説明

車両用灯具

【課題】外形寸法を小さくし、かつ、光源からの光利用効率の高い車両用灯具を提供する。
【解決手段】灯具光軸上に配置された投影レンズと、灯具光軸上に配置された光源と、前記投影レンズと前記光源の間に配置されたシェードと、前記光源からの光を反射し前記投影レンズの焦点付近に集光させた後、前記投影レンズを透過させ前方に照射することにより基本配光パターンを形成する第1反射面と、前記第1反射面の前記投影レンズ側端部近傍に配置され、前記光源からの光を前記光源の前記投影レンズ側の端部近傍に向けて反射する第2反射面と、前記光源の前記投影レンズ側の端部近傍に配置され、前記第2反射面からの反射光を反射し前記投影レンズの焦点付近に集光させた後、前記投影レンズを透過させ前方に照射することにより前記基本配光パターンに重畳される付加配光パターンを形成する第3反射面と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に係り、特に従来のプロジェクタ型前照灯と比較して、外形寸法を小さくし、かつ、光源からの光利用効率の高い車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、投影レンズ、光源、投影レンズと光源の間に配置されたシェード、光源を包囲するように配置された反射面等を備えたプロジェクタ型前照灯が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
図4は、特許文献1に記載のプロジェクタ型前照灯を説明するための側面図である。
【0004】
図4に示すように、特許文献1に記載のプロジェクタ型前照灯は、投影レンズ10´、光源バルブ20´、投影レンズ10´と光源バルブ20´の間に配置されたシェード30´、光源バルブ20´を包囲するように配置された反射面40´を備えており、シェード30´の反射鏡40´に対峙する面には、光源バルブ20´からの直射光と反射鏡40´からの反射光を該反射鏡40´の上半部に向けて反射する反射面31´が設けられている。
【0005】
この特許文献1に記載のプロジェクタ型前照灯においては、光源バルブ20´からの直射光と反射鏡40´からの反射光は、シェード30´の反射面31´によって光源バルブ20´へ戻され、再び、反射鏡40´で前方に向けて反射されることとなり、これにより、光源バルブ20´からの光の利用効率を向上させるようになっている。
【0006】
図5は、特許文献2に記載のプロジェクタ型前照灯を説明するための側面図である。
【0007】
図5に示すように、特許文献2に記載のプロジェクタ型前照灯は、投影レンズ50´、光源60´、投影レンズ50´と光源60´の間に配置されたシェード70´、光源60´を包囲するように配置された反射面80´を備えており、該反射面80´の下方には、光源60´からの光が通過する切欠部81´が形成されており、該切欠部81´の外側には、該切欠部81´を通過した光源60´からの光を前方に向けて反射するための補助反射面90´が設けられている。
【0008】
この特許文献2に記載のプロジェクタ型前照灯においては、光源60´からの光のうちシェード70´により遮蔽され無効となっていた光は、反射面80´に形成された切欠部81´を通過し補助反射面90´で前方に向けて反射されることとなり、これにより、光源60´からの光の使用効率を向上させるようになっている。
【特許文献1】特開2005−347144号公報
【特許文献2】特開2006−216455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載のプロジェクタ型前照灯においては、シェード30´の反射面31´によって光源バルブ20´へ戻される光源バルブ20´等からの光は、該光源バルブ20´のガラス管を再び通過することとなる。このため、上記特許文献1に記載のプロジェクタ型前照灯においては、光源バルブ20´からの光の利用効率をそれほど向上させることができないという問題がある。
【0010】
また、上記特許文献2に記載のプロジェクタ型前照灯においては、光源60´からの光の利用効率を向上させることができるものの、反射面80´の外側に補助反射面90´が設けられることとなるので、外形寸法が大きくなり、上下の寸法が狭い車両には適用できないという問題がある。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、従来のプロジェクタ型前照灯と比較して、外形寸法を小さくし、かつ、光源からの光利用効率の高い車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、灯具光軸上に配置された投影レンズと、灯具光軸上に配置された光源と、上縁を前記投影レンズの焦点付近に位置させた状態で前記投影レンズと前記光源の間に配置されたシェードと、前記光源を包囲するように配置され、前記光源からの光を反射し前記投影レンズの焦点付近に集光させた後、前記投影レンズを透過させ前方に照射することにより基本配光パターンを形成する第1反射面と、前記第1反射面の前記投影レンズ側端部近傍に配置され、前記光源からの光を前記光源の前記投影レンズ側の端部近傍に向けて反射する第2反射面と、前記光源の前記投影レンズ側の端部近傍に配置され、前記第2反射面からの反射光を反射し前記投影レンズの焦点付近に集光させた後、前記投影レンズを透過させ前方に照射することにより前記基本配光パターンに重畳される付加配光パターンを形成する第3反射面と、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、第1反射面の投影レンズ側端部近傍に配置された第2反射面により、第1反射面では利用していない光源からの光を、光源の投影レンズ側の端部近傍に位置する第2焦点に向けて反射する。第2反射面が反射した光は、上記第2焦点を焦点とする第3反射面が前方の投影レンズへ向けて照射する。
