説明

車両用光学式表示システム

本発明は、少なくとも1つの第1の表示ユニット(1)と、少なくとも1つの第2の表示ユニット(2)と、を備える車両(10)用光学式表示システムに関する。本発明によると、表示される情報は、第1の表示ユニット(1)及び/又は第2の表示ユニット(2)に割り当てられる。情報を表示するために、判断された現在の運転状況に従って、第1の表示ユニット(1)から第2の表示ユニット(2)へ、又は第2の表示ユニット(2)から第1の表示ユニット(1)へ表示の切り替えが行われる。前記システムは、たとえば、自動車において使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1の前段に記載されている車両用光学式表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の車両は、車両パラメータや機器パラメータを含む情報を表示するための複数の表示ユニットを有し、これは車両牽引システムなどの車両サブシステム、及び/又はナビゲーションシステム、マルチメディア制御システムなどの利便システム、及び/又はアンチロックブレーキシステム、車線変更システムなどの安全システムによって、利用できるようになっている。種々の表示ユニットに表示される情報は、たとえば車両の現在の運転状態や利用者の制御動作に応じて、連続的に変わる。これによって、この情報が「不適切な」表示ユニットに表示された場合には、運転者が、適切なときに情報を受け取らなかったり、あるいは不当に長い時間、運転者の主要な運転上の仕事や周囲の交通状況を観察することから注意を逸らされたりすることが起こり得る。さらに、情報表示は、国によっては法的要件に制約されている。
【0003】
特許文献1には、表示される情報量を制御要素によって変えることができる、車両用光学式表示システムが開示されている。
【0004】
特許文献2には、中央表示ユニット及び追加の表示ユニットを有する車両用光学式表示システムが開示されている。記載されている光学式表示システムの場合には、2つの表示ユニットのうちの一方に表示される情報を、使用者が手動で行う切替処理によって、2つの表示ユニットの他方へ転送できる。この切替処理は、使用者が多機能制御要素又は転送キーを操作することによって開始される。手動の切替処理を使用して、限られた量の制御及び情報を、中央表示ユニットから追加の表示ユニットへ転送することができる。その代わりに又はこれに加えて、手動の切替処理を使用して、大量の制御及び情報を、追加の表示ユニットから中央表示ユニットへ転送することができる。この手動の切替処理を使用して、たとえば、ナビゲーションシステムからの情報を中央表示ユニットと追加の表示ユニットの両方に表示することができる。
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第101 51 282A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第100 56 302A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、法的要件に従い、運転者が注意散漫になることを減らせる、少なくとも2つの表示ユニットを有する改良された車両用光学式表示システムを特定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、特許請求項1の特徴を有する光学式表示システムを提供することによって、この目的を達成する。
【0008】
本発明の有利な発展形態は、従属請求項で特定されている。
【0009】
本発明は、表示される情報が、判断された現在の運転状況に応じて、少なくとも1つの第1の表示ユニットから少なくとも1つの第2の表示ユニットへ、又は少なくとも1つの第2の表示ユニットから少なくとも1つの第1の表示ユニットへ自動的に切り替えられ得る、という考えに基づく。これによって、運転状況に適した情報表示を提供することが可能となる。
【0010】
本発明の別の改良形態においては、第1の表示ユニットは、通常の車両操作中、第1の車両サブシステムからの情報を表示するために使用され、この第1の表示ユニットは、たとえば、運転者の中心視野の外側に配置され、第1の車両サブシステムからの特定の運転状況、たとえば危険状況の情報を第2の表示ユニットに表示するための変更が行われ、この第2の表示ユニットは、たとえば、運転者の中心視野内に配置されている。この場合、第1の表示ユニットは、車両のセンターコンソールか又はこのセンターコンソール上のダッシュボードの領域に、助手席領域に、又は後部座席領域に配置されてもよい。ハンドル領域に配置されているか又はハンドルの上方にありフロントガラスに突出する、コンビネーション計器やヘッドアップディスプレイの表示部などの表示ユニットは、運転者の中心視野領域に配置されている。
