説明

車両用灯具、及び、車両用灯具製造方法

【課題】ハウジング及びレンズと装飾部材との間に発生する摩擦に起因してレンズが傷ついて外観見栄えに影響を与えたり、摩擦音が発生する等の不具合を防止又は低減することが可能な車両用灯具及び当該車両用灯具を製造する方法を提供する。
【解決手段】開口端部を含む樹脂製ハウジングと、外周部が前記開口端部にレーザー溶着されて灯室を構成する樹脂製レンズと、前記灯室内に配置された樹脂製装飾部材と、を備えた車両用灯具において、前記樹脂製装飾部材は、接合部と非接合部とが周方向に交互に連続する外周部を含んでおり、前記樹脂製装飾部材の接合部と前記樹脂製ハウジングの開口端部とは、前記樹脂製装飾部材の非接合部と前記樹脂製レンズ及び前記樹脂製ハウジングとの間に空隙を保った状態で、レーザー溶着されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具及び車両用灯具製造方法に係り、特にハウジング及びレンズと装飾部材との間に発生する摩擦に起因してレンズが傷ついて外観見栄えに影響を与えたり、摩擦音が発生する等の不具合を防止又は低減することが可能な車両用灯具及び当該車両用灯具を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図10に示すように、ハウジング210の開口端部211及びレンズ220の外周部221と装飾部材230の外周部231とをレーザー溶着することで構成された車両用灯具200が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−114383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成の車両用灯具200においては、ハウジング210及びレンズ220と装飾部材230とは、レーザー溶着される箇所以外の部分であっても全周にわたって互いに密着した構成であるため、車両走行時の振動等の影響によりその密着部分において摩擦が発生し、これに起因してレンズ220が傷ついて外観見栄えに影響を与えたり、摩擦音が発生する等の不具合を生ずる恐れがある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ハウジング及びレンズと装飾部材との間に発生する摩擦に起因してレンズが傷ついて外観見栄えに影響を与えたり、摩擦音が発生する等の不具合を防止又は低減することが可能な車両用灯具及び当該車両用灯具を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、開口端部を含む樹脂製ハウジングと、外周部が前記開口端部にレーザー溶着されて灯室を構成する樹脂製レンズと、前記灯室内に配置された樹脂製装飾部材と、を備えた車両用灯具において、前記樹脂製装飾部材は、接合部と非接合部とが周方向に交互に連続する外周部を含んでおり、前記樹脂製装飾部材の接合部と前記樹脂製ハウジングの開口端部とは、前記樹脂製装飾部材の非接合部と前記樹脂製レンズ及び前記樹脂製ハウジングとの間に空隙を保った状態で、レーザー溶着されていることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、樹脂製装飾部材の非接合部と樹脂製レンズ及び樹脂製ハウジングとの間の空隙の作用により、樹脂製レンズ及び樹脂製ハウジングと樹脂製装飾部材のうちレーザー溶着されない箇所とは互いに密着しない構成であるため、ハウジング及びレンズと装飾部材との間に発生する摩擦を防止又は低減することが可能となる。これにより、当該摩擦に起因してレンズが傷ついて外観見栄えに影響を与えたり、摩擦音が発生する等の不具合を防止又は低減することが可能な車両用灯具を構成することが可能となる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記非接合部は、前記灯室側に凹んだ段差部であることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、樹脂製装飾部材の非接合部と樹脂製レンズ及び樹脂製ハウジングとの間の空隙(灯室側に凹んだ段差部)の作用により、樹脂製レンズ及び樹脂製ハウジングと樹脂製装飾部材のうちレーザー溶着されない箇所とは互いに密着しない構成であるため、ハウジング及びレンズと装飾部材との間に発生する摩擦を防止又は低減することが可能となる。これにより、当該摩擦に起因してレンズが傷ついて外観見栄えに影響を与えたり、摩擦音が発生する等の不具合を防止又は低減することが可能な車両用灯具を構成することが可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記レーザー溶着は、ロボットアームに保持されたレーザーヘッド部からのレーザー光、又は、所定フレームに固定されたガルバノスキャン光学系からのレーザー光によるレーザー溶着であることを特徴とする。
