説明

車両用入力システム

【課題】主に自動車の各種電子機器の制御用に用いられる車両用入力システムに関し、素早く漢字の入力が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】検出信号S1が入力され表示点に表示を行う表示信号S2を出力する処理ユニット23は、検出信号S1から対象物が操作面31へ接触し移動したことを検出すると、検出点に対応した表示点を接続する軌跡81を表示する表示信号S2を出力し、検出信号S1から対象物が操作面へ近接したことを検出すると検出点に対応した表示点に近接表示82を表示する表示信号S2を出力し、軌跡81により手書き文字表示エリア52に表示された漢字を認識する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車内の各種電子機器の操作に用いられる車両用入力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両からインターネットに接続し電子メールシステム等、車両に搭載されるシステムは多様化し、さらにその操作も複雑化してきている。その操作において、より直感的な入力を可能にするため、アルファベットやひらがなを入力可能な車両用入力システムが提案されている。
【0003】
図5を用いて、このような従来の車両用入力システムについて説明する。
【0004】
同図において、車両用入力システム10は、多方向に操作可能な入力ユニット1と、液晶ディスプレイ等の出力ユニット2と、演算回路等を含む処理ユニット3と、各種データを記憶する記憶ユニット4を備えて構成される。また、処理ユニット3は、入力ユニット1、出力ユニット2、記憶ユニット4に接続されている。
【0005】
ここで、処理ユニット3では電子メール等の文章を作成する文字入力プログラム11が実行される。ここで、文字入力プログラム11は、記憶ユニット4内に保存されている。この文字入力プログラム11により、出力ユニット2にアルファベットやひらがな等の一覧が表示される。
【0006】
そして、文字を入力する際には、入力ユニット1を前後左右に操作し、入力したい文字を出力ユニット2に表示されたアルファベットやひらがな等の一覧から選択するものであった。
【0007】
なお、漢字を入力する場合は、ひらがなで読み仮名を入力した後、ひらがなから漢字への変換を処理ユニット3が行っていた。
【0008】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1及び特許文献2が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−150410号公報
【特許文献2】特表2008−503376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の車両用入力システムでは、同じ読み仮名を持つ漢字でも幾つか変換候補がある中から選択する手間があり、漢字の入力には時間がかかっていた。
【0011】
本発明は、素早く漢字を入力可能な車両用入力システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、特に、処理ユニットは検出信号が入力され表示点に表示を行う表示信号を出力するもので、検出信号から対象物が操作面へ接触し移動したことを検出すると、検出点に対応した表示点を接続する軌跡を表示する表示信号を出力し、検出信号から対象物が操作面へ近接したことを検出すると検出点に対応し表示点に近接表示を表示する表示信号を出力し、軌跡により手書き文字表示エリアに入力された漢字を認識するよう、車両用入力システムを構成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、処理ユニットは検出信号が入力され表示点に表示を行う表示信号を出力するもので、検出信号から対象物が操作面へ接触し移動したことを検出すると、検出点に対応した表示点を接続する軌跡を表示する表示信号を出力し、検出信号から対象物が操作面へ近接したことを検出すると検出点に対応した表示点に近接表示を表示する表示信号を出力し、軌跡により手書き文字表示エリアに入力された漢字を認識するよう車両用入力システムが構成されている。これにより、操作者は軌跡の形状と近接表示の位置関係から漢字の次の筆画をどこから開始すれば良いか確認しつつ操作できるため、素早く漢字を入力可能な車両用入力システムを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態による車両用入力システムのブロック図
【図2】同車両用入力システムの車内の配置を示す図
【図3】同車両用入力システムに用いる入力ユニットの操作面と出力ユニットの文字表示エリアの対応を示す図
【図4】同車両用入力システムの出力ユニットの画面図
【図5】従来の車両用入力システムのブロック図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図4を用いて説明する。
【0016】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による車両用入力システムのブロック図である。
【0017】
同図において、車両用入力システム70は、入力ユニット21と、液晶ディスプレイ等の出力ユニット22と、演算回路等を含む処理ユニット23を備えて構成される。また、処理ユニット23は、入力ユニット21、出力ユニット22に電気的に接続されている。
【0018】
さらに、車両用入力システム70は、車外インターネット通信システム71や、カーナビゲーションシステム72や、電話システム73と接続されている。
【0019】
