説明

車両用灯具

【課題】半導体発光素子を光源とする車両用灯具において、優れた放熱設計の自由度の基に半導体発光素子の自己発熱の放熱性を高めることにより半導体発光素子の温度上昇を抑制し、よって半導体発光素子の信頼性を維持しつつ発光効率の低下が抑制されて所定の照射光量を確保することが可能な車両用灯具を提供することにある。
【解決手段】LED光源7と該LED光源7から発せられた光の配光を制御する配光制御手段を備えた灯体ユニット6に嵌合部19を延設し、密閉空間からなる灯室5内に収容された灯体ユニット6の嵌合部19を灯室5内からシールカバー4を介して灯室5外に気密に延出させ、灯室外に位置するヒートシンク15を嵌合部19に着脱可能に嵌合するようにした。これにより、LED光源7から発せられた熱が嵌合部19を伝導して灯室5外に位置するヒートシンク15で放熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関するものであり、詳しくは、半導体発光素子を光源とする車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子(以下、LEDを例にとる)は、温度上昇によって発光効率が低下すると共に発光寿命の短縮に繋がるといった、性能劣化の特性を有している。LEDの温度上昇の要因は、LEDの点灯時の自己発熱や高温環境下に晒された場合等が考えられる。
【0003】
一方、LEDは各種ランプに比較して一般的に小型、低消費電力、長寿命等の利点を有しており、従来この利点を利用してハイマウントストップランプ、ストップアンドテールランプ、方向指示灯等の車両用灯具の光源として使用され、近年ではLEDを光源とする車両用前照灯の開発・実用化もなされている。
【0004】
車両用灯具は一般的に、前面カバーレンズとハウジングによって構成された灯具の内部(灯室内)が密閉空間として形成され、その灯室内に光源となるLEDが支持される。そして、LEDが点灯すると、LEDの自己発熱と該自己発熱による灯室内の温度上昇分との相乗作用によってLED自体の温度が著しく上昇し、発光寿命の短縮と共に発光効率が大きく低下する。その結果、信頼性が低下すると共に灯具からの照射光量が低減し、極端な場合には灯具に要求される配光性能や配光規格を満足しなくなる可能性も有している。
【0005】
また、灯室内の温度がLEDの動作温度範囲の定格値よりも高くなるとLEDの点灯が不可能となり、灯具としての機能を果すことができなくなる場合もある。
【0006】
そこで、上記問題の発生を抑制するような車両用灯具(車両用前照灯)の提案がなされている。それは図8に示すように、透明カバー51と、ランプボディ52と、鉛直パネル部53、ユニット支持部54及びヒートシンク部55が一体化された支持ブラケット56と、ソケットカバー57とで車両用前照灯50の灯室58を形成し、前照灯50の灯室58内には支持ブラケット56の鉛直パネル部53及びユニット支持部54が位置し、ヒートシンク部55は前照灯50の灯室58外に延出している。
【0007】
そして、前照灯50の灯室58内に位置した支持ブラケット56のユニット支持部54には半導体発光素子59とリフレクタ60と光制御部材61とが固定され、光制御部材61は投影レンズ62を支持している。
【0008】
半導体発光素子59を光源とする上記構成の車両用前照灯50においては、半導体発光素子59の点灯時の自己発熱は、熱の良導体である材料により形成された支持ブラケット56のユニット支持部54からヒートシンク部55まで伝導されて移動し、ヒートシンク部55で灯室58外に放散される。これにより、半導体発光素子59点灯時の半導体発光素子59自体の温度上昇を抑制するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−141917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来の車両用前照灯50においては、ランプボディ52と支持ブラケット56のヒートシンク部55とが柔軟性を有する材料で形成されたソケットカバー57を介して連結されており、エイミング調整で支持ブラケット56が傾動したときに、その傾動による変位でソケットカバー57が変形して変位を吸収し、固定されたランプボディ52には変位力が加わらないような構成となっている。
