説明

車両用ワイヤハーネスおよび該ワイヤハーネスの配索方法

【課題】ワイヤハーネス端末に接続したコネクタを相手方コネクタと嵌合接続するまで、ブラつきが生じないように保持する車両用ワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】端末に接続されたコネクタと近接する位置に車体固定用のブラケットを取り付け、前記ブラケットにコネクタを保持するコネクタ保持部を突設し、該コネクタ保持部にロック部を設けている一方、前記コネクタのハウジングに前記ブラケットのロック部とロック結合する被ロック部を設けた被保持部を突設し、車体に固定される前記ブラケットで位置決め保持されたコネクタを、相手方コネクタと嵌合接続する構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車に配索されるワイヤハーネスおよびその配索方法に関し、特に、ドアと車体との間に配索されるワイヤハーネスにおいて、該ワイヤハーネスの端末に接続したコネクタを車体側の貫通穴を通して相手方コネクタと嵌合接続する場合に好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のドアに装着したパワーウィンド等の電装品への給電用として、ドア内部にワイヤハーネスを配索し、該ワイヤハーネスの端末に接続したコネクタを車体側に配索されるワイヤハーネスのコネクタと接続してドア側へ給電している。
前記ワイヤハーネスは、車体側接続部分をドアパネルに設けた貫通穴から引き出した後に、車体側に設けた貫通穴を通して、ドアハーネスの端末に接続したコネクタと車体側のワイヤハーネスの端末のコネクタとを接続している場合が多い。(特開2002−247737号公報等参照)
【0003】
また、特開平2−267044号公報では、ドアトリムにドアポケットを装着し、該ドアポケットにドアハーネス端末のコネクタと接続する相手方コネクタを設けて嵌合接続し、該相手方コネクタを端末に接続した別のドアハーネスを車体側へと引き出している場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−247737号公報
【特許文献2】特開平2−267044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように、ドアと車体との間に配索するワイヤハーネス端末のコネクタを車体に設けた貫通穴に通して車体側のワイヤハーネス端末のコネクタと接続する場合、車体の貫通穴に通したコネクタはワイヤハーネスで支持されているだけであるため、コネクタの支持強度が低く、貫通穴へのコネクタの挿通作業がやりにくい。かつ、挿通作業後にドア側ワイヤハーネスのコネクタと車体側ワイヤハーネスのコネクタの両方を手に持ってコネクタ同士を接続する作業を行う必要があり、作業性が悪い問題がある。
さらに、車体の貫通穴に貫通させた後のドア側ワイヤハーネスのコネクタは、相手側のコネクタと接続するまで、ワイヤハーネスで支持されているだけでブラブラした状態であるため、該コネクタや、該コネクタと接続した部分のワイヤハーネスが車体に当たって車体に損傷を与える虞れがある。
【0006】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、ドア側等に配索されるワイヤハーネスの端末のコネクタを、車体の貫通穴へ挿通する際の支持強度を高めて挿通作業性を良くすると共に、貫通穴への挿通作業後もブラブラさせずにコネクタおよび、該コネクタと接続した部分のワイヤハーネスを保持し、かつ、車体側ワイヤハーネス等の端末に接続された相手方コネクタとの嵌合作業をしやすくすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、第1の発明として、端末に接続されたコネクタと近接する位置に車体固定用のブラケットを取り付け、
前記ブラケットにコネクタを保持するコネクタ保持部を突設し、該コネクタ保持部にロック部を設けている一方、前記コネクタのハウジングに前記ブラケットのロック部とロック結合する被ロック部を設けた被保持部を突設し、
