説明

車両用時刻表示装置

【課題】車両がバックアップ状態のときの時刻表示装置の利便性を向上させる。
【解決手段】時刻表示装置2は、車両電源のうちバックアップ電源11から電力が供給され、また、車両内の乗員の有無を検知する着座センサ5を備える。車両電源がバックアップ電源11のみを使用しており、かつ、車両に乗員がいるときに時刻表示装置2の時刻表示器4は時刻表示を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された時刻表示装置に関し、特に、時刻表示のオンオフ切り替えが行われる低電力消費の時刻表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の乗員に現在時刻を知らせるために車両に時刻表示装置が搭載されている。
【0003】
時刻表示装置をはじめ、車両内の電装品は車両内に設けられたバックアップ電源(常時電源)、アクセサリ電源、イグニッション電源、スタータ電源等から電力の供給を受けている。以下ではバックアップ電源、アクセサリ電源、イグニッション電源、スタータ電源をまとめて車両電源と呼ぶ。
【0004】
車両電源はいずれも車両に搭載されたバッテリから電圧が印加されている。また、車両がエンジンと電気モータの2種類の動力源を有するいわゆるハイブリッドシステムを備えている場合には、車両電源はいずれもサブバッテリから電圧が印加される。バッテリやサブバッテリは、エンジンの回転に伴って発電する発電機によって充電される。
【0005】
車両電源の使用状態は車両の状態によって変化する。すなわち、車両のキーシリンダに挿入されたキーがオフポジション(OFF)に位置している場合と、アクセサリポジション(ACC)に位置している場合と、イグニッションポジション(IG)に位置している場合、スタートポジション(STT)に位置している場合とで車両電源の使用状態は異なる。
【0006】
たとえば、キーがオフポジションに位置している場合には、車両電源のうちバックアップ電源のみから電力が供給される。この状態はバックアップ状態と呼ばれる。
【0007】
また、キーがアクセサリポジションに位置している場合には、車両電源のうちバックアップ電源とアクセサリ電源から電力が供給される。
【0008】
ここで、時刻表示装置のうち、現在時刻をカウントする計測部はバックアップ電源から電力が供給されており、時刻を表示する時刻表示器はアクセサリ電源から電力が供給されている。
【0009】
バックアップ電源はキーの位置がオフポジションおよびアクセサリポジションのいずれの位置にあっても電力供給を行っているため、計測部には常に電力が供給されている。
【0010】
一方、時刻表示器はアクセサリ電源から電力が供給されているため、キーがアクセサリポジションに位置している場合には時刻表示を行うが、キーがオフポジションに位置している場合には時刻表示を行わない。
【0011】
特許文献1には、自動車に搭載された時計において、バックアップ状態においては当該時計をスリープモードに切り替えて時刻のカウント機能のみを作動させ、アクセサリスイッチがオンになったときに時刻表示を行わせることが示されている。
【0012】
【特許文献1】特開2006−284306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述の通り、バックアップ状態では時刻表示器は時刻表示を行わない。したがって、バックアップ状態の車両に乗員がいても時刻が表示されないため、車両の電装品としての乗員への利便性が低下してしまう。
【0014】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、バックアップ状態において時刻表示装置の時刻表示の利便性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、車両のアクセサリ電源がオン状態であるときに時刻を表示する時刻表示器を備えた車両用時刻表示装置において、車両用時刻表示装置は、車両内の乗員の有無を検知する乗員センサを備え、時刻表示器は、車両のアクセサリ電源がオフ状態であって、かつ、車両内に乗員がいるときに時刻を表示することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、時刻表示器は、車両のバックアップ電源から電力が供給され、アクセサリ電源がオフ状態であって、かつ、車両内に乗員がいるときであって、さらに、バックアップ電源の電圧値が予め定めた電圧値以下であるときには、時刻表示を点滅状態にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車両の電源使用状態だけでなく車両内の乗員有無にも基づいて車両内の時刻表示を行うことにより、バックアップ状態であっても乗員に対して利便性が高く視認性の優れた時刻表示を行うことができる。
【0018】
さらに、本発明によれば、バックアップ電源の電圧値が低下したとき、すなわちバッテリまたはサブバッテリの電圧が下がってきたときに、時刻表示を点滅させることにより、車両内の乗員にバッテリ電圧の低下を知らせ、乗員にエンジンを駆動させ、バッテリやサブバッテリの充電を行うように促すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明にかかる好適な実施形態を図面を用いて説明する。
【0020】
図1において、車両本体1には、時刻表示装置2が設けられている。時刻表示装置2は、計測部3と、時刻表示器4と、後述する着座センサ5とを備えている。計測部3は、現在時刻のカウントを行っている。時刻表示器4は、計測部3がカウントした現在時刻を表示する。
【0021】
また、車両本体1は、乗員用の座席6を複数有している。座席6は座部6aと背部6bとからなり、それぞれの座部6aには乗員センサとして例えば歪みゲージなどから構成される着座センサ5が設けられている。本実施形態では車両の最大乗員は5名であるから、着座センサ5は5個設けられている。
【0022】
時刻表示器4と各着座センサ5とは、信号線7で接続されている。着座センサ5はその上に乗員が着座している間は、車両内に乗員がいることを知らせる信号を時刻表示器4に送信する。
【0023】
次に、車両電源の電力供給について、図2に基づいて説明する。
【0024】
図2には、イグニッションスイッチ8と、バッテリ9、および両者と接続している電源制御器10と、電源制御器10によってオンオフ切り替えが行われるバックアップ電源11、アクセサリ電源12、イグニッション電源13、スタータ電源14とが示されている。
【0025】
イグニッションスイッチ8には、オフポジション(OFF)、アクセサリポジション(ACC)、イグニッション(IG)ポジション、スタートポジション(STT)の4ポジションが設けられている。各ポジションへの切り替えは車両のキーをイグニッションスイッチ8のキー挿入口に挿入することにより可能となる。各ポジションへの切り替えに応じて、電源制御器10は車両内のバックアップ電源11、アクセサリ電源12、イグニッション電源13、スタータ電源14等のオンオフを制御している。バッテリ9は電源制御器10の切り替えに応じて各電源に電力を供給している。あるいはハイブリッドシステム搭載車両の場合には、バッテリ9に代えてサブバッテリが各電源に電力を供給している。
【0026】
バックアップ電源11は車両内の記憶素子や計測部3など、常に電力の供給を必要とする電装品に電力を供給する。さらに、本発明においては、バックアップ電源11は時刻表示器4と着座センサ5にも電力を供給している。
【0027】
アクセサリ電源12はナビゲーションシステムやオーディオシステムなどに電力を供給している。また、イグニッション電源13は走行時に使用する電装品、例えば空調装置などに電力を供給している。また、スタータ電源14はエンジンスタート時にスタータ等に電力を供給する。
【0028】
イグニッションスイッチ8がオフポジション(OFF)に位置しているときには、電源制御器10は、バックアップ電源11のみをオン状態にする。このときの車両電源の状態を表1に示す。
【表1】

