説明

車両用灯具

【課題】インナーレンズを好適に保護しアウターレンズを容易に交換可能な車両用灯具を提供する。
【解決手段】インナーレンズ60により、ハウジング20において光源40が収容される収容空間が閉塞される。また、アウターレンズ70は、インナーレンズ60に接触することなく当該インナーレンズ60の照射方向側60aを覆い、シール部材を介することなくハウジング20に取り付けられてインナーレンズ60を透過した照明光を透過させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用灯具として下記特許文献1に開示される車両用灯具が知られている。この車両用灯具では、アウターレンズおよびハウジングの間には、裏面に魚眼プリズムが形成される有色透明のインナーレンズと、裏面にフレネルプリズムが形成される無色透明のインインナーレンズとが配置されている。そして、アウターレンズの一側端部における脚部の先端がハウジングの一側端部における溝部内に挿入された状態で、アウターレンズおよびハウジングがシール剤により接合されている。そして、インナーレンズの一側端部はアウターレンズの脚部に当接し、インインナーレンズの一側端部はハウジングの溝部内に挿入されてアウターレンズとともにシール剤により接合されている。このようにインインナーレンズの一側端部がシール剤で固定されることで、車両走行中におけるインインナーレンズの振動が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平02−101407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に開示された車両用灯具では、アウターレンズおよびハウジングはシール剤により接合されているため、アウターレンズが破損して防水機能等が損なわれると、インナーレンズ等の他の部材が破損していない場合であっても全ての部品を交換する必要がある。ユーザがアウターレンズのみを交換すると、シール剤の塗布等が不十分となる可能性があり、この場合には、防水性や防塵性等の品質を保証することが困難になるからである。そのため、アウターレンズのみを交換する場合と比較して、新たな灯具を用意する必要があり交換費用が高くなってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、インナーレンズを好適に保護しアウターレンズを容易に交換可能な車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の車両用灯具では、光源と、前記光源を収容しこの光源の照射方向に開口部が形成されるハウジングと、前記光源が収容される空間を閉塞するとともに前記光源から照射される照明光を透過させるインナーレンズと、前記インナーレンズに接触することなく当該インナーレンズの照射方向側を覆い、シール部材を介することなく前記ハウジングに取り付けられて前記インナーレンズを透過した前記照明光を透過させるアウターレンズと、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用灯具において、前記アウターレンズの外縁の一部には、階段状のレンズ側段部が形成され、前記ハウジングにおいて前記アウターレンズに接触する部位の少なくとも一部には、前記レンズ側段部に対して面接触するハウジング側段部が階段状に形成されることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の車両用灯具において、前記レンズ側段部は、前記アウターレンズの外縁に沿い環状に形成され、前記ハウジング側段部は、前記レンズ側段部に対して面接触するように環状に形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用灯具において、前記アウターレンズには、雌ねじ部が形成されており、前記アウターレンズは、前記ハウジングに形成された挿通部を挿通したねじ部材が前記雌ねじ部に螺合することで前記ハウジングに取り付けられることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用灯具において、前記光源は、基板に実装されたLEDであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、インナーレンズにより、ハウジングにおいて光源が収容される空間(以下、収容空間ともいう)が閉塞される。また、アウターレンズは、インナーレンズに接触することなく当該インナーレンズの照射方向側を覆い、シール部材を介することなくハウジングに取り付けられてインナーレンズを透過した照明光を透過させる。
【0012】
