説明

車両用吸気装置

【課題】 レゾネータを備えた車両用吸気装置において、レゾネータ内にダストや水滴が溜まる惧れを解消できる車両用吸気装置を提供すること。
【解決手段】 吸気ダクト903の先部をレゾネータ906と吸気部905とに分岐し、吸気部905に外気を取り入れる吸気口909を設けたチャンバ908を形成し、吸気口909より上方にレゾネータ906を配設する。さらに、支管部907とチャンバ908とを、本管部904に向かって下方へ僅かに傾斜するように設ける。このように形成した吸気ダクト903を、その吸気口909が燃料タンク6の後部外面から所要の間隔をおいて配置し、かつ、シート下方及び樹脂カバー下方に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、吸気ダクト(吸気管)にレゾネータ(膨張室)を設けて、エアの吸気音を低減させた車両用吸気装置がある。
この車両用吸気装置に用いられる吸気管は、その吸気管の最上位に吸気口を設け、エアクリーナへ至る中途部にレゾネータを設けていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−270559(第4頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この上記した車両用吸気装置は、エアの吸気音を低減させるものとして極めて好適なものであるが、しかしながら、以下の解決すべき課題が生じてきた。
【0005】
すなわち、従来の車両用吸気装置に用いられる吸気管は、その吸気管の最上位に吸気口を設け、エアクリーナへ至る中途部にレゾネータを設けた構成であるため、レゾネータ内にダストや水滴が溜まる惧れがあった。
【0006】
仮に、レゾネータ内にダストや水滴が溜まった場合、従来の吸気管は、レゾネータ部分が着脱可能になっていたため、レゾネータを取り外して清掃が可能であったが、その都度、レゾネータを取り外していては面倒である。
【0007】
そこで本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決できる車両用吸気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術課題を達成するために、本発明にかかる車両用吸気装置は、下記の技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1にかかる車両用吸気装置は、エアクリーナと接続され、外気を取り入れる吸気ダクトを備えた車両用吸気装置において、前記吸気ダクトは、基部が前記エアクリーナと接続されると共に該エアクリーナの上流に分岐部を備え、前記分岐部より上流の一方をレゾネータ部とし、前記分岐部より上流の他方を吸気口を備える吸気部とし、前記分岐部より上方に前記レゾネータ部が配設されていることを特徴とする。
請求項2にかかる車両用吸気装置は、請求項1において、前記吸気部は、チャンバを備え、前記吸気口は、該チャンバの底面より上方となるように該チャンバに設けられていることを特徴とする。
請求項3にかかる車両用吸気装置は、請求項1または2において、前記吸気口の開口面積は、前記吸気部へ分岐される分岐部の開口面積よりも大きいことを特徴とする。
請求項4にかかる車両用吸気装置は、請求項1〜3の何れかにおいて、少なくとも前記吸気部と前記レゾネータ部、及び前記分岐部が一体成形されていることを特徴とする。
請求項5にかかる車両用吸気装置は、請求項1〜4の何れかにおいて、前記吸気ダクトは、容器とシートとが隣接して配置された車両に、前記吸気口が該容器外面から所要の間隔をおいて位置するように、かつ、前記シート下方に配置されることを特徴とする。
請求項6にかかる車両用吸気装置は、請求項1〜5の何れかにおいて、前記吸気部の底面が、前記吸気部へ分岐される分岐部へ向かって下方へ傾斜すると共に、前記分岐部の開口と連通していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1によれば、吸気ダクトの先部をレゾネータと吸気部とに分岐し、外気を取り入れる吸気口を吸気部に設け、該吸気口より上方にレゾネータを配設したから、レゾネータ内にダストや水滴が溜まるのを防止することができ、吸気ダクトを簡易な構成とすることができる。
請求項2によれば、吸気口から入るダストや水滴を、チャンバで分離しやすくすることができる。
請求項3によれば、吸気口の開口面積を吸気部へ分岐される分岐部の開口面積よりも大きくしたから、騒音が低減すると共に、チャンバ内の空気をバッファとして利用することができる。
請求項4によれば、夫々の構成部を一体成形にしたから、簡易な構成となり、従って、製造コストを削減することができる。
請求項5によれば、吸気ダクトの位置を限定したことにより、ダスト等の侵入を防ぐことができる。
