説明

車両用灯具の取付構造

【課題】車体パネルの変形や精度とは無関係に、且つ、部品点数や組付工数の増加を招くことなく、車両用灯具を車体パネルに簡単且つ確実に取り付けることができる車両用灯具の取付構造を提供すること。
【解決手段】車両用灯具1の凸部2Bの外周にリブ3を突設し、断面コの字状のブラケット5を車両用灯具1の凸部2Bのリブ3とブラケット5が接するように嵌め込み、凸部2B及びブラケット5には孔7が設けてあり、該孔7を介して両者が接続できるタッピングスクリュー(締結具)6を備えており、該タッピングスクリュー6で締結された凸部2B及びブラケット5を車体パネル8の開口部8aに挿通した後にタッピングスクリュー6を締め付け、車両用灯具1のフランジ部2Aとブラケット5とで車体パネル8を挟持することによって車両用灯具1を車体パネル8に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具の車体パネルへの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具の車体パネルへの取付構造として、例えば特許文献1,2には図5、図6にそれぞれ示す構造が提案されている。
【0003】
即ち、図5は特許文献1において提案された車両用灯具(ハイマウントストップランプ)のランプカバー101の取付構造を示す断面図であり、図示の取付構造においては、車体パネル(ルーフパネル)102に形成された係止孔102aにスクリューグロメット103を挿着し、ランプカバー101に形成されたボス101Aに挿通するタッピングスクリュー104を前記スクリュウグロメット103にねじ込むことによってランプカバー101が車体パネル102に取り付けられる。
【0004】
又、図6は特許文献2において提案された車両用灯具のランプハウジング201の取付構造を示す断面図であり、図示の取付構造においては、ランプハウジング201に剛性フック201Aを一体に形成するとともに、別体の弾性フック202を取付ネジ203によってランプハウジング201に取り付け、ランプハウジング201に単一方向の押圧力を加えるだけで、剛性フック201Aと弾性フック202を車体パネル(板状ブラケット)204に形成された開口部204aに係合させて該ランプハウジング201を間にガスケット205を介して車体パネル204に取り付ける構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−071298号公報
【特許文献2】実開平2−112556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1において提案された図5に示す取付構造においては、ランプカバー101の取り付けが車体パネル102に挿着されたスクリュリューグロメット103にタッピングスクリュー104をねじ込むことによってなされるため、部品点数が増加するとともに、取付作業性が悪いという問題がある。
【0007】
特許文献2において提案された図6に示す取付構造においては、ガスケット205の反発によって車体パネル204が変形したり、車体パネル204の寸法精度が悪い場合には、剛性フック201Aと弾性フック202の車体パネル204の開口部204aへの係合が不十分となる他、ランプハウジング201と車体パネル204間のシール性が安定しないという問題がある。又、剛性フック201Aと弾性フック202の反発力が経時劣化等によって低下した場合には、ランプハウジング201が脱落する可能性がある。更に、ランプハウジング201が車体パネル204に正しくセットされたか否かを確認することができないという問題もある。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、車体パネルの変形や精度とは無関係に、且つ、部品点数や組付工数の増加を招くことなく、車両用灯具を車体パネルに簡単且つ確実に取り付けることができる車両用灯具の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、フランジ部と、背面に突出する凸部を備えた車両用灯具を車体パネルに取り付ける構造であって、
前記車両用灯具の凸部の外周にリブを突設し、断面コの字状のブラケットを前記車両用灯具の凸部のリブとブラケットが接するように嵌め込み、