【0011】
請求項3は、レーザー溶着の例示である。したがって、他のレーザー溶着を用いることも可能である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、レーザー溶着を用いて車両用灯具を製造する方法において、透明部を含む接合部と非接合部とが周方向に交互に連続する外周部を含む装飾部材と開口端部を含むハウジングとを加圧し、前記装飾部材の非接合部と前記ハウジングとの間に空隙を保った状態で、かつ、前記装飾部材の前記透明部と前記ハウジングの開口端部とを互いに当接させた状態で保持する第1保持工程と、レーザー光が前記装飾部材の透明部を透過して前記装飾部材の透明部が当接した前記ハウジングの開口端部を照射し、前記ハウジングとこれに当接した前記装飾部材とを溶融して接合するように、レーザー光を走査する第1走査工程と、前記レンズと前記ハウジングとを加圧し、前記装飾部材の非接合部と前記レンズとの間に空隙を保った状態で、かつ、前記レンズの外周部と前記ハウジングの開口端部とを互いに当接させた状態で保持する第2保持工程と、レーザー光が前記レンズを透過して前記レンズの外周部が当接した前記ハウジングの開口端部を照射し、前記ハウジングとこれに当接した前記レンズとを溶融して接合するように、レーザー光を走査する第2走査工程と、を含んでおり、前記装飾部材の透明部は、レーザー光に対し透過性を有する熱可塑性樹脂製透明部であり、前記レンズは、レーザー光に対し透過性を有する熱可塑性樹脂製レンズであり、前記ハウジングは、レーザー光に対し吸収性を有する熱可塑性樹脂製ハウジングであることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、レンズ及びハウジングと装飾部材のうちレーザー溶着されない箇所とが互いに密着せず、ハウジング及びレンズと装飾部材との間に発生する摩擦を防止又は低減することが可能な車両用灯具(すなわち、当該摩擦に起因してレンズが傷ついて外観見栄えに影響を与えたり、摩擦音が発生する等の不具合を防止又は低減することが可能な車両用灯具)を製造する方法を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、ハウジング及びレンズと装飾部材との間に発生する摩擦に起因してレンズが傷ついて外観見栄えに影響を与えたり、摩擦音が発生する等の不具合を防止又は低減することが可能な車両用灯具及び当該車両用灯具を製造する方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態である車両用灯具10の正面図である。
【図2】図1に示した車両用灯具10のA−A断面図である。
【図3】図1に示した車両用灯具10のB−B断面図である。
【図4】車両用灯具10の斜視図(レーザー光学系を含む)である。
【図5】エクステンション40の斜視図である。
【図6】エクステンション40とハウジング20とをレーザー溶着する工程を説明するための断面図である。
【図7】エクステンション40の接合部41aに透明部41cを形成するために用いられるマスクMの例である。
【図8】レンズ30とハウジング20とをレーザー溶着する工程を説明するための断面図である。
【図9】車両用灯具10の正面図である。
【図10】従来の車両用灯具200の構成を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態である車両用灯具について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
本実施形態の車両用灯具10は、例えば、車両後部の左右両側にそれぞれ配置されるリアコンビネーションランプ等の車両用灯具に適用されるものであり、図1〜図3に示すように、ハウジング20、レンズ30、エクステンション40等を備えている。
【0018】
ハウジング20は、レーザー光に対し吸収性を有する熱可塑性樹脂製ハウジングである。図2〜図4に示すように、ハウジング20は、開口端部21(環状接合面)を含んでいる。
【0019】
レンズ30は、レーザー光に対し透過性を有する熱可塑性樹脂製レンズである。レンズ30は、例えば、図4に示すように、第1レンズ部31と、屈曲レンズ部32を介して第1レンズ部31に連続する第2レンズ部33と、を含んでいる。図2、図3に示すように、レンズ30の外周部には、先端に環状接合面34aを含む環状リブ34が形成されている。図2〜図4に示すように、レンズ30の外周部(環状接合面34a)とハウジング20の開口端部21とは、その全周にわたり互いに当接(密着)した状態でレーザー溶着されて灯室50を構成している。