【0011】
ところで、ヒートシンク部55は、ヒートシンク部55の外気(空気)と接する部分の全表面積(放熱面積)が大きいほど放熱効率が高くなり、放熱効果も良好となる。換言すると、ヒートシンク部55の大きさが放熱効率に関係することになるが、従来の車両用前照灯50の場合、ソケットカバー57があることによってヒートシンク部55の大きさがソケットカバー57によって制限されることになる。そのため、ヒートシンク部55の大きさに制約が加わるために十分な放熱効率が得られないものとなっている。
【0012】
また、エイミング調整で支持ブラケット56が傾動したときに、ヒートシンク部55が大きいとソケットカバー57との間の気密性が損なわれて防水・防塵効果が失われる恐れがある。そのため、ヒートシンク部55の大きさに制約が加わり、十分な放熱効果が得られない可能性もある。
【0013】
そこで、本発明は上記問題に鑑みて創案なされたもので、その目的とするところは、半導体発光素子を光源とする車両用灯具において、優れた放熱設計の自由度の基に半導体発光素子の自己発熱の放熱性を高めることにより半導体発光素子の温度上昇を抑制し、よって半導体発光素子の信頼性を維持しつつ発光効率の低下が抑制されて所定の照射光量を確保することが可能な車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載された発明は、光源と、光源から発せられた光の配光を制御する配光制御手段を備えた灯体ユニットが密閉空間からなる灯室内に収容されてなる車両用灯具であって、
前記灯体ユニットは該灯体ユニットに一体化されて前記灯室内から灯室外に気密に延出する嵌合部を有し、前記灯室外に位置する放熱部材が前記嵌合部に着脱可能に嵌合されることにより前記光源から発せられた熱が前記嵌合部を伝導して前記放熱部材で放熱されることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の請求項2に記載された発明は、請求項1において、前記嵌合部は、柔軟性を有する材料で形成された蛇腹状のシールカバーの開口に気密に挿通されることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の請求項3に記載された発明は、請求項1または請求項2のいずれか1項において、前記灯体ユニットは該灯体ユニットに一体化された一対の回動軸を有し、該回動軸を支点として前記灯体ユニットを前記灯室内で回動させるためのエイミング機構を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の車両用灯具は、密閉空間からなる灯室内に収容された灯体ユニットに延設された嵌合部を灯室内から灯室外に気密に延出させ、灯室外に位置する放熱部材を嵌合部に着脱可能に嵌合するようにした。これにより、灯室内に位置する灯体ユニットの光源から発せられた熱が嵌合部を伝導されて灯室外に位置する放熱部材で効率よく放熱される。
【0018】
その結果、放熱部材に対して放熱設計の自由度が確保される。また、優れた放熱効果により光源の点灯時の温度上昇が抑制されて発光効率の低下が低減され、それにより所定の照射光量を確保すること及び信頼性を維持することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態の説明図である。
【図2】灯体ユニットに係わる説明図である。
【図3】光学系の説明図である。
【図4】灯体ユニットとヒートシンクの嵌合の説明図である。
【図5】同様に、灯体ユニットとヒートシンクの嵌合の説明図である。
【図6】放熱系の説明図である。
【図7】機構系の説明図である。
【図8】従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の好適な実施形態を図1〜図7を参照しながら、詳細に説明する(同一部分については同じ符号を付す)。尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限られるものではない。
