説明

車両用多連型ヒューズ装置

【課題】
充電電流保護用溶断部が組立工程において変形したり破断したりすることのない車両用多連型ヒューズ装置を提供する。
【解決手段】
車両用多連型ヒューズ装置30の回路板10に、充電電流保護用溶断部6と異なる位置で、バッテリー側バスバー部4とオルタネータ側バスバー部5とを連結し、絶縁体ハウジング20で被覆された後には所定区間(除去部7a)に渡って除去される仮つなぎ部7が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両搭載用であって、ヒューズボックスに収容して用いられ、それぞれに個別溶断部を介して複数の入出力端子を備えたバッテリー側バスバー部とオルタネータ側バスバー部とを充電電流保護用溶断部で連結した構成の車両用多連型ヒューズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用多連型ヒューズ装置には、バッテリーと接続され、それぞれに個別溶断部を介して複数の入出力端子を備えたバッテリー側バスバー部と、オルタネータと接続され、それぞれに個別溶断部を介して複数の入出力端子を備えたオルタネータ側バスバー部とを充電電流保護用溶断部で連結した構成のものがある。
【0003】
このような構成の車両用多連型ヒューズ装置は、それぞれの入出力端子に接続された負荷機器に過電流が流れるのを防止するヒューズ機能を果たすと共に、充電電流保護用溶断部によって、オルタネータからバッテリーへの充電用電流が過度となった場合に回路を遮断するように保護している。つまり、バッテリー側バスバー部とオルタネータ側バスバー部と連結している充電電流保護用溶断部はこのヒューズ装置の不可欠の部分である。
【0004】
また、本発明は、このような車両用多連型ヒューズ装置のうち、特に、ヒューズ機能を達成するための回路、つまり、上述のバッテリー側バスバー部や、オルタネータ側バスバー部や、充電電流保護用溶断部などを銅合金の板材を打ち抜いて形成した回路板を用いるものを対象とするが、その場合、溶断部を含めた全ての回路形状(回路パターン)を一度に形成できるので、コスト的にも有利なものである。
【0005】
このような車両用多連型ヒューズ装置の一例が特許文献1に提案されており、図7は、その、本発明の背景技術である車両用多連型ヒューズ装置を示すものである。
【0006】
この図7は、その車両用多連型ヒューズ装置の回路板50を示すものであり、回路板50は、銅合金の板材を打ち抜いて形成され、それぞれに個別溶断部41を介して複数の入出力端子42を備えたバッテリー側バスバー部44とオルタネータ側バスバー部45とを充電電流保護用溶断部46で連結したものである。
バッテリー側バスバー部44はバッテリー接続端子44aを備え、かつ、オルタネータ側バスバー部45はオルタネータ接続端子45aを備えている。
【0007】
この回路板50は、このような構成で、上述の車両用多連型ヒューズ装置の作用効果を発揮させるものである。しかし、充電電流保護用溶断部46は、狭小で弱い部分でありながら、それぞれに複数の入出力端子42などを備えたバッテリー側バスバー部44とオルタネータ側バスバー部45とを連結するものであるため、回路板50が絶縁体ハウジングで絶縁被覆される組立工程中に、変形したり、破断したりする可能性がある。
また、同様の変形や破断の問題は、個別溶断部41にも起こるものであった。
【0008】
しかしながら、この特許文献1は、ヒューズ装置の接触不良と大型化の問題を解決するもので、組立上の問題の記載や、ましてや、その解決手段の記載はなかった。また、同様の充電電流保護用溶断部や個別溶断部を備える車両用多連型ヒューズ装置が、特許文献2に提案されているが、この特許文献2でも、そのような問題意識や、解決手段の記載はなかった。
【特許文献1】特開2001−054223号公報(図2)
