説明

車両用灯具

【課題】ヒートシンクの放熱能力が一時的に低下した場合でもLEDを用いたランプユニットの温度上昇を抑制する。
【解決手段】熱伝導性の基材18には発光ダイオード19を光源としたランプユニット17が取り付けられ、ランプユニット17を収容する灯室14をハウジング12で構成する。少なくともヒートシンク26の一部をハウジング12外に配置し、走行中には通風路27を通してヒートシンク26に走行風を当てる。さらに、基材18およびヒートシンク26に接触させた状態で、外部の温度変化を緩和させるための相変化材料281,282を取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、LEDを用いたランプユニットを搭載した車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のLEDを用いた車両用灯具は、LEDランプユニットの放熱部を通風路に内設している。車両の灯具を装備された部分には、走行時の走行風を取り入れる吸入口と、通風路内を流れる空気を排出する排気口とを設け、吸入口と排気口との間に放熱部を位置させている。これにより、車両走行中に通風路内に吸入口から外気が導入され、LEDで発生した熱は、放熱部から通風路内を流れる空気により放熱させ車外に排熱させている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2006−286395公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1の技術は、赤信号等により車両が停止した場合、通風路内への空気の導入がなくなり、ヒートシンクの放熱能力が低下し、LEDの温度が一時的に上昇する。この温度上昇により、LEDの光量の低下、色度の変化等が生じたり、過度の温度上昇はLED自体の故障原因や短命化にも繋がったりする、という問題があった。
【0004】
この発明の目的は、ヒートシンクの放熱能力が一時的に低下した場合でもLEDの温度上昇を抑制することのできる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、この発明の車両用灯具は、発光素子を光源としたランプユニットが取り付けられた熱伝導性の基材と、前記ランプユニットを収容する灯室と、前記灯室を構成するハウジングと、少なくとも一部を前記ハウジング外に配置されたヒートシンクと、走行中前記ヒートシンクに走行風を当てる通風路と、前記基材および前記ヒートシンクに接触させた状態で取り付けられた外部の温度変化を緩和させるための蓄熱部材と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、ランプユニットのヒートシンクの放熱能力が一時的に低下した場合でも、LEDの温度上昇を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0008】
図1〜図4は、この発明の車両用灯具に関する一実施形態について説明するための図1は断面図、図2は図1のI−I’断面図、図3は図1のII−II’要部のみを示した断面図、図4はこの実施形態の効果について説明するための説明図である。
図1、図2において、符号11はヘッドランプであり、このヘッドランプ11は、例えば、樹脂製の射出成型品からなるハウジング12を有する。このハウジング12の前面開口部121には、例えば、透明な樹脂成型品からなるアウターレンズ13が水密に装着され、これらハウジング12とアウターレンズ13との間には、灯室14が形成されている。
【0009】
また、ハウジング12の後部には、灯室14内に連通する作業用開口部122が開口され、この作業用開口部122はバックカバー15によって閉塞されている。具体的には、ハウジング12の内部において、作業用開口部122の近傍には内向フランジ123が突設されている。一方、バックカバー15の縁辺部には、内向フランジ123に係脱自在に係合する爪部151が設けられている。そして、爪部151が内向フランジ123に係止されることにより、バックカバー15は、ハウジング12に保持されている。その際、例えば、内向フランジ123とバックカバー15との間にシールリング16が介装されることにより、バックカバー15は、作業用開口部122を水密に閉塞する。
【0010】
ここで、ハウジング12およびバックカバー15は、アルミニウム等の金属材料で構成しても構わないが、加工性に富む耐熱性の合成樹脂で構成される。
【0011】
灯室14の内部には、ランプユニット17が配設されている。このランプユニット17は、例えば、平面視略矩形形状で熱伝導性の高い基材18を有する。この基材18のアウターレンズ13に対向する側の表面上には、光源として、発光素子である発光ダイオード(LED)19が複数取り付けられている。この実施形態において各LED19は、出射平面に片凸レンズ20が固設された平面実装型のLEDチップで構成されている。
【0012】
また、基材18には、各LED19の周囲を囲繞する筒状部材21が固設され、この筒状部材21の先端に保持された投射レンズ22がLED19の出射平面に対向されている。なお、各LED19からの出射光によって所望形状の光束を得るため、所定領域への光の入射をカットする遮光マスク等を各投射レンズ22の入射側に配置することも可能である。基材18は、例えばナットとビスによる取付手段23を介してバックカバー15に固定される。