【0021】
図1は、本実施形態の車両用灯具の縦断面を模式的に示した説明図である。車両用灯具1は、両端開口のハウジング3とハウジング3の前端開口縁に支持された前面カバーレンズ2とハウジング3の後端開口を塞ぐように設けられたシールカバー4によって灯室5が形成され、灯室5内に灯体ユニット6が支持されて、その一部(後述する灯体側嵌合部19)がシールカバー4を気密に貫通して灯室5外に延出されている。
【0022】
灯体ユニット6は光学系、放熱系及び機構系を備えており、そのうち光学系は、光源となる半導体発光素子(本実施形態では半導体発光素子をLEDとし、以下、LEDと呼称する)7、LED7が実装されたLED実装基板8、LED実装基板8が載置されたマウントプレート9、マウントプレート9に前記LED実装基板8を覆うように連接されたリフレクタ10、リフレクタ10に連接されて前方方向に延びる略筒状のレンズホルダ11、レンズホルダ11の内底面から上方に延びる遮蔽体12及びレンズホルダ11の先端縁のリング状の部分に支持された投影レンズ13で構成され、プロジェクタランプを形成している。レンズホルダ11の略筒状部分の内部は、LED光源7から発せられた光が投影レンズ13に至るまでの光路形成に係わる空間領域となる。
【0023】
また、放熱系は、発熱源ともなるLED7、LED7が実装されたLED実装基板8が載置され熱伝導性の良好な材料からなるマウントプレート9、マウントプレート9に連接され熱伝導性の良好な金属材料からなるリフレクタ10、マウントプレート9に連接され灯室5内に位置してベース部14aと複数の放熱フィン部14bを有する内設ヒートシンク14、リフレクタ10と一体化されて灯室5外に位置してベース部15aと複数の放熱フィン部15bを有する外設ヒートシンク15で構成されている。
【0024】
更に、機構系は、上記光学系及び放熱系を傾動して光の照射方向を調整するエイミング機構であり、リフレクタ10の外底面から下方に延びるリフレクタ支持プレート16に該リフレクタ支持プレート16を挟むようにタップ孔を有するエイミングナット17が取り付けられ、ハウジング3のスクリュー挿通孔に回転可能に挿通支持されたエイミングスクリュー18のネジ部18aがエイミングナット17のタップ孔に螺嵌された構成とされている。
【0025】
なお、リフレクタ10の両外側部にはエイミング時の支点となる一対の回動軸22が一直線状に延設されており、ハウジング3に固定された回転軸支持体23に回動自在に支持されている(図2参照)。
【0026】
次に、上述の光学系における光路形成及び放熱系における熱移動について説明する。
【0027】
まず、光学系においては、図3に示すように、LED光源7が点灯して光を発するとLED光源7からリフレクタ10に向かう光はリフレクタ10の反射面10aで反射されて前方の投影レンズ13の方向に向かい、その一部は遮蔽体12によって光路が遮られる。一方、リフレクタ10の反射面10aで反射された光のうち遮蔽体12に遮られることのない光はレンズホルダ11内を導光されて投影レンズ13に至り、投影レンズ13で所望の配光に制御されて前面カバーレンズ2を介して車両用灯具1の前方に向って照射される。
【0028】
次に、放熱系については、上記構成においてリフレクタ10と外設ヒートシンク15が一体化されている旨を述べたが、以下に図4を参照して具体的に説明する。
【0029】
リクレクタ10には、後方側(ハウジンング3側)に向って延びる筒状の灯体側嵌合部19が設けられ、外設ヒートシンク15にはベース部15aと該ベース部15aから延びる複数の放熱フィン部15bと、同様にベース部15aから前記放熱フィン部15bと反対側に延びる筒状あるいは柱状の外設ヒートシンク側嵌合部20が設けられている。また、シールカバー4は柔軟性を有する材料で蛇腹状に形成され、中央部にリフレクタ10から延びる灯体側嵌合部19の外径と略同一の径を有する開口4aを備えると共に、開口縁から後方に延びる環状のフランジ部4bを有している。
【0030】
