説明

車両用灯具

【課題】発光効率の向上と被視認性範囲の拡大を図ることができる車両用灯具を提供すること。
【解決手段】単一のバルブ(光源)5からの光をリフレクタ2によって反射させて複数の発光窓7Bから出射させるテールストップランプ(車両用灯具)1において、前記リフレクタ2に、第1の焦点f1を介して前記各発光窓7Bから光L1を出射させる第1の反射面2Aと、第2の焦点f2を介して前記各発光窓7Bから光を出射させる第2の反射面2Bを形成する。ここで、第2焦点f2を第1焦点f1を基点として垂直方向又は水平方向に異なる位置に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の光源を用いているにも拘わらず複数の光源を使用しているかのように見せる車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具のテールストップランプ等には、光源として単一のバルブを使用しているにも拘わらず多数のLEDを使用しているかのように見せるものが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。このような車両用灯具の一例を図9に示す。
【0003】
即ち、図9は従来の車両用灯具要部の縦断面図であり、図示の車両用灯具101は、光源として単一のバルブ105を備えており、このバルブ105から出射される光Lをリフレクタ102によって焦点fで集光させた後にインナレンズ107の発光窓107Bから出射させるよう構成されている。ここで、インナレンズ107には横方向(図9の紙面垂直方向)に複数の発光窓107Bが形成されており、リフレクタ102には各発光窓107Bに対応して複数(発光窓107Bと同数)の反射面102Aが形成されている。尚、各発光窓107Bの内外面にはレンズカット等の光拡散処理が施されており、各発光窓107Bを通過する光Lは拡散しながら出射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−317101号公報
【特許文献2】特開2008−027857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図9に示したような車両用灯具101にあっては、バルブ105から出射される光Lの反射に各発光窓107Bに対応する反射面102Aのみしか利用されていないため、発光効率が低いという問題があった。又、各反射面102Aに対しては1つの焦点(単焦点)fでしか集光がなされないために被視認性範囲が狭いという問題もあった。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、発光効率の向上と被視認性範囲の拡大を図ることができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、単一の光源からの光をリフレクタによって反射させて複数の発光窓から出射させる車両用灯具において、前記リフレクタに、第1の焦点を介して前記各発光窓から光を出射させる複数の第1の反射面と、第2の焦点を介して前記各発光窓から光を出射させる複数の第2の反射面を形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記第2の焦点を前記第1の焦点を基点として垂直方向に異なる位置に配置したことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記第2の焦点を前記第1の焦点を基点として水平方向に異なる位置に配置したことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記第2の反射面を、横方向において第2の反射面の主たる光軸方向が前記第1の反射面の主たる光軸方向とは異なる方向となるように配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、単一の光源から出射する光は複数の発光窓から出射するため、あたかも複数のLED等の光源を備えているように見えるが、光源からの光はリフレクタの第1の反射面の第1の焦点と第2の反射面の第2の焦点を介して各発光窓から出射するため、各発光窓を通過する光量が増え、今まで利用されていなかった光が利用されることなり、当該車両用灯具の発光効率が高められる。又、第1及び第2の2つの焦点に集光した光が各発光窓から出射するため、当該車両用灯具の被視認性範囲が広がり、得られる配光パターンが改善される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る車両用灯具の半裁正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明に係る車両用灯具の分解斜視図である。
【図4】本発明に係る車両用灯具の第1焦点と第2焦点の配置例を示す部分縦断面図である。
【図5】本発明に係る車両用灯具の第1焦点と第2焦点の配置例を示す部分縦断面図である。
【図6】本発明に係る車両用灯具の第1焦点と第2焦点の配置例を示す部分平面図である。
【図7】本発明に係る車両用灯具の第1焦点と第2焦点の配置例を示す部分平面図である。
【図8】本発明に係る車両用灯具の第2焦点の集光を示す図であって、(a)は部分縦断面図、(b)は部分平面図である。
【図9】従来の車両用灯具要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明に係る車両用灯具の半裁正面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は同車両用灯具の分解斜視図、図4及び図5本発明に係る車両用灯具の第1焦点と第2焦点の配置例を示す部分縦断面図、図6及び図7は同部分平面図、図8は本発明に係る車両用灯具の第2焦点の集光を示す図であって、(a)は部分縦断面図、(b)は部分平面図である。
