説明

車両用照明灯具

【課題】発光素子の発光をその前方側に配置した透光部材を介して前方へ配光する車両用照明灯具において、透光部材近傍に配置した第2の発光素子の発光も該透光部材を介して前方へ配光させることで、配光の異なる複数のランプして機能させる。
【解決手段】発光素子12の発光を、透光部材14の前面14aで内面反射させた後、その後面14bで再度内面反射させて、その前面14aから第1の配光として出射させる。透光部材14近傍に配置した第2の発光素子112の発光も透光部材14を介して前方に第2の配光として出射させる。単一の灯具構造によって、前照灯と標識灯の異なる2つの配光を形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、発光ダイオード等の発光素子の発光を、その前方側に配置された透光部材により前方へ出射させるように構成された車両用照明灯具に係り、特に、発光素子から出射した光が透光部材の後面側から入射し、透光部材の前面で内面反射した後、透光部材後面の光反射制御面で再度内面反射して透光部材の前面から出射するように構成された車両用照明灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば「特許文献1」に記載されているように、車両前後方向に延びる光軸上の所定点の近傍において前方へ向けて配置された発光素子からの光を、その前方側に配置された透光部材により前方へ出射させるように構成された車両用照明灯具が知られている。
【0003】
この車両用照明灯具においては、発光素子から出射した光を、透光部材に入射させてその前面で内面反射させた後、その後面の光反射制御面で再度内面反射させてその前面から出射させるように構成されている。その際、この透光部材の前面における中央領域には、発光素子からの光を内面反射させるための鏡面処理が施されている。
【0004】
また、この「特許文献1」には、水平カットオフラインを有する配光パターンの形成を容易にするために、発光素子を、その発光面の下端縁を光軸と直交する水平線上に位置させるようにして配置する構成も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−153076号公報(段落0066、0091.図1〜4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記「特許文献1」に記載された構成を採用することにより、車両用照明灯具を薄型に構成することが可能となり、その際、発光素子を、その発光面の中央が光軸と直交する水平線上に位置するように配置すれば、遠方の視認性に優れたハイビーム用の配光パターンを形成でき、その発光面の下端縁が光軸と直交する水平線上に位置するように配置すれば、上端部に水平カットオフラインを有するロービーム用の配光パターンを形成でき、さらに、透光部材の後面の、対向車線側の斜め上方および自車線側の斜め下方に位置する第1および第2領域における、灯具正面視において光軸へ向けて凸となるように形成された第1および第2曲線よりも内周側に位置する内周側領域によって、それぞれ斜めカットオフラインを形成するように構成すれば、上端部に水平および斜めカットオフラインを有するロービーム用の配光パターンを形成できる。
【0007】
また、自動車の車体前部には、ヘッドランプとは機能の異なるクリアランスランプやデイタイムランニングランプなどの標識灯が、ヘッドランプに隣接するように配置されることが一般的である。しかし、車体前部の所定の灯具収容スペースにヘッドランプと標識灯を隣接して配置するため、個々の灯具には、小型化が要求されるとともに、その配置も制約される、という問題があった。
【0008】
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、第1の発光素子の発光を、その前方側に配置された透光部材により前方へ出射させるように構成された車両用照明灯具において、透光部材近傍に配置した第2の発光素子の発光も該透光部材により前方へ出射させるように構成することで、配光の異なる複数のランプとして機能する車両用照明灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、請求項1に係る車両用照明灯具においては、前方へ向けて配置された第1の発光素子と、前記発光素子の前方側に配置された透光部材とを備え、前記発光素子の発光が前記透光部材に入射して該透光部材の前面で内面反射した後、所定の光反射制御面で構成された該透光部材の後面で再度内面反射して該透光部材の前面から出射するように構成された車両用照明灯具において、
前記透光部材の近傍所定位置に第2の発光素子を配置し、前記第2の発光素子の発光が前記透光部材に入射し該透光部材の後面で内面反射して該透光部材の前面から出射するように構成した。
(作用)第1の発光素子の発光が透光部材に入射して該透光部材の前面で内面反射した後、該透光部材の後面(光反射制御面)で再度内面反射して該透光部材の前面から出射することで、ヘッドランプ等の車両用照明灯具の主たる第1の配光が形成される。
【0010】
また、第2の発光素子の発光が透光部材に入射し該透光部材の後面(光反射制御面)で内面反射して該透光部材の前面から出射することで、第1の配光とは異なる第2の配光が形成される。
【0011】
即ち、灯室内に収容された単一の透光部材が2つの異なる配光を形成するべく作用するので、異なる配光を形成する別体の照明灯具2個の大きさに比べて、あるいは異なる配光を形成する別体の照明灯具2個を一体化した照明灯具の大きさに比べて、小型に構成できる。
請求項2においては、請求項1に記載の車両用照明灯具において、前記第2の発光素子を、前記透光部材の周縁所定位置または後面所定位置に設けるように構成した。
(作用)透光部材の周縁所定位置に設けた第2の発光素子から出射して透光部材に入射した光の一部は、透光部材の後面(光反射制御面)で内面反射して透光部材の前面から出射し、透光部材に入射した光の一部は、透光部材の前面で内面反射(全反射)し、さらに後面(光反射制御面)で内面反射して透光部材の前面から出射する。
【0012】
前記透光部材の後面所定位置に設けた第2の発光素子から出射して透光部材に入射した光は、透光部材の前面で内面反射し、さらに後面(光反射制御面)で内面反射して透光部材の前面から出射する。
【0013】
第2の発光素子から出射した光(第2の発光素子の発光)の全てが透光部材に入射するので、光のエネルギーの損失が少なく、それだけ第2の発光素子の光を配光として有効に利用できる。
【0014】
請求項3においては、請求項1に記載の車両用照明灯具において、前記第2の発光素子を、前記透光部材の前面所定位置に設けるように構成した。
(作用)透光部材の前面所定位置に設けた第2の発光素子から出射して透光部材に入射した光は、透光部材の後面(光反射制御面)で内面反射して透光部材の前面から出射する。
【0015】
第2の発光素子は、透光部材の前面に密着するように透光部材に向けて配置される場合と、透光部材の前面から離間するように透光部材に向けて配置される場合とがあり、前者では、第2の発光素子から出射した光(第2の発光素子の発光)の全てが透光部材に入射するので、光のエネルギーの損失が少なく、それだけ第2の発光素子の光を配光として有効に利用でき、後者では、例えば、灯室を画成する前面カバーに倣うように透光部材を後傾させて配置するとともに、第2の発光素子を主たる第1の配光の形成を妨げない透光部材上方の所定位置(例えば、透光部材後面の光反射制御面の仮想焦点近傍)に配置するなど、透光部材および第2の発光素子の灯室内における配置の自由度が拡大される。
【0016】
請求項4に係る車両用照明灯具においては、前方へ向けて配置された第1の発光素子と、前記発光素子の前方側に配置された透光部材とを備え、前記発光素子の発光が前記透光部材に入射して該透光部材の平面で構成された前面で内面反射した後、所定の光反射制御面で構成された該透光部材の後面で再度内面反射して該透光部材の前面から出射するように構成された車両用照明灯具において、
前記透光部材の後方所定位置に、第2の発光素子および該第2の発光素の発発光を前記透光部材に入射させるリフレクターを配置し、前記第2の発光素子の発光が前記透光部材に入射して該透光部材の前面から出射するように構成した。
(作用)第1の発光素子の発光が透光部材に入射して該透光部材の前面で内面反射した後、該透光部材の後面(光反射制御面)で再度内面反射して該透光部材の前面から出射することで、ヘッドランプ等の車両用照明灯具の主たる第1の配光が形成される。
【0017】
また、第2の発光素子の発光がリフレクターを介して透光部材の後面に入射し、該透光部材の前面から出射することで、第1の配光とは異なる第2の配光が形成される。
【0018】
即ち、灯室内に収容された単一の透光部材が2つの異なる配光を形成するべく作用するので、異なる配光を形成する別体の照明灯具2個の大きさに比べて、あるいは異なる配光を形成する別体の照明灯具2個を一体化した照明灯具の大きさに比べて、小型に構成できる。
【発明の効果】
【0019】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る車両用照明灯具によれば、別体で構成した配光の異なる2つの照明灯具全体の大きさや配光の異なる2つの照明灯具を一体化した照明灯具の大きさに比べて小型に構成できるので、所定の灯具収容スペースへの収容が容易で、灯具配置上のレイアウトの自由度も高まる。
請求項2によれば、第2の発光素子の発光の全てを第2の配光として利用できるので、被視認性に優れた標識灯として機能する。
【0020】