前記凸部及び前記ブラケットには孔が設けてあり、該孔を介して両者が接続できる締結具を備えており、該締結具で締結された前記凸部及び前記ブラケットを前記車体パネルの開口部に挿通した後に前記締結具を締め付け、前記車両用灯具のフランジ部とブラケットとで車体パネルを挟持することによって車両用灯具を車体パネルに取り付けることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記締結具をタッピングスクリューで構成し、該タッピングスクリューを前記ブラケットに形成された孔を通して前記車両用灯具の凸部の背面に螺着することを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記締結具を前記車両用灯具の凸部に植設されたインサートボルトとこれに螺合するナットで構成し、前記ブラケットに形成された孔に前記インサートボルトを通し、該インサートボルトの端部に前記ナットを螺着することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記凸部に設けられたリブは、前記凸部と前記ブラケットとの締結時において前記ブラケットと接する面の一部をテーパ面としていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、断面コの字状のブラケットを車両用灯具の凸部に背面側から嵌め込むとともに、両者を締結具によって締結した状態で、車両用灯具の凸部をブラケットと共に車体パネルの開口部に通せば、互いに連結された車両用灯具とブラケットが車体パネルに仮止めされ、その状態から締結具を締め付ければ、ブラケットが車両用灯具に対して移動して該車両用灯具の凸部に突設されたリブに係合し、その開口部側が押し広げられる。そして、開口部の端面が押圧され、車両用灯具のフランジ部と車体パネルの開口部で挟持されて、車両用灯具が車体パネルに取り付けられるため、固定の安定性も確保できるものとなる。
【0014】
上述のように、車両用灯具の車体パネルへの取り付けに際してブラケットの開口部側が押し広げられるため、該ブラケットの開口側端部の車体の開口部周縁への係り代が拡大され、車体パネルの開口部が規定値に対して多少大きくても、ブラケットの開口側端部の車体の開口部周縁への係り代が十分確保され、車両用灯具が車体パネルに確実に取り付けられ、車体パネルに高い寸法精度が要求されない。そして、車両用灯具の車体パネルへの取り付けに際しては、別体のフックを取り付けるためのネジや車体パネルの孔に嵌め込むグロメット等の部品を要することなく、締結具を締め付けるだけの簡単な作業で車両用灯具を車体パネルに取り付けることができる。
【0015】
従って、本発明によれば、車体パネルの変形や精度とは無関係に、且つ、部品点数や組付工数の増加を招くことなく、車両用灯具を車体パネルに簡単且つ確実に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係る車両用灯具の取付構造を示す分解斜視図である。
【図2】(a)〜(c)は本発明の実施の形態1に係る車両用灯具の取付要領をその工程順に示す側断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る車両用灯具の取付構造を示す分解斜視図である。
【図4】(a)〜(c)は本発明の実施の形態2に係る車両用灯具の取付要領をその工程順に示す側断面図である。
【図5】特許文献1において提案された車両用灯具の取付構造を示す断面図である。
【図6】特許文献2において提案された車両用灯具の取付構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
<実施の形態1>
図1は本発明の実施の形態1に係る車両用灯具の取付構造を示す分解斜視図、図2(a)〜(c)は車両用灯具の取付要領をその工程順に示す側断面図である。
【0019】
図1に示すように、車両用灯具1の樹脂製のハウジング2には前記ハウジング2の長手方向に細長いフランジ部2Aが形成されており、ハウジング2のフランジ部2Aからは矩形ブロック状の凸部2Bが前記ハウジング2の背面側に向かって水平に突設されている。そして、ハウジング2の凸部2Bの外周面のうち、長手方向であって、その上下面の幅方向中央部には各2つのリブ3が幅方向に適当な間隔で一体に突設されている。各リブ3は、ハウジング2のフランジ部2Aの背面から後方に向かって垂直に起立するよう一体に突設されており、フランジ部2A寄りに部分的に形成され、その後端面は斜めにカットされたテーパ面とされている。又、ハウジング2の凸部2Bの背面にはその幅方向中央にネジ孔4が形成されている。
【0020】