【0015】
本実施の形態に係る車両用灯具1は、自動二輪車の後部に設けられるテールストップランプであって、図2に示すように、ハウジングを兼ねるリフレクタ2とその開口部周縁に取り付けられるアウタカバー3とで画成される灯室4内に、光源である単一のバルブ5と、前記アウタカバー3の内側に沿って設けられるインナハウジング6及び該インナハウジング6に取り付けられたインナレンズ7を収容して構成されている。このテールストップランプ1は、単一のバルブ5を備えているにも拘わらず、光源としてあたかも複数のLEDを使用しているかのように見せるものである。
【0016】
上記リフレクタ2は、光不透過性の樹脂によって正面視(実際には車両後面視)矩形状に一体成形されており(図3参照)、その周縁には嵌合溝2aが形成されている(図2参照)。そして、このリフレクタ2の中央部には、前記バルブ5を取り付けるための円孔状の取付孔2bが形成されている。又、リフレクタ2の内面にはアルミ蒸着や銀塗装等の反射処理がなされており、図3に示すように、リフレクタ2の内面の前記取付孔2bの上方には6つの第1の反射面2Aが横方向に扇状に並んで形成されており、これらの第1の反射面2Aの下方であって、且つ、取付孔2bの周囲には3つの第2の反射面2Bが横方向に扇状に並んで形成されている。更に、第1の反射面2Aのうち、最外側とその内側に位置するものの間には第2の反射面2Bが各1つずつ計2つ形成されている。
【0017】
上記第1の反射面2Aと第2の反射面2Bは共に回転楕円面を成しており、これらの第1及び第2の反射面2A,2Bは図4に示すように共にバルブ5の発光部中心を含むその近辺を第一焦点f0として、互いに異なる位置に第1及び第2の反射面2A,2Bの焦点f1,f2を第二焦点としてそれぞれ有している。又、本実施の形態では、図4に示すように取付孔2bの周囲に設けた第2の反射面2Bの第2の焦点f2は第1の反射面2Aの第1の焦点f1よりも下方に位置しており、図5に示すように第1の反射面2Aの間に設けた2つの第2の反射面2Bの第2の焦点f2は第1の反射面2Aの第1の焦点f1よりも上方に位置している。尚、上記第1の反射面2Aは、取付孔2bの近傍に位置しているため、従来ではこれらの領域からの反射光はバルブ5が光路内に存在するために有効に使われていなかった箇所であるが、本実施の形態ではバルブ5から離れた方向に向かって反射するようにしているため、取付孔2bの近傍からの反射光も有効に利用することができるものとして、バルブ5から放射される光の有効利用効率を向上させている。
【0018】
前記アウタカバー3は、光透過性の樹脂にて図3に示すように矩形ボックス状に一体成形されており、その開口部の周縁に形成されたシール脚部3aが図2に示すようにリフレクタ2の周縁に形成された嵌合溝2aに嵌め込まれ、両者がホットメルト等の接着剤8によって接着されることによって該アウタカバー3がリフレクタ2に取り付けられている。
【0019】
前記バルブ5は、例えばハロゲン電球や白熱電球であって、ソケット9によってリフレクタ2の取付孔2bに着脱可能に取り付けられている。尚、図2に示すように、ソケット9には不図示のバッテリから延びる電源コード10が接続されている。
【0020】
前記インナハウジング6は、光不透過性の樹脂にて図3に示すように矩形ボックス状に一体成形されており、その正面(後面)上部(リフレクタ2の前記第1の反射面2Aに対向する部位)には横方向に細長い開口部6aが形成されている。
【0021】
前記インナレンズ7は、光不透過性の樹脂にて平面視V字に成形された本体7Aに6つの円孔状の発光窓7Bを横方向に適当な間隔で形成して構成されており、各発光窓7Bには光透過性の非球面レンズ7aが設けられている。ここで、各発光窓7Bは、リフレクタ2に形成された第1の反射面2Aにそれぞれ対向する位置に配置されている。又、各非球面レンズ7aの内外面にはレンズカット等の光拡散処理が施されている。
【0022】
以上のように構成されたテールストップランプ1において、不図示のバッテリから電源コード10を介してバルブ5に給電がなされると該バルブ5が発光する。図4及び図6に示すように、バルブ5からの光のうち、第1の反射面2Aに向かった光は当該反射面(回転楕円面)2Aの第1の焦点f1を通った後、インナレンズ7の各々の反射面2Aに対応する各発光窓7Bに設けられた非球面レンズ7a及びアウタカバー3を通過して拡散しながら車両後方(図4の左方)に向かって路面に対してほぼ平行方向に出射する光L1となる。そして、第1の反射面2Aは、このような方向に光L1を出射するため、その第1の焦点f1の位置を設定する。
【0023】
又、バルブ5からのは光のうち、第2の反射面2Bに向かった光は、当該反射面(回転楕円面)2Bの第2の焦点f2を通った後、インナレンズ7の各発光窓7Bに設けられた非球面レンズ7a及びアウタカバー3を通過して拡散しながら車両後方(図4の左方)に向かって出射する光L2となる。このとき、取付孔2bの周囲に設けた3つの第2の反射面2Bの第2の焦点f2は第1の反射面2Aの第1の焦点f1よりも下方に位置している(図4参照)。従って、これら3つの第2の反射面2Bにて反射した光L2は、光L1に対して上向き光を形成するものとなる。よって、テールストップランプ1を観視したときに上方からの視認性が向上する。
【0024】
同様に、第1の反射面2Aの間に設けた2つの第2の反射面2Bの第2の焦点f2は、第1の反射面2Aの第1の焦点f1よりも上方に位置している(図5参照)。従って、これら3つの第2の反射面2Bにて反射した光L2は、光L1に対して下向き光を形成するものとなる。よって、テールストップランプ1を観視したときに下方からの視認性が向上する。