【特許文献2】特開2004−213906号公報(図8のオルタネータ回路用可溶体部10、可溶体部6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題を改善しようとするもので、充電電流保護用溶断部が組立工程において変形したり破断したりすることのない車両用多連型ヒューズ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の車両用多連型ヒューズ装置は、銅合金の板材を打ち抜いて形成され、それぞれに個別溶断部を介して複数の入出力端子を備えたバッテリー側バスバー部とオルタネータ側バスバー部とを充電電流保護用溶断部で連結した回路板と、この回路板を絶縁被覆する絶縁体ハウジングとを備えた車両用多連型ヒューズ装置であって、
【0011】
前記バッテリー側バスバー部はバッテリー接続端子を備え、かつ、前記オルタネータ側バスバー部はオルタネータ接続端子を備え、前記回路板に、前記回路板に、前記充電電流保護用溶断部と異なる位置であって前記絶縁体ハウジングに被覆されない部分で、前記バッテリー側バスバー部とオルタネータ側バスバー部とを連結し、前記絶縁体ハウジングで被覆された後には所定区間に渡って除去される仮つなぎ部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の車両用多連型ヒューズ装置は、請求項1に従属し、充電電流保護用溶断部は、バッテリー側バスバー部の個別溶断部とオルタネータ側バスバー部の個別溶断部との間に挟まれ並んで配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の車両用多連型ヒューズ装置は、請求項1または2に従属し、バッテリー側バスバー部とオルタネータ側バスバー部とは同一平面上にあって、それぞれの長手方向に一直線上に列設されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の車両用多連型ヒューズ装置は、請求項1から3のいずれかに従属し、回路板に、個別溶断部と異なる位置であって絶縁体ハウジングに被覆されない部分で、複数の隣り合う入出力端子間を連結し、前記絶縁体ハウジングで被覆された後には除去される個別仮つなぎ部が設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の車両用多連型ヒューズ装置は、請求項1から4のいずれかに従属し、仮つなぎ部は、絶縁体ハウジングの外縁から凹んでいる仮つなぎ部用凹所に設けられ、所定区間に渡って除去された仮つなぎ部の残存する一対の残存部が、前記仮つなぎ部用凹所から飛び出さないように構成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の車両用多連型ヒューズ装置は、請求項1から5のいずれかに従属し、絶縁体ハウジングに、所定区間に渡って除去された仮つなぎ部の残存する一対の残存部の中間に位置し、該残存部間の短絡を阻止する短絡阻止部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の車両用多連型ヒューズ装置によれば、回路板に、前記充電電流保護用溶断部と異なる位置であって前記絶縁体ハウジングに被覆されない部分で、前記バッテリー側バスバー部とオルタネータ側バスバー部とを連結し、前記絶縁体ハウジングで被覆された後には所定区間に渡って除去される仮つなぎ部が設けられているので、充電電流保護用溶断部が組立工程において変形したり破断したりすることが少ない。
【0018】
請求項2記載の車両用多連型ヒューズ装置によれば、請求項1の効果に加え、充電電流保護用溶断部は、バッテリー側バスバー部の個別溶断部とオルタネータ側バスバー部の個別溶断部との間に挟まれ並んで配置されているので、これらを収容する収容部や、そのカバーを簡易な形状とすることができる。
【0019】
請求項3記載の車両用多連型ヒューズ装置によれば、請求項1または2の効果に加え、バッテリー側バスバー部とオルタネータ側バスバー部とは同一平面上にあって、それぞれの長手方向に一直線上に列設されているので、簡易な構成であって、形状形成が為やすく、取扱も為やすい形状となっている。
【0020】
