車両用前照灯装置
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は車両用前照灯装置に関する。
【0002】
【従来の技術】本出願人は先に特開平5−85435号で2灯(バルブ)式の車両用前照灯装置を提案した。この前照灯装置は、1個のハウジングに2個のバルブと1対の反射鏡を収納したものである。しかし、バルブからの熱でハウジング内部の水分が蒸発してレンズの内面に付着して、レンズを曇らせることがある。そこで、ハウジングに開口を設け、熱や蒸気を外へ排出する様に工夫したものがある。
【0003】例えば、実開平4−135105号の車両用前照灯は、それの図3に示されるJ型通気管(460)をハウジングの背面に備え、そこから熱等を排出する。同図の5Aは光軸調整機構であり、これを回転することで光軸を上下に調整できる。このように、前照灯では光軸調整機構(以下、光軸調整を「AIMING,エーミング」、光軸調整機構を「エーミング機構」と言う。)を備えたものが一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、光軸調整のためエーミングロッド又はエーミングボルト(実開平4−135105号図3の50Aに相当)は、かなり長い。エーミングロッドが短い場合には、このエーミングロッドを回動する工具とJ型通気管とが干渉する恐れがあり、工具の操作誤りでJ型通気管を傷める又は外してしまう恐れがある。それで、エーミングロッドを充分に長くするようにしている。エーミングロッドを長くすると前照灯後方にその分だけスペースを確保しなければならず、機器を密に配置する上では好ましいことではない。そこで本発明の目的は前照灯装置のエーミングロッドを短縮できる技術を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するべく本発明は、車両用前照灯装置の通気管の近傍に光軸調整用のエーミング機構を備え、且つこのエーミング機構と通気管とを仕切るガードリブをハウジングに突設したことを特徴とする。
【0006】例えば反射板は、複数種類の反射角を持つように複数のリフレクタ面が形成され、また、反射板の前方に配置されるレンズは、ほぼ透明である。又ガードリブは、その突出高さが前記通気管の取付け高さと略同一である。
【0007】
【作用】光軸調整作業中にエーミング機構からドライバ等の工具が外れた場合は、この工具はガードリブに当る。その結果、工具が通気管に至る恐れはない。
【0008】前照灯装置の反射板に、複数種類のリフレクタ面を設けたものにおいては、それに用いるレンズはほぼ透明とすることができる。ほぼ透明のレンズはレンズカットを要しないので、外観性は良好である。しかし、その反面、レンズの内面に水分が付くと、従来のレンズ(レンズカット有り)より、曇りが目立つ。通気孔及び通気管でハウジング内を換気することで曇を防止する。
【0009】ガードリブの突出高さを通気管の取付け高さと略同一にすることで、エーミングのためのドライバ等の工具が通気管に一層当り難くなる。
【0010】
【実施例】本発明の実施例を添付図面に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。図1は本発明に係る前照灯装置の正面図であり、前照灯装置1は正面視横長のハウジング2の内部に第1反射板3と第2反射板4と中間筒5,5(図3参照)を収納し、レンズ6を嵌め込んだものである。そして、前照灯装置1は取付け片7…にビス(図示せず)を通し、これらビスを車体側に捩じ込むことで、車体に取付けられる。上記第1反射板3は複数種類の反射角を持つように複数のリフレクタ面3a,3b,3c…が密に形成され、いわゆるフレネル仕様の凹凸が反射面に形成されたものである。これはレンズ6にレンズカットを施すこと無く、反射板3のリフレクタ面3a,3b,3c…で配光を行なうものである。レンズ6のレンズカットが不要となり、レンズ6の外観性が向上する。第2反射板4も複数種類の反射角を持つように複数のリフレクタ面4a,4b,4c…が形成されものである。しかし、第2反射板4は第1反射板3より粗いフレネル仕様の凹凸が形成されたものである。その代わり、レンズ6は透明体で構成されている。