これにより、アウターレンズが破損した場合であっても、このアウターレンズに接触していないインナーレンズが破損されにくくなり、インナーレンズが破損等しない限り当該インナーレンズにより上記収容空間が閉塞されるので、この収容空間に収容される光源等に対する防水性や防塵性等を維持することができる。特に、インナーレンズにより上記収容空間が閉塞されるため、アウターレンズとハウジングとの接触部にパッキンやシール剤等のシール部材を介在させる必要がないので、ハウジングに対するアウターレンズの取付構造を簡素にすることができる。また、アウターレンズが破損した場合であっても、アウターレンズの交換だけでよいので、アウターレンズがハウジングに接合等されているために車両用灯具そのものを交換する場合と比較して、交換費用を低減することができる。
したがって、インナーレンズを好適に保護しアウターレンズを容易に交換可能に車両用灯具を構成することができる。
【0013】
請求項2の発明では、アウターレンズの外縁の一部に形成される階段状のレンズ側段部と、ハウジングにおいてアウターレンズに接触する部位の少なくとも一部に形成される階段状のハウジング側段部とが面接触するため、両部材の接触面積が大きくなる。これにより、ハウジングに対するアウターレンズの取付構造が簡素であっても、アウターレンズに上述した防水性や防塵性等をもたせることができる。
【0014】
請求項3の発明では、レンズ側段部は、アウターレンズの外縁に沿い環状に形成され、ハウジング側段部は、レンズ側段部に対して面接触するように環状に形成されるため、両部材の接触面積がより大きくなる。これにより、ハウジングに対するアウターレンズの取付構造が簡素であっても、アウターレンズの防水性や防塵性等を高めることができる。
【0015】
請求項4の発明では、アウターレンズは、ハウジングに形成された挿通部を挿通したねじ部材が雌ねじ部に螺合することでハウジングに取り付けられるため、アウターレンズの交換時には、ねじ部材は常に新たな雌ねじ部に螺合することとなる。これにより、ハウジングに上記ねじ部材が螺合する雌ねじ部が形成される場合と比較して、ねじ部材と雌ねじ部とが確実に螺合するので、アウターレンズを何度も交換する場合であってもハウジングに確実に取り付けることができる。
【0016】
請求項5の発明のように、光源として基板に実装されたLEDを採用する場合であっても、LEDおよび基板はインナーレンズにより閉塞される収容空間に収容されるので、LEDおよび基板を確実に保護することができる。さらに、アウターレンズが破損した場合であっても、アウターレンズの交換だけでよいので、アウターレンズがハウジングに接合等されているために比較的高価なLEDを含めた車両用灯具そのものを交換する場合と比較して、交換費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る車両用灯具を示す正面図である。
【図2】図1の車両用灯具の分解斜視図である。
【図3】図1に示す3−3線相当の切断面による断面図である。
【図4】図1に示す4−4線相当の切断面による断面図である。
【図5】図1に示す5−5線相当の切断面による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る車両用灯具10の一実施形態について図を参照して説明する。図1は、本発明に係る車両用灯具10を示す正面図である。図2は、図1の車両用灯具10の分解斜視図である。図3は、図1に示す3−3線相当の切断面による断面図である。図4は、図1に示す4−4線相当の切断面による断面図である。図5は、図1に示す5−5線相当の切断面による断面図である。
【0019】
本発明の車両用灯具10は、例えば、フォークリフトの正面やパワーショベルのアーム等に搭載されて作業範囲を照らす作業灯として機能するものである。この車両用灯具10は、図1および図2に示すように、主に、ハウジング20、ブラケット30、光源40、リフレクタ50、インナーレンズ60およびアウターレンズ70を備えている。
【0020】
ハウジング20は、アルミダイカストにより一側が略四角状の開口部21として開口するように略箱状に形成されており、図3および図4に示すように、その底面22の外周部に中央部よりも深い環状溝部23が設けられている。また、図5に示すように、開口部21の外縁を構成するハウジング20の部位には、階段状の段部24が環状に形成されている。
【0021】
また、このハウジング20は、外周面および背面等に複数の冷却フィン25が設けられており、収容した光源40等にて発生した熱を放熱するためのヒートシンクとして機能する。また、ハウジング20の両側面には、図4に示すように、挿通部26がそれぞれ1カ所形成されている。なお、ハウジング20は、アルミダイカストにより形成されることに限らず、放熱性の高い部材等により形成されてもよい。
【0022】
ブラケット30は、ハウジング20を図略の車体に対して取り付けるためのものであって、ブラケット30およびハウジング20の取付状態とブラケット30および車体の取付状態とを変更することで、車体に対するハウジング20の開口方向、すなわち、光源40の照射方向を変更可能に構成されている。
【0023】
光源40は、基板42の一側面に実装された複数のLED41を備えており、基板42の他側面がハウジング20の底面22の中央部に対して放熱シート43を介して取り付けられている。この基板42は、ハウジング20の底面22に形成される背面側開口部22a内に露出するコネクタ42aを介して外部の灯具制御装置(図示略)と電気的に接続されている。