請求項3によれば、第2の発光素子を透光部材の前面に密着して設ける場合は、第2の発光素子の発光の全てを第2の配光として利用できるので、被視認性に優れた標識灯として機能し、第2の発光素子を透光部材の前面から離間させて設ける場合は、透光部材および第2の発光素子を灯室内に配置する上での自由度に優れる。
【0021】
請求項4によれば、別体で構成した配光の異なる2つの照明灯具全体の大きさや配光の異なる2つの照明灯具を一体化した照明灯具の大きさに比べて小型に構成できるので、所定の灯具収容スペースへの収容が容易で、灯具配置上のレイアウトの自由度も高まる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施例である車両用照明灯具(自動車用前照灯)の縦断面図である。
【図2】透光部材の正面図である。
【図3】図2に示す線III−IIIに沿う断面図である。
【図4】図2に示す線IV−IVに沿う断面図である。
【図5】灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンを透視的に示す図である。
【図6】透光部材の後面における第1領域が、その全領域にわたって回転放物面で構成されているとした場合において、この第1領域上の複数の位置からの繰返し反射光により形成される発光面の光源像を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施例である車両用照明灯具(自動車用前照灯)の縦断面図である。
【図8】透光部材の正面図である。
【図9】図8に示す線IX−IXに沿う断面図である。
【図10】図9に示すX部の詳細図である。
【図11】灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンを透視的に示す図である。
【図12】透光部材の後面における第1領域が、その全領域にわたって回転放物面で構成されているとした場合において、この第1領域上の複数の位置からの繰返し反射光により形成される発光面の光源像を示す図である。
【図13】上記ロービーム用配光パターンにおける一部の配光パターンを構成する光源像を示す図である。
【図14】本発明の第3の実施例である車両用照明灯具(自動車用前照灯)の要部である透光部材の縦断面図である。
【図15】本発明の第4の実施例である車両用照明灯具(自動車用前照灯)の要部である透光部材の縦断面図である。
【図16】本発明の第5の実施例である車両用照明灯具(自動車用前照灯)の要部である透光部材の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を自動車用前照灯に適用した第1の実施例を、図1〜6に基づいて説明する。
【0024】
自動車用前照灯100は、前方の開口する容器状のランプボディ102と、ランプボディ102の前面開口部に組み付けられた前面カバー104によって画成された灯室S内に、所定の配光を形成する光源ユニット110が収容された構造で、光源ユニット110は、灯室S内下部に配置されたレベリングアクチュエータ126を備えたレベリング機構120によって、前後傾できるように構成されている。
【0025】
即ち、光源ユニット110は、前面が平面、後面が放物面で形成された薄型の透光部材(導光体レンズ)14と、透光部材14の後面中央に前向きに配置された第1の発光素子12と、透光部材14の周縁下部に配置された第2の発光素子112を備え、第1の発光素子12から出射した光は、図3,4に示すように、透光部材14に入射して該透光部材14の前面で内面反射した後、該透光部材14の後面で再度内面反射して該透光部材14の前面から出射することで、前照灯100の主たる第1の配光が形成される。また、第2の発光素子112から出射した光は、図1に示すように、透光部材14に入射し、一部が該透光部材14の後面で内面反射して該透光部材14の前面から出射し、一部が該透光部材14の前面で内面反射して該透光部材14の後面で再度反射し該透光部材14の前面から出射することで、第1の配光とは異なる標識灯(例えば、クリアランスランプやデイタイムランニングランプ)としての第2の配光が形成される。
【0026】
透光部材14は、第1の発光素子12が配設されたその後面側および第2の発光素子112が配設された周縁下部側が縦断面L字型の金属製支持部材16に支持されることで、光源ユニット110として一体化されている。
【0027】
また、支持部材16のほぼ中央には、第1の発光素子12を載置するため平坦な基板載置部16aが設けられ、基板載置部16aの背面側には、複数の放熱フィン18aで構成されたヒートシンク18が設けられるとともに、ヒートシンク18には放熱ファン19が設けられて、第1の発光素子112の発熱をヒートシンク18を介した放熱を促進できるようになっている。
【0028】
レベリング機構120は、ランプボディ10の背面壁に支承されて灯室S内前方に延出し、支持部材16に挿着された左右一対のナット部材124にそれぞれ螺合する左右一対のエイミングスクリュー122と、灯室S内下部に配置されて、光源ユニット110を前後方向に揺動動作させるレベリングアクチュエータ126で構成されている。
【0029】
アクチュエータ126は、前方に延出する回転駆動軸127を備え、駆動軸127の先端側雄ねじ部127aには、支持部材16に挿着されたナット部材128が螺合している。そして、アクチュエータ126が駆動(回転駆動軸127が回転)することで、ナット部材128がねじ部127aに沿って進退動作し、左右一対のナット部材124を通る仮想水平傾動軸周りに光源ユニット110が揺動して、光源ユニット110(前照灯100)の光軸Axが上下方向に傾動する。なお、光源ユニット110(前照灯100)の光軸Axは、車輌正面方向に対して常に0.5〜0.6°程度下向きになるように設定されており、第1の発光素子12の点灯により、左配光のロービーム用配光パターンPL(図5参照)が主たる第1の配光として形成される。
【0030】
また、光源ユニット110(前照灯100)の光軸Axがずれた場合には、左右一対のエイミングスクリュー122を回動操作することで、光軸Axを上下方向に調整できる。
【0031】
次に、透光部材14,第1の発光素子12および光源ユニット110の形成する第1の配光について、詳しく説明する。
【0032】
灯具前後方向に延びる光軸Ax上の所定点Aの近傍において前向きに配置された発光素子12は、前照灯の光源を構成する白色発光ダイオードであって、水平方向に直列で配置された4つの発光チップ12aと、これらを支持する基板12bとからなっている。なお、発光素子112は、基板112bに発光チップ112aを搭載した、標識灯の光源を構成する白色発光ダイオードであって、発光素子12と比べて発光量が小さい。
【0033】
白色発光ダイオードの4つの発光チップ12aは、互いに略密着するようにして配置された状態で、その前面が薄膜により封止されており、これにより灯具正面視において横長矩形状に発光する発光面12Aを構成している。その際、各発光チップ12aは1×1mm程度の正方形の外形形状を有しており、これにより発光面12Aは1×4mm程度の外形形状を有するものとなっている。
【0034】
発光素子12は、その発光面12Aの下端縁12A1を、光軸Axと所定点Aにおいて直交する水平線上に位置させるとともに、この下端縁12A1における自車線側(透光部材正面視において右側)の端点Bを、その光軸Axよりも自車線側でかつ該光軸Axの近傍(具体的には、例えば光軸Axから0.3〜1.0mm程度離れた位置)に位置させるようにして配置されている。
【0035】
透光部材14は、アクリル樹脂成形品等の透明な合成樹脂成形品からなり、正面視円形の外形形状を有している。そして、この透光部材14は、発光素子12から出射した光を、該透光部材14に入射させて、その前面14aで内面反射させた後、その後面14bで再度内面反射させて、その前面14aから前方へ出射させるように構成されている。
【0036】
この透光部材14の前面14aにおける光軸近傍領域は、発光素子12からの光を偏向出射させるレンズ部14a1として構成されており、それ以外の領域は光軸Axと直交する平面で構成されている。
【0037】
そして、この透光部材14の前面14aにおける、レンズ部14a1の外周側に隣接する円環状領域14a2には、アルミニウム蒸着等による鏡面処理が施されている。
【0038】
この円環状領域14a2の外周縁の位置は、透光部材14の前面14aに到達した発光素子12からの光(正確には所定点Aからの光)の入射角が臨界角αとなる位置に設定されている。そしてこれにより、透光部材14の前面14aに到達した発光素子12からの光を、その円環状領域14a2においては、鏡面処理が施された反射面で内面反射させるとともに、この円環状領域14a2よりも外周側に位置する周辺領域14a3においては、全反射により内面反射させるようになっている。
【0039】
一方、この円環状領域14a2の内周縁の位置は、透光部材14の前面14aで内面反射した発光素子12からの光(正確には所定点Aからの光)が、その後面14bにおける、円環状領域14a2の外周縁の略真後ろの位置に入射する位置に設定されている 透光部材14の前面14aにおけるレンズ部14a1は、その表面が楕円球面状の形状を有している。その際、この表面を構成する楕円球面の曲率は、鉛直面に沿った断面形状よりも水平面に沿った断面形状の方が小さい値に設定されている。そして、このレンズ部14a1は、該レンズ部14a1に到達した発光素子12からの光(正確には所定点Aからの光)を、上下方向に関しては光軸Axと平行な光として前方へ出射させるとともに、水平方向に関しては光軸Axから左右両側へ多少拡がる光として前方へ出射させるように形成されている。
【0040】