請求項4記載の車両用多連型ヒューズ装置によれば、請求項1から3のいずれかの効果に加え、回路板に、個別溶断部と異なる位置であって絶縁体ハウジングに被覆されない部分で、複数の隣り合う入出力端子間を連結し、前記絶縁体ハウジングで被覆された後には除去される個別仮つなぎ部が設けられているので、組立工程中に、入出力端子が変位したり、欠落したりすることを抑制することができる。
【0021】
請求項5記載の車両用多連型ヒューズ装置によれば、請求項1から4のいずれかの効果に加え、仮つなぎ部は、絶縁体ハウジングの外縁から凹んでいる仮つなぎ部用凹所に設けられ、所定区間に渡って除去された仮つなぎ部の残存する一対の残存部が、前記仮つなぎ部用凹所から飛び出さないように構成されているので、残存部が外部への引っ掛かり要素とならず、また、外からの導電体の接触による短絡を極力回避することができる。
【0022】
請求項6記載の車両用多連型ヒューズ装置によれば、請求項1から5のいずれかの効果に加え、絶縁体ハウジングに、所定区間に渡って除去された仮つなぎ部の残存する一対の残存部の中間に位置し、該残存部間の短絡を阻止する短絡阻止部が設けられているので、外からの導電体の接触による短絡をより確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の実施の形態(実施例)について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の車両用多連型ヒューズ装置の一例を示すもので、(a)はその平面図、(b)はその正面図、(c)はその側面図である。
【0025】
この車両用多連型ヒューズ装置30は、銅合金の板材を打ち抜いて形成され、それぞれに個別溶断部1を介して複数の入出力端子2を備えたバッテリー側バスバー部4とオルタネータ側バスバー部5とを充電電流保護用溶断部6で連結した回路板10と、この回路板10を絶縁被覆する絶縁体ハウジング20とを備えており、主に車両搭載用であって、ヒューズボックスに収容して用いられるものである。
【0026】
バッテリー側バスバー部4はバッテリー接続端子4aを備えて、バッテリー(不図示)に接続され、かつ、オルタネータ側バスバー部5はオルタネータ接続端子5aを備えて、オルタネータ(車両用発電機/不図示)に接続される。
【0027】
こうした基本構成において、車両用多連型ヒューズ装置30は、回路板10に、充電電流保護用溶断部6と異なる位置であって、絶縁体ハウジング20に被覆されない部分で、バッテリー側バスバー部4とオルタネータ側バスバー部5とを連結し、絶縁体ハウジング20で被覆された後には所定区間に渡って除去される仮つなぎ部7b(7)が設けられていることを特徴とする。
【0028】
なお、この図1では、既に仮つなぎ部7(図2(a)参照)が所定区間にわたって除去され、その結果残った残存部7bが見えている。この仮つなぎ部7については、図2を用いて詳しく説明する。
【0029】
この車両用多連型ヒューズ装置30は、上記に説明したものに加え、回路板10の構成要素として、バッテリー側バスバー部4とオルタネータ側バスバー部5とのそれぞれに、個別溶断部1を介した複数の入出力端子2と、バッテリー接続端子4aあるいはオルタネータ接続端子5aとを連結させる連結部3を備えている。
【0030】
また、この仮つなぎ部7は、絶縁体ハウジング20の外縁から凹んでいる仮つなぎ部用凹所12に設けられ、図1(b)で解るように、残存部7bが仮つなぎ部用凹所12から飛び出さないようになっている。
【0031】
絶縁体ハウジング20には、複数の個別溶断部1と一箇所の充電電流保護用溶断部6とを収容する収容部13が設けられている。この収容部13には、隣接する個別溶断部1等間に隔壁14が設けられている。
【0032】
この際、充電電流保護用溶断部6は、バッテリー側バスバー部4の個別溶断部1とオルタネータ側バスバー部5の個別溶断部1との間に挟まれ並んで配置されているので、収容部13も図示したような矩形の空間部として形成でき、構造を簡単なものとすることができる。
【0033】