【0024】
リフレクタ50は、アルミ蒸着等によって形成される複数の反射面を備えており、各LED41から照射された光を上記複数の反射面により所定の方向にそれぞれ反射して拡散する機能を有するものである。このリフレクタ50は、ハウジング20に固定されるインナーレンズ60の内周面に係合することで、各LED41に対して位置決めされることとなる。
【0025】
インナーレンズ60は、透過性の高い樹脂、例えば、PMMA(ポリメチルメタクリレート)により一側が略四角状の開口部として開口するように略箱状に形成されるとともに裏面に魚眼プリズムが形成されている。この開口部を構成する環状端部61は、ハウジング20の環状溝部23内に収容可能に形成されている。当該インナーレンズ60は、後述するように環状端部61がシール剤80を介して環状溝部23内に収容されるとき、ハウジング20の底面22とともに光源40が収容される空間(以下、収容空間ともいう)を閉塞し、光源40の各LED41から照射される照明光を透過させるように機能する。
【0026】
アウターレンズ70は、透過性の高い樹脂、例えば、PMMA(ポリメチルメタクリレート)により略四角状の平板として構成される透過部71と、当該アウターレンズ70をハウジング20に取り付けるための雌ねじ部73が形成される一対の台座72とを備えている。このアウターレンズ70は、後述するようにハウジング20に取り付けられるとき、インナーレンズ60に接触することなく当該インナーレンズ60の表面である照射方向側60aを覆い、シール部材等を介することなくハウジング20に取り付けられてインナーレンズ60を透過した照明光を透過させるように機能する。
【0027】
また、図5に示すように、透過部71の外縁には、ハウジング20への取付時に当該ハウジング20の段部24を構成する各面に対して面接触する段部74が階段状に形成されている。なお、段部24および段部74は、特許請求の範囲に記載の「ハウジング側段部」および「レンズ側段部」の一例に相当し得る。
【0028】
次に、上述のように構成される車両用灯具10の組み付けについて説明する。
まず、基板42を、各LED41からの照明光がハウジング20の開口部21を介して外方へ照射されるように、放熱シート43を介してハウジング20の底面22に取り付ける。そして、基板42と上記灯具制御装置とを電気的に接続する。次に、ハウジング20の環状溝部23内にシール剤80を充填させ、この環状溝部23内に環状端部61が収容されるように、リフレクタ50が組み付けられたインナーレンズ60をハウジング20に取り付ける。これにより、インナーレンズ60およびハウジング20の底面22により閉塞される上記収容空間に対し水や塵の侵入が防止される。そして、ハウジング20の挿通部26に対して背面側から挿通させたねじ部材、例えば、タッピングスクリュ81を、アウターレンズ70の雌ねじ部73にそれぞれ螺合させる。
これにより、図1に示す車両用灯具10が完成する。
【0029】
このように構成される車両用灯具10では、搭載した車両の作業時に発生した衝撃等によりアウターレンズ70が破損した場合、このアウターレンズ70に接触していないインナーレンズ60には上記衝撃が伝わりにくくなり、インナーレンズ60が破損しにくくなる。このため、アウターレンズ70が破損した場合であっても、インナーレンズ60およびハウジング20の底面22により上記収容空間が閉塞される状態が維持されることとなる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用灯具10では、インナーレンズ60により、ハウジング20において光源40が収容される収容空間が閉塞される。また、アウターレンズ70は、インナーレンズ60に接触することなく当該インナーレンズ60の照射方向側60aを覆い、シール部材を介することなくハウジング20に取り付けられてインナーレンズ60を透過した照明光を透過させる。
【0031】
これにより、アウターレンズ70が破損した場合であっても、インナーレンズ60が破損等しない限り当該インナーレンズ60により上記収容空間が閉塞されるので、この収容空間に収容される光源40等に対する防水性や防塵性等を維持することができる。特に、インナーレンズ60により上記収容空間が閉塞されるため、アウターレンズ70とハウジング20との接触部にパッキンやシール剤等のシール部材を介在させる必要がないので、ハウジング20に対するアウターレンズ70の取付構造を簡素にすることができる。また、アウターレンズ70が破損した場合であっても、アウターレンズ70の交換だけでよいので、アウターレンズがハウジングに接合等されているために車両用灯具そのものを交換する場合と比較して、交換費用を低減することができる。
したがって、インナーレンズ60を好適に保護しアウターレンズ70を容易に交換可能に車両用灯具10を構成することができる。
【0032】
