説明

車両用吹出しグリル

【課題】
ベゼルとバレル間の揺動を確保するための隙間に従来構成と同様にして変更を加えることがないとともにシャットダンパーを設ける必要がなく、フィンの全閉状態において、前記隙間から空調エアの室内側への漏れを抑制できる、コストのかからない車両用吹出しグリルを提供する。
【解決手段】
吹出しグリル10は、ベゼル20の反吹出し方向の端部に、ベゼル20内に向かう第1張出部25、第2張出部27、第3張出部28及び第4張出部29が延出され、該張出部の反吹出し方向側面は、フィン40に向かう斜面25a,27a,28a,29aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用吹出しグリルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車室の広いワゴン型車等では、車室前部の空調装置とともに、車室後部にも空調装置が設けられている。この車室後部に設けられた空調装置により車室後部を空調するようにしている(特許文献1参照)。
【0003】
例えば、図9に示すように、車室後部のエアコンディショナは、車室後部の側壁を覆うクォータートリムの内側に設置した空調ユニット100から、リヤピラー102及び車室のルーフサイド104に沿って端末を閉塞したエアダクト106が延設されている。エアダクト106のルーフサイド104沿いに設けた前後のエアアウトレット106A,106Bは、それぞれ、車室後部に設けた前後のリヤシートRS1,RS2に着座した乗員に向かって空調エアを吹出すようにされている。
【0004】
エアアウトレット106A,106Bは、図10(b)に示すように、エアダクト106の車室に面する正面側の側面108の開口110、及び、該側面108を被覆する天井トリム112の上記開口110に対応する抜穴114に吹出しグリル120が嵌め込み固定されている。なお、図10(a)は、エアアウトレット106Aに設けられた吹出しグリル120の正面図、図10(b)は、図10(a)のA−A線断面図、図10(c)は図10(a)のB−B線断面図である。
【0005】
吹出しグリル120は、前記開口110及び抜穴114に対して嵌合固定された断面長方形をなす筒状のベゼル122を有する。ベゼル122内には、前後両端に設けられた軸132(図10(c)参照)を有するとともに軸132の周りでベゼル122に対して揺動自在に支持された断面長方形をなす筒状のバレル124が設けられている。又、バレル124の吹出し口124aには、前後に複数並設された指向角度調整可能なフィン126が設けられている。
【0006】
前記フィン126は、図10(c)に示すように上下両端に設けられた一対の回転軸130がバレル124に対して回動自在に嵌合されていることにより、角度調節可能となっている。なお、フィン126の回転軸130は、吹出し口124aを全閉した状態(全閉状態)におけるフィン126の後端面に対して、図10(b)に示すようにオフセット量Dでオフセットされている。
【0007】
各フィン126はそれぞれ図示しない連結リンクにより一連に連結されるとともに、中央のフィン126のノブ128を操作することにより、前記連結リンクを介して他の全てのフィン126の角度を同時に一斉に変えることで、空調エアの吹出し角度を調節できるようにしている。上記のような吹出しグリル120では、フィン126が開けられた状態でおいて、エアダクト106から吹出し口124aに供給される空調エアの流れの方向は、図10(b)、(c)の白矢印に示すように、回転軸130及び軸132に対して垂直方向となっている。上記の構成を以下、従来技術1という。
【0008】
特許文献2の空気吹出構造では、筒状のケース内に筒状のベゼルが嵌め込みされ、ベゼル内にフィンを開閉自在に設けて、フィンを操作することにより、ベゼルの吹出し口を閉鎖するようにしている。そして、フィンにより吹出し口を全閉状態にしたときには、フィンに連結された連結部材を介して、前記ケース内において前記ベゼルよりも下流側にある空間をシールするフラップ(シャットダンパー)が設けられている。特許文献2では、前記フラップにより、フィンが全閉状態のときには、前記ベゼルとケース間の空隙から室内に空気が漏れ出さないようしている。以下、特許文献2の構成を従来技術2という。
【0009】
特許文献3では、互いに隣接するフィンを全閉状態にした際に、互いに隣接する部位を重ね合わせるようにしている。又、吹出し口の内側から重ね合わした一方のフィンの重ね合わせ部には凸条と、該突条よりも下流側に配置した凸部列とを設けるようにしている。この構成により、全閉状態のフィン間から室内に空気が漏れ出ないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−219038号公報 (図3)
