説明

車両用灯具及びそのリフレクタ

【課題】光源の熱によるリフレクタの反射面の捩れやうねりの発生を抑えられるようにする。
【解決手段】車両用灯具1が、バルブ4と、リフレクタ5と、を備える。リフレクタ5が、前側に凹面状の内面8を有し、後ろ側に凸面状の外面9を有し、内面8と外面9の間に厚みを有したリフレクタ本体6と、内面8に形成された反射面10と、外面9のうちバルブ4の上の領域に形成された凹部11と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具及びそのリフレクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の前照灯、補助前照灯及び信号灯等にはBMC(バルクモールディングコンパウンド)リフレクタが多く用いられており、発光ダイオード及びバルブ等の光源から発した光がリフレクタによって反射されることによって、所定の配光パターンが形成される(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。BMCリフレクタは、ガラス繊維強化樹脂の成形品の表面に反射膜をコーティングしたものである。ガラス繊維強化樹脂の成形技術が向上し、リフレクタの反射面の形状が精密に設計されることで、配光が所定の規格を満たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−226767号公報
【特許文献2】特開平8−138417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リフレクタが光源の前を除く周囲を囲うように設けられているから、発光した光源から発した熱によってリフレクタが加熱される。特に、リフレクタの内側の面が外側の面よりも高温に加熱され、リフレクタの内側の面と外側の面の間には温度差が生じる。そのため、リフレクタの内側の面が外側の面よりも膨張しやすい。そうすると、リフレクタの反射面に捩れやうねりが生じ、配光特性が変化してしまう。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、光源の熱によるリフレクタの反射面の捩れやうねりの発生を抑えられるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明に係る車両用灯具は、光源と、リフレクタと、を備える車両用灯具において、前記リフレクタが、前記光源の周囲に凹面状の内面を有し、前記内面の反対側に凸面状の外面を有し、前記内面と前記外面の間に厚みを有したリフレクタ本体と、前記内面に形成された反射面と、前記外面のうち前記光源の上の領域に形成された凹部と、を有することを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る車両用灯具のリフレクタは、車両用灯具のリフレクタにおいて、光源の周囲に凹面状の内面を有し、前記内面の反対側に凸面状の外面を有し、前記内面と前記外面の間に厚みを有したリフレクタ本体と、前記内面に形成された反射面と、前記外面のうち前記光源の上の領域に形成された凹部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
凹部が光源の上にあるから、リフレクタ本体が凹部の領域において最も加熱されやすく、リフレクタ本体の前側の内面から後ろ側の外面にかけての温度勾配が大きくなる。ところが、本発明によれば、リフレクタ本体の厚みは、凹部が形成された領域、つまり、光源の上の領域において薄い。そのため、前側の内面における温度と後ろ側の外面における温度との差が小さくなる。よって、反射面に捩れやうねりが発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】車両用灯具の鉛直断面図である。
【図2】車両用灯具のリフレクタの背面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0010】
図1は、車両用灯具1の鉛直断面図である。図2は、この車両用灯具1のリフレクタ5の背面斜視図である。なお、以下の説明において、「前」とは、車両用灯具1から発する光の進む向きである。
【0011】
