説明

車両用灯具

【課題】車両用灯具のカットライン領域の色分けを原理的に低減する。
【解決手段】投射レンズからZ軸方向に十分に離れた前方で、Z軸に垂直な面において、明部領域と暗部領域との境界の、光量変化が著しい領域をカットライン領域とし、前記カットライン領域に到達する光線が通過する前記投射レンズの領域をカットライン形成領域とし、前記投射レンズの入射面側から出射面側に向かう方向をサグ量の正の方向として、前記入射面及び前記出射面のサグ量をそれぞれ所定の式で表し、前記カットライン形成領域を通過して前記カットライン領域に到達する光線の前記入射面及び前記出射面との交点の座標を、それぞれ(xi,yi)及び(xo,yo)とし、前記投射レンズの材料のアッベ数をνとして、前記カットライン形成領域が、所定の式を満足するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具においては、いわゆるロービームを形成するために、光源からの光の一部を遮光するシェードが使用される。光源から出射され、シェードによって遮光されなかった光は、レンズを通過して、前方に照射される。ロービームによって車両の前方の照射面を照射すると、照射される明るい部分とシェードにより遮光され照射されない暗い部分の水平方向の明暗の境界が形成される。この明暗の境界領域をカットライン領域と呼称する。一般的に、光に対する材料の屈折率は、光の波長によって異なるので、光源の光が白色光であっても、カットライン領域では、可視光領域の長波長の赤い光または短波長の青い光が生じやすい。この現象を色割れと呼称する。
【0003】
本出願人による特許文献1は、色割れを小さくする車両用灯具を開示している。しかし、上記の車両用灯具は、光の回折を利用して色割れを小さくするものであり、使用条件によっては目的の次数以外の回折光が迷光となる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2009/028686A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、カットライン領域の色割れを原理的に低減する車両用灯具に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様による車両用灯具は、光源、リフレクタ、シェード及び投射レンズを備え、前記光源の光を前記リフレクタによって反射させ、反射光の一部を前記シェードによって遮光し、遮光されない光が前記投射レンズを通過して前方を照射するように構成されている。
【0007】
前記投射レンズの光軸をZ軸、Z軸に垂直な面内において水平方向をX軸、鉛直方向をY軸とし、前記投射レンズからZ軸方向に十分に離れた前方で、Z軸に垂直な面において、前記シェードに遮光されない光が到達する明部領域と前記シェードにより遮光されて光が到達しない暗部領域との境界の、光量変化が著しい領域をカットライン領域とし、前記カットライン領域に到達する光線が通過する前記投射レンズの領域をカットライン形成領域とし、前記投射レンズの入射面側から出射面側に向かう方向をサグ量の正の方向として、前記入射面及び前記出射面のサグ量をそれぞれ
【数1】

とし、前記カットライン形成領域を通過して前記カットライン領域に到達する光線の前記入射面及び前記出射面との交点の座標を、それぞれ(x,y)及び(x,y)とし、前記投射レンズの材料のアッベ数をνとして、前記カットライン形成領域が、
【数2】