請求項6によれば、吸気部内のダスト等をエアクリーナ(ケース)に落とすことで、吸気部内にダスト等が溜まることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明にかかる車両用吸気装置の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
本実施の形態にかかる車両用吸気装置は、所謂、鞍乗りタイプの四輪バギーAに適用したものを例示しており、要部である車両用吸気装置以外の構成の詳細な説明は省略する。なお、図中、符号Aは四輪バギーを、符号9は車両用吸気装置を示す。
【0011】
本実施の形態にかかる車両用吸気装置を用いた四輪バギーAは、図1及び図2に示すように、骨組みとなる車体フレーム1と、車体フレーム1に基部が接続された懸架装置2と、その懸架装置2と車体フレーム1に支持された一対の前輪31及び一対の後輪32からなる車輪部3と、伝達機構(図示せず)を介して後輪32と接続され減速機構(図示せず)が内装されたエンジン部4と、運転者が鞍乗り状に着座するシート5と、そのシート5の前部と隣接して配置された燃料タンク6と、車体フレーム1に支持され伝達機構を介して前輪31と接続されたバーハンドル7と、懸架装置2や車輪部3、燃料タンク6等を被装する樹脂カバー8と、シート5の下方に配置された車両用吸気装置9とを備えて構成され、シート5に着座した運転者のハンドル操作、スロットル操作、ギア操作などによって自走するように構成されている。
【0012】
次に、本発明の要部である車両用吸気装置9について詳述する。
車両用吸気装置9は、エアクリーナ901と、吸気ダクト903とを備えてなる。
【0013】
エアクリーナ901は、図3及び図4に示すように、車体フレーム1間に垂設されたエアクリーナケース902と、そのエアクリーナケース902内に収納され外気を清浄させるフィルタエレメント(図示せず)とを備えて構成される。
【0014】
また、このエアクリーナ901は、フィルタエレメントを挟んでその上流側に後述する吸気ダクト903の基部が接続されていると共に、下流側にスロットルバルブを介してエンジン部4のサクション側(吸気マニホールド)が接続されている。
【0015】
吸気ダクト903は、図5に示すように、エアクリーナ901の上流側と接続される基部を備えた管状の本管部904と、上方へ向かう本管部904の先部と連通され略水平方向へ延設された中空状の吸気部905と、本管部904の先部と連通され吸気部905の延設方向と同一方向へ湾曲形成されたレゾネータ906とを備えて構成されており、この上記した吸気部905とレゾネータ906、及び本管部904は、夫々溶着されて一体成形されてなる。
【0016】
また、図6に示すように、この吸気ダクト903は、略水平状に延設された本管部904の基部に対し、吸気部905及びレゾネータ906が車両前方側に配置されるよう本管部904の基部を除く本管部904及び本管部904の先部と連通されたレゾネータ906の基部が傾斜して形成されている。
【0017】
上記した吸気部905は、本管部904の先部と連通され本管部904より小径な管状の支管部907と、その支管部907の先に設けられたチャンバ908からなる。
【0018】
このチャンバ908は、支管部907と連通された所要体積からなる中空の略三角柱状に形成されており、図6に示すように、本管部904の傾斜とチャンバ908の一面とが揃うように、かつ、チャンバ908の残りの二面が、略垂直(上部側が車両後方側へ僅かに傾斜)と略水平となるような関係でもって支管部907と接続されている。
【0019】
さらに、チャンバ908の略垂直面には、外気を取り入れる吸気口909が設けられている(チャンバ908の底面より上方)。この吸気口909は、その開口面積が、本管部904と支管部907との接続部位、すなわち、吸気部905へ分岐される分岐部の開口部910の面積よりも大きくなっており、吸気効率を向上させている。
【0020】
また、支管部907の孔底面とチャンバ908の底面とが面一となるような関係でもって支管部907とチャンバ908とが接続されていると共に、支管部907とチャンバ908は、本管部904に向かって下方へ僅かに傾斜するように設けられている。このように形成することで、チャンバ908底面や支管部907内にダストや水滴が溜まるのを防止することができる。
【0021】
レゾネータ906は、本管部904と同一の径から成る管状を呈し、上記したように、本管部904の先部と接続され本幹部904の傾斜と同一の傾斜でもって傾斜した基部と、吸気部905の延設方向と同一方向へ湾曲形成された先部とで形成され、吸気口909より上方に設けられている。
【0022】
さらに、レゾネータ906の先部端面911は閉塞されて、所要の体積からなる空間部が形成されており、この空間部によって吸気音が低減するようになっている。
【0023】
このように構成された吸気ダクト903は、図3及び図4に示すように、凹設された燃料タンク6の後部に略水平状に延設されたレゾネータ906の先部が位置するように、かつ、吸気口909が燃料タンク6(容器)の後部外面から所要の間隔をおいて位置するように、シート5下方及び樹脂カバー8下方に配置されている。
