説明

車両用灯具

【課題】衝撃によるブラケットの破壊の程度を管理及び制御することができる車両用灯具を提供すること。
【解決手段】ハウジング2に形成された平板状の複数のブラケット9を介して車体に取り付けられる車両用灯具において、前記各ブラケット9に矩形孔11を形成し、該矩形孔11内にY字状の衝撃吸収リブ12を一体に形成する。ここで、前記衝撃吸収リブ12は、衝撃力の作用方向に延びる1本の第1のリブ12aと、該第1のリブ12aの端部から二股状に分岐する2本の第2のリブ12bとで構成される。又、前記各ブラケット9をその先端部に形成された車体取付孔10に挿通するボルトによって車体に取り付けるとともに、各ブラケット9の基端部と前記車体取付孔10との間に前記矩形孔11と衝撃吸収リブ12を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングに形成された平板状の複数のブラケットを介して車体に取り付けられる車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘッドランプ等の車両用灯具には、車両衝突時の破損防止や歩行者保護等の観点から衝撃を吸収する対策が講じられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、レンズの一部に薄肉部を設け、車両衝突時にレンズを薄肉部で屈曲変形させることによって衝撃力を吸収する提案がなされ、特許文献2には、レンズの全面に対して設けられる第1の衝撃吸収手段と、該第1の衝撃吸収手段によっても同じレンズ部分的に生じる規定値を超える衝撃を生じる部分に重複して設けられる第2の衝撃吸収手段によって衝撃吸収手段を構成する提案がなされ、特許文献3には、車両用灯具を車体に取りつける取付ステーの一部にノッチ等の脆弱部を形成する構成が提案されている。
【0004】
又、特許文献4には、図7の部分平面図に示すように、車両用灯具を車体に取り付けるためにハウジングに一体に形成された平板状の複数のブラケット109(図7には1つのみ図示)において、その基端部と先端に形成された車体取付孔110との間に矩形孔111を形成し、この矩形孔111の内部にX字状の衝撃吸収リブ112を形成する提案がなされている。これによれば、車両衝突時に図示矢印方向から衝撃力が作用すると、ブラケット109の他の部分よりも脆弱な衝撃吸収リブ112が破壊され、その破壊によって衝撃が吸収されて緩和される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−236813号公報
【特許文献2】特開2006−062455号公報
【特許文献3】特開2007−090916号公報
【特許文献4】特開2009−220640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特許文献4において提案された図7に示す技術思想を踏襲するものであるが、特許文献4において提案された構成には次のような問題がある。
【0007】
即ち、図7に示すように各ブラケット109に形成された矩形孔111内にX字状の衝撃吸収リブ112を形成した構成では、車両衝突時に各ブラケット109に図示矢印方向から衝撃力が加わった場合、衝撃吸収リブ112には衝撃力が100%伝達されず、その分力が作用するだけであるため、衝撃吸収リブ112を破壊させるに至る衝撃力の大きさにばらつきが生じ、衝撃吸収リブの破壊の程度を管理及び制御することが困難であるという問題がある。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、衝撃によるブラケットの破壊の程度を管理及び制御することができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ハウジングに形成された平板状の複数のブラケットを介して車体に取り付けられる車両用灯具において、前記各ブラケットに矩形孔を形成し、該矩形孔内にY字状の衝撃吸収リブを一体に形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記衝撃吸収リブは、衝撃力の作用方向に延びる1本の第1のリブと、該第1のリブの端部から二股状に分岐する2本の第2のリブとで構成されることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記各ブラケットをその先端部に形成された車体取付孔に挿通するボルトによって車体に取り付けるとともに、各ブラケットの基端部と前記車体取付孔との間に前記矩形孔と衝撃吸収リブを形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両用灯具を車体に取り付けるための各ブラケットに開口する矩形孔内にY字状の衝撃吸収リブを一体に形成したため、車両衝突時の衝撃力がそのまま100%衝撃吸収リブに伝達されるため、該衝撃吸収リブを破壊させるに至る衝撃力の大きさにばらつきが生じず、衝撃吸収リブの太さ等を調整することによって衝撃によるブラケットの破壊の程度を容易に管理及び制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る車両用灯具の側断面図である。
【図2】本発明に係る車両用灯具のハウジングの平面図である。
【図3】図1のA部拡大詳細図である。
【図4】図2のB部拡大詳細図である。
【図5】ブラケットの斜視図である。
【図6】(a)〜(c)はブラケットが破壊する過程を示す平面図である。
【図7】従来の車両用灯具のブラケットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明に係る車両用灯具の側断面図、図2は同車両用灯具のハウジングの平面図、図3は図1のA部拡大詳細図、図4は図2のB部拡大詳細図、図5はブラケットの斜視図、図6(a)〜(c)はブラケットが破壊する過程を示す平面図である。
【0016】
図1に示す車両用灯具1は、車両前部の左右に設けられるヘッドランプであって、その基本構造は左右で同じであるため、以下、一方についてのみ図示及び説明する。
【0017】
図1に示すように、ヘッドランプ1においては、ハウジング2とその前面開口部を覆うカバーレンズ3とで画成される灯室4内に光源5とリフレクタ6が収容されている。ここで、リフレクタ6は、その下部がボールジョイント7によってハウジング2に傾動可能に支持されており、その上部に垂直に立設されたブラケット6aにはハウジング2に裏面側から挿通するエイミングスクリュー8が螺合している。従って、エイミングスクリュー8を回すと、リフレクタ6が光源5と共にボールジョイント7を中心として上下に傾動して所望のエイミング調整がなされる。