車体に固定される前記ブラケットで位置決め保持されたコネクタを、相手方コネクタと嵌合接続する構成としていることを特徴とする車両用ワイヤハーネスを提供している。
【0008】
前記ブラケットを横長形状とし、該ブラケットの横方向の一端側外面に前記コネクタ保持部を横方向に突設し、該コネクタ保持部の突出寸法は前記ブラケットの横方向寸法よりも小さくしていることが好ましい。
【0009】
第2の発明として、前記車両用ワイヤハーネスの配索方法を提供している。
該配索方法は、車体に設けた貫通穴に、前記ブラケットを90度回転して縦方向として、前記コネクタ、該コネクタを保持した前記コネクタ保持部を順次挿通した後にブラケットを90度回転させて横長方向とし、該ブラケットを車体に固定した後に、該ブラケットで保持された前記コネクタを相手方コネクタと嵌合接続することを特徴としている。
【0010】
前記のように、ワイヤハーネスには、その端末のコネクタと近接した位置に車体固定用のブラケットを取り付け、該ブラケットに突設したコネクタ保持部でコネクタを保持しておくと、ワイヤハーネスで支持されただけのコネクタに比べて、コネクタをしっかりと保持でき、コネクタの貫通穴挿通作業を容易に行うことができると共に、相手方コネクタと嵌合接続するまでの間にコネクタおよびワイヤハーネスがブラブラして車体に損傷を与えることが防止できる。さらに、相手方コネクタとの嵌合接続時に、コネクタは車体に固定したブラケットで保持しているため、相手方コネクタを固定されたコネクタに嵌合するだけの片手作業で行うことができ、コネクタの嵌合接続作業も容易となる。
【0011】
前記ワイヤハーネスがドアに配索されるワイヤハーネスである場合に、最も好適に用いられる。即ち、
車体ボデイに設けた貫通穴に、前記ドア側のワイヤハーネスのコネクタを貫通させた後に、前記ブラケットを車体ボデイに固定し、該ブラケットで保持した前記コネクタを、車体側のワイヤハーネスの相手方コネクタと接続している。
前記ドアはスライドドア、あるいは車体にヒンジ結合されたサイドドアのいずれにも適用できる。
さらに、前記特許文献2と同様に、ドアフレームに貫通穴を設け、該貫通穴にドアハーネス端末のコネクタを通し、該ドアフレームとドアトリムの間に車体側ワイヤハーネスと接続した別のフラットハーネス等からなるワイヤハーネスを配索し、該ワイヤハーネス端末のコネクタと前記コネクタとを嵌合接続してもよい。この場合、ドアフレームが車体ボデイに相当することになる。
前記ドアと車体との間に渡り配索する部分のワイヤハーネスには、コルゲートチューブあるいはキャタピラ型外装材で外装している。
なお、ドアハーネスに限定されず、車両に配索されるワイヤハーネスの端末のコネクタを車体の貫通穴に挿通した後に、相手方コネクタと嵌合接続する場合に適用することができる。
【発明の効果】
【0012】
前記したように、本発明では、車両に配索したワイヤハーネスを、その端末のコネクタが相手方コネクタと嵌合接続までの間、該コネクタおよび該コネクタに接続した部分のワイヤハーネスをブラケットでしっかりと保持できるため、コネクタ及びワイヤハーネスが車体に接触して損傷を与えることを防止できる。かつ、コネクタ同士の嵌合接続時に、コネクタが車体に固定されたブラケットで保持されていることにより、相手方コネクタを差し込むだけで嵌合接続でき、作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)(B)は本発明の実施形態のワイヤハーネスを示す斜視図である
【図2】車体側の要部を示す図面である。
【図3】(A)〜(D)はワイヤハーネスの配索手順を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1(A)(B)に示す本実施形態のワイヤハーネス1は自動車のスライドドア内部に配索された後にスライドドアから引き出されて車体ボデイへと渡り配索されるワイヤハーネスである。該ワイヤハーネスの端末に接続したコネクタ2を車体ボデイに設けた貫通穴に貫通させた後に、車体側に配索するワイヤハーネスとコネクタ接続している。
【0015】
前記ワイヤハーネス1には、車体接続側の端末に接続したコネクタ2と近接した位置に車体ボデイ固定用の樹脂成形品からなるブラケット3を取り付けている。該ブラケット3の内部にワイヤハーネス1を貫通させている。該ブラケット3から引き出したワイヤハーネス1をキャタピラ形状とした外装材(図示せず)で外装している。