を満足するように構成されている。
【0008】
本態様によれば、屈折による鉛直方向の色分離が抑えられ、カットライン領域の色割れを原理的に低減することができる。
【0009】
本発明の一実施形態による車両用灯具は、前記投射レンズにおいて、前記カットライン形成領域及び前記カットライン形成領域内の点のY座標よりもY座標が大きな第1の領域または、前記カットライン形成領域及び前記カットライン形成領域内の点のY座標よりもY座標が小さな第2の領域のいずれかを光が通過して前方を照射するように構成されている。本実施形態は、後で説明する第1乃至第6の実施形態に対応する。
【0010】
本実施形態によれば、前記投射レンズの材質を適切に定めることにより、容易に製造することができる。
【0011】
本発明の一実施形態による車両用灯具は、前記投射レンズが、その内部を通過した光が内部に向けて反射されるように構成された反射面を備えている。本実施形態は、後で説明する第7の実施形態に対応する。
【0012】
本実施形態によれば、前記投射レンズの内部全体が照らされるので、外観における美観の観点から好ましい。
【0013】
本発明の一実施形態による車両用灯具は、前記投射レンズが、拡散材混入材料により形成されている。
【0014】
本実施形態によれば、前記投射レンズの内部がムラなく照らされるので外観における美観の観点からさらに好ましい。
【0015】
本発明の一実施形態による車両用灯具は、前記投射レンズが、前記カットライン形成領域内の点のY座標とY座標が同じカットライン形成領域部分、及び前記カットライン形成領域内の点のY座標よりもY座標が大きな第1の部分、またはカットライン形成領域部分、及び前記カットライン形成領域内の点のY座標よりもY座標が小さな第2の部分のみから形成されている。本実施形態は、後で説明する第8乃至第9の実施形態に対応する。
【0016】
本実施形態によれば、前記投射レンズが、前記カットライン形成領域より下部の領域または上部の領域を有しないので、車両用灯具の重量を軽くすることができる。
【0017】
本発明の一実施形態による車両用灯具は、前記投射レンズの、前記カットライン形成領域内の点のY座標よりもY座標が大きな第1の部分の屈折力と前記カットライン形成領域内の点のY座標よりもY座標が小さな第2の部分の屈折力とが異なり、前記投射レンズにおいて、前記カットライン形成領域、前記カットライン形成領域内の点のY座標よりもY座標が大きな点の領域である第1の領域、及び前記カットライン形成領域内の点のY座標よりもY座標が小さな点の領域である第2の領域を光が通過して前方を照射するように構成されている。本実施形態は、後で説明する第10の実施形態に対応する。
【0018】
本実施形態によれば、照射面における照度の高い車両用灯具が得られる。
【0019】
本発明の第2の態様による車両用灯具は、面光源及び投射レンズを備え、前記面光源の光が前記投射レンズを通過して前方を照射するように構成されている。
【0020】
前記投射レンズの光軸をZ軸、Z軸に垂直な面内において水平方向をX軸、鉛直方向をY軸とし、前記投射レンズからZ軸方向に十分に離れた前方で、Z軸に垂直な面において、前記シェードに遮光されない光が到達する明部領域と前記シェードにより遮光されて光が到達しない暗部領域との境界の、光量変化が著しい領域をカットライン領域とし、前記カットライン領域に到達する光線が通過する前記投射レンズの領域をカットライン形成領域とし、前記投射レンズの入射面側から出射面側に向かう方向をサグ量の正の方向として、前記入射面及び前記出射面のサグ量をそれぞれ
【数3】

とし、前記カットライン形成領域を通過して前記カットライン領域に到達する光線の前記入射面及び前記出射面との交点の座標を、それぞれ(x,y)及び(x,y)とし、前記投射レンズの材料のアッベ数をνとして、前記カットライン形成領域が、
【数4】