一方、この透光部材14の後面14bは、その前面14aに関して、所定点Aと面対称となる位置を焦点Fとするとともに光軸Axを中心軸とする回転放物面Pを基準面として形成された所定の光反射制御面(これについては後述する)で構成されている。そして、この後面14bには、その光軸Axの周辺領域を除く全域にわたって、アルミニウム蒸着等による鏡面処理が施されている。
【0041】
この透光部材14の後面14bは、光軸Axを環状に囲むようにして形成されており、この後面14bの内周側には、その中心に発光素子12を囲む空間部14cが形成されており、この空間部14cの周囲に階段状の凹部14dが形成されている。
【0042】
空間部14cは、その前端面が、所定点Aを中心とする半球面状に形成されており、これにより、発光素子12からの出射光(正確には所定点Aからの出射光)を、屈折させることなく透光部材14に入射させるようになっている。また、階段状の凹部14dは、支持部材16(基板載置部16a)およびヒートシンク18の形状に沿った形状を有しており、これらを位置決め固定するようになっている。
【0043】
次に、透光部材14の後面14bの、光反射制御面としての具体的な構成について説明する。
【0044】
図2に示すように、透光部材14の後面14bは、光軸Axに関して対向車線側の斜め上方に位置する第1領域Z1と、光軸Axに関して自車線側の斜め下方に位置する第2領域Z2と、光軸Axに関して対向車線側の斜め下方に位置する第3領域Z3と、光軸Axに関して自車線側の斜め上方に位置する第4領域Z4とからなっている。
【0045】
第1領域Z1は、灯具正面視において光軸Axへ向けて凸となるように形成された第1曲線C1を境にして、内周側領域Z1i(図2中、網線で示す部分)と外周側領域Z1oとに区分けされている。また、第2領域Z2も、灯具正面視において光軸Axへ向けて凸となるように形成された第2曲線C2を境にして、内周側領域Z2i(図2中、網線で示す部分)と外周側領域Z2oとに区分けされている。
【0046】
ここで、第1および第2曲線C1、C2は、透光部材14の後面14bが上記基準面自体(すなわち回転放物面P)で構成されているとした場合において、その基準面からの反射光により形成される発光素子12の発光面12Aの光源像が、自車線側へ向けて15°の傾斜角で斜め上方へ延びる上端縁を有する光源像となるような特別な位置を繋ぐことにより形成される曲線である(これについては後述する)。その際、これら第1および第2曲線C1、C2は、灯具正面視において光軸Axを中心とする双曲線に近似した曲線となり、かつ、光軸Axに関して略回転対称の位置関係で形成されたものとなる。
【0047】
すなわち、第1曲線C1は、光軸Axに最も接近する部分が、透光部材14の後面14bにおける内周縁と外周縁との略中央に位置しており、その後面14bの外周縁と交差する上端側の端点は、光軸Axを含む鉛直面から対向車線側に多少離れた位置にあり、また、その後面14bの外周縁と交差する下端側の端点は、光軸Axを含む水平面から上方側に僅かに離れた位置にある。そして、この第1曲線C1は、光軸Axに最も接近している部分近傍の曲率が大きく、上端側の端点および下端側の端点へ向かうに従って、徐々に曲率が小さくなるように形成されている。
【0048】
一方、第2曲線C2も、光軸Axに最も接近する部分が、透光部材14の後面14bにおける内周縁と外周縁との略中央に位置しており、その後面14bの外周縁と交差する下端側の端点は、光軸Axを含む鉛直面から自車線側に多少離れた位置にあり、また、その後面14bの外周縁と交差する上端側の端点は、光軸Axを含む水平面から下方側に僅かに離れた位置にある。そして、この第2曲線C2は、光軸Axに最も接近している部分近傍の曲率が大きく、下端側の端点および上端側の端点へ向かうに従って、徐々に曲率が小さくなるように形成されている。
【0049】
透光部材14の後面14bは、その第1および第2領域Z1、Z2の内周側領域Z1i、Z2iの各々が、上記基準面自体(すなわち回転放物面P)で構成されており、一方、それ以外の各領域は、上記基準面上に複数の拡散反射素子14sが形成された構成となっており、該領域に入射する前面14aからの内面反射光を左右両側へ拡散反射させるようになっている。
【0050】
その際、第3および第4領域Z3、Z4は、該領域に入射する前面14aからの内面反射光を左右両側へ拡散反射させるのみであるが、第1および第2領域Z1の外周側領域Z1o、Z2oは、該領域に入射する前面14aからの内面反射光を下方へ偏向反射させるように構成されている。
【0051】
図5は、前照灯100から前方へ照射される光により、灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPLを透視的に示す図である。
【0052】
このロービーム用配光パターンPLは、上述したように左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端部に水平および斜めカットオフラインCL1、CL2を有している。その際、車両正面方向の消点であるH−Vを通る鉛直線であるV−V線に対して、対向車線側に水平カットオフラインCL1が形成されるとともに、自車線側に15°の傾斜角度を有する斜めカットオフラインCL2が形成されており、両カットオフラインCL1、CL2の交点であるエルボ点Eは、H−Vの0.5〜0.6°程度下方に位置しており、そして、このエルボ点Eの自車線側近傍に高光度領域であるホットゾーンHZが形成されている。なお、エルボ点EがH−Vの0.5〜0.6°程度下方に位置しているのは、車両用照明灯具10の光軸Axが車両正面方向に対して0.5〜0.6°程度下向きの方向に延びていることによるものである。
【0053】
このロービーム用配光パターンPLは、7つの配光パターンPZ1i、PZ1o、PZ2i、PZ2o、PZ3、PZ4、P1を重畳させた合成配光パターンとして形成されている。
【0054】
その際、配光パターンPZ1i、PZ1o、PZ2i、PZ2o、PZ3、PZ4は、透光部材14の前面14aおよび後面14bで繰り返し反射した後に出射した光(以下「繰返し反射光」という)により形成される配光パターンであり、配光パターンP1は、透光部材14の前面14aにおけるレンズ部14a1から直接出射した光(以下「直接出射光」という)により形成される配光パターンである。
【0055】
ロービーム用配光パターンPLの水平カットオフラインCL1は、主として、配光パターンPZ3、PZ4の上端縁によって形成されており、また、その斜めカットオフラインCL2は、配光パターンPZ1i、PZ2iの上端縁によって形成されている。
【0056】
そこで、まず、配光パターンPZ3、PZ4について説明する。
【0057】
配光パターンPZ3は、第3領域Z3からの繰返し反射光により形成される配光パターンであり、配光パターンPZ4は、第4領域Z4からの繰返し反射光により形成される配光パターンであり、これらは互いに略同一の配光パターンとして形成されている。
【0058】
これら各配光パターンPZ3、PZ4は、水平カットオフラインCL1に沿って水平方向に細長く延びる配光パターンとして形成されており、その上端縁に明瞭な明暗境界線を有している。
【0059】
これは、第3および第4領域Z3、Z4の各々からの繰返し反射光が、上下方向に関しては、発光面12Aの下端縁12A1からの光が光軸Axと平行な光となり、発光面12Aの他の部位からの光が光軸Axに対して下向きの光となり、また、水平方向に関しては、発光面12Aからの光が複数の拡散反射素子14sにより左右両側に拡散することによるものである。
【0060】
その際、これら各配光パターンPZ3、PZ4は、その左右方向の中心位置がV−V線に対してやや自車線側に変位しているが、これは、発光面12Aが光軸Axに関して対向車線側にずれた位置に配置されていることによるものである。
【0061】
そして、上述したように、これら配光パターンPZ3、PZ4の上端縁により、水平カットオフラインCL1の主要部を形成するようになっている。
【0062】
次に、配光パターンPZ1i、PZ2iについて説明する。
【0063】
配光パターンPZ1iは、第1領域Z1の内周側領域Z1iからの繰返し反射光により形成される配光パターンであり、配光パターンPZ2iは、第2領域Z2の内周側領域Z2iからの繰返し反射光により形成される配光パターンであり、これらは互いに略同一の配光パターンとして形成されている。
【0064】
これら各配光パターンPZ1i、PZ2iは、斜めカットオフラインCL2に沿って延びる略扇形の配光パターンであって、その上端縁は明瞭な明暗境界線として形成されている。以下、その理由について、図6に基づいて説明する。
【0065】
図6は、第1領域Z1が、その全領域にわたって回転放物面Pで構成されているとした場合において、この第1領域Z1上の複数の位置からの繰返し反射光により形成される発光面12Aの光源像を示す図である。
【0066】
その際、同図(a)〜(c)は、第1領域Z1の部分を取り出して示す正面図であって、同図(a)は、第1領域Z1の上段部における4つの反射点R1、R2、R3、R4の位置を示しており、同図(b)は、その中段部における4つの反射点R5、R6、R7、R8の位置を示しており、同図(c)は、その下段部における4つの反射点R9、R10、R11、R12の位置を示している。
【0067】
同図(d)は、同図(a)に示す4つの反射点R1、R2、R3、R4の位置からの繰返し反射光により形成される発光面12Aの光源像I1、I2、I3、I4を示す図である。
【0068】
同図(d)に示すように、これら各光源像I1〜I4は、エルボ点Eの下方近傍から自車線側へ向けて斜め上向きに延びる細長い像として形成されている。
【0069】