【0014】
このため、請求項1に記載の発明によれば、従来のプロジェクタ型前照灯と比較して、外形寸法を小さくし、かつ、光源からの光利用効率の高い車両用灯具を構成することが可能となる。
【0015】
また、請求項1に記載の発明によれば、第3反射面が配置されるスペースは、光源の発光特性により光源からの光が低光度となるスペースである。このため、請求項1に記載の発明によれば、第3反射面が配置されても第1反射面による基本配光パターンの形成に与える影響が少ない。
【0016】
そして、請求項1に記載の発明によれば、第1反射面により形成される基本配光パターンに第2反射面により形成される付加配光パターンを重畳させることにより、所定範囲の光度(例えば、中心付近左右2〜3度程度の光度)を増加させることが可能となる。つまり、請求項1に記載の発明によれば、遠方照射性能(遠方視認性)を高めた優れた配光を実現することが可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1反射面は、第1焦点が前記光源付近に設定され、第2焦点が前記投影レンズの焦点付近に設定された回転楕円系の反射面であり、前記第2反射面は、第1焦点が前記光源付近に設定され、第2焦点が前記光源の前記投影レンズ側の端部近傍に設定された回転楕円系の反射面であり、前記第3反射面は、第1焦点が前記第2反射面の第2焦点に設定され、第2焦点が前記投影レンズの焦点付近に設定された回転楕円系の反射面又は放物面系の反射面であることを特徴とする。
【0018】
これは、各反射面の例示である。従って、本発明の反射面はこれらに限定されない。例えば、第2反射面は、焦点が光源の投影レンズ側の端部近傍の、光源からの光が比較的低光度となるスペースに設定された放物面系の反射面であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、従来のプロジェクタ型前照灯と比較して、外形寸法を小さくし、かつ、光源からの光利用効率の高い車両用灯具を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態である車両用灯具について図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本実施形態の車両用灯具の主要構成を説明するための側面図である。図2は、図1に示した車両用灯具の分解斜視図である。
【0022】
本実施形態の車両用前照灯100は、自動車等の車両のヘッドランプやフォグランプ等の前照灯に適用されるものであり、図1、図2に示すように、投影レンズ10、光源20、投影レンズ10と光源20の間に配置されるシェード30、第1反射面40、上下一対の第2反射面50U、50D、第3反射面60等を備えている。
【0023】
投影レンズ10は、光源20側に焦点Fを有している。投影レンズ10は、その光軸を灯具光軸AXに一致させた状態で配置されている。
【0024】
光源20は、例えば、白熱電球、ハロゲンランプ等の光源バルブ、HID、あるいは、単色又はRGB三色の一つ又は複数のLEDチップをパッケージ化したLEDパッケージ等のLED光源である。光源20は、図1に示すように、白熱電球等の光源バルブやHIDである場合、その長手方向を灯具光軸AXに沿わせた状態で灯具光軸AX上に配置される。
【0025】
シェード30は、第1反射面40及び上下一対の第2反射面50U、50Dからの反射光の一部を遮光するための部材であり、上縁31を投影レンズ10の焦点F付近に位置させた状態で、投影レンズ10と光源20の間に配置されている。
【0026】
第1反射面40は、光源20が発光した光を反射する反射面であって、光源20を包囲するように配置されている。第1反射面40は、例えば、第1焦点が光源20付近(図1、図2中f1で示す位置)に設定され、第2焦点が投影レンズ10の焦点F付近(図1、図2中f2で示す位置)に設定された回転楕円系の反射面である。
【0027】
第1反射面40は、図1に示すように、光源20からの光を反射し投影レンズ10の焦点F付近に集光させた後、投影レンズ10を透過させ前方に照射することにより、図3に示すように、シェード30の上縁31によって規定されるカットオフラインL1を有する基本配光パターンP1を形成する。
【0028】
上下一対の第2反射面50U、50Dそれぞれは、光源20からの光(第1反射面40では捉えきれない光源20からの光)を反射する反射面であって、図1に示すように、第1反射面40の投影レンズ10側端部41近傍に配置されている。上下一対の第2反射面50U、50Dそれぞれは、例えば、第1焦点が光源20付近に設定され、第2焦点が光源20の投影レンズ10側の端部近傍の、光源20の発光特性により該光源20からの光が比較的低光度となるスペースS(例えば、図1、図2中f3で示すスペースS内の位置)に設定された回転楕円系の反射面である。
【0029】
第2反射面50U、50Dは、図1に示すように、光源20からの光を、光源20の投影レンズ10側の端部21近傍の、光源20からの光が比較的低光度となるスペースSに向けて反射し該スペースSに設定された第2焦点(例えば、図1、図2中f3で示すスペースS内の位置)に集光させた後、第3反射面60に照射する。なお、図2では、第2反射面50U、50Dは、シェード30と別体の構成となっているが、シェード30と一体的に構成してもよい。
【0030】