そして、シールカバー4の開口4aにリフレクタ10から延びる灯体側嵌合部19が挿通され、該灯体側嵌合部19が環状フランジ部4bの内側に気密に内嵌支持されている。更に、シールカバー4に支持された筒状の灯体側嵌合部19の中空筒内19aに外設ヒートシンク15から延びる筒状あるいは柱状の外設ヒートシンク側嵌合部20が挿入され、灯体側嵌合部19と該灯体側嵌合部19の中空筒内19aに内嵌支持された外設ヒートシンク側嵌合部20が固定用ネジ21等の締結部材で互いに締め付けられて固定一体化されている。これにより、嵌合部での固定が安定し、ヒートシンクの形状や大きさに関わらず、嵌合部の形状は一定となるため、灯具のエイミング調整により、灯室内で回動しても防水、防塵効果を保つことができるものとなる。
【0031】
なお、灯体側嵌合部19の中空筒内19aに長手方向に沿う凹状のガイド溝19bを設け、外設ヒートシンク側嵌合部20に長手方向に沿う凸状のガイド突起20aを設け、ガイド溝19bに沿ってガイド突起20aを摺動嵌合するようにしてもよい。これにより、灯体ユニット6と外設ヒートシンク15との回転方向の位置決めが確実に行われ、位置決めの再現性も確保することができる。
【0032】
また、外設ヒートシンク側嵌合部20の外周面に一体的にOリング等のシールパッキン20bを設け、両者間の気密性を高めて防水等による不具合の発生を抑制することも可能である。
【0033】
更に、図5に示すように、灯体側嵌合部19の中空筒内19aの形状を、開口19cからリフレクタ10の方向に向かうにつれて内径が小さくなるテーパ状とし、外設ヒートシンク側嵌合部20の外形形状を、先端20cから外設ヒートシンク15の方向に向かうにつれて外径が大きくなるテーパ状とし、且つ、灯体側嵌合部19の中空筒内19aのテーパ角度と外設ヒートシンク側嵌合部20のテーパ角度を同じものとする。
【0034】
これにより、外設ヒートシンク15を灯体ユニット6に取り付ける際の取付作業が容易なものとなり、生産性の向上を図ることができる。
【0035】
そこで、図6より、LED光源7が点灯するとLED光源7は光を発すると共に熱も発生する。LED光源7で発生した熱(自己発熱)はLED光源7が実装された基板に移動し、LED実装基8を伝導されて該LED実装基板8が載置されたマウントプレート9に移動する。マウントプレート9に移った熱はマウントプレート9を伝導されて該マウントプレート9に連接された、内設ヒートシンク14のベース部14aに移動する。
【0036】
内設ヒートシンク14のベース部14aに移った熱はその一部が、ベース部14a内を伝導されて放熱フィン部14aに移動し、該放熱フィン部14aの表面に至り、放熱フィン部14aの表面に到達した熱は該表面近傍の空気に伝達されて移動し、外気を媒体として内設ヒートシンク14から灯室5内に放散される。
【0037】
同様に、内設ヒートシンク14のベース部14aに移った熱の一部は、該内設ヒートシンク14のベース部14aに連接されたリフレクタ10に移動し、リフレクタ10に移った熱はその一部が、リフレクタ10内を伝導されて該リフレクタ10の表面に至り、リフレクタ10の表面に到達した熱は該表面近傍の空気に伝達されて移動し、空気を媒体としてリフレクタ10から灯室5内に放散される。
【0038】
同様に、リフレクタ10に移った熱の一部は、該リフレクタ10の灯体側嵌合部19に伝導され、灯体側嵌合部19に移った熱は灯体側嵌合部19が外嵌支持する、外設ヒートシンク15の外設ヒートシンク側嵌合部20に移動する。外設ヒートシンク側嵌合部20に移った熱は外設ヒートシンク側嵌合部20から外設ヒートシンク15のベース部15aに移動し、ベース部15aに移った熱は該ベース部15a内を伝導されて放熱フィン部15bに移動し、該放熱フィン部15bの表面に至り、放熱フィン部15aの表面に到達した熱は該表面近傍の空気に伝達されて移動し、外気を媒体として外設ヒートシンク15から灯室5外に放散される。
【0039】
このように、LED光源7の点灯時に発生する熱は、内設ヒートシンク14及びリフレクタ10を介して灯室5内に放散され、外設ヒートシンク15を介して灯室5外に放散される。その結果、優れた放熱効果により、LED光源7の点灯時の温度上昇が抑制されて発光効率の低下が低減され、それにより所定の照射光量を確保することが可能となると共に、信頼性を維持することも可能となる。