これら各光源像I1〜I4の上端縁は、発光面12Aの下端縁12A1の光源像として形成されるが、この下端縁12Aは光軸Axと所定点Aにおいて直交する水平線上に位置しているので、これら各光源像I1〜I4の上端縁は、エルボ点Eを通る比較的鮮明な明暗境界線として形成されることとなる。
【0070】
また、これら各光源像I1〜I4の対向車線側の端縁は、V−V線よりもやや対向車線側に位置しているが、これは、発光面12Aの下端縁12A1の端点Bが、その光軸Axよりも自車線側でかつ該光軸Axの近傍に位置していることによるものである。
【0071】
そして、最も対向車線側に位置する反射点R1からの繰返し反射光により形成される光源像I1が最も大きく傾斜した像になり、反射点R2、R3、R4の順で自車線側に変位するに従って、光源像I2、I3、I4の傾斜の度合が徐々に小さくなる。
【0072】
その際、第1曲線C1上に位置する反射点R2からの繰返し反射光により形成される光源像I2は、その上端縁の傾斜角度が15°となり、エルボ点Eから自車線側へ向けて15°の傾斜角度で延びる斜めカットオフラインCL2と一致する。また、外周側領域Z1oに位置する反射点R1からの繰返し反射光により形成される光源像I1は、その上端縁の傾斜角度が15°よりも大きくなる。一方、内周側領域Z1iに位置する反射点R3、R4からの繰返し反射光により形成される光源像I3、I4は、その上端縁の傾斜角度が15°よりも小さくなる。
【0073】
同図(e)は、同図(b)に示す4つの反射点R5、R6、R7、R8の位置からの繰返し反射光により形成される発光面12Aの光源像I5、I6、I7、I8を示す図である。
【0074】
同図(e)に示すように、これら各光源像I5〜I8も、エルボ点Eの下方近傍から自車線側へ向けて斜め上向きに延びる細長い像として形成されており、その上端縁は、エルボ点Eを通る比較的鮮明な明暗境界線として形成されており、また、その対向車線側の端縁は、V−V線よりもやや対向車線側に位置している。
【0075】
そして、最も対向車線側に位置する反射点R5からの繰返し反射光により形成される光源像I5が最も大きく傾斜した像になり、反射点R6、R7、R8の順で自車線側に変位するに従って、光源像I6、I7、I8の傾斜の度合が徐々に小さくなる。
【0076】
その際、第1曲線C1上に位置する反射点R6からの繰返し反射光により形成される光源像I6は、その上端縁の傾斜角度が15°となり、エルボ点Eから自車線側へ向けて15°の傾斜角度で延びる斜めカットオフラインCL2と一致する。また、外周側領域Z1oに位置する反射点R5からの繰返し反射光により形成される光源像I5は、その上端縁の傾斜角度が15°よりも大きくなる。一方、内周側領域Z1iに位置する反射点R7、R8からの繰返し反射光により形成される光源像I7、I8は、その上端縁の傾斜角度が15°よりも小さくなる。
【0077】
同図(f)は、同図(c)に示す4つの反射点R9、R10、R11、R12の位置からの繰返し反射光により形成される発光面12Aの光源像I9、I10、I11、I12を示す図である。
【0078】
同図(f)に示すように、これら各光源像I9〜I12も、エルボ点Eの下方近傍から自車線側へ向けて斜め上向きに延びる細長い像として形成されており、その上端縁は、エルボ点Eを通る比較的鮮明な明暗境界線として形成されており、また、その対向車線側の端縁は、V−V線よりもやや対向車線側に位置している。
【0079】
そして、最も対向車線側に位置する反射点R9からの繰返し反射光により形成される光源像I9が最も大きく傾斜した像になり、反射点R10、R11、R12の順で自車線側に変位するに従って、光源像I10、I11、I12の傾斜の度合が徐々に小さくなる。
【0080】
その際、第1曲線C1上に位置する反射点R10からの繰返し反射光により形成される光源像I10は、その上端縁の傾斜角度が15°となり、エルボ点Eから自車線側へ向けて15°の傾斜角度で延びる斜めカットオフラインCL2と一致する。また、外周側領域Z1oに位置する反射点R9からの繰返し反射光により形成される光源像I9は、その上端縁の傾斜角度が15°よりも大きくなる。一方、内周側領域Z1iに位置する反射点R11、R12からの繰返し反射光により形成される光源像I11、I12は、その上端縁の傾斜角度が15°よりも小さくなる。
【0081】
これら12個の光源像I1〜I12のうち、内周側領域Z1iに位置する反射点R2〜R4、R6〜R8、R10〜R12からの繰返し反射光により形成される光源像I2〜I4、I6〜I8、I10〜I12(すなわち上端縁の傾斜角度が15°以下となる光源像)を重畳させることにより、配光パターンPZ1iが形成されるようになっている。
【0082】
第2領域Z2の内周側領域Z2iからの繰返し反射光により形成される配光パターンPZ2iも、この配光パターンPZ1iと同様にして形成されるようになっている。
【0083】
そして、上述したように、これら配光パターンPZ1i、PZ2iの上端縁により、斜めカットオフラインCL2を形成するようになっている。
【0084】
次に、配光パターンPZ1o、PZ2oについて説明する。
【0085】
配光パターンPZ1oは、第1領域Z1の外周側領域Z1oからの繰返し反射光により形成される配光パターンであり、配光パターンPZ2oは、第2領域Z2の外周側領域Z2oからの繰返し反射光により形成される配光パターンであり、これらは互いに略同一の配光パターンとして形成されている。
【0086】
これら各配光パターンPZ1o、PZ2oは、水平カットオフラインCL1に略沿って水平方向に細長く延びる配光パターンとして形成されている。
【0087】
その際、配光パターンPZ1oは、第1領域Z1の外周側領域Z1oに位置する反射点R1、R5、R9からの繰返し反射光により形成される光源像I1、I5、I9(すなわち上端縁の傾斜角度が15°を超える光源像)を、それぞれ下方へ変位させた上で左右両側へ拡散させたものを重畳させることにより、形成されるようになっている。配光パターンPZ2oについても同様である。
【0088】
これら各配光パターンPZ1o、PZ2oも、その左右方向の中心位置がV−V線に対してやや自車線寄りに変位しているが、これは、発光面12Aが光軸Axに関して対向車線側にずれた位置に配置されていることによるものである。
【0089】
次に、配光パターンP1について説明する。
【0090】
この配光パターンP1は、透光部材14の前面14aにおけるレンズ部14a1からの直接出射光により形成される配光パターンである。
【0091】
この配光パターンP1は、水平カットオフラインCL1に沿って水平方向に延びる横長の大きい配光パターンとして形成されており、その上端縁に明暗境界線を有している。
【0092】
これは、発光面12Aが横長矩形状に形成されており、かつ、レンズ部14a1からの直接出射光が左右両側へ多少拡がる光となっていることによるものである。
【0093】
その際、この配光パターンP1は、その左右方向の中心位置がV−V線に対してやや自車線寄りに変位しているが、これは、発光面12Aが光軸Axに関して対向車線側にずれた位置に配置されていることによるものである。
【0094】
以上詳述したように、自動車用前照灯100は、灯具前後方向に延びる光軸Ax上の所定点Aの近傍において前方へ向けて配置された発光素子12からの光を、その前方側に配置された透光部材14に入射させてその前面14aで内面反射させた後、その後面14bで再度内面反射させてその前面14aから出射させるように構成されているが、発光素子12は、その発光面12Aの下端縁12A1を光軸Axと直交する水平線上に位置させるようにして配置されているので、上端部に水平カットオフラインCL1を有する配光パターンを形成することが容易に可能となる。
【0095】
また、透光部材14は、その前面14aが、光軸Axと直交する平面で構成されるとともに、その後面14bが、該透光部材14の前面14aに関して上記所定点Aと対称の位置を焦点とする回転放物面Pを基準面として形成された所定の光反射制御面で構成されているので、その基準面となる回転放物面Pからの反射光により形成される発光素子12の発光面12Aの光源像が、自車線側へ向けて斜め上方へ延びる上端縁を有する光源像となるような特別な位置を、その基準面上において見出すことが可能である。
【0096】
この特別な位置は、具体的には、透光部材14の後面14bにおいて、光軸Axに関して対向車線側の斜め上方に位置する第1領域Z1のうち、灯具正面視において光軸Axへ向けて凸となるように形成された第1曲線C1上の位置と、光軸Axに関して自車線側の斜め下方に位置する第2領域Z2のうち、灯具正面視において光軸Axへ向けて凸となるように形成された第2曲線C2上の位置と、の2箇所である。
【0097】
そして、自動車用前照灯100は、透光部材14の後面14bにおいて、その第1領域Z1の内周側領域Z1iおよび第2領域Z2の内周側領域Z2iの各々が、該内周側領域Z1i、Z2iからの反射光により自車線側へ向けて斜め上方へ延びる斜めカットオフラインCL2を形成するための領域として構成されているので、水平カットオフラインCL1だけでなく、斜めカットオフラインCL2も同時に形成することができる。
【0098】
このように本実施例によれば、発光素子12からの光を、その前方側に配置された透光部材14により前方へ出射させるように構成された自動車用前照灯100において、その照射光により水平および斜めカットオフラインCL1、CL2を有するロービーム用配光パターンPLを形成することができる。
【0099】
しかも本実施例においては、透光部材14の後面14bにおける第1領域Z1の外周側領域Z1oおよび第2領域Z2の外周側領域Z2oの各々が、該外周側領域Z1o、Z2oに入射する透光部材14の前面14aからの内面反射光を下方へ偏向反射させるように構成されているので、該外周側領域Z1o、Z2oに非反射処理等を施すことを必要とすることなく、水平および斜めカットオフラインCL1、CL2よりも上方へ突出する光源像が形成されてしまうのを未然に防止することができる。
