車両用ロック解錠機構の取付構造
【課題】ロック機構とロック解錠機構を互いに独立させた上で、ロック解錠機構を支えるブラケットを省くことができるロック解錠機構の取付構造を提供することを課題とする。
【解決手段】シリンダ取付穴61に外筒53を通すと、鍔部51が傾斜部47の外面に当たって止まる。この外筒53に車体中心側から外筒抑え部材62を取付ける。周溝52にスプリングワッシャなどの付勢部材63を嵌め、この付勢部材63で外筒抑え部材62を傾斜部47の内面に押し当てる。傾斜部47が鍔部51と外筒抑え部材62で強く挟まれる。結果、ロック解錠機構50がサイドアッパカバー24に固定される。
【効果】外筒抑え部材と鍔部とで車体カバーを挟むことで、車体カバーにロック解錠機構を固定するようにした。すなわち、ブラケットは不要である。
【解決手段】シリンダ取付穴61に外筒53を通すと、鍔部51が傾斜部47の外面に当たって止まる。この外筒53に車体中心側から外筒抑え部材62を取付ける。周溝52にスプリングワッシャなどの付勢部材63を嵌め、この付勢部材63で外筒抑え部材62を傾斜部47の内面に押し当てる。傾斜部47が鍔部51と外筒抑え部材62で強く挟まれる。結果、ロック解錠機構50がサイドアッパカバー24に固定される。
【効果】外筒抑え部材と鍔部とで車体カバーを挟むことで、車体カバーにロック解錠機構を固定するようにした。すなわち、ブラケットは不要である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ロック解錠機構の取付構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
車体カバーに物入れが付設され、この物入れがリッドで塞がれ、このリッドを開くことで物入れに小物を出し入れすることができるようにした自動二輪車が実用に供されてきた。リッドはロック機構で施錠されることが望まれる。
【0003】
ロック機構は、各種の構造が提案されており、キーで直接解錠する構造が知られている(例えば、特許文献1(図1、図2)参照。)。
【0004】
特許文献1の図1に示されるように、シート(1)(括弧付き数字は、特許文献に記載された符号を示す。以下同様)がシリンダ錠(7)により施錠される。同文献の図2に示されるように、ロックプレート(8)を旋回させ、ストライカー(11)に嵌ると施錠状態になる。ロックプレート(8)を逆方向へ旋回させると解錠状態になる。
【0005】
構造が簡単である。同文献の図1に示されように、シリンダ錠(7)はシート(1)の後部に且つ車幅中央に配置される。すなわち、シリンダ錠(7)の配置に自由度がない。
シート(1)の直後にグラブレールやキャリアが取付けられる車両が少なくない。シリンダ錠(7)の存在により、グラブレールやキャリアの取付け位置を車両後方へずらす必要があるなど、影響が大きい。
【0006】
そこで、ロック機構とロック解錠機構を互いに独立させ、ロック解錠機構を任意の位置に置くことができる構造が提案されている(例えば、特許文献2(図2、図3)参照。)。
特許文献2の図2に示されるように、ロック機構(80)と離れた位置にロック解錠機構(90)が配置される。ロック解錠機構(90)はメインキー装置(40)に含まれる。ロック解錠機構(90)は任意の位置に配置可能である。
【0007】
ところで、同文献の図3に示されるように、ロック解錠機構を含むメインキー装置(40)は、ブラケット(92)にビス(93)を用いて固定される。ブラケット(92)はヘッドパイプ(11a)から延びる。すなわち、ロック解錠機構は、ブラケット(92)を介して車体フレームに固定される。
【0008】
ロック解錠機構の取付け部位が車体フレームから離れている場合は、必然的にブラケット(92)が長く、重くなる。このような長くて重いブラケット(92)は、車両の重量増加を招くと共にブラケットの調達コスト及び取付けコストが嵩む。
【0009】
しかし、軽量化及びコストダウンが求められる車両において、特許文献2の構造に代わる構造が求められる。
すなわち、ロック機構とロック解錠機構を互いに独立させた上で、ブラケットを省くことができるロック解錠機構の取付構造が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−7048号公報
【特許文献2】特開2003−89370公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ロック機構とロック解錠機構を互いに独立させた上で、ロック解錠機構を支えるブラケットを省くことができるロック解錠機構の取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、車体を覆う車体カバーに、開閉可能にリッド又はシートからなる開閉部材が取付けられ、この開閉部材を閉じ位置でロックするロック機構が前記車体に設けられ、この車体カバーに前記ロック機構を解錠するロック解錠機構が設けられ、このロック解錠機構から前記ロック機構にインナーケーブルとこのインナーケーブルを軸方向へ移動可能に収納するアウターケーブルからなる操作ケーブルが渡され、前記ロック解錠機構のキー穴にキーを差し込み、前記キー穴を一端に備えるシリンダを回すことで、このシリンダの先端に設けられている操作部で前記インナーケーブルが操作され前記ロック機構が解錠される車両用ロック解錠機構の取付構造において、
前記シリンダを回転自在に支える外筒には、前記キー穴側の部位に、鍔部が一体形成され、前記車体カバーに設けられるシリンダ取付穴に前記外筒が差し込まれると前記車体カバーの外面に前記鍔部が当たるようにし、差し込まれた前記外筒に前記車体カバーの内面に当接する外筒抑え部材を取付け、この外筒抑え部材と前記鍔部とで前記車体カバーを挟むことで、前記車体カバーに前記ロック解錠機構を固定し、
