説明

車両用収納装置

【課題】 ロックピンが破損することを防止できる車両用収納装置の提供。
【解決手段】 (1)リテーナ20と、リテーナ20に開閉可能に取付けられるドアと、リテーナ20に設けられるカム40と、ドアに設けられカム40に係脱可能なロックピンと、ロックピンがカム40に係合しているときにリテーナ20の側壁21との間にロックピンとカム40が位置するように配置された壁部60と、壁部60に設けられる弾性変形可能な弾性変形部70と、を有する車両用収納装置10。(2)壁部60は樹脂製であり、弾性変形部70は壁部60にスリット71を設けることで設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プッシュオープン式の車両用収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用収納装置は、図6、図7に示すように、リテーナ2と、ドア3と、リテーナ2に取付けられるカム4と、ドア3のアーム3aに設けられカム4に係脱可能なロックピン5と、カム4に対してリテーナ2と反対側に設けられる壁部6と、を有する。
壁部6は、カム4がリテーナ2の側壁から、ロックピン5が係合不能となる位置まで離れることを防止するために設けられている。壁部6には、カム4の動きを許容する構造は何ら設けられていない。
【0003】
しかし、従来の車両用収納装置には、次の問題点がある。
ロックピン5がカム4に係合しているときにドア3の表面のうちドア3の回動軸芯よりも基端側のエリアE2に手をついたり重量物を落としたりした場合、カム4は、ロックピン5によりリテーナ2から離れる方向(ロックピン5がカム4から外れる方向、図7のE方向)に動こうとする。しかし、壁部6にカム4の動きを許容する構造が何ら設けられていないため、カム4は、壁部6に当るまでしか動くことができない。その結果、ロックピン5に大荷重がかかり、ロックピン5が破損するおそれがある。
【特許文献1】特開平8−310309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする問題点は、ロックピンが破損することである。
本発明の目的は、ロックピンが破損することを防止できる車両用収納装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) リテーナと、
前記リテーナに開閉可能に取付けられるドアと、
前記リテーナと前記ドアの一方に設けられるカムと、
前記リテーナと前記ドアの他方に設けられ前記カムに係脱可能なロックピンと、
前記ロックピンが前記カムに係合しているときに前記リテーナの側壁との間に前記ロックピンと前記カムが位置するように配置された壁部と、
前記壁部に設けられる弾性変形可能な弾性変形部と、
を有する車両用収納装置。
(2) 前記壁部は樹脂製であり、前記弾性変形部は前記壁部にスリットを設けることで設けられる(1)記載の車両用収納装置。
【発明の効果】
【0006】
上記(1)の車両用収納装置では、弾性変形部を有するので、カムに係合しているロックピンに大荷重がかかりカム又はロックピンがリテーナの側壁から離れる方向(図4のD方向)に動いたとき、弾性変形部が押されて変形する。そのため、ロックピンが破損する前にロックピンがカムから外れ、ロックピンが破損することを防止できる。
上記(2)の車両用収納装置では、弾性変形部を壁部と一体品とすることができ、弾性変形部を壁部と別体に形成する場合に比べて、部品点数を削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明実施例の車両用収納装置を、図1〜図5を参照して説明する。
本発明実施例の車両用収納装置は、車両用灰皿装置、車両用小物入れ装置、車両用カップホルダ装置などである。
本発明実施例の車両用収納装置10は、図1に示すように、リテーナ20と、リテーナ20に開閉可能に取付けられるドア30と、カム40と、カム40に係脱可能なロックピン50(図4参照)と、ロックピン50がカム40に係合しているときにリテーナ20の側壁21との間にロックピン50とカム40が位置するように配置された壁部60と、壁部60に設けられる弾性変形可能な弾性変形部70と、を有する。
【0008】
リテーナ20は、樹脂製である。リテーナ20は、車両の内装部材に固定される。
ドア30は、リテーナ20に回動開閉可能に取付けられる。ドア30は、回動軸芯Pまわりに、リテーナ20に対して回動可能とされている。ドア30は、図示略のドア付勢スプリングにより、リテーナ20に対して開方向に回動付勢されている。ドア30は、図5に示すように、アーム31を有する。
【0009】
カム40は、リテーナ20とドア30の一方に設けられ、ロックピン50は、リテーナ20とドア30の他方に設けられる(図示例では、カム40がリテーナ20に設けられ、ロックピン50がドア30に設けられる場合を示している)。以下、本発明実施例では、カム40がリテーナ20に設けられ、ロックピン50がドア30に設けられる場合を例にとって説明する。
カム40は、ハートカムからなる。カム40は、図2に示すように、リテーナ20の側壁21に揺動可能に取付けられる。カム40は、リテーナ20の側面と平行な面内で揺動可能とされている。カム40は、リテーナ20に対して、軸芯Qまわりに揺動可能とされている。
【0010】
ロックピン50は、図5に示すように、ドア30のアーム31の先端部に固定される。ロックピン50は、アーム31に設けられるので、リテーナ20に対してドア30の回動軸芯Pまわりに回動可能である。
ロックピン50は、ドア20が閉位置にあるときに、カム40に係脱可能とされている。
