説明

車両用灯具および車両用灯具の取付構造

【課題】従来の車両用灯具では、再利用することができず、また、所定の配光制御が得られない点にある。
【解決手段】灯具本体1を車体4に取り付ける取付構造が、灯具本体1の下部を車体4に回転可能に取り付ける第1取付手段(2本のピン5、6と、透孔7や凹部8)と、灯具本体1の上部を車体4に脱落可能に取り付け、かつ、灯具本体1の前面に斜め上方からの所定値以上の衝撃力Aがかかると脱落する第2取付手段(第2取付部11と、ブラケット12)と、を備える。この結果、第2取付手段が脱落するだけなので、灯具本体1を再利用することができ、灯具本体1を交換する必要がなく、コスト安となる。また、灯具本体1が第1取付手段および第2取付手段により車体4に確実に取り付けられているので、灯具本体1が車両の走行時の振動などによりぶれることがなく、所定の配光制御が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば、車両用前照灯などの車両用灯具であって、斜め上方から衝撃力がかかると灯具本体が脱落する車両用灯具に関するものである。また、この発明は、たとえば、車両用前照灯などの車両用灯具の取付構造であって、斜め上方から衝撃力がかかると灯具本体が脱落する車両用灯具の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用灯具は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、従来の車両用灯具について説明する。なお、括弧つきの符号は、特許文献1にそれぞれ対応する。この車両用灯具(1)、(1A)、(1C)は、レンズ(2)と、ハウジング(3)と、後退許容手段の破断用弱部(3b)、(15)や接着剤(26)や蛇腹形状部(16)とから構成されている。レンズ(2)に障害物が衝突すると、破断用弱部(3b)、(15)や接着剤(26)が破断したり、または、蛇腹形状部(16)が収縮して、レンズ(2)がハウジング(3)に対して後退する。これにより、障害物衝突時における衝撃の緩和を図るものである。
【0003】
ところが、前記の従来の車両用灯具(1)、(1A)、(1C)においては、レンズ(2)に障害物が衝突すると、破断用弱部(3b)、(15)や接着剤(26)が破断するので、車両用灯具(1)を再利用することができず、新たな車両用灯具(1)と交換する必要があり、コスト高となり、また、蛇腹形状部(16)を使用する場合、レンズ(2)が車両の走行中の振動などによりぶれて、配光制御上好ましくない。
【0004】
【特許文献1】特開2002−200937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする問題点は、従来の車両用灯具では、再利用することができず、また、所定の配光制御が得られない点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、灯具本体を車体に取り付ける取付構造が、灯具本体の下部を車体に回転可能に取り付ける第1取付手段と、灯具本体の上部を車体に脱落可能に取り付け、かつ、灯具本体の前面に斜め上方からの所定値以上の衝撃力がかかると脱落する第2取付手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明の車両用灯具およびこの発明の車両用灯具の取付構造は、灯具本体の前面に斜め上方からの所定値以上の衝撃力がかかると第2取付手段が脱落し、これにより、障害物衝突時における衝撃の緩和を図るものである。このように、この発明の車両用灯具およびこの発明の車両用灯具の取付構造は、第2取付手段が脱落するだけなので、灯具本体を再利用することができ、灯具本体を交換する必要がなく、その分、コスト安となる。また、この発明の車両用灯具およびこの発明の車両用灯具の取付構造は、灯具本体が第1取付手段および第2取付手段により車体に確実に取り付けられているので、灯具本体が車両の走行時の振動などによりぶれることがなく、その結果、所定の配光制御が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、この発明にかかる車両用灯具および車両用灯具の取付構造の実施例の1例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0009】
