車両用灯具
【課題】軽量で剛性の高いエクステンションやリフレクタを備え、製造コストの低減や車両の燃費改善を図ることができる車両用灯具を提供する。
【解決手段】車両用灯具100は、灯具ボディと灯具カバー13とで形成される灯室15内に、バックランプ21,ブレーキランプ23,車幅灯25間及び複数のLED29及びバルブ間を区画形成するエクステンション37を備える。エクステンション37は、LED29の光の出射方向に向けて突出する光源画成壁49a,49b,51a,51b及びユニット画成壁47a,47b,47c,47dが設けられ、シート状材料により所定形状に一体成形される。
【解決手段】車両用灯具100は、灯具ボディと灯具カバー13とで形成される灯室15内に、バックランプ21,ブレーキランプ23,車幅灯25間及び複数のLED29及びバルブ間を区画形成するエクステンション37を備える。エクステンション37は、LED29の光の出射方向に向けて突出する光源画成壁49a,49b,51a,51b及びユニット画成壁47a,47b,47c,47dが設けられ、シート状材料により所定形状に一体成形される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用灯具に関し、特に、複数の灯具ユニット間又は複数の光源間の何れかを区画形成する画成部材を備えた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、灯具ボディと灯具カバーとで形成される灯室内に、少なくとも複数の灯具ユニット間又は複数の光源間の何れかを区画形成する画成部材を備える。
この画成部材としては、リフレクタ、エクステンション、或いはエクステンションリフレクタ等がある。ここで、エクステンションリフレクタとは、ユニット型ランプの周囲に装飾用として用いられるリフレクタであって、灯具を外部から観察したときに明るく見え、灯具全体の外観を向上させるようにしたものを言う。
【0003】
従来、これら画成部材には、金属板を曲げ加工したもの等が用いられていたが、その形状が複雑になると金属板の曲げ加工が極めて困難になり、製造コストが高くなるという問題があった。
そこで、例えば特許文献1に開示されるエクステンションリフレクタは、樹脂を成形し、その表面にアルミニウムを蒸着して形成している。その背面部には後方に突出された角筒状の固定部を有し、この固定部内にボルトを挿通させ、このボルトにナットを螺合させることで、灯具ボディに固定する。
【0004】
このようなエクステンションリフレクタによれば、この透明部材の表面に光不透過なアンダーコートを施すとともに、このアンダーコートの表面を反射処理する構成とするので、容易にかつ低価格で作製でき、かつ外観の見栄え低下を改善できた。また、リフレクタに設けた固定部にはアンダーコート及び反射処理を施さずに透明状態としているので、固定用のボルトを透視でき、固定作業を容易に行うことが可能となった。
【0005】
【特許文献1】特開平6−76609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、透明樹脂で作製したエクステンションリフレクタは、2mm程度の厚みを有し、重いため、車体に取り付けると燃費の改善には不利となった。また、大型になる程、重量が増すために必要とされる取付強度も増大し、取付部が大型化して更に重量が増した。
一方、軽量化の目的でシート状材料により作製したリフレクタが提案されているが、薄厚であることから剛性が確保し難く、特に大型となるエクステンションリフレクタは歪みの生じることから作製が困難であった。
【0007】
従って、本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、軽量で剛性の高いエクステンションやリフレクタを備え、製造コストの低減や車両の燃費改善を図ることができる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る上記目的は、灯具ボディと灯具カバーとで形成される灯室内に、少なくとも複数の灯具ユニット間又は複数の光源間の何れかを区画形成する画成部材を備えた車両用灯具であって、
前記画成部材は、光源の光の出射方向に向けて突出する画成壁が少なくとも前記灯具ユニット間又は前記光源間の何れかに設けられ、シート状材料により所定形状に一体成形されることを特徴とする車両用灯具により達成される。
【0009】
上記構成の車両用灯具によれば、光源の光の出射方向に向けて突出する画成壁が少なくとも灯具ユニット間又は光源間の何れかに設けられることで、シート状材料からなる画成部材が画成壁によって立体的な構造体となり、該画成部材は高い剛性が確保される。また、画成部材がシート状材料で一体成形されて軽量となることで、必要とされる画成部材の取付強度が低減可能となる。さらに、コンビネーションランプ用の広面積のリフレクタ一体エクステンション等のような複雑大型形状の一体成形が可能となり、安価でありながら、リフレクタに類似させたり、自由な模様を施したりした見栄えの良い光源周り形状を有する画成部材の形成が可能となる。
【0010】
尚、上記構成の車両用灯具において、前記光源が半導体発光素子からなり、前記画成部材が該光源間を区画形成するエクステンションを構成することが望ましい。
【0011】
このような構成の車両用灯具によれば、光源が半導体発光素子とされることで、画成部材を光学設計の不要なエクステンションとすることができる。この場合、各光源間の距離が短くなる為、これらを画成する画成部材もコンパクトになり、剛性を確保し易くなる。更に、発熱量の少ない半導体発光素子の場合、画成部材に対する耐熱性を考慮する必要がなくなるので、リフレクタに類似させたり、自由な模様を施したりした光源周りの形状をとることができ、車両用灯具の見栄えが向上する。
【0012】
また、上記構成の車両用灯具において、前記画成部材が、前記灯具ユニット間を区画形成するエクステンションを構成することが望ましい。
【0013】
このような構成の車両用灯具によれば、灯具ユニット全体にわたる広面積のエクステンションをシート状材料で作製することが可能となり、車両用灯具全体の軽量化につながり、ひいては低燃費を実現できる。
【0014】
また、上記構成の車両用灯具において、組み付け誤差を吸収するために変形可能な凸部が前記画成部材の周縁に所定の間隔で設けられ、
前記灯具ボディと前記灯具カバーとが前記凸部を挟み込んで前記画成部材を固定することが望ましい。
【0015】
このような構成の車両用灯具によれば、灯具ボディと灯具カバーとに挟持されて固定される画成部材の周縁に、変形可能な凸部が設けられることで、寸法公差等によって変動する灯具ボディと灯具カバーとの固定間隙に応じて凸部が潰され、薄厚のシート状材料であっても、確実に挟持固定できる。また、画成部材がシート状材料からなるため、凸部を潰しても、全体形状に影響の及ぶことがない。
【0016】
また、上記構成の車両用灯具において、組み付け誤差を吸収するために変形可能な凸部が前記画成部材の周縁に所定の間隔で設けられ、
成形エクステンション側の2本のリブと灯具ユニット側の1本のリブとが前記凸部を挟み込んで前記画成部材を固定することが望ましい。
【0017】
このような構成の車両用灯具によれば、成形エクステンション側の2本のリブ間で背面側(凹部側)が当接された凸部は、対向する灯具ユニット側の1本のリブとで挟まれるので、該凸部が1本のリブ側へ突出する形状から2本のリブ間に向かって突出する形状までの幅広い変形量で変形可能となる。つまり、灯具ユニット側の取付誤差が大きい場合であっても、凸部の潰れ量が大きく変わるので、薄厚のシート状材料であっても確実に挟持固定できる。なお、この場合、成形エクステンションと画成部材との相対位置は、凸部以外の当接により常に一定となる。