また、収容部13の開口側の両側(図1(b)に於ける紙面の上下側)には、それぞれの個別溶断部1が溶断しているかどうかが判別でき、かつ、溶断時の安全性を高めるための透明なカバー15が設けられている。このカバー15も、収容部13が簡単な矩形形状であるのに合わせて、単なる矩形板として構成することができる。
【0034】
回路板10の素材は、上述したように銅合金の板材である。絶縁体ハウジング20の素材は、絶縁体であれば限定されないが、成形性、コスト等の点から、合成樹脂、特に、ポリアミド系樹脂が好適である。
【0035】
このような構成の車両用多連型ヒューズ装置30の作用効果について、以下、図2を用いて説明する。
【0036】
図2は、図1の車両用多連型ヒューズ装置の組立手順を示すもので、(a)は用意された回路板を示す正面図、(b)は(a)の回路板を絶縁体ハウジングで被覆した状態を示す正面図、(c)は(b)のAA断面図、(d)は(b)の状態から仮つなぎ部を所定区間除去した状態を示す部分拡大図である。
【0037】
図1の車両用多連型ヒューズ装置30を組み立てる場合、まず、図2(a)に示すような回路板10を用意する。
【0038】
この回路板10は、銅合金の板材から、バッテリー側バスバー部4と、オルタネータ側バスバー部5と、これら両者を連結する充電電流保護用溶断部6及び仮つなぎ部7と、バッテリー接続端子4a及びオルタネータ接続端子5aとを打ち抜き成形した後、バッテリー接続端子4a及びオルタネータ接続端子5aを、図1で示すように屈曲形成したものである。
【0039】
したがって、屈曲形成されたバッテリー接続端子4a及びオルタネータ接続端子5aの部分以外の部分、つまり、個別溶断部1、入出力端子2、連結部3、バッテリー側バスバー部4、オルタネータ側バスバー部5充電電流保護用溶断部6、及び、仮つなぎ部7は、一平面上に有って板状となっている。
【0040】
また、バッテリー側バスバー部4とオルタネータ側バスバー部5とは板厚と幅が同一で、それぞれの長手方向に一直線上となっており、簡易な構成であって、形状形成が為やすく、取扱も為やすい形状となっている。
【0041】
ここで、図2(a)を見ると解るように、バッテリー側バスバー部4とオルタネータ側バスバー部5とは、充電電流保護用溶断部6だけでなく、仮つなぎ部7によっても連結され、その結果合わせて2箇所で連結されているので、回路板10は全体としてしっかりした強度を保ち、組立工程において、充電電流保護用溶断部6が変形したり破断したりすることを抑制する。
【0042】
また、仮つなぎ部7は後に除去する部分であるので、充電電流保護用溶断部6のように、ヒューズ機能の要請から狭隘とする必要もなく要請に応じて太くすることも可能であるので、その場合には、より回路板10の強度を向上させ、充電電流保護用溶断部6が変形したり破断したりすることをより十全に回避することができる。
【0043】
次に、図2(b)に示すように、回路板10の平面部分を、入出力端子2の接続に用いる部分と仮つなぎ部7とだけを残して、絶縁体ハウジング20で絶縁被覆する。この際、この例では、回路板10は、平板状の絶縁体ハウジング20に挟まれた状態で、要所要所をネジ手段で締め付けされ、両者は一体化し、強固に平面状態を維持する構造体となる。
【0044】
この状態では、バッテリー側バスバー部4とオルタネータ側バスバー部5とは相互に位置固定された状態となり、充電電流保護用溶断部6に負荷がかかるようなことがないので、両バスバー間の仮連結手段としての仮つなぎ部7の役割は終了している。
【0045】
そこで、図2(d)に示すように、仮つなぎ部7を所定区間に渡って除去する(この除去される部分を図では、2点鎖線の斜線で示し、「除去部7a」と称する。)と、ここでのバッテリー側バスバー部4とオルタネータ側バスバー部5との連結はなくなり、両バスバー部4、5は充電電流保護用溶断部6だけで連結され、本来の充電電流保護用溶断部6の機能が発揮されるようになる。
【0046】
なお、ここで、仮つなぎ部7は、絶縁体ハウジング20に被覆されず、除去部7aを除去された後に残存する一対の残存部7bが絶縁体ハウジング20から突出した状態となるように構成されている。
【0047】
