説明

車両用灯具

【課題】アウタレンズの高精度な位置決めとバルブの容易な交換が可能な車両用灯具を提供すること。
【解決手段】ハウジング2の開口部周縁に形成された凹溝2aにアウタレンズ3の外周縁に突設された凸部3aを嵌合することによってハウジング2とアウタレンズ3とを接合一体化し、両者によって画成される灯室内にバルブを交換可能に収容して成る車両用灯具において、アウタレンズ3をハウジング2に対して上下及び左右に移動可能に保持するとともに、該アウタレンズ3の上端部と下端部に係合爪3bと係合突起3cをそれぞれ突設し、ハウジング2の凹溝2aを形成する外周縁上部に、アウタレンズ3の係合爪3bが係合する左右方向に長い係合孔2cを形成するとともに、同ハウジング2の凹溝2aを形成する外周縁下部の内面に、アウタレンズ3の係合突起3cが係合する深さの異なる第1及び第2の係合溝2d,2eを左右方向に離間させて形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灯室内にバルブを交換可能に収容して成る車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等の車両に設けられるテールランプやターンシグナルランプ等の車両用灯具は、ハウジングの開口部周縁に形成された凹溝にアウタレンズの外周縁に突設された凸部を嵌合することによってハウジングとアウタレンズとを接合一体化し、両者によって画成される灯室内にバルブを交換可能に収容して構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
斯かる車両用灯具においては、光源であるバルブが切れたためにこれを交換する必要があるときには、当該車両用灯具全体を車体から取り外す必要があるため、その作業が面倒で時間が掛かるという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献2には、車両用灯具のハウジングと車体パネルとの間に挟装される灯具用パッキンに、ハーネスを車体内部に導通させるためのハーネス切り込み部(X字状のスリット)と、バルブが出入可能な大きさの枠状切り込み部(ミシン目)を形成する構成が提案されている。これによれば、車両用灯具を車体から取り外すことなく、車両用灯具のハーネスを車体内に導き入れたり、バルブを容易に交換することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−239004号公報
【特許文献2】特開2005−267925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2において提案された構成によれば、バルブを交換する際には、灯具用パッキンに形成された枠状切り込み部(ミシン目)を切り取り、バルブを交換した後に、切り取った枠状切り込み部を灯具用パッキンに嵌め込む必要があり、その作業が面倒であるという問題がある。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、アウタレンズをハウジングに対して高精度に位置決めすることができるとともに、バルブを容易に交換することができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ハウジングの開口部周縁に形成された凹溝にアウタレンズの外周縁に突設された凸部を嵌合することによってハウジングとアウタレンズとを接合一体化し、両者によって画成される灯室内にバルブを交換可能に収容して成る車両用灯具において、前記アウタレンズを前記ハウジングに対して上下及び左右に移動可能に保持するとともに、該アウタレンズの上端部と下端部に係合爪と係合突起をそれぞれ突設し、前記ハウジングの凹溝を形成する外周縁上部に、前記アウタレンズの係合爪が係合する左右方向に長い係合孔を形成するとともに、同ハウジングの凹溝を形成する外周縁下部の内面に、前記アウタレンズの係合突起が係合する深さの異なる第1及び第2の係合溝を左右方向に離間させて形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記アウタレンズの係合突起が前記ハウジングの深さの浅い側の第1の係合溝に嵌合している状態では該アウタレンズの係合爪がハウジングの係合孔に係合し、前記アウタレンズの係合突起が前記ハウジングの深さの深い側の第2の係合溝に嵌合している状態では該アウタレンズの係合爪のハウジングの係合孔との係合が解除されるよう構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記ハウジングの深さの浅い側の第1の係合溝を高さの異なる2つの突起の間に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アウタレンズの係合突起がハウジングの深さの浅い側の第1の係合溝に嵌合している状態では、該アウタレンズの係合爪がハウジングの係合孔に係合するよう構成することによって、アウタレンズをハウジングに対して高精度に位置決めした状態でこれをハウジングに確実に固定することができる。