【0018】
また、上記構成の車両用灯具において、前記画成部材が、複数の光源に対応したリフレクタ一体のエクステンションを構成することが望ましい。
【0019】
このような構成の車両用灯具によれば、エクステンションと一体で作製されることで、シート状材料が画成壁によって立体的な構造体となり、高剛性が確保されて歪みを生じ難くすることができるので、リフレクタ単体をシート状材料で作製すると剛性が足らず、走行中の振動等によって歪んでしまう欠点を解消できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る車両用灯具によれば、シート状材料が画成壁によって立体的な構造体となり、コンビネーションランプ用の広面積のリフレクタ一体エクステンション等として成形しても剛性を確保することができる。この結果、軽量化を実現できるとともに、必要とされる取付部強度も小さく設定可能となり、製造コストや材料コストを低減できる。更に、複雑大型形状の一体成形が可能となるので、リフレクタに類似させたり、自由な模様を施したりした光源周り形状で画成部材を形成でき、車両用灯具の見栄えも向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る車両用灯具の好適な実施形態を詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る車両用灯具の正面図、図2は図1のII-II断面矢視図、図3は図1のIII−III断面矢視図、図4は図1のIV-IV断面矢視図であり、部分拡大図はシート状材料から成るエクステンションの一部をリフレックスリフレクタ(RR)とした場合の図である。
尚、本第1実施形態では、例えば車両後部に設けられるリアコンビネーションランプを例に車両用灯具100を説明するが、本発明に係る車両用灯具は、ヘッドランプ等に用いられても良い。
【0022】
車両用灯具100は、図1及び図2に示すように、灯具ボディ11と灯具カバー13とで形成される灯室15を有する。
灯具ボディ11は、図2及び図3に示すように、背面に突設された複数の固定部17a,17b,17c,17d等を介して車体パネル19に固定される。灯室15内には複数段(図示例では3段)に灯具ユニットが設けられ、下段灯具ユニットがバックランプ21、中段灯具ユニットがブレーキランプ23、上段灯具ユニットが車幅灯25として構成されている。
【0023】
灯室15にはバックランプ21、ブレーキランプ23、車幅灯25に渡ってベースパネル27が設けられ、ベースパネル27は灯具ボディ11に支持固定される。ベースパネル27は一体に形成してもよく、バックランプ21、ブレーキランプ23、車幅灯25のそれぞれに対応して別体形成したパネルを一体に連結して灯具ボディ11に固定したり、或いはそれぞれを灯具ボディ11に固定したりしてもよい。
【0024】
ベースパネル27の車幅灯25に対応する部分には、半導体発光素子である複数のLED29が複数段(本実施形態では3段)、複数列(本実施形態では4列)に設けられており、LED29はベースパネル27の背面に固定された駆動基板31に電気的に接続されて発光駆動される(図3参照)。
【0025】
ベースパネル27のバックランプ21に対応する部分にも、半導体発光素子である複数のLED29が複数段(本実施形態では3段)、複数列(本実施形態では5列)に設けられており、LED29もベースパネル27の背面に固定された不図示の駆動基板に電気的に接続されて発光駆動される。
【0026】
ベースパネル27のブレーキランプ23に対応する部分には、複数のランプソケット33a,33bが固定され、ランプソケット33a,33bには灯具カバー13に対面してバルブ(白熱電球、放電灯等)35a,35bが取り付けられる(図4参照)。
【0027】
灯室15内には、灯具カバー13とベースパネル27との間に配置され、複数の灯具ユニット(バックランプ21、ブレーキランプ23、車幅灯25)間と複数の光源(LED29、バルブ35a,35b)間とを区画形成する画成部材であるリフレクタ一体のエクステンション37が設けられている。なお、本発明に係るエクステンションは、少なくとも複数の灯具ユニット間又は複数の光源間の何れかを区画形成する画成部材であってもよい。
【0028】
本実施形態のエクステンション37は、シート状材料であるシート基板と少なくとも反射層をもつ一層以上のリフレクタ一体のエクステンションを構成する。反射層はシート状材料を真空成形、圧空成形等のシート成形により所定形状に成形後、蒸着等で形成しても良いし、印刷等でシート状材料に反射層を形成した後、そのシートを所定形状に成形しても良い。
【0029】
なお、本明細書中、シートとは例えば厚さが0.2mm以上2mm以下のプラスチックの薄い板状のものを言い、フィルムとは例えば厚さが0.2mm未満の薄い膜状のものを言い、これらシート及びフィルムを総称してシート状材料と言う。このシート状材料としては、特に厚さ1mm以下に形成した延性及び耐熱性があるポリカーボネイトや、ABS樹脂やPP樹脂等を用いることで、より軽量化に効果的である。
【0030】
図1及び図2に示すように、エクステンション37は、全体が各灯具ユニット(バックランプ21、ブレーキランプ23、車幅灯25)間を区画形成するエクステンションを構成すると共に、バックランプ21に対応するバックランプ部41と、車幅灯25に対応する車幅灯部43とが、複数のLED29間を区画形成するエクステンションを構成している。
【0031】
このように光源がLED29の場合、バックランプ部41と車幅灯部43とを光学設計の不要なエクステンションとすることができる。また、耐熱性を考慮する必要がなくなるので、リフレクタに類似させたり、自由な模様を施したりした光源周りの形状をとることができ、車両用灯具100の見栄えを良好にできる。
また、本実施形態のエクステンション37は、ブレーキランプ23に対応するブレーキランプ部分45が、複数のバルブ35a,35bに対応したエクステンションリフレクタを構成する。
【0032】
すなわち、エクステンション37は、LED29、バルブ35a,35bの光の出射方向に向けて突出するユニット画成壁47a,47b,47c,47d、光源画成壁49a,49b,49c,49d,49e、光源画成壁51a,51b、光源画成壁53a,53b,53cが灯具ユニット間及び光源間に設けられ、シート状材料により所定形状に一体成形されている。
尚、図4に示すように、エクステンション37の車両後方側と対峙する面の一部にリフレックスリフレクタ40を一体的に成形してもよい。これにより後続車等のヘッドライトをリフレックスリフレクタ40により反射させて、自車の認識を高めさせ、注意喚起を行うことができる。尚、リフレックスリフレクタは、灯具ボディや灯具カバー(アウターレンズ)、エクステンション、インナーレンズ等の車両用灯具の構成部品へ固定する場合もある。
【0033】
次に、本実施形態に係るエクステンション37の各部の固定構造について説明する。
図5は図4に示したB部の(a)要部拡大断面図、(b)要部拡大斜視図であり、図6は図4に示したC部の(a)要部拡大断面図、(b)要部拡大斜視図である。
【0034】