を満足するように構成されている。本態様は、後で説明する第11の実施形態に対応する。
【0021】
本態様によれば、屈折による鉛直方向の色分離が抑えられ、カットライン領域の色割れを原理的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1乃至第3の実施形態による車両用灯具の構成を示す図である。
【図2】投射レンズによる光線の屈折を説明するための図である。
【図3】本発明の第4乃至第6の実施形態による車両用灯具の構成を示す図である。
【図4】本発明の第7の実施形態による車両用灯具の構成を示す図である。
【図5】本発明の第8乃至第9の実施形態による車両用灯具の構成を示す図である。
【図6】本発明の第10の実施形態による車両用灯具の構成を示す図である。
【図7】本発明の第11の実施形態による車両用灯具の構成を示す図である。
【図8】従来技術よる車両用灯具の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1(a)は、本発明の第1の実施形態による車両用灯具の構成を示す図である。本実施形態による車両用灯具は、光源101A、リフレクタ103A、シェード105A及び投射レンズ107Aを含む。光源101Aから出射した光は、リフレクタ103Aによって反射される。リフレクタ103Aによって反射された光の一部は、シェード105Aによって遮光される。リフレクタ103Aによって反射された光のうち、シェード105Aによって遮光されない光は、投射レンズ107Aを通過し、車両用灯具の前方の照射面109Aを照射する。投射レンズ107Aの材料は、たとえば、ポリメタクリル酸メチルやポリカーボネート、ポリスチレンなどである。
【0024】
ここで、投射レンズ107Aの光軸をZ軸として、照射面109Aは、投射レンズ107Aの前方において、投射レンズ107AからZ軸方向に十分に離れた前方位置において、Z軸に直交するように配置する。十分に離れた位置とは、車両用灯具の投射対象が存在しうる位置であり、たとえば、数メートル以上離れた位置である。具体的に、10メートル離れた位置、または25メートル離れた位置などであってもよい。
【0025】
図1(a)に示すように、照射面109Aには、光源101Aからの光が照射される領域113Aと、シェード105Aによって遮光されるために、光源101Aからの光が照射されない領域115Aとが存在する。また、光が照射される領域113Aと光が照射されない領域115Aとの境界には、照度が大きく変化する水平方向に細長い領域(明暗の境界領域)111Aが存在する。この水平方向に細長い領域111Aをカットライン領域と呼称する。カットライン領域111Aを形成する光が通過する投射レンズ107Aの領域をカットライン形成領域1071Aと呼称する。図1(a)において、カットライン形成領域1071Aを斜線で示した。
【0026】
本実施形態においては、投射レンズ107Aの、光軸を含むカットライン形成領域1071A及びそれより下部の領域を通過した光が照射面109Aを照射するように構成される。また、本実施形態の光学系は、シェード105Aの上端及びカットライン形成領域1071Aの上端付近を通過する光が、投射レンズ107Aを通過した後、カットライン領域111Aの上端を形成するように構成される。
【0027】
図8(a)は、従来技術よる車両用灯具の構成の一例を示す図である。本例による車両用灯具は、光源1101A、リフレクタ1103A、シェード1105A及び投射レンズ1107Aを含む。光源1101Aから出射した光は、リフレクタ1103Aによって反射される。リフレクタ1103Aによって反射された光の一部は、シェード1105Aによって遮光される。リフレクタ1103Aによって反射された光のうち、シェード1105Aによって遮光されない光は、投射レンズ1107Aを通過し、車両用灯具の前方の照射面1109Aを照射する。
【0028】
ここで、投射レンズ1107Aの光軸をZ軸として、照射面1109Aは、投射レンズ1107Aの前方において、投射レンズ1107AからZ軸方向に十分に離れた位置において、Z軸に直交するように配置する。
【0029】
図8(a)に示すように、照射面1109Aには、光源1101Aからの光が照射される領域1113Aと、シェード1105Aによって遮光されるために、光源1101Aからの光が照射されない領域1115Aとが存在する。また、光が照射される領域1113Aと光が照射されない領域1115Aとの境界には、照度が大きく変化するカットライン領域1111Aが存在する。
【0030】
図8(a)においては、カットライン領域1111AにおけるC線(波長656.282nm)及びF線(波長486.134nm)の経路を示した。波長により、投射レンズ1107Aの材料の屈折率が異なるので、C線及びF線の経路の差が生じる。カットライン領域1111Aの近傍における、このようなC線及びF線の経路の差は、いわゆる色割れを発生させる。色割れとは、上述のように白色光源を有する車両用灯具によって照射面を照射した場合に、可視光の波長領域の短波長側の青味がかった色や長波長側の赤みがかった色が強調されて現れる現象を言う。本例においては、C線による赤みがかった色割れが生じる。
【0031】
図8(b)は、従来技術よる車両用灯具の構成の他の例を示す図である。本例による車両用灯具は、光源1101B、リフレクタ1103B、シェード1105B及び投射レンズ1107Bを含む。光源1101Bから出射した光は、リフレクタ1103Bによって反射される。リフレクタ1103Bによって反射された光の一部は、シェード1105Bによって遮光される。リフレクタ1103Bによって反射された光のうち、シェード1105Bによって遮光されない光は、投射レンズ1107Bを通過し、車両用灯具の前方の照射面1109Bを照射する。
【0032】
ここで、投射レンズ1107Bの光軸をZ軸として、照射面1109Bは、投射レンズ1107Bの前方において、投射レンズ1107BからZ軸方向に十分に離れた位置において、Z軸に直交するように配置する。
【0033】
図8(b)に示すように、照射面1109Bには、光源1101Bからの光が照射される領域1113Bと、シェード1105Bによって遮光されるために、光源1101Bからの光が照射されない領域1115Bとが存在する。また、光が照射される領域1113Bと光が照射されない領域1115Bとの境界には、照度が大きく変化するカットライン領域1111Bが存在する。
【0034】
図8(b)においては、投射レンズ1107Bの対向する端部(上端部及び下端部)を通過する光のC線(波長656.282nm)及びF線(波長486.134nm)の経路を示した。波長により、投射レンズ1107Bの材料の屈折率が異なるので、C線及びF線の経路の差が生じる。本例による車両用灯具は、投射レンズ1107Bの対向する端部(上端部及び下端部)を通過する光が、Aで示す領域において互いに交差するように構成されている。Aで示す領域においては、色割れが生じた光を交差させることにより、色割れをある程度解消し、照射される光の色を光源の色に近づけることができる。しかし、この方法は、照射面がAで示す領域に存在する場合にのみ有効であり、照射面がAで示す領域以外の領域に存在する場合には、図8(a)の場合と同様に色割れを生じる。
【0035】
以下に、従来技術と比較した場合の本発明の特徴的な構成について説明する。
【0036】
図2は、投射レンズによる光線の屈折を説明するための図である。投射レンズの光軸をZ軸、Z軸に垂直な面内において水平方向をX軸、鉛直方向をY軸として、図2は、投射レンズを通過する光線の入射点及び出射点をそれぞれ含む、入射面及び出射面それぞれの、YZ平面に平行な断面の形状を示す図である。したがって、図2に示した入射面と出射面の断面のX座標は一般的に異なる値となる。 図2においては、光線が通過する点に注目し、投射レンズの入射面及び出射面を直線で示した。入射面の左側及び出射面の右側は空気である。図2において、入射面と出射面とのなす角度(Y方向成分)をα、投射レンズの材料の屈折率をn、光線の入射面への入射角(3次元的に見た場合の入射角のY方向成分)をθ、出射面からの出射角(3次元的に見た場合の出射角のY方向成分)をθとすると、以下の式が成立する。
【数5】

