説明

車両用灯具

【課題】前面部材と後面部材との間に形成された空洞内で発光素子の出射光を拡散させ、かつ板面状部材に透過させることにより、前記板面状部材を均一に発光させてなる車両用灯具の提供。
【解決手段】車両用灯具において、空洞を形成するようにほぼ対向して配置される第一面部及び第二面部を有し、少なくとも一以上設けられた発光素子からの光を第一面部及び第二面部の延出する所定方向に沿って前記空洞に入射させ、第一面部の空洞側表面の少なくとも一部に設けた複数の隣接するプリズム型反射要素と、第二面部の空洞側表面に設けた反射面との間で多重反射させることにより、第一面部全体に均等に拡散させて入射させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前面部材と後面部材との間に形成された空洞内で発光素子の出射光を拡散させ、かつ板面状部材に透過させることにより、均一に発光させた板面状部材を備えた車両用灯具を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、LEDから直接入射した光の一部をハーフミラー面に透過させてインナーレンズの前方に出射し、かつ残る光をインナーレンズのハーフミラー面とランプボディの反射面との間の空間内で多重反射させ、ハーフミラー面に繰り返し入射した光の一部をインナーレンズに透過させて前方に出射させる車両用灯具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−066130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の車両用灯具のハーフミラー面とランプボディの反射面は、LEDによる光を空間内で多重反射させる際に反射光を拡散させていない。従って、多重反射してからインナーレンズの前方に出射する一部の光は、前方に向けて均等に出射しない。言い換えると、特許文献1のインナーレンズは、面状に均一に発光することが出来ない。
【0005】
本願発明は、上記課題に鑑みて、前面部材と後面部材との間に形成された空洞内で発光素子の出射光を拡散させ、かつ板面状部材に透過させることにより、前記板面状部材を均一に発光させる車両用灯具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために請求項1の車両用灯具は、少なくとも一以上の発光素子と、第一面部と、前記第一面部の前方にほぼ対向して配置される第二面部と、前記第一面部と第二面部との間に画成されて前記発光素子からの光が前記第一面部及び第二面部の延出する所定の方向である第一方向に沿って前記空洞に入射される車両用灯具であって、前記第一面部の空洞側表面は、反射面として形成され、前記第二面部は、板面状に形成され、透光性を有し、かつ隣接する複数のプリズム型反射要素をその空洞側表面の少なくとも一部に有し、前記複数のプリズム型反射要素は、空洞内に入射した前記発光素子からの光のうち、一部をその前面に向けて透過させると共に、その他の透過させない光を空洞内へ反射して多重反射させるように、前記第一方向に延出し、かつ前記第一面部に向かう方向である第二方向に突出するプリズム形状を有するように構成した。
【0007】
(作用)発光素子による光は、第一面部及び第二面部間の空洞に直接またはリフレクタ等の偏向手段を介し間接的に入射する。第二面部の空洞側表面に設けられた反射要素は、発光素子による入射光の一部を第二面部に透過させて前方に出射させ、残りの光を空洞側に向けて拡散反射させる。空洞内に拡散反射された光は、反射要素と、第一面部の空洞側表面に設けられた反射面によって空洞内で多重反射し、多重反射した光の一部が第二面部から前方に均等に出射する。その結果、第二面部は、均等に面発光する。
【0008】
請求項2は、請求項1に記載の車両用灯具であって、前記複数のプリズム型反射要素は、前記第一及び第二方向にそれぞれ直交する第三方向に隣接するように配列されてプリズム型反射要素群を構成し、前記プリズム型反射要素群は、前記第一方向に隣接するよう複数群設けられ、各プリズム型反射要素群は、隣接するプリズム型反射要素群に対して前記第三方向にオフセットして配置されるようにした。
【0009】
第二面部に均等に拡散された発光素子による拡散光は、プリズム型反射要素の形成部分から前方に出射する光と、プリズム型反射要素が形成されていない部分、つまり隣接するプリズム型反射要素の境界部(以降は単に境界部という)との間に明暗差を形成する。従って、仮にプリズム型反射要素を上下に一列に配列した場合には、プリズム型反射要素と、前記境界部との間に縦長の明暗差が形成されてしまう。
【0010】
(作用)しかし、請求項2の車両用灯具においては、上下に隣接するプリズム型反射要素が左右(第三方向)にオフセットされ、縦方向(第二方向)の明暗差が分断されるため、縦方向の明暗差が見えにくくなる。