【0013】
ここで、外観のデザイン性の向上等を目的として、アウターレンズ13とランプユニット17との間にはインナーパネル25が介装されている。このインナーパネル25には各LED19に対応する位置に筒状開口部251が設けられ、この筒状開口部251に遊挿された各投射レンズ22がアウターレンズ13に臨ませている。
【0014】
また、LED19が取り付けられた面と反対の基材18の面上には、LED19が発する熱を放熱するための熱伝導性の高い、例えばアルミニウム製の放熱フィン261を一体形成したヒートシンク26と熱的に面接合される。放熱フィン261は、バックカバー15から突出する格好で配置される。
【0015】
バックカバー15の外面側には通風路27が形成される。通風路27には、車両走行中に矢印Wiの方向の走行風を取り入れる吸入口271と通風路27内を流れる空気を矢印Woの方向に排出する排気口272とを設けている。
【0016】
281,282は、図3にも示すように基材18側のヒートシンク26の上下に例えば接着剤を用いて貼着するとともに、基材18に接触させた状態で配置した蓄熱部材の一種である相変化材料であり、PCM=Phase Change Materialとも呼ばれている。相変化材料281,282は、外部環境の温度変化を緩和させるための温度調整材料である。
【0017】
相変化材料281,282としては、例えば融点48℃を有するチオ硫酸ナトリウム水和物、融点58℃の酢酸ナトリウム水和物、融点5℃のn-テトラデカン、融点28℃のn-オクタデカンが考えられ、抑制したい温度により、適当な材料を選択すればよい。また、融点を調整するために添加剤を加えても良い。
【0018】
さらに、相変化材料は相変化により、固体、ゲル、液体と温度により状態が変化し、それに伴い体積も変化するので、容器内に封入している。容器は、熱伝導性の良い、例えばアルミニウム等からなり、相変化材料の封入量は相変化により容器が破損しない程度に設定する必要がある。そして、容器は基材18へ密着した取り付けができるよう、例えば容器の少なくとも一面に平面を設けることが好ましい。相変化材料を水に不溶な樹脂皮膜中に内包したマイクロカプセルを用いて形成したペレット、スラリー、シート等を用いることも有効である。
【0019】
ここで、車両が走行中である場合について考える。車両走行中には、通風路27内に吸入口271から外気が導入され、通風路271内の空気は排気口272から排出される。この間に、LED19で発生した熱は、ヒートシンク26から通風路27内を流れる空気により放熱されてLED19の温度上昇を抑制できる。
【0020】
次に、車両停止時は相変化材料281,282が熱を吸収し、固相からゲル、液相へと相変化して蓄熱するため、LED19の温度上昇を抑制できる。相変化材料281,282が蓄えた熱は、車両が走行すると通風路27内を流れる空気によりヒートシンク26から放熱され、相変化材料281,282は液相からゲル、固相へと戻る。
【0021】
図4は、車両が停止してから、図1の矢印の示すポイントPでの基材18の温度変化を示すものである。時間軸の0.0分の位置で車両が停止したときに、ポイントPでの温度は、相変化材料281,282がない場合には破線の特性となるが、相変化材料28がある場合にはやや上昇するが、それ以降のt期間は一定温度を保持する。これは、相変化材料281,282が外部環境の温度変化に対して時差を持つ特性を活かしているためである。
【0022】
これにより、車両の停止等で一時的にヒートシンク26の放熱能力に低下が生じた場合に、相変化材料281,282の作用によりLED19の温度上昇を抑制でき、LED自体の故障を防止できるとともに長寿命化にも寄与することができる。
【0023】
ところで、相変化材料281,282の配置位置は、基材18に接する部分であればどこでも良いが、LED19の温度と相変化材料28を配置する部位の基材温度の関係から、抑制すべきLED19温度での相変化材料28を配置する部位の基材温度を把握し、融点がその基材温度以下で、且つ融点が走行時の基材温度以上である相変化材料281,282を配置することが好ましい。
【0024】
図5は、この発明の一実施形態の変形例について説明するための、図3に相当する断面図である。この変形例は、リング状に形成した相変化材料283を、ヒートシンク26の基材18側に挿入するとともに、基材18に接触させた状態で配置したものである。この場合の相変化材料283は、ヒートシンク26と基材18により広い接触面積を有し、多くの量を配置できることから温度変化に対する緩和時間を延ばすことが可能となる。
【0025】
図6〜図8は、この発明の車両用灯具に関する他の実施形態について説明するための、図6は要部のみを示した断面図、図7は図6のヒートシンク側から見た状態の左側面図、図8はこの実施形態の効果について説明するための説明図である。
【0026】
ここで、多量の相変化材料を用いれば、LED19の温度の抑制時間を長くできるが、配置する基材18の部位によって、抑制したいLED温度と基材18の温度の関係は異なるため、部位によって適した融点を有する相変化材料を配置する方が好ましい。この実施形態は、複数の相変化材料を用いるとともに、部位に適した融点を有する相変化材料を配置したものである。
【0027】
