説明

車両用前照灯

【課題】光束利用率を向上させつつ、グレアの発生を抑制する。
【解決手段】車両用前照灯1は、フィラメント31を有するバルブ3と、前方へ開口する形状に形成されるとともにその焦点近傍にフィラメント31が位置するように配置され、バルブ3から出射された光を前方へ反射させるリフレクタ4の反射面41と、バルブ3の前方を覆うように設けられ、バルブ3から前方へ出射される光を遮光する遮光フード6とを備え、車両前方に所定の配光パターンを形成する。リフレクタ4は、反射面41の上端に連なるように設けられて、バルブ3から上方へ出射された光を遮光フード6へ反射させる中間反射面42を有する。遮光フード6は、中間反射面42で反射された光を前方へ反射させて配光パターン内に照射する補助反射面62を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バルブからの光をリフレクタで反射させて所定の配光パターンを形成する車両用前照灯において、グレア(眩惑)の原因となるバルブからの直射光を遮光するために、バルブの前端部近傍に遮光フードを配置したものが知られている。
【0003】
具体的には、この種の車両用前照灯では、図4に示すように、前面がアウターレンズ91で覆われた灯室内に、前方へ開口したリフレクタ92と、リフレクタ92底部中央の貫通孔に後方から挿嵌されたバルブ93とが収容されており、このバルブ93の前方を覆うように遮光フード94が設けられている。遮光フード94は、一般的に美的外観を備えるものとされ、例えば図5に示すように、段付きの多角錐筒状などに形成される。
【0004】
ところが、この種の車両用前照灯においては、リフレクタ92からの反射光の一部が遮光フード94の上面によって前方の意図しない方向へ反射される結果、当該光がグレアを発生させてしまう恐れがある。特に、車両デザイン上の要求などから上下方向の灯具サイズが制限された場合には、図4に示すように、リフレクタ92の天面92a(一般にリフレクタ92の反射面の一部とはされない面)がよりバルブ93に近接するため、遮光フード94ではバルブ93から当該天面92aへの光を完全に遮光できなくなる。その結果、当該天面92aを介して遮光フード94の上面で反射される光が増えてしまい、グレアが生じやすくなってしまう。
【0005】
そこで、例えば特許文献1に記載の車両用前照灯では、遮光フード94の上面にメッシュ加工やディンプル加工などによる複数の凹凸を形成することによって、リフレクタ92からの反射光を遮光フード94の上面で拡散させ、当該光によるグレアの発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−224297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の車両用前照灯では、リフレクタ92からの反射光を遮光フード94の上面で単純に拡散させているため、当該遮光フード94の上面に入射した光が有効に利用されておらず、光束利用率が低い構成となっている。
また、バルブ93からの光がリフレクタ92の天面92aに入射しないように遮光フード94を大きくし、当該天面92aから遮光フード94の上面への反射光量を低減させることも考えられるが、この場合にも、大きくした遮光フード94部分で遮光された光は有効に利用されないため、やはり光束利用率は低いままである。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、光束利用率を向上させつつ、グレアの発生を抑制することができる車両用前照灯の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
バルブと、
前方へ開口する形状に形成されるとともにその焦点近傍に前記バルブが位置するように配置され、前記バルブから出射された光を前方へ反射させる反射面と、
前記バルブの前方を覆うように設けられ、前記バルブから前方へ出射される光を遮光する遮光フードと、
を備え、車両前方に所定の配光パターンを形成する車両用前照灯において、
前記反射面の上端に連なるように設けられ、前記バルブから上方へ出射された光を前記遮光フードへ反射させる中間反射面を備え、
前記遮光フードは、前記中間反射面で反射された光を前方へ反射させて前記配光パターン内に照射する補助反射面を有することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用前照灯において、
前記中間反射面は、平面状に形成され、
前記補助反射面は、前記中間反射面について前記バルブの発光中心と面対称となる点を焦点とする放物柱面状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用前照灯において、
前記補助反射面は、前記遮光フードの上面に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用前照灯において、
前記補助反射面は、前記遮光フードと一体的に構成された別部材に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バルブから上方へ出射された光が中間反射面によって遮光フードへ反射され、当該光が遮光フードの補助反射面によって前方へ反射されて配光パターン内に照射されるので、遮光フードへ反射されてきた光を単純に拡散させていた従来と異なり、当該光をグレア光とすることなく、配光パターン内への照射光として有効に利用することができる。したがって、上下方向の灯具サイズが制限された場合であっても、光束利用率を向上させつつ、グレアの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態における車両用前照灯の側断面図である。
【図2】実施形態における遮光フードの斜視図である。
【図3】実施形態における遮光フードの変形例を示す斜視図である。
【図4】従来の車両用前照灯の側断面図である。
【図5】従来の遮光フードの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態における車両用前照灯1の側断面図であり、図2は、車両用前照灯1が備える後述の遮光フード6の斜視図である。
なお、以下の説明では、「前」「後」「左」「右」「上」「下」との記載は、車両用前照灯1から見た各方向、すなわち当該車両用前照灯1が搭載された車両から見た各方向を意味するものとする。
【0016】