ここで、入力ユニット21は例えば静電式タッチパネルであり、直交するX軸及びY軸に広がる操作面31を備えている。この操作面31では例えばY軸に平行な複数の帯状の縦電極32とX軸に平行な複数の帯状の横電極33が誘電板等を介して対向している。そして、縦電極32から放射した電界を横電極33で吸収し、横電極33から放射した電界を縦電極32で吸収する。ここで、操作者の指や誘電体で形成された指示ペン等の対象物が操作面31に接近あるいは接触すると、対象物が縦電極32あるいは横電極33から放射した電界を吸収する。これにより横電極33あるいは縦電極32で吸収する電界の変化が生じ、対象物の近接あるいは接触を検出し、入力ユニット21は検出信号S1を出力する。
【0020】
また、処理ユニット23は、演算回路41や記憶回路42を備えている。ここで、記憶回路42には手書き文字入力プログラム43と手書き文字入力プログラム43で使用する漢字をデータベース化した漢字データベース44が保存されている。また、演算回路41は記憶回路42から手書き文字入力プログラム43を読み出して実行する。
【0021】
この手書き文字入力プログラム43の実行に伴い、入力ユニット21から入力された検出信号S1を基に表示信号S2が出力ユニット22に出力される。また、処理ユニット23からは、車外インターネット通信システム71や、カーナビゲーションシステム72や、電話システム73に操作信号S3が出力される。
【0022】
また、出力ユニット22は例えば液晶ディスプレイ等の表示装置である。ここで、出力ユニット22の表示面51には、手書き文字表示エリア52と語句作成エリア53が設けられている。そして、処理ユニット23から入力された表示信号S2を基に手書き文字表示エリア52あるいは語句作成エリア53の表示が変化する。
【0023】
そして、このように構成された車両用入力システム70は、例えば図2に示すような位置に車室内に搭載される。ここで、入力ユニット21は、例えば運転席と助手席の間に配置され、処理ユニット23はインストルメントパネル内に、また出力ユニット22はインストルメントパネルの前面に配置される。
【0024】
さらに、例えば車外インターネット通信システム71や、カーナビゲーションシステム72や、電話システム73もインストルメントパネル内に配置される。なお、これらの車外インターネット通信システム71、カーナビゲーションシステム72、電話システム73は処理ユニット23に、配線ケーブル等を介して電気的に接続される。
【0025】
次に、図3を用いて操作面31に接触または近接する位置と手書き文字表示エリア52に表示される位置の関係について説明する。
【0026】
同図において、操作面31上に接触または近接した際に対象物が検出される点を検出点とし、一例としてX軸でX01〜X05、Y軸でY01〜Y08の5行×8列の交点となるものとして示す。ここで、例えばX03の行とY05の列の交点となる検出点の座標を(X03、Y05)と示すものとする。このとき、操作面31上に接触または近接した際の検出点は(X01、Y01)〜(X05、Y08)の40点となる。
【0027】
一方、手書き文字表示エリア52においては、操作面31上の検出点それぞれに対応し、軌跡81や近接表示82を表示する表示点が存在する。例えば、操作面31の検出点である(X01、Y01)〜(X05、Y08)の40点に、手書き文字表示エリア52の表示点となる(X11、Y11)〜(X15、Y18)の40点が対応する。この対応関係は、例えば記憶回路42内にデータベースとして保存されている。
【0028】
そして、手書き文字表示エリア52の表示は、例えば、軌跡81、近接表示82、接触表示83の三種類がある。
【0029】
ここで、操作者が例えば操作面31の検出点である(X02、Y05)に対象物を近接させると、手書き文字表示エリア52の表示点である(X12、Y15)に近接表示82が丸印として表示される。なお、この近接表示82は、操作者が操作面31から対象物を所定距離の間隔を空けて離すと消える。
【0030】
また、例えば操作面31の検出点である(X04、Y05)に対象物を接触させると、手書き文字表示エリア52の表示点である(X14、Y15)に接触表示83が表示される。
【0031】
さらに、例えば操作面31の検出点の(X04、Y02)に接触した状態から隣接した検出点である(X04、Y03)に対象物を接触したまま移動させると、手書き文字表示エリア52の対応した表示点である(X14、Y12)と(X14、Y13)を結んで軌跡81が表示される。
【0032】
なお、手書き文字表示エリア52の表示は処理ユニット23から出力される表示信号S2により行われる。
【0033】
ここで、処理ユニット23が、検出信号S1から対象物が操作面31へ接触し移動したことを検出すると、検出点に対応した表示点を接続する軌跡81を表示する表示信号S2を出力する。また、処理ユニット23が、検出信号S1から対象物が操作面へ近接したことを検出すると検出点に対応した表示点に近接表示82を表示する表示信号S2を出力する。また、検出信号S1から対象物が操作面へ接触したことを検出すると、検出点に対応した表示点に接触表示83を表示する表示信号S2を出力する。
【0034】
なお、対象物の近接あるいは接触の検出は、入力ユニット21において、縦電極32あるいは横電極33で吸収する電界の量の変化を検出することで行われる。対象物が近接、そして接触するに伴い、対象物による電界の吸収量が大きくなることから、縦電極32あるいは横電極33で吸収する電界の量は逆に少なくなり、所定の閾値を用いて対象物の近接あるいは接触を検出することができる。
【0035】
このような車両用入力システム70を用いて、運転席に着座した操作者が例えば指先を用いて、「真」の漢字を入力する場合を一例として説明する。
【0036】
ここで、操作者が入力ユニット21の操作面31に指先で「真」の漢字を描くと、図4に示すように操作面31を指先でなぞった位置、つまり指先を接触移動させた位置に対応して手書き文字表示エリア52に軌跡81が表示される。