また、投射レンズの入射面側から出射面側に向かう方向をサグ量の正の方向として、入射面及び出射面のサグ量をそれぞれ
【数6】

とし、光線の入射面及び出射面との交点、すなわち入射点及び出射点の座標を、それぞれ(x,y)及び(x,y)とすると、以下の式が成立する。
【数7】

【0037】
他方、JIS規格を基準に考えると、投射レンズからZ軸方向に10メートル(10000mm)離れた位置でZ軸に直交する照射面において、直径約30mmの円内に入る光の色を測定する。色割れを十分に低減するためには、カットライン形成領域を通過する光のF線及びC線のY方向への分離度合いが、投射レンズからZ軸方向に10メートル(10000mm)離れた位置でZ軸に直交する照射面において、30mm以下であればよい。すなわち、F線及びC線の投射レンズの材料の屈折率を、それぞれn及びnとし、
F線及びC線の出射面からの出射角を、それぞれ
【数8】

として、以下の式が成立すればよい。
【数9】

【0038】
図2において、F線及びC線の出射角の差を
【数10】

で示した。
【0039】
一般的な屈折媒質において、アッベ数をνとしたとき、
【数11】

であれば式(3)が満足される。さらに、
【数12】

であれば、投射レンズ出射後のF線とC線の成す角度がより小さくなり、カットライン領域の色割れはさらに低減される。
【0040】
これに対して、図8(a)及び図8(b)に示すように、従来の車両用灯具においては、投射レンズ1107Aまたは1107Bの、YZ面において入射面と出射
面とのなす角度αが大きくなり、式(1)によって計算される、F線及びC線の出射角が大きくなり、出射角の差
【数13】