【0100】
その際、これら各外周側領域Z1o、Z2oは、該外周側領域Z1o、Z2oに入射する透光部材14の前面14aからの内面反射光を水平方向に拡散反射させるように構成されているので、該外周側領域Z1o、Z2oでの下方への偏向反射により下方に変位した光源像によって、車両前方路面に配光ムラが発生してしまうのを、効果的に抑制することができる。
【0101】
また本実施例においては、発光素子12が、その発光面12Aの下端縁12Aにおける自車線側の端点Bを、光軸Axよりも自車線側でかつ該光軸Axの近傍に位置させるようにして配置されているので、斜めカットオフラインCL2を形成するための領域である第1領域Z1の内周側領域Z1iおよび第2領域Z2の内周側領域Z2iからの反射光により形成される光源像を、エルボ点Eの自車線側近傍の位置に形成することができる。そしてこれにより、ロービーム用配光パターンPLのホットゾーンHZを、最適な位置に形成することができる。
【0102】
さらに本実施例においては、透光部材14の前面14aにおける中央領域が、光軸Axを中心とする円環状領域14a2として設定されており、そして、この円環状領域14a2よりも内周側に位置する光軸近傍領域が、該領域に到達した発光素子12からの光を偏向出射させるレンズ部14a1として構成されているので、このレンズ部14a1からの出射光によって形成される配光パターンP1を、透光部材14の後面14bで内面反射した光により形成される配光パターンPZ1i、PZ1o、PZ2i、PZ2o、PZ3、PZ4に追加して形成することができ、これにより光源光束の有効利用を図ることができる。
【0103】
しかもその際、レンズ部14a1は、発光素子12からの光を左右拡散光として出射させるように構成されているので、透光部材14の後面14bで内面反射した光により形成される、比較的明るくて小さい配光パターンPZ1i、PZ1o、PZ2i、PZ2o、PZ3、PZ4の周囲に、比較的暗くて大きい配光パターンP1が横長の配光パターンとして形成されることとなる。したがって、前照灯100からの照射光により形成されるロービーム用配光パターンPLを、配光ムラの少ない配光パターンとして形成することができる。
【0104】
上記実施例においては、透光部材14の後面14bにおいて、その第1領域Z1の内周側領域Z1iおよび第2領域Z2の内周側領域Z2iの各々の全域が、斜めカットオフラインCL2を形成するための領域として構成されているものとして説明したが、そのうちのいずれか一方の全域を、斜めカットオフラインCL2を形成するための領域として構成することも可能であり、また、これら内周側領域Z1i、Z2iの双方または一方における第1および第2曲線C1、C2の近傍領域のみを、斜めカットオフラインCL2を形成するための領域として構成することも可能である。
【0105】
また、上記実施例においては、標識灯の光源である第2の発光素子112が透光部材14の周縁下部に配置されているが、透光部材14の周縁部の周方向の任意の位置に第2の発光素子112を配置してもよい。
【0106】
図7〜図13は、本発明の第2の実施例である自動車用前照灯100Aを示す。
【0107】
この第2の実施例の前照灯100Aが前記第1の実施例の前照灯100と構成上の相違する点は、灯室Sを画成する前面カバー104が、車体前端部の上部表面の意匠ラインに沿って、後方側へ向けて上向きに大きく傾斜して延びるように形成されており、薄型の透光部材(導光体レンズ)14も前面カバー104の傾斜にほぼ沿って延在することと、標識灯(クリアランスランプやデイタイムランニングランプ)の光源を構成する第2の発光素子112が透光部材14の上方所定位置に下向きに配置されていることである。
【0108】
透光部材14は、円形の外形(例えば、直径100mm)を有し、第1の発光素子12が配設されたその後面側が枠体状の金属製支持部材16に支持されることで、光源ユニット110Aとして一体化され、支持部材16の前方延出部16bに第2の発光素子112が配設されている。
【0109】
金属製支持部材16の略中央には、後傾した基板載置部16aが設けられ、基板載置部16aも左右に延出する水平延出領域と上方の前方延出部16b間には、透光部材14挿通用の開口部16cが設けられて、透光部材14を後傾する形態に支持できるように構成されている。
【0110】
透光部材14の前面14aは、光軸Axと直交する水平線を含む斜め上向きの平面で構成され、この前面14aは、光軸Axと直交する平面に対して後方側へ45°程度傾斜(後傾)している。このため、光源ユニット110Aの前面側が前面カバー104の傾斜にほぼ倣う形状に構成されて、灯室S内における光源ユニット110Aの配設位置の自由度が高い。
【0111】
また、光源ユニット110Aは、レベリング機構120によって、その光軸Axが車輌正面方向に対して常に0.5〜0.6°程度下向きになるように調整されている。
【0112】
透光部材14の後面に配置された第1の発光素子12は、前記した第1の実施例と同様に、その発光面12Aの下端縁12A1を、光軸Axと所定点Aにおいて直交する水平線上に位置させるとともに、この下端縁12A1における自車線側(灯具正面視において右側)の端点Bを、その光軸Axよりも自車線側でかつ該光軸Axの近傍(具体的には、例えば光軸Axから0.3〜1.0mm程度離れた位置)に位置させるようにして配置されているが、図9,10に示すように、発光素子12は、所定点Aを通る発光面12Aの法線Nが前方へ向けて30°程度上向きとなるようにして配置されている。
【0113】
一方、第2の発光素子112は、透光部材14の前面14aに関して所定点Aと対称の位置である焦点Fの近傍に配置されており、第2の発光素子112から出射した光は、図7に示すように、透光部材14前面14aに入射し、該透光部材14の後面14bで内面反射して該透光部材14の前面14aから出射することで、標識灯の配光を形成する。なお、透光部材14の前面14aの中央領域14a1’には、後述するように、アルミニウム蒸着等による鏡面処理が施されているので、第2の発光素子112の照射軸は、鏡面処理の施されている透光部材14の中央領域14a1’よりも下方にずれることが望ましい。
【0114】
そして、この透光部材14の前面14aには、その中央領域14a1’に、アルミニウム蒸着等による鏡面処理が施されている。この中央領域14a1’は、前面14aに関して所定点Aと対称の位置を焦点F(これについては後述する)としたとき、この前面14aにおいて、焦点Fと所定点Aとを結ぶ直線Lと該前面14aとの交点を中心とする略円形の領域として規定される領域であって、この前面14aの中心位置からは上方側に変位している。
【0115】
この中央領域14a1’の外周縁の位置は、透光部材14の前面14aに到達した発光素子12からの光(正確には所定点Aからの光)の入射角が臨界角αとなる位置に設定されている。そしてこれにより、透光部材14の前面14aに到達した発光素子12からの光を、その中央領域14a1’においては、鏡面処理が施された反射面で内面反射させるとともに、この中央領域14a1’よりも外周側に位置する周辺領域14a2においては、全反射により内面反射させるようになっている。
【0116】
一方、この透光部材14の後面14bは、その前面14aに関して上述したように所定点Aと面対称となる位置を焦点Fとするとともに、光軸Axに対して前方へ向けて15°程度上向きに延びる軸線を中心軸Ax1(図9,10参照)とする回転放物面Pを基準面として形成された所定の光反射制御面(これについては後述する)で構成されている。そして、この後面14bには、法線Nの周辺領域を除く全域にわたって、アルミニウム蒸着等による鏡面処理が施されている。
【0117】
その際、回転放物面Pの中心軸Ax1の上向き角度は、透光部材14の後面14bが仮に上記基準面自体で構成されているとした場合に、この後面14bにおいて中心軸Ax1と平行な方向に再度反射した所定点Aからの光が、その前面14aにおいて屈折して光軸Axと平行な方向へ向けて出射するような値に設定されている。
【0118】
この透光部材14の後面14bは、法線Nを環状に囲むようにして形成されており、この後面14bの内周側には、その中心に発光素子12を囲む空間部14cが形成されており、この空間部14cの周囲に階段状の凹部14dが形成されている。
【0119】
空間部14cは、その前端面が、所定点Aを中心とする半球面状に形成されており、これにより、発光素子12からの出射光(正確には所定点Aからの出射光)を、屈折させることなく透光部材14に入射させるようになっている。また、階段状の凹部14dは、支持部材16およびヒートシンク18の形状に沿った形状を有しており、これらを位置決め固定するようになっている。なお、ヒートシンク18は、その後面に複数の放熱フィン18aが形成された構成となっている。
【0120】
次に、透光部材14の後面14bの、光反射制御面としての具体的な構成について説明する。
【0121】
図8に示すように、透光部材14の後面14bは、光軸Axに関して自車線側の斜め下方に位置する第1領域Z1と、光軸Axに関して自車線側および対向車線側の側方において光軸Axを含む水平面の近傍に位置する第2領域Z2と、光軸Axに関して対向車線側の斜め下方に位置する第3領域Z3と、第2領域Z2の上方側に位置する第4領域Z4とからなっている。
【0122】
第1領域Z1は、灯具正面視において光軸Axへ向けて凸となるようにして延びる所定曲線C1を境にして、内周側領域Zliと外周側領域Zloとに区分けされている。
