説明

車両用帯電防止システム

【課題】帯電を防止して静電気放電の発生を抑えると共に、その帯電防止処理に違和感を感じることのない車両用帯電防止システムを提供する。
【解決手段】着座部11とシートバック12とヘッドレスト13とで構成され車内に配置されたシート1のヘッドレスト13内に、マイナスイオン発生装置2Aが設けられ、シート1に着座している人とシート1とが接触している範囲にマイナスイオンを噴射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用帯電防止システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
人が車両から降り、ドアを閉める際に金属部に触れると静電気放電が発生して感電することがある。これは、人がシートに着座している間に、人の着衣とシートとが擦れることによって、着衣が帯電するためである。
【0003】
そのため、従来から色々な放電グッズが用意されているが、これらは、車両の金属部に触れる前に予め放電グッズの所定の位置に触れて放電を行っておく等の注意が必要であった。
【0004】
そこで、シートに着座している人の背中が接するバックレスト内にマイナスイオン発生装置を設けて、シートに着座している人の背中とシートとの間にマイナスイオンを放出することで、帯電した着衣とシートとを中和し、予め帯電しづらい環境とすることで、静電気放電の発生を抑えている車両用帯電防止システムがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−178859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例における車両用帯電防止システムでは、人の背中に接するシートバックからマイナスイオンを含んだ空気が送風されるため、その風が背中に直接当ることによって、シートに着座している人が違和感を感じ、特に車両の運転手が運転に集中できないといった問題がある。
【0006】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、帯電を防止して静電気放電の発生を抑えると共に、その帯電防止処理に違和感を感じることのない車両用帯電防止システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、放電電極と、放電電極に高電圧を印加する高電圧印加手段と、放電電極に水を供給する水供給手段と、放電電極に高電圧を印加して放電電極に供給された水を静電霧化することで生成されたマイナスイオンを車両内に放出するための放出口とを有するマイナスイオン発生装置を車両内に備え、当該マイナスイオン発生装置は、着座部とシートバックとヘッドレストとで構成され車両内に配置されたシートのヘッドレスト内に設けられ、シートに着座している人とシートとが接触している範囲にマイナスイオンを噴射することを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、マイナスイオンを含んだ空気が、空間を介してシートに着座している人の背中とシートとの間へ送風されるので、帯電が防止されて静電気放電の発生が抑えられると共に、その帯電防止処理に違和感を感じることがなく、快適性を与えることができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記マイナスイオン発生装置は、車両の天井内にも設けられることを特徴とする請求項1または2記載の帯電防止システム。
【0010】
この発明によれば、マイナスイオンを含んだ空気が、シートに着座している人から離れた位置である車両の天井面から送風されることで、シートに着座している人に対して違和感の無い風とすることができると共に、シートに着座している人の全身にマイナスイオンが放出されることで、背中とシートとの間だけでなく、全身の帯電を防止することができ、帯電防止効果を更に向上させることができる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記シートに人が着座したことを検知する検知手段と、検知手段から出力される検知信号により、少なくとも人がシートに着座してから離れるまでの間マイナスイオン発生装置を作動させる制御手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、少なくともシートに着座している間に、帯電しにくい環境とすることで、静電気放電の発生を抑えることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明では、帯電を防止して静電気放電の発生を抑えると共に、その帯電防止処理に違和感を感じることのない車両用帯電防止システムを提供することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
(実施形態1)
本発明の実施形態について図1を用いて説明を行う。なお、図1における上下を上下方向、左右を前後方向として説明を行う。
【0016】
本実施形態の車両用帯電防止システムは、車両内に設けられたシート1のヘッドレスト13内に設けられるマイナスイオン発生装置2Aと、車両の天井内に設けられるマイナスイオン発生装置2Bと、マイナスイオン発生装置2A、2Bの動作を制御する制御部(制御手段)3と、人がシート1に着座した際に検知信号を制御部3へ出力する圧力センサ(検知手段)4とを備える。以降、マイナスイオン発生装置2A,2Bを区別しない時は、マイナスイオン発生装置2と称す。
【0017】
マイナスイオン発生装置2は、図2に示すように、放電電極21と、放電電極21を囲む絶縁材からなる筒体26の先端開口部に配設されて放電電極21に対向するリング状の対向電極22と、放電電極21を冷却することで空気中の水分を放電電極21上に結露させる冷却手段23と、放電電極21と対向電極22との間に高電圧を印加する高圧電源部24とからなるもので、ペルチェ素子で構成されていると共に冷却側に上記放電電極21が熱的に接続されている冷却手段23は、その放熱側に放熱フィン25を備えている。
【0018】
