説明

車両用灯具

【課題】エーミング機構のスライダをヒートシンクに一体に形成することによって部品点数と組付工数を削減してコストダウンを図ることができる車両用灯具を提供すること。
【解決手段】レンズと2、該レンズ2を保持するレンズホルダ3と、該レンズホルダ3に保持されたリフレクタ4と、前記レンズホルダ3が取り付けられるヒートシンク5と、該ヒートシンク5上に装着されたLED光源と、光軸を調整するためのエーミング機構を含んで構成される車両用灯具1において、前記ヒートシンク5に前記エーミング機構のスライダ5dを一体に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光軸を調整するためのエーミング機構を備えるヘッドランプ等の車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省電力で高寿命であるLED(発光ダイオード)を光源として使用する車両用灯具が増えつつある。斯かるLEDを光源とするヘッドランプ等の車両用灯具には、レンズと、該レンズを保持するレンズホルダと、該レンズホルダに保持されたリフレクタと、前記レンズホルダが取り付けられるヒートシンクと、該ヒートシンク上に装着されたLED光源を含んで構成されるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
又、ヘッドランプ等の車両用灯具には、光軸を調整するためのエーミング機構(光軸調整機構)を備えるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−186698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ヘッドランプには、ハウジングとその前面開口部を覆うアウタレンズによって画成される灯室内に例えばロービーム用ランプをハウジングに対して上下及び左右に回動可能に支持し、エーミング機構のアクチュエータを駆動してロービーム用ランプを上下及び左右に回動させて光軸を上下及び左右方向に調整するようにしたものがある。この場合、ロービーム用ランプはスライダによってハウジングに対して上下に回動可能及び左右にスライド可能に支持されるが、従来、スライダはヒートシンクとは別の部品に設けられていたため、部品点数と組付工数が増えてコストアップを招くという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、エーミング機構のスライダをヒートシンクに一体に形成することによって部品点数と組付工数を削減してコストダウンを図ることができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、レンズと、該レンズを保持するレンズホルダと、該レンズホルダに保持されたリフレクタと、前記レンズホルダが取り付けられるヒートシンクと、該ヒートシンク上に装着されたLED光源と、光軸を調整するためのエーミング機構を含んで構成される車両用灯具において、前記ヒートシンクに前記エーミング機構のスライダを一体に形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記スライダを前記ヒートシンクの左右両側部に一体に突設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来はヒートシンクとは別体に構成されていたエーミング機構のスライダをヒートシンクに一体に形成したため、車両用灯具の部品点数と組付工数を削減してコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る車両用灯具の斜視図である。
【図2】本発明に係る車両用灯具の分解斜視図である。
【図3】本発明に係る車両用灯具の正面図である。
【図4】本発明に係る車両用灯具の平面図である。
【図5】本発明に係る車両用灯具の側面図である。
【図6】図3のA−A線断面図である。
【図7】図3のB−B線断面図である。
【図8】図3のC−C線断面図である。
【図9】図3のD−D線断面図である。
【図10】エーミング機構のスライダのハウジングへの支持構造を示す部分側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は本発明に係る車両用灯具の斜視図、図2は同車両用灯具の分解斜視図、図3は同車両用灯具の正面図、図4は同車両用灯具の平面図、図5は同車両用灯具の側面図、図6は図3のA−A線断面図、図7は図3のB−B線断面図、図8は図3のC−C線断面図、図9は図3のD−D線断面図、図10はエーミング機構のスライダのハウジングへの支持構造を示す部分側断面図である。
【0013】
本実施の形態に係る車両用灯具1は、車両前部の左右に設けられるヘッドランプの灯室内に組み込まれるロービーム用ランプであって、その構成は左右で同じであるため、以下、一方の車両用灯具1についてのみ図示及び説明する。
【0014】
車両用灯具1は、左右一対のレンズ(投影レンズ)2と、これらのレンズ2をそれぞれ保持する左右一対のレンズホルダ3と、各レンズホルダ3に保持される左右一対のリフレクタ4と、各レンズホルダ3が取り付けられるヒートシンク5と、該ヒートシンク5上に装着された左右一対のLED光源6を含んで構成されている。
【0015】
上記レンズ2は、非球面の凸レンズであって、アクリル樹脂等の透明樹脂によって構成されており、その外周には複数(図示例では3つ)の係止爪2a(図2及び図7参照)が一体に形成されている。
【0016】