このように、残存部7bが絶縁体ハウジング20から幾分突出するようにすると、除去部7aの除去時に、絶縁体ハウジング20に触れることなく、除去を行うことができるので、除去をより容易にすることができる。
【0048】
また、残存部7aは、仮つなぎ部用凹所12から飛び出さないように切断除去されているので、残存部が外部への引っ掛かり要素とならず、外部からの導電体による接触の可能性を少なくすることができる。
【0049】
こうして、図1に示した車両用多連型ヒューズ装置30が得られる。そして、この車両用多連型ヒューズ装置30は、上述したように、仮つなぎ部7を備えることで、充電電流保護用溶断部6が組立工程において変形したり破断したりすることが少なくなる、という効果を発揮する。
【実施例2】
【0050】
図3(a)は、本発明の車両用多連型ヒューズ装置の他例を示す平面図、(b)はその要部拡大正面図、(c)はその正面図である。これより既に説明した部分と同じ部分については同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0051】
この車両用多連型ヒューズ装置30Aは、図1、2で説明した車両用多連型ヒューズ装置30に比べて、絶縁体ハウジング20Aに、一対の残存部7aの中間に位置し、これら一対の残存部7a間の短絡を阻止する短絡阻止部11が設けられている点が異なっている。
【0052】
この例においては、車両用多連型ヒューズ装置30と同様に、仮つなぎ部7が仮つなぎ部用凹所12に設けられているので、短絡阻止部11もこの仮つなぎ部用凹所12に設けられているが、後述するように、短絡阻止部11の位置は一対の残存部7a間であればよく、必ずしも、絶縁体ハウジングの凹所に設けなければならないものではない。
【0053】
図4(a)は、図3の車両用多連型ヒューズ装置の使用状態を示す外観斜視図、(b)は(a)の部分拡大説明図である。
【0054】
この車両用多連型ヒューズ装置30Aは、上述の車両用多連型ヒューズ装置30の作用効果に加え、この図4で示すように、仮つなぎ部7から切除部7aを取り除いた後に残る残存部7b(導電体である。)が絶縁体ハウジング20が突出していても、その中間部分に突き出た短絡阻止部11があることによる効果を発揮する。
【0055】
つまり、たとえ、図3(b)に例示するように、ドライバーなどの工具Tの先端部分を、いずれか片方の残存部7bに接触させるようなことがあるとしても、両方の残存部7b間に同時に渡るような接触をさせることができず、双方の残存部7b間の短絡を避けることができる。
【0056】
また、更に、一対の残存部7bと短絡阻止部11とは、絶縁体ハウジング20の外縁部分からは奥に入り込んだ仮つなぎ部用凹所12に設けられているので、短絡防止機能がよりよく発揮される。
【実施例3】
【0057】
図5(a)、(b)は本発明の車両用多連型ヒューズ装置の構成要素である回路板の他例を示す正面図である。
【0058】
図5(a)の回路板10Aは、図2(a)に示した回路板10に比べ、回路板10Aに、個別溶断部1と異なる位置であって絶縁体ハウジング20に被覆されない部分で、複数の隣り合う入出力端子間2を連結し、絶縁体ハウジング20で被覆された後には除去される個別仮つなぎ部8が設けられている点が異なる。この個別つなぎ部8は、入出力端子2の側辺同士をつなぐ形態となっている。
【0059】
このようにすると、充電電流保護用溶断部6と同様に狭小で弱い部分ある個別溶断部1を介して伸び出しているそれぞれの入出力端子間2が組立工程中に、変位したり、欠落したりすることを少なくすることができる。
従って、必要に応じて、これらの個別仮つなぎ部8を設けるようにしてもよい。
【0060】
また、図では、バッテリー側バスバー部4の入力端子2相互間のみと、オルタネータ側バスバー部5の入力端子2相互間のみとだけに個別仮つなぎ部8を設けているが、2点鎖線で示したように、バッテリー側とオルタネータ側とをも連結するような個別仮つなぎ部8Aを設けるようにしてもよい。
【0061】
このような個別仮つなぎ部8Aを設けた場合、変形抑制機能がよりよく発揮される。