前記外筒抑え部材に、前記アウターケーブルを支えるアウターケーブル支持部を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明は、車体カバーの内面に、ロック解錠機構を囲うキーシリンダカバーが取付けられ、このキーシリンダカバーに、外筒抑え部材の先端を止めることができる係合部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明では、アウターケーブル支持部は、一端が開放される形態で外筒抑え部材に形成される略U字穴であり、この略U字穴に止められるアウターケーブルが略U字穴から抜けることを防止する壁が、キーシリンダカバーに設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明では、キーシリンダカバーは、係合部を含めて一枚の鋼板を塑性変形により形成される1ピース部品であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、外筒抑え部材と鍔部とで車体カバーを挟むことで、車体カバーにロック解錠機構を固定するようにした。すなわち、ブラケットは必要ない。
【0017】
加えて、車体カバーにロック解錠機構を固定するため、車体カバーにロック解錠機構を予め取付け、さらに、ロック解錠機構に操作ケーブルの一端を連結したところのプレアッセンブリー品で車両組立ラインに供することができ、車両組立ラインの簡素化が図れる。
【0018】
さらには、操作ケーブルの一端を外筒抑え部材で支持させることができる。一般に車体フレーム又は車体カバーにフックなどの係止部材を介して操作ケーブルが止められる。本発明によれば、外筒抑え部材を利用して操作ケーブルの一端を止めるため、別途係止部材を準備する必要が無い。
【0019】
請求項2に係る発明では、キーシリンダカバーで、ロック解錠機構を囲う。キーシリンダカバーがロック解錠機構のプロテクターとなり、外力はキーシリンダカバーに加わるが、ロック解錠機構には至らない。ロック解錠機構を頑強にする必要が無く、ロック解錠機構の小型、軽量化が容易に達成できる。
【0020】
また、アウターケーブル支持部を備えるため、外筒抑え部材は、外筒を起点に片持ち梁のようにアウターケーブルまで延びる。片持ち梁では先端の撓みや振れが大きくなるため、対策として全体的に剛性を上げる必要があり、外筒抑え部材の重量増加を招く。
この点、本発明では、外筒抑え部材の先端がキーシリンダカバーに止められる。外筒抑え部材は両端が支持されるため、薄くても撓みや振れが小さくなり、結果として、外筒抑え部材の小型、軽量化が図れる。
【0021】
請求項3に係る発明では、アウターケーブル支持部は、一端が開放される形態で外筒抑え部材に形成される略U字穴であり、この略U字穴に止められるアウターケーブルが略U字穴から抜けることを防止する壁が、キーシリンダカバーに設けられている。
略U字穴の開放端からアウターケーブルを嵌めることができるので、アウターケーブルの取付け工数が少なくなる。加えて、キーシリンダカバーによってアウターケーブルが略U字穴から抜ける心配が無くなる。
【0022】
請求項4に係る発明では、キーシリンダカバーは、一枚の鋼板を塑性変形により形成される。一枚の鋼板をプレス成形することで立体形状のキーシリンダカバーが得られる。鋼製であるから、キーシリンダカバーの剛性は大きい。
加えて、鋼板は安価であり、プレス成形は短時間で行われる。結果、剛性に富むキーシリンダカバーを安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】車両の左側面図である。
【図2】車両後部の平面図(シートは省いた。)である。
【図3】車両後部の平面図(ラゲージボックスは省いた。)である。
【図4】図3の4矢視図である。
【図5】図4の要部断面図である。
【図6】サイドアッパカバーを車体中心から見た図である。
【図7】サイドカバーを車体中心から見た図である。
【図8】サイドロアカバーを外から見た図である。
【図9】ロック機構及びロック解錠機構の作用を説明する図である。
【図10】キーシリンダカバーの作用を説明する図である。
【図11】図10の11−11線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0025】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、車両10は、ハンドル11で操舵される前輪12とパワーユニット13で支えられる後輪14を前後に備えるスクータ型車両である。
運転者はタンデムシートと呼ばれるシート15の前半部に座り、足をステップ16に載せ、ハンドル11を操作する。同乗者はシート15後方に配置されるグラブレール17を握りながらシート15の後半部に座る。
【0026】
車体フレームを主とする車体は、車体カバー20で覆われている。
車体カバー20は、例えばハンドル11下のフロントカバー21と、ステップ16下のアンダーカバー22と、シート15の下方で且つ車体の側方を覆うサイドカバー23とからなる。
このサイドカバー23は、この例では分割され、シート15に沿って配置されるサイドアッパカバー24と、このサイドアッパカバー24の下に配置されるサイドロアカバー25と、サイドアッパカバー24の車両後方に配置されるサイドリヤカバー26とからなる。
【0027】
開閉部材としてのシート15の下にラゲージボックスが配置されている。このラゲージボックスについて、図2に基づいて説明する。
図2はシートを省いた車両後部の平面図であり、シートを開けると、ラゲージボックス27が現れる。ラゲージボックス27は、ヘルメットなどを収納することができる物入れ部28と、この物入れ部28から車両後方へ張り出す水平膨出部29とからなる、樹脂成形品である。
【0028】
水平膨出部29には、後部に給油キャップ31を通す円形開口32が設けられ、前部(物入れ部28寄り)にシートに付属するコ字金具(図9、符号92)を通す矩形開口33が設けられる。ラゲージボックス27は、少なくとも水平膨出部29の前部が2本のビス34、34で車体フレームに締結される(締結構造は後述する。)。
【0029】
2本のビス34、34などを外すとラゲージボックス27を図面表側へ外すことができる。
すると、図3に示すように、燃料ポンプ35を備えている燃料タンク36が現れる。燃料タンク36は、タンク下半体にタンク上半体を重ねフランジ37を溶接して一体化した密閉容器である。
車体フレームの一要素であるクロスメンバー38にフランジ37が載せられ、このフランジ37にシートキャッチャに代表されるロック機構80(詳細構造は図9で説明する。)が載せられ、ロック機構80とフランジ37とに上からボルト41、41を通し、これらのボルト41、41をクロスメンバー38側に締結する。
【0030】
すなわち、燃料タンク36とロック機構80がボルト41、41でクロスメンバー38に共締めされる。共締めによりボルト本数を削減すると共にボルト締付け工数を削減することができる。