【0025】
又、左右方向においては、取付孔2bの周囲に設けた3つの第2の反射面2Bの第2の焦点f2は、中央の反射面2Bの第2の焦点f2の位置を6つの発光窓7Bの左右方向の中心とし、両側の反射面2Bの第2の焦点f2の位置を第1の焦点f1よりもバルブ5寄りとする。つまり、第2の反射面2Bは、左側(若しくは右側)の3つの発光窓7Bのうち、中央側の2つを通る拡散光となるように焦点位置を設定して左右方向の視認性を向上させている。同様に、第1の反射面2Aの間に設けた2つの第2の反射面2Bの第2の焦点f2は、中央の反射面2Bの第2の焦点f2の位置を6つの発光窓7Bの左右方向の中心とし、両側の反射面2Bの第2の焦点f2の位置6つの発光窓7Bの中心とし、両側の反射面2Bの第2の焦点f2の位置を左側(若しくは右側)の3つの発光窓7Bのうち、最も左側(右側)を通る位置に設定することによって、左右方向の視認性を向上させている(図6及び図7参照)。
【0026】
このように、第2の反射面2Bによる反射光は、各発光窓7Bを通って照射する光L2の方向が同一方向のみではなく、異なる方向となるように設定することによって、主たる照射方向以外からテールストップランプ1を観視したときにおいても視認性が高められることになる。
【0027】
以上のように、本実施の形態に係るテールストップランプ1においては、単一のバルブ5から出射する光L1,L2はインナレンズ7の6つの発光窓7Bから出射するため、あたかも6つのLED等の光源を備えているように見えるが、バルブ5からの光L1はリフレクタ2の第1の反射面2Aの第1の焦点f1を介して、又、光L2は第2の反射面2Bの第2の焦点f2を介してそれぞれ各発光窓7Bから出射するため、各発光窓7Bの非球面レンズ7aを通過する光量が増え、今まで利用されていなかった光L2が利用されることなり、当該テールストップランプ1の発光効率が高められる。
【0028】
又、第1及び第2の2つの焦点f1,f2に集光した光L1,L2が各発光窓7Bから出射するため、当該テールストップランプ1の被視認性範囲が広がり、得られる配光パターンが改善される。
【0029】
ところで、以上の実施の形態では、図4に示すように第2の焦点f2が第1の焦点f1の下方に位置するよう第2の反射面2Bを配置したが、図5に示すように第2の焦点f2が第1の焦点f1の上方に位置するよう第2の反射面2Bを配置しても良い。又、図6に示すように第2の焦点f2が第1の焦点f1の横方向外側に位置するよう第2の反射面2Bを配置したり、図7に示すように第2の焦点f2が第1の焦点f1の横方向内側に位置するよう第2の反射面2Bを配置しても良い。
【0030】
更に、図8に示すようにリフレクタ2の第2の反射面2Bの反射光L2が縦方向にのみ集光し、横方向には集光させないよう配置し、或いは逆に第2の反射面2Bの反射光L2が横方向にのみ集光し、縦方向には集光させないよう配置しても良い。又、第2の反射面2Bは回転楕円面に限るものではなく、複合反射面等の他の反射面形状として、主たる出射方向が光L2と異なる方向となるようにしても良い。更に、発光窓7Bは6個に限るものではなく、2個以上、好適には5個以上とし、且つ、第2の反射面2Bによる光L2による照射方向が5個の発光窓7Bの全てにおいて互いに異なる方向都成るよう配置しても良い。これにより様々な方向からの視認性を高めることができる。
【0031】
尚、以上は本発明を特に自動二輪車用のテールストップランプに対して適用した形態について説明したが、本発明は、他の任意の車両用灯具に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
1 テールストップランプ(車両用灯具)
2 リフレクタ
2A リフレクタの第1の反射面
2B リフレクタの第2の反射面
2a リフレクタの嵌合溝
2b リフレクタの取付孔
3 アウタカバー
3a アウタカバーのシール脚部
4 灯室
5 バルブ(光源)
6 インナハウジング
6a インナハウジングの開口部
7 インナレンズ
7A インナレンズの本体
7B インナレンズの発光窓
7a インナレンズの非球面レンズ
8 接着剤
9 ソケット
10 電源コード
f0 第一焦点
f1 第1の焦点
f2 第2の焦点
L1,L2 光


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の光源からの光をリフレクタによって反射させて複数の発光窓から出射させる車両用灯具において、
前記リフレクタに、第1の焦点を介して前記各発光窓から光を出射させる第1の反射面と、第2の焦点を介して前記各発光窓から光を出射させる第2の反射面とで構成したことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第2の焦点を前記第1の焦点を基点として垂直方向に異なる位置に配置したことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記第2の焦点を前記第1の焦点を基点として水平方向に異なる位置に配置したことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記第2の反射面を、横方向において第2の反射面の主たる光軸方向が前記第1の反射面の主たる光軸方向とは異なる方向となるように配置したことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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