以下、この実施例における車両用灯具および車両用灯具の取付構造の構成について説明する。この実施例における車両用灯具は、たとえば、車両の前部の左右に装備されるヘッドランプやフォグランプやフロントコンビネーションランプなどの前照灯について説明する。
【0010】
図において、符号1は、この実施例における車両用灯具であって、この例ではたとえば、車両の前部の左右に装備されるヘッドランプやフォグランプやフロントコンビネーションランプなどの前照灯、すなわち、灯具本体である。前記灯具本体1は、灯室(図示せず)を区画する後側のランプハウジング2および前側のランプレンズ3と、前記灯室内に配置された光源(図示せず)および前記光源からの光を反射させて前記ランプレンズ3から外部に照射するリフレクタ(図示せず)などから構成されている。
【0011】
この実施例の灯具本体1は、第1取付手段と第2取付手段とを備える取付構造により、車体4に確実に取り付けられている。前記車体4には、前記灯具本体1を収納するための空間が形成されている。すなわち、前記空間は、車体4の車体パネルなどにより囲まれて形成されている。
【0012】
前記第1取付手段は、前記灯具本体1の下部を車体4に回転可能に取り付けるものである。すなわち、前記第1取付手段は、前記灯具本体1の下部、たとえば、前記ランプハウジング2の下部で前側(前記ランプレンズ3に近い箇所)の左右両側に一直線O−O上に2箇所設けられた2本のピン5、6と、前記車体4に一直線O−O上に設けられた透孔7および凹部8を有する第1取付部9、10とから構成されている。前記2本のピン5、6は、前記透孔7、前記凹部8にそれぞれ回転可能に取り付けられる。前記透孔7は、前記第1取付部9に短円筒形状の凸部を一体に設けてなり、一方、前記凹部8は、前記第1取付部10の一部を半円形に湾曲させてなる。前記の一直線O−Oは、前記第1取付手段の回転中心線である。前記第1取付手段の回転中心線O−Oは、前記第2取付手段よりも前記灯具本体1の前方斜め下方に配置されている。
【0013】
前記第2取付手段は、前記灯具本体1の上部を前記車体4に脱落可能に取り付け、かつ、前記灯具本体1の前面の前記ランプレンズ3に斜め上方からの所定値以上の衝撃力(図2中の矢印Aを参照)がかかると脱落するものである。前記第2取付手段は、前記灯具本体1の上部、たとえば、前記ランプハウジング2の上部でかつ後側の左右両側にそれぞれ設けられている2個の第2取付部11と、一端が前記車体4に取り付けられ、他端が前記第2取付部11に、前記灯具本体1の前面のランプレンズ3に斜め上方からの所定値以上の衝撃力がかかると脱落するように、脱落可能に取り付けられているブラケット12と、から構成されている。
【0014】
前記第2取付部11は、正面から見てL字形状の取付板を向かい合わせにして前記ランプハウジング2に一体に設けたものである。前記第2取付部11のほぼ中央には、長孔13が左右方向に設けられている。前記ブラケット12は、側面から見てコ字形状をなすものである。前記ブラケット12の上板には、ボルト孔14が設けられている。また、前記ブラケット12の下板には、肉厚部15と、肉薄部16と、フック部17とがそれぞれ設けられている。前記フック部17が前記長孔13に脱落可能に取り付けられるものである。
【0015】
以下、この実施例における車両用灯具および車両用灯具の取付構造の作用について説明する。まず、灯具本体1を第1取付手段および第2取付手段により車体4に取り付ける取り付け方について説明する。
【0016】
すなわち、ピン5、6および第2取付部11が一体に設けられているランプハウジング2と、ランプレンズ3と、光源と、リフレクタなどから灯具本体1を製造し、かつ、ブラケット12を製造する。この灯具本体1とブラケット12とを組み付ける。すなわち、ランプハウジング2の上部と第2取付部11との間にブラケット12の肉厚部16を差し込むとともに、第2取付部11の長孔13にブラケット12のフック部17を差し込む。
【0017】
それから、カーメーカーにおいて、ブラケット12を組み付けた灯具本体1を第1取付手段および第2取付手段により車体4に取り付ける。すなわち、灯具本体1のピン5を車体4の第1取付部9の透孔7に回転可能に取り付ける。また、灯具本体1のピン6を車体4の第1取付部10の凹部8に回転可能に取り付ける。さらに、灯具本体1のブラケット12を車体4にボルトナット18により取り付ける。これにより、灯具本体1は、第1取付手段および第2取付手段により、車体4の空間内に収納され、かつ、車体4に取り付けられる。この灯具本体1は、第1取付手段および第2取付手段により車体4に確実に取り付けられているので、灯具本体1が車両の走行時の振動などによりぶれることがなく、その結果、所定の配光制御が得られる。