【0031】
図4に示すように、クロスメンバー38はシートレール42から延ばされ、中央にロック機構80を支えるブラケット43が設けられる。このブラケット43とシートレール42との間に部位にてクロスメンバー38から柱状ステー44が上へ延ばされている。
【0032】
サイドアッパカバー24は、上部が略水平部46とされ、この略水平部46から傾斜部47が車幅方向外へ延び、この傾斜部47から縦壁部48が下がる断面形態とされる。すなわち、略水平部46と傾斜部47と縦壁部48とでシートレール42を囲う。
略水平部46から車体中心へ舌片49が延び、この舌片49が柱状ステー44に載せられる。舌片49にさらにラゲージボックスの水平膨出部(図2、符号26)が載せられ、この水平膨出部と舌片49とがビス34で共締めされる。すなわち、サイドアッパカバー24とラゲージボックスとがビス34で共締めされる。
【0033】
図5は図4の要部断面図であり、ロック解錠機構50は、一端に鍔部51を備え、この鍔部51に沿って、一般部より小径の周溝52を備える外筒53と、この外筒53に回転可能に取付けられキー54を差し込むキー穴55を備え先端に操作部としてのアーム56を備えるシリンダ57とからなる。
アーム56に、インナーケーブル58とアウターケーブル59からなる操作ケーブル60の一端(正確にはインナーケーブル58の一端)が止められる。
【0034】
サイドアッパカバー24の傾斜部47に外筒53を通すシリンダ取付穴61が設けられている。このシリンダ取付穴61に外筒53を通すと、鍔部51が傾斜部47の外面に当たって止まる。この外筒53に車体中心側から外筒抑え部材62を取付ける。周溝52にスプリングワッシャなどの付勢部材63を嵌め、この付勢部材63で外筒抑え部材62を傾斜部47の内面に押し当てる。
傾斜部47が鍔部51と外筒抑え部材62で強く挟まれる。結果、ロック解錠機構50が車体カバー(サイドアッパカバー24)に固定される。
【0035】
外筒抑え部材62は、傾斜部47の内面に当たる本体部64と、この本体部64の縁から車体中心側へ延ばした延長部65とからなる。ロック解錠機構50を固定するだけであれば本体部64のみで差し支えない。
【0036】
本例では、敢えて延長部65を設け、延長部65の先端にアウターケーブル支持部66を設けた。このアウターケーブル支持部66に、アウターケーブル59の一端を止める。
キー54でシリンダ57を回すと、アーム56が揺動し、インナーケーブル58が引かれる。アウターケーブル59はインナーケーブル58を保護する鞘管(さやかん)であり、アウターケーブル支持部66に止められ、軸方向には移動しない。
【0037】
図から明らかなように、外筒抑え部材62と鍔部51とで車体カバー(傾斜部47)を挟むことで、車体カバーにロック解錠機構50を固定するようにしたので、ロック解錠機構50を車体フレームに連結するブラケットは必要ない。
【0038】
加えて、車体カバーにロック解錠機構50を固定するため、車体カバーにロック解錠機構50を予め取付け、さらに、ロック解錠機構50に操作ケーブル60の一端を連結したところのプレアッセンブリー品で車両組立ラインに供することができ、車両組立ラインの簡素化が図れる。
【0039】
さらには、操作ケーブル60の一端を外筒抑え部材62で支持させることができる。一般に車体フレーム又は車体カバーにフックなどの係止部材を介して操作ケーブルが止められる。本例によれば、外筒抑え部材62を利用して操作ケーブル60の一端を止めるため、別途係止部材を準備する必要が無い。
【0040】
図6に示すように、サイドアッパカバー24にロック解錠機構50が固定されている。 そして、外筒抑え部材62の本体部64は略矩形を呈する。傾斜部47の内面に廻り止め突起67、68を設け、これらの廻り止め突起67、68に本体部64を沿わせて配置する。すると、廻り止め突起67、68に当たるため本体部64すなわち、外筒抑え部材62の空転を防止することができる。
【0041】
さらに、ロック解錠機構50を挟むようにして、傾斜部47の内面から車体中心側へ柱状ねじ座69、69を延ばす。これらの柱状ねじ座69、69に、キーシリンダカバー70を当て、小ねじ71、71で固定する。
【0042】
結果、図7に示すように、キーシリンダカバー70でロック解錠機構50の大部分が囲われた。仮に、マイナスドライバをサイドアッパカバー24の上縁から差し込んだとしても、マイナスドライバはキーシリンダカバー70で遮断され、ロック解錠機構50には到達しない。
すなわち、キーシリンダカバー70がロック解錠機構50のプロテクターとなり、外力はキーシリンダカバー70に加わるが、ロック解錠機構50には至らない。ロック解錠機構50を頑強にするする必要が無く、ロック解錠機構50の小型、軽量化が容易に達成できる。
【0043】
サイドアッパカバー24の後縁にサイドリヤカバー26を当て、ビス72で両カバー24、26を繋ぐ。また、サイドアッパカバー24の下縁にサイドロアカバー25の上縁を当て、ビス73で両カバー24、25を繋ぐ。サイドロアカバー25の下縁から耳状片74を延ばす。
【0044】
図8に示すように、車体フレームの一部であるピリオンブラケット75に、耳状片74をボルト76にて固定する。別目的で準備されるピリオンブラケット75を巧みに利用してサイドロアカバー25を車体側へ固定することができる。なお、耳状片74及びボルト76は、アンダーカバー(図1、符号22)で覆われる。結果、外観性は良好に保たれる。
【0045】
以上の構成からなるロック機構及びロック解錠機構の作用を次に述べる。
図9に示すように、ロック機構80は、ブラケット43にボルト41、41で固定されるベース81と、このベース81から立ち上げる壁部82と、この壁部82に形成され上方に開放されるU溝83と、壁部82にピン84を介して回転可能に取付けられるロック爪85及びこのロック爪85の下方に延ばされる腕部86と、この腕部86に噛み合うようにして壁部82にピン87で回転可能に取付けられるカム88と、このカム88から張り出し形成されインナーケーブル58の他端を止めるケーブル結合部89と、ロック爪85がアンロック側(図では反時計方向)に回転しカム88が図で時計方向へ回るようにカム88と腕部86に渡した引張ばね91とからなる。
【0046】