も大きくなる。その結果、カットライン領域1111Aまたは1111Bにおける色割れが大きくなる。
【0041】
図1(b)は、本発明の第2の実施形態による車両用灯具の構成を示す図である。本実施形態による車両用灯具は、光源101B、リフレクタ103B、シェード105B及び投射レンズ107Bを含む。光源101Bから出射した光は、リフレクタ103Bによって反射される。リフレクタ103Bによって反射された光の一部は、シェード105Bによって遮光される。リフレクタ103Bによって反射された光のうち、シェード105Bによって遮光されない光は、投射レンズ107Bを通過し、車両用灯具の前方の照射面109Bを照射する。
【0042】
ここで、投射レンズ107Bの光軸をZ軸として、照射面109Bは、投射レンズ107Bの前方において、投射レンズ107BからZ軸方向に十分に離れた位置において、Z軸に直交するように配置する。
【0043】
本実施形態においては、投射レンズ107Bの、光軸を含むカットライン形成領域1071B及びそれより下部の領域を通過した光が照射面109Bを照射するように構成される。また、本実施形態の光学系は、シェード105Bの上端及びカットライン形成領域1071Bの中央付近を通過する光が、投射レンズ107Bを通過した後、カットライン領域111Bの上端を形成するように構成される。
【0044】
図1(c)は、本発明の第3の実施形態による車両用灯具の構成を示す図である。本実施形態による車両用灯具は、光源101C、リフレクタ103C、シェード105C及び投射レンズ107Cを含む。光源101Cから出射した光は、リフレクタ103Cによって反射される。リフレクタ103Cによって反射された光の一部は、シェード105Cによって遮光される。リフレクタ103Cによって反射された光のうち、シェード105Cによって遮光されない光は、投射レンズ107Cを通過し、車両用灯具の前方の照射面109Cを照射する。
【0045】
ここで、投射レンズ107Cの光軸をZ軸として、照射面109Cは、投射レンズ107Cの前方において、投射レンズ107CからZ軸方向に十分に離れた位置において、Z軸に直交するように配置する。
【0046】
本実施形態においては、投射レンズ107Cの、光軸を含むカットライン形成領域1071B及びそれより下部の領域を通過した光が照射面109Cを照射するように構成される。また、本実施形態の光学系は、シェード105Cの上端及びカットライン形成領域1071Cの下端付近を通過する光が、投射レンズ107Cを通過した後、カットライン領域111Cの上端を形成するように構成される。
【0047】
図3(a)は、本発明の第4の実施形態による車両用灯具の構成を示す図である。本実施形態による車両用灯具は、光源101D、リフレクタ103D、シェード105D及び投射レンズ107Dを含む。光源101Dから出射した光は、リフレクタ103Dによって反射される。リフレクタ103Dによって反射された光の一部は、シェード105Dによって遮光される。リフレクタ103Dによって反射された光のうち、シェード105Dによって遮光されない光は、投射レンズ107Dを通過し、車両用灯具の前方の照射面109Dを照射する。
【0048】
ここで、投射レンズ107Dの光軸をZ軸として、照射面109Dは、投射レンズ107Dの前方において、投射レンズ107DからZ軸方向に十分に離れた位置において、Z軸に直交するように配置する。
【0049】
本実施形態においては、投射レンズ107Dの、光軸を含むカットライン形成領域1071D及びそれより上部の領域を通過した光が照射面109Dを照射するように構成される。また、本実施形態の光学系は、シェード105Dの上端及びカットライン形成領域1071Dの中央付近を通過する光が、投射レンズ107Dを通過した後、カットライ領域ン111Dの上端を形成するように構成される。
【0050】
図3(b)は、本発明の第5の実施形態による車両用灯具の構成を示す図である。本実施形態による車両用灯具は、光源101E、リフレクタ103E、シェード105E及び投射レンズ107Eを含む。光源101Eから出射した光は、リフレクタ103Eによって反射される。リフレクタ103Eによって反射された光の一部は、シェード105Eによって遮光される。リフレクタ103Eによって反射された光のうち、シェード105Eによって遮光されない光は、投射レンズ107Eを通過し、車両用灯具の前方の照射面109Eを照射する。
【0051】
ここで、投射レンズ107Eの光軸をZ軸として、照射面109Eは、投射レンズ107Eの前方において、投射レンズ107EからZ軸方向に十分に離れた位置において、Z軸に直交するように配置する。
【0052】
本実施形態においては、投射レンズ107Eの、光軸を含むカットライン形成領域1071E及びそれより上部の領域を通過した光が照射面109Eを照射するように構成される。また、本実施形態の光学系は、シェード105Eの上端及びカットライン形成領域1071Eの下端付近を通過する光が、投射レンズ107Eを通過した後、カットライン領域111Eの上端を形成するように構成される。
【0053】
図3(c)は、本発明の第6の実施形態による車両用灯具の構成を示す図である。本実施形態による車両用灯具は、光源101F、リフレクタ103F、シェード105F及び投射レンズ107Fを含む。光源101Fから出射した光は、リフレクタ103Fによって反射される。リフレクタ103Fによって反射された光の一部は、シェード105Fによって遮光される。リフレクタ103Fによって反射された光のうち、シェード105Fによって遮光されない光は、投射レンズ107Fを通過し、車両用灯具の前方の照射面109Fを照射する。
【0054】
ここで、投射レンズ107Fの光軸をZ軸として、照射面109Fは、投射レンズ107Fの前方において、投射レンズ107FからZ軸方向に十分に離れた位置において、Z軸に直交するように配置する。
【0055】
本実施形態においては、投射レンズ107Fの、光軸を含むカットライン形成領域1071F及びそれより上部の領域を通過した光が照射面109Fを照射するように構成される。また、本実施形態の光学系は、シェード105Fの上端及びカットライン形成領域1071Fの上端付近を通過する光が、投射レンズ107Fを通過した後、カットライン領域111Fの上端を形成するように構成される。
【0056】
図4は、本発明の第7の実施形態による車両用灯具の構成を示す図である。本実施形態による車両用灯具は、光源201、リフレクタ203、シェード205及び投射レンズ207を含む。光源201から出射した光は、リフレクタ203によって反射される。リフレクタ203によって反射された光の一部は、シェード205によって遮光される。リフレクタ203によって反射された光のうち、シェード205によって遮光されない光は、投射レンズ207を通過し、車両用灯具の前方の照射面209を照射する。