図5(a)に示すように、エクステンション37の周端部37aは、灯具カバー13と灯具ボディ11とによって挟持固定される。図5(b)に示すように、灯具ボディ11には複数の座板部55が適宜間隔で形成され、座板部55は対応するように灯具カバー13に適宜突設された突起57とで、エクステンション37の周端部37aを挟み固定する。
【0035】
また、図6(a)に示すように、エクステンション37の周端部37bは、灯具ボディ11に突設した上面平坦な突起57と、灯具カバー13に突設した半球状の突起61とによって挟持固定される。
これらの挟持固定部においては、エクステンション37の周端部37a,37bに、周縁強度を補強する折り曲げ部37cを形成し、この折り曲げ部37cの基部側を挟持することが、エクステンション37の歪み波及を防止するとともに、先端側の抜けを防止する上で好ましい。
【0036】
上述した本実施形態の車両用灯具100によれば、光源であるLED29及びバルブ35a,35bの光の出射方向に向けて突出するユニット画成壁47a,47b,47c,47d、光源画成壁49a,49b,49c,49d,49e、光源画成壁51a,51b、及び光源画成壁53a,53b,53cが、複数の灯具ユニット(バックランプ21、ブレーキランプ23、車幅灯25)間及び複数の光源(LED29、バルブ35a,35b)間に設けられることで、シート状材料からなるエクステンション37がこれら画成壁によって立体的な構造体となり、該エクステンション37は高い剛性が確保される。
【0037】
また、エクステンション37がシート状材料で一体成形されて軽量となることで、必要とされるエクステンション37の取付強度が低減可能となり、図5,図6に示したような簡素な構造での取付が可能となるので、製造コスト、材料コストを低減できる。
【0038】
その結果、エクステンション37は、コンビネーションランプ用の広面積のリフレクタ一体エクステンションのような複雑大型形状の一体成形が可能となり、安価でありながらリフレクタに類似させたり、自由な模様を施したりした見栄えの良い光源周り形状を有することができ、車両用灯具100の見栄えも向上させることができる。
【0039】
また、本実施形態のエクステンション37は、エクステンションと一体に作製されることで、シート状材料が立体的な構造体となって高剛性が確保され、歪みを生じ難くすることができるので、リフレクタ単体をシート状材料で作製すると剛性が足らず、走行中の振動等によって歪んでしまう欠点を解消できる。
【0040】
次に、本発明の第2実施形態に係る車両用灯具を説明する。
図7は本発明の第2実施形態に係る車両用灯具の要部断面図、図8は図7のD部における要部拡大説明図である。なお、以下の各実施形態において、図1〜図6に示した上記第1実施形態に係る車両用灯具100の構成部材と同等の構成部材には同符号を付し、重複する説明は省略するものとする。
【0041】
図7に示すように、本第2実施形態に係る車両用灯具200の灯室15内には、灯具カバー13とベースパネル27との間に配置され、複数のLED29間を区画形成する画成部材であるフィルムエクステンション63と共に、成形エクステンション67が設けられている。成形エクステンション67は、灯具ボディ11に支持固定された灯具ユニット69側のベースパネル27に、ネジ71,73によって螺着されている。
【0042】
フィルムエクステンション63は、LED29の光の出射方向に向けて突出する光源画成壁51a,51bが光源間に設けられ、シート状材料により所定形状に一体成形されている。
図8に示すように、フィルムエクステンション63の周縁には、組み付け誤差を吸収するために変形可能な凸部65が所定の間隔で設けられている(図9参照)。この凸部65は、例えばシート状材料の一方の面から他方の面に向かって凹ませることで突出形成される。この凸部65の断面形状は、鋭角な山形でなければどの様な形状でも良い。
【0043】
そして、これら凸部65に対応する成形エクステンション67の所定箇所には2本のリブ75a,75aが突設され、対向するベースパネル27には1本のリブ77が突設されている。リブ77は、リブ75a,75aの間に向かって突出される。
図8(a)に示すように、フィルムエクステンション63は、リブ75a,75aの間に凸部65が配置され、この凸部65にリブ77が当接するようにして挟持される。図中の想像線は、潰れる前の凸部65の外形を表す。
【0044】
凸部65を用いた固定部では、図8(b)に示すように、凸部65がリブ75a,75aと、リブ77とによって例えば1.0mm潰された状態での挟持固定を中央値とする。そして、凸部65による固定構造は、成形エクステンション67とベースパネル27とに図8(a)に示す中央値から離間方向の誤差が最小で−0.5mm生じている場合、或いは図8(c)に示す中央値から接近方向の誤差が最大で+0.5mm生じている場合であっても、凸部65を潰して挟持状態に固定することができる。
【0045】
すなわち、成形エクステンション67の2本のリブ75a,75a間で背面側(凹部側)が当接された凸部65は、対向する灯具ユニット69側におけるベースパネル27の1本のリブ77で挟まれる。そこで、凸部65が、1本のリブ77側へ突出する形状から2本のリブ75a,75a間に向かって突出する形状までの幅広い変形量で変形可能となる。
【0046】
つまり、灯具ユニット69側の取付誤差が大きい場合であっても、凸部65の潰れ量が大きく変わるので、薄厚のシート状材料であっても確実に挟持固定できる。なお、この場合、成形エクステンション67とフィルムエクステンション63との相対位置は、リブ75a,75aと、凸部以外の当接部79との当接により常に一定となる。また、フィルムエクステンション63がシート状材料からなるため、凸部65を潰しても、全体形状に影響が及ぶことはない。
【0047】
図9は図7のD部における変形例の要部拡大断面図である。
フィルムエクステンション63には、組み付け誤差を吸収するために設けた凸部65の他に、位置決め用凸部81を設けても良い。
位置決め用凸部81は、組み付け誤差を吸収するための凸部65よりも小さく形成することで、剛性を高めて潰れ難く形成されている。この位置決め用凸部81は、フィルムエクステンション63の凸部65の形成面63aに略直交する面63bに突設され、成形エクステンション67の位置決め片67aと、ベースパネル27の位置決め片27aとの間に挟入される。
【0048】
これにより、フィルムエクステンション63は、位置決め用凸部81が位置決め片67aの対向面に当接することで、組み付け方向に対して直交する方向(図9の左右方向)における位置決めがなされる。
尚、位置決め片67aの対向面に位置決め用凸部を突設することで、フィルムエクステンションの位置決めを行うように構成することもできる。
【0049】
次に、本発明の第3実施形態に係る車両用灯具を説明する。
図10は本発明の第3実施形態に係る車両用灯具を説明する要部拡大断面図である。
この第3実施形態に係る車両用灯具300は、図10に示すように、灯具ボディ11の外側からの吸引によってフィルムエクステンション63の裏面を吸着して固定するための吸引固定部83を有する。
【0050】
吸引固定部83となる灯具ボディ11には、先端が平坦面となる略円錐形状の固定柱85が灯室15側に突設され、該固定柱85の先端面は平坦な接着座面87となっている。固定柱85には軸線方向の貫通吸引孔89が形成され、貫通吸引孔89は接着座面87に開口されている。
【0051】
この接着座面87には、貫通吸引孔89を包囲するように図10(b)に示す円環状の接着手段91が貼着されている。接着手段91としては、例えば中央開口部91aの周囲に環状接着部91bを形成した両面接着テープ等を用いることができる。