図では、シート側のコ字金具92がU溝83に進入し且つロック爪85で上昇不可とされている。カム88が腕部86を抑えているため、腕部86及びロック爪85が図反時計方向へ回転する心配はない。この状態がロック状態となる。
【0047】
ロック解錠機構50によりインナーケーブル58が引かれると、カム88は図反時計方向に回り、腕部86から外れる。すると、引張ばね91で引かれる腕部86及びロック爪85は図反時計方向に回る。結果、ロック爪85がU溝83から離れ、コ字金具92は上昇可能となる。この状態をロック解錠状態という。
【0048】
図中、キーシリンダカバー70は、一枚の鋼板を塑性加工することで得た立体物である。
このようなキーシリンダカバー70の構造を、図10及び図11で詳しく説明する。
【0049】
図10に示すように、キーシリンダカバー70は、操作ケーブル60を通す溝(底93と、この底93から起立する第1壁94及び第2壁からなる。)を有する。第1壁94と、この第1壁94より柱状ステー44側に設けられる第2壁95により、次に述べる作用が発揮される。
【0050】
アウターケーブル59は軸方向に移動しないものの、内部のインナーケーブル58が移動するとことにより、軸直角方向へ振れる。
第2壁95がガイド作用を発揮して、アウターケーブル59が柱状ステー44に接触することを防止する。
【0051】
図11に示すように、アウターケーブル支持部66は、一端が開放される形態で延長部65に形成される略U字穴であり、この略U字穴に止められるアウターケーブル59が略U字穴から抜けることを防止する第1壁94が、キーシリンダカバー70に設けられている。
【0052】
略U字穴の開放端からアウターケーブル59を嵌めることができるので、アウターケーブルの取付け工数が少なくなる。加えて、キーシリンダカバー70の第1壁94によってアウターケーブル59が略U字穴から抜ける心配が無くなる。
【0053】
また、キーシリンダカバー70の底93に、外筒抑え部材の延長部65の先端を差し込むことができる係合部96を一体形成する。係合部96は細長い穴(スリット)が好適である。
【0054】
アウターケーブル支持部66を備えるため、外筒抑え部材の延長部65は、外筒(図10、符号53)を起点に片持ち梁のようにアウターケーブル59まで延びる。片持ち梁では先端の撓みや振れが大きくなるため、全体的に剛性を上げる必要があり、外筒抑え部材62の重量増加を招く。
この点、本実施例では、外筒抑え部材の延長部65の先端がキーシリンダカバー70に止められる。外筒抑え部材62は両端が支持されるため、薄くても撓みや振れが小さくなり、結果として、外筒抑え部材62の小型、軽量化が図れる。
【0055】
図10に示すように、キーシリンダカバー70は、底93と第1壁94と第2壁95を有する立体物であり、樹脂成形品であるが、1〜2mm厚さの鋼板をプレスにて塑性加工することで製造することもできる。
【0056】
尚、本発明のロック解錠機構の取付構造は、スクータ型車両に好適であるが、その他の二輪車、三輪車、四輪車にも適用可能である。
【0057】
また、開閉部材は、シートの他、小物入れのリッドであってもよい。
ロック解錠機構の取付け部位は、実施例ではサイドアッパカバーとしたが、サイドリヤカバーやフロントカバーでもよく、車体カバーであれば何処でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のロック解錠機構の取付構造は、スクータ型車両に好適である。
【符号の説明】
【0059】
10…車両(スクータ型車両)、15…開閉部材としてのシート、20…車体カバー、24…サイドアッパカバー、47…サイドアッパカバーの傾斜部、50…ロック解錠機構、51…鍔部、52…周溝、53…外筒、54…キー、55…キー穴、56…操作部としてのアーム、57…シリンダ、58…インナーケーブル、59…アウターケーブル、60…操作ケーブル、61…シリンダ取付穴、62…外筒抑え部材、63…付勢部材、65…外筒抑え部材の延長部、66…アウターケーブル支持部、70…キーシリンダカバー、80…ロック機構、94…壁(第1壁)、96…係合部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ロック解錠機構の取付構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
車体カバーに物入れが付設され、この物入れがリッドで塞がれ、このリッドを開くことで物入れに小物を出し入れすることができるようにした自動二輪車が実用に供されてきた。リッドはロック機構で施錠されることが望まれる。
【0003】
ロック機構は、各種の構造が提案されており、キーで直接解錠する構造が知られている(例えば、特許文献1(図1、図2)参照。)。
【0004】
特許文献1の図1に示されるように、シート(1)(括弧付き数字は、特許文献に記載された符号を示す。以下同様)がシリンダ錠(7)により施錠される。同文献の図2に示されるように、ロックプレート(8)を旋回させ、ストライカー(11)に嵌ると施錠状態になる。ロックプレート(8)を逆方向へ旋回させると解錠状態になる。
【0005】
構造が簡単である。同文献の図1に示されように、シリンダ錠(7)はシート(1)の後部に且つ車幅中央に配置される。すなわち、シリンダ錠(7)の配置に自由度がない。
シート(1)の直後にグラブレールやキャリアが取付けられる車両が少なくない。シリンダ錠(7)の存在により、グラブレールやキャリアの取付け位置を車両後方へずらす必要があるなど、影響が大きい。
【0006】
そこで、ロック機構とロック解錠機構を互いに独立させ、ロック解錠機構を任意の位置に置くことができる構造が提案されている(例えば、特許文献2(図2、図3)参照。)。
特許文献2の図2に示されるように、ロック機構(80)と離れた位置にロック解錠機構(90)が配置される。ロック解錠機構(90)はメインキー装置(40)に含まれる。ロック解錠機構(90)は任意の位置に配置可能である。
【0007】
ところで、同文献の図3に示されるように、ロック解錠機構を含むメインキー装置(40)は、ブラケット(92)にビス(93)を用いて固定される。ブラケット(92)はヘッドパイプ(11a)から延びる。すなわち、ロック解錠機構は、ブラケット(92)を介して車体フレームに固定される。
【0008】
ロック解錠機構の取付け部位が車体フレームから離れている場合は、必然的にブラケット(92)が長く、重くなる。このような長くて重いブラケット(92)は、車両の重量増加を招くと共にブラケットの調達コスト及び取付けコストが嵩む。