【0040】
そこで、気密空間からなる灯室5内に位置する内設ヒートシンク14及びリフレクタ10と灯室5外に位置する外設ヒートシンク15との放熱効率を比較すると、夫々の表面温度と表面近傍の空気との温度差は、灯室5内にこもった暖気に接する内設ヒートシンク14及びリフレクタ10よりも外気の冷気に接する外設ヒートシンク15の方が大きい。
【0041】
したがって、内設ヒートシンク14及びリフレクタ10よりも外設ヒートシンク15の方が放熱効率が高く、LED光源8から発せられた熱の多くは外設ヒートシンク15で放散されることになる。
【0042】
ところで、LED光源7は、車両用灯具に求められる照射光量によって使用される数が異なる。例えば、同じ配光規格の対象となる灯具であっても、視認性の向上を図るために配光規格を満足させながら適宜に配光パターンや光度分布を設計し、その実現に必要な照射光量を算出してそれに対応するLED光源7の数が算出される。
【0043】
その場合、LED光源7の使用数によって点灯時の総発熱量が異なるものとなり、それに対応するように放熱性を考慮する必要がある。本実施形態では放熱の多くを外設ヒートシンク15が担うために放熱性の調整は外設ヒートシンク15の外気と接する放熱フィンブ部15bの全表面積(放熱面積)を適宜に設定することにより行われる。
【0044】
放熱フィン部15bの全表面積(放熱面積)の増加及び低減は夫々外設ヒートシンク15全体の大型化及び小型化により実現される。つまり、LED光源7の点灯時の総発熱量に対応する放熱効果を得るためには、それに対応した大きさの外設ヒートシンク15を用いる必要がある。
【0045】
本発明の車両用灯具では、灯室5内からシールカバー4の開口4aを気密に挿通されて灯室5外に延出された灯体側嵌合部19の中空筒内19aに、適宜に大きさが設定された外設ヒートシンク15から延びる筒状あるいは柱状の外設ヒートシンク側嵌合部20を挿入して固定一体化するような構成とした。
【0046】
そのため、灯体ユニット6の灯体側嵌合部19と外設ヒートシンク15の外設ヒートシンク側嵌合部20との互いの嵌合部形状を標準化することにより、共通の外設ヒートシンク15を異なる車両用灯具1に共有して用いることができ、新規車両用灯具の開発期間の短縮及び製造コストの低減を図ることができる。
【0047】
また、灯体ユニット6の灯体側嵌合部19の中空筒内19aに外設ヒートシンク15の筒状あるいは柱状の外設ヒートシンク側嵌合部20を挿入して嵌合するようにしたため、LED光源7の発光時の熱による熱膨張によって互いの密着性が高まり、互いの嵌合部に熱伝導グリース等の熱伝導改善手段を用いる必要がなく、信頼性が向上すると共に、簡易な組み立て及び材料の低減によって製造コストの低コスト化を図ることができる。
【0048】
更に、外設ヒートシンク15の大きさに関わりなくシールカバー4の開口4aを気密に挿通された灯体側嵌合部19に外設ヒートシンク側嵌合部20を嵌合させることにより外設ヒートシンク15を取り付けることができる。そのため、従来例のように外設ヒートシンク15の大きさがシールカバー4によって制限されるようなことはなく、外設ヒートシンク15の大きさに制約が加わることがないために、優れた放熱設計の自由度の基に十分な放熱効果を得ることができる。
【0049】
次に機構系におけるエイミング時の作動状態について、図7を参照して説明する。図では、車両用灯具1の中心軸Cに対して灯体ユニット6の光軸Xを角度αだけ下方に傾けた状態を示している。
【0050】
車両用灯具1の中心軸Cと灯体ユニット6の光軸Xが同一線上にある状態をエイミング前の状態とし、エイミングスクリュー18を回動することによりエイミングスクリュー18のネジ部18aに螺嵌されたエイミングナット17を介してリフレクタ支持プレート16が後方のシールカバー4の方向に移動する。すると、灯体ユニット6が回動軸22を支点として回動し、灯体ユニット6を構成するレンズホルダ11及び投影レンズ13が中心軸Cの下側に角度αだけ傾き、LED実装基板8、リフレクタ10及び外設ヒートシンク15が中心軸Cの上側に角度αだけ傾く。これにより、車両用灯具1の中心軸Cに対して下向きの照射光を得ることができる。
