説明

車両用灯具の製造方法及び車両用灯具

【課題】フィルム状のシート部材を真空成形することで形成されるレンズの透明な部位に、灯室の内部を見え難くする形状を形成できる車両用灯具の製造方法及び車両用灯具の提供を課題とする。
【解決手段】透明なフィルム状のシート部材52を真空成形用金型60によって真空成形することで車両用灯具20のレンズ50を製造する方法であって、真空成形用金型60に設けられた複数の凸部62及び凹部64により、レンズ50に凹凸形状を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具の製造方法及び車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具の射出成形によって形成されるレンズの透明な部位に、複数本の突条部を並列配置した形状(ステップ)を設け、外部から灯室の内部を見え難くして、車両用灯具の外観上の見映えを改善するようにした構成は、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−296609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、厚みが略均一で平坦なフィルム状のシート部材を真空成形することによって、透明な部位を有するレンズを形成する場合、そのレンズは平坦な肉薄シート状又は湾曲した肉薄シート状になるため、その透明な部位に、外部から灯室の内部を見え難くする形状を形成することが困難であった。
【0004】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、フィルム状のシート部材を真空成形することで形成されるレンズの透明な部位に、灯室の内部を見え難くする形状を形成できる車両用灯具の製造方法及び車両用灯具を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の車両用灯具の製造方法は、透明なフィルム状のシート部材を真空成形用金型によって真空成形することで車両用灯具のレンズを製造する方法であって、前記真空成形用金型に設けられた複数の凸部、凹部、又は凹凸部により、前記レンズに凹凸形状を形成することを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、透明なフィルム状シート部材を真空成形することによってレンズを形成する際、その真空成形用金型には、複数の凸部、凹部、又は凹凸部が設けられているので、そのレンズに凹凸形状を形成することができる。したがって、その凹凸形状により、灯室の内部を見え難くすることができる。
【0007】
また、本発明に係る請求項2に記載の車両用灯具の製造方法は、一部にランプ機能色が印刷された透明なフィルム状のシート部材を真空成形用金型によって真空成形することで車両用灯具の多色レンズを製造する方法であって、前記真空成形用金型に設けられた複数の凸部、凹部、又は凹凸部により、前記多色レンズのランプ機能色が印刷されていない透明な部位に凹凸形状を形成することを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、フィルム状シート部材を真空成形することによって、透明な部位を有する多色レンズを形成する際、その真空成形用金型には、複数の凸部、凹部、又は凹凸部が設けられているので、その多色レンズの透明な部位に凹凸形状を形成することができる。したがって、その凹凸形状により、灯室の内部を見え難くすることができる。
【0009】
また、本発明に係る請求項3に記載の車両用灯具は、光源が収容された灯室と、透明なフィルム状のシート部材を真空成形することによって形成されるとともに、前記灯室の内部を見え難くする凹凸形状が少なくとも一部に形成され、前記灯室を塞ぐように設けられたレンズと、を備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、灯室の内部を見え難くすることができる。したがって、車両用灯具の外観上の見映えを向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、フィルム状のシート部材を真空成形することで形成されるレンズの透明な部位に、灯室の内部を見え難くする形状を形成できる車両用灯具の製造方法及び車両用灯具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の最良な実施の形態について、図面に示す実施例を基に詳細に説明する。図1は車両の車体後部側を示す概略斜視図であり、図2は本実施形態に係る車両用灯具(リアコンビネーションランプ20)を示す概略側断面図である。そして、図3は多色レンズを示す概略正面図であり、図4は多色レンズを真空成形する真空成形用金型を示す概略側断面図である。
【0013】
また、図5は多色レンズの透明色部位を示す概略側面図であり、図6は多色レンズの透明色部位の変形例を示す概略側断面図である。そして、図7、図8は多色レンズの透明色部位の変形例を示す概略正面図である。なお、各図において適宜示す矢印UPは車体上方向を示し、矢印FRは車体前方向を示す。
【0014】
図1で示すように、車両10の車体後方側端部には、リアバンパ14が車幅方向に配置されている。そして、リアバンパ14の車体上方側で、かつ車幅方向両端部には、車両用灯具の一例としてのリアコンビネーションランプ20が左右一対で配置されている。このリアコンビネーションランプ20においては、テールランプ(ブレーキランプ)22、リアターンシグナルランプ24、バックアップランプ26が車体上下方向に並設されている(図2参照)。
【0015】