【0016】
前記ブラケット3は図示のように横長な略長方形であり、ワイヤハーネス1はブラケット3の横方向の一端側の側面3aより挿入し、他端側の側面3bに近接した前面3cより引き出している。該ブラケット3の前面3cの中央部には固定用のボルト4を突設していると共に、その側部に位置決め用ボス5を突設している。
【0017】
前記ブラケット3の横方向の側面3bには、前端よりコネクタ保持部6を一体成形で突設している。該コネクタ保持部6はブラケット3の突出位置より前方に向けてV字状に屈曲させた後に横方向に突出させた板状とし、突出端にロック爪6aを設けている。
【0018】
ワイヤハーネス1の端末に接続した前記コネクタ2のハウジング2aの左右方向の外端面の後端から被保持部7を突設し、その先端に前記ロック爪6aとロック結合するロック枠7aを設けている。なお、該被保持部7はブラケット3に突設したコネクタ保持部6と対応する側だけに設けても良いが、その場合、ワイヤハーネス1へのコネクタ2の取付方向が規制されるため、被保持部7を両側に設けることが好ましい。
前記コネクタ2とブラケット3との間の寸法L1は100〜200mmである。
【0019】
前記ワイヤハーネス1は、図1(B)に示すように、ブラケット3から突設したコネクタ保持部6のロック爪6aをコネクタ2から突設した被保持部7のうち、対応する側の被保持部7のロック枠7aとロック結合している。この状態で、ブラケット3とコネクタ2との間のワイヤハーネス1aは一側方へと横方向に屈曲した状態となる。
このように、ワイヤハーネス1の端末に接続したコネクタ2をロック結合した被保持部7とコネクタ保持部6を介してブラケット3で保持すると、ワイヤハーネス1の端末のコネクタ2がブラブラせずに位置決め保持できる。
【0020】
図2に示すように、ワイヤハーネス1へ給電する車体側ワイヤハーネス10を配索する車体ボデイ11には、横長な長円形状の貫通穴12を設けている。
前記ワイヤハーネス1の端末に接続したコネクタ2の横方向寸法は前記貫通穴12の横方向寸法より小さい。また、車体ボデイ11には貫通穴12の側方にボルト穴11aを設けていると共に、ブラケット3の位置決めボス5を嵌合する位置決め凹部11bを設けている。
【0021】
図3(A)〜(D)に示すように、前記ワイヤハーネス1のコネクタ2およびブラケット3のコネクタ保持部6を車体ボデイ11の貫通穴12を貫通させた後に、ブラケット3を車体ボデイ11に固定し、この車体ボデイ11に固定したブラケット3で保持されているコネクタ2に前記車体側ワイヤハーネス10の端末の相手方コネクタ20と嵌合接続している。
【0022】
詳細には、図3(A)に示すように、横長なブラケット3を回転させて縦長方向に向けて、該ブラケット3の後端を作業者が手で持って、先端のコネクタ2を貫通穴12に通し、ついで、コネクタ保持部6と被保持部7とのロック結合部およびワイヤハーネス1aの部分を貫通穴12に通す。この貫通作業時、コネクタ2はブラケット3で保持されているため、コネクタ2の貫通穴12への貫通作業が容易となる。
【0023】
このように、コネクタ2とコネクタ保持部6を貫通穴12に貫通させて車体ボデイ11側へ配置した後、図3(B)に示すように、貫通穴12を貫通させていないブラケット3を90度回転させて、貫通穴12を塞ぐように平行配置する。
その後、図3(C)に示すように、貫通穴12より側方に位置するブラケット3の位置決めボス5を車体ボデイ11の位置決め凹部11bに嵌合して位置決め保持し、ボルト4をボルト穴11aに通してナットで締結固定する。
最後に、図3(D)に示すように、コネクタ2にワイヤハーネス10の端末の相手方コネクタ20を嵌合接続する。其の際、コネクタ2は被保持部7が車体ボデイ11に固定されたブラケット3のコネクタ保持部6とロック結合されて位置決め保持されているため、相手方コネクタ20を差し込んで嵌合接続するだけでよい。
【0024】
前記のように、ワイヤハーネス1の端末のコネクタ2をブラケット3で保持しているため、コネクタ2を車体ボデイ11の貫通穴12へ貫通する作業性が良くなる。