【特許文献2】特開2004−131032号公報
【特許文献3】特開2009−107439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術1では、ベゼル122とバレル124の間は、バレル124の揺動を確保するために、図10(b)、(c)に示すように隙間S1,S2,S3が設けられている。フィン126が全閉状態の場合、回転軸130及び軸132に対して垂直方向に向かう空調エアが、この隙間S1,S2,S3から車室内に漏れやすい構造となっている。
【0012】
従来技術2では、フィンが全閉状態のときには、フラップによりケースとベゼル間から空調エアが漏れ出すことはない。しかし、この構成は、ベゼルの下流側にフラップ(シャットダンパー)を設ける空間が必要となるばかりか、フラップ及び連結部材等の部品点数が増加するため、組み付け工数、及び部品コストがかかる問題がある。
【0013】
従来技術3で提案されている重ね合わせ部に凸条と前記凸部列を設ける構成を、前記従来技術1のベゼル122とバレル124の隙間において、ベゼル122、或いはバレル124の対抗する面に設けることが考えられる。しかし、この構成を採用すると、バレル124の揺動を確保するために設けられた隙間が狭くなるため、バレル124の揺動が円滑にできなくなる虞があることから採用できるものではない。
【0014】
本発明の目的は、ベゼルとバレル間の揺動を確保するための隙間に従来構成と同様にして変更を加えることがないとともにシャットダンパーを設ける必要がなく、フィンの全閉状態において、前記隙間から空調エアの室内側への漏れを抑制できる、コストのかからない車両用吹出しグリルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明は、筒状のベゼル内に揺動自在に軸支された筒状のバレルと、前記バレルの吹出し口内に設けられ、前記吹出し口を開閉する複数のフィンとを備え、前記ベゼル及び前記バレル間に前記バレルの揺動を許容するための隙間が設けられた車両用吹出しグリルにおいて、前記ベゼルの反吹出し方向の端部には、ベゼル内に向かう張出部が延出され、該張出部の反吹出し方向側面は、前記フィンに向かう斜面が形成されていることを特徴とする車両用吹出しグリルを要旨としている。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1において、前記張出部の斜面は、前記フィンが開放している状態では、空調エアを前記開放している状態のフィンに向かって誘導するように形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、前記複数のフィンは、前記吹出し口の内面に対して各回転軸にて回動可能に軸支され、前記各回転軸は、前記フィンが全閉状態のとき、前記回転軸から吹出し方向に延びた仮想延長線に、当該回転軸を有するフィンの両端面のうち近位側に位置する一方の端面において、車室側の縁部(以下、基準縁部という)を含むように配置され、前記一方の端面の反車室側の縁部は、前記回転軸から前記基準縁部までを半径とする円内に位置するように形成され、前記回転軸を中心に開放状態にフィンが回転した際には、前記一方の端面が前記吹出し口内に位置することを特徴とする。
【0018】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項において、複数の前記フィンにおいて、互いに隣接するフィンは前記吹出し口を全閉状態にした際に、端部が吹出し方向において重なり合わせた状態になるように形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項において、前記フィンが前記吹出し口を全閉状態にした際に、前記バレルの吹出し口の縁部に重なる端部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、フィンが全閉状態の際、バレル間に前記バレルの揺動を許容するための隙間から空調エアが漏れ出るが、張出部の反吹き出し方向側面は、フィンに向かう斜面となっているため、ダクトから供給された空調エアは、この斜面に沿って流れる。この場合、従来の斜面が無いものに比して、流路が斜面分だけ長くなるため、流路抵抗が増大し、その分、バレル間に前記バレルの揺動を許容するための隙間からの漏れ量を抑制できる。この結果、ベゼルとバレル間の揺動を確保するための隙間に従来構成と同様にして変更を加えることがないとともにシャットダンパーを設ける必要がなく、フィンの全閉状態において、前記隙間から空調エアの室内側への漏れを抑制できる、コストのかからない車両用吹出しグリルを提供できる。