この車両用灯具1は、前照灯、補助前照灯又は信号灯として用いられるものである。図1において、符号Axで示される線が車両用灯具1の光軸であり、その光軸Ax1が前後方向に延びている。
【0012】
車両用灯具1は、ハウジング2、フロントカバー3、バルブ4及びリフレクタ5等を備える。
【0013】
ハウジング2は、中空(灯室)を有した箱状に設けられており、ハウジング2の前面が開口している。フロントカバー3がハウジング2の前面開口に組み付けられ、その前面開口がフロントカバー3によって閉塞されている。フロントカバー3は、透明であって、透光性を有する。フロントカバー3は、光を素通しするものでもよいし、レンズ作用を有するものでもよい。
【0014】
リフレクタ5は、リフレクタ本体6、反射面10及び凹部11を有する。
【0015】
リフレクタ本体6は、ハウジング2内に配置されている。ハウジング2に対するリフレクタ本体6の取付角度が光軸調整機構によって上下左右に調整されることで、光軸Axの向きが調整される。
【0016】
リフレクタ本体6が椀状(カップ状)に成形され、リフレクタ本体6の開口が前方に向けられている。リフレクタ本体6は、前側に内面8を有し、内面8の反対側であって後ろ側に外面9を有し、更に前側の内面8と後ろ側の外面9の間に厚みを有する。リフレクタ本体6の内面8が放物面を基調とした凹面状に形成されており、リフレクタ本体6の外面9が凸面状に形成されている。
【0017】
リフレクタ本体6は合成樹脂からなり、より具体的にはガラス繊維強化樹脂(例えば、ガラス繊維強化不飽和ポリエステル樹脂、ガラス繊維強化エポキシ樹脂)からなる。例えば、リフレクタ本体6は、BMC(Bulk Molding Compound:ガラス短繊維と不飽和ポリエステル樹脂を混練して、その混練物を塊状又はペレット状に硬化した予備成形品)を成形加工して得られたものである。
【0018】
リフレクタ本体6には、バルブ4が装着されている。具体的には、リフレクタ本体6の頂点部分には装着孔7が外面9から内面8へ前後に貫通するように形成され、バルブ4がリフレクタ本体6に差し込まれて、そのバルブ4がリフレクタ本体6の内側にまで突き出て、そのバルブ4がリフレクタ本体6に固定されている。リフレクタ本体6の内面8がバルブ4の発光源(バルブ4がハロゲン電球や白熱電球の場合には、フィラメントが発光源であり、バルブ4が放電灯である場合には、発光管が発光源である。)から離間してその発光源の周囲(但し、発光源の前を除く)に配置される。なお、装着孔7がリフレクタ本体6の頂点部分ではなく、頂点部分から左、右又は下等(但し、上以外)にずれた位置でリフレクタ本体6を貫通し、バルブ4の長手方向が前後方向に対して交差するようバルブ4がその装着孔7に装着されていてもよい。
【0019】
バルブ4は、ハロゲン電球、白熱電球、メタルハライド放電灯、高圧ナトリウム放電灯、キセノン放電灯、高輝度放電灯その他のバルブである。なお、光源がバルブ4ではなく、発光ダイオードであってもよい。
【0020】
リフレクタ本体6の内面8には、アルミ蒸着、銀塗装等によって反射膜が成膜されて、その内面8には反射面10が形成されている。反射面10が放物面を基調とした面であるから、反射面10によって焦点Fがリフレクタ本体6の内側に設定され、バルブ4の発光源が焦点Fに又はその近傍に位置する。そのため、反射面10は、バルブ4の発光源から発した光を前方に反射する。
反射面10が複数の領域に区分けされており、それぞれの領域によって反射する光の向きが調整されている。従って、リフレクタ5は放物面系のマルチリフレクタである。
【0021】
リフレクタ本体6の外面9のうちバルブ4の上方の領域には、凹部11が凹設されている。そのため、凹部11の部分におけるリフレクタ本体6の厚みが、凹部11以外の部分におけるリフレクタ本体6の厚みよりも薄い。凹部11の形状は略矩形状であるが、円形、楕円形、多角形その他の形状であってもよい。
【0022】
バルブ4が点灯すると、バルブ4が発熱するので、リフレクタ本体6が加熱されて、リフレクタ本体6が高温になる。特に、リフレクタ本体6のうちバルブ4の上の部分が他の部分よりも加熱されやすい。
【0023】
バルブ4がリフレクタ本体6の内側に配置されているから、温度勾配がリフレクタ本体6の厚みに生じる。具体的には、リフレクタ本体6の温度は前側の内面8から後ろ側の外面9に向かうにつれて漸増し、内面8と外面9の間に温度差が生じる。リフレクタ本体6が厚くなるにつれて、内面8と外面9の間に温度差が大きくなる。従って、リフレクタ本体6が厚くなるにつれて、内面8における熱膨張と外面9における熱膨張の差が大きくなる。