また、本実施形態に係る車両用灯具10では、アウターレンズ70の段部74は、アウターレンズ70の外縁に沿い環状に形成され、ハウジング20の段部24は、段部74に対して面接触するように環状に形成されるため、両部材の接触面積がより大きくなる。これにより、ハウジング20に対するアウターレンズ70の取付構造が簡素であっても、アウターレンズ70の防水性や防塵性等を高めることができる。
【0033】
さらに、本実施形態に係る車両用灯具10では、アウターレンズ70は、ハウジング20に形成された挿通部26を挿通したタッピングスクリュ81がアウターレンズ70の雌ねじ部73に螺合することでハウジング20に取り付けられるため、アウターレンズ70の交換時には、タッピングスクリュ81は常に新たなねじ部73に螺合することとなる。これにより、ハウジング20にタッピングスクリュ等が螺合する雌ねじ部が形成される場合と比較して、タッピングスクリュ81とねじ部73とが確実に螺合するので、アウターレンズ70を何度も交換する場合であってもハウジング20に確実に取り付けることができる。
【0034】
また、本実施形態に係る車両用灯具10のように、光源として基板42に実装された複数のLED41を採用する場合であっても、各LED41および基板42はインナーレンズ60により閉塞される収容空間に収容されるので、各LED41および基板42を確実に保護することができる。さらに、アウターレンズ70が破損した場合であっても、アウターレンズ70の交換だけでよいので、アウターレンズ70がハウジング20に接合等されているために比較的高価なLEDを含めた車両用灯具そのものを交換する場合と比較して、交換費用を低減することができる。
【0035】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)アウターレンズ70の段部74およびハウジング20の段部24は、複数段に形成されてもよいし、これら複数段の段部を連結する側面(底面22に直交する面)同士も面接触してもよい。また、アウターレンズ70およびハウジング20は、使用環境に応じて、互いに一部のみが階段状に形成されて面接触するように形成されてもよいし、段部が形成されることなく平面部にて互いに面接触するように形成されてもよい。
【0036】
(2)アウターレンズ70は、雌ねじ部73に挿通部26を挿通したタッピングスクリュ81が螺合することでハウジング20に取り付けられることに限らず、アウターレンズ70に設けられた挿通部を挿通したねじ部材がハウジングに形成される雌ねじ部に螺合することでハウジング20に取り付けられてもよい。また、アウターレンズ70は、例えば、当該アウターレンズ70に形成される係合部がハウジングに形成される係合部に係合することで、ハウジング20に取り付けられてもよい。
【0037】
(3)光源40として、使用環境に応じて、LED41および基板42に代えて、例えば、バルブタイプのランプを採用してもよい。
【符号の説明】
【0038】
10…車両用灯具
20…ハウジング
21…開口部
22…底面
23…環状溝部
24…段部(ハウジング側段部)
26…挿通部
40…光源
41…LED
42…基板
60…インナーレンズ
61…環状端部
70…アウターレンズ
73…雌ねじ部
74…段部(レンズ側段部)
80…シール剤
81…タッピングスクリュ(ねじ部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源を収容しこの光源の照射方向に開口部が形成されるハウジングと、
前記光源が収容される空間を閉塞するとともに前記光源から照射される照明光を透過させるインナーレンズと、
前記インナーレンズに接触することなく当該インナーレンズの照射方向側を覆い、シール部材を介することなく前記ハウジングに取り付けられて前記インナーレンズを透過した前記照明光を透過させるアウターレンズと、
を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記アウターレンズの外縁の一部には、階段状のレンズ側段部が形成され、
前記ハウジングにおいて前記アウターレンズに接触する部位の少なくとも一部には、前記レンズ側段部に対して面接触するハウジング側段部が階段状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記レンズ側段部は、前記アウターレンズの外縁に沿い環状に形成され、
前記ハウジング側段部は、前記レンズ側段部に対して面接触するように環状に形成されることを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記アウターレンズには、雌ねじ部が形成されており、
前記アウターレンズは、前記ハウジングに形成された挿通部を挿通したねじ部材が前記雌ねじ部に螺合することで前記ハウジングに取り付けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記光源は、基板に実装されたLEDであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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