【0051】
この場合、リクレクタ10の灯体側嵌合部19も回動されて中心軸Cの上側に移動することになるが、灯体側嵌合部19を気密に挿通するシールカバー4は柔軟性を有する材料で蛇腹状に形成されており、灯体側嵌合部19の移動方向に位置するシールカバー4の上側シールカバー部4cは灯体側嵌合部19の回動時の押圧によって縮んだ状態となり、灯体側嵌合部19の移動方向と反対方向に位置するシールカバー4の下側シールカバー部4dは灯体側嵌合部19の回動時の引張圧によって伸びた状態となる。
【0052】
したがって、シールカバー4に対する灯体側嵌合部19の回動が、柔軟性を有する蛇腹状のシールカバー4の伸縮によって問題なく行われ、灯体側嵌合部19とシールカバー4との気密性は確実に確保される。
【0053】
なお、上記実施形態においては、エイミング機構を設けた車両用灯具について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、エイミング機構を有しない車両用灯具にあっても、外設ヒートシンクを灯体ユニットに嵌合自在に設けることで優れた放熱効果を得ることが可能となる。
【0054】
また、リフレクタの材料を熱伝導性の良好な金属材料としたが、この場合、灯室内においては内設ヒートシンクを削除してリフレクタのみによる放熱構造としてもよい。但し、リフレクタを樹脂材料で形成する場合は、良好な放熱性を確保するために内設ヒートシンクを備えるこが必要である。
【符号の説明】
【0055】
1… 車両用灯具
2… 前面カバーレンズ
3… ハウジング
4… シールカバー
4a… 開口
4b… フランジ部
4c… 上側シールカバー部
4d… 下側シールカバー部
5… 灯室
6… 灯体ユニット
7… 半導体発光素子(LED)
8… LED実装基板
9… マウントプレート
10… リフレクタ
10a… 反射面
11… レンズホルダ
12… 遮蔽体
13… 投影レンズ
14… 内設ヒートシンク
14a… ベース部
14b… 放熱フィン部
15… 外設ヒートシンク
15a… ベース部
15b… 放熱フィン部
16… リフレクタ支持プレート
17… エイミングナット
18… エイミングスクリュー
18a… ネジ部
19… 灯体側嵌合部
19a… 中空筒内
19b… ガイド溝
19c… 開口
20… 外設ヒートシンク側嵌合部
20a… ガイド突起
20b… シールパッキン
20c… 先端
21… 固定用ネジ
22… 回動軸
23… 回転軸支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、光源から発せられた光の配光を制御する配光制御手段を備えた灯体ユニットが密閉空間からなる灯室内に収容されてなる車両用灯具であって、
前記灯体ユニットは該灯体ユニットに一体化されて前記灯室内から灯室外に気密に延出する嵌合部を有し、前記灯室外に位置する放熱部材が前記嵌合部に着脱可能に嵌合されることにより前記光源から発せられた熱が前記嵌合部を伝導して前記放熱部材で放熱されることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記嵌合部は、柔軟性を有する材料で形成された蛇腹状のシールカバーの開口に気密に挿通されることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記灯体ユニットは該灯体ユニットに一体化された一対の回動軸を有し、該回動軸を支点として前記灯体ユニットを前記灯室内で回動させるためのエイミング機構を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−134637(P2011−134637A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294063(P2009−294063)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】