前記各レンズホルダ3は、樹脂にて一体成形されており、図2に示すように、前端に設けられたリング状のホルダ部3Aの外周の複数箇所(レンズ2に形成された前記係止爪2aに対応する3箇所)には周方向に長いスリット状の係止孔3aがそれぞれ形成されている。又、前端のホルダ部3Aから後方(車両後方)に向かって略水平に延びるベース部3Bの左右両側面には係止爪3bがそれぞれ突設されている。尚、各ベース3Bの上面はアルミ蒸着等が施されて反射面を構成している。
【0017】
更に、図6に示すように、レンズホルダ3の下部には後方(図6の上方)に向かって略水平に突出する左右一対の係止突起3cが一体に形成されており、両係止突起3cの間には図7に示すように位置決めピン3dが後方(図7の右方)に向かって一体に突設されている。
【0018】
前記各リフレクタ4は、光を透過しない不透明樹脂によって一体成形されており、その前方と下方が開口するドーム状を成し、その内面はアルミ蒸着等の反射処理が施されて反射面を形成している。そして、このリフレクタ4の左右の所定箇所(レンズホルダ3に形成された前記係止爪3bに対応する箇所)には矩形の係止孔4a(図2参照)が形成されている。
【0019】
前記ヒートシンク5は、熱伝導性の高いアルミダイカスト等によって一体成形されており、その前面側には左右一対のレンズホルダ3が後述のようにフック方式によってワンタッチで取り付けられる。ここで、図2及び図6に示すように、ヒートシンク5の前面側の左右一対のレンズホルダ3が取り付けられる部分には左右各2つずつの係止孔5aがそれぞれ形成されており、左右方向(幅方向)において各2つの係止孔5aの中間には上下2つのボス5Aがそれぞれ形成されている。そして、図2及び図7に示すように、各ボス5Aには円孔状の位置決め孔5bがそれぞれ貫設されている。
【0020】
又、ヒートシンク5には複数枚の放熱フィン5cが一体に形成されており、その下部の左右にはエーミング機構のスライダ5dが外側方に向かって水平且つ一体に突設されている。そして、図2に示すように、ヒートシンク5の水平部の左右には左右一対の前記LED光源6を設置するための平坦な設置面5eがそれぞれ形成されている。尚、図示しないが、ヒートシンク5の各設置面5eの後方には、左右一対の各コネクタ7(図2及び図7参照)を差し込むための矩形孔状のコネクタ差込部が形成されている。ここで、各コネクタ7は、不図示の駆動回路に接続されるコード8の端部に取り付けられている。
【0021】
更に、ヒートシンク5の左右幅内であって、且つ、一方の設置面5eの後方上部には、エーミング調整用ピボットを保持するナット9(図8参照)が取り付けられるナット取付部5Bが車両前方(レンズ2側)に向かって膨出するよう一体に形成されている。このナット取付部5Bは、当該車両用灯具1の重心を通る垂直面上に配置されており、図8に示すように、ナット取付部5Bに保持されたエーミング調整用ピボットを保持するナット9には、エーミング機構のアクチュエータを構成する電動モータ10から車両前方に向かって略水平に延びるロッド11の先端に形成されたボール11aが保持されている。
【0022】
又、ヒートシンク5に一体に形成された左右一対の前記スライダ5dには、図9に示すようにエーミング調整用ナット14,15がそれぞれ嵌合保持されており、図示しないが、各エーミング調整用ピボットを保持するナット14,15にはアクチュエータである電動モータによって回転駆動されるスクリュー軸が螺合挿通している。そして、左右一対のスライダ5dは、図10に示すように、ハウジング12の左右に前後方向(図10の左右方向)に形成されたレール12a(図10には一方のみ図示)にスライド可能に嵌合保持されている。
【0023】
従って、前記電動モータ10が駆動されてロッド11が前後に進退動すると、車両用灯具1の全体がハウジング12に対して左右のスライダ5dを中心として上下に回動し、この回動によって当該車両用灯具1の上下方向の光軸調整がなされる。又、不図示の電動モータを駆動してスクリュー軸が回転駆動されると、該スクリュー軸に螺合するエーミング調整用ピボットを保持するナット14,15を保持して成るスライダ5dがハウジング12のレール12aに沿って前後動するため、車両用灯具1がハウジング12にレール12aを中心として左右に回動し、該車両用灯具1の左右方向の光軸調整がなされる。
【0024】
前記各LED光源6は、図7に示すように、熱伝導性及び絶縁性が高いセラミック等から成る矩形平板状のLED基板6a上にLEDチップ6bを実装して構成されている。
【0025】
次に、以上の構成を有する車両用灯具1の組立要領について説明する。
【0026】
レンズホルダ3の左右のリング状のホルダ部3Aのそれぞれには左右の各レンズ2がフック方式によってワンタッチで簡単に取り付けられる。即ち、左右の各レンズ2をレンズホルダ3の左右の各ホルダ部3Aに前方から嵌め込むと、各レンズ2の外周に形成された複数の係止爪2aがレンズホルダ3の各ホルダ部3Aに形成された複数の係止孔3aに係合して係止されるため、前述のように左右の各レンズ2がレンズホルダ3の左右の各ホルダ部3Aにフック方式によってワンタッチで簡単に取り付けられる。
【0027】
又、レンズホルダ3の左右のベース部3B上には左右の各リフレクタ4が上方から嵌め込まれて固定される。即ち、左右の各リフレクタ4をレンズホルダ3の左右のベース部3B上に設置し、これを下方に押し込むと、該リフレクタ4の左右に形成された係止孔4aにレンズホルダ3の左右両側面に形成された係止爪3bが係合して係止されるため、各リフレクタ4が左右の各レンズホルダ3のベース部3Bにそれぞれ固定保持される。
【0028】