【0009】
しかし、軽量化及びコストダウンが求められる車両において、特許文献2の構造に代わる構造が求められる。
すなわち、ロック機構とロック解錠機構を互いに独立させた上で、ブラケットを省くことができるロック解錠機構の取付構造が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−7048号公報
【特許文献2】特開2003−89370公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ロック機構とロック解錠機構を互いに独立させた上で、ロック解錠機構を支えるブラケットを省くことができるロック解錠機構の取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、車体を覆う車体カバーに、開閉可能にリッド又はシートからなる開閉部材が取付けられ、この開閉部材を閉じ位置でロックするロック機構が前記車体に設けられ、この車体カバーに前記ロック機構を解錠するロック解錠機構が設けられ、このロック解錠機構から前記ロック機構にインナーケーブルとこのインナーケーブルを軸方向へ移動可能に収納するアウターケーブルからなる操作ケーブルが渡され、前記ロック解錠機構のキー穴にキーを差し込み、前記キー穴を一端に備えるシリンダを回すことで、このシリンダの先端に設けられている操作部で前記インナーケーブルが操作され前記ロック機構が解錠される車両用ロック解錠機構の取付構造において、
前記シリンダを回転自在に支える外筒には、前記キー穴側の部位に、鍔部が一体形成され、前記車体カバーに設けられるシリンダ取付穴に前記外筒が差し込まれると前記車体カバーの外面に前記鍔部が当たるようにし、差し込まれた前記外筒に前記車体カバーの内面に当接する外筒抑え部材を取付け、この外筒抑え部材と前記鍔部とで前記車体カバーを挟むことで、前記車体カバーに前記ロック解錠機構を固定し、
前記外筒抑え部材に、前記アウターケーブルを支えるアウターケーブル支持部を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明は、車体カバーの内面に、ロック解錠機構を囲うキーシリンダカバーが取付けられ、このキーシリンダカバーに、外筒抑え部材の先端を止めることができる係合部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明では、アウターケーブル支持部は、一端が開放される形態で外筒抑え部材に形成される略U字穴であり、この略U字穴に止められるアウターケーブルが略U字穴から抜けることを防止する壁が、キーシリンダカバーに設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明では、キーシリンダカバーは、係合部を含めて一枚の鋼板を塑性変形により形成される1ピース部品であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、外筒抑え部材と鍔部とで車体カバーを挟むことで、車体カバーにロック解錠機構を固定するようにした。すなわち、ブラケットは必要ない。
【0017】
加えて、車体カバーにロック解錠機構を固定するため、車体カバーにロック解錠機構を予め取付け、さらに、ロック解錠機構に操作ケーブルの一端を連結したところのプレアッセンブリー品で車両組立ラインに供することができ、車両組立ラインの簡素化が図れる。
【0018】
さらには、操作ケーブルの一端を外筒抑え部材で支持させることができる。一般に車体フレーム又は車体カバーにフックなどの係止部材を介して操作ケーブルが止められる。本発明によれば、外筒抑え部材を利用して操作ケーブルの一端を止めるため、別途係止部材を準備する必要が無い。
【0019】
請求項2に係る発明では、キーシリンダカバーで、ロック解錠機構を囲う。キーシリンダカバーがロック解錠機構のプロテクターとなり、外力はキーシリンダカバーに加わるが、ロック解錠機構には至らない。ロック解錠機構を頑強にする必要が無く、ロック解錠機構の小型、軽量化が容易に達成できる。
【0020】
また、アウターケーブル支持部を備えるため、外筒抑え部材は、外筒を起点に片持ち梁のようにアウターケーブルまで延びる。片持ち梁では先端の撓みや振れが大きくなるため、対策として全体的に剛性を上げる必要があり、外筒抑え部材の重量増加を招く。
この点、本発明では、外筒抑え部材の先端がキーシリンダカバーに止められる。外筒抑え部材は両端が支持されるため、薄くても撓みや振れが小さくなり、結果として、外筒抑え部材の小型、軽量化が図れる。
【0021】
請求項3に係る発明では、アウターケーブル支持部は、一端が開放される形態で外筒抑え部材に形成される略U字穴であり、この略U字穴に止められるアウターケーブルが略U字穴から抜けることを防止する壁が、キーシリンダカバーに設けられている。
略U字穴の開放端からアウターケーブルを嵌めることができるので、アウターケーブルの取付け工数が少なくなる。加えて、キーシリンダカバーによってアウターケーブルが略U字穴から抜ける心配が無くなる。
【0022】
請求項4に係る発明では、キーシリンダカバーは、一枚の鋼板を塑性変形により形成される。一枚の鋼板をプレス成形することで立体形状のキーシリンダカバーが得られる。鋼製であるから、キーシリンダカバーの剛性は大きい。
加えて、鋼板は安価であり、プレス成形は短時間で行われる。結果、剛性に富むキーシリンダカバーを安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】車両の左側面図である。
【図2】車両後部の平面図(シートは省いた。)である。
【図3】車両後部の平面図(ラゲージボックスは省いた。)である。
【図4】図3の4矢視図である。
【図5】図4の要部断面図である。
【図6】サイドアッパカバーを車体中心から見た図である。
【図7】サイドカバーを車体中心から見た図である。
【図8】サイドロアカバーを外から見た図である。
【図9】ロック機構及びロック解錠機構の作用を説明する図である。
【図10】キーシリンダカバーの作用を説明する図である。
【図11】図10の11−11線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0025】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、車両10は、ハンドル11で操舵される前輪12とパワーユニット13で支えられる後輪14を前後に備えるスクータ型車両である。