図1において、5はポリアミド(PA)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂によって断面コの字状(チャンネル状)に成形されたブラケットであって、このブラケット5の縦壁5Aの幅方向中央にはタッピングスクリュー6が挿通するための円孔7が形成されている。
【0021】
次に、車両用灯具1の車体パネル8への取付要領を図2に基づいて説明する。
【0022】
車体パネル8には車両用灯具1のハウジング2に形成された凸部2Bとその上下面に突設されたリブ3が通過することができる程度の大きさの矩形の開口部8aが形成されており、この車体パネル8に取り付ける前の車両用灯具1のハウジング2の凸部2Bには、図2(a)に示すように、ブラケット5の開口部が背面側から嵌め込まれ、該ブラケット5に形成された円孔7にタッピングスクリュー6が通され、該タッピングスクリュー6がハウジング2の凸部2Bの背面に形成されたネジ孔4に螺合される。このとき、ブラケット5は車両用灯具1のハウジング2に形成されたリブ3には係合しておらす、該ブラケット5の縦壁5Aとハウジング2の凸部2Bの背面との間には前後方向隙間δが形成されている。
【0023】
上述のように車両用灯具1のハウジング2の凸部2Bにブラケット5が部分的に嵌め込まれ、両者がタッピングスクリュー6によって連結されると、図2(b)に示すように、車両用灯具1のハウジング2の凸部2Bをこれに嵌め込まれたブラケット5と共に車体パネル8の開口部8aに通し、車両用灯具1の前面フランジ部1Aがガスケット9を介して車体パネル8の開口部8aの周縁に密着するまで該車両用灯具1を押し込む。すると、車両用灯具1のハウジング2の凸部2Bに突設されたリブ3が車体パネル8の開口部8aに係合し、車両用灯具1がブラケット5と共に車体パネル8に仮固定される。
【0024】
上述のように車両用灯具1がブラケット5と共に車体パネル8に仮固定された状態において、タッピングスクリュー6を不図示の工具によって回してこれをハウジング2の凸部2Bの背面に形成されたネジ孔4にねじ込めば、図2(c)に示すように、ブラケット5が車体パネル8側(前方)へと移動し、その開口部内周がハウジング2の凸部2Bの上下面に突設されたリブ3に係合し、該ブラケット5の開口部の上下が外方(図示矢印方向)へと押し広げられる。そして、押し広げられたブラケット5の開口部端面が車体パネル8の開口部8aの周縁に押圧されると、ブラケット5と車両用灯具1のハウジング2の前面フランジ部2Aとで車体パネル8が挟持されるため、車両用灯具1が車体パネル8に取り付けられる。
【0025】
以上のように、本実施の形態に係る取付構造においては、車両用灯具1の車体パネル8への取り付けに際してブラケット5の開口部側がリブ3によって押し広げられるため、該ブラケット5の開口側端部の車体パネル8の開口部8a周縁への係り代が拡大され、車体パネル8の開口部8aが設計値に対して多少大きくても、ブラケット5の開口側端部の車体パネル8の開口部8a周縁への係り代が十分確保され、車両用灯具1が車体パネル8に確実に取り付けられ、車体パネル8に高い寸法精度が要求されない。そして、車両用灯具1の車体パネル8への取り付けに際しては、別体のフックを取り付けるためのネジや車体パネルの孔に嵌め込むグロメット等の部品を要することなく、タッピンクスクリュー6を締め付けるだけの簡単な作業で車両用灯具1を車体パネル8に取り付けることができる。
【0026】
従って、車体パネル8の変形や精度とは無関係に、且つ、部品点数や組付工数の増加を招くことなく、車両用灯具1を車体パネル8に簡単且つ確実に取り付けることができる。
【0027】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2を図3及び図4に基づいて説明する。
【0028】
図3は本発明の実施の形態2に係る車両用灯具の取付構造を示す分解斜視図、図4(a)〜(c)は車両用灯具の取付要領をその工程順に示す側断面図であり、これらの図においては図1及び図2において示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0029】
本実施の形態に係る取付構造では、図3に示すように、ブラケット5を車両用灯具1のハウジング2に連結するための締結具として、車両用灯具1のハウジング2の凸部2Bに植設されたインサートボルト10とこれに螺合するナット11を使用したものであって、他の構成は前記実施の形態のそれと同じである。
【0030】
而して、本実施の形態に係る取付構造においては、車両用灯具1は図4(a)〜(c)に示す要領で車体パネル8に取り付けられる。
【0031】