【0037】
そして操作者は「真」の漢字を描く際に一画毎に指先を離すが、同図に示すように「真」の漢字の数画目まで描き、操作面31に近接した状態で指を離すと、その位置に対応した手書き文字表示エリア52の位置に丸印等で近接表示82が表示される。若干複雑な漢字を入力する場合においても、このように近接表示82が表示されるので、次に操作面31に接触しようとしている位置が確認しやすくなり誤記の発生を抑制することができる。
【0038】
次に、操作者が手書き文字表示エリア52に漢字を描き終えた際の処理について図1に戻り説明すると、ここで操作者は漢字を描き終えると例えば操作面31を二本の指先で接触する。すると、処理ユニット23で、手書き文字表示エリア52に描かれた漢字の形状に対し、記憶回路42に保存された漢字データベース44に保存された漢字のうち、その漢字の形状に最も近いものを演算回路41が対照し、語句作成エリア53に表示させる。
【0039】
さらに、操作者はこの操作を繰り返し、語句作成エリア53に、地名や通信文などを作成する。ここで、例えば語句作成エリア53に地名を作成すると、カーナビゲーションシステム72において目的地や経由地として使用すべく、処理ユニット23から操作信号S3として出力される。また、語句作成エリア53に電子メールとして送信する文章を作成すると、文章は操作信号S3に変換され、処理ユニット23から車外インターネット通信システム71に出力される。
【0040】
そして、カーナビゲーションシステム72が目的地や経由地として入力された地名を用いて経路検索を行ったり、車外インターネット通信システム71が電子メールの文章として送信したりする。
【0041】
このように、操作者は車両用入力システム70を用いることにより、素早く漢字を入力し、車両の各搭載システムに対し、所望の処理を行わせることが可能となる。
【0042】
なお、上記の説明では、近接表示82は丸印として説明したが、操作者が認識可能であれば良く、×印や三角等、所望の形状での表示が可能である。また色彩も自由に選択可能である。
【0043】
また、車外インターネット通信システム71、カーナビゲーションシステム72、電話システム73等への操作信号S3の出力は入力ユニット21あるいは出力ユニット22から行っても良い。
【0044】
また、入力ユニット21は、静電方式タッチパネルで無くても良い。操作面31への接触及び近接を検出可能であれば種々の変更が可能である。例えば抵抗膜方式タッチパネルに加え、抵抗膜方式タッチパネルの上方に光線を放射する発光ダイオードと発光ダイオードが放射する光線を検出する光検出センサを設けた構成としても良い。この場合、操作面31への接触は抵抗膜方式タッチパネルが検出し、操作面31への近接は光検出センサが検出する。
【0045】
また、処理ユニット23は、入力ユニット21あるいは出力ユニット22と一体に構成しても良く、演算回路41と記憶回路42は同じユニット内に構成しても良いし、別のユニットに分けて構成しても良い。
【0046】
このように本実施の形態によれば、処理ユニット23は、検出信号S1から対象物が操作面31へ接触し移動したことを検出すると、検出点に対応した表示点を接続する軌跡81を表示する表示信号S2を出力し、検出信号S1から対象物が操作面へ近接したことを検出すると検出点に対応した表示点に近接表示82を表示する表示信号S2を出力し、軌跡81により手書き文字表示エリア52に表示された漢字を認識する。これにより、操作者は軌跡81の形状と近接表示82の位置関係から漢字の次の筆画をどこから開始すれば良いか確認しつつ操作できるため、素早く漢字を入力しうる。
【0047】
また、出力ユニット22には語句作成エリア53を表示しているため、語句や文章の作成に便利な車両用入力システム70を提供しうる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明による車両用入力システムは、素早く漢字の入力が可能なものを提供でき、主に自動車の各種電子機器の制御用として有用である。
【符号の説明】
【0049】
21 入力ユニット
22 出力ユニット
23 処理ユニット
31 操作面
32 縦電極
33 横電極
41 演算回路
42 記憶回路
43 手書き文字入力プログラム
44 漢字データベース
51 表示面
52 手書き文字表示エリア
53 語句作成エリア
70 車両用入力システム
71 車外インターネット通信システム
72 カーナビゲーションシステム
73 電話システム
81 軌跡
82 近接表示
83 接触表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の操作面への接触及び近接を検出可能な検出点を有し検出信号を出力する入力ユニットと、前記検出点に対応した表示点を有し漢字を表示する手書き文字表示エリアを設けた出力ユニットと、前記検出信号が入力され前記表示点に表示を行う表示信号を出力する処理ユニットとを備え、
前記処理ユニットは、前記検出信号から前記対象物が前記操作面へ接触し移動したことを検出すると、前記検出点に対応した前記表示点を接続する軌跡を表示する表示信号を出力し、前記検出信号から前記対象物が前記操作面へ近接したことを検出すると前記検出点に対応した前記表示点に近接表示を表示する表示信号を出力し、前記軌跡により前記手書き文字表示エリアに表示された漢字を認識する車両用入力システム。
【請求項2】
前記出力ユニットに語句作成エリアを設けた請求項1記載の車両用入力システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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