【0052】
この吸引固定部83では、フィルムエクステンション63を所定の組み付け位置に配置した後、吸引固定部83の貫通吸引孔89から真空吸引を行うことで、フィルムエクステンション63の裏面が接着手段91を介して接着座面87に接着固定される。この際、フィルムエクステンション63の周端部63cは、変形を回避するために自由端とすることが好ましい。
【0053】
このような吸引固定部83によれば、フィルムエクステンション63の周縁を挟持固定する為の成形エクステンション67や鍔部が不要となる。また、フィルムエクステンション63の取付部は撓むことがなく、フィルムエクステンション63の全体が撓むこともない。
【0054】
また、このような吸引固定部83によれば、フィルムエクステンション63の周縁近傍に限らず、中央部分の所望部位を灯具ボディ11側に固定することができる。さらに、フィルムエクステンション63の表面側から押圧付勢する必要がないので、取付に際して、表面側に形成した蒸着面に汚れ、傷つきが生じない。また、吸引することにより接着面を接着方向に押圧付勢できるので、接着剤の塗布のみによる固定に比べ、強固に固定することができる。
このような吸引固定部83は、図3に示したリフレクタ一体のエクステンション37のA部に用いることもできる。
【0055】
次に、本発明の第4実施形態に係る車両用灯具を説明する。
図11は本発明の第4実施形態に係る車両用灯具の要部分解斜視図である。
本第4実施形態に係る車両用灯具400の灯室内には、図11に示すように、複数のLED29間を区画形成する画成部材であるフィルムエクステンション107と、ベースパネル127とが設けられる。
【0056】
図11に示すように、フィルムエクステンション107は、LED29の光の出射方向に向けて突出する光源画成壁105a,105bが光源間に設けられ、シート状材料により所定形状に一体成形されている。フィルムエクステンション107の周縁におけるユニット画成壁104aの裾部には、鍔部93が形成されると共に、平行な一対の切り込み99,99によって係止舌片101が複数形成されている。
【0057】
ベースパネル127には、フィルムエクステンション107の鍔部93に対応した座面95がLED基板94の周囲に形成され、一対の保持壁97,97が座面95の長手方向に平行な辺部に起立形成されている。そして、フィルムエクステンション107の係止舌片101に対応する保持壁97,97には、各係止舌片101を係止するための係止スリット103が設けられている。
【0058】
そこで鍔部93を座面95に当接するとともに、一対の保持壁97,97の間でフィルムエクステンション107を挟み、且つ係止舌片101を係止スリット103に係止することで、LED基板94に対してフィルムエクステンション107を位置決めすると同時に、ベースパネル27に固定することができる。
この固定構造によれば、シート状材料からなるフィルムエクステンション107の弾性力を利用した係止舌片101により、他部材を使用せずに、簡単な構造で固定することができる。
【0059】
尚、本発明の車両用灯具に係る灯具ボディ、灯具カバー、灯具ユニット、光源、画成部材、画成壁及び凸部等の構成は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば凸部は前記画成部材の中央にあってもかまわない。本発明の趣旨に基づいて種々の形態を採りうることは云うまでもない。
例えば、上記第2実施形態に係る車両用灯具200では、フィルムエクステンション63の周縁に設けた凸部65が成形エクステンション67とベースパネル27とで挟持固定される場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、灯具ボディ11と灯具カバー13とで凸部65を挟み込んでフィルムエクステンション63を固定するように構成することもできる。
また、フィルムエクステンション63を成形エクステンション67とベースパネル27とで挟持固定する代わりに、レーザ溶着や熱溶着等で固定することも可能である。この場合、フィルムエクステンション63は凸部65等の複雑な形状を設ける必要がなく、コスト的に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用灯具の正面図である。
【図2】図1のII-II断面矢視図である。
【図3】図1のIII−III断面矢視図である。
【図4】図1のIV-IV断面矢視図である。
【図5】図4に示したB部の(a)要部拡大断面図、(b)要部拡大斜視図である。
【図6】図4に示したC部の(a)要部拡大断面図、(b)要部拡大斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る車両用灯具の要部断面図である。
【図8】図7のD部における要部拡大説明図である。
【図9】図7のD部における変形例の要部拡大断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る車両用灯具を説明する要部拡大断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る車両用灯具の要部分解斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
11…灯具ボディ
13…灯具カバー
15…灯室
21…バックランプ(灯具ユニット)
23…ブレーキランプ(灯具ユニット)
25…車幅灯(灯具ユニット)
29…LED(光源)
35a,35b…バルブ(光源)
37…エクステンション(画成部材)
40…リフレックスリフレクタ
47a,47b,47c,47d…ユニット画成壁(画成壁)
49a,49b,49c,49d,49e…光源画成壁(画成壁)
63…フィルムエクステンション(画成部材)
100…車両用灯具
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用灯具に関し、特に、複数の灯具ユニット間又は複数の光源間の何れかを区画形成する画成部材を備えた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、灯具ボディと灯具カバーとで形成される灯室内に、少なくとも複数の灯具ユニット間又は複数の光源間の何れかを区画形成する画成部材を備える。
この画成部材としては、リフレクタ、エクステンション、或いはエクステンションリフレクタ等がある。ここで、エクステンションリフレクタとは、ユニット型ランプの周囲に装飾用として用いられるリフレクタであって、灯具を外部から観察したときに明るく見え、灯具全体の外観を向上させるようにしたものを言う。
【0003】
従来、これら画成部材には、金属板を曲げ加工したもの等が用いられていたが、その形状が複雑になると金属板の曲げ加工が極めて困難になり、製造コストが高くなるという問題があった。
そこで、例えば特許文献1に開示されるエクステンションリフレクタは、樹脂を成形し、その表面にアルミニウムを蒸着して形成している。その背面部には後方に突出された角筒状の固定部を有し、この固定部内にボルトを挿通させ、このボルトにナットを螺合させることで、灯具ボディに固定する。
【0004】