【0020】
エクステンション40は、灯室50内に配置された装飾部材である。図2、図3、図5に示すように、エクステンション40は、透明部41cを含む接合部41aと非接合部41b(例えば、灯室50側に凹んだ段差部。図5参照)とが周方向に交互に連続する外周部41を含んでいる。例えば、接合部41aは6〜10箇所程度に設けられている(図1参照)。
【0021】
エクステンション40は、例えば、レーザー光に対し透過性を有する熱可塑性樹脂により形成されている。例えば、図7に示すマスクM(例えばSUS製バネ材料)をエクステンション40の接合部41aに装着した状態で、エクステンション40の表面全域にアルミ蒸着等の鏡面処理を施すことで、エクステンション40の接合部41aには、レーザー光に対し透過性を有する透明部41cが形成されている(図6参照)。
【0022】
図3に示すように、エクステンション40の接合部41aとハウジング20の開口端部21とは、エクステンション40の非接合部41bとレンズ30及びハウジング20との間に空隙S(例えば約0.5mm。図2参照)を保った状態で、レーザー溶着されている。
【0023】
次に、車両用灯具10の製造方法について説明する。
【0024】
以下のレーザー溶着を行うためのレーザー光学系としては、例えば、レーザー溶着に用いられるレーザー光を走査するガルバノミラー等(図示せず)を含むガルバノスキャンヘッド、又は、公知のロボットアームに保持されたレーザー射出装置を用いることが可能である。なお、レーザー光学系がガルバノスキャンヘッドである場合には、当該ガルバノスキャンヘッドは公知のフレーム等(図示せず)に固定されて用いられる。
【0025】
まず、図6に示すように、エクステンション40とハウジング20とを加圧し、エクステンション40の非接合部41bとハウジング20との間に空隙S(例えば約0.5mm)を保った状態で(図2、図3参照)、かつ、エクステンション40の透明部41cとハウジング20の開口端部21とを互いに当接させた状態で保持する。
【0026】
そして、図4に示すように、レーザー光Rayがエクステンション40の透明部41cを透過して当該エクステンション40の透明部41cが当接したハウジング20の開口端部21を照射し、ハウジング20とこれに当接したエクステンション40の透明部41cとを溶融して接合するように、レーザー光Rayを走査する(照射方向:例えば、図6に示す鉛直軸(図6中一点鎖線)に対し45°±15°)。
【0027】
次に、図8に示すように、レンズ30とハウジング20とを加圧し、エクステンション40の非接合部41bとレンズ30との間に空隙S(例えば約0.5mm)を保った状態で(図2参照)、かつ、レンズ30の外周部(環状接合面34a)とハウジング20の開口端部21(のエクステンション40の外側。図8参照)とを互いに当接させた状態で保持する。
【0028】
そして、レーザー光Rayがレンズ30を透過して当該レンズ30の外周部(環状接合面34a)が当接したハウジング20の開口端部21を照射し、ハウジング20とこれに当接したレンズ30とを溶融して接合するように、レーザー光Rayを走査する(照射方向:例えば、図8に示す鉛直軸(図8中一点鎖線)に対し0°±60°)。
【0029】
以上により、エクステンション40の接合部41aとハウジング20の開口端部21とが、エクステンション40の非接合部41bとレンズ30及びハウジング20との間に空隙S(例えば約0.5mm)を保った状態でレーザー溶着された車両用灯具10を構成することが可能となる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、エクステンション40の非接合部41bとレンズ30及びハウジング20との間の空隙S(図2、図3参照)の作用により、レンズ30及びハウジング20とエクステンション40のうちレーザー溶着されない箇所(非接合部41b)とは互いに密着しない構成であるため、ハウジング20及びレンズ30とエクステンション40との間に発生する摩擦を防止又は低減することが可能となる。これにより、当該摩擦に起因してレンズ30が傷ついて外観見栄えに影響を与えたり、摩擦音が発生する等の不具合を防止又は低減することが可能な車両用灯具10を構成することが可能となる。
【0031】
また、本実施形態によれば、エクステンション40がレンズ30の内径ギリギリに配置されているため(図2、図3参照)、正面視でエクステンション40の溶着跡がほとんど目立たない外観見栄えのよい車両用灯具10を構成することが可能となる(図9参照)。
【0032】
また、本実施形態によれば、エクステンション40の透明部41cが正面視で背面側に隠れる形となるため(図6参照)、正面視で透明部41cが視認されない外観見栄えのよい車両用灯具10を構成することが可能となる。