【0024】
以上のように構成された車両用吸気装置9は、チャンバ908に設けた吸気口909から外気を吸込み、吸い込んだ外気をエアクリーナ901内のフィルタエレメントで濾過し、濾過した清浄な空気が、空気流量を調整するスロットルバルブ、吸気マニホールドを介してエンジンのシリンダに流入する。一方、バーハンドル7に設けたスロットルレバーに連係したインジェクションによってシリンダ内に燃料が噴射し点火してエンジンが連続的に駆動する。このとき、吸気音は、レゾネータ906によって低減する。
【0025】
このように、本実施の形態にかかる車両用吸気装置9は、吸気口909より上方にレゾネータ906を配設したから、レゾネータ906内にダストや水滴が溜まるのを防止することができるようになっている。
【0026】
また、チャンバ908の底面より上方となるように該チャンバ908に吸気口909を設けたから、吸気口909から入るダストや水滴を、チャンバ908で分離しやすくすることができる。
【0027】
また、吸気口909の開口面積を吸気部905へ分岐される分岐部の開口面積よりも大きくしたから、騒音が低減すると共に、チャンバ908内の空気をバッファとして利用することができる。
【0028】
また、夫々の構成部を一体成形にしたから、簡易な構成となり、従って、製造コストを削減することができる。
【0029】
また、吸気口909を燃料タンク6(容器)の後部外面から所要の間隔をおいて配置し、かつ、シート5下方及び樹脂カバー8下方に配置しているから、チャンバ908内にダストや水滴が入り込みずらい。
【0030】
仮にチャンバ908内にダストや水滴が入り込んでも、支管部907とチャンバ908が、本管部904に向かって下方へ僅かに傾斜するように設けているから、チャンバ908底面や支管部907内にダストや水滴が溜まるのを防止することができる。
【0031】
以上、本実施の形態にかかる車両用吸気装置を説明したが、上述した実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施の形態にかかる車両用吸気装置を用いた四輪バギーの平面図。
【図2】同、側面図。
【図3】同、四輪バギーの一部切欠した部分拡大平面図。
【図4】四輪バギーの一部切欠した部分拡大側面図(透過図)。
【図5】吸気ダクトの背面図。
【図6】吸気ダクトの一部切欠した側面図。
【符号の説明】
【0033】
A…四輪バギー 1…車体フレーム 2…懸架装置 3…車輪部 31…前輪 32…後輪 4…エンジン部 5…シート 6…燃料タンク 7…バーハンドル 8…樹脂カバー 9…車両用吸気装置 901…エアクリーナ 902…エアクリーナケース 903…吸気ダクト 904…本管部 905…吸気部 906…レゾネータ 907…支管部 908…チャンバ 909…吸気口 910…開口部 911…先部端面



【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアクリーナと接続され、外気を取り入れる吸気ダクトを備えた車両用吸気装置において、
前記吸気ダクトは、基部が前記エアクリーナと接続されると共に該エアクリーナの上流に分岐部を備え、
前記分岐部より上流の一方をレゾネータ部とし、前記分岐部より上流の他方を吸気口を備える吸気部とし、
前記分岐部より上方に前記レゾネータ部が配設されていることを特徴とする車両用吸気装置。
【請求項2】
前記吸気部は、チャンバを備え、前記吸気口は、該チャンバの底面より上方となるように該チャンバに設けられていることを特徴とする請求項1記載の車両用吸気装置。
【請求項3】
前記吸気口の開口面積は、前記吸気部へ分岐される分岐部の開口面積よりも大きいことを特徴とする請求項1または2記載の車両用吸気装置。
【請求項4】
少なくとも前記吸気部と前記レゾネータ部、及び前記分岐部が一体成形されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の車両用吸気装置。
【請求項5】
前記吸気ダクトは、容器とシートとが隣接して配置された車両に、前記吸気口が該容器外面から所要の間隔をおいて位置するように、かつ、前記シート下方に配置されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の車両用吸気装置。
【請求項6】
前記吸気部の底面が、前記吸気部へ分岐される分岐部へ向かって下方へ傾斜すると共に、前記分岐部の開口と連通していることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載の車両用吸気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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