【0024】
ところが、凹部11がリフレクタ本体6の外面9に凹設されているから、凹部11の底から内面8までの厚さが薄い。そのため、内面8における熱膨張と凹部11の底における熱膨張の差を小さくすることができる。それにより、反射面10の捩れやうねりの発生を抑えることができる。
【0025】
特に、凹部11が形成された位置はバルブ4の上方であるから、内面8と凹部11の底との間の厚みに生じる温度勾配が凹部11以外の部分よりも大きい。そうであっても、凹部11の底から内面8までの厚さが0.2〜1.0mm程度と薄いから、内面8のうちその凹部11の反対側の領域と凹部11の底の温度差を小さくすることができる。よって、反射面10のうち最も加熱されやすい部分の捩れやうねりを最小限に抑えることができる。
【0026】
加熱による反射面10の変形を最小限に抑えられるから、加熱による配光特性の変化や光軸Axのずれを防止することができる。
【0027】
リフレクタ本体6が合成樹脂からなるから、金属の場合よりも温度勾配が大きい。よって、凹部11の形成によって反射面10の捩れやうねりの発生抑制は、合成樹脂製のリフレクタ本体6に特に有効である。車両用灯具1が前照灯又は補助前照灯である場合、バルブ4の発光強度が強くて、リフレクタ本体6が高温に加熱されやすいので、反射面10の捩れやうねりの発生を凹部11によってより効率的に抑えることができる。
【0028】
リフレクタ本体6の全体が薄くなっているのではなく、凹部11が形成されている領域のみで薄くなっているから、リフレクタ本体6の強度低下を招かない。
【0029】
また、凹部11以外の領域ではリフレクタ本体6が厚くなっているので、リフレクタ本体6を成形する際に用いる金型のキャビティは、凹部11以外の領域で厚くなっている。そのため、リフレクタ本体6の成形時、樹脂の流動性を確保することができ、リフレクタ本体6にボイドが発生しにくい。
【0030】
車両用灯具1をプロジェクタ灯具に変更してもよい。車両用灯具1がプロジェクタ灯具である場合、投影レンズがバルブ4とフロントカバー3の間に配置され、その投影レンズがレンズホルダ等を介してリフレクタ本体6に取り付けられている。また、リフレクタ本体6の内面8が楕円面に形成され、反射面10が楕円面系反射面であり、反射面10の第一焦点がバルブ4の発光源又はその近傍に設定され、反射面10の第二焦点が投影レンズの焦点又はその近傍に設定される。
【0031】
上記実施形態では、リフレクタ本体6が、椀状に設けられていて、バルブ4の発光源から離間してバルブ4の発光源の上、下、左、右及び後ろの範囲を包囲している。それに対して、リフレクタ本体6が、半ドーム状に設けられていて、バルブ4の発光源から離間してバルブ4の発光源の上、左、右及び後ろの範囲を包囲していてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 車両用灯具
4 バルブ
5 リフレクタ
6 リフレクタ本体
8 内面
9 外面
10 反射面
11 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、リフレクタと、を備える車両用灯具において、
前記リフレクタが、
前記光源の周囲に凹面状の内面を有し、前記内面の反対側に凸面状の外面を有し、前記内面と前記外面の間に厚みを有したリフレクタ本体と、
前記内面に形成された反射面と、
前記外面のうち前記光源の上の領域に形成された凹部と、を有することを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
車両用灯具のリフレクタにおいて、
光源の周囲に凹面状の内面を有し、前記内面の反対側に凸面状の外面を有し、前記内面と前記外面の間に厚みを有したリフレクタ本体と、
前記内面に形成された反射面と、
前記外面のうち前記光源の上の領域に形成された凹部と、を備えることを特徴とする車両用灯具のリフレクタ。

【図1】
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【図2】
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