【0123】
ここで、所定曲線C1は、透光部材14の後面14bが上記基準面自体(すなわち回転放物面P)で構成されているとした場合において、その基準面からの反射光により形成される発光素子12の発光面12Aの光源像が、自車線側へ向けて15°の傾斜角で斜め上方へ延びる上端縁を有する光源像となるような特別な位置を繋ぐことにより形成される曲線である(これについては後述する)。その際、この所定曲線C1は、灯具正面視において光軸Axを中心とする双曲線に近似した曲線となる。
【0124】
すなわち、この所定曲線C1は、光軸Axに最も接近する部分が透光部材14の後面14bにおける内周縁と外周縁との略中央に位置しており、その後面14bの外周縁と交差する下端側の端点は、光軸Axを含む鉛直面から自車線側に多少離れた位置にあり、また、その後面14bの外周縁と交差する上端側の端点は、光軸Axを含む水平面から下方側に僅かに離れた位置にある。そして、この所定曲線C1は、光軸Axに最も接近している部分近傍の曲率が大きく、上端側の端点および下端側の端点へ向かうに従って、徐々に曲率が小さくなるようにして延びている。
【0125】
第1領域Z1の内周側領域Z1iは、所定曲線C1の近傍領域(すなわち所定曲線C1に沿って略円弧状に延びる帯状領域)Z1icが、上記基準面自体で構成されており、それ以外の領域が、上記基準面上に複数の偏向反射素子14s1iが形成された構成となっている。その際、所定曲線C1の近傍領域Z1icの幅は、5〜20mm程度の値に設定されている。
【0126】
そして、この内周側領域Z1iは、その所定曲線C1の近傍領域Z1icが、該領域に入射する前面14aからの内面反射光を光軸Axと平行な方向へ反射させるようになっており、それ以外の領域は、その各偏向反射素子14s1iにおいて、該領域に入射する前面14aからの内面反射光を光軸Axと平行な方向に対して自車線側へ偏向反射させるようになっている。
【0127】
一方、第1領域Z1の外周側領域Z1oは、その全領域が、上記基準面上に複数の偏向反射素子14s1oが形成された構成となっている。そして、この外周側領域Z1oは、その各偏向反射素子14s1oにおいて、該領域に入射する前面14aからの内面反射光を光軸Axと平行な方向に対して自車線側へ偏向反射させるようになっている。
【0128】
第2領域Z2は、光軸Axを含む水平面を中心にして横長帯状に延びている。その際、この第2領域Z2の上下幅は、5〜20mm程度の値に設定されている。
【0129】
この第2領域Z2は、上記基準面上に複数の偏向反射素子14s2が形成された構成となっている。そして、この第2領域Z2は、その各偏向反射素子14s2において、該領域に入射する前面14aからの内面反射光を光軸Axと平行な方向に対して対向車線側へ偏向反射させるようになっている。
【0130】
第3領域Z3は、上記基準面上に複数の拡散反射素子14s3が形成された構成となっている。そして、この第3領域Z3は、その各拡散反射素子14s3において、該領域に入射する前面14aからの内面反射光を光軸Axと平行な方向に対して左右両側へ拡散反射させるようになっている。
【0131】
第4領域Z4は、上記基準面上に複数の拡散反射素子14s4が形成された構成となっている。そして、この第4領域Z4は、その各拡散反射素子14s4において、該領域に入射する前面14aからの内面反射光を光軸Axと平行な方向に対して左右両側へ拡散反射させるようになっている。
【0132】
図11は、前照灯100Aから前方へ照射される光により、灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPL1を透視的に示す図である。
【0133】
このロービーム用配光パターンPL1は、上述したように左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端部に水平および斜めカットオフラインCL1、CL2を有している。その際、車両正面方向の消点であるH−Vを通る鉛直線であるV−V線に対して、対向車線側に水平カットオフラインCL1が形成されるとともに、自車線側に15°の傾斜角度を有する斜めカットオフラインCL2が形成されており、両カットオフラインCL1、CL2の交点であるエルボ点Eは、H−Vの0.5〜0.6°程度下方に位置しており、そして、このエルボ点Eの自車線側近傍に高光度領域であるホットゾーンHZが形成されている。なお、エルボ点EがH〜Vの0.5〜0.6°程度下方に位置しているのは、前照灯100Aの光軸Axが車両正面方向に対して0.5〜0、6°程度下向きの方向に延びていることによるものである。
【0134】
このロービーム用配光パターンPL1は、4つの配光パターンPZ1(配光パターンPZlicを含む)、PZ2、PZ3、PZ4を重畳させた合成配光パターンとして形成されている。
【0135】
これら各配光パターンPZ1〜PZ4は、透光部材14の前面14aおよび後面14bで繰り返し反射した後に出射した光(以下「繰返し反射光」という)により形成される配光パターンであって、それぞれ第1〜第4領域Z1〜Z4からの繰返し反射光により形成される配光パターンである。
【0136】
ロービーム用配光パターンPL1の水平カットオフラインCL1は、配光パターンPZ2〜PZ4の上端縁によって形成され、その際、配光パターンPZ2の上端縁によって特に鮮明に形成されるようになっている。
【0137】
また、ロービーム用配光パターンPL1の斜めカットオフラインCL2は、配光パターンPZ1の上端縁によって形成され、その際、配光パターンPZlicの上端縁によって特に鮮明に形成されるようになっている。
【0138】
以下、各配光パターンPZ1〜PZ4について詳細に説明する。
【0139】
まず、配光パターンPZ1について説明する。
【0140】
この配光パターンPZ1は、斜めカットオフラインCL2に沿って延びる略襖形の配光パターンであって、その上端縁は明瞭な明暗境界線として形成されている。以下、その理由について、図12に基づいて説明する。
【0141】
図12は、第1領域Z1が、その全領域にわたって回転放物面Pで構成されているとした場合において、この第1領域Z1上の複数の位置からの繰返し反射光により形成される発光面12Aの光源像を示す図である。
【0142】
その際、同図(a)〜(c)は、第1領域Z1の部分を取り出して示す正面図であって、同図(a)は、第1領域Z1の上段部における3つの反射点R1、R2、R3の位置を示しており、同図(b)は、その中段部における3つの反射点R4、R5、R6の位置を示しており、同図(c)は、その下段部における3つの反射点R7、R8、R9の位置を示している。
【0143】
同図(d)は、同図(a)に示す3つの反射点R1、R2、R3の位置からの繰返し反射光により形成される発光面12Aの光源像11、12、13を示す図である。
【0144】
同図(d)に示すように、これら各光源像11〜13は、エルボ点Eの下方近傍から自車線側に向けて斜め上向きに伸びる細長い像として京成されている。
【0145】
これら各光源像11〜13の上端縁は、発光面12Aの下端縁12A1の光源像として形成されるが、この下端縁12Aは光輪AXと所定点Aにおいて直交する水平線上に位置しているので、これら各光源像11〜13の上端縁は、エルボ点Eを通る比較的鮮明な明暗境界線として形成されることとなる。
【0146】
また、これら各光源像11〜13の対向車線側の端縁は、V−V線よりもやや対向車線側に位置しているが、これは、発光面12Aの下端縁12A1の端点Bが、その光軸Axよりも白車線側でかつ該光軸Axの近傍に位置していることによるものである。
【0147】
そして、最も対向車線側に位置する反射点R1からの繰返し反射光により形成される光源像11が最も小さく傾斜した像になり、反射点R2、R3の順で自車線側に変位するに従って、光源像12、13の傾斜の度合が徐々に大きくなる。
【0148】
その際、所定曲線C1上に位置する反射点R2からの繰返し反射光により形成される光源像12は、その上端縁の傾斜角度が15°となり、エルボ点Eから自車線側へ向けて15°の傾斜角度で延びる斜めカットオフラインCL2と一致する。また、内周側領域Zliに位置する反射点R1からの繰返し反射光により形成される光源像11は、その上端縁の傾斜角度が15°よりも小さくなる。一方、外周側領域Zloに位置する反射点R3からの繰返し反射光により形成される光源像13は、その上端縁の傾斜角度が15°よりも大きくなる。
【0149】
同図(e)は、同図(b)に示す4つの反射点R4、R5、R6の位置からの繰返し反射光により形成される発光面12Aの光源像14、15、16を示す図である。
【0150】
同図(e)に示すように、これら各光源像14〜16も、エルボ点Eの下方近傍から自車線側へ向けて斜め上向きに延びる細長い像として形成されており、その上端縁は、エルボ点Eを通る比較的鮮明な明暗境界線として形成されており、また、その対向車線側の端縁は、V−V線よりもやや対向車線側に位置している。
【0151】
そして、最も対向車線側に位置する反射点R4からの繰返し反射光により形成される光源像14が最も小さく傾斜した像になり、反射点R5、R6の順で自車線側に変位するに従って、光源像15、16の傾斜の度合が徐々に大きくなる。
【0152】
その際、所定曲線C1上に位置する反射点R5からの繰返し反射光により形成される光源像I5は、その上端縁の傾斜角度が15°となり、エルボ点Eから自車線側へ向けて15°の傾斜角度で延びる斜めカットオフラインCL2と一致する。また、内周側領域Zliに位置する反射点R4からの繰返し反射光により形成される光源像14は、その上端縁の傾斜角度が15°よりも小さくなる。一方、外周側領域Z1oに位置する反射点R6からの繰返し反射光により形成される光源像16は、その上端縁の傾斜角度が15°よりも大きくなる。