【0011】
請求項3は、請求項1または2に記載の車両用灯具であって、前記複数のプリズム型反射要素における前記第二方向の突出高さが各プリズム型反射要素毎に略均一に形成されるようにした。
【0012】
(作用)各プリズム型反射要素は、各プリズム型反射要素毎に第二方向に向けて略均一な長さで突出するため、発光素子からの光を空洞に向かって均等に拡散反射することにより、発光素子による光を第二面部全体に均等に拡散する。
【0013】
請求項4は、請求項1から3のうちいずれかに記載の車両用灯具であって、前記各プリズム型反射要素における前記第一方向及び第二方向を含む断面で切断した断面の稜線が鋸歯形状を有するように構成されている。
【0014】
(作用)鋸歯形状の反射要素が、発光素子からの光を空洞に向かってより広角度に反射することにより、発光素子による光を第二面部全体に更に均等に拡散する。
【0015】
請求項5は、請求項1から4のうちいずれかに記載の車両用灯具であって、前記各プリズム型反射要素における前記第二方向及び第三方向を含む断面で切断した断面の稜線が三角形の左右両辺に突出方向のRをつけてなる略三角形状となるように構成されている。
【0016】
(作用)第一の発光素子による光は、前記第二方向及び第三方向を含む断面で切断した断面の稜線を構成する二つの辺を直線ではでなく外向きに凸となる曲線とすることにより、第二面部の前方に拡散光として出射する。第二面部の内側は、第二面部からの出射光が拡散することによって見えにくくなる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の車両用灯具によれば、発光素子によりテールランプ用の面状かつ均等な光が形成される。
【0018】
請求項2の車両用灯具によれば、プリズム型反射要素と、該プリズム型反射要素の境界部との間の明暗差が目立たなくなるため、より均等に面発光し、発光する第二面部の見栄えが向上する。
【0019】
請求項3及び4の車両用灯具によれば、第二面部がより均一に面発光する。
【0020】
請求項5の車両用灯具は、第二面部の内側を隠す目隠し効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】車両用灯具の第一実施例の正面図。
【図2】車両用灯具を縦に切断した、図1のI−I断面図。
【図3】第二面部の反射要素の構成を示す拡大部分平面図で、(a)空洞側から見た第二面部の平面図。(b)(a)図のII−II断面図。(c)第二面部の正面図。(d)第二面部の拡大部分斜視図。
【図4】発光素子からの光の空洞内における光路説明図。
【図5】反射要素の形状が異なる車両用灯具の第二実施例を示す図で、(a)空洞側から見た第二面部の拡大部分平面図。(b)(a)図のIII−III断面図。(c)第二面部の正面図。(d)第二面部の部分斜視図。
【図6】第二実施例の反射要素の拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、図1から図4により本発明における車両用灯具の第一実施例を説明する。車両用灯具1は、ランプ本体2,ランプ本体2の前面に固定された透明又は半透明のアウターレンズ3及び、ランプ本体2の内側に配置された灯具ユニット4から構成される。灯具ユニット4は、第一の発光素子(LED)5を有し、図示しない固定手段によってランプ本体2に固定された複数の発光素子ユニット6と、第一面部10と、第二面部11と、第一及び第二面部(10,11)を一体化してランプ本体2に固定する支持部材12によって構成される。尚、図1、図3(a)においては、灯具正面から見た各方向を(灯具上方:下方:右方:左方=U:Lo:Ri:Le)として説明し、図2、図3(b)、図4においては、各方向を(灯具前方:後方:上方:下方=F:Re:U:Lo)として説明する。また、図1〜図5においては、ランプ本体2の上下に延びる第一面部及び第二面部(10,11)の前記延出方向を第一方向とし、後述する第一面部10に向かって突設された反射要素20の突出方向(図3(b)の符号Re方向)を第二方向とし、第一方向及び第二方向に直交する方向を第三方向として説明する。
【0023】
図1のランプ本体2は、箱形に形成され、左右両面(2a、2b)が平行に左下がりに傾斜する形状を有し、前方の開口部2cがアウターレンズ3によって閉塞され、灯具ユニット4の第二面部11の前面11aは、アウターレンズ3を介して前方に露出される。
【0024】
第一面部10と第二面部11は、上下に延びる板面形状に形成され、下端部(10a、11b)を支持部材12に固定され、かつ前後に離間した状態で対向するように配置される。第一面部10と第二面部11との間には、空洞15が画成される。支持部材12は、図示しない固定手段によってランプ本体2の下部側に固定される。
【0025】