また、コネクタ2を車体ボデイ11の貫通穴12を通した後に、ブラケット3を車体ボデイ11に固定するため、該ブラケット3で保持したコネクタ2および該コネクタ2とブラケット3との間のワイヤハーネス1aはブラつかずに保持でき、コネクタ2およびワイヤハーネス1aが車体ボデイ11に当たって車体ボデイに傷を発生させることを防止できる。
さらに、前記ドア側に配索するワイヤハーネス1を車体側のワイヤハーネス10とコネクタ接続する際、ワイヤハーネス1のコネクタ2をブラケット3で位置決め保持しているため、ワイヤハーネス10のコネクタ20を差し込み接続するだけでよく、コネクタ接続作業を安定して行うことができる。
【0025】
本発明は前記実施形態に限定されず、ドアと車体との間にフラットハーネスからなるワイヤハーネスを渡り配索し、該フラットハーネスの先端側をドア内部に配索し、該フラットハーネスの端末に接続したコネクタと、前記ドア内部に配索したドアハーネスの端末のコネクタとを接続する場合にも適用できる。
その場合、ドアのドアフレームとドアトリムとの間に前記フラットハーネスのドア側接続部を通す一方、前記ドアフレームに設けた貫通穴に前記ドアハーネスの端末のコネクタを通し、ブラケットをドアフレームに固定すると共に、ドアハーネスの端末コネクタと前記フラットハーネスの端末のコネクタとを嵌合接続する。
【0026】
さらに、車体ボデイとドアとをヒンジ結合したサイドドアの内部に配索するドアハーネスにも適用できる。
その場合は、前記車体ボデイの貫通穴は、ドアと対向する車体ボデイの対向面に設けられ、該貫通穴にドアハーネスの端末コネクタを貫通した後に、ブラケットを車体ボデイに固定し、その後、ドアハーネスの端末コネクタを車体側ワイヤハーネスのコネクタと嵌合接続する。
【符号の説明】
【0027】
1 ワイヤハーネス(ドアハーネス)
2 コネクタ
3 ブラケット
4 ボルト
6 コネクタ保持部
7 被保持部
10 車体側ワイヤハーネス
11 車体ボデイ
12 貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末に接続されたコネクタと近接する位置に車体固定用のブラケットを取り付け、
前記ブラケットにコネクタを保持するコネクタ保持部を突設し、該コネクタ保持部にロック部を設けている一方、前記コネクタのハウジングに前記ブラケットのロック部とロック結合する被ロック部を設けた被保持部を突設し、
車体に固定される前記ブラケットで位置決め保持されたコネクタを、相手方コネクタと嵌合接続する構成としていることを特徴とする車両用ワイヤハーネス。
【請求項2】
前記ブラケットを横長形状とし、該ブラケットの横方向の一端側外面に前記コネクタ保持部を横方向に突設し、該コネクタ保持部の突出寸法は前記ブラケットの横方向寸法よりも小さくしている請求項1に記載の車両用ワイヤハーネス。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用ワイヤハーネスの配索方法であって、
車体に設けた貫通穴に、前記ブラケットを90度回転して縦方向として、前記コネクタ、該コネクタを保持した前記コネクタ保持部を貫通し、その後、ブラケットを90度回転させて横長方向とし、該ブラケットを車体に固定した後に、該ブラケットで保持された前記コネクタを相手方コネクタと嵌合接続する車両用のワイヤハーネスの配索方法。
【請求項4】
前記ワイヤハーネスはドアに配索されて車体へと渡り配索されるワイヤハーネスであり、
車体ボデイに設けた貫通穴に前記ワイヤハーネスのコネクタを貫通させた後に、前記ブラケットを車体ボデイに固定し、該車体ボデイに固定したブラケットで保持した前記コネクタを、車体に配索したワイヤハーネスの相手方コネクタと接続している請求項3に記載のワイヤハーネスの配索方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−195155(P2010−195155A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41094(P2009−41094)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】