説明

車両用灯具

【課題】長尺な導光体の厚さを薄くした場合に、被視認性の低下を抑制する。
【解決手段】車両用灯具1は、長尺に形成されたインナーレンズ6と、インナーレンズ6の長手方向前端の入射面61に対向配置された第一LED4とを備える。インナーレンズ6は、長手方向と直交する幅方向の一方の面であって、第一LED4から出射されて入射面61からインナーレンズ6内に入射した光を反射させる反射面62と、反射面62とは反対側の面であって、反射面62で反射された光をインナーレンズ6内から出射させる出射面63とを有し、反射面62から出射面63までのインナーレンズ6の幅が、当該インナーレンズ6の厚さよりも長尺に形成され、インナーレンズ6の厚さ方向両端の上面64及び下面65に、反射面62で反射された光を上下方向に拡散させる複数のレンズカット64a,65aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される車両用灯具として、自動車のドアミラーに取り付けられるドアミラーサイドターンランプが知られている。このドアミラーサイドターンランプにおいては、車両側方から斜め後方に掛けての所定範囲を照らすことが法規上で規定されているほか、他の交通への被視認性や車両デザイン性の観点から、車両斜め前方に向かって光を照射することが求められる。
【0003】
この後者の要請に応える構成として、一般的なドアミラーサイドターンランプでは、ドアミラーの後面(車両前方側の面)に沿いつつ略水平に配した長尺な導光体の前面を、当該導光体の長手方向の端面に対向させた光源によって、全長に亘って発光させている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−44395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のドアミラーサイドターンランプにおいては、灯具自体の小型化やデザイン上の要求から、導光体の上下方向の厚さが制限される場合がある。しかしながら、これに応えて単純に導光体の厚さを薄くしてしまうと、当該導光体の発光幅が狭くなってしまうため、灯具の被視認性が損なわれてしまう。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、長尺な導光体の厚さを薄くした場合であっても、被視認性の低下を抑制することができる車両用灯具の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
長尺な形状に形成された導光体と、
前記導光体の長手方向の一端面に対向配置された光源と、
を備える車両用灯具において、
前記導光体は、
前記長手方向と直交する当該導光体の幅方向の一方の面であって、前記光源から出射されて前記一端面から当該導光体内に入射した光を反射させる反射面と、
前記反射面とは反対側の面であって、前記反射面で反射された光を当該導光体内から出射させる出射面と、
を有し、
前記反射面から前記出射面までの当該導光体の幅が、当該導光体の幅方向及び前記長手方向の何れにも直交する方向に沿った当該導光体の厚さよりも長尺に形成され、
当該導光体の前記厚さ方向の両端面に、前記反射面で反射された光を前記厚さ方向に拡散させるレンズカットが形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用灯具において、
前記反射面には、前記一端面から前記導光体内に入射した光を前記出射面に向けて反射させる複数のプリズム部と、当該光を前記長手方向に沿って導光するように反射させる複数の導光反射面とが、前記長手方向に沿って個別に交互に連なっていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両用灯具において、
前記複数の導光反射面は、前記一端面から離間するに連れて、前記長手方向に沿った長さが短くなることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の車両用灯具において、
前記複数のプリズム部及び前記複数の導光反射面は、それぞれの前記長手方向に沿った長さが微細に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、導光体の長手方向の一端面から当該導光体内に入射し、当該導光体の幅方向の一方の面である反射面で反射された光が、反射面とは反対側の出射面から出射するとともに、当該光の一部が、導光体の厚さ方向の両端面に形成されたレンズカットによって導光体の厚さ方向に拡散されるので、反射面から出射面までの導光体の幅を当該導光体の厚さよりも長尺に形成した場合、つまり、導光体の厚さを薄くして出射面の幅が短尺に形成された場合であっても、導光体の厚さ方向に広く拡散させた光を照射することができ、ひいては被視認性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態における車両用灯具の正面図である。
【図2】実施形態における車両用灯具の分解斜視図である。
【図3】図1のII−II線での断面図である。
【図4】図3のIII−III線での断面図である。
【図5】図3の(a)A部の拡大図であり、(b)B部の拡大図であり、(c)C部の拡大図である。
【図6】図4の(a)D部の拡大図であり、(b)E部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態における車両用灯具1の正面図であり、図2は、車両用灯具1の分解斜視図であり、図3は、図1のII−II線での断面図であり、図4は、図3のIII−III線での断面図であり、図5(a)〜(c)は、図3のA部〜C部の拡大図であり、図6(a),(b)は、図4のD部,E部の拡大図である。