このようなエクステンションリフレクタによれば、この透明部材の表面に光不透過なアンダーコートを施すとともに、このアンダーコートの表面を反射処理する構成とするので、容易にかつ低価格で作製でき、かつ外観の見栄え低下を改善できた。また、リフレクタに設けた固定部にはアンダーコート及び反射処理を施さずに透明状態としているので、固定用のボルトを透視でき、固定作業を容易に行うことが可能となった。
【0005】
【特許文献1】特開平6−76609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、透明樹脂で作製したエクステンションリフレクタは、2mm程度の厚みを有し、重いため、車体に取り付けると燃費の改善には不利となった。また、大型になる程、重量が増すために必要とされる取付強度も増大し、取付部が大型化して更に重量が増した。
一方、軽量化の目的でシート状材料により作製したリフレクタが提案されているが、薄厚であることから剛性が確保し難く、特に大型となるエクステンションリフレクタは歪みの生じることから作製が困難であった。
【0007】
従って、本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、軽量で剛性の高いエクステンションやリフレクタを備え、製造コストの低減や車両の燃費改善を図ることができる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る上記目的は、灯具ボディと灯具カバーとで形成される灯室内に、少なくとも複数の灯具ユニット間又は複数の光源間の何れかを区画形成する画成部材を備えた車両用灯具であって、
前記画成部材は、光源の光の出射方向に向けて突出する画成壁が少なくとも前記灯具ユニット間又は前記光源間の何れかに設けられ、シート状材料により所定形状に一体成形されることを特徴とする車両用灯具により達成される。
【0009】
上記構成の車両用灯具によれば、光源の光の出射方向に向けて突出する画成壁が少なくとも灯具ユニット間又は光源間の何れかに設けられることで、シート状材料からなる画成部材が画成壁によって立体的な構造体となり、該画成部材は高い剛性が確保される。また、画成部材がシート状材料で一体成形されて軽量となることで、必要とされる画成部材の取付強度が低減可能となる。さらに、コンビネーションランプ用の広面積のリフレクタ一体エクステンション等のような複雑大型形状の一体成形が可能となり、安価でありながら、リフレクタに類似させたり、自由な模様を施したりした見栄えの良い光源周り形状を有する画成部材の形成が可能となる。
【0010】
尚、上記構成の車両用灯具において、前記光源が半導体発光素子からなり、前記画成部材が該光源間を区画形成するエクステンションを構成することが望ましい。
【0011】
このような構成の車両用灯具によれば、光源が半導体発光素子とされることで、画成部材を光学設計の不要なエクステンションとすることができる。この場合、各光源間の距離が短くなる為、これらを画成する画成部材もコンパクトになり、剛性を確保し易くなる。更に、発熱量の少ない半導体発光素子の場合、画成部材に対する耐熱性を考慮する必要がなくなるので、リフレクタに類似させたり、自由な模様を施したりした光源周りの形状をとることができ、車両用灯具の見栄えが向上する。
【0012】
また、上記構成の車両用灯具において、前記画成部材が、前記灯具ユニット間を区画形成するエクステンションを構成することが望ましい。
【0013】
このような構成の車両用灯具によれば、灯具ユニット全体にわたる広面積のエクステンションをシート状材料で作製することが可能となり、車両用灯具全体の軽量化につながり、ひいては低燃費を実現できる。
【0014】
また、上記構成の車両用灯具において、組み付け誤差を吸収するために変形可能な凸部が前記画成部材の周縁に所定の間隔で設けられ、
前記灯具ボディと前記灯具カバーとが前記凸部を挟み込んで前記画成部材を固定することが望ましい。
【0015】
このような構成の車両用灯具によれば、灯具ボディと灯具カバーとに挟持されて固定される画成部材の周縁に、変形可能な凸部が設けられることで、寸法公差等によって変動する灯具ボディと灯具カバーとの固定間隙に応じて凸部が潰され、薄厚のシート状材料であっても、確実に挟持固定できる。また、画成部材がシート状材料からなるため、凸部を潰しても、全体形状に影響の及ぶことがない。
【0016】
また、上記構成の車両用灯具において、組み付け誤差を吸収するために変形可能な凸部が前記画成部材の周縁に所定の間隔で設けられ、
成形エクステンション側の2本のリブと灯具ユニット側の1本のリブとが前記凸部を挟み込んで前記画成部材を固定することが望ましい。
【0017】
このような構成の車両用灯具によれば、成形エクステンション側の2本のリブ間で背面側(凹部側)が当接された凸部は、対向する灯具ユニット側の1本のリブとで挟まれるので、該凸部が1本のリブ側へ突出する形状から2本のリブ間に向かって突出する形状までの幅広い変形量で変形可能となる。つまり、灯具ユニット側の取付誤差が大きい場合であっても、凸部の潰れ量が大きく変わるので、薄厚のシート状材料であっても確実に挟持固定できる。なお、この場合、成形エクステンションと画成部材との相対位置は、凸部以外の当接により常に一定となる。
【0018】
また、上記構成の車両用灯具において、前記画成部材が、複数の光源に対応したリフレクタ一体のエクステンションを構成することが望ましい。
【0019】
このような構成の車両用灯具によれば、エクステンションと一体で作製されることで、シート状材料が画成壁によって立体的な構造体となり、高剛性が確保されて歪みを生じ難くすることができるので、リフレクタ単体をシート状材料で作製すると剛性が足らず、走行中の振動等によって歪んでしまう欠点を解消できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る車両用灯具によれば、シート状材料が画成壁によって立体的な構造体となり、コンビネーションランプ用の広面積のリフレクタ一体エクステンション等として成形しても剛性を確保することができる。この結果、軽量化を実現できるとともに、必要とされる取付部強度も小さく設定可能となり、製造コストや材料コストを低減できる。更に、複雑大型形状の一体成形が可能となるので、リフレクタに類似させたり、自由な模様を施したりした光源周り形状で画成部材を形成でき、車両用灯具の見栄えも向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る車両用灯具の好適な実施形態を詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る車両用灯具の正面図、図2は図1のII-II断面矢視図、図3は図1のIII−III断面矢視図、図4は図1のIV-IV断面矢視図であり、部分拡大図はシート状材料から成るエクステンションの一部をリフレックスリフレクタ(RR)とした場合の図である。
尚、本第1実施形態では、例えば車両後部に設けられるリアコンビネーションランプを例に車両用灯具100を説明するが、本発明に係る車両用灯具は、ヘッドランプ等に用いられても良い。
【0022】
車両用灯具100は、図1及び図2に示すように、灯具ボディ11と灯具カバー13とで形成される灯室15を有する。
灯具ボディ11は、図2及び図3に示すように、背面に突設された複数の固定部17a,17b,17c,17d等を介して車体パネル19に固定される。灯室15内には複数段(図示例では3段)に灯具ユニットが設けられ、下段灯具ユニットがバックランプ21、中段灯具ユニットがブレーキランプ23、上段灯具ユニットが車幅灯25として構成されている。
【0023】