又、アウタレンズの係合突起がハウジングの深さの深い側の第2の係合溝に係合している状態では該アウタレンズの係合爪のハウジングの係合孔との係合が解除されるよう構成することによって、アウタレンズをハウジングから取り外してバルブを容易に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る車両用灯具の正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】アウタレンズが固定状態にあるときの状態を示す図であって、(a)は図2のB部拡大詳細図、(b)は(a)のD−D線断面図、(c)は図2のC部拡大詳細図、(d)は(c)のE−E線断面図である。
【図4】アウタレンズを取り外す途中の状態を示す図であって、(a)は図2のB部拡大詳細図、(b)は(a)のD’−D’線断面図、(c)は図2のC部拡大詳細図、(d)は(c)のE’−E’線断面図である。
【図5】アウタレンズのハウジングへの固定が解除された状態を示す図であって、(a)は図2のB部拡大詳細図、(b)は(a)のD”−D”線断面図、(c)は図2のC部拡大詳細図、(d)は(c)のE”−E”線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明に係る車両用灯具の正面図、図2は図1のA−A線断面図、図3はアウタレンズが固定状態にあるときの状態を示す図であって、(a)は図2のB部拡大詳細図、(b)は(a)のD−D線断面図、(c)は図2のC部拡大詳細図、(d)は(c)のE−E線断面図、図4はアウタレンズを取り外す途中の状態を示す図であって、(a)は図2のB部拡大詳細図、(b)は(a)のD’−D’線断面図、(c)は図2のC部拡大詳細図、(d)は(c)のE’−E’線断面図、図5はアウタレンズのハウジングへの固定が解除された状態を示す図であって、(a)は図2のB部拡大詳細図、(b)は(a)のD”−D”線断面図、(c)は図2のC部拡大詳細図、(d)は(c)のE”−E”線断面図である。
【0015】
図1及び図2に示す車両用灯具1は、自動二輪車に設けられるターンシグナルランプであって、図2に示すように、ハウジング2とその開口部を覆うアウタレンズ3によって画成される灯室4内に光源である不図示のバルブを交換可能に収容して構成されている。
【0016】
上記ハウジング2は光不透過性樹脂によって一体に成形されており、その開口部周縁には図2に示すように凹溝2aが形成されている。又、ハウジング2の背面の左右2箇所にはネジボス2bが一体に突設されている。
【0017】
又、前記アウタレンズ3は光透過性樹脂によって一体成形されており、その外周縁には、ハウジング2の前記凹溝2aに嵌め込まれる凸部3aが一体に形成されている。そして、このアウタレンズ3の上端部にはフック状の係合爪3bが一体に突設されており、下端部には半球状の係合突起3c(図3(d)参照)が突設されている。又、アウタレンズ3の左右2箇所(ハウジングのネジボス2bに対応する2箇所)には、ハウジング2に向かって突出する有底筒状のボス3dが一体に突設されており、アウタレンズ3は、各ボス3dに挿通するネジ5をハウジング2の各ネジボス2bにねじ込むことによって左右2箇所がハウジング2に締結される。
【0018】
ところで、図3(a),(b)に示すように、ハウジング2の前記凹溝2aを形成する外周縁上部には、アウタレンズ3の前記係合爪3bが係合するための左右方向に長い係合孔2cが形成されている。又、図3(c),(d)に示すように、ハウジング2の前記凹溝2aを形成する外周縁下部の内面には、アウタレンズ3の前記係合突起3cが係合する深さの異なる第1及び第2の係合溝2d,2eが左右方向に離間して形成されている。ここで、深さの浅い側の第1の係合溝2dは、高さの異なる半球状の左右の突起2f,2gの間に形成されており、その横に深さの深い側の前記第2の係合溝2eが形成されている。
【0019】
而して、以上のように構成された車両用灯具1においては、アウラレンズ3はハウジング2に対して上下及び左右方向に移動可能(アウタレンズ3の凸部3aがハウジング2の嵌合溝2a内で移動し得る範囲で移動可能)に保持されており、該アウタレンズ3がハウジング2に固定された状態では、図3(d)に示すように、アウタレンズ3の係合突起3cはハウジング2の深さの浅い側の第1の係合溝2dに係合し、アウタレンズ3の係合爪3bはハウジング2の係合孔2cに係合している。このとき、ハウジング2の第1の係合溝2dは位置決め溝として機能しており、この第1の係合溝2dにアウタレンズ3の係合突起3cが係合することによって該アウタレンズ3がハウジング2に対して上下及び左右方向に位置決めされるとともに、アウタレンズ3の係合爪3bがハウジング2の係合孔2cに係合することによって該アウタレンズ3がハウジング2に確実に固定される(図3(a),(b)参照)。尚、前述のようにアウタレンズ3は、その左右が2本にネジ5によってハウジング2に締結される(図1及び図2参照)。
【0020】