複数の発光素子ユニット6は、左右に等間隔となるようにランプ本体2の上部側に固定される。第一の発光素子5は、それぞれ空洞15の上部開口部15aに正対するように配置される。第一の発光素子5からの光は、第一面部及び第二面部(10,11)の延出する第一方向に沿った所定の方向(図4の場合、第一面部10の反射面19又は第二面部11の反射要素20へ向かう斜め下方)に向かって空洞15に入射する。 尚、発光素子5から出射する光は、本願各実施例のように直接空洞15に入射させても良いし、別途設置したリフレクタを介して反射させてから空洞に入射させても良い。
【0026】
第一面部10の空洞側表面は、第一の光通過部16を除く部分に反射処理が施され、または反射面19が形成されることによって、反射面19として形成される。また、反射面19の色は、反射光を均一にするため、望ましくは白色とする。
【0027】
第二面部11の空洞側表面には、図3(a)の符号20aから20dの範囲に形成される略同一形状の反射要素20が複数設けられる。反射要素20は、第一方向に延出するプリズム形状を有し、かつ空洞15に向かって第二方向に複数突設される。各反射要素20は、図3(a)の上下方向に延びる三角柱形状(反射要素の稜線となる三角柱の頂辺は、符号24で表される)に形成され、かつ境界部21(縦方向の太線部分)を間に挟んで左右方向(第三方向)に隣接するように配列される。各反射要素20の底部25から稜線24までの第二方向への突出高さh1(図3(c)を参照)は、略均一である。
【0028】
左右に隣接するよう配列された複数の反射要素20を一群の反射要素群22とすると、反射要素群22は、左右に延びる境界部23を間に挟んで上下に隣接するように複数群配置される。各反射要素群22は、その上下に配置される他の反射要素群22に対し、各反射要素20の横幅(長さL1)の半分の長さ(L1/2)だけ左右いずれかの方向にオフセットされて(ずらして)配置されている。その結果、各反射要素20の境界部21(縦方向の太線部分)は、上下に一直線に繋がることなく、反射要素20の縦方向長さ(長さL2)に短く分断される。仮に反射要素20を縦方向(図3(a)の上下方向)に一列に配列した場合、反射要素20と境界部21との間には、空洞15内で面状に拡散された発光素子5からの光によって縦に長い明暗差が形成されてしまう。しかし、本願の各実施例においては、境界部21が短く分断されているため、縦方向の明暗差が目立たない。
【0029】
次に、発光素子5から出射した光の光路を図4によって説明する。発光素子5から空洞15に入射した光の一部は、第二面部11の反射要素20または境界部21に直接入射し、かつ反射要素20を透過して第二面部11及び図2に示すアウターレンズ3の前方へ出射する(符号R1)。発光素子5による光は、反射要素20または境界部21を透過出来ない場合、空洞15側に向けて反射され、更に第一面部10の反射面19によって再反射される。反射要素20または境界部21を透過出来ない発光素子5による光は、反射要素20と反射面19との間を前記反射と再反射によって少なくとも1往復することによって第二面部11の全体に拡散される(符号R2〜R4)。多重反射によって拡散した発光素子5の光は、後方から第二面部11に均等に入射して透過され、かつ前方に出射することにより、第二面部11の全体を均一に面発光させる。発光素子5により面発光した光は、主にテールランプ等に利用される。
【0030】
次に、図5及び図6により、反射要素20と比べた反射要素31の形状のみが第一実施例の車両用灯具1の構成と異なる、第二実施例の車両用灯具を説明する。第二面部11の空洞側表面には、図5(a)の符号(31a,31b,31h,31g)の範囲に形成される略同一形状の反射要素31が複数設けられる。
【0031】
各反射要素31は、図5(a)の左方向(第三方向)から見ると、符号(31a〜31c)を各点とした三角形状が、後述する境界部32から反射要素31の左右方向の中央に位置する稜線35(符号31d〜31f)まで外向きに凸となる曲線に沿って上昇した後、外向きに凸となる曲線に沿って隣り合う他の境界部32(符号31g〜31i)まで下降する連続形状を有する。また各反射要素31は、図5(c)に示すように正面方向から見ると、底辺を除く二辺に突出方向のRをつけてなる略三角形状(反射要素31の基本断面形状となる符号31a,31g,31dを各点とした形状)が、後述する境界部34から反射要素31の上下方向の中央線36(符号31c,31i,31f)まで(符号Up方向に)上昇した後、隣り合う他の境界部34(符号31b,31h,31e)まで(符号Dw方向に)下降する連続形状を有する。
【0032】