【0011】
壁部60は、車両用収納装置10の通常使用時に、カム40がロックピン50と係合できない位置まで、リテーナ20の側壁21から離れる方向に動いてしまうことを防止するために設けられる。
壁部60は樹脂製である。壁部60は、リテーナ20と一体に形成されていてもよく、リテーナ20と別体に形成されてリテーナ20に固定して取付けられていてもよい。
【0012】
弾性変形部70は、リテーナ20の側壁21に接近離反する方向に弾性変形可能とされている。弾性変形部70は、壁部60と別体に形成され壁部60に固定して取付けられたゴム、スポンジ等からなっていてもよく、壁部60にスリット71を設けることで形成されていてもよい(図示例では、弾性変形部70が壁部60にスリット71を設けることで形成されている場合を示している)。以下、本発明実施例では、弾性変形部70が壁部60にスリット71を設けることで形成される場合を例にとって説明する。
弾性変形部70の少なくとも自由端側は、カム40によりリテーナ20から離れる方向に押されたとき、リテーナ20から離れる方向に弾性変形する(たわむ)。弾性変形部70の弾性変形は、樹脂弾性を利用している。
【0013】
ここで、本発明実施例の作動を説明する。
(a)ドア30の、回動軸芯Pより先端側のエリアE1(図2参照)に荷重がかかったとき
ロックピン50がカム40に係合しているときに(ドア30が閉位置にあるときに)、ドア30の表面のうち回動軸芯Pよりドア30の先端側のエリアE1を押し込むと、ロックピン50がカム揺動軸芯Qから離れる方向に移動してカム40とロックピン50との係合が解除される。その後、エリアE1の押し込み操作を解除すると、図示略のドア付勢スプリングの付勢力でドア30が開く。
【0014】
(b)ドア30の、回動軸芯Pより基端側のエリアE2に大荷重がかかったとき(エリアE2に手をついたり重量物を落としたとき)
ロックピン50がカム40に係合しているときに(ドア30が閉位置にあるときに)、ドア30の表面のうち回動軸芯Pよりドア30の基端側のエリアE2に大荷重がかかると、図4に示すように、ロックピン50にカム揺動軸芯Qに接近する方向に移動する力Fが発生する。そのため、カム40は、リテーナ20の側壁21から離れる方向Dに移動し、弾性変形部70に当たる。弾性変形部70は、カム40によって押され、リテーナ20から離れる方向にたわむ。弾性変形部70が撓むので、カム40は、ロックピン50がカム40から抜けるまでリテーナ20から離れる方向に動くことができる。カム40から抜けたロックピン50は、先端がカム40の外表面上をすべり、ロック解除となる。ロック解除後、ドア30は、図示略のドア付勢スプリングの付勢力で開き、弾性変形部70は、カム40に押される前の状態まで復元する。
【0015】
つぎに、本発明実施例の作用を説明する。
本発明実施例では、弾性変形部70を有するので、カム40に係合しているロックピン50に大荷重がかかりカム40がリテーナ20から離れる方向に動いたとき、弾性変形部70がカム40によって押されて変形する。そのため、ロックピン50が破損する前にロックピン50がカム40から外れ、ロックピン50が破損することを防止できる。
弾性変形部70が壁部60にスリット71を設けることで形成されるので、弾性変形部70を壁部60と一体品とすることができ、弾性変形部70を壁部60と別体に形成する場合に比べて、部品点数を削減できる。さらに、壁部60をリテーナ20と一体に形成することにより、さらに部品点数を削減できる。
壁部60が設けられているので、エリアE1を押し込んでロックを解除するときに(通常使用時に)カム40がリテーナ20から離れる方向に移動しロックピン50がカム40から抜けることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明実施例の車両用収納装置の斜視図である。
【図2】本発明実施例の車両用収納装置の側面図である。
【図3】図1のA部拡大斜視図である。
【図4】図2のB−B線拡大断面図である。
【図5】図2のC−C線拡大断面図である。
【図6】従来の車両用収納装置の斜視図である。
【図7】従来の車両用収納装置の、ロック部とその近傍を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0017】
10 車両用収納装置
20 リテーナ
21 リテーナの側壁
30 ドア
31 アーム
40 カム
50 ロックピン
60 壁部
70 弾性変形部
71 スリット
P ドア回動軸芯
Q カム揺動軸芯
E1 ドアの、回動軸芯より先端側のエリア
E2 ドアの、回動軸芯より基端側のエリア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リテーナと、
前記リテーナに開閉可能に取付けられるドアと、
前記リテーナと前記ドアの一方に設けられるカムと、
前記リテーナと前記ドアの他方に設けられ前記カムに係脱可能なロックピンと、
前記ロックピンが前記カムに係合しているときに前記リテーナの側壁との間に前記ロックピンと前記カムが位置するように配置された壁部と、
前記壁部に設けられる弾性変形可能な弾性変形部と、
を有する車両用収納装置。
【請求項2】
前記壁部は樹脂製であり、前記弾性変形部は前記壁部にスリットを設けることで設けられる請求項1記載の車両用収納装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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