【0018】
つぎに、第1取付手段および第2取付手段により車体4に取り付けられた灯具本体1の脱落について説明する。
【0019】
たとえば、車両の前部の左右に装備されている灯具本体1と人とが当たった場合、通常、灯具本体1が人よりも低い位置に位置するので、灯具本体1を基準とすると、灯具本体1の前面のランプレンズ3に斜め上方からの衝撃力(図2中の矢印Aを参照)がかかる。すると、灯具本体1は、第1取付手段の回転中心線O−Oを中心として図2中の矢印B方向(反時計方向)に回動し、これに伴なって、第2取付部11も同様に図4中の矢印B方向(反時計方向)に回動する。これにより、第2取付部11の長孔13の内面がブラケット12のフック部17を矢印B方向に押すので、ブラケット12の肉薄部16が変形しながらフック部17が図4中の矢印C方向に移動する。このフック部17の移動は、第2取付部11の長孔13の内面との間において、摩擦もしくは抵抗がある。
【0020】
灯具本体1と人とが当たった衝撃力が所定値以上であると、フック部17が長孔13から外れて、灯具本体1が車体4に対して後退、すなわち、後側に回動する。このために、衝撃力が緩和されて、人への衝撃力が軽減される。
【0021】
そして、第2取付部11から外れたブラケット12に損傷がなければ、このブラケット12を再利用して、灯具本体1を車体4に再度取り付けることができる。なお、ブラケット12に損傷があれば、この損傷したブラケット12を新たなブラケット12に交換することにより、灯具本体1を車体4に再度取り付けることができる。
【0022】
以下、この実施例における車両用灯具および車両用灯具の取付構造の効果について説明する。この実施例における車両用灯具および車両用灯具の取付構造は、灯具本体1の前面に斜め上方からの所定値以上の衝撃力がかかると第2取付手段が脱落し、これにより、障害物衝突時における衝撃の緩和を図るものである。このように、この実施例における車両用灯具および車両用灯具の取付構造は、第2取付手段が脱落するだけなので、灯具本体1を再利用することができ、灯具本体1を交換する必要がなく、その分、コスト安となる。また、この実施例における車両用灯具および車両用灯具の取付構造は、灯具本体1が第1取付手段および第2取付手段により車体に確実に取り付けられているので、灯具本体1が車両の走行時の振動などによりぶれることがなく、その結果、所定の配光制御が得られる。
【0023】
特に、この実施例における車両用灯具および車両用灯具の取付構造は、第1取付手段が2本のピン5、6と透孔7や凹部8とから構成されており、また、第2取付手段が第2取付部11とブラケット12とから構成されている。このために、この実施例における車両用灯具および車両用灯具の取付構造は、簡単な構造の第1取付手段および第2取付手段により灯具本体1を車体4に確実に取り付けることができる。しかも、この例では、第2取付部11とブラケット12とを取り付けるボルトナット18が2本で良いので、その分、部品点数が少なくかつ組み付け工程数が少なくて済み、製造コストを安価にすることができる。
【0024】
また、この実施例における車両用灯具および車両用灯具の取付構造は、第1取付手段の回転中心線O−Oが第2取付手段よりも灯具本体1の前方斜め下方に配置されている。このために、この実施例における車両用灯具および車両用灯具の取付構造は、自車両の灯具本体1が他車両やその他の障害物のほぼ同等の高さの箇所に当たった場合、灯具本体1の前面のランプレンズ3にはほぼ水平方向の衝撃力(図2中矢印IIIを参照)がかかるので、斜め上方からの衝撃力(図2中の矢印A)がかかる場合と比較して、灯具本体1が回動し難く車体4から簡単に脱落しない。
【0025】
なお、前記の実施例においては、車両の前部の左右に装備されるヘッドランプやフォグランプやフロントコンビネーションランプなどの前照灯について説明する。ところが、この発明においては、その他の車両用灯具、リアコンビネーションランプなどであっても良い。
【0026】