尚、前記略三角形状(符号31a,31g,31d)の第二方向への第一突出高さh2(符号31aと31gの各点を結ぶ底辺から頂点31dまでの高さ。図5(c)及び図6参照)は、各反射要素毎に同一かつ均一である。また、反射要素31の第二方向への第二突出高さh3(符号31dと31eの各点を結ぶ線分から稜線35の最突出点となる31fまでの高さ。図6参照)もまた、各反射要素毎に同一かつ均一である。
【0033】
各反射要素31は、境界部32(縦方向の太線部分)を間に挟んで左右方向(第三方向)に隣接するように配列される。左右に隣接するよう配列された複数の反射要素31を一群の反射要素群33とすると、反射要素群33は、左右に延びる境界部34を間に挟んで上下に隣接するように複数群配置される。各反射要素群33は、その上下に配置される他の反射要素群33に対し、各反射要素31の横幅(長さL3)の半分の長さ(L3/2)だけ左右いずれかの方向にオフセットされて(ずらして)配置されている。
【0034】
その結果、図5(b)に示される第二面部11においては、断面の稜線が鋸歯形状を有するように形成される。鋸歯形状の稜線は、空洞15への突出長さの大きな稜線と突出長さの小さな稜線が上下に交互に配置された形状を有する。反射要素31が鋸歯状に傾斜することにより、反射要素31から前方に出射する光は、正面方向に出射し易くなる。また、各反射要素31の境界部32(縦方向の太線部分)は、上下に一直線に繋がることなく、反射要素31の縦方向長さ(長さL4)に短く分断される。従って、第一実施例においては、境界部21が短く分断されているため、反射要素31と境界部32の間に形成される縦方向の明暗差が目立たない。
【0035】
尚、反射要素31から前方に出射する光は、正面から見た稜線が有するR付の略三角形状により、前記稜線をRの無い一般的な三角形状にした場合(図3(c))よりも拡散されやすくなる(図5(c))。従って、第二実施例の車両用灯具においては、第二面部11の内側が見えにくくなる。その結果、第二実施例の車両用灯具においては、内部構造を見えにくくする目隠し効果が発生する。尚、
反射要素31の図5(b)の左側面から見た稜線形状は、図5(c)正面形状と同様に、三角形の上下両辺に突出方向のRをつけてなる略三角形状としてもよい。その場合、反射要素31からの出射光の拡散性が更に向上することにより、前記目隠し効果が更に向上する。
【符号の説明】
【0036】
1 車両用灯具
5 発光素子
10 第一面部
11 第二面部
11a 第二面部の前面
15 空洞
19 反射面
20 反射要素
31 稜線が鋸歯形状を有する反射要素
F 灯具前方

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一以上の発光素子と、第一面部と、前記第一面部の前方にほぼ対向して配置される第二面部と、前記第一面部と第二面部との間に画成された空洞を備え、前記第一面部と第二面部との間に画成されて前記発光素子からの光が前記第一面部及び第二面部の延出する所定の方向である第一方向に沿って前記空洞に入射される車両用灯具であって、
前記第一面部の空洞側表面は、反射面として形成され、
前記第二面部は、板面状に形成され、透光性を有し、かつ隣接する複数のプリズム型反射要素をその空洞側表面の少なくとも一部に有し、
前記複数のプリズム型反射要素は、空洞内に入射した前記発光素子からの光のうち、一部をその前面に向けて透過させると共に、その他の透過させない光を空洞内へ反射して多重反射させるように、前記第一方向に延出し、かつ前記第一面部に向かう方向である第二方向に突出するプリズム形状を有することを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記複数のプリズム型反射要素は、前記第一及び第二方向にそれぞれ直交する第三方向に隣接するように配列されてプリズム型反射要素群を構成し、前記プリズム型反射要素群は、前記第一方向に隣接するよう複数群設けられ、
各プリズム型反射要素群は、隣接するプリズム型反射要素群に対して前記第三方向にオフセットして配置されたことを特徴とする、請求項1の車両用灯具。
【請求項3】
前記複数のプリズム型反射要素は、前記第二方向の突出高さが各プリズム型反射要素毎に略均一に形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記各プリズム型反射要素は、前記第一方向及び第二方向を含む断面で切断した断面の稜線が鋸歯形状を有することを特徴とする、請求項1から3のうちいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記各プリズム型反射要素は、前記第二方向及び第三方向を含む断面で切断した断面の稜線が三角形の左右両辺に突出方向のRをつけてなる略三角形状であることを特徴とする、請求項1から4のうちいずれかに記載の車両用灯具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate