空間形成部25と同様に湾曲片状に形成され、インテグラルヒンジ33に連結されていることにより、図1、図5に示す車室内側に膨らんだ状態と、図3,図6に示すようにルーフサイド12のコーナー側に凹んだ状態となり、ルーフヘッドライニング10の車室内側の面に沿うように弾性的に変形することが可能である。又、可動部35は、図1に示すように、車室内側に膨らんだ状態では、同様に車室内側に膨らんだ状態の収納空間形成部25と隣接するように配置可能である。
【0031】
又、可動部35はルーフサイド12のコーナー側に凹んだ状態となった際、図2に示すようにルーフサイド12のコーナー側に凹んだ状態となっている収納空間形成部25と隣接するように配置可能である。
【0032】
可動部35と収納空間形成部25間には、図3、図6に示すように可撓性部材36が連結されている。可撓性部材36は、可動部35と収納空間形成部25との裏面(ルーフヘッドライニング10と対向する面)に対して、接着剤にて接着されている。可撓性部材36は、図3に示すように、可撓性部材36が凹んだ状態であって、かつ、収納空間形成部25が、車室内側に膨らんだ状態のときに、後述する開口部Saを閉鎖するように張られている。可撓性部材36は、本実施形態では、合成繊維、或いは天然繊維の糸により形成されたネットにより構成されている。
【0033】
収納空間形成部25が車室内側に膨らんだ状態にあるときに、前記可動部35が車室内側に膨らんだ状態のときは、図1、図5に示すように、前記コーナー部14を含むルーフヘッドライニング10の車室側内面と可動部35との間に連通口38が形成される。この連通口38によりルームラック20の前端において、収納空間形成部25と、ルーフヘッドライニング10間で形成された開口部Saを開放可能である。
【0034】
又、収納空間形成部25が車室内側に膨らんだ状態にあるときに、可動部35はルーフサイド12のコーナー側に凹んだ状態となったときは、開口部Saは、可撓性部材36により、閉鎖可能である。
【0035】
ルームラック20の後端部側の開閉部30は、ルームラック20の前端部側の開閉部30で説明した文章中の「前端」を「後端」と読み替えることにより説明できるため、収納空間形成部25の後端に設けられた開閉部30の構成部材については、前端部側の開閉部30に付した符号と同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
上記のようにして、本実施形態では、可動部35が有弾性の合成樹脂から形成されていることから、可動部35を形成する有弾性の合成樹脂の材質は、ルーフヘッドライニング10の車室内側の面に沿うように変形した状態を保持する可動部35の第2保持手段に相当する。
【0037】
なお、図1、図3、図4〜図6に示すように取付固定部22及び可動部取付固定部32と、ルーフヘッドライニング10間には、緩衝材40が介在配置されている。
(実施形態の作用)
次に、上記のように構成されたルームラック20の作用を説明する。
【0038】
収納空間形成部25の不使用時には、図2(b)に示すように、収納空間形成部25及び可動部35をルーフサイド12のコーナー側に凹んだ状態にしておく。この状態では、収納空間形成部25,可動部35は、車室内方に突出しないため、乗員の頭部の上方空間を広く確保できる。
【0039】
次に、使用する際には、図1に示すように、乗員は、収納空間形成部25、及び可動部35を車室内側に膨らんだ状態にする。なお、本実施形態では、収納空間形成部25、可動部35はそれぞれインテグラルヒンジ23,33により取付固定部22,可動部取付固定部32に対して連結されており、材質が弾性を有しているため、凹んだ状態から膨らんだ状態に簡単に変形することができる。この収納空間形成部25が膨らんだ状態で、荷物収納空間Sが形成される。
【0040】
次に、図5に示すようにこの状態で、乗員は、荷物収納空間S内に開口部Saを介して荷物Nを収納する。荷物Nを荷物収納空間Sに収納した後、収納空間形成部25の前後両端の開閉部30の可動部35をそれぞれ図6に示すように、ルーフサイド12のコーナー側に凹んだ状態にする。このようにすると、図6に示すように開口部Saが、可撓性部材36により、閉鎖される。
【0041】
図6の状態で、荷物収納空間S内の荷物Nを取り出した場合がある。例えば、荷物Nが、タオル、ティッシュ等の可撓性の材質が形成されている場合、開閉部30を操作することなく、図6に示すように長孔28から、それらの荷物Nを引っ張りだすことができる。
【0042】
本実施形態では、下記の特徴を有する。
(1) 本実施形態のルームラック20は、車幅方向に位置する一対の取付固定部22が、車幅方向のルーフヘッドライニング10のルーフサイド12(サイド部分)に設けられたコーナー部14の全体を挟むようにそれぞれ固定されている。又、ルームラック20の収納空間形成部25は、一対の取付固定部22間に連結されるとともに、使用時にはルーフヘッドライニング10と離間する位置に位置するように変形して一対の取付固定部22間に介在する内装材(ルーフヘッドライニング10)と共同して荷物収納空間Sを形成可能とする。又、ルームラック20は、不使用時にはルーフヘッドライニング10の内面に沿った位置に配置可能に変形可能な材質にて形成されている。又、ルームラック20の材質は、有弾性の合成樹脂にて形成されることにより、不使用時に収納空間形成部25をルーフヘッドライニング10の内面に沿うように保持する保持手段としている。この結果、本実施形態によれば、収納空間形成部25がコーナー部側に凹んだ状態となるため、不使用時には乗員に圧迫感を持たすことがないとともに、取付ステーを省略でき、大型車両のみならず、小型車両においても車室内空間を広くできるとともに簡単な構成のルームラック20を提供できる。
【0043】
(2) 本実施形態のルームラック20は、収納空間形成部25の前後に位置する両端部のうち、両端部に、荷物収納空間Sが形成された際、収納空間形成部25とルーフヘッドライニング10間の開口部Saを開閉する開閉部30を有する。この結果、本実施形態のルームラック20によれば、開閉部30により、収納空間形成部25に荷物収納空間Sが形成された際、開口部Saを開閉できる。特に、車両が走行時において、開口部Saを開閉部30にて閉じておけば荷物収納空間Sに収納した荷物が、開口部Saから外部に出たり、落ちることがない。
【0044】
(3) 本実施形態のルームラック20は、収納空間形成部25には、荷物収納空間Sと車室内空間を連通する長孔28(荷物取り出し孔)が形成され、荷物収納空間S内に収納された荷物Nが取り出し可能にされている。この結果、本実施形態によれば、長孔28を介して荷物収納空間S内に収納された荷物Nを取り出しでき、使い勝手がよいルームラック20の構造とすることができる。
【0045】
(4) 本実施形態では、開閉部30は、内装材(ルーフヘッドライニング10)に設けられた凹部の全体を挟むように一対の可動部取付固定部32が、それぞれ固定されている。又、可動部35は、一対の可動部取付固定部32間に連結されている。又、可動部35は、荷物取り出し使用時には一対の可動部取付固定部32間に介在するルーフヘッドライニング10(内装材)と離間する位置に位置するように変形してルーフヘッドライニング10(内装材)と共同して荷物収納空間Sに連通する連通口38を形成するとともに、荷物取り出し不要時には前記内装材の表面に沿った位置に配置可能に変形可能に弾性を有する材質にて形成されている。又、開閉部30は、可動部35と可動部取付固定部32とがインテグラルヒンジ33にて連結されている。そして、開閉部30は、可動部取付固定部32と収納空間形成部25間には、可撓性部材36が連結されて、開口部Saが形成された状態で、可荷物取り出し不要時には可撓性部材36により、開口部Saを閉鎖する。この結果、可動部取付固定部32の開閉により荷物取り出し用の連通口38を開け閉めできる。
【0046】
なお、本発明の実施形態は前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように変更しても良い。
・ 前記実施形態では、凹部を車両のルーフサイド12のコーナー部14としたが、ルームラック20を取付する部位は、ルーフサイド12のコーナー部14に限定されるものではない。車室内において、各種内装材、例えば、ドアサイドの内装材、インストルメントパネル等に使用される内装材において、内装材に凹部が設けられていれば、この凹部の全体又は一部を横断する方向において、挟むように一対の取付固定部を取付け固定するようにして、車両用ルームラックを設けるようにしてもよい。いずれの凹部に対しても車両用ルームラックを取り付けすれば、使用時には、凹部に収納空間形成部が凹んだ状態にできる。
【0047】
・ 前記実施形態では、凹部としてのコーナー部の全体を挟むように一対の取付固定部22を取り付け固定した。この代わりに、凹部、例えば、前記コーナー部の一部を挟むように一対の取付固定部22を固定するようにしてもよい。例えば、図2(a)で示すコーナー部14の範囲において、その中央から上方より位置に、図2(a)の上端となる取付固定部22を固定し、下端側となる取付固定部22を図2(a)の位置に取付け固定する。
【0048】
この場合、開閉部を設ける場合には、可動部35をインテグラルヒンジ33を介して連結する可動部取付固定部32も取付固定部22と隣接するようにして同様にコーナー部の一部を挟むように一対の取付固定部22を固定する。
【0049】
なお、凹部は収納空間形成部25の長さ方向(前記実施形態では、車両の前後方向)において、収納空間形成部25の長さと同等或いはそれ以上、連続して形成されていることが好ましい。
【0050】
・ 前記実施形態では、荷物取り出し孔として長孔としたが、荷物取り出し孔の形状は限定されるものではなく、他の形状であってもよい。例えば、円孔、楕円孔、四角孔等であってもよい。
【0051】
・ 前記各実施形態において、両開閉部30又は、一方の開閉部30を省略してもよい。
・ 前記実施形態では、収納空間形成部25の前後に位置する両端部にそれぞれ開口部を設けるとともに、各開口部をそれぞれ開閉する開閉部を設けた。
【0052】
この代わりに、収納空間形成部25の前後に位置する両端部のうち、いずれか一方の端部を開閉部30の代わりに、開口部Saを恒久的に閉鎖する閉塞部を設けてもよい。なお、前記閉塞部は、収納空間形成部25の端部とルーフヘッドライニング10間に、可撓性部材36と同様の可撓性を有する部材にて連結するだけで構成できる。
【0053】
・ 前記実施形態では、可撓性部材36を網としたが、可撓性部材36は、ネットに限定されるものではなく、可撓性を有するフィルム、或いは布等により構成するようにしてもよい。
【0054】
・ 前記実施形態では、ルームラック20の材質を有弾性の合成樹脂にしたが、材質は有弾性の合成樹脂に限定されるものではない。
ルームラック20の材質を、可撓性を有する材質により形成してもよい。例えば布、不織布、合成樹脂製のフィルムであってもよい。なお、この場合、インテグラルヒンジ23は省略されているものとする。又、この場合、ルームラック20は弾性を有しないため、例えば、図2(a)に示すように収納空間形成部25のルーフヘッドライニング10に対向する面の部位P1,P2に、第2面ファスナーとして雄又は雌の面ファスナーを貼着し、ルーフヘッドライニング10の収納空間形成部25に対向する面の部位P3,P4には、第1面ファスナーとしての雌又は雄の面ファスナーを貼着する。このように構成すれば、図2(a)に示すように使用時には、収納空間形成部25は離間配置できるとともに、不使用時には、部位P1,P2に貼着した面ファスナーと部位P3,P4に貼着した面ファスナーとが互いに結合することにより、図2(b)に示すように、収納空間形成部25を凹んだ状態に保持することが可能となる。なお、開閉部30も収納空間形成部25と同様な材質を選択し、かつ、収納空間形成部25に設けられた面ファスナーと同様に開閉部30とルーフヘッドライニング10に配置して使用するものとする。なお、この変形例においても、両開閉部30又は、一方の開閉部30を省略してもよい。
【符号の説明】
【0055】
N…荷物、S…荷物収納空間、Sa…開口部、14…コーナー部(凹部)、
20…車両用ルームラック、22…取付固定部、
23,33…インテグラルヒンジ、25…収納空間形成部、
30…開閉部、32…可動部取付固定部、35…可動部、
36…可撓性部材、38…連通口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に設けられた内装材に対して取り付けられた車両用ルームラックの構造であって、
前記内装材に設けられた凹部の全体又は一部を横断する方向において挟むように一対の取付固定部が、それぞれ固定され、
前記一対の取付固定部間に連結されるとともに、使用時には前記一対の取付固定部間に介在する内装材と離間する位置に位置するように変形して前記内装材と共同して荷物収納空間を形成可能であるとともに、不使用時には前記内装材の表面に沿った位置に配置可能に変形可能な材質にて形成された収納空間形成部を有し、
前記不使用時に前記収納空間形成部を前記内装材に沿うように保持する保持手段を有することを特徴とする車両用ルームラックの構造。
【請求項2】
前記車両用ルームラックは、有弾性の合成樹脂により形成され、
前記収納空間形成部と前記取付固定部とがインテグラルヒンジにて連結されおり、
前記保持手段は、前記有弾性の合成樹脂の材質により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ルームラックの構造。
【請求項3】
前記収納空間形成部の前後に位置する両端部のうち、少なくとも一端部には、前記荷物収納空間が形成された際、前記収納空間形成部と前記内装材間の開口部を開閉する開閉部を有することを特徴とする請求項2に記載の車両用ルームラックの構造。
【請求項4】
前記開閉部は、前記内装材に設けられた凹部の全体又は一部を挟むように一対の可動部取付固定部が、それぞれ固定され、
前記一対の可動部取付固定部間に連結されるとともに、荷物取り出し使用時には前記一対の可動部取付固定部間に介在する内装材と離間する位置に位置するように変形して前記内装材と共同して前記荷物収納空間に連通する連通口を形成可能であるとともに、荷物取り出し不要時には前記内装材の表面に沿った位置に配置可能に変形可能に弾性を有する材質にて形成された可動部を有し、
前記可動部と前記可動部取付固定部とがインテグラルヒンジにて連結され、
前記可動部と前記収納空間形成部間には、可撓性部材が連結されて、前記開口部が形成された状態で、前記可荷物取り出し不要時には可撓性部材により、前記開口部を閉鎖することを特徴とする請求項3に記載の車両用ルームラックの構造。
【請求項5】
前記収納空間形成部には、荷物収納空間と車室内空間を連通する荷物取り出し孔が形成され、前記荷物収納空間内に収納された荷物が取り出し可能にされていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の車両用ルームラックの構造。
【請求項6】
前記車両用ルームラックは、可撓性の材質により形成され、
前記保持手段は、前記収納空間形成部の内装材の表面に設けられた雄又は雌の第1面ファスナーと、前記内装材に設けられた雌又は雄の第2面ファスナーにより構成され、
前記不使用時には第1面ファスナーと第2面ファスナーとが結合することにより、前記収納空間形成部を前記内装材に沿うように保持することを特徴とする請求項1に記載の車両用ルームラックの構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−131348(P2012−131348A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284840(P2010−284840)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】