【0057】
ここで、投射レンズ207の光軸をZ軸として、照射面209は、投射レンズ207の前方において、投射レンズ207からZ軸方向に十分に離れた位置において、Z軸に直交するように配置する。
【0058】
本実施形態において、投射レンズ207は、その内部に反射面2071を備える。反射面2071は、投射レンズ207の内部を通過する光の一部が、投射レンズ207の内部全体を照らすように構成される。
【0059】
本実施形態によれば、投射レンズ207の内部全体が照らされるので、外観における美観の観点から好ましい。また、投射レンズ207が拡散材を含む材料によって形成されていれば、投射レンズ207の内部がムラなく照らされるので外観における美観の観点からさらに好ましい。
【0060】
図5(a)は、本発明の第8の実施形態による車両用灯具の構成を示す図である。本実施形態による車両用灯具は、光源301A、リフレクタ303A、シェード305A及び投射レンズ307Aを含む。光源301Aから出射した光は、リフレクタ303Aによって反射される。リフレクタ303Aによって反射された光の一部は、シェード305Aによって遮光される。リフレクタ303Aによって反射された光のうち、シェード305Aによって遮光されない光は、投射レンズ307Aを通過し、車両用灯具の前方の照射面309Aを照射する。
【0061】
ここで、投射レンズ307Aの光軸をZ軸として、照射面309Aは、投射レンズ307Aの前方において、投射レンズ307AからZ軸方向に十分に離れた位置において、Z軸に直交するように配置する。
【0062】
本実施形態においては、投射レンズ307Aの、光軸を含むカットライン形成領域3071A及びそれより上部の領域を通過した光が照射面309Aを照射するように構成される。本実施形態の投射レンズ307Aは、カットライン形成領域3071Aより下部の領域を有しない。また、本実施形態の光学系は、シェード305Aの上端及びカットライン形成領域3071Aの中央付近を通過する光が、投射レンズ307Aを通過した後、カットライン領域311Aの上端を形成するように構成される。
【0063】
本実施形態によれば、投射レンズ307Aは、カットライン形成領域3071Aより下部の領域を有しないので、車両用灯具の重量を軽くすることができる。
【0064】
図5(b)は、本発明の第9の実施形態による車両用灯具の構成を示す図である。本実施形態による車両用灯具は、光源301B、リフレクタ303B、シェード305B及び投射レンズ307Bを含む。光源301Bから出射した光は、リフレクタ303Bによって反射される。リフレクタ303Bによって反射された光の一部は、シェード305Bによって遮光される。リフレクタ303Bによって反射された光のうち、シェード305Bによって遮光されない光は、投射レンズ307Bを通過し、車両用灯具の前方の照射面309Bを照射する。
【0065】
ここで、投射レンズ307Bの光軸をZ軸として、照射面309Bは、投射レンズ307Bの前方において、投射レンズ307BからZ軸方向に十分に離れた位置において、Z軸に直交するように配置する。
【0066】
本実施形態においては、投射レンズ307Bの、光軸を含むカットライン形成領域3071B及びそれより下部の領域を通過した光が照射面309Bを照射するように構成される。本実施形態の投射レンズ307Bは、カットライン形成領域3071Bより上部の領域を有しない。また、本実施形態の光学系は、シェード305Bの上端及びカットライン形成領域3071Bの中央付近を通過する光が、投射レンズ307Bを通過した後、カットライン領域311Bの上端を形成するように構成される。
【0067】
本実施形態によれば、投射レンズ307Bは、カットライン形成領域3071Bより上部の領域を有しないので、車両用灯具の重量を軽くすることができる。
【0068】
図6は、本発明の第10の実施形態による車両用灯具の構成を示す図である。本実施形態による車両用灯具は、光源401、リフレクタ403、シェード405及び投射レンズ407を含む。光源401から出射した光は、リフレクタ403によって反射される。リフレクタ403によって反射された光の一部は、シェード405によって遮光される。リフレクタ405によって反射された光のうち、シェード405によって遮光されない光は、投射レンズ407を通過し、車両用灯具の前方の照射面409を照射する。
【0069】
ここで、投射レンズ407の光軸をZ軸として、照射面409は、投射レンズ407の前方において、投射レンズ407からZ軸方向に十分に離れた位置において、Z軸に直交するように配置する。
【0070】
本実施形態においては、投射レンズ407の、光軸を含むカットライン形成領域4071、それより上部の領域及びそれより下部の領域を通過した光が照射面409を照射するように構成される。本実施形態の投射レンズ407の、カットライン形成領域4071より上部の領域及びカットライン形成領域4071より下部の領域は、上記上部の領域及び上記下部の領域の両方を通過した光が照射面409を照射するように、異なる屈折力を有する。具体的に、上記上部の領域の屈折力は、上記下部の領域の屈折力よりも大きい。また、本実施形態の光学系は、シェード405の上端及びカットライン形成領域4071の中央付近を通過する光が、投射レンズ407を通過した後、カットライン領域411の上端を形成するように構成される。本実施形態によれば、照射面における照度の高い車両用灯具が得られる。
【0071】
図7は、本発明の第11の実施形態による車両用灯具の構成を示す図である。本実施形態による車両用灯具は、面光源501及び投射レンズ507を含む。本実施形態においては、面光源501から放射され、投影レンズ507を通過した光が、カットライン形成領域を形成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源、リフレクタ、シェード及び投射レンズを備え、前記光源の光を前記リフレクタによって反射させ、反射光の一部を前記シェードによって遮光し、遮光されない光が前記投射レンズを通過して前方を照射するように構成された車両用灯具であって、
前記投射レンズの光軸をZ軸、Z軸に垂直な面内において水平方向をX軸、鉛直方向をY軸とし、
前記投射レンズからZ軸方向に十分に離れた前方で、Z軸に垂直な面において、前記シェードに遮光されない光が到達する明部領域と前記シェードにより光が到達しない暗部領域との境界の、光量変化が著しい領域をカットライン領域とし、前記カットライン領域に到達する光線が通過する前記投射レンズの領域をカットライン形成領域とし、
前記投射レンズの入射面側から出射面側に向かう方向をサグ量の正の方向として、前記入射面及び前記出射面のサグ量をそれぞれ
【数1】