【0029】
イグニッションスイッチ8がアクセサリポジション(ACC)に位置しているときには、電源制御器10は、バックアップ電源11とアクセサリ電源12をオン状態にする。このときの車両電源の状態を表2に示す。
【表2】

【0030】
イグニッションスイッチ8がイグニッションポジション(IG)に位置しているときには、電源制御器10は、バックアップ電源11とアクセサリ電源12とイグニッション電源13とをオン状態にする。このときの車両電源の状態を表3に示す。
【表3】

【0031】
イグニッションスイッチ8がスタートポジション(STT)に位置しているときには、電源制御器10は、バックアップ電源11とアクセサリ電源12とイグニッション電源13とスタータ電源14とをオン状態にする。このときの車両電源の状態を表4に示す。
【表4】

【0032】
次に、時刻表示装置2における時刻表示器4の時刻表示制御について、図3のフローチャートに従って説明する。ここで、時刻表示制御とは、単に時刻の表示/非表示の切り替え制御を指すのみならず、時刻表示器4にバックライトなどの照明器具が設けられている場合には当該照明器具の点灯/消灯の切り替え制御を行うことも含まれる。
【0033】
まず、時刻表示器4は、バックアップ電源11に加えて、少なくともアクセサリ電源12がオン状態であれば、時刻表示を行う(S1)。つまり、イグニッションスイッチ8が、オフポジション以外のアクセサリポジション、イグニッションポジション、スタートポジションのいずれかに位置していれば時刻表示が行われる。
【0034】
さらに、時刻表示器4は、バックアップ電源11のみがオン状態、つまり車両電源がバックアップ状態であって、かつ、着座センサ5から車両に乗員がいる旨の信号を受信しているときにも時刻表示を行う(S2)。前述したように、時刻表示器4および着座センサ5はバックアップ電源11に接続されているため、イグニッションスイッチ8のポジションに関わらず常に電力の供給を受けている。したがって車両が待機状態となっているバックアップ状態であっても乗員の有無を検知し、時刻の表示を行うことができる。
【0035】
一方、車両電源がバックアップ状態であり、かつ、車内に乗員がいない場合には、時刻表示器4は時刻表示を行わない(S2)。
【0036】
以上のように、車両電源がバックアップ状態であっても、車内に乗員がいるときには時刻表示を行う。したがって、乗員に対する車両の電装品としての利便性が向上する。加えて、車内に乗員がいない場合には時刻表示を行わないから、バッテリ9の電力の浪費を防ぐことができる。
【0037】
なお、図1には着座センサ5が複数示されているが、時刻表示器4は、そのうちのいずれか一つから乗員がいる旨の信号を受信していれば時刻表示を行う。
【0038】
次に、時刻表示装置2における時刻表示器4の時刻表示制御の他の態様について、図4に示すフローチャートに従って説明する。
【0039】
時刻表示器4は、車両電源がバックアップ状態以外のときに時刻表示を行う(S1)。また、バックアップ状態であって乗員がいないときには時刻表示を行わない(S2)。ここまでは図3と同様である。
【0040】
一方、車両電源がバックアップ状態であり、かつ車内に乗員がいるときであって、さらにバッテリ9の電圧値が予め定めた閾値以下である場合には、時刻表示器4は時刻を点滅表示する(S3)。
【0041】
なお、車両電源がバックアップ状態であり、かつ車内に乗員がいるときであっても、バッテリ9の電圧値が予め定めた閾値を越えているときには図3と同様の時刻表示を行う(S3)。
【0042】