また、この回路板10Aを用いる場合でも、絶縁体ハウジング20は同一のものでよく、これらから構成される車両用多連型ヒューズ装置30Bは、上記回路板10Aの効果をヒューズ装置として発揮する。
【0062】
図5(b)の回路板10Bは、図5(a)の回路板10Aに比べ、個別仮つなぎ部9が入出力端子2の端辺同士をつなぐ形態となっている点だけが異なっている。
【0063】
したがって、この回路板10Bは、基本的に、回路板10Aと同様の効果を発揮し、また、この場合に2点鎖線で示された個別仮つなぎ部9Aも同様の効果を発揮する。
【0064】
加えて、この回路板10B、仮つなぎ部9Aを切り離す際に切断すべき箇所が、入出力端子2に付き端辺の一箇所だけであるので、切断工数を減らすことができる。また、例え、切り残りが発生したとしても、入出力端子2への相手凹端子の挿入・抜き取り方向にじゃまとなるものではないので、切断精度をよりラフなものとすることができる。
【0065】
また、この回路板10Bを用いる場合でも、絶縁体ハウジング20は同一のものでよく、これらから構成される車両用多連型ヒューズ装置30Cは、上記回路板10Bの効果をヒューズ装置として発揮する。
【実施例4】
【0066】
図6(a1)〜(a3)は、本発明の車両用多連型ヒューズ装置の他例の組立手順を示す要部正面図、(b1)〜(b3)は、本発明の車両用多連型ヒューズ装置の他例の組立手順を示す要部正面図である。
【0067】
図6(a1)〜(a3)、(b1)〜(b3)の各図は、実施例1に関する図2(b)、図2(c)、図1(b)と同じ順序で、それぞれの実施例の組立手順と完成状態とを、充電電流保護用溶断部及び仮つなぎ部の拡大図で示したものである。
【0068】
図6(a1)〜(a3)に示す車両用多連型ヒューズ装置30Cは、図1、2、3の車両用多連型ヒューズ装置30、30Aに比べ、一対の残存部7bと短絡阻止部11Aとが、絶縁体ハウジング20Bの外縁部分(平坦部分)に設けられている点で異なっている。
【0069】
このように、一対の残存部7bと短絡阻止部11Aとが、仮つなぎ部用凹所12に設けられていない場合でも、短絡阻止部11Aは、一対の残存部7bの間に介在して、その短絡阻止機能を十分発揮する。
【0070】
図6(b1)〜(b3)に示す車両用多連型ヒューズ装置30Dは、図1、2の車両用多連型ヒューズ装置30に比べ、絶縁体ハウジング20Cの外縁部分に仮つなぎ部用凹所12がなく、仮つなぎ部7を除去する際に、絶縁体ハウジング20Cの外縁部分にまで入りこんで、この絶縁体ハウジング20Cと共に、除去部7cを除去する点が異なっている。
【0071】
このようにすると、残存部7dは、平坦な絶縁体ハウジング20Cの外縁部分から奥へ凹んだ部分に絶縁体ハウジング20Cに挟まれて突出しないような状態となる。その結果、この残存部7dに挟まれた絶縁体ハウジング20Cは、結果的に突出して残存部7d間の短絡を阻止する短絡阻止部11Bとして機能することになる。
【0072】
したがって、このような方法でも、短絡阻止部11Bを形成することができ、図1、2の短絡阻止部11と同様の効果を発揮することができる。
【0073】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、上記実施例は本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であり、本発明の技術的範囲には、それらの改良変形も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は車両用多連型ヒューズ装置は、車両用のものであって、充電電流保護用溶断部が組立工程において変形したり破断したりしないことが要請される産業上の分野に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の車両用多連型ヒューズ装置の一例を示すもので、(a)はその平面図、(b)はその正面図、(c)はその側面図