運転者はタンデムシートと呼ばれるシート15の前半部に座り、足をステップ16に載せ、ハンドル11を操作する。同乗者はシート15後方に配置されるグラブレール17を握りながらシート15の後半部に座る。
【0026】
車体フレームを主とする車体は、車体カバー20で覆われている。
車体カバー20は、例えばハンドル11下のフロントカバー21と、ステップ16下のアンダーカバー22と、シート15の下方で且つ車体の側方を覆うサイドカバー23とからなる。
このサイドカバー23は、この例では分割され、シート15に沿って配置されるサイドアッパカバー24と、このサイドアッパカバー24の下に配置されるサイドロアカバー25と、サイドアッパカバー24の車両後方に配置されるサイドリヤカバー26とからなる。
【0027】
開閉部材としてのシート15の下にラゲージボックスが配置されている。このラゲージボックスについて、図2に基づいて説明する。
図2はシートを省いた車両後部の平面図であり、シートを開けると、ラゲージボックス27が現れる。ラゲージボックス27は、ヘルメットなどを収納することができる物入れ部28と、この物入れ部28から車両後方へ張り出す水平膨出部29とからなる、樹脂成形品である。
【0028】
水平膨出部29には、後部に給油キャップ31を通す円形開口32が設けられ、前部(物入れ部28寄り)にシートに付属するコ字金具(図9、符号92)を通す矩形開口33が設けられる。ラゲージボックス27は、少なくとも水平膨出部29の前部が2本のビス34、34で車体フレームに締結される(締結構造は後述する。)。
【0029】
2本のビス34、34などを外すとラゲージボックス27を図面表側へ外すことができる。
すると、図3に示すように、燃料ポンプ35を備えている燃料タンク36が現れる。燃料タンク36は、タンク下半体にタンク上半体を重ねフランジ37を溶接して一体化した密閉容器である。
車体フレームの一要素であるクロスメンバー38にフランジ37が載せられ、このフランジ37にシートキャッチャに代表されるロック機構80(詳細構造は図9で説明する。)が載せられ、ロック機構80とフランジ37とに上からボルト41、41を通し、これらのボルト41、41をクロスメンバー38側に締結する。
【0030】
すなわち、燃料タンク36とロック機構80がボルト41、41でクロスメンバー38に共締めされる。共締めによりボルト本数を削減すると共にボルト締付け工数を削減することができる。
【0031】
図4に示すように、クロスメンバー38はシートレール42から延ばされ、中央にロック機構80を支えるブラケット43が設けられる。このブラケット43とシートレール42との間に部位にてクロスメンバー38から柱状ステー44が上へ延ばされている。
【0032】
サイドアッパカバー24は、上部が略水平部46とされ、この略水平部46から傾斜部47が車幅方向外へ延び、この傾斜部47から縦壁部48が下がる断面形態とされる。すなわち、略水平部46と傾斜部47と縦壁部48とでシートレール42を囲う。
略水平部46から車体中心へ舌片49が延び、この舌片49が柱状ステー44に載せられる。舌片49にさらにラゲージボックスの水平膨出部(図2、符号26)が載せられ、この水平膨出部と舌片49とがビス34で共締めされる。すなわち、サイドアッパカバー24とラゲージボックスとがビス34で共締めされる。
【0033】
図5は図4の要部断面図であり、ロック解錠機構50は、一端に鍔部51を備え、この鍔部51に沿って、一般部より小径の周溝52を備える外筒53と、この外筒53に回転可能に取付けられキー54を差し込むキー穴55を備え先端に操作部としてのアーム56を備えるシリンダ57とからなる。
アーム56に、インナーケーブル58とアウターケーブル59からなる操作ケーブル60の一端(正確にはインナーケーブル58の一端)が止められる。
【0034】
サイドアッパカバー24の傾斜部47に外筒53を通すシリンダ取付穴61が設けられている。このシリンダ取付穴61に外筒53を通すと、鍔部51が傾斜部47の外面に当たって止まる。この外筒53に車体中心側から外筒抑え部材62を取付ける。周溝52にスプリングワッシャなどの付勢部材63を嵌め、この付勢部材63で外筒抑え部材62を傾斜部47の内面に押し当てる。
傾斜部47が鍔部51と外筒抑え部材62で強く挟まれる。結果、ロック解錠機構50が車体カバー(サイドアッパカバー24)に固定される。
【0035】
外筒抑え部材62は、傾斜部47の内面に当たる本体部64と、この本体部64の縁から車体中心側へ延ばした延長部65とからなる。ロック解錠機構50を固定するだけであれば本体部64のみで差し支えない。
【0036】
本例では、敢えて延長部65を設け、延長部65の先端にアウターケーブル支持部66を設けた。このアウターケーブル支持部66に、アウターケーブル59の一端を止める。
キー54でシリンダ57を回すと、アーム56が揺動し、インナーケーブル58が引かれる。アウターケーブル59はインナーケーブル58を保護する鞘管(さやかん)であり、アウターケーブル支持部66に止められ、軸方向には移動しない。
【0037】
図から明らかなように、外筒抑え部材62と鍔部51とで車体カバー(傾斜部47)を挟むことで、車体カバーにロック解錠機構50を固定するようにしたので、ロック解錠機構50を車体フレームに連結するブラケットは必要ない。
【0038】
加えて、車体カバーにロック解錠機構50を固定するため、車体カバーにロック解錠機構50を予め取付け、さらに、ロック解錠機構50に操作ケーブル60の一端を連結したところのプレアッセンブリー品で車両組立ラインに供することができ、車両組立ラインの簡素化が図れる。
【0039】
さらには、操作ケーブル60の一端を外筒抑え部材62で支持させることができる。一般に車体フレーム又は車体カバーにフックなどの係止部材を介して操作ケーブルが止められる。本例によれば、外筒抑え部材62を利用して操作ケーブル60の一端を止めるため、別途係止部材を準備する必要が無い。
【0040】
図6に示すように、サイドアッパカバー24にロック解錠機構50が固定されている。 そして、外筒抑え部材62の本体部64は略矩形を呈する。傾斜部47の内面に廻り止め突起67、68を設け、これらの廻り止め突起67、68に本体部64を沿わせて配置する。すると、廻り止め突起67、68に当たるため本体部64すなわち、外筒抑え部材62の空転を防止することができる。