【0153】
同図(f)は、同図(c)に示す4つの反射点R7、R8、R9の位置からの繰返し反射光により形成される発光面12Aの光源像I7、I8、I9を示す図である。
【0154】
同図(f)に示すように、これら各光源像I7〜I9も、エルボ点Eの下方近傍から自車線側へ向けて斜め上向きに延びる細長い像として形成されており、その上端縁は、エルボ点Eを通る比較的鮮明な明暗境界線として形成されており、また、その対向車線側の端縁は、V−V線よりもやや対向車線側に位置している。
【0155】
そして、最も対向車線側に位置する反射点R7からの繰返し反射光により形成される光源像I7が最も小さく傾斜した像になり、反射点R8、R9の順で自車線側に変位するに従って、光源像I8、I9の傾斜の度合が徐々に大きくなる。
【0156】
その際、所定曲線C1上に位置する反射点R8からの繰返し反射光により形成される光源像I8は、その上端縁の傾斜角度が15°となり、エルボ点Eから自車線側へ向けて15°の傾斜角度で延びる斜めカットオフラインCL2と一致する。また、内周側領域Zliに位置する反射点R7からの繰返し反射光により形成される光源像I7は、その上端縁の傾斜角度が15°よりも小さくなる。一方、外周側領域Z1oに位置する反射点R9からの繰返し反射光により形成される光源像19は、その上端縁の傾斜角度が15°よりも大きくなる。
【0157】
図13は、配光パターンPZ1を構成する複数の光源像I1〜I9を、配光パターンPZ2を構成する複数の光源像I(Z2)と共に示す図である。
【0158】
内周側領域Z1iにおける所定曲線C1の近傍領域Z1icは、上記基準面自体で構成されているので、図13(a)に示すように、この近傍領域Z1icからの繰返し反射光により形成される光源像I2、I5、I8(すなわち上端縁の傾斜角度が15°となる光源像)は、図12(d)〜(f)に示す位置のまま形成される。そして、これら光源像I2、I5、I8が重畳されることにより、上端縁に明瞭な明暗境界線を有する配光パターンPZ1icが形成され、その上端線によって斜めカットオフラインCL2が鮮明に形成される。
【0159】
この配光パターンPZ1icは、その左右方向の中心位置がV−V線に対してやや自車線寄りに変位しているが、これは、発光面12Aが光軸Axに関して対向車線側にずれた位置に配置されていることによるものである。
【0160】
内周側領域Z1iにおける近傍領域Z1ic以外の領域は、上記基準面上に複数の偏向反射素子14s1iが形成された構成となっているので、図13(b)に示すように、この領域からの繰返し反射光により形成される光源像I1、I4、I7(すなわち上端縁の傾斜角度が15°未満となる光源像)は、図12(d)〜(f)に示す位置に対して自車線側へ変位した位置に形成される。その際、これら各光源像I1、I4、I7における上端縁の対向車線側の端点が、斜めカットオフラインCL2上における互いに異なる位置に配列されるように、各偏向反射素子14s1iの偏向角度が設定されている。
【0161】
外周側領域Z1oは、上記基準面上に複数の偏向反射素子14s1oが形成された構成となっているので、図13(c)に示すように、この外周側領域Zloからの繰返し反射光により形成される光源像I3、I6、I9(すなわち上端縁の傾斜角度が15°超となる光源像)は、図12(d)〜(f)に示す位置に対して自車線側へ変位した位置に形成される。その際、これら各光源像I3、I6、I9における上端縁の自車線側の端点が、斜めカットオフラインCL2上における互いに異なる位置に配列されるように、各偏向反射素子14s1oの偏向角度が設定されている。
【0162】
そして、第1領域Z1からの繰返し反射光により形成される配光パターンPZ1は、内周側領域Z1iにおける所定曲線C1の近傍領域Z1icからの繰返し反射光により形成される配光パターンPZ1icにより、上端縁に明瞭な明暗境界線を有するものとなり、これに、内周側領域Z1iにおけるその他の領域および外周側領域Z1oからの反射光により形成される配光パターンが付加されることとなるので、全体としては、斜めカットオフラインCL2を鮮明に形成するとともに、この斜めカットオフラインCL2の下方近傍領域を明るく照射する配光パターンとなる。
【0163】
次に、配光パターンPZ2について説明する。
【0164】
この配光パターンPZ2は、水平力ットオフラインCL1に沿って細長く延びる配光パターンであって、その上端縁は明瞭な明暗境界線として形成されている。これは、以下の理由によるものである。
【0165】
すなわち、発光面12Aの下端縁12A1が、光軸Axを含む水平面上に位置しており、また、第2領域Z2が、光輪AXの側方において光軸Axを含む水平面を中心にして横長帯状に延びているので、仮に上記基準面自体で構成されていたとすると、図13(a)に2点鎖線で示すように、この第2領域Z2からの繰返し反射光により形成される複数の光源像I(Z2)は、その上端縁が同一水平面上に位置するようにして、V−V線よりもやや自車線側に形成されることとなる。
【0166】
実際には、第2領域Z2には、該領域に入射する前面14aからの内面反射光を光軸Axと平行な方向に対して対向車線側へ偏向反射させる複数の偏向反射素子14S2が形成されているので、複数の光源像I(Z2)は、図13(a)に実線で示すように、2点鎖線で示す位置よりも対向車線側に変位した位置に形成される。その際、これら複数の光源像I(Z2)が、水平カットオフラインCL1上における互いに異なる位置に配列されるように、各偏向反射素子14s2の偏向角度が設定されている。
【0167】
次に、図4に示す配光パターンPZ3、PZ4について説明する。
【0168】
配光パターンPZ3は、第3領域Z3からの繰返し反射光により形成される配光パターンであり、配光パターンPZ4は、第4領域Z4からの繰返し反射光により形成される配光パターンであり、これらは互いに略同一形状の配光パターンとして形成される。
【0169】
これら各配光パターンPZ3、PZ4は、水平カットオフラインCL1に沿って水平方向に細長く延びる、配光パターンPZ2よりも大きい配光パターンとして形成されており、その上端縁に比較的明瞭な明暗境界線を有している。
【0170】
これは、第3および第4領域Z3、Z4の各々からの繰返し反射光が、上下方向に関しては、発光面12Aの下端縁12A1からの光が光軸Axと平行な光となり、発光面12Aの他の部位からの光が光軸Axに対して下向きの光となり、また、水平方向に関しては、発光面12Aからの光が複数の拡散反射素子14s3、14s4により左右両側に拡散することによるものである。
【0171】
その際、これら各配光パターンPZ3、PZ4は、その左右方向の中心位置がV−V線に対してやや自車線側に変位しているが、これは、発光面12Aが光軸Axに関して対向車線側にずれた位置に配置されていることによるものである。
【0172】
そして、上述したように、これら配光パターンPZ3、PZ4の上端縁により、水平カットオフラインCL1が補助的に形成されるようになっている。
【0173】
また、本実施例の前照灯100Aは、透光部材14の後面14bにおける、光軸Axを含む水平面の近傍に位置する第2領域Z2が、該第2領域Z2からの反射光により水平方向に延びる水平カットオフラインCL1を形成するための領域として構成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0174】
すなわち、本実施例の前照灯100Aにおいては、上述したとおり、発光素子12が、その発光面12Aの下端縁12A1を光軸Axと直交する水平線上に位置させるようにして配置されているので、上端部に水平カットオフラインCL1を有する配光パターンを形成することが容易に可能となるが、その際、光軸Axを含む水平面の近傍に位置する第2領域Z2からの反射光により形成される発光面12Aの光源像I(Z2)は、第2領域Z2が上記基準面自体(すなわち回転放物面P)で構成されているとした場合には、その上端縁が略同一水平面上に位置するので、この第2領域Z2を、該第2領域Z2からの反射光により水平カットオフラインCL1を形成するための領域として選択することにより、鮮明な水平カットオフラインCL1を形成することができる。
【0175】
しかも、本実施例の前照灯100Aは、その透光部材14の前面14aが、光軸Axと直交する水平線を含む斜め上向きの平面で構成されているので、透光部材14の前方側に、後方へ向けて大きく傾斜した前面カバー104が配置されるような灯具構成となっている場合においても、透光部材14を前面カバー104と干渉させないようにすることが容易に可能となる。
【0176】
このように本実施例によれば、発光素子12からの光を、その前方側に配置された後傾する透光部材14により前方へ出射させるように構成された自動車用前照灯100Aであって、その照射光により水平および斜めカットオフラインCL1、CL2を有するロービーム用配光パターンPL1を形成することができ、かつ、これら水平および斜めカットオフラインCL1、CL2を鮮明に形成することができ、灯具レイアウトの自由度を高めることができ、さらに、透光部材14の上方所定位置に配置した発光素子112からの光を、該透光部材14により前方へ出射させることができる標識灯としても機能させることができる。
【0177】
しかも本実施例においては、第1領域Z1からの繰返し反射光により形成される配光パターンPZ1は、内周側領域Zliにおける所定曲線C1の近傍領域Zlicからの繰返し反射光により形成される配光パターンPZlicに対して、内周側領域Zliにおけるその他の領域および外周側領域Zloからの反射光により斜めカットオフラインCL2に沿って形成される配光パターンが付加されるので、斜めカットオフラインCL2を鮮明に形成した上で、この斜めカットオトオフラインCL2の下方近傍領域を明るく照射することができる。そしてこれにより、ホットゾーンHZ周辺の明るさを十分に確保することができる。