【0011】
運転者が注意散漫になることをさらに減らすために、本発明の有利な一発展形態においては、第1の表示ユニットから第2の表示ユニットへ切り替えた後、対応する情報は第1の表示ユニット上でマスクされ、第2の表示ユニットから第1の表示ユニットへ切り替えた後、対応する情報は第2の表示ユニット上でマスクされる。さらに、本発明に記載されている実施形態は、それぞれの状況で最も重要な情報に運転者の注意を向ける。
【0012】
本発明の別の改良形態においては、現在の運転状況は、少なくとも1つの車両サブシステムからのデータに応じて、評価・制御ユニットによって判断される。
【0013】
本発明の1つの有利な改良形態においては、少なくとも1つの第1の車両サブシステムからの情報は、運転者の中心視野の外側に配置されている少なくとも1つの第1の表示ユニットに表示されるように割り当てられ、その場合、第1の運転状況が判断されるときに、情報を表示するために、運転者の中心視野に配置されている少なくとも1つの第2の表示ユニットへ切り替えることが可能である。
【0014】
少なくとも1つの車両サブシステムから表示され得る情報は、たとえば、危険警告を含み、その場合、危険状況が発生したときに、第1の運転状況は評価・制御ユニットによって判断される。
【0015】
別の改良形態においては、車両サブシステムはナビゲーションシステム形式である。ナビゲーションシステムから表示され得る情報は、たとえば、複雑なナビゲーション情報を含む。第2の表示ユニットに複雑なナビゲーション情報を表示するために、評価・制御ユニットは、第1の運転状況が複雑なナビゲーション処理の態様で判断されるとき、ナビゲーションシステムから出力された情報を第1の表示ユニットから第2の表示ユニットへ切り替える。
【0016】
さらに、ナビゲーションシステムから表示され得る情報は、ナビゲーションシステムに目的地を入力するための情報を含む。車両が静止しているとき、この情報は第1の表示ユニットに、たとえば文字列形式で表示される。運転操作中は、この表示は、運転者の主要な運転上の仕事から過度に運転者の注意を逸らし得るので、評価・制御ユニットは、第1の運転状況が認識される運転操作の態様で判断されるとき、たとえば、選択用の可能性のある目的地のリストを表示することによって、情報を出力するために第1の表示ユニットから第2の表示ユニットへ切り替える。
【0017】
別の改良形態においては、少なくとも1つの第2の車両サブシステムからの情報は、表示用の少なくとも1つの第1の表示ユニットに割り当てられることができ、第2の運転状況が判断されるとき、情報は少なくとも1つの第2の表示ユニットにさらに割り当てられている。
【0018】
たとえば、車両が静止しているとき、第2の運転状況は評価・制御ユニットによって判断される。
【0019】
少なくとも1つの第2の車両サブシステムは、たとえば、テレビ又はビデオシステム、又はインターネットへのインターフェースの形式であり、第2の車両サブシステムからの情報は、たとえば、動画を含む。運転者の主要な運転上の仕事から過度に運転者の注意を逸らすのを避けるために、動画は静止しているときにのみ運転者に表示されるが、他の乗員は運転中も動画を見ることができる。
【0020】
別の改良形態においては、表示ユニットを切り替えるとき、表示方式及び/又は表示される情報の範囲を変えられる。
【0021】
情報の表示方式は、たとえば、サイズ、色、コントラスト及び/又は表示形態を含む。
【0022】
本発明の1つの有利な実施形態は、図面に例示されており、以下で説明される。図は、車両用光学式表示システムをブロック図で示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
1つの図面からわかるように、車両10の表示システムは、運転者の中心視野の外側に配置され、たとえば、センターコンソール1.1に、センターコンソール1.1上のダッシュボードに、助手席領域1.2に、後部座席領域1.3などに設けられる画面形式である少なくとも1つの第1の表示ユニット1と、運転者の中心視野内に配置され、たとえば、コンビネーション計器2.1の表示領域に、及び/又は、ヘッドアップディスプレイ2.2の形式である少なくとも1つの第2の表示ユニット2と、判断された現在の運転状況に応じて、少なくとも1つの第1の表示ユニット1から少なくとも1つの第2の表示ユニット2へ、又は少なくとも1つの第2の表示ユニット2から少なくとも1つの第1の表示ユニット1へ情報表示を切り替える評価・制御ユニット3を有し、現在の運転状況は、評価・制御ユニット3が少なくとも1つの車両サブシステム4からのデータを評価することによって判断する。一例として、記載されている例示された実施形態においては、少なくとも1つの車両サブシステム4は、車両牽引システム、ナビゲーションシステム、ビデオ又はテレビシステム、インターネットへのインターフェース、マルチメディア制御システム、アンチロックブレーキシステム、車線変更支援などを備える。