次に、灯室4内に収容された不図示のバルブの交換要領を図4及び図5に従って以下に説明する。
【0021】
バルブを交換する際には、図3に示す固定状態からアウタレンズ3を横方向にスライドさせて該アウタレンズ3の係合爪3bとハウジング2の係合孔2cとの係合を解除する。尚、当然ながら、アウタレンズ3をスライドさせる前に、ネジ5によるアウタレンズ3のハウジング2への締結を解除しておく。
【0022】
即ち、図3に示す状態からアウタレンズ3を図4(b),(d)の矢印方向にスライドさせると、該アウタレンズ3の係合突起3cは、ハウジング2の第1の係合溝2dから外れ、ハウジング2の低い突起2gを乗り越えて図4(d)に示すようにハウジング2の深さの深い側の第2の係合溝2eの上方位置へと移動する。尚、このとき、アウタレンズ3の係合爪3bは、ハウジング2の係合孔2cに依然として係合している。
【0023】
次に、図4に示す状態にあるアウタレンズ3を自重によって落下させると、図5(c),(d)に示すようにアウタレンズ3の係合突起3cはハウジング2の第2の係合溝2eに係合するとともに、アウタレンズ3の係合爪3bがハウジング2の係合孔2cから外れ、両者の係合が解除される。このように、アウタレンズ3の係合爪3bとハウジング2の係合孔3cとの係合が解除されると、アウタレンズ3はフリーとなるため、該アウタレンズ3を手前側に引き出してこれをハウジング2から取り外すことができ、車両用灯具1の全体を車体から取り外すことなくバルブの交換を容易に行うことができる。
【0024】
以上の要領によってアウタレンズ3をハイジング2から取り外してバルブを交換した後は、以上とは逆の手順でアウタレンズ3をハウジング2に取り付け、ネジ5によって両者を締結すれば、一連のバルブ交換作業が完了する。
【0025】
以上のように、本発明に係る車両用灯具1によれば、アウタレンズ3の係合突起3cがハウジング2の深さの浅い側の第1の係合溝2dに係合している状態では、該アウタレンズ3の係合爪3bがハウジング2の係合孔2cに係合するよう構成したため、アウタレンズ3をハウジング2に対して高精度に位置決めした状態でこれをハウジング2に確実に固定することができるという効果が得られる。
【0026】
又、アウタレンズ3の係合突起3cがハウジング2の深さの深い側の第2の係合溝2eに嵌合している状態では該アウタレンズ3の係合爪3bのハウジング2の係合孔2cとの係合が解除されるよう構成したため、アウタレンズ3をハウジング2から取り外してバルブを容易に交換することができるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0027】
1 車両用灯具
2 ハウジング
2a ハウジングの凹溝
2b ハウジングのネジボス
2c ハウジングの係合孔
2d ハウジングの第1の係合溝
2e ハウジングの第2の係合溝
2f,2g ハウジングの突起
3 アウタレンズ
3a アウタレンズの凸部
3b アウタレンズの係合爪
3c アウタレンズの係合突起
3d アウタレンズのボス
4 灯室
5 ネジ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの開口部周縁に形成された凹溝にアウタレンズの外周縁に突設された凸部を嵌合することによってハウジングとアウタレンズとを接合一体化し、両者によって画成される灯室内にバルブを交換可能に収容して成る車両用灯具において、
前記アウタレンズを前記ハウジングに対して上下及び左右に移動可能に保持するとともに、該アウタレンズの上端部と下端部に係合爪と係合突起をそれぞれ突設し、前記ハウジングの凹溝を形成する外周縁上部に、前記アウタレンズの係合爪が係合する左右方向に長い係合孔を形成するとともに、同ハウジングの凹溝を形成する外周縁下部の内面に、前記アウタレンズの係合突起が係合する深さの異なる第1及び第2の係合溝を左右方向に離間させて形成したことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記アウタレンズの係合突起が前記ハウジングの深さの浅い側の第1の係合溝に嵌合している状態では該アウタレンズの係合爪がハウジングの係合孔に係合し、前記アウタレンズの係合突起が前記ハウジングの深さの深い側の第2の係合溝に嵌合している状態では該アウタレンズの係合爪のハウジングの係合孔との係合が解除されるよう構成したことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記ハウジングの深さの浅い側の第1の係合溝を高さの異なる2つの突起の間に形成したことを特徴とする請求項2記載の車両用灯具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−73780(P2013−73780A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211970(P2011−211970)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】