【0178】
本実施例においては、発光素子12が、その発光面12Aの下端縁12Aにおける自車線側の端点Bを、光軸Axよりも自車線側でかつ該光軸Axの近傍に位置させるようにして配置されているので、斜めカットオフラインCLを形成するための領域である第1領域Z1の内周側領域Zliからの反射光により形成される光源像を、エルボ点Eの自車線側近傍の位置に形成することができる。そしてこれにより、ロービーム用配光パターンPL1のホットゾーンHZを最適な位置に形成することができる。
【0179】
また、このように発光素子12を配置することにより、水平カットオフラインCL1を形成するための第2領域Z2からの反射光により形成される光源像I(Z2)についても、第2領域Z2が上記基準面自体で構成されているとした場合には、エルボ点Eの自車線側近傍の位置に形成することができる。そして本実施例においては、この光源像I(Z2)を対向車線側へ適宜変位させるように第2領域Z2の表面形状が形成されているので、鮮明な水平カットオフラインCL1の形成とホットゾーンHZの明るさ確保とを両立させることができる。
【0180】
なお、図11の2点鎖線で示すように、図示しない他の車両用照明灯具からの照射光により水平カットオフラインCL1の下方側に左右方向の拡散角が大きい配光パターンPAを追加形成するようにすれば、ロービーム用配光パターンPL1の周辺領域の明るさを増大させることができる。
【0181】
前記第2の実施例においては、透光部材14の後面14bにおける、法線Nの周辺領域を除く全域にわたって、鏡面処理が施されているものとして説明したが、後面14bの下部領域については、全反射による内面反射を行わせることが可能であるので、鏡面処理が施されない構成とすることも可能である。
【0182】
前記第2の実施例においては、透光部材14の後面14bにおいて、その第2領域Z2が、光軸Axに関して自車線側および対向車線側の側方に配置されている場合について説明したが、自車線側の側方にのみ配置された構成あるいは対向車線側の側方にのみ配置された構成を採用することも可能である。
【0183】
前記第2の実施例においては、回転放物面Pの中心軸AX1の上向き角度が、透光部材14の後面14bが仮に上記基準面自体で構成されているとした場合に、この後面14bにおいて中心軸AX1と平行な方向に再度反射した所定点Aからの光が、その前面14aにおいて屈折して光軸Axと平行な方向へ向けて出射するような値に設定されているものとして説明したが、透光部材14の前面14aからの出射光の向きが、光軸Axと平行な方向に対して上向きまたは下向きとなるような値に設定された構成を採用することも可能である。
【0184】
図14,図15は、本発明の第3,第4の実施例である自動車用前照灯100B,100Cの要部である透光部材の縦断面図を示している。
【0185】
前記した第1の実施例の前照灯100では、透光部材14の周縁下部に第2の発光素子112が配設されているが、第3の実施例の前照灯100Bでは、透光部材14の後面所定位置に第2の発光素子112が配設され、第4の実施例の前照灯100Cでは、透光部材14の前面中央位置に第2の発光素子112が配設されている。
【0186】
そして、第3の実施例では、図14に示すように、第2の発光素子112から出射して透光部材14に入射した光は、一部が透光部材14の前面14aから出射するが、一部が透光部材14の前面14aで内面反射し、さらに後面14bで内面反射して透光部材14の前面14aから出射することで、標識灯としての第2の配光が形成される。
【0187】
また、第4の実施例では、図15に示すように、第2の発光素子112から出射して透光部材14に入射した光は、透光部材14の後面14bで内面反射して透光部材14の前面14aから出射することで、標識灯としての第2の配光が形成される。
【0188】
なお、第1の発光素子12および透光部材14の構造は、前記した第1の実施例と同一であり、その重複した説明は省略する。
図16は、本発明の第5の実施例(請求項4に対応する実施例)である自動車用前照灯100Dの要部である透光部材の縦断面図である。
【0189】
前記した種々の実施例では、透光部材14の前面14aが平面で、その後面14bが光反射制御面で構成されているが、この実施例の透光部材14Aは、他の実施例とは異なり、その前面14a’が中央ほど大きく窪む曲面で形成され、その後面14b’が蒸着レスの全反射面(光反射制御面)として構成されて、縦断面略ブーメラン形状の光軸Ax回りの回転体で構成されている。
【0190】
また、透光部材14Aの後面(光反射制御面)14b’は、自由曲面で構成されて、前記した第1の実施例の前照灯100と同様の配光を形成できるように設計されている。
【0191】
透光部材14Aの後面中央には、前照灯の光源である第1の発光素子12が配置され、透光部材14Aの後面14b’から離間する上下方向所定位置には、第2の発光素子112,112および第2の発光素子112,112から出射した光を透光部材14Aの後面14b’に入射させるリフレクター114,114がそれぞれ配置されている。
【0192】
第1の発光素子12から出射して透光部材14Aに入射した光は、透光部材14Aの前面14a’で内面反射し、透光部材14Aの後面14b’で再度内面反射して、その前面14a’から出射することで、前照灯としての第1の配光を形成する。
【0193】
一方、第2の発光素子112から出射した光は、リフレクター114を介して透光部材14Aの後面14b’に入射し、該透光部材14Aの前面14a’から出射することで、第1の配光とは異なる標識灯としての第2の配光が形成される。
【0194】
なお、第2の発光素子112およびリフレクター114は、周方向等分3箇所以上に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0195】
100,100A,100B,100C,100D 自動車用前照灯
110,110A 光源ユニット
12 第1の発光素子
12A 発光面
12A1 下端縁
12a 発光チップ
12b 基板
14,14A 透光部材
14a,14a’ 透光部材の前面
14b,14b’ 透光部材の後面
14a1 レンズ部
14a1‘ 鏡面処理を施した中央領域
14a2 鏡面処理を施した円環状領域
14a3 周辺領域
14c 空間部
14d 凹部
16 金属製支持部材
16a 基板載置部
18 ヒートシンク
18a 放熱フィン
112 第2の発光素子
112a 発光チップ
112b 基板
A 所定点
Ax 光軸
B 下端縁における自車線側の端点
CL1 水平カットオフライン
CL2 斜めカットオフライン
C1 第1曲線
C2 第2曲線
E エルボ点
F 焦点
I1、I2、I3、I4、I5、I6、I7、I8、I9、I10、I11、I12 光源像
HZ ホットゾーン
P 回転放物面
PZ1i、PZ1o、PZ2i、PZ2o、PZ3、PZ4、P1 配光パターン
PL ロービーム用配光パターン
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12 反射点
Z1 第1領域
Z1i、Z2i 内周側領域
Z1o、Z2o 外周側領域
Z2 第2領域
Z3 第3領域
Z4 第4領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方へ向けて配置された第1の発光素子と、前記発光素子の前方側に配置された透光部材とを備え、前記発光素子の発光が前記透光部材に入射して該透光部材の平面で構成された前面で内面反射した後、所定の光反射制御面で構成された該透光部材の後面で再度内面反射して該透光部材の前面から出射するように構成された車両用照明灯具において、
前記透光部材の近傍所定位置に第2の発光素子が配置され、前記第2の発光素子の発光が前記透光部材に入射し該透光部材の後面で内面反射して該透光部材の前面から出射するように構成されたことを特徴とする車両用照明灯具。
【請求項2】
前記第2の発光素子は、前記透光部材の周縁所定位置または後面所定位置に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の車両用照明灯具。
【請求項3】
前記第2の発光素子は、前記透光部材の前面所定位置に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の車両用照明灯具。
【請求項4】
前方へ向けて配置された第1の発光素子と、前記発光素子の前方側に配置された透光部材とを備え、前記発光素子の発光が前記透光部材に入射して該透光部材の平面で構成された前面で内面反射した後、所定の光反射制御面で構成された該透光部材の後面で再度内面反射して該透光部材の前面から出射するように構成された車両用照明灯具において、
前記透光部材の後方所定位置には、第2の発光素子および該第2の発光素の発発光を前記透光部材に入射させるリフレクターが配置され、前記第2の発光素子の発光が前記透光部材に入射して該透光部材の前面から出射するように構成されたことを特徴とする車両用照明灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−109878(P2013−109878A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252373(P2011−252373)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】