また、図2で示すように、テールランプ22、リアターンシグナルランプ24、バックアップランプ26は、それぞれのランプハウジング32、34、36内に、光源(例えばバルブやLED(発光ダイオード)等)30と、光源30からの拡散光を反射したり、後方車両のヘッドランプから照射された光を反射する反射板である凹鏡面状のリフレクタ(図示省略)と、を収容している。
【0016】
光源30からの光を照射可能に開口された各ランプハウジング32、34、36の裏面には、支持突起38が複数個ずつ突設されており、各支持突起38が、車体12のリアエンドパネル16に固着された複数の支持部材18に、それぞれ支持されるようになっている。これにより、各ランプハウジング32、34、36が車体12に対して固定される構成である。
【0017】
そして、各ランプハウジング32、34、36の略中央位置には、光源30を装着するためのソケット(バックカバー)28が取り付けられている。ソケット28には、各ランプハウジング32、34、36の裏側となる車体前方側へ向けて電極が突設されており、この電極に電気配線(図示省略)が接続されて、光源30へ通電可能とされている。
【0018】
また、真ん中に位置するランプハウジング34の開口部34Aの上端部と、上側に位置するランプハウジング32の開口部32Aの下端部とが一体に連結され、真ん中に位置するランプハウジング34の開口部34Aの下端部と、下側に位置するランプハウジング36の開口部36Aの上端部とが一体に連結されており、各連結部分によって、各灯室40を仕切る遮光壁42、44がそれぞれ形成されるようになっている。
【0019】
また、各ランプハウジング32、34、36の開口部32A、34A、36Aを閉塞し、各ランプハウジング32、34、36毎に灯室40を形成する樹脂製の多色レンズ50が単一で設けられている。この多色レンズ50は、光源30から発せられ、図示しないリフレクタにより反射された光を透過させて発光させるようになっており、各灯室40別のランプ機能色に色分けされている。
【0020】
すなわち、この多色レンズ50は、図4で示すように、ランプ機能色(本実施例では赤色R)が裏面の所定位置に印刷された透明(又は半透明)なフィルム状のシート部材52を、真空成形することによって形成されており、例えば図3で示すように、上側のテールランプ22が赤色Rとされ、中央のリアターンシグナルランプ24と下側のバックアップランプ26が透明色(クリア色)Tとされている。
【0021】
なお、リアターンシグナルランプ24は黄色(アンバー色)で発光される。そのため、中央の光源30には黄色のバルブやLED等が設定され、リアターンシグナルランプ24における多色レンズ50のレンズ色が透明色Tとされていても、リアターンシグナルランプ24がランプ機能色である黄色に発光されるようになっている。
【0022】
そして、その多色レンズ50の透明色T部位には、図5で示すように、上下方向に連続する凹凸形状(波形状)56が形成されている。すなわち、図4で示すように、真空成形用金型60の所定位置(多色レンズ50の透明色T部位に相当する部位)には、複数の凸部62及び凹部64(凹凸部)が上下方向に連続して(間隔を空けずに)形成されており、この凸部62及び凹部64により、多色レンズ50の透明色T部位に、上記凹凸形状56が形成されるようになっている。
【0023】
また、多色レンズ50において、異なるランプ機能色間(赤色R部位と透明色T部位の間)が、遮光壁42と対向する境界部(見切り部)54とされている。そして、各遮光壁42、44の先端部(車体後方側端部)は、多色レンズ50の裏面に非接触状態で対向配置されるようになっている(図2参照)。
【0024】
また、多色レンズ50の板厚D(図5参照)は、例えばD=0.3mm〜1.0mmとされている。ここで、板厚Dの下限を0.3mmとしているのは、板厚Dが0.3mm未満の多色レンズ50を製造するのが困難であり、板厚Dの上限を1.0mmとしているのは、板厚Dが1.0mmより大きいと、フィルム状シート部材52の真空成形によって多色レンズ50を成形し難いからである。つまり、板厚Dを0.3mm〜1.0mmとすることにより、多色レンズ50を真空成形により容易に成形できる構成である。
【0025】
以上のような構成のリアコンビネーションランプ(車両用灯具)20において、次にその作用について説明する。本実施例に係る多色レンズ50は、所定部位がランプ機能色(本実施例では赤色R)で印刷された透明なフィルム状シート部材52を真空成形することによって形成されている。
【0026】
すなわち、図4で示すように、フィルム状シート部材52を加熱するとともに真空成形用金型60に吸引して真空成形する。このとき、フィルム状シート部材52のランプ機能色(赤色R)が印刷されていない透明な部位を、真空成形用金型60に上下方向に連続して形成された複数の凸部62及び凹部64上に配置する。これにより、多色レンズ50の透明色T部位には、図5で示すように、上下方向に連続する凹凸形状(波形状)56が形成される。
【0027】
したがって、多色レンズ50をランプハウジング32、34、36に接合して、リアコンビネーションランプ20を組み立てた際には、その多色レンズ50の透明色T部位に形成された凹凸形状56により、灯室40の内部(例えば光源30)が外部から見え難くなる(灯室40の内部を隠蔽できる)。よって、リアコンビネーションランプ20の外観上の見映えを向上させることができる。
【0028】
なお、多色レンズ50の透明色T部位に形成する凹凸形状は、図5で示すような上下方向に連続した凹凸形状56に限定されるものではなく、例えば図6で示すように、上下方向に断続した(凸部58A間或いは凹部58B間にストレート部58Cが形成された)凹凸形状58としてもよい。
【0029】