ところで、左右のLED光源6は、ヒートシンク5の水平部の左右に形成された設置面5e上に設置され、図2及び図7に示すように金属製のクリップ13の差し込みによってヒートシンク5の各設置面5eに固定されるが、該LED光源6のLED基板6aとヒートシンク5の設置面5eとの間には両者の密着性と熱伝導性を高めるために熱伝導性の高い熱伝導グリースが介装されるが、本発明に係る組立方法においては、LED光源6側、具体的にはLED基板6aの下面に熱伝導性グリースが塗布される。この場合、熱伝導性グリースのLED基板への塗布は、ヒートシンク5との干渉を考慮することなく作業性良くなされる。
【0029】
而して、LED基板6aの下面に熱伝導性グリースが塗布された左右の各LED光源6は、前述のようにヒートシンク5の左右の各設置面5e上に設置され、金属製のクリップ13の差し込みによってヒートシンク5の各設置面5e上に固定される。
【0030】
次に、レンズ2とリフレクタ4が組み付けられた左右の各レンズホルダ3は、ヒートシンク5に前方から嵌め込まれることによってヒートシンク5にワンタッチで簡単に取り付けられる。即ち、各レンズホルダ3は、その後部に突設された前記位置決めピン3dを図7に示すようにヒートシンク5のボス5Aに形成された位置決め孔5bに前方から差し込むことによってヒートシンク5に対して位置決めされる。そして、その状態を保持したまま左右の各レンズホルダ3をこれに組み付けられたレンズ2及びリフレクタ4と共に後方へと押し込めば、図6に示すように、各レンズホルダ3に形成された係止突起3cの先端がヒートシンク5の左右に形成された各2つの係止孔5aに係合して係止されるため、前述のようにレンズ2とリフレクタ4が組み付けられた左右の各レンズホルダ3がヒートシンク5にワンタッチで簡単に取り付けられる。
【0031】
以上のようにして車両用灯具1が組み立てられると、図7に示すように、ヒートシンク5の後部の左右に形成された不図示のコネクタ差込部に左右の各コネクタ7を差し込んでこれを係止すれば、LED光源6がコード8を介して不図示の駆動回路に電気的に接続される。
【0032】
而して、夜間での車両の走行において運転者が不図示の点灯スイッチをON操作すれば、バッテリから電流がコード8を経て左右の各LED光源6へと供給され、各LED光源6のLEDチップ6bが起動されて発光する。すると、各LED光源6からの光は、各リフレクタ4の反射面及びレンズホルダ3のベース3Bの反射面によって反射されてロービーム用に配光された後、車両前方へと進んで左右の各レンズ2を通過することによって集光され、ハウジング12の前面開口部を覆う不図示のアウタレンズを通って前方へと照射される。このとき、各LED光源6のLEDチップ6bが発する熱は、LED基板6aから熱伝導性グリースを経てヒートシンク5へと伝導し、ヒートシンク5の放熱フィン5cから外部に効率良く放熱されるため、LEDチップ6bの温度上昇が抑えられ、該LEDチップ6bに高い発光効率と寿命が確保される。
【0033】
以上において、本発明に係る車両用灯具1においては、従来はヒートシンク5とは別体に構成されていたエーミング機構のスライダ5dをヒートシンク5に一体に形成したため、車両用灯具1の部品点数と組付工数を削減してコストダウンを図ることができるという効果が得られる。
【0034】
尚、以上は本発明をヘッドランプのロービーム用ランプに対して適用した形態について説明したが、本発明は、ヘッドランプのハイビーム用ランプの他、ヘッドランプ以外の他の任意の車両用灯具に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
1 車両用灯具
2 レンズ
2a レンズの係止爪
3 レンズホルダ
3A レンズホルダのホルダ部
3B レンズホルダのベース部
3a レンズホルダの係止孔
3b レンズホルダの係止爪
3c レンズホルダの係止突起
3d レンズホルダの位置決めピン
4 リフレクタ
4a リフレクタの係止孔
5 ヒートシンク
5A ヒートシンクのボス
5B ヒートシンクのナット取付部
5a ヒートシンクの係止孔
5b ヒートシンクの位置決め孔
5c ヒートシンクの放熱フィン
5d ヒートシンクのスライダ
5e ヒートシンクの設置面
6 LED光源
6a LED基板
6b LEDチップ
7 コネクタ
8 コード
9 ナット
10 電動モータ
11 ロッド
11a ロッドのボール
12 ハウジング
12a ハウジングのレール
13 クリップ
14,15 ナット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズと、該レンズを保持するレンズホルダと、該レンズホルダに保持されたリフレクタと、前記レンズホルダに取れ付けられたヒートシンクと、該ヒートシンク上に装着されたLED光源と、光軸を調整するためのエーミング機構を含んで構成される車両用灯具において、
前記ヒートシンクに前記エーミング機構のスライダを一体に形成したことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記スライダを前記ヒートシンクの左右両側部に一体に突設したことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−119261(P2012−119261A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270308(P2010−270308)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】