即ち、車体パネル8に取り付ける前の車両用灯具1のハウジング2の凸部2Bには、図4(a)に示すように、ブラケット5の開口部が背面側から嵌め込まれ、車両用灯具1のハウジング2の凸部2Bに植設されたインサートボルト10がブラケット5に形成された円孔7に通され、該インサートボルト10のブラケット5から突出する先端部にナット11が螺合され、車両用灯具1とブラケット5とが連結される。このとき、ブラケット5は車両用灯具1のハウジング2に形成されたリブ3には係合しておらす、該ブラケット5の縦壁5Aとハウジング2の凸部2Bの背面との間には前後方向隙間δが形成されている。
【0032】
上述のように車両用灯具1のハウジング2の凸部2Bにブラケット5が部分的に嵌め込まれ、両者がインサートボルト10とナット11によって連結されると、図4(b)に示すように、車両用灯具1のハウジング2の凸部2Bをこれに嵌め込まれたブラケット5と共に車体パネル8の開口部8aに通し、車両用灯具1のフランジ部2Aがガスケット9を介して車体パネル8の開口部8aの周縁に密着するまで該車両用灯具1を押し込む。すると、車両用灯具1のハウジング2の凸部2Bに突設されたリブ3が車体パネル8の開口部8aに係合し、車両用灯具1がブラケット5と共に車体パネル8に仮固定される。
【0033】
上述のように車両用灯具1がブラケット5と共に車体パネル2に仮固定された状態において、ナット11を不図示の工具によって回せば、図4(c)に示すように、ブラケット5が車体パネル8側(前方)へと移動し、その開口部内周がハウジング2の凸部2Bの上下面に突設されたリブ3に係合し、該ブラケット5の開口部の上下が外方(図示矢印方向)へと押し広げられる。そして、押し広げられたブラケット5の開口部端面が車体パネル8の開口部8aの周縁に押圧されると、ブラケット5と車両用灯具1のハウジング2のフランジ2Aとで車体パネル8が挟持されるため、車両用灯具1が車体パネル8に取り付けられ、本実施の形態においても前記実施の形態1と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、ヘッドライト、リヤコンビネーションランプ、ストップランプ等を含む任意の車両用灯具の車体パネルへの固定構造に対して適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 車両用灯具
2 ハウジング
2A ハウジングのフランジ部
2B ハウジングの凸部
3 リブ
4 ネジ孔
5 ブラケット
5A ブラケットの縦壁
6 タッピングスクリュー(締結具)
7 円孔
8 車体パネル
8a 車体パネルの開口部
9 ガスケット
10 インサートボルト(締結具)
11 ナット(締結具)
δ 隙間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ部と、背面に突出する凸部を備えた車両用灯具を車体パネルに取り付ける構造であって、
前記車両用灯具の凸部の外周にリブを突設し、断面コの字状のブラケットを前記車両用灯具の凸部のリブとブラケットが接するように嵌め込み、
前記凸部及び前記ブラケットには孔が設けてあり、該孔を介して両者が接続できる締結具を備えており、該締結具で締結された前記凸部及び前記ブラケットを前記車体パネルの開口部に挿通した後に前記締結具を締め付け、前記車両用灯具のフランジ部とブラケットとで車体パネルを挟持することによって車両用灯具を車体パネルに取り付けることを特徴とする車両用灯具の取付構造。
【請求項2】
前記締結具をタッピングスクリューで構成し、該タッピングスクリューを前記ブラケットに形成された孔を通して前記車両用灯具の凸部の背面に螺着することを特徴とする請求項1記載の車両用灯具の取付構造。
【請求項3】
前記締結具を前記車両用灯具の凸部に植設されたインサートボルトとこれに螺合するナットで構成し、前記ブラケットに形成された孔に前記インサートボルトを通し、該インサートボルトの端部に前記ナットを螺着することを特徴とする1記載の車両用灯具の取付構造。
【請求項4】
前記凸部に設けられたリブは、前記凸部と前記ブラケットとの締結時において前記ブラケットと接する面の一部をテーパ面としていることを特徴とする請求項1記載の車両用灯具の取付構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−148397(P2011−148397A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11088(P2010−11088)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】