なお、以下の説明では、「前」「後」「左」「右」「上」「下」との記載は、特に断りのない限り、車両用灯具1が搭載される図示しない車両から見た方向を意味するものとする。
【0014】
図1〜図4に示すように、車両用灯具1は、図示しない車両の左側のドアミラーに取り付けられるドアミラーサイドターンランプであり、ハウジング2と、アウターレンズ3とを備えている。
ハウジング2は、長尺な形状に形成され、右側(車両中央側)から左側(車両側方側)に向かって後方へ傾斜した方向に沿って延在するように配置されている。より詳しくは、ハウジング2は、斜め前方へ反るように湾曲しており、後端部では前後方向に略沿っている。このハウジング2は、全長に亘って、その前面が斜め前方へ開口している。また、ハウジング2の開口底面には、後述するインナーレンズ6を保持するための保持部21が、略全長に亘って凹設されている。
【0015】
アウターレンズ3は、ハウジング2に倣った長尺な形状に形成され、ハウジング2の前面開口を覆いつつ、その周縁部がハウジング2の周縁部に嵌合されている。このアウターレンズ3の前面には、略全長に亘って凸部31が形成されており、その反対側の内面(灯具内面)には、当該凸部31に対応した凹部32が形成されている。但し、アウターレンズ3の後端部には、凸部31のみが形成されて凹部32が形成されていない部分があり、当該部分の内面である後部内面33には、後述する第二LED5からの光を左方から斜め後方に掛けて拡散させる微細なレンズカット(図示省略)が形成されている。
【0016】
ハウジング2とアウターレンズ3とで形成される灯室内には、第一LED4と、第二LED5と、インナーレンズ6とが収容されている。
このうち、第一LED4は、基板41に実装された状態で灯室内の前端部に設けられ、後述するように、インナーレンズ6の長手方向の前端面に対向するように配置されている。この第一LED4は、インナーレンズ6を発光させるためのものである。
【0017】
第二LED5は、基板51に実装された状態で灯室内の後端部に設けられ、アウターレンズ3の後部内面33に対向するようにハウジング2の開口底面に配置されている。この第二LED5は、法規上で規定されたドアミラーサイドターンランプの配光要件を満足させるためのものであり、当該第二LED5から出射された光は、アウターレンズ3の後部内面33に形成された図示しない微細なレンズカットを通じて、左方(車両側方)から斜め後方に掛けて照射される。
【0018】
インナーレンズ6は、長尺な湾曲平板状に形成され、右側(車両中央側)から左側(車両側方側)に向かって後方へ傾斜した方向に沿って延在するように配置されて、ハウジング2の保持部21とアウターレンズ3の凹部32に保持されている。
インナーレンズ6の長手方向の前端面は、第一LED4に対向しており、当該第一LED4から出射された光をインナーレンズ6内に入射させる入射面61となっている。
【0019】
インナーレンズ6の長手方向に沿った面のうち、当該インナーレンズ6の幅方向の一方の面である車両中央側の面は、第一LED4から出射されて入射面61からインナーレンズ6内に入射した光を反射させる反射面62となっている。一方、この反射面62とは反対側(車両側方側)の面は、反射面62で反射された光をインナーレンズ6内から出射させる出射面63となっている。
【0020】
このうち、反射面62は、巨視的には斜め前方へ反るように湾曲した湾曲面状であるが、詳細には、図5(a)〜(c)に示すように、入射面61からインナーレンズ6内に入射した光を出射面63に向けて反射させる複数のプリズム部62a,…と、当該光をインナーレンズ6の長手方向に沿って導光するように反射させる複数の導光反射面62b,…とが、当該長手方向に沿って個別に交互に連なった形状となっている。但し、複数の導光反射面62b,…は、インナーレンズ6前端の入射面61から離間するに連れて、インナーレンズ6の長手方向に沿った長さが短くなるように形成されている。そのため、インナーレンズ6の後部では、反射面62は導光反射面62bを有しておらず、複数のプリズム部62a,…のみを連ねた形状となっている(図5(c)参照)。また、各プリズム部62a及び各導光反射面62bは、インナーレンズ6の長手方向に沿った長さが極めて微細に形成されており、インナーレンズ6を介して車両用灯具1の内部(ハウジング2の底面)を視認することができないようになっている。
【0021】
一方、出射面63は、図3及び図4に示すように、反射面62に対応して斜め前方へ反るように湾曲した湾曲面状に形成されている。より詳しくは、出射面63は、前部に段付き部を有するとともに、当該段付き部から後方部分が反射面62よりも大きな曲率で湾曲している。そのため、反射面62から出射面63までのインナーレンズ6の幅は、この段付き部から後方へ向かうに連れて徐々に短くなっている。このインナーレンズ6の幅は、上下方向に沿った当該インナーレンズ6の厚さよりも長尺に形成されている。
【0022】
また、インナーレンズ6の上面64及び下面65には、図6に示すように、反射面62で反射された光を上下方向に拡散させる複数のレンズカット64a,…及び複数のレンズカット65a,…が形成されている。より詳しくは、複数のレンズカット64a,…及び複数のレンズカット65a,…は、反射面62で反射された光を、水平面に対して上下へ約20°以内の角度で拡散させるように反射させる。
【0023】
以上の構成を具備する車両用灯具1では、図3〜図6に示すように、第一LED4から出射されて入射面61からインナーレンズ6内に入射した光が、反射面62の複数の導光反射面62b,…や出射面63で反射されて長手方向へ導光されつつ、複数のプリズム部62a,…で反射されて出射面63へ向かう。このとき、複数の導光反射面62b,…は、入射面61から離間するに連れて長手方向に沿った長さが短くなるように形成されているので、入射面61から離間したインナーレンズ6の後部まで好適に光を導光させるとともに、インナーレンズ6の後方へ光を透過させてしまうことなく好適に出射面63へ反射させることができる。