【0041】
さらに、ロック解錠機構50を挟むようにして、傾斜部47の内面から車体中心側へ柱状ねじ座69、69を延ばす。これらの柱状ねじ座69、69に、キーシリンダカバー70を当て、小ねじ71、71で固定する。
【0042】
結果、図7に示すように、キーシリンダカバー70でロック解錠機構50の大部分が囲われた。仮に、マイナスドライバをサイドアッパカバー24の上縁から差し込んだとしても、マイナスドライバはキーシリンダカバー70で遮断され、ロック解錠機構50には到達しない。
すなわち、キーシリンダカバー70がロック解錠機構50のプロテクターとなり、外力はキーシリンダカバー70に加わるが、ロック解錠機構50には至らない。ロック解錠機構50を頑強にするする必要が無く、ロック解錠機構50の小型、軽量化が容易に達成できる。
【0043】
サイドアッパカバー24の後縁にサイドリヤカバー26を当て、ビス72で両カバー24、26を繋ぐ。また、サイドアッパカバー24の下縁にサイドロアカバー25の上縁を当て、ビス73で両カバー24、25を繋ぐ。サイドロアカバー25の下縁から耳状片74を延ばす。
【0044】
図8に示すように、車体フレームの一部であるピリオンブラケット75に、耳状片74をボルト76にて固定する。別目的で準備されるピリオンブラケット75を巧みに利用してサイドロアカバー25を車体側へ固定することができる。なお、耳状片74及びボルト76は、アンダーカバー(図1、符号22)で覆われる。結果、外観性は良好に保たれる。
【0045】
以上の構成からなるロック機構及びロック解錠機構の作用を次に述べる。
図9に示すように、ロック機構80は、ブラケット43にボルト41、41で固定されるベース81と、このベース81から立ち上げる壁部82と、この壁部82に形成され上方に開放されるU溝83と、壁部82にピン84を介して回転可能に取付けられるロック爪85及びこのロック爪85の下方に延ばされる腕部86と、この腕部86に噛み合うようにして壁部82にピン87で回転可能に取付けられるカム88と、このカム88から張り出し形成されインナーケーブル58の他端を止めるケーブル結合部89と、ロック爪85がアンロック側(図では反時計方向)に回転しカム88が図で時計方向へ回るようにカム88と腕部86に渡した引張ばね91とからなる。
【0046】
図では、シート側のコ字金具92がU溝83に進入し且つロック爪85で上昇不可とされている。カム88が腕部86を抑えているため、腕部86及びロック爪85が図反時計方向へ回転する心配はない。この状態がロック状態となる。
【0047】
ロック解錠機構50によりインナーケーブル58が引かれると、カム88は図反時計方向に回り、腕部86から外れる。すると、引張ばね91で引かれる腕部86及びロック爪85は図反時計方向に回る。結果、ロック爪85がU溝83から離れ、コ字金具92は上昇可能となる。この状態をロック解錠状態という。
【0048】
図中、キーシリンダカバー70は、一枚の鋼板を塑性加工することで得た立体物である。
このようなキーシリンダカバー70の構造を、図10及び図11で詳しく説明する。
【0049】
図10に示すように、キーシリンダカバー70は、操作ケーブル60を通す溝(底93と、この底93から起立する第1壁94及び第2壁からなる。)を有する。第1壁94と、この第1壁94より柱状ステー44側に設けられる第2壁95により、次に述べる作用が発揮される。
【0050】
アウターケーブル59は軸方向に移動しないものの、内部のインナーケーブル58が移動するとことにより、軸直角方向へ振れる。
第2壁95がガイド作用を発揮して、アウターケーブル59が柱状ステー44に接触することを防止する。
【0051】
図11に示すように、アウターケーブル支持部66は、一端が開放される形態で延長部65に形成される略U字穴であり、この略U字穴に止められるアウターケーブル59が略U字穴から抜けることを防止する第1壁94が、キーシリンダカバー70に設けられている。
【0052】
略U字穴の開放端からアウターケーブル59を嵌めることができるので、アウターケーブルの取付け工数が少なくなる。加えて、キーシリンダカバー70の第1壁94によってアウターケーブル59が略U字穴から抜ける心配が無くなる。
【0053】
また、キーシリンダカバー70の底93に、外筒抑え部材の延長部65の先端を差し込むことができる係合部96を一体形成する。係合部96は細長い穴(スリット)が好適である。
【0054】
アウターケーブル支持部66を備えるため、外筒抑え部材の延長部65は、外筒(図10、符号53)を起点に片持ち梁のようにアウターケーブル59まで延びる。片持ち梁では先端の撓みや振れが大きくなるため、全体的に剛性を上げる必要があり、外筒抑え部材62の重量増加を招く。
この点、本実施例では、外筒抑え部材の延長部65の先端がキーシリンダカバー70に止められる。外筒抑え部材62は両端が支持されるため、薄くても撓みや振れが小さくなり、結果として、外筒抑え部材62の小型、軽量化が図れる。
【0055】
図10に示すように、キーシリンダカバー70は、底93と第1壁94と第2壁95を有する立体物であり、樹脂成形品であるが、1〜2mm厚さの鋼板をプレスにて塑性加工することで製造することもできる。
【0056】
尚、本発明のロック解錠機構の取付構造は、スクータ型車両に好適であるが、その他の二輪車、三輪車、四輪車にも適用可能である。
【0057】
また、開閉部材は、シートの他、小物入れのリッドであってもよい。
ロック解錠機構の取付け部位は、実施例ではサイドアッパカバーとしたが、サイドリヤカバーやフロントカバーでもよく、車体カバーであれば何処でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のロック解錠機構の取付構造は、スクータ型車両に好適である。
【符号の説明】
【0059】