図1に示すように、車両用前照灯1は、車両前方に光を照射して所定の配光パターンを形成するものであり、前面が開口した図示しないハウジングと、当該ハウジングの前面開口を覆うアウターレンズ2とを備えている。これらハウジング及びアウターレンズ2で形成される灯室内には、バルブ3と、リフレクタ4と、サブリフレクタ5と、遮光フード6とが収容されている。
このうち、バルブ3は、車両用前照灯1の光源であり、発光体(発光中心)であるフィラメント31を有している。
【0017】
リフレクタ4は、前方へ開口する略湾曲板状に形成されており、その開口内の底面が、バルブ3から出射された光を前方へ反射させる反射面41となっている。反射面41は、回転放物面を基調とする自由曲面であり、その略中央に貫通孔41aが形成されている。貫通孔41aにはバルブ3が後方から挿嵌されており、当該バルブ3は、フィラメント31が反射面41の焦点近傍に位置した状態でリフレクタ4に固定されている。
【0018】
また、リフレクタ4の開口内面のうち、反射面41の上端に連なる天面は、上下方向に略直交する平面状に形成された中間反射面42となっている。より詳しくは、中間反射面42は、リフレクタ4成形時の抜き勾配として、前方に向かうに連れてややリフレクタ4外方(上方)に位置するように形成されており、前後方向に対して3°ほど傾斜している。この中間反射面42は、バルブ3から上方へ出射された光のうち反射面41よりも前方へ向かうものを、後述する遮光フード6の補助反射面62に向けて下方へ反射させる。
【0019】
サブリフレクタ5は、リフレクタ4上端の前方に配置されており、その下面が付加反射面51となっている。付加反射面51は、リフレクタ4の反射面41で反射された光の一部を前方へ反射させて、反射面41で反射された他の光とともに車両前方に配光パターンを形成する。
【0020】
遮光フード6は、図1及び図2に示すように、後方へ開口する段付きの略八角錐筒状に形成され、バルブ3の前方を覆うように当該バルブ3の前端部近傍に配置されている。遮光フード6の下部後端には、当該遮光フード6をリフレクタ4に取り付けるためのステー部61が設けられている。ステー部61は、遮光フード6の下部後端から後方へ延出しつつ、その後半部が下方へ屈曲されており、リフレクタ4の貫通孔41aに挿通された状態で、後半部がリフレクタ4の後面に固定されている。この遮光フード6は、グレア(眩惑)光となりうるバルブ3から前方への直射光(リフレクタ4を介さない光)を遮光することで、グレアの発生を抑制する。
【0021】
また、遮光フード6の上面には、補助反射面62が形成されている。補助反射面62は、中間反射面42についてフィラメント31と面対称となる点(又はその近傍)を焦点Fとする放物柱面状に形成されている。より詳しくは、補助反射面62は、フィラメント31を含んで左右方向と直交する断面での形状が焦点Fを有する放物線状であり、当該放物線を左右方向へスイープさせた面となっている。この補助反射面62は、バルブ3のフィラメント31から出射されて中間反射面42で反射された光を、前方へ反射させて配光パターン内の所定領域に照射する。
【0022】
なお、補助反射面62は、遮光フード6の上面に形成されていなくともよく、図3に示すように、遮光フード6とは別の板状部材7に形成し、当該板状部材7を溶接等により遮光フード6と一体的に構成することとしてもよい。この場合には、遮光フード6のサイズに拘束されることなく、補助反射面62をより大きく形成することができる。また、上面に補助反射面62を有する上述の遮光フード6や従来の遮光フードとは異なる新たな見栄えのものとすることができる。
【0023】
以上のように、車両用前照灯1によれば、バルブ3から上方へ出射された光が中間反射面42によって遮光フード6へ反射され、当該光が遮光フード6の補助反射面62によって前方へ反射されて配光パターン内に照射されるので、遮光フードへ反射されてきた光を単純に拡散させていた従来と異なり、当該光をグレア光とすることなく、配光パターン内への照射光として有効に利用することができる。したがって、上下方向の灯具サイズが制限された場合であっても、光束利用率を向上させつつ、グレアの発生を抑制することができる。
【0024】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0025】
例えば、上記実施形態では、補助反射面62が放物柱面状に形成されていることとしたが、当該補助反射面62は、中間反射面42で反射された光を適正に前方へ反射できればよく、回転放物面状であってもよいし、他の面状であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 車両用前照灯
2 アウターレンズ
3 バルブ
31 フィラメント(発光中心)
4 リフレクタ
41 反射面
41a 貫通孔
42 中間反射面
5 サブリフレクタ
6 遮光フード
61 ステー部
62 補助反射面
F 焦点
7 板状部材(別部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブと、
前方へ開口する形状に形成されるとともにその焦点近傍に前記バルブが位置するように配置され、前記バルブから出射された光を前方へ反射させる反射面と、
前記バルブの前方を覆うように設けられ、前記バルブから前方へ出射される光を遮光する遮光フードと、
を備え、車両前方に所定の配光パターンを形成する車両用前照灯において、
前記反射面の上端に連なるように設けられ、前記バルブから上方へ出射された光を前記遮光フードへ反射させる中間反射面を備え、
前記遮光フードは、前記中間反射面で反射された光を前方へ反射させて前記配光パターン内に照射する補助反射面を有することを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記中間反射面は、平面状に形成され、
前記補助反射面は、前記中間反射面について前記バルブの発光中心と面対称となる点を焦点とする放物柱面状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記補助反射面は、前記遮光フードの上面に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記補助反射面は、前記遮光フードと一体的に構成された別部材に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−54833(P2013−54833A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190351(P2011−190351)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】