灯室15にはバックランプ21、ブレーキランプ23、車幅灯25に渡ってベースパネル27が設けられ、ベースパネル27は灯具ボディ11に支持固定される。ベースパネル27は一体に形成してもよく、バックランプ21、ブレーキランプ23、車幅灯25のそれぞれに対応して別体形成したパネルを一体に連結して灯具ボディ11に固定したり、或いはそれぞれを灯具ボディ11に固定したりしてもよい。
【0024】
ベースパネル27の車幅灯25に対応する部分には、半導体発光素子である複数のLED29が複数段(本実施形態では3段)、複数列(本実施形態では4列)に設けられており、LED29はベースパネル27の背面に固定された駆動基板31に電気的に接続されて発光駆動される(図3参照)。
【0025】
ベースパネル27のバックランプ21に対応する部分にも、半導体発光素子である複数のLED29が複数段(本実施形態では3段)、複数列(本実施形態では5列)に設けられており、LED29もベースパネル27の背面に固定された不図示の駆動基板に電気的に接続されて発光駆動される。
【0026】
ベースパネル27のブレーキランプ23に対応する部分には、複数のランプソケット33a,33bが固定され、ランプソケット33a,33bには灯具カバー13に対面してバルブ(白熱電球、放電灯等)35a,35bが取り付けられる(図4参照)。
【0027】
灯室15内には、灯具カバー13とベースパネル27との間に配置され、複数の灯具ユニット(バックランプ21、ブレーキランプ23、車幅灯25)間と複数の光源(LED29、バルブ35a,35b)間とを区画形成する画成部材であるリフレクタ一体のエクステンション37が設けられている。なお、本発明に係るエクステンションは、少なくとも複数の灯具ユニット間又は複数の光源間の何れかを区画形成する画成部材であってもよい。
【0028】
本実施形態のエクステンション37は、シート状材料であるシート基板と少なくとも反射層をもつ一層以上のリフレクタ一体のエクステンションを構成する。反射層はシート状材料を真空成形、圧空成形等のシート成形により所定形状に成形後、蒸着等で形成しても良いし、印刷等でシート状材料に反射層を形成した後、そのシートを所定形状に成形しても良い。
【0029】
なお、本明細書中、シートとは例えば厚さが0.2mm以上2mm以下のプラスチックの薄い板状のものを言い、フィルムとは例えば厚さが0.2mm未満の薄い膜状のものを言い、これらシート及びフィルムを総称してシート状材料と言う。このシート状材料としては、特に厚さ1mm以下に形成した延性及び耐熱性があるポリカーボネイトや、ABS樹脂やPP樹脂等を用いることで、より軽量化に効果的である。
【0030】
図1及び図2に示すように、エクステンション37は、全体が各灯具ユニット(バックランプ21、ブレーキランプ23、車幅灯25)間を区画形成するエクステンションを構成すると共に、バックランプ21に対応するバックランプ部41と、車幅灯25に対応する車幅灯部43とが、複数のLED29間を区画形成するエクステンションを構成している。
【0031】
このように光源がLED29の場合、バックランプ部41と車幅灯部43とを光学設計の不要なエクステンションとすることができる。また、耐熱性を考慮する必要がなくなるので、リフレクタに類似させたり、自由な模様を施したりした光源周りの形状をとることができ、車両用灯具100の見栄えを良好にできる。
また、本実施形態のエクステンション37は、ブレーキランプ23に対応するブレーキランプ部分45が、複数のバルブ35a,35bに対応したエクステンションリフレクタを構成する。
【0032】
すなわち、エクステンション37は、LED29、バルブ35a,35bの光の出射方向に向けて突出するユニット画成壁47a,47b,47c,47d、光源画成壁49a,49b,49c,49d,49e、光源画成壁51a,51b、光源画成壁53a,53b,53cが灯具ユニット間及び光源間に設けられ、シート状材料により所定形状に一体成形されている。
尚、図4に示すように、エクステンション37の車両後方側と対峙する面の一部にリフレックスリフレクタ40を一体的に成形してもよい。これにより後続車等のヘッドライトをリフレックスリフレクタ40により反射させて、自車の認識を高めさせ、注意喚起を行うことができる。尚、リフレックスリフレクタは、灯具ボディや灯具カバー(アウターレンズ)、エクステンション、インナーレンズ等の車両用灯具の構成部品へ固定する場合もある。
【0033】
次に、本実施形態に係るエクステンション37の各部の固定構造について説明する。
図5は図4に示したB部の(a)要部拡大断面図、(b)要部拡大斜視図であり、図6は図4に示したC部の(a)要部拡大断面図、(b)要部拡大斜視図である。
【0034】
図5(a)に示すように、エクステンション37の周端部37aは、灯具カバー13と灯具ボディ11とによって挟持固定される。図5(b)に示すように、灯具ボディ11には複数の座板部55が適宜間隔で形成され、座板部55は対応するように灯具カバー13に適宜突設された突起57とで、エクステンション37の周端部37aを挟み固定する。
【0035】
また、図6(a)に示すように、エクステンション37の周端部37bは、灯具ボディ11に突設した上面平坦な突起57と、灯具カバー13に突設した半球状の突起61とによって挟持固定される。
これらの挟持固定部においては、エクステンション37の周端部37a,37bに、周縁強度を補強する折り曲げ部37cを形成し、この折り曲げ部37cの基部側を挟持することが、エクステンション37の歪み波及を防止するとともに、先端側の抜けを防止する上で好ましい。
【0036】
上述した本実施形態の車両用灯具100によれば、光源であるLED29及びバルブ35a,35bの光の出射方向に向けて突出するユニット画成壁47a,47b,47c,47d、光源画成壁49a,49b,49c,49d,49e、光源画成壁51a,51b、及び光源画成壁53a,53b,53cが、複数の灯具ユニット(バックランプ21、ブレーキランプ23、車幅灯25)間及び複数の光源(LED29、バルブ35a,35b)間に設けられることで、シート状材料からなるエクステンション37がこれら画成壁によって立体的な構造体となり、該エクステンション37は高い剛性が確保される。
【0037】
また、エクステンション37がシート状材料で一体成形されて軽量となることで、必要とされるエクステンション37の取付強度が低減可能となり、図5,図6に示したような簡素な構造での取付が可能となるので、製造コスト、材料コストを低減できる。
【0038】
その結果、エクステンション37は、コンビネーションランプ用の広面積のリフレクタ一体エクステンションのような複雑大型形状の一体成形が可能となり、安価でありながらリフレクタに類似させたり、自由な模様を施したりした見栄えの良い光源周り形状を有することができ、車両用灯具100の見栄えも向上させることができる。
【0039】
また、本実施形態のエクステンション37は、エクステンションと一体に作製されることで、シート状材料が立体的な構造体となって高剛性が確保され、歪みを生じ難くすることができるので、リフレクタ単体をシート状材料で作製すると剛性が足らず、走行中の振動等によって歪んでしまう欠点を解消できる。
【0040】
次に、本発明の第2実施形態に係る車両用灯具を説明する。
図7は本発明の第2実施形態に係る車両用灯具の要部断面図、図8は図7のD部における要部拡大説明図である。なお、以下の各実施形態において、図1〜図6に示した上記第1実施形態に係る車両用灯具100の構成部材と同等の構成部材には同符号を付し、重複する説明は省略するものとする。