【0024】
複数のプリズム部62a,…で反射された光の多くは、出射面63を通じてインナーレンズ6内から出射され、アウターレンズ3の凸部31を透過して左方から左方斜め前方に亘って照射される。また、複数のプリズム部62a,…で反射された光のうち、インナーレンズ6の上面64又は下面65に入射したものは、当該上面64又は当該下面65に形成された複数のレンズカット64a,…又は複数のレンズカット65a,…によって上下方向に拡散するように反射され、アウターレンズ3の凸部31を透過して、水平よりも斜め上方又は斜め下方へ照射される。
【0025】
以上のように、車両用灯具1によれば、インナーレンズ6の長手方向前端の入射面61から当該インナーレンズ6内に入射し、当該インナーレンズ6の幅方向の一方の面である反射面62で反射された光が、反射面62とは反対側の出射面63から出射するとともに、当該光の一部が、インナーレンズ6の厚さ方向(上下方向)両端の上面64及び下面65に形成された複数のレンズカット64a,65aによって上下方向に拡散されるので、反射面62から出射面63までのインナーレンズ6の幅を当該インナーレンズ6の厚さよりも長尺に形成した場合、つまり、インナーレンズ6の厚さを薄くして出射面63の幅が短尺に形成された場合であっても、インナーレンズ6の厚さ方向に広く拡散させた光を照射することができ、ひいては被視認性の低下を抑制することができる。
【0026】
また、反射面62には、入射面61からインナーレンズ6内に入射した光を出射面63に向けて反射させる複数のプリズム部62a,…と、当該光をインナーレンズ6の長手方向に沿って導光するように反射させる複数の導光反射面62b,…とが、当該長手方向に沿って個別に交互に連なっているので、入射面61から入射した光を当該入射面61から離間したインナーレンズ6の後部まで好適に導光させつつ、好適に出射面63へ反射させることができる。
【0027】
また、複数の導光反射面62b,…は、入射面61から離間するに連れてインナーレンズ6の長手方向に沿った長さが短くなるように形成されているので、入射面61から入射した光を当該入射面61から離間したインナーレンズ6の後部まで一層好適に導光させるとともに、インナーレンズ6の後方へ光を透過させてしまうことなく好適に出射面63へ反射させることができる。
【0028】
また、各プリズム部62a及び各導光反射面62bは、インナーレンズ6の長手方向に沿った長さが微細に形成されているので、インナーレンズ6を介して車両用灯具1の内部(ハウジング2の底面)を視認することができないようにし、ひいては当該車両用灯具1の見栄えを向上させることができる。
【0029】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0030】
例えば、上記実施形態では、インナーレンズ6が平板状に形成されることとしたが、これは、インナーレンズ6の上面64及び下面65を、互いに平行なもの,或いは反射面62及び出射面63と直交するものに限定するものではない。したがって、インナーレンズ6の上面64及び下面65は、例えばテーパー状の傾斜面であってもよい。
【0031】
また、インナーレンズ6の上面64及び下面65に形成された複数のレンズカット64a,…及び複数のレンズカット65a,…は、反射面62で反射された光をインナーレンズ6の厚さ方向に拡散させるものであれば、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0032】
1 車両用灯具
2 ハウジング
3 アウターレンズ
33 後部内面
4 第一LED
5 第二LED
6 インナーレンズ(導光体)
61 入射面(一端面)
62 反射面
62a プリズム部
62b 導光反射面
63 出射面
64 上面
64a レンズカット
65 下面
65a レンズカット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺な形状に形成された導光体と、
前記導光体の長手方向の一端面に対向配置された光源と、
を備える車両用灯具において、
前記導光体は、
前記長手方向と直交する当該導光体の幅方向の一方の面であって、前記光源から出射されて前記一端面から当該導光体内に入射した光を反射させる反射面と、
前記反射面とは反対側の面であって、前記反射面で反射された光を当該導光体内から出射させる出射面と、
を有し、
前記反射面から前記出射面までの当該導光体の幅が、当該導光体の幅方向及び前記長手方向の何れにも直交する方向に沿った当該導光体の厚さよりも長尺に形成され、
当該導光体の前記厚さ方向の両端面に、前記反射面で反射された光を前記厚さ方向に拡散させるレンズカットが形成されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記反射面には、前記一端面から前記導光体内に入射した光を前記出射面に向けて反射させる複数のプリズム部と、当該光を前記長手方向に沿って導光するように反射させる複数の導光反射面とが、前記長手方向に沿って個別に交互に連なっていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記複数の導光反射面は、前記一端面から離間するに連れて、前記長手方向に沿った長さが短くなることを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記複数のプリズム部及び前記複数の導光反射面は、それぞれの前記長手方向に沿った長さが微細に形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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