【0021】
請求項2の発明によれば、フィンが開放している状態では、張出部の斜面が、開放状態のフィンに向かって空調エアを誘導するため、円滑に、吹出し口から車室側へ空調エアを吹き出すことができるとともに、前記隙間から空調エアの室内側への漏れを抑制できる。特に、車室内に空調エアを吹出したいが、空調エアが乗員には当たらないように角度調節をしているにもかかわらず、前記隙間から漏れた空調エアの漏れ量が多い場合、乗員に漏れた空調エアが当たると、不快になることもあり得る。しかし、請求項2の発明によれば、隙間からの漏れ量が抑制できるため、このような虞を少なくすることができる。
【0022】
ところで、特許文献2は、フィンを開放側へ操作したとき、フィンが吹出し口から外部へ突出するために、突出した部位に乗員、或いは物に当たる虞がある。
それに対して、請求項3の発明によれば、フィンの開放状態では、フィンが吹出し口から突出しないため、乗員或いが物に当たることはない。しかも、フィンを閉じたときには、フィンの一方の端部が、バレル及び隣接する他のフィンの他方の端部に重なって当接するため、全閉状態においてフィン間、及びフィンとバレル間から、室内への漏れが無くなる。
【0023】
請求項4の発明によれば、フィンの全閉状態において、互いに隣接するフィン間からの空調エアの漏れも抑制することができる。
請求項5の発明によれば、フィンの全閉状態において、フィンとバレル間からの空調エアの漏れも抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一実施形態の車両用吹出しグリルの正面側からの斜視図。
【図2】一実施形態の車両用吹出しグリルの背面側からの斜視図。
【図3】一実施形態のバレルの正面側からの斜視図。
【図4】一実施形態のフィン及び連結リンクの斜視図。
【図5】一実施形態の車両用吹出しグリルの要部横断面図であって、図10(b)のA−A線断面図に相当する断面図。
【図6】一実施形態の車両用吹出しグリルの要部縦断面図であって、図10(c)のB−B線断面図に相当する断面図。
【図7】フィンの端面の説明図。
【図8】他の実施形態の車両用吹出しグリルの正面側からの要部断面図。
【図9】車両の後部車室の空調用ダクトを示す概略側面図。
【図10】(a)は、従来の吹出しグリル120の正面図、(b)は、(a)のA−A線断面図、(c)は(a)のB−B線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の車両用吹出しグリルを具体化した一実施形態について図1〜7、図9を参照して説明する。
図9に示すように、車室の後部側壁内に設置された空調ユニット100は、車体の外側面を形成する外壁パネルと車室の側壁を形成するクォータートリムとの間の空間に取付けてある。空調ユニット100の後部上面からはエアダクト106が延設されている。
【0026】
エアダクト106は合成樹脂により筒体に形成されている。エアダクト106は、車室内のリヤピラー102に沿って立ち上がり、ルーフサイド104に沿って車両前方へ向かって延出されるとともに前端は車室内に設置した前側のリヤシートRS1の前方位置において閉塞端部を有する。
【0027】
前記エアダクト106は天井トリム及びピラーガーニッシュで被覆されている。エアダクト106のルーフサイド104に沿った部位には、車室の後部において、前後に配置されたリヤシートRS1,RS2に対応してそれぞれエアアウトレット106A,106Bが設けられるとともに、車室内に向かって空調エアを吹き出すようされている。
【0028】
エアアウトレット106A,106Bはそれぞれ各リヤシートRS1,RS2よりも若干前方位置に配置されている。エアアウトレット106A,106Bには車両用吹出しグリル10(以下、単に吹出しグリルという)がそれぞれ設けられている。両エアアウトレット106A,106Bに設けられた車両用吹出しグリル10は同一構成のため、エアアウトレット106Aに設けられた車両用吹出しグリル10を図1〜図6、図7を参照して説明する。
【0029】
図5において、エアダクト106は断面ほぼ四角形の筒状であって、前端はほぼ垂直面をなす前端壁で塞がれた閉塞端部となっている。
エアダクト106の車室に向けた正面側の側面108には前端寄りの位置に長方形状の開口110が形成されている。又、前記側面108に沿うように天井トリム112が重ね合わせられている。前記天井トリム112には、前記開口110に対応する部位に、これと連通する同一形状かつ同一寸法の抜穴114が形成されている。