そして、上記マイナスイオン発生装置2では、冷却手段23が、放電電極21を冷却することで空気中の水分を結露させて放電電極21上に結露水を生成する水分供給手段となっており、結露水が放電電極21に付着している状態で放電電極21と対向電極22との間に高電圧を印加すれば、結露水は放電電極21の先端に集まると共に対向電極22との間の放電によってレイリー分裂を繰り返してマイナスイオンとなる。そして、放熱フィン25に冷却風を送るために図示しないモータファンが設けられ、当該モータファンから送られる風の一部が、筒体26の側面に形成される開口26aより筒体26内へ入り、その風にマイナスイオンが含有されて筒体26の先端開口である放出口27から吐出される。
【0019】
シート1は、着座部11とシートバック12とヘッドレスト13とで構成され、ヘッドレスト13内にマイナスイオン発生装置2Aが設けられている。
【0020】
そして、シート1に着座した人の背中と隙間空間を介して対向するヘッドレスト13の前面下部に吹き出し口13aが形成されており、ヘッドレスト13内には、吹き出し口13aとマイナスイオン発生装置2Aの放出口27とを連通させる通気経路13bが形成されている。
【0021】
上記構成を備える本実施形態の車両用帯電防止システムでは、人がシート1の着座部11に着座している間、着座部11内に配置された圧力センサ4が検知信号を制御部3へ出力し続け、制御部3は、検知信号を受信している間、マイナスイオン発生装置2A、2Bを作動させる。
【0022】
そして、マイナスイオン発生装置2Aの放出口27から放出されたマイナスイオンは、通気経路13bを介して吹き出し口13aより、シート1に着座している人の背中とシートバック12との間へ向けて放出される。
【0023】
このようにして、着座部11に人が着座している間は、常にマイナスイオンが人の背中とシートバック12との間に放出されていることから、着衣とシートバック12とが擦れることで帯電が起こった場合であっても、すぐにマイナスイオンによって中和されるため、帯電の起こりにくい環境とすることができる。
【0024】
また、マイナスイオンを含んだ空気が、シート1に着座した人の背中に、吹き出し口13aから直接当らず、隙間空間を介して到達することから、人に違和感を与えることなく帯電防止処理を行うことができ、更には、快適性を与えることができる。
【0025】
次に、着座部11から人が離れると、圧力センサ4は、制御部3への検知信号の出力を停止する。この時、制御部3に内蔵されたタイマが計時動作を開始し、所定時間(少なくとも、人が着座部11を離れてから車両外へ出るのに必要な時間)カウントした後に、制御部3がマイナスイオン発生装置2Aの作動を停止する。
【0026】
従って、人が降車する際に、着衣がシート1と擦れた場合であっても、マイナスイオン発生装置2Aが、マイナスイオンを放出し続けているので、着衣の帯電状態が中和され、静電気放電の発生を防止することができる。
【0027】
また、天井内に設けられたマイナスイオン発生装置2Bについても、前述のマイナスイオン発生装置2Aと同様に動作する。マイナスイオン発生装置2Bの放出口27は、下方に向けて設置され、天井面に設けられる図示しない吹き出し口を介して車内へマイナスイオンが放出される。
【0028】
従って、マイナスイオン発生装置2Bは、シート1に着座している人から離れた位置より、マイナスイオンを含んだ空気を送風するので、人に違和感を与えることがなく、更には、マイナスイオンが、背中とシートバック12との間だけではなく、シート1に着座している人の全身に放出されるので、帯電防止効果を更に高めることができる。
【0029】
なお、本実施形態では、マイナスイオン発生装置2A,2Bが、人が着座部11に着座してから着座部11を離れて所定時間経過するまでの期間動作しているが、帯電により静電気放電が起こるのは、着座部11を離れてから車両の金属部分に触れた時であるため、人がシート1から離れる直前からシート1を離れて所定時間経過するまでの期間だけ動作する構成であってもよい。その場合には、制御部3が車両の速度を監視して、速度がある規定の速度以下になると共に、車両のドアロックが解除された時に、マイナスイオン発生装置2A,2Bの動作を開始する。そうすることによって、人が着座部11に着座している間、常時マイナスイオン発生装置2A,2Bを動作させる場合に比べて、バッテリーの負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態1における概略構成図を示す。
【図2】同上におけるマイナスイオン発生装置の概略構成図を示す。
【符号の説明】
【0031】
1 シート
2 マイナスイオン発生装置
11 着座部
12 シートバック
13 ヘッドレスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極と、放電電極に高電圧を印加する高電圧印加手段と、放電電極に水を供給する水供給手段と、放電電極に高電圧を印加して放電電極に供給された水を静電霧化することで生成されたマイナスイオンを車両内に放出するための放出口とを有するマイナスイオン発生装置を車両内に備え、
当該マイナスイオン発生装置は、着座部とシートバックとヘッドレストとで構成され車両内に配置されたシートのヘッドレスト内に設けられ、シートに着座している人とシートとが接触している範囲にマイナスイオンを噴射することを特徴とする車両用帯電防止システム。
【請求項2】
前記マイナスイオン発生装置は、車両の天井内にも設けられることを特徴とする請求項1記載の車両用帯電防止システム。
【請求項3】
前記シートに人が着座したことを検知する検知手段と、検知手段から出力される検知信号により、少なくとも人がシートに着座してから離れるまでの間マイナスイオン発生装置を作動させる制御手段とを備えることを特徴とする請求項1または2記載の車両用帯電防止システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−76589(P2010−76589A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246902(P2008−246902)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】