この図6で示す凹凸形状58は、真空成形用金型60に上下方向に間隔を空けて凸部62のみ(又は凹部64のみ)を形成することで成形することができる。また、この図6で示す凹凸形状58の場合は、図5で示す凹凸形状56よりも製造し易い利点があるが、ストレート部58Cから灯室40の内部が見えるおそれがある。
【0030】
また、多色レンズ50の透明色T部位に形成する凹凸形状は、例えば図7で示すような凹凸形状としてもよい。すなわち、真空成形用金型60に車幅方向に連続して(間隔を空けずに)凸部62及び凹部64を形成したり、車幅方向に間隔を空けて凸部62のみ(又は凹部64のみ)を形成することで、多色レンズ50の透明色T部位に、車幅方向に連続した凹凸形状56又は車幅方向に断続した凹凸形状58が成形されるようにしてもよい。
【0031】
更に、多色レンズ50の透明色T部位に形成する凹凸形状は、例えば図8で示すような凹凸形状としてもよい。すなわち、真空成形用金型60に複数の半球状凸部又は半球状凹部(共に図示省略)を規則的(或いは不規則)に並べて形成し、多色レンズ50の透明色T部位に、複数の半球状凸部57A又は半球状凹部(図示省略)が規則的(或いは不規則)に配置された凹凸形状57が成形されるようにしてもよい。
【0032】
何れにしても、真空成形用金型60の所定位置(多色レンズ50の透明色T部位に相当する部位)に複数の凸部62及び凹部64(凹凸部)を形成したり、複数の凸部62のみ(又は複数の凹部64のみ)を形成することにより、フィルム状シート部材52を真空成形することによって形成される多色レンズ50の透明色T部位に、凹凸形状56、57、58を形成することができる。したがって、その透明色T部位における灯室40の内部を外部から見え難くすることができる。
【0033】
以上、本実施形態に係る車両用灯具及びその製造方法をリアコンビネーションランプ20に適用した場合について説明したが、本実施形態に係る車両用灯具及びその製造方法は、図示の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。
【0034】
例えば、全体的に透明なレンズを備えたヘッドランプ等にも、本実施形態に係る車両用灯具及びその製造方法を適用することが可能である。すなわち、透明なフィルム状シート部材52を真空成形することによって形成されたレンズを備えたヘッドランプの場合には、その透明なレンズの少なくとも一部に、凹凸形状56、57、58を形成するような構成にしてもよい。
【0035】
また、本実施例では、リアターンシグナルランプ24とバックアップランプ26における多色レンズ50のレンズ色を共に透明色Tとし、ランプ機能色の違いは、光源30の色を変えることで対応した。すなわち、リアターンシグナルランプ24の光源30は黄色のバルブやLED等で構成し、バックアップランプ26の光源30は白色のバルブやLED等で構成した。
【0036】
しかしながら、リアターンシグナルランプ24とバックアップランプ26のランプ機能色の違いは、多色レンズ50のレンズ色の違いによって対応する構成にしてもよい。すなわち、リアターンシグナルランプ24のレンズ色を黄色とし、バックアップランプ26のレンズ色を透明色Tとしてもよい。この場合には、バックアップランプ26に対応する多色レンズ50の透明色T部位にのみ、凹凸形状56、57、58を形成すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】車両の車体後部側を示す概略斜視図
【図2】車両用灯具(リアコンビネーションランプ)を示す概略側断面図
【図3】多色レンズを示す概略正面図
【図4】多色レンズを真空成形する真空成形用金型を示す概略側断面図
【図5】多色レンズの透明色部位を示す概略側面図
【図6】多色レンズの透明色部位の変形例を示す概略側断面図
【図7】多色レンズの透明色部位の変形例を示す概略正面図
【図8】多色レンズの透明色部位の変形例を示す概略正面図
【符号の説明】
【0038】
10 車両
20 リアコンビネーションランプ(車両用灯具)
22 テールランプ
24 リアターンシグナルランプ
26 バックアップランプ
30 光源
32 ランプハウジング
34 ランプハウジング
36 ランプハウジング
40 灯室
42 遮光壁
44 遮光壁
50 多色レンズ(レンズ)
52 シート部材
54 境界部
56 凹凸形状
57 凹凸形状
58 凹凸形状
60 真空成形用金型
62 凸部
64 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なフィルム状のシート部材を真空成形用金型によって真空成形することで車両用灯具のレンズを製造する方法であって、
前記真空成形用金型に設けられた複数の凸部、凹部、又は凹凸部により、前記レンズに凹凸形状を形成することを特徴とする車両用灯具の製造方法。
【請求項2】
一部にランプ機能色が印刷された透明なフィルム状のシート部材を真空成形用金型によって真空成形することで車両用灯具の多色レンズを製造する方法であって、
前記真空成形用金型に設けられた複数の凸部、凹部、又は凹凸部により、前記多色レンズのランプ機能色が印刷されていない透明な部位に凹凸形状を形成することを特徴とする車両用灯具の製造方法。
【請求項3】
光源が収容された灯室と、
透明なフィルム状のシート部材を真空成形することによって形成されるとともに、前記灯室の内部を見え難くする凹凸形状が少なくとも一部に形成され、前記灯室を塞ぐように設けられたレンズと、
を備えたことを特徴とする車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−153114(P2010−153114A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327952(P2008−327952)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】