【0030】
前記エアダクト106の開口110及び天井トリム112の抜穴114には合成樹脂製の吹出しグリル10が密嵌されて、すなわち嵌め込み固定されている。吹出しグリル10は開口110に対応する外周形が長方形状をなす筒状のベゼル20と、同じく外周形が長方形状をなす筒状のバレル30と、バレル30内において前後方向に併設された複数のフィン40を備えている。
【0031】
ベゼル20は、上部側壁26a,下部側壁26b、前部側壁26c及び後部側壁26dからなる。
吹出しグリル10は、ベゼル20が車室側から抜穴114及び開口110に嵌入されて、各側壁から四方へ張り出されたフランジ22が天井トリム112の抜穴114まわりに当接されるとともに、ベゼル20の外周面に形成した複数の係止爪24(図1、図2参照)がエアダクト106内面の開口110縁部に係止されて固定されている。なお、図1、図2では、係止爪24は、手前側の側面にのみ図示されているが、手前とは反対側の側面にも係止爪24がベゼル20の上部側壁26a,下部側壁26bから外方へ突出されている。
【0032】
図3に示すようにバレル30は、上部側壁36a,下部側壁36b、前部側壁36c及び後部側壁36dからなり、図5に示すように、エアダクト106から車室内へ向く吹出し口38が形成されている。
【0033】
図3,5,6に示すように、バレル30の前部側壁36cの外面及及び後部側壁36dの外面にはそれぞれ円柱状の軸34が互いに同軸に位置するようにそれぞれ突出されている。そして、バレル30は、ベゼル20の前部の内端面及び後部の内端面に設けられた図示しない軸孔に前記一対の軸34が回転可能に挿入されている。なお、図3,5,6では、前部側壁36c及に設けられた軸34のみが図示されている。
【0034】
又、バレル30の後部側壁36dの外面には図示しないストッパピンが突出されるとともに、ベゼル20の後部内面に形成した円弧状のガイド溝(図示しない)に沿って移動可能に挿入されている。そして、バレル30の揺動範囲は、前記ストッパピンが前記ガイド溝の両端にそれぞれ係止する迄の範囲としている。
【0035】
図6において、30Aと、30Bは、バレル30の前記揺動範囲を示している。30Aは時計回り方向に回動して斜め上方を向くバレル30の限界位置である。30Bは、図6において、反時計回り方向に回動して斜め下方を向くバレル30の限界位置である。なお、図6において、実線で示すバレル30の位置は、30Aと30Bで示す限界位置の中間の中立位置を示している、中立位置では、図6に示すように、フィン40及びノブ40bのいずれも、吹出し口38から車室内に突出しないようにフィン40及びノブ40bが配置されている。
【0036】
バレル30は図3,図6に示すように上部側壁36aの外面が凸状曲面に形成されている。又、図示しないが、下部側壁36bの外面も同様に凸状曲面に形成されている。
一方、前記バレル30の上記外面と対向するベゼル20の上部側壁26aは、図6に示すように、ベゼル内に向かう第1張出部25が張出形成されている。第1張出部25は、バレル30が中立位置に位置している状態で、バレル30内に向かう部分、すなわち位置する部分をいう。なお、後述する第2張出部27についても第1張出部25と同様にバレル30が中立位置に位置している状態で、バレル30内に向かう部分、すなわち位置する部分をいう。
【0037】
本実施形態では、第1張出部25は、30Aで示すバレル30の限界位置に位置するときの、当該バレルの上部側壁36aの外面をカバーする範囲まで延出されている。第1張出部25は、バレル30の反吹出し口出し方向の端部から延出された張出部に相当する。又、第1張出部25の反吹出し方向側面は、図6に示すように、フィン40に向かう斜面25aが形成されている。
【0038】
そして、ベゼル20の上部側壁26aの内面は、図6に示すように凹状曲面に形成され、すなわち、バレル30の上部側壁36aの外面の回動軌跡と平行となるように隙間Saを介して離間して形成されている。
【0039】
なお、図6では、上部側壁26aと上部側壁36aのみ図示されているが、図6において、軸34の軸心に直交するとともに左右方向に延びる直線を境に上部側壁26aと上部側壁36aを示す形状を上下反転すれば、下部側壁26bと下部側壁36bとの関係になるように形成しているため、説明の便宜上、省略されている。
【0040】
すなわち、図6では図示されていないが、前記バレル30の上記外面と対向するベゼル20の下部側壁26bは、30Bで示すバレル30の限界位置に位置するときの、当該バレルの下部側壁36bの外面をカバーする範囲まで延出されている。そして、ベゼル20の下部側壁26bの内面は、凹状曲面に形成され、すなわち、バレル30の下部側壁36bの外面の回動軌跡と平行となるように隙間を介して離間して形成されている。