【0041】
図7に示すように、本第2実施形態に係る車両用灯具200の灯室15内には、灯具カバー13とベースパネル27との間に配置され、複数のLED29間を区画形成する画成部材であるフィルムエクステンション63と共に、成形エクステンション67が設けられている。成形エクステンション67は、灯具ボディ11に支持固定された灯具ユニット69側のベースパネル27に、ネジ71,73によって螺着されている。
【0042】
フィルムエクステンション63は、LED29の光の出射方向に向けて突出する光源画成壁51a,51bが光源間に設けられ、シート状材料により所定形状に一体成形されている。
図8に示すように、フィルムエクステンション63の周縁には、組み付け誤差を吸収するために変形可能な凸部65が所定の間隔で設けられている(図9参照)。この凸部65は、例えばシート状材料の一方の面から他方の面に向かって凹ませることで突出形成される。この凸部65の断面形状は、鋭角な山形でなければどの様な形状でも良い。
【0043】
そして、これら凸部65に対応する成形エクステンション67の所定箇所には2本のリブ75a,75aが突設され、対向するベースパネル27には1本のリブ77が突設されている。リブ77は、リブ75a,75aの間に向かって突出される。
図8(a)に示すように、フィルムエクステンション63は、リブ75a,75aの間に凸部65が配置され、この凸部65にリブ77が当接するようにして挟持される。図中の想像線は、潰れる前の凸部65の外形を表す。
【0044】
凸部65を用いた固定部では、図8(b)に示すように、凸部65がリブ75a,75aと、リブ77とによって例えば1.0mm潰された状態での挟持固定を中央値とする。そして、凸部65による固定構造は、成形エクステンション67とベースパネル27とに図8(a)に示す中央値から離間方向の誤差が最小で−0.5mm生じている場合、或いは図8(c)に示す中央値から接近方向の誤差が最大で+0.5mm生じている場合であっても、凸部65を潰して挟持状態に固定することができる。
【0045】
すなわち、成形エクステンション67の2本のリブ75a,75a間で背面側(凹部側)が当接された凸部65は、対向する灯具ユニット69側におけるベースパネル27の1本のリブ77で挟まれる。そこで、凸部65が、1本のリブ77側へ突出する形状から2本のリブ75a,75a間に向かって突出する形状までの幅広い変形量で変形可能となる。
【0046】
つまり、灯具ユニット69側の取付誤差が大きい場合であっても、凸部65の潰れ量が大きく変わるので、薄厚のシート状材料であっても確実に挟持固定できる。なお、この場合、成形エクステンション67とフィルムエクステンション63との相対位置は、リブ75a,75aと、凸部以外の当接部79との当接により常に一定となる。また、フィルムエクステンション63がシート状材料からなるため、凸部65を潰しても、全体形状に影響が及ぶことはない。
【0047】
図9は図7のD部における変形例の要部拡大断面図である。
フィルムエクステンション63には、組み付け誤差を吸収するために設けた凸部65の他に、位置決め用凸部81を設けても良い。
位置決め用凸部81は、組み付け誤差を吸収するための凸部65よりも小さく形成することで、剛性を高めて潰れ難く形成されている。この位置決め用凸部81は、フィルムエクステンション63の凸部65の形成面63aに略直交する面63bに突設され、成形エクステンション67の位置決め片67aと、ベースパネル27の位置決め片27aとの間に挟入される。
【0048】
これにより、フィルムエクステンション63は、位置決め用凸部81が位置決め片67aの対向面に当接することで、組み付け方向に対して直交する方向(図9の左右方向)における位置決めがなされる。
尚、位置決め片67aの対向面に位置決め用凸部を突設することで、フィルムエクステンションの位置決めを行うように構成することもできる。
【0049】
次に、本発明の第3実施形態に係る車両用灯具を説明する。
図10は本発明の第3実施形態に係る車両用灯具を説明する要部拡大断面図である。
この第3実施形態に係る車両用灯具300は、図10に示すように、灯具ボディ11の外側からの吸引によってフィルムエクステンション63の裏面を吸着して固定するための吸引固定部83を有する。
【0050】
吸引固定部83となる灯具ボディ11には、先端が平坦面となる略円錐形状の固定柱85が灯室15側に突設され、該固定柱85の先端面は平坦な接着座面87となっている。固定柱85には軸線方向の貫通吸引孔89が形成され、貫通吸引孔89は接着座面87に開口されている。
【0051】
この接着座面87には、貫通吸引孔89を包囲するように図10(b)に示す円環状の接着手段91が貼着されている。接着手段91としては、例えば中央開口部91aの周囲に環状接着部91bを形成した両面接着テープ等を用いることができる。
【0052】
この吸引固定部83では、フィルムエクステンション63を所定の組み付け位置に配置した後、吸引固定部83の貫通吸引孔89から真空吸引を行うことで、フィルムエクステンション63の裏面が接着手段91を介して接着座面87に接着固定される。この際、フィルムエクステンション63の周端部63cは、変形を回避するために自由端とすることが好ましい。
【0053】
このような吸引固定部83によれば、フィルムエクステンション63の周縁を挟持固定する為の成形エクステンション67や鍔部が不要となる。また、フィルムエクステンション63の取付部は撓むことがなく、フィルムエクステンション63の全体が撓むこともない。
【0054】
また、このような吸引固定部83によれば、フィルムエクステンション63の周縁近傍に限らず、中央部分の所望部位を灯具ボディ11側に固定することができる。さらに、フィルムエクステンション63の表面側から押圧付勢する必要がないので、取付に際して、表面側に形成した蒸着面に汚れ、傷つきが生じない。また、吸引することにより接着面を接着方向に押圧付勢できるので、接着剤の塗布のみによる固定に比べ、強固に固定することができる。
このような吸引固定部83は、図3に示したリフレクタ一体のエクステンション37のA部に用いることもできる。
【0055】
次に、本発明の第4実施形態に係る車両用灯具を説明する。
図11は本発明の第4実施形態に係る車両用灯具の要部分解斜視図である。
本第4実施形態に係る車両用灯具400の灯室内には、図11に示すように、複数のLED29間を区画形成する画成部材であるフィルムエクステンション107と、ベースパネル127とが設けられる。
【0056】
図11に示すように、フィルムエクステンション107は、LED29の光の出射方向に向けて突出する光源画成壁105a,105bが光源間に設けられ、シート状材料により所定形状に一体成形されている。フィルムエクステンション107の周縁におけるユニット画成壁104aの裾部には、鍔部93が形成されると共に、平行な一対の切り込み99,99によって係止舌片101が複数形成されている。
【0057】
ベースパネル127には、フィルムエクステンション107の鍔部93に対応した座面95がLED基板94の周囲に形成され、一対の保持壁97,97が座面95の長手方向に平行な辺部に起立形成されている。そして、フィルムエクステンション107の係止舌片101に対応する保持壁97,97には、各係止舌片101を係止するための係止スリット103が設けられている。
【0058】