10…車両(スクータ型車両)、15…開閉部材としてのシート、20…車体カバー、24…サイドアッパカバー、47…サイドアッパカバーの傾斜部、50…ロック解錠機構、51…鍔部、52…周溝、53…外筒、54…キー、55…キー穴、56…操作部としてのアーム、57…シリンダ、58…インナーケーブル、59…アウターケーブル、60…操作ケーブル、61…シリンダ取付穴、62…外筒抑え部材、63…付勢部材、65…外筒抑え部材の延長部、66…アウターケーブル支持部、70…キーシリンダカバー、80…ロック機構、94…壁(第1壁)、96…係合部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体を覆う車体カバー(20)に、開閉可能にリッド又はシートからなる開閉部材(15)が取付けられ、この開閉部材(15)を閉じ位置でロックするロック機構(80)が前記車体に設けられ、前記車体カバー(20)に前記ロック機構(80)を解錠するロック解錠機構(50)が設けられ、このロック解錠機構(50)から前記ロック機構(80)にインナーケーブル(58)とこのインナーケーブル(58)を軸方向へ移動可能に収納するアウターケーブル(59)からなる操作ケーブル(60)が渡され、前記ロック解錠機構(50)のキー穴(55)にキー(54)を差し込み、前記キー穴(55)を一端に備えるシリンダ(57)を回すことで、このシリンダ(57)の先端に設けられている操作部(56)で前記インナーケーブル(58)が操作され前記ロック機構(80)が解錠される車両用ロック解錠機構の取付構造において、
前記シリンダ(57)を回転自在に支える外筒(53)には、前記キー穴(55)側の部位に、鍔部(51)が一体形成され、前記車体カバー(20)に設けられるシリンダ取付穴(61)に前記外筒(53)が差し込まれると前記車体カバー(20)の外面に前記鍔部(51)が当たるようにし、差し込まれた前記外筒(53)に前記車体カバー(20)の内面に当接する外筒抑え部材(62)を取付け、この外筒抑え部材(62)と前記鍔部(51)とで前記車体カバー(20)を挟むことで、前記車体カバー(20)に前記ロック解錠機構(50)を固定し、
前記外筒抑え部材(62)に、前記アウターケーブル(59)を支えるアウターケーブル支持部(66)を備えたことを特徴とする車両用ロック解錠機構の取付構造。
【請求項2】
前記車体カバー(20)の内面に、前記ロック解錠機構(50)を囲うキーシリンダカバー(70)が取付けられ、このキーシリンダカバー(70)に、前記外筒抑え部材(62)の先端を止めることができる係合部(96)が設けられていることを特徴とする請求項1記載の車両用ロック解錠機構の取付構造。
【請求項3】
前記アウターケーブル支持部(66)は、一端が開放される形態で前記外筒抑え部材(62)に形成される略U字穴であり、この略U字穴に止められる前記アウターケーブル(59)が前記略U字穴から抜けることを防止する壁(94)が、前記キーシリンダカバー(70)に設けられていることを特徴とする請求項2記載の車両用ロック解錠機構の取付構造。
【請求項4】
前記キーシリンダカバー(70)は、前記係合部(96)を含めて一枚の鋼板を塑性変形により形成される1ピース部品であることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の車両用ロック解錠機構の取付構造。
【請求項1】
車体を覆う車体カバー(20)に、開閉可能にリッド又はシートからなる開閉部材(15)が取付けられ、この開閉部材(15)を閉じ位置でロックするロック機構(80)が前記車体に設けられ、前記車体カバー(20)に前記ロック機構(80)を解錠するロック解錠機構(50)が設けられ、このロック解錠機構(50)から前記ロック機構(80)にインナーケーブル(58)とこのインナーケーブル(58)を軸方向へ移動可能に収納するアウターケーブル(59)からなる操作ケーブル(60)が渡され、前記ロック解錠機構(50)のキー穴(55)にキー(54)を差し込み、前記キー穴(55)を一端に備えるシリンダ(57)を回すことで、このシリンダ(57)の先端に設けられている操作部(56)で前記インナーケーブル(58)が操作され前記ロック機構(80)が解錠される車両用ロック解錠機構の取付構造において、
前記シリンダ(57)を回転自在に支える外筒(53)には、前記キー穴(55)側の部位に、鍔部(51)が一体形成され、前記車体カバー(20)に設けられるシリンダ取付穴(61)に前記外筒(53)が差し込まれると前記車体カバー(20)の外面に前記鍔部(51)が当たるようにし、差し込まれた前記外筒(53)に前記車体カバー(20)の内面に当接する外筒抑え部材(62)を取付け、この外筒抑え部材(62)と前記鍔部(51)とで前記車体カバー(20)を挟むことで、前記車体カバー(20)に前記ロック解錠機構(50)を固定し、
前記外筒抑え部材(62)に、前記アウターケーブル(59)を支えるアウターケーブル支持部(66)を備えたことを特徴とする車両用ロック解錠機構の取付構造。
【請求項2】
前記車体カバー(20)の内面に、前記ロック解錠機構(50)を囲うキーシリンダカバー(70)が取付けられ、このキーシリンダカバー(70)に、前記外筒抑え部材(62)の先端を止めることができる係合部(96)が設けられていることを特徴とする請求項1記載の車両用ロック解錠機構の取付構造。
【請求項3】
前記アウターケーブル支持部(66)は、一端が開放される形態で前記外筒抑え部材(62)に形成される略U字穴であり、この略U字穴に止められる前記アウターケーブル(59)が前記略U字穴から抜けることを防止する壁(94)が、前記キーシリンダカバー(70)に設けられていることを特徴とする請求項2記載の車両用ロック解錠機構の取付構造。
【請求項4】
前記キーシリンダカバー(70)は、前記係合部(96)を含めて一枚の鋼板を塑性変形により形成される1ピース部品であることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の車両用ロック解錠機構の取付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−32049(P2013−32049A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167896(P2011−167896)
【出願日】平成23年7月31日(2011.7.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月31日(2011.7.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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