【0041】
又、下部側壁26bには、上部側壁26aに設けられた第1張出部25、斜面25aと同様の関係にある第2張出部27、斜面27aが設けられている。
第2張出部27は、バレル30の反吹出し口出し方向の端部から延出された張出部に相当する。
【0042】
ベゼル20の前部側壁26c、及び後部側壁26dには、図2に示すように、ベゼル20内に向かう第3張出部28及び第4張出部29がそれぞれ張出形成されている。第3張出部28及び第4張出部29の反吹出し方向側面は、図5に示すように、フィン40に向かう斜面28a及び斜面29aがそれぞれ形成されている。
【0043】
ここで、図5に示す30Cは、図6において反時計回り方向にバレル30が回動して斜め下方を向いた際に、バレル30の前部側壁36cの下部が位置する限界位置である。又、図示はしないが、図6において時計回り方向にバレル30が回動して斜め上方を向いた際に、バレル30の前部側壁36cの上部が位置する限界位置は、図5において平面視した場合、30Cと同様な位置に位置する。
【0044】
本実施形態では、第3張出部28及び第4張出部29は、30Cで示すバレル30が前記両限界位置に位置する際に、当該バレル30の反吹出し方向側の前部側壁36cの面をカバーするようにベゼル20内方に向かって張出形成されている。なお、図5では、第3張出部28側のみ図示されている。
【0045】
ベゼル20の前部側壁26cの内面(図5において後面)及び後部側壁26dは互い平行な平坦面に形成されている。一方、バレル30の前部側壁36c及び後部側壁36dにおいて、前部側壁26c及び後部側壁26dの内面に対抗する外面(図5では、前部側壁26cのみ図示)も同様に平坦面に形成され、前部側壁26c及び後部側壁26dに対して互いに平行となるように隙間Sbを介して離間して形成されている。
【0046】
第3張出部28及び第4張出部29は、バレル30の反吹出し口出し方向の端部から延出された張出部に相当する。
上記のように、ベゼル20とバレル30の上部側壁26a,36a間、下部側壁26b,36b間、前部側壁26c,36c間、後部側壁26d,36d間には、隙間Sa,Sbが形成されるため、バレル30は前記前後一対の軸34を回転中心として、上部側壁26a,下部側壁26bに干渉されることなく円滑に揺動可能である。
【0047】
これにより、バレル30内を通過して車室内に吹き出す空調エアの上下方向の吹出し角度を調整することができる。
複数のフィン40はそれぞれ四角形の平板部41と、平板部41の上下両部において、反吹出し方向側へ突出された一対の側板42により断面コ字状に形成されている。各フィン40の両側板42に設けた回転軸43(図4,図5参照)によりバレル30内において、揺動可能に支持されている。さらに、各フィン40は内面に突出されたアーム44に対して連結リンク45が回転自在に連結されている。そして、中央のフィン40aのノブ40bを摘んでフィン40aの指向角度を変えることにより、すべてのフィン40の指向角度を変えることができ、空調エアの車室側への吹出し角度を調整することができる。
【0048】
そして、フィン40の揺動により、吹出し口38を開閉可能である。すなわち、図5に示すように、各フィン40は、吹出し口38を全閉する全閉位置(図5の実線で示す位置)と、吹出し口38を全開する全開位置(図5の2点鎖線で示す位置)を超えた百数十度の範囲で回転可能である。以下、各フィン40が全閉位置に位置するときをフィン40の全閉状態といい、各フィン40が全開位置に位置するときをフィン40の全開状態という。本実施形態では、図5において、フィン40を時計回り方向において、90度回転することにより、全閉状態から全開状態にするように構成している。
【0049】
本明細書において、フィンの開放状態とは、全閉状態を除く状態を指し、すなわち、フィンが全閉状態が解除されて回転操作された際の状態をいう。
前記回転軸43は、図5,図7に示すように、全閉状態における平板部41の前後両端面のうち後端面41aに対して近位に位置するように配置され、かつ、回転軸43から吹出し方向に延びた仮想延長線mに、前記後端面41aの車室側の縁部(以下、基準縁部Kという)を含むように配置されている。すなわち、本実施形態では、従来(図10(b)参照)と異なり、回転軸43は、フィン40の後端面41aに対してオフセット量=0とされている。
【0050】