とし、前記カットライン形成領域を通過して前記カットライン領域に到達する光線の前記入射面及び前記出射面との交点の座標を、それぞれ(x,y)及び(x,y)とし、前記投射レンズの材料のアッベ数をνとして、前記カットライン形成領域が、
【数2】

を満足するように構成された車両用灯具。
【請求項2】
前記投射レンズにおいて、前記カットライン形成領域及び前記カットライン形成領域内の点のY座標よりもY座標が大きな第1の領域または、前記カットライン形成領域及び前記カットライン形成領域内の点のY座標よりもY座標が小さな第2の領域のいずれかを光が通過して前方を照射するように構成された請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記投射レンズが、その内部を通過した光が内部に向けて反射されるように構成された反射面を備えた請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記投射レンズが、拡散材混入材料により形成された請求項3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記投射レンズが、前記カットライン形成領域内の点のY座標とY座標が同じカットライン形成領域部分、及び前記カットライン形成領域内の点のY座標よりもY座標が大きな第1の部分、またはカットライン形成領域部分、及び前記カットライン形成領域内の点のY座標よりもY座標が小さな第2の部分のみから形成された請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記投射レンズの、前記カットライン形成領域内の点のY座標よりもY座標が大きな第1の部分の屈折力と前記カットライン形成領域内の点のY座標よりもY座標が小さな第2の部分の屈折力とが異なり、前記投射レンズにおいて、前記カットライン形成領域、前記カットライン形成領域内の点のY座標よりもY座標が大きな第1の領域、及び前記カットライン形成領域内の点のY座標よりもY座標が小さな第2の領域を光が通過して前方を照射するように構成された請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項7】
面光源及び投射レンズを備え、前記面光源の光が前記投射レンズを通過して前方を照射するように構成された車両用灯具であって、
前記投射レンズの光軸をZ軸、Z軸に垂直な面内において水平方向をX軸、鉛直方向をY軸とし、
前記投射レンズからZ軸方向に十分に離れた前方で、Z軸に垂直な面において、前記投射レンズを通過した光が到達する明部領域と前記投射レンズを通過した光が到達しない暗部領域との境界の、光量変化が著しい領域をカットライン領域とし、前記カットライン領域に到達する光線が通過する前記投射レンズの領域をカットライン形成領域とし、
前記投射レンズの入射面側から出射面側に向かう方向をサグ量の正の方向として、前記入射面及び前記出射面のサグ量をそれぞれ
【数3】