また、前記の実施例においては、灯具本体1に第1取付手段の2本のピン5、6を設け、車体4に第1取付手段の透孔7や凹部8を設けたものである。ところが、この発明においては、灯具本体1に透孔7や凹部8を設け、車体4に2本のピンを設けたものであっても良いし、または、灯具本体1に1本のピン5もしくは6と透孔7もしくは凹部8を設け、車体に4に1本のピン6もしくは5と凹部8もしくは透孔7を設けたものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明にかかる車両用灯具および車両用灯具の取付構造の実施例を示す灯具本体と車体と第1取付手段と第2取付手段との斜視図である。
【図2】同じく、灯具本体が第1取付手段および第2取付手段により車体に取り付けられている状態と脱落する状態とを示す側面図である。
【図3】同じく、図2におけるIII矢視図である。
【図4】同じく、第2取付手段の第2取付部とブラケットとの取付状態と脱落状態とを示す側面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 灯具本体
2 ランプハウジング
3 ランプレンズ
4 車体
5、6 ピン
7 透孔
8 凹部
9、10 第1取付部
11 第2取付部
12 ブラケット
13 長孔
14 ボルト孔
15 肉厚部
16 肉薄部
17 フック部
18 ボルトナット
A 斜め上方からの衝撃力
B 灯具本体の回動方向
C ブラケットの脱落方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
灯具本体を車体に取り付ける取付構造を有する車両用灯具において、
前記取付構造は、
前記灯具本体の下部を車体に回転可能に取り付ける第1取付手段と、
前記灯具本体の上部を車体に脱落可能に取り付け、かつ、前記灯具本体の前面に斜め上方からの所定値以上の衝撃力がかかると脱落する第2取付手段と、
を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第1取付手段は、前記灯具本体の下部に一直線上に2箇所設けられており、車体に一直線上に設けられた透孔や凹部に回転可能に取り付けられるピン、もしくは、車体に一直線上に設けられたピンが回転可能に取り付けられる透孔や凹部を有する第1取付部、のうち少なくともいずれか一方から構成されており、
前記第2取付手段は、前記灯具本体の上部に設けられている第2取付部と、一端が車体に取り付けられ、他端が前記第2取付部に、前記灯具本体の前面に斜め上方からの所定値以上の衝撃力がかかると脱落するように、脱落可能に取り付けられているブラケットと、から構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記第1取付手段の回転中心線は、前記第2取付手段よりも前記灯具本体の前方斜め下方に配置されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
灯具本体を車体に取り付ける車両用灯具の取付構造において、
前記取付構造は、
前記灯具本体の下部を車体に回転可能に取り付ける第1取付手段と、
前記灯具本体の上部を車体に脱落可能に取り付け、かつ、前記灯具本体の前面に斜め上方からの所定値以上の衝撃力がかかると脱落する第2取付手段と、
を備えることを特徴とする車両用灯具の取付構造。
【請求項5】
前記第1取付手段は、前記灯具本体の下部と車体とに一直線上に設けられた2本のピンと前記2本のピンが回転可能に取り付けられる透孔や凹部を有する2個の第1取付部とから構成されており、
前記第2取付手段は、前記灯具本体の上部に設けられている第2取付部と、一端が車体に取り付けられ、他端が前記第2取付部に、前記灯具本体の前面に斜め上方からの所定値以上の衝撃力がかかると脱落するように、脱落可能に取り付けられているブラケットと、から構成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の車両用灯具の取付構造。
【請求項6】
前記第1取付手段の回転中心線は、前記第2取付手段よりも前記灯具本体の前方斜め下方に配置されている、ことを特徴とする請求項4または5に記載の車両用灯具の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−103454(P2006−103454A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291365(P2004−291365)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】