【0011】図2は本発明に係る前照灯装置の背面図であり、ハウジング2の背面には、第1バルブ8の端子8a、第2バルブ9の端子9a、エーミング機構の要部である第1〜第3調整ねじ11,12,13、左・右通気管14,15及び中央通気管16が設けられ、これらに加えて左・右通気管14,15の上方に円弧状のガードリブ18,18をハウジング2から後方へ突設したことを特徴とする。
【0012】図3は図2の3−3線断面図であり、ハウジング2内部の第1・第2反射板3,4の前方に中間筒5,5が配置されている。なお、19はインナレンズであり、第1反射板3に直接取付けられる。そして第2・第3調整ねじ12,13にはナット状の摺動部材21…が取付けられ、これら摺動部材21…に第1・第2反射板3,4が取付けられている(図3では、切断位置の関係で、摺動部材21…と反射板3,4とが分離されているが、両者は機械的に繋がっている。図4参照)。従って、第2・3調整ねじ12,13を回動すると摺動部材21…がねじ長手方向に移動し、反射板3,4の左右方向の取付け角度を変更することができる。なお、第2調整ねじ12,12は基部にクラウンギア22,22が取付けられ、クラウンギア22,22を介して回動されるが、詳しくは図5で説明する。
【0013】図4は図2の4−4線断面図であり、右通気管15は内部にラビリンス突起15a…を備えた略L字形のゴム製チューブであり、ハウジング2の背面に開けられた通気孔2aを囲うボス2bに嵌合し、弾性取付けされる。右通気管15の開放口が下端にあるため上又は横からの水等の侵入を防止でき、また、下からの水はラビリンス突起15a…で効果的に遮断できる。この様な右通気管15の上方で且つ第1調整ねじ11の下方に突設されたガードリブ18の突出高さをH1とした場合に、このH1は、適正に取付けられた右通気管15の取付け高さH2と略同一である。第1調整ねじ11または第2調整ねじ12を横向きのドライバなどで回動することで、摺動部材21,21および中間板23を介して反射板4が傾き、反射板4の上下方向の角度を調整できる。左通気管14の形状、取付け状態は上記右空気管15と同一であり、説明を省略する。
【0014】図5は図2の5−5線断面図であり、第3調整ねじ13は基部にクラウンギア22を備えている。そこで、想像線で示すプラスドライバ24を上向きに差込み、プラスドライバ24でクラウンギア22を回転することで、第3調整ねじ13を回転することができる。第3調整ねじ13の下方には、比較的低い工具ガイドリブ25,25がハウジング2から突設されており、工具ガイドリブ25,25は図2に示す通り左右一対設けられているので、これらリブ25,25の間にドライバを差込めばよい。26はクラウンギア22,22の上部を囲う如くにハウジング2に突設されたリブである(図2も参照)。
【0015】図6は図1の別実施例図であり、第1反射板27と第2反射板28は互いに線対称の関係にあり、反射面に形成したフレネル仕様の凹凸模様は同一仕様である。反射板27,28は、図3で説明したインナレンズを備えていない。バルブ8にはサブリフレクタ29が付設されている。このサブリフレクタ29は、直接前方へ向う光を反転させて反射板27へ集める作用をなし、光量のアップを図るものである。その他は、図1と同じなので符号を準用し、詳細な説明は省略する。
【0016】図7は図6の7−7線断面図であり、第1反射板27の中央に第1バルブ8が取付けられ、この第1バルブ8の発光が第1反射板27で反射され、中間筒5で輪郭を調整され、レンズ6を介して発射される構成となっている。第2反射板28も同様である。
【0017】以上の構成からなる前照灯装置1を車両(自動二輪車)に搭載した例を以下に説明する。図8は本発明の前照灯装置を備えた自動二輪車の要部正面図であり、フロントカウル31の略中央に前照灯装置1が嵌め込まれいる。11,13は第1・第3調整ねじ、14,15,16は通気管、18,18はガードリブである。フロントカウル31の上部にはスクリーン32が設けられ、下方にはホーン33が配置され、左右に小孔34…および空気導入孔35が開けられている。小孔34は旋回時に受ける横からの走行風による空気抵抗を軽減させるために開けた開口であり、これにより操縦の安定化を図ることができる。空気導入孔35はヘッドパイプおよびエアクリーナへ空気を導くための開口である。
【0018】図9は本発明の前照灯装置を備えた自動二輪車の要部側面図であり、メインフレーム41およびエンジンハンガフレーム42の前部に固着されたヘッドパイプ43の前部に、三角形状のフロントカウルステー44がボルト固定され、このフロントカウルステー44の先端(前端)にフロントカウル31が止めねじ45で固定され、このフロントカウル31に前照灯装置1がビス46…で固定される。47はフロントカウル31に取付けられたポジションランプ、48はフロントカウルステー44の前部上部に取付けられたメータ、49はバックミラー取付座、50はウインカ取付座である。
【0019】図10は本発明の前照灯装置を備えた自動二輪車の要部平面図であり、乗員から見て、フロントカウルステー44の左方でフロントカウル31の内側に、クリップ56にて左ステー57が係止され、このステー57にウインカリレー51、前照灯のハイポジションリレー52、前照灯のロウポジションリレー53が順に取付けられ、また、フロントカウルステー44の右方でフロントカウル31の内側に、クリップ56にて右ステー58が係止され、このステー58にカップラ集合板54、ヒューズボックス55が順に取付けられている。
【0020】以上の二輪車においてエーミング機構による光軸調整の要領を説明する。なお、エーミング機構は第1〜第3調整ねじ11〜13および摺動部材21…からなる。光軸を上下方向に調整するには、図10においてプラスドライバ24で第1,第2調整ねじ11,12を適宜左右に回転すればよい。光軸を左右方向に調整するには、図9においてプラスドライバ24で第1・第3調整ねじ11,13を適宜左右に回転すればよい。
【0021】この際、各種リレー等の電子・電気部品が密に配列され、それらに係る配線はこの付近を走っているため、エーミング操作、具体的にはプラスドライバ24の操作は簡単ではない。そこで、本発明は図2に示した通り、通気管14,15のごく近傍に配置された第1調整ねじ11,11を回動する時に誤って通気管14,15をドライバ24で傷めることが無いように、ガードリブ18,18を設けたことを特徴とする。この処置により、仮に増し締めの際にドライバ24が当該ねじ11,11から外れたとしてもドライバ24がガードリブ18に当るだけで通気管14,15に至る心配はない。
【0022】なお、第2調整ねじ12,12は近傍に通気管が存在しないので、ガードリブを設ける必要はない。また、第3調整ねじ13,13は近傍に中央通気管16があるが、図5で説明した通り、ドライバ24は縦向きに操作され、しかもそのドライバ24が一対の工具ガイドリブ25,25で案内されるので、中央通気管16を傷める恐れはない。
【0023】更に、図4に示した通りガードリブ18の突出高さH1を通気管15の取付け高さH2と略同一にしたので、H2をチェックすることにより通気管15が正しくボス2bに嵌合されているか否かが極めて容易に確認できる。通気管14についても同様である。
【0024】尚、本実施例は車両を自動二輪車としたがこれに限るものではなく、本発明の前照灯装置1は三・四輪車に搭載して差支えない。
【0025】
【発明の効果】以上に述べた通り本発明は、車両用前照灯装置の通気管の近傍に光軸調整用のエーミング機構を備え、且つこのエーミング機構と通気管とを仕切るガードリブをハウジングに突設したので、光軸調整作業中にドライバ等の工具で通気管を傷める又は外してしまう恐れがなく、この結果、調整ねじをごく短くすることができ、前照灯装置の後方のスペースを有効に活用することができる。
【0026】前照灯装置の反射板に、複数種類のリフレクタ面を設けたものにおいては、それに用いるレンズはほぼ透明とすることができる。ほぼ透明のレンズはレンズカットを要しないので、外観性を向上できる。
【0027】また、ガードリブの突出高さを通気管の取付け高さと略同一にすることで、エーミングのためのドライバ等の工具が通気管に一層当り難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る前照灯装置の正面図
【図2】本発明に係る前照灯装置の背面図
【図3】図2の3−3線断面図
【図4】図2の4−4線断面図
【図5】図2の5−5線断面図
【図6】本発明に係る図1の別実施例図
【図7】図6の7−7線断面図
【図8】本発明の前照灯装置を備えた自動二輪車の要部正面図
【図9】本発明の前照灯装置を備えた自動二輪車の要部側面図
【図10】本発明の前照灯装置を備えた自動二輪車の要部平面図
【符号の説明】
1…車両用前照灯装置、2…ハウジング、2a…通気孔、2b…通気管取付けボス、3,4,27,28…反射板、3a,3b,3c,4a,4b,4c…リフレクタ面、8,9…バルブ、11…エーミング機構を構成する第1調整ねじ、14,15…通気管、18…ガードリブ、H1…ガードリブの突出高さ、H2…通気管の取付け高さ。
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は車両用前照灯装置に関する。
【0002】
【従来の技術】本出願人は先に特開平5−85435号で2灯(バルブ)式の車両用前照灯装置を提案した。この前照灯装置は、1個のハウジングに2個のバルブと1対の反射鏡を収納したものである。しかし、バルブからの熱でハウジング内部の水分が蒸発してレンズの内面に付着して、レンズを曇らせることがある。そこで、ハウジングに開口を設け、熱や蒸気を外へ排出する様に工夫したものがある。
【0003】例えば、実開平4−135105号の車両用前照灯は、それの図3に示されるJ型通気管(460)をハウジングの背面に備え、そこから熱等を排出する。同図の5Aは光軸調整機構であり、これを回転することで光軸を上下に調整できる。このように、前照灯では光軸調整機構(以下、光軸調整を「AIMING,エーミング」、光軸調整機構を「エーミング機構」と言う。)を備えたものが一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、光軸調整のためエーミングロッド又はエーミングボルト(実開平4−135105号図3の50Aに相当)は、かなり長い。エーミングロッドが短い場合には、このエーミングロッドを回動する工具とJ型通気管とが干渉する恐れがあり、工具の操作誤りでJ型通気管を傷める又は外してしまう恐れがある。それで、エーミングロッドを充分に長くするようにしている。エーミングロッドを長くすると前照灯後方にその分だけスペースを確保しなければならず、機器を密に配置する上では好ましいことではない。そこで本発明の目的は前照灯装置のエーミングロッドを短縮できる技術を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するべく本発明は、車両用前照灯装置の通気管の近傍に光軸調整用のエーミング機構を備え、且つこのエーミング機構と通気管とを仕切るガードリブをハウジングに突設したことを特徴とする。
【0006】例えば反射板は、複数種類の反射角を持つように複数のリフレクタ面が形成され、また、反射板の前方に配置されるレンズは、ほぼ透明である。又ガードリブは、その突出高さが前記通気管の取付け高さと略同一である。
【0007】
【作用】光軸調整作業中にエーミング機構からドライバ等の工具が外れた場合は、この工具はガードリブに当る。その結果、工具が通気管に至る恐れはない。
【0008】前照灯装置の反射板に、複数種類のリフレクタ面を設けたものにおいては、それに用いるレンズはほぼ透明とすることができる。ほぼ透明のレンズはレンズカットを要しないので、外観性は良好である。しかし、その反面、レンズの内面に水分が付くと、従来のレンズ(レンズカット有り)より、曇りが目立つ。通気孔及び通気管でハウジング内を換気することで曇を防止する。
【0009】ガードリブの突出高さを通気管の取付け高さと略同一にすることで、エーミングのためのドライバ等の工具が通気管に一層当り難くなる。
【0010】
【実施例】本発明の実施例を添付図面に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。図1は本発明に係る前照灯装置の正面図であり、前照灯装置1は正面視横長のハウジング2の内部に第1反射板3と第2反射板4と中間筒5,5(図3参照)を収納し、レンズ6を嵌め込んだものである。そして、前照灯装置1は取付け片7…にビス(図示せず)を通し、これらビスを車体側に捩じ込むことで、車体に取付けられる。上記第1反射板3は複数種類の反射角を持つように複数のリフレクタ面3a,3b,3c…が密に形成され、いわゆるフレネル仕様の凹凸が反射面に形成されたものである。これはレンズ6にレンズカットを施すこと無く、反射板3のリフレクタ面3a,3b,3c…で配光を行なうものである。レンズ6のレンズカットが不要となり、レンズ6の外観性が向上する。第2反射板4も複数種類の反射角を持つように複数のリフレクタ面4a,4b,4c…が形成されものである。しかし、第2反射板4は第1反射板3より粗いフレネル仕様の凹凸が形成されたものである。その代わり、レンズ6は透明体で構成されている。
【0011】図2は本発明に係る前照灯装置の背面図であり、ハウジング2の背面には、第1バルブ8の端子8a、第2バルブ9の端子9a、エーミング機構の要部である第1〜第3調整ねじ11,12,13、左・右通気管14,15及び中央通気管16が設けられ、これらに加えて左・右通気管14,15の上方に円弧状のガードリブ18,18をハウジング2から後方へ突設したことを特徴とする。
【0012】図3は図2の3−3線断面図であり、ハウジング2内部の第1・第2反射板3,4の前方に中間筒5,5が配置されている。なお、19はインナレンズであり、第1反射板3に直接取付けられる。そして第2・第3調整ねじ12,13にはナット状の摺動部材21…が取付けられ、これら摺動部材21…に第1・第2反射板3,4が取付けられている(図3では、切断位置の関係で、摺動部材21…と反射板3,4とが分離されているが、両者は機械的に繋がっている。図4参照)。従って、第2・3調整ねじ12,13を回動すると摺動部材21…がねじ長手方向に移動し、反射板3,4の左右方向の取付け角度を変更することができる。なお、第2調整ねじ12,12は基部にクラウンギア22,22が取付けられ、クラウンギア22,22を介して回動されるが、詳しくは図5で説明する。
【0013】図4は図2の4−4線断面図であり、右通気管15は内部にラビリンス突起15a…を備えた略L字形のゴム製チューブであり、ハウジング2の背面に開けられた通気孔2aを囲うボス2bに嵌合し、弾性取付けされる。右通気管15の開放口が下端にあるため上又は横からの水等の侵入を防止でき、また、下からの水はラビリンス突起15a…で効果的に遮断できる。この様な右通気管15の上方で且つ第1調整ねじ11の下方に突設されたガードリブ18の突出高さをH1とした場合に、このH1は、適正に取付けられた右通気管15の取付け高さH2と略同一である。第1調整ねじ11または第2調整ねじ12を横向きのドライバなどで回動することで、摺動部材21,21および中間板23を介して反射板4が傾き、反射板4の上下方向の角度を調整できる。左通気管14の形状、取付け状態は上記右空気管15と同一であり、説明を省略する。
【0014】図5は図2の5−5線断面図であり、第3調整ねじ13は基部にクラウンギア22を備えている。そこで、想像線で示すプラスドライバ24を上向きに差込み、プラスドライバ24でクラウンギア22を回転することで、第3調整ねじ13を回転することができる。第3調整ねじ13の下方には、比較的低い工具ガイドリブ25,25がハウジング2から突設されており、工具ガイドリブ25,25は図2に示す通り左右一対設けられているので、これらリブ25,25の間にドライバを差込めばよい。26はクラウンギア22,22の上部を囲う如くにハウジング2に突設されたリブである(図2も参照)。
【0015】図6は図1の別実施例図であり、第1反射板27と第2反射板28は互いに線対称の関係にあり、反射面に形成したフレネル仕様の凹凸模様は同一仕様である。反射板27,28は、図3で説明したインナレンズを備えていない。バルブ8にはサブリフレクタ29が付設されている。このサブリフレクタ29は、直接前方へ向う光を反転させて反射板27へ集める作用をなし、光量のアップを図るものである。その他は、図1と同じなので符号を準用し、詳細な説明は省略する。
【0016】図7は図6の7−7線断面図であり、第1反射板27の中央に第1バルブ8が取付けられ、この第1バルブ8の発光が第1反射板27で反射され、中間筒5で輪郭を調整され、レンズ6を介して発射される構成となっている。第2反射板28も同様である。
【0017】以上の構成からなる前照灯装置1を車両(自動二輪車)に搭載した例を以下に説明する。図8は本発明の前照灯装置を備えた自動二輪車の要部正面図であり、フロントカウル31の略中央に前照灯装置1が嵌め込まれいる。11,13は第1・第3調整ねじ、14,15,16は通気管、18,18はガードリブである。フロントカウル31の上部にはスクリーン32が設けられ、下方にはホーン33が配置され、左右に小孔34…および空気導入孔35が開けられている。小孔34は旋回時に受ける横からの走行風による空気抵抗を軽減させるために開けた開口であり、これにより操縦の安定化を図ることができる。空気導入孔35はヘッドパイプおよびエアクリーナへ空気を導くための開口である。
【0018】図9は本発明の前照灯装置を備えた自動二輪車の要部側面図であり、メインフレーム41およびエンジンハンガフレーム42の前部に固着されたヘッドパイプ43の前部に、三角形状のフロントカウルステー44がボルト固定され、このフロントカウルステー44の先端(前端)にフロントカウル31が止めねじ45で固定され、このフロントカウル31に前照灯装置1がビス46…で固定される。47はフロントカウル31に取付けられたポジションランプ、48はフロントカウルステー44の前部上部に取付けられたメータ、49はバックミラー取付座、50はウインカ取付座である。
【0019】図10は本発明の前照灯装置を備えた自動二輪車の要部平面図であり、乗員から見て、フロントカウルステー44の左方でフロントカウル31の内側に、クリップ56にて左ステー57が係止され、このステー57にウインカリレー51、前照灯のハイポジションリレー52、前照灯のロウポジションリレー53が順に取付けられ、また、フロントカウルステー44の右方でフロントカウル31の内側に、クリップ56にて右ステー58が係止され、このステー58にカップラ集合板54、ヒューズボックス55が順に取付けられている。
【0020】以上の二輪車においてエーミング機構による光軸調整の要領を説明する。なお、エーミング機構は第1〜第3調整ねじ11〜13および摺動部材21…からなる。光軸を上下方向に調整するには、図10においてプラスドライバ24で第1,第2調整ねじ11,12を適宜左右に回転すればよい。光軸を左右方向に調整するには、図9においてプラスドライバ24で第1・第3調整ねじ11,13を適宜左右に回転すればよい。
【0021】この際、各種リレー等の電子・電気部品が密に配列され、それらに係る配線はこの付近を走っているため、エーミング操作、具体的にはプラスドライバ24の操作は簡単ではない。そこで、本発明は図2に示した通り、通気管14,15のごく近傍に配置された第1調整ねじ11,11を回動する時に誤って通気管14,15をドライバ24で傷めることが無いように、ガードリブ18,18を設けたことを特徴とする。この処置により、仮に増し締めの際にドライバ24が当該ねじ11,11から外れたとしてもドライバ24がガードリブ18に当るだけで通気管14,15に至る心配はない。
【0022】なお、第2調整ねじ12,12は近傍に通気管が存在しないので、ガードリブを設ける必要はない。また、第3調整ねじ13,13は近傍に中央通気管16があるが、図5で説明した通り、ドライバ24は縦向きに操作され、しかもそのドライバ24が一対の工具ガイドリブ25,25で案内されるので、中央通気管16を傷める恐れはない。
【0023】更に、図4に示した通りガードリブ18の突出高さH1を通気管15の取付け高さH2と略同一にしたので、H2をチェックすることにより通気管15が正しくボス2bに嵌合されているか否かが極めて容易に確認できる。通気管14についても同様である。
【0024】尚、本実施例は車両を自動二輪車としたがこれに限るものではなく、本発明の前照灯装置1は三・四輪車に搭載して差支えない。
【0025】
【発明の効果】以上に述べた通り本発明は、車両用前照灯装置の通気管の近傍に光軸調整用のエーミング機構を備え、且つこのエーミング機構と通気管とを仕切るガードリブをハウジングに突設したので、光軸調整作業中にドライバ等の工具で通気管を傷める又は外してしまう恐れがなく、この結果、調整ねじをごく短くすることができ、前照灯装置の後方のスペースを有効に活用することができる。
【0026】前照灯装置の反射板に、複数種類のリフレクタ面を設けたものにおいては、それに用いるレンズはほぼ透明とすることができる。ほぼ透明のレンズはレンズカットを要しないので、外観性を向上できる。
【0027】また、ガードリブの突出高さを通気管の取付け高さと略同一にすることで、エーミングのためのドライバ等の工具が通気管に一層当り難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る前照灯装置の正面図
【図2】本発明に係る前照灯装置の背面図
【図3】図2の3−3線断面図
【図4】図2の4−4線断面図
【図5】図2の5−5線断面図
【図6】本発明に係る図1の別実施例図
【図7】図6の7−7線断面図
【図8】本発明の前照灯装置を備えた自動二輪車の要部正面図
【図9】本発明の前照灯装置を備えた自動二輪車の要部側面図
【図10】本発明の前照灯装置を備えた自動二輪車の要部平面図
【符号の説明】
1…車両用前照灯装置、2…ハウジング、2a…通気孔、2b…通気管取付けボス、3,4,27,28…反射板、3a,3b,3c,4a,4b,4c…リフレクタ面、8,9…バルブ、11…エーミング機構を構成する第1調整ねじ、14,15…通気管、18…ガードリブ、H1…ガードリブの突出高さ、H2…通気管の取付け高さ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 バルブ及び反射板を収納するハウジングの背面に通気孔を開け、この通気孔に通気管を取付けた車両用前照灯装置において、この車両用前照灯装置は、前記通気管の近傍に光軸調整用のエーミング機構を備え、且つこのエーミング機構と前記通気管とを仕切るガードリブをハウジングに突設したことを特徴とする車両用前照灯装置。
【請求項2】 前記反射板は、複数種類の反射角を持つように複数のリフレクタ面が形成され、また、反射板の前方に配置されるレンズは、ほぼ透明であることを特徴とする請求項1記載の車両用前照灯装置。
【請求項3】 前記ガードリブは、その突出高さが前記通気管の取付け高さと略同一であることを特徴とする請求項1記載の車両用前照灯装置。
【請求項1】 バルブ及び反射板を収納するハウジングの背面に通気孔を開け、この通気孔に通気管を取付けた車両用前照灯装置において、この車両用前照灯装置は、前記通気管の近傍に光軸調整用のエーミング機構を備え、且つこのエーミング機構と前記通気管とを仕切るガードリブをハウジングに突設したことを特徴とする車両用前照灯装置。
【請求項2】 前記反射板は、複数種類の反射角を持つように複数のリフレクタ面が形成され、また、反射板の前方に配置されるレンズは、ほぼ透明であることを特徴とする請求項1記載の車両用前照灯装置。
【請求項3】 前記ガードリブは、その突出高さが前記通気管の取付け高さと略同一であることを特徴とする請求項1記載の車両用前照灯装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【特許番号】特許第3335228号(P3335228)
【登録日】平成14年8月2日(2002.8.2)
【発行日】平成14年10月15日(2002.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−245729
【出願日】平成5年9月30日(1993.9.30)
【公開番号】特開平7−105701
【公開日】平成7年4月21日(1995.4.21)
【審査請求日】平成11年10月15日(1999.10.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【登録日】平成14年8月2日(2002.8.2)
【発行日】平成14年10月15日(2002.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成5年9月30日(1993.9.30)
【公開番号】特開平7−105701
【公開日】平成7年4月21日(1995.4.21)
【審査請求日】平成11年10月15日(1999.10.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
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