本実施形態では、図7に示すように、前記一方の端面(前記後端面41a)は、反車室側の縁部Hが、回転軸43の中心から基準縁部Kまでを半径Lとする円C内に位置するように平面となるように形成されている。なお、後端面41aは、平面に限定するものではなく、図7において、円C内に位置する面であればよく、縁部Hの位置が二点鎖線で示す位置であってもよく、この場合は、後端面41aは斜面となる。
【0051】
前記縁部Hを上記のように配置する理由は、回転軸43を中心に全閉位置から全開位置へフィン40が回転した際に、その回転軌跡が後端面41aが吹出し口38内から突出しないようにするためである。ここで、吹出し口38の室内側縁部と回転軸43の中心までの距離をRとしたとき、R>Lとしている(図5参照)。
【0052】
全フィン40のうち、前部側壁36cに最も近いフィン40を除いた各フィン40の前端内面には、図5に示すように、重ね合わせ片46が形成されている。各重ね合わせ片46は、フィン40が全閉状態の際、前方において隣接したフィン40の後端部内面に重ね合わされて、重ね合わせ片46とフィン40の後端部内面間から、空調エアの漏れが抑制されている。
【0053】
全フィン40のうち、前部側壁36cに最も近いフィン40の前端は、フィン40が全閉状態の際、前方において隣接する吹出し口38の縁部の内面に重ね合わされて、空調エアの漏れが抑制されている。
【0054】
(作用)
上記のように構成された吹出しグリル10の作用を説明する。
フィン40が全開状態のとき、吹出しグリル10へ送られる空調エアの大部分は、図5で示されているエアダクト106の閉塞端部のエア圧で吹出しグリル10の上方で前方への流れが止められ、第3張出部28の斜面28aによりガイドされて、直接向かう吹出しグリル10内に向かう空調エアと合流して吹出しグリル10内へ流入する。なお、図5、図6において、矢印は、空調エアの流れる方向を示している。又、第1張出部25、第2張出部27及び第4張出部29においては、斜面25a,27a,29aによりガイドされて、直接向かう吹出しグリル10内に向かう空調エアと合流して吹出しグリル10内へ流入する。
【0055】
このとき、隙間Sa,Sbの内端側は、斜面25a,27a,29aにガイドされた空調エアの流れに交差するように配置されているため、隙間Sa,Sbからの空調エアの漏れを抑制できる。なお、従来は、図10(b)、(c)に示すように各隙間S1,S2の反吹出し方向側は、吹出し方向と180度反対側を向いているため、空調エアの漏れが多くなる。
【0056】
次に、フィン40が全閉状態の場合、空調エアは、この隙間Sa,Sbを介して漏れる。しかし、第1張出部25、第2張出部27、第3張出部28及び第4張出部29においては、一部の空調エアは、斜面25a,27a,29aにガイドされた上で直接隙間Sa,Sbに向かう空調エアと合流して隙間Sa,Sbから漏れる。しかし、前記一部の空調エアは、斜面25a,27a,29aをガイドされるため、この部分が流路抵抗の原因となり、従って、斜面のない場合、従来(図10(b)、(c)参照)に比して、空調エアの漏れ量を抑制できる。
【0057】
又、本実施形態では、フィン40が全閉状態の場合、フィン40又は、フィン40の重ね合わせ片46が、隣接する吹出し口38の縁部の内面に重ね合わされるとともに、重ね合わせ片46と隣接するフィン40の後端部内面間からの空調エアの漏れが抑制される。
【0058】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) 本実施形態の吹出しグリル10は、ベゼル20の反吹出し方向の端部には、ベゼル20内に向かう第1張出部25、第2張出部27、第3張出部28及び第4張出部29(張出部)が延出され、該張出部の反吹出し方向側面は、フィン40に向かう斜面25a,27a,28a,29aが形成されている。
【0059】
この結果、本実施形態の吹出しグリル10は、フィン40が全閉状態の際、バレル30間にバレル30の揺動を許容するための隙間Sa,Sbから空調エアが漏れ出るが、第1〜第4張出部25,27〜29の反吹き出し方向側面は、フィン40に向かう斜面となっているため、エアダクト106から供給された空調エアは、この斜面に沿って流れる。
【0060】
この場合、従来の斜面が無いものに比して、流路が斜面分だけ長くなるため、流路抵抗が増大し、その分、バレル30間に前記バレル30の揺動を許容するための隙間Sa,Sbからの漏れ量を抑制できる。この結果、ベゼル20とバレル30間の揺動を確保するための隙間Sa,Sbに従来構成と同様にして変更を加えることがないとともにシャットダンパーを設ける必要がなく、フィン40の全閉状態において、前記隙間Sa,Sbから空調エアの室内側への漏れを抑制できる、コストのかからない車両用吹出しグリルを提供できる。