【0018】
以上のように構成されたヘッドライト1は、ハウジング2の背面の上下左右に車両後方(図1の右方)に向かって一体に突設された平板状の計4つのブラケット9を介して車体20に取り付けられている。ここで、図2に示すように、ハウジング2の上部左右には計2つのブラケット9が水平に形成されており、ハウジング2の下部左右には計2つのブラケット9が垂直に形成されている。尚、4つのブラケット9の構成は全て同じであるため、以下、1つのブラケット9のみの構成と作用について説明する。
【0019】
図4及び図5に示すように、ハウジング2に一体に形成された平板状の各ブラケット9の先端部には円孔状の車体取付孔10が形成されており、各ブラケット9の基端部と車体取付孔10との間には矩形孔11が形成されている。そして、ブラケット9の矩形孔11内にはY字状の衝撃吸収リブ12が一体に形成されている。この衝撃吸収リブ12は、ブラケット9の矩形孔11内の幅方向中心を基端部から衝撃力の作用方向である車両後方(図4の右方)に向かって延びる1本の第1のリブ12aと、該第1のリブ12aの端部(後端部)から二股状に左右に分岐する2本の第2のリブ12bによって構成されており、ブラケット9の矩形孔11の左右両側に形成された細い一対の脚部9a同士を連結している。
【0020】
而して、例えば図1のA部においては、図3に示すように、車体20の開口部周縁の一部に車両後方に向かって直角に折り曲げられたフランジ部20Aが形成され、車体20のフランジ部20Aの近傍に形成された貫通孔20aにはハウジング2のブラケット9が通されて車体20のフランジ部20Aの上に重ねられている。そして、車体20のフランジ部20Aに形成された不図示のボルト挿通孔とブラケット9の先端部に形成された車体取付孔10にボルト13が下方から通され、該ボルト13の先端部に螺合するナット14を締め付けることによってブラケット9が車体20に取り付けられる。他の3つのブラケット9も同様に車体20に取り付けられるため、図1に示すヘッドライト1は、ハウジング2に一体に形成された計4つのブラケット9を介して車体20に取り付けられる。
【0021】
ところで、車両が前面衝突したような場合、ヘッドライト1には車両前方から強い衝撃が加えられ、そのハウジング2に一体に形成された各ブラケット9には図6(a)に示すように車両前方から衝撃力が加えられる。そして、この衝撃力は、そのまま100%衝撃吸収リブ12の第1のリブ12aに加えられた後、2つの第2のリブ12bへと伝達される結果、図6(b)に示すようにブラケット9の左右の脚部9aが第2のリブ12bから伝達される衝撃力を受けて外側に膨らむように弾性変形し、この弾性変形によって衝撃の一部が吸収されるとともに、ヘッドランプ1の全体が車両後方(図6の右方)へ移動する。
【0022】
その後、図6(c)に示すように、衝撃吸収リブ12において最もの応力が集中する撃吸収リブ12の第1のリブ12aと第2のリブ12bの合流点において破壊が生じて第2のリブ12bの一方が図示のように破断し、この衝撃吸収リブ12の破壊によって衝撃が更に吸収される。尚、他の3つのブラケット9においても同様に衝撃吸収リブ12の破壊が発生し、この破壊によって衝撃が吸収されるためにハウジング2以外の他のカバーレンズ3や光源5、リフレクタ6等の部品の破損が免れ、ハウジング2のみを新しいものと交換すれば他の部品はそのまま再利用することができるため、ユーザーの経済的な負担が軽減される。
【0023】
以上のように、本実施の形態に係るヘッドランプ1によれば、当該ヘッドランプ1を車体20に取り付けるための各ブラケット9に開口する矩形孔11内にY字状の衝撃吸収リブ12を一体に形成したため、車両衝突時の衝撃力がそのまま100%衝撃吸収リブ12に伝達される。このため、衝撃吸収リブ12を破壊させるに至る衝撃力の大きさにばらつきが生じず、衝撃吸収リブ12の太さ等を調整することによって衝撃によるブラケット9の破壊の程度を容易に管理及び制御することができる。
【0024】
尚、以上は本発明をヘッドライトに適用した形態について説明したが、本発明は、ヘッドライト以外の他の任意の車両用灯具に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0025】
1 ヘッドランプ(車両用灯具)
2 ハウジング
3 カバーレンズ
4 灯室
5 光源
6 リフレクタ
6a リフレクタのブラケット
7 ボールジョイント
8 エイミングスクリュー
9 ハウジングのブラケット
9a ブラケットの脚部
10 ブラケットの車体取付孔
11 ブラケットの矩形孔
12 衝撃吸収リブ
12a 衝撃吸収リブの第1のリブ
12b 衝撃吸収リブの第2のリブ
13 ボルト
14 ナット
20 車体
20A 車体利のフランジ部
20a 車体の貫通孔



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに形成された平板状の複数のブラケットを介して車体に取り付けられる車両用灯具において、
前記各ブラケットに矩形孔を形成し、該矩形孔内にY字状の衝撃吸収リブを一体に形成したことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記衝撃吸収リブは、衝撃力の作用方向に延びる1本の第1のリブと、該第1のリブの端部から二股状に分岐する2本の第2のリブとで構成されることを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記各ブラケットをその先端部に形成された車体取付孔に挿通するボルトによって車体に取り付けるとともに、各ブラケットの基端部と前記車体取付孔との間に前記矩形孔と衝撃吸収リブを形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用灯具。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−102059(P2011−102059A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257054(P2009−257054)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】