【0024】
第1の表示ユニット1から第2の表示ユニット2へ切り替えた後、関連情報は第1の表示ユニット1上でマスクされ、第2の表示ユニット2から第1の表示ユニット1へ切り替えた後、情報は第2の表示ユニット2上でマスクされる。
【0025】
記載されている例示された実施形態においては、第1の車両サブシステムが操作されているとき、これらの第1の車両サブシステムから表示され得る情報は、少なくとも1つの第1の表示ユニット1で表示される。第1の表示ユニット1は、センターコンソール1.1に画面形式である。評価・制御ユニット3が第1の運転状況を判断する場合、評価・制御ユニット3は、中心視野に配置されている第2の表示ユニット2へ情報表示を切り替える。これは、たとえば、評価・制御ユニット3が危険状況を判断するときに行われ、関連する車両サブシステムから運転者に危険通報を発することが目的である。
【0026】
少なくとも1つの車両サブシステム4が、たとえば、ナビゲーションシステム4.1を備えている場合、ナビゲーションシステム4.1からの情報は、操作及び経路選択するために、少なくとも1つの第1の表示ユニット1の表示部に割り当てられる。たとえば経路選択中に、評価・制御ユニット3が複雑なナビゲーション処理を判断する場合、表示ユニットを切り替えることによって、この複雑なナビゲーション処理を行うための関連した複雑なナビゲーション情報が第2の表示ユニット2に表示される。
【0027】
たとえば目的地を入力するとき、ナビゲーションシステム4.1を操作するために、スペラー、つまり第1の表示ユニットに表示される文字列一覧から個々の文字が選択される入力方法が使用される場合、本発明による表示システムは、車両10が運転されていると判断すると、評価・制御ユニットが第2の表示ユニット2で目的地を入力するためのリスト表示へ切り替えて、その入力方法が運転中に使用されないことを確実にする。
【0028】
少なくとも1つの車両サブシステム4が、たとえば、ビデオ又はテレビシステム4.2、又はインターネットへのインターフェース4.3を備える場合、評価・制御ユニットが車両10が静止していると判断すると、これらの車両サブシステム4.2、4.3からの情報(動画を含んでもよい)は、第1及び第2の表示ユニット1、2に表示され得る。評価・制御ユニット3が車両10が運転されていると判断するときには、評価・制御ユニット3は第2の表示ユニット2を遮断するので、この情報は、運転者の中心視野の外側に配置される第1の表示ユニット1にのみ表示される。
【0029】
表示ユニット1と2とを切り替えるとき、表示方式及び/又は表示される情報の範囲を変えることができる。たとえば、表示方式を変更するときには、サイズ、色、コントラスト、及び/又は、表示形態を変えることができるので、表示される情報は、新しく使用される表示ユニットの変更された条件に最適となり得る。
【0030】
本発明による光学式表示システムは、判断された現在の運転状況に対して適切な表示ユニットを選択することによって、情報表示を運転状況に最適なものとするので、運転者が注意散漫になることが減り、それぞれの状況で最も重要な情報に運転者の注意を向ける。さらに、本発明による光学式表示システムは、あらかじめ情報の表示を要求された表示ユニットにこの情報を割り当てるために評価・制御ユニットを使用することによって、簡単に法的要件を満たすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】車両用光学式表示システムのブロック図を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 少なくとも1つの第1の表示ユニット(1)と、
− 少なくとも1つの第2の表示ユニット(2)と、
を有し、
− 表示する情報が、前記少なくとも1つの第1の表示ユニット(1)及び/又は前記少なくとも1つの第2の表示ユニット(2)に割り当てられる
車両用光学式表示システムにおいて、
− 判断された現在の運転状況に応じて、前記少なくとも1つの第1の表示ユニット(1)から前記少なくとも1つの第2の表示ユニット(2)へ、又は前記少なくとも1つの第2の表示ユニット(2)から前記少なくとも1つの第1の表示ユニット(1)への情報表示の切り替えが可能であることを特徴とする車両用光学式表示システム。
【請求項2】
前記第1の表示ユニット(1)から前記第2の表示ユニット(2)へ切り替えた後、前記第1の表示ユニット(1)上で対応する情報はマスクされ、前記第2の表示ユニット(2)から前記第1の表示ユニット(1)へ切り替えた後、前記第2の表示ユニット(2)上で対応する情報はマスクされることを特徴とする請求項1に記載の車両用光学式表示システム。