とし、前記カットライン形成領域を通過して前記カットライン領域に到達する光線の前記入射面及び前記出射面との交点の座標を、それぞれ(x,y)及び(xo,yo)とし、前記投射レンズの材料のアッベ数をνとして、前記カットライン形成領域が、
【数4】

を満足するように構成された車両用灯具。
【請求項8】
前記投射レンズにおいて、前記カットライン形成領域及び前記カットライン形成領域内の点のY座標よりもY座標が大きな第1の領域または、前記カットライン形成領域及び前記カットライン形成領域内の点のY座標よりもY座標が小さな第2の領域のいずれかを光が通過して前方を照射するように構成された請求項7に記載の車両用灯具。
【請求項9】
前記投射レンズが、その内部を通過した光が内部に向けて反射されるように構成された反射面を備えた請求項8に記載の車両用灯具。
【請求項10】
前記投射レンズが、拡散材混入材料により形成された請求項9に記載の車両用灯具。
【請求項11】
前記投射レンズが、前記カットライン形成領域内の点のY座標とY座標が同じカットライン形成領域部分、及び前記カットライン形成領域内の点のY座標よりもY座標が大きな第1の部分、またはカットライン形成領域部分、及び前記カットライン形成領域内の点のY座標よりもY座標が小さな第2の部分のみから形成された請求項7に記載の車両用灯具。
【請求項12】
前記投射レンズの、前記カットライン形成領域内の点のY座標よりもY座標が大きな第1の部分の屈折力と前記カットライン形成領域内の点のY座標よりもY座標が小さな第2の部分の屈折力とが異なり、前記投射レンズにおいて、前記カットライン形成領域、前記カットライン形成領域内の点のY座標よりもY座標が大きな第1の領域、及び前記カットライン形成領域内の点のY座標よりもY座標が小さな第2の領域を光が通過して前方を照射するように構成された請求項7に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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