そこで鍔部93を座面95に当接するとともに、一対の保持壁97,97の間でフィルムエクステンション107を挟み、且つ係止舌片101を係止スリット103に係止することで、LED基板94に対してフィルムエクステンション107を位置決めすると同時に、ベースパネル27に固定することができる。
この固定構造によれば、シート状材料からなるフィルムエクステンション107の弾性力を利用した係止舌片101により、他部材を使用せずに、簡単な構造で固定することができる。
【0059】
尚、本発明の車両用灯具に係る灯具ボディ、灯具カバー、灯具ユニット、光源、画成部材、画成壁及び凸部等の構成は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば凸部は前記画成部材の中央にあってもかまわない。本発明の趣旨に基づいて種々の形態を採りうることは云うまでもない。
例えば、上記第2実施形態に係る車両用灯具200では、フィルムエクステンション63の周縁に設けた凸部65が成形エクステンション67とベースパネル27とで挟持固定される場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、灯具ボディ11と灯具カバー13とで凸部65を挟み込んでフィルムエクステンション63を固定するように構成することもできる。
また、フィルムエクステンション63を成形エクステンション67とベースパネル27とで挟持固定する代わりに、レーザ溶着や熱溶着等で固定することも可能である。この場合、フィルムエクステンション63は凸部65等の複雑な形状を設ける必要がなく、コスト的に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用灯具の正面図である。
【図2】図1のII-II断面矢視図である。
【図3】図1のIII−III断面矢視図である。
【図4】図1のIV-IV断面矢視図である。
【図5】図4に示したB部の(a)要部拡大断面図、(b)要部拡大斜視図である。
【図6】図4に示したC部の(a)要部拡大断面図、(b)要部拡大斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る車両用灯具の要部断面図である。
【図8】図7のD部における要部拡大説明図である。
【図9】図7のD部における変形例の要部拡大断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る車両用灯具を説明する要部拡大断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る車両用灯具の要部分解斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
11…灯具ボディ
13…灯具カバー
15…灯室
21…バックランプ(灯具ユニット)
23…ブレーキランプ(灯具ユニット)
25…車幅灯(灯具ユニット)
29…LED(光源)
35a,35b…バルブ(光源)
37…エクステンション(画成部材)
40…リフレックスリフレクタ
47a,47b,47c,47d…ユニット画成壁(画成壁)
49a,49b,49c,49d,49e…光源画成壁(画成壁)
63…フィルムエクステンション(画成部材)
100…車両用灯具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
灯具ボディと灯具カバーとで形成される灯室内に、少なくとも複数の灯具ユニット間又は複数の光源間の何れかを区画形成する画成部材を備えた車両用灯具であって、
前記画成部材は、光源の光の出射方向に向けて突出する画成壁が少なくとも前記灯具ユニット間又は前記光源間の何れかに設けられ、シート状材料により所定形状に一体成形されることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記光源が半導体発光素子からなり、前記画成部材が該光源間を区画形成するエクステンションを構成することを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記画成部材が、前記灯具ユニット間を区画形成するエクステンションを構成することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
組み付け誤差を吸収するために変形可能な凸部が前記画成部材の周縁に所定の間隔で設けられ、
前記灯具ボディと前記灯具カバーとが前記凸部を挟み込んで前記画成部材を固定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
組み付け誤差を吸収するために変形可能な凸部が前記画成部材の周縁に所定の間隔で設けられ、
成形エクステンション側の2本のリブと灯具ユニット側の1本のリブとが前記凸部を挟み込んで前記画成部材を固定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記画成部材が、複数の光源に対応したリフレクタ一体のエクステンションを構成することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両用灯具。
【請求項1】
灯具ボディと灯具カバーとで形成される灯室内に、少なくとも複数の灯具ユニット間又は複数の光源間の何れかを区画形成する画成部材を備えた車両用灯具であって、
前記画成部材は、光源の光の出射方向に向けて突出する画成壁が少なくとも前記灯具ユニット間又は前記光源間の何れかに設けられ、シート状材料により所定形状に一体成形されることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記光源が半導体発光素子からなり、前記画成部材が該光源間を区画形成するエクステンションを構成することを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記画成部材が、前記灯具ユニット間を区画形成するエクステンションを構成することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
組み付け誤差を吸収するために変形可能な凸部が前記画成部材の周縁に所定の間隔で設けられ、
前記灯具ボディと前記灯具カバーとが前記凸部を挟み込んで前記画成部材を固定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
組み付け誤差を吸収するために変形可能な凸部が前記画成部材の周縁に所定の間隔で設けられ、
成形エクステンション側の2本のリブと灯具ユニット側の1本のリブとが前記凸部を挟み込んで前記画成部材を固定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記画成部材が、複数の光源に対応したリフレクタ一体のエクステンションを構成することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両用灯具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−54569(P2009−54569A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152509(P2008−152509)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】
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