【0061】
(2) 本実施形態の吹出しグリル10では、第1張出部25、第2張出部27、第3張出部28及び第4張出部29(張出部)の斜面25a,27a,28a,29aは、フィン40が開放している状態では、空調エアを前記開放している状態のフィン40に向かって誘導するように形成されている。この結果、フィン40が開放している状態では、第1〜第4張出部25,27〜29(張出部)の斜面25a,27a,28a,29aが、開放状態のフィン40に向かって空調エアを誘導するため、円滑に、吹吹出し口から車室側へ空調エアを吹き出すことができるとともに、隙間Sa,Sbから空調エアの室内側への漏れを抑制できる。
【0062】
特に、車室内に空調エアを吹出したいが、空調エアが乗員には当たらないように角度調節をしているにもかかわらず、前記隙間から漏れた空調エアの漏れ量が多い場合、乗員に漏れた空調エアが当たると、不快になることもあり得る。しかし、本実施形態によれば、隙間からの漏れ量が抑制できるため、このような虞を少なくすることができる。
【0063】
(3) 本実施形態の吹出しグリル10では、複数のフィン40は、吹出し口38の内面に対して各回転軸43にて回動可能に軸支されている。そして、各回転軸43は、フィン40が全閉状態のとき、各回転軸43から吹出し方向に延びた仮想延長線mに、当該回転軸43を有するフィン40の両端面のうち近位側に位置する一方の端面において、車室側の基準縁部Kを含むように配置されている。又、一方の前記後端面41aの反車室側の縁部Hは、回転軸43から基準縁部Kまでを半径とする円C内に位置するように形成されている。又、回転軸43を中心に開放状態にフィン40が回転した際には、後端面41aが吹出し口38内に位置するようにされている。
【0064】
特許文献2は、フィンを開放側へ操作したとき、フィンが吹出し口から外部へ突出するために、突出した部位に乗員、或いは物に当たる虞がある。
それに対して、本実施形態によれば、フィン40の開放状態では、フィン40が吹吹出し口から突出しないため、乗員或いが物に当たることはない。しかも、フィン40を閉じたときには、フィン40の一方の後端部が、バレル30及び隣接する他のフィン40の他方の端部に重なって当接するため、全閉状態においてフィン40間、及びフィンとバレル間から、車室内への漏れが無くなる。
【0065】
(4) 本実施形態の吹出しグリル10は、複数のフィン40において、互いに隣接するフィン40は吹吹出し口を全閉状態にした際に、端部が吹出し方向において重なり合わせた状態になるように形成されている。この結果、本実施形態では、フィン40の全閉状態において、互いに隣接するフィン40間からの空調エアの漏れも抑制することができる。
【0066】
(5) 本実施形態の吹出しグリル10は、フィン40が吹吹出し口を全閉状態にした際に、バレル30の吹吹出し口の縁部に重なる端部が形成されている。この結果、本実施形態の吹出しグリル10は、フィン40の全閉状態において、フィン40とバレル30間からの空調エアの漏れも抑制することができる。
【0067】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 前記実施形態では、ベゼル20、及びバレル30は、外周形を長方形状をなす筒状に形成したが、外周形を重宝形状に限定するものではなく、外周形は正方形状、楕円形状、円形等の種々の形状でもよい。
【0068】
・ 前記実施形態では、図5において、フィン40を時計回り方向において、90度回転することにより、全閉状態から全開状態にするように構成した。そして、回転軸43は、図5に示すように、全閉状態における平板部41の前後両端面のうち後端面41aに対して近位に位置するように配置されるとともに、回転軸43から吹出し方向に延びた仮想延長線mに、前記後端面41aの車室側の基準縁部が含むように配置した。
【0069】
この構成に代えて、図示はしないが、フィン40を反時計回り方向において、90度回転することにより、全閉状態から全開状態にするようにしてもよい。この場合、回転軸43を全閉状態における平板部41の前後両端面のうち前端面に対して近位に位置するように配置するとともに、回転軸43から吹出し方向に延びた仮想延長線に、前記前端面の車室側の基準縁部を含むように配置する(以下、この実施形態を第2実施形態という)。
【0070】