【0033】
また、本実施形態によれば、レンズ30及びハウジング20とエクステンションのうちレーザー溶着されない箇所(非接合部41b)とが互いに密着せず、ハウジング20及びレンズ30とエクステンション40との間に発生する摩擦を防止又は低減することが可能な車両用灯具10(すなわち、当該摩擦に起因してレンズ30が傷ついて外観見栄えに影響を与えたり、摩擦音が発生する等の不具合を防止又は低減することが可能な車両用灯具10)を製造する方法を提供することが可能となる。
【0034】
次に、変形例について説明する。
【0035】
上記実施形態では、エクステンション40の接合部41aには、レーザー光に対し透過性を有する透明部41cが形成されている(図6参照)ように説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、エクステンション40の表面全域(接合部41も含む)にアルミ蒸着等の鏡面処理が施されていてもよい。すなわち、透明部41cは形成されていなくてもよい。
【0036】
あるいは、透明部41cに代えてレーザー光に対し吸収性を有する不透明部を設け、当該不透明部をハウジング20だけでなく、レンズ30にもレーザー溶着してもよい。
【0037】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0038】
10…車両用灯具、20…ハウジング、21…開口端部、30…レンズ、34…環状リブ、34a…環状接合面、40…エクステンション、41…外周部、41a…接合部、41b…非接合部、41c…透明部、50…灯室、S…空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口端部を含む樹脂製ハウジングと、外周部が前記開口端部にレーザー溶着されて灯室を構成する樹脂製レンズと、前記灯室内に配置された樹脂製装飾部材と、を備えた車両用灯具において、
前記樹脂製装飾部材は、接合部と非接合部とが周方向に交互に連続する外周部を含んでおり、
前記樹脂製装飾部材の接合部と前記樹脂製ハウジングの開口端部とは、前記樹脂製装飾部材の非接合部と前記樹脂製レンズ及び前記樹脂製ハウジングとの間に空隙を保った状態で、レーザー溶着されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記非接合部は、前記灯室側に凹んだ段差部であることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記レーザー溶着は、ロボットアームに保持されたレーザーヘッド部からのレーザー光、又は、所定フレームに固定されたガルバノスキャン光学系からのレーザー光によるレーザー溶着であることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
レーザー溶着を用いて車両用灯具を製造する方法において、
透明部を含む接合部と非接合部とが周方向に交互に連続する外周部を含む装飾部材と開口端部を含むハウジングとを加圧し、前記装飾部材の非接合部と前記ハウジングとの間に空隙を保った状態で、かつ、前記装飾部材の前記透明部と前記ハウジングの開口端部とを互いに当接させた状態で保持する第1保持工程と、
レーザー光が前記装飾部材の透明部を透過して前記装飾部材の透明部が当接した前記ハウジングの開口端部を照射し、前記ハウジングとこれに当接した前記装飾部材とを溶融して接合するように、レーザー光を走査する第1走査工程と、
前記レンズと前記ハウジングとを加圧し、前記装飾部材の非接合部と前記レンズとの間に空隙を保った状態で、かつ、前記レンズの外周部と前記ハウジングの開口端部とを互いに当接させた状態で保持する第2保持工程と、
レーザー光が前記レンズを透過して前記レンズの外周部が当接した前記ハウジングの開口端部を照射し、前記ハウジングとこれに当接した前記レンズとを溶融して接合するように、レーザー光を走査する第2走査工程と、
を含んでおり、
前記装飾部材の透明部は、レーザー光に対し透過性を有する熱可塑性樹脂製透明部であり、
前記レンズは、レーザー光に対し透過性を有する熱可塑性樹脂製レンズであり、
前記ハウジングは、レーザー光に対し吸収性を有する熱可塑性樹脂製ハウジングであることを特徴とするレーザー溶着を用いた車両用灯具製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−9256(P2012−9256A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143811(P2010−143811)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】