第3反射面60は、第2反射面50U、50Dからの反射光を反射するための反射面であって、図2に示すように、支持アームAの先端に設けられることにより、光源20の投影レンズ10側の端部21近傍の、光源20からの光が比較的低光度となるスペースS(第1反射面40から第2反射面50に向かう反射光を遮らないスペース)に配置されている。第3反射面60は、例えば、第1焦点が第2反射面50U、50Dの第2焦点(例えば、図1、図2中f3で示すスペースS内の位置)に設定され、第2焦点が投影レンズ10の焦点F付近(例えば、図1、図2中f2で示す位置)に設定された回転楕円系の反射面である。
【0031】
上述の通り、光源20の発光特性により光源20からの光が低光度となるスペースに配置されるため、第3反射面60は、第1反射面40による基本配光パターンの形成に与える影響が少ない。
【0032】
第3反射面60は、図1に示すように、第2反射面50U、50Dからの反射光を反射し投影レンズ10の焦点F付近に集光させた後、投影レンズ10を透過させ前方に照射することにより、図3に示すように、シェード30の上縁31によって規定されるカットオフラインL2(カットオフラインL1に一致するカットオフラインL2)を有し、かつ、基本配光パターンP1に重畳される付加配光パターンP2を形成する。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の車両用灯具100によれば、光源20の投影レンズ10側の端部21近傍の、光源20からの光が比較的低光度となるスペースS(従来利用されていなかったスペース)に第3反射面60を配置した。
【0034】
このため、本実施形態の車両用灯具100によれば、光源20の投影レンズ10側の端部21近傍の、光源20からの光が比較的低光度となるスペースS(従来利用されていなかったスペース)の有効利用が可能となり、従来のプロジェクタ型前照灯と比較して、外形寸法を小さくし、かつ、光源20からの光利用効率の高い車両用灯具を構成することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態の車両用灯具100によれば、第1反射面40により形成される基本配光パターンP1に第2反射面50により形成される付加配光パターンP2を重畳させることにより、図3に示すように、中心付近左右2〜3度程度の光度を増加させることが可能となり、遠方照射性能(遠方視認性)を高めた優れた配光を実現することが可能となる。
【0036】
次に、変形例について説明する。
【0037】
上記実施形態では、第3反射面60は、例えば、第1焦点が第2反射面50U、50Dの第2焦点(例えば、図1、図2中f3で示すスペースS内の位置)に設定され、第2焦点が投影レンズ10の焦点F付近(例えば、図1、図2中f2で示す位置)に設定された回転楕円系の反射面であるように説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第3反射面60は、焦点が光源20の投影レンズ10側の端部近傍f3に設定された放物面系の反射面であってもよい。
【0038】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施形態の車両用灯具の主要構成を説明するための側面図である。
【図2】図1に示した車両用灯具の分解斜視図である。
【図3】第1反射面40により形成される基本配光パターンP1に第2反射面50U、50Dにより形成される付加配光パターンP2を重畳させた結果得られる配光パターンの例である。
【図4】従来の車両用灯具の構成を説明するための側面図である。
【図5】従来の車両用灯具の構成を説明するための側面図である。
【符号の説明】
【0040】
100…車両用灯具、10…投影レンズ、20…光源、30…シェード、31…上縁、40…第1反射面、50U、50D…第2反射面、60…第3反射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
灯具光軸上に配置された投影レンズと、
灯具光軸上に配置された光源と、
上縁を前記投影レンズの焦点付近に位置させた状態で前記投影レンズと前記光源の間に配置されたシェードと、
前記光源を包囲するように配置され、前記光源からの光を反射し前記投影レンズの焦点付近に集光させた後、前記投影レンズを透過させ前方に照射することにより基本配光パターンを形成する第1反射面と、
前記第1反射面の前記投影レンズ側端部近傍に配置され、前記光源からの光を前記光源の前記投影レンズ側の端部近傍に向けて反射する第2反射面と、
前記光源の前記投影レンズ側の端部近傍に配置され、前記第2反射面からの反射光を反射し前記投影レンズの焦点付近に集光させた後、前記投影レンズを透過させ前方に照射することにより前記基本配光パターンに重畳される付加配光パターンを形成する第3反射面と、
を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第1反射面は、第1焦点が前記光源付近に設定され、第2焦点が前記投影レンズの焦点付近に設定された回転楕円系の反射面であり、
前記第2反射面は、第1焦点が前記光源付近に設定され、第2焦点が前記光源の前記投影レンズ側の端部近傍に設定された回転楕円系の反射面であり、
前記第3反射面は、第1焦点が前記第2反射面の第2焦点に設定され、第2焦点が前記投影レンズの焦点付近に設定された回転楕円系の反射面又は放物面系の反射面であることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−218166(P2009−218166A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62919(P2008−62919)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】