図6において、ランプユニット17を取り付ける基材18の上下をそれぞれヒートシンク26側に略直角に曲げて冷却部411,412を形成する。冷却部411とヒートシンク26との間には、基材18と接触させるように例えば融点が57℃のAの相変化材料283を配置する。同様に冷却部412とヒートシンク26との間には、基材18と接触させるように例えば融点が57℃のAの相変化材料284を配置する。
【0028】
冷却部411とヒートシンク26との間には、Aの相変化材料283と接触させるように例えば融点が47℃のBの相変化材料285を配置する。同様に冷却部412とヒートシンク26との間には、Aの相変化材料284と接触させるように例えば融点が47℃のBの相変化材料286を配置する。
【0029】
さらに、Aの相変化材料283、Bの相変化材料285が配置された冷却部411の反対面にはBの相変化材料287が、Aの相変化材料284、Bの相変化材料286が配置された冷却部412の反対面にはBの相変化材料288がそれぞれ接着剤を用いて取り付けられている。
【0030】
車両走行時の温度が矢印で示すポイントP1で示す部位では50℃、矢印で示すポイントP2で示す部位では40℃となる構成である。車両停止等により一時的にヒートシンク26の放熱能力が低下したときは、ポイントP1の部位で抑制すべき温度が60℃、ポイントP2の部位で抑制すべき温度が50℃であるとした場合、ポイントP1の部位で制御すべきAの相変化材料283,284は融点が57℃、ポイントP2の部位で制御すべきBの相変化材料285〜288は47℃とする。
【0031】
このように、抑制すべき温度以下で且つ走行時の温度以上の融点を有する相変化材料を各ポイントに適切に配置することで、長時間温度上昇を抑制することができる。
【0032】
図8は、この発明の他の実施形態に関する効果について説明するための説明図である。図8おいて、車両の停止等で一時的にヒートシンクの放熱能力が低下する場合、相変化材料を付加しない時は時間とともに温度が上昇していくが、相変化材料を付加した場合は、各部位の上昇温度を所望の温度以下に抑制することができ、結果LEDの温度上昇を防止できる。
【0033】
図9は、この発明の他の実施形態に関する変形例について説明するための、図7に相当する側面図である。
【0034】
この変形例は、基材18に連なる筒状の冷却部413を形成するとともに、リング状に形成したBの相変化材料289とリング状に形成した図示しないAの相変化材料(300)をヒートシンク26にそれぞれ挿入する。さらに、冷却部413の外周にリング状のBの相変化材料301を配置したものである。
【0035】
この場合は、ヒートシンク26と基材18に対し相変化材料がより広い接触面積を有し、多くの量を配置することができることから、温度上昇に対する抑制時間を延ばすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の車両用灯具に関する一実施形態について説明するための断面図。
【図2】図1のI−I’断面図。
【図3】図1のII−II’断面図。
【図4】この発明の一実施形態の効果について説明するための説明図。
【図5】この発明の一実施形態に関する変形例について説明するための図3に相当する断面図。
【図6】この発明の車両用灯具に関する他の実施形態について説明するための要部の断面図。
【図7】図5の左側面図。
【図8】この発明の他の実施形態の効果について説明するための説明図。
【図9】この発明の他の実施形態に関する変形例について説明するための図5に相当する側面図。
【符号の説明】
【0037】
11 ヘッドランプ
12 ハウジング
14 灯室
15 バックカバー
17 ランプユニット
18 基材
19 LED
26 ヒートシンク
261 放熱フィン
27 通風路
281〜301 相変化材料
411〜413 冷却部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を光源としたランプユニットが取り付けられた熱伝導性の基材と、
前記ランプユニットを収容する灯室と、
前記灯室を構成するハウジングと、
少なくとも一部を前記ハウジング外に配置されたヒートシンクと、
走行中前記ヒートシンクに走行風を当てる通風路と、
前記基材および前記ヒートシンクに接触させた状態で取り付けられた外部の温度変化を緩和させるための蓄熱部材と、を具備したことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記蓄熱部材は、相変化が固体とゲルと液体間である相変化材料で形成したものであることを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
融点温度の異なる複数の前記相変化材料を用い、前記発光素子に近くに配置される前記相変化材料の融点温度を、遠い位置に配置される前記相変化材料の融点温度より高くものを用いたことを特徴とする請求項2記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−266573(P2009−266573A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114196(P2008−114196)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】