【図2】図1の車両用多連型ヒューズ装置の組立手順を示すもので、(a)は用意された回路板を示す正面図、(b)は(a)の回路板を絶縁体ハウジングで被覆した状態を示す正面図、(c)は(b)のAA断面図、(d)は(b)の状態から仮つなぎ部を所定区間除去した状態を示す部分拡大図
【図3】(a)は、本発明の車両用多連型ヒューズ装置の他例を示す平面図、(b)はその要部拡大正面図、(c)はその正面図
【図4】(a)は、図1の車両用多連型ヒューズ装置の使用状態を示す外観斜視図、(b)は(a)の部分拡大説明図
【図5】(a)、(b)は本発明の車両用多連型ヒューズ装置の構成要素である回路板の他例を示す正面図
【図6】(a1)〜(a3)は、本発明の車両用多連型ヒューズ装置の他例の組立手順を示す要部正面図、(b1)〜(b3)は、本発明の車両用多連型ヒューズ装置の他例の組立手順を示す要部正面図
【図7】本発明の背景技術となる車両用多連型ヒューズ装置を示す図
【符号の説明】
【0076】
1 個別溶断部
2 入出力端子
3 連結部
4 バッテリー側バスバー部
4a バッテリー接続端子
5 オルタネータ側バスバー部
5a オルタネータ接続端子
6 充電電流保護用溶断部
7 仮つなぎ部7
7a 一対の残存部
7b 切除部
8 個別仮つなぎ部
9 個別仮つなぎ部
10〜10B 回路板
11〜11B 短絡阻止部
12 仮つなぎ部用凹所
13 収容部
20〜20C 絶縁体ハウジング
30〜30D 車両用多連型ヒューズ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅合金の板材を打ち抜いて形成され、それぞれに個別溶断部を介して複数の入出力端子を備えたバッテリー側バスバー部とオルタネータ側バスバー部とを充電電流保護用溶断部で連結した回路板と、この回路板を絶縁被覆する絶縁体ハウジングとを備えた車両用多連型ヒューズ装置であって、
前記バッテリー側バスバー部はバッテリー接続端子を備え、かつ、前記オルタネータ側バスバー部はオルタネータ接続端子を備え、
前記回路板に、前記充電電流保護用溶断部と異なる位置であって前記絶縁体ハウジングに被覆されない部分で、前記バッテリー側バスバー部とオルタネータ側バスバー部とを連結し、前記絶縁体ハウジングで被覆された後には所定区間に渡って除去される仮つなぎ部が設けられていることを特徴とする車両用多連型ヒューズ装置。
【請求項2】
充電電流保護用溶断部は、バッテリー側バスバー部の個別溶断部とオルタネータ側バスバー部の個別溶断部との間に挟まれ並んで配置されていることを特徴とする請求項1記載の車両用多連型ヒューズ装置。
【請求項3】
バッテリー側バスバー部とオルタネータ側バスバー部とは同一平面上にあって、それぞれの長手方向に一直線上に列設されていることを特徴とする請求項1または2記載の車両用多連型ヒューズ装置。
【請求項4】
回路板に、個別溶断部と異なる位置であって絶縁体ハウジングに被覆されない部分で、複数の隣り合う入出力端子間を連結し、前記絶縁体ハウジングで被覆された後には除去される個別仮つなぎ部が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の車両用多連型ヒューズ装置。
【請求項5】
仮つなぎ部は、絶縁体ハウジングの外縁から凹んでいる仮つなぎ部用凹所に設けられ、所定区間に渡って除去された仮つなぎ部の残存する一対の残存部が、前記仮つなぎ部用凹所から飛び出さないように構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか記載の車両用多連型ヒューズ装置。
【請求項6】
絶縁体ハウジングに、所定区間に渡って除去された仮つなぎ部の残存する一対の残存部の中間に位置し、該残存部間の短絡を阻止する短絡阻止部が設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか記載の車両用多連型ヒューズ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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