【請求項3】
少なくとも1つの車両サブシステム(4)からのデータを用いて現在の運転状況を判断する評価・制御ユニット(3)を有することを特徴とする請求項1あるいは2に記載の車両用光学式表示システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第1の表示ユニット(1)が運転者の中心視野の外側に配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用光学式表示システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第2の表示ユニット(1)が運転者の中心視野内に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用光学式表示システム。
【請求項6】
少なくとも1つの車両サブシステム(4)からの情報が、前記少なくとも1つの第1の表示ユニット(1)に表示され、第1の運転状況が判断されるときに、前記少なくとも1つの第1の表示ユニット(1)から前記少なくとも1つの第2の表示ユニット(2)へ情報の表示を切り替えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用光学式表示システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの車両サブシステム(4)から得られる情報が危険警告を含み、危険状況が発生したときに、前記第1の運転状況が前記評価・制御ユニット(3)によって判断され得ることを特徴とする請求項6に記載の車両用光学式表示システム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの車両サブシステム(4)がナビゲーションシステム(4.1)を備えることを特徴とする請求項6に記載の車両用光学式表示システム。
【請求項9】
前記ナビゲーションシステム(4.1)から得られる情報が、複雑なナビゲーション情報を含み、複雑なナビゲーション処理が発生したときに、前記第1の運転状況が前記評価・制御ユニット(3)によって判断され得ることを特徴とする請求項8に記載の車両用光学式表示システム。
【請求項10】
前記ナビゲーションシステム(4.1)から得られる情報が、前記ナビゲーションシステム(4.1)に目的地を入力するための情報を含み、前記車両(10)の運転操作中、前記第1の運転状況は前記評価・制御ユニット(3)によって判断されることを特徴とする請求項8に記載の車両用光学式表示システム。
【請求項11】
少なくとも1つの車両サブシステム(4)からの情報が、前記少なくとも1つの第1の表示ユニット(1)に表示されるように割り当てられ、第2の運転状況が判断されるときに、前記情報が前記少なくとも1つの第2の表示ユニット(2)にさらに割り当てられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用光学式表示システム。
【請求項12】
前記車両(10)が静止しているとき、前記第2の運転状況は前記評価・制御ユニット(3)によって判断されることを特徴とする請求項11に記載の車両用光学式表示システム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの車両サブシステム(4)からの情報が動画を含むことを特徴とする請求項11あるいは12に記載の車両用光学式表示システム。
【請求項14】
前記車両サブシステムが、テレビ又はビデオシステム(4.2)、又はインターネットへのインターフェース(4.3)であることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の車両用光学式表示システム。
【請求項15】
前記表示ユニット(1、2)を切り替えるとき、表示方式及び/又は表示される情報の範囲を変えることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の車両用光学式表示システム。
【請求項16】
前記表示方式が、サイズ及び/又は色及び/又はコントラスト及び/又は表示を含むことを特徴とする請求項15に記載の車両用光学式表示システム。

【公表番号】特表2007−512170(P2007−512170A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540222(P2006−540222)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012288
【国際公開番号】WO2005/061266
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【Fターム(参考)】