・ 前記変形の実施形態において、さらに、上記のフィン40を反時計回り方向において、全閉状態から全開状態にする場合、重ね合わせ片を、全フィンのうち、後部側壁36dに最も近いフィン40を除いた各フィン40の後端内面に形成してもよい(以下、この変形の第3実施形態という)。この場合、重ね合わせ片は、フィン40が全閉状態の際、後方において隣接したフィン40の前端部内面に重ね合わされて、該重ね合わされた重ね合わせ片とフィン40の前端部内面間から、空調エアの漏れを抑制できる。
【0071】
・ 第3実施形態においては、さらに、全フィン40のうち、後部側壁36dに最も近いフィン40の後端を、フィン40が全閉状態の際、後方において隣接する吹出し口38の縁部の内面に重ね合わされて、空調エアの漏れを抑制するようにしてもよい。
【0072】
・ 第1張出部25の斜面25aを有する部位を図6の二点鎖線で示すように、30Cで示す限界位置に一するバレル30の内端を覆う位置まで延出してもよい。
・ 前記各実施形態では、図5に示すように天井トリム112の抜穴114に対して吹出しグリル10が密嵌されて、すなわち嵌め込み固定した。この構成に代えて、吹出しグリル10を図8に示すように、天井トリム112の抜穴114及び図示しないエアダクトの開口を一部拡げて空調エアを吹出するための副吹出し口112aを設けるとともに、フランジ22の一部に車室空間と連通する空調エア吹出し口22aを設けてもよい。図8では、エアダクトは省略されている。このような構成にすると、副吹出し口112a、空調エア吹出し口22aを介してエアダクトから車室内に空調エアを吹き出させることができる間接配風構造となる。
【0073】
この場合、前記各実施形態の吹出しグリル10を採用すると、特にエアダクト106のノブ40bが全閉状態及び全開状態の際に、副吹出し口112a、空調エア吹出し口22aからの空調エアの風量の確保ができる。
【符号の説明】
【0074】
10…車両用吹出しグリル、20…ベゼル、
25…第1張出部(張出部)、25a…斜面、
27…第2張出部(張出部)、27a…斜面、
28…第3張出部(張出部)、28a…斜面、
29…第4張出部(張出部)、29a…斜面、
30…バレル、40…フィン、Sa,Sb…隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のベゼル内に揺動自在に軸支された筒状のバレルと、前記バレルの吹出し口内に設けられ、前記吹出し口を開閉する複数のフィンとを備え、前記ベゼル及び前記バレル間に前記バレルの揺動を許容するための隙間が設けられた車両用吹出しグリルにおいて、
前記ベゼルの反吹出し方向の端部には、ベゼル内に向かう張出部が延出され、該張出部の反吹出し方向側面は、前記フィンに向かう斜面が形成されていることを特徴とする車両用吹出しグリル。
【請求項2】
前記張出部の斜面は、前記フィンが開放している状態では、空調エアを前記開放している状態のフィンに向かって誘導するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用吹出しグリル。
【請求項3】
前記複数のフィンは、前記吹出し口の内面に対して各回転軸にて回動可能に軸支され、
前記各回転軸は、
前記フィンが全閉状態のとき、前記回転軸から吹出し方向に延びた仮想延長線に、当該回転軸を有するフィンの両端面のうち近位側に位置する一方の端面において、車室側の縁部(以下、基準縁部という)を含むように配置され、
前記一方の端面の反車室側の縁部は、前記回転軸から前記基準縁部までを半径とする円内に位置するように形成され、
前記回転軸を中心に開放状態にフィンが回転した際には、前記一方の端面が前記吹出し口内に位置することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用吹出しグリル。
【請求項4】
複数の前記フィンにおいて、互いに隣接するフィンは前記吹出し口を全閉状態にした際に、端部が吹出し方向において重なり合わせた状態になるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の車両用吹出しグリル。
【請求項5】
前記フィンが前記吹出し口を全閉状態にした際に、前記バレルの吹出し口の縁部に重なる端部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の車両用吹出しグリル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−230599(P2011−230599A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101192(P2010−101192)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】