バックアップ状態においてはバッテリ9から電力が供給される一方、バッテリ9への充電は行われない。このため、長時間バックアップ状態が継続するとバッテリ9の蓄電力が低下し、バックアップ電源11に印加する電圧が低下する。バッテリ9の印加電圧が低下した状態でイグニッションスイッチ8をスタートポジションに回しても、バッテリ9からスタータ電源14に供給する電力が不足し、エンジンが始動しない場合がある。そのため、本発明においてはバッテリ9の電圧値に閾値を設けて、バッテリ9の電圧値がエンジン始動が不可能になる電圧値に近づいているときには、時刻表示器4の時刻表示を点滅状態にして車両内にいる乗員にエンジン始動を促している。エンジンの始動によって車両内の発電機が発電を開始し、バッテリ9への充電が行われる。このように、バックアップ状態において乗員にバッテリ9の電圧不足を知らせることによってバッテリ上がりを未然に防ぐことが可能となる。
【0043】
なお、時刻の点滅表示を行う基準となるバッテリ電圧の閾値は車両に搭載されるバッテリ9の種類や電装系全体の消費電力等によって異なる。例えば12ボルトのバッテリを使用している場合には閾値として7〜8ボルトを設定する。
【0044】
なお、上述したバックアップ状態における時刻表示制御を実行するか否かを予めドライバーやその他の乗員が選択できるようにしても良い。具体的には着座センサ5と時刻表示器4とをつなぐ信号線7の送受信を遮断するスイッチを時刻表示装置2に設けても良い。
【0045】
また、車内の乗員の有無を検知する乗員センサとして、着座センサ5に代えて、赤外線センサや温度センサなどを設けても良い。着座センサ5は乗員の代わりに荷物等が座席に置かれたときにこれを乗員と誤認する可能性があるが、赤外線センサ等に代えることによりこのような誤検知を防ぐことができる。または赤外線センサや温度センサと着座センサ5とを併用することにより、誤検知をさらに減少させることができる。
【0046】
また、着座センサ5に代えて、時刻表示装置2にボタン等の入力デバイスと遅延回路を設けて、バックアップ状態にボタンが押圧されると一定時間時刻表示器4の時刻表示を行うようにしても良い。
【0047】
さらに、図5の車内照明器15等と時刻表示器4の時刻表示とを同期させても良い。具体的には、車内照明器15のスイッチが入れられたときに、時刻表示の色と車内照明器15の色とが同じ色になるように時刻表示器4に複数色の光源を備えても良い。これにより、車内に設置された複数の発光手段の発色が統一される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施形態の車両の上面図である。
【図2】イグニッションスイッチと電源系統との関係を示す図である。
【図3】本実施形態の時刻表示制御フローを示すフローチャートである。
【図4】本実施形態の別の時刻表示制御フローを示すフローチャートである。
【図5】本実施形態の車両の側面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 車両本体、2 時刻表示装置、3 計測部、4 時刻表示器、5 着座センサ、6 座席、7 信号線、8 イグニッションスイッチ、9 バッテリ、10 電源制御器、11 バックアップ電源、12 アクセサリ電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のアクセサリ電源がオン状態であるときに時刻を表示する時刻表示器を備えた車両用時刻表示装置において、
車両用時刻表示装置は、車両内の乗員の有無を検知する乗員センサを備え、
時刻表示器は、車両のアクセサリ電源がオフ状態であって、かつ、車両内に乗員がいるときに時刻を表示することを特徴とする車両用時刻表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用時刻表示装置において、
時刻表示器は、車両のバックアップ電源から電力が供給され、アクセサリ電源がオフ状態であって、かつ、車両内に乗員がいるときであって、さらに、バックアップ電源の電圧値が予め定めた電圧値以下であるときには、